私からお答えをいたします第一点は、現在の医療手当を生活保護的なものを含めたものにすべきではないかということでございます。昭和四十年度におきましては、特別被爆者の範囲の拡大、健康診断の拡充、医療手当の増額等の措置を講じまして、原爆障害対策費総額において、三十九年度より二億九千六百万円を増額しまして、十六億七百万円を計上いたしておるわけでございます。原爆による被害者に対して、生活保護的なものも加味してということでございますが、本件につきましては、生活保護法の制度がありますので、当然これによるべきものだと考えておるのであります。
第二点は、被爆者の総数が四千余人の少数でありますから、もっと手当の額を引き上げても、財政的に困難ではないじゃないかということでございます。御承知のとおり、原爆医療手当につきましては、三十五年に創設したわけでございますが、三十五年は六百万円でございました。三十六年には一億四千万円、三十七年にも一億四千六百万円、それから三十八年には一億六千万円、三十九年に二億円、四十年に二億二千万円余、このように相当大幅な増額をいたしておりまして、現在の段階ではこの程度だと思いますので、事情十分御了承の上、御納得賜わりたいと思います。(拍手) |
第二問の医療手当の額は、その対象人員が四千人余でありますから、大幅に引き上げても、財政的にさしたる困難はない、こういうことで、大幅引き上げの御要求があったわけでございます。本件に対する私の先ほどの答弁の中で、数字に間違いがございましたので、追加して御答弁を申し上げるとともに、この数字の訂正もお願いしたいと思います。医療手当は、原爆被爆者の特殊性を考慮するものとして昭和三十五年度に創設せられたものでございますが、そのたてまえは、原爆症患者の医療効果の促進をはかることを目的としておりまして、生活の保障を行なうものではないということでございまして、その増額についてはおのずから制約があるわけでございます。このような関係で、この金額は創設以来据え置かれてまいったわけでございますが、四十年度からは、諸般の事情の変化をも十分考え、その趣旨に従いまして、現行定額に対し許される限りの再検討を行ないまして、一挙に五割の増額をいたしたものでございます。その金額は先ほど申し上げましたが、金額を訂正いたします。三十五年度は六百万円、三十六年度は一千四百四十万円余、三十七年度も千四百万円、三十八年度は一千六百万円、三十九年度は二千万円、四十年度は二千二百三十九万九千円でございます。政府としましては、以上のようなたてまえのもので、できる限りの努力を払ったのでございまして、よく事情を御理解の上、御納得いただきたいと思います。(拍手) |
財政法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。この法律案は、国の財政の効率的な運営をはかるため、財政法第六条に規定する公債または借り入れ金の償還財源に決算上の剰余金を繰り入れる措置について特例を設けることとし、あわせて財政制度審議会の構成について所要の改正を行なうことを内容とするものであります。
以下、その改正の要点につきまして御説明申し上げたいと存じます。まず、財政法第六条の規定によりますと、前々年度の歳入歳出の決算上の剰余金の二分の一以上を公債または借り入れ金の償還財源に繰り入れなければならないことになっておるのでありますが、本規定が設けられました終戦直後と異なり、現在では、国債残高が相対的に大きく減少しておりますこと、及び決算上の剰余金の二分の一以上を常に国債償還費として固定化してしまうことは一般会計の財源配分上制約が大きいこと等の事情を考慮いたしまして、来年度予算におきましては、暫定的な特例措置として、国債償還財源への繰り入れ率を「二分の一を下らない率」から「五分の一を下らない率」に変更し、財政運営全般の効率化をはかることといたしたのであります。また、国債整理基金の現況より見まして、この程度の変更であるならば、今後二年間程度は国債償還には支障がないと認められますので、本特例措置を二カ年度間に限り行なうこととした次第であります。
次に、財政制度審議会につきましては、国の予算、決算及び会計の制度に関する重要な事項を調査審議することになっておるのでありますが、今後、前に申し述べました剰余金の処理の問題を含め、財政会計制度全般にわたって本格的な検討を進め、また、臨時行政調査会の答申に述べられてあります諸問題等を専門的に調査審議するために、広く有識者の参加を得ることができますよう、委員を増員するとともに、所要の規定の整備を行なうこととしておるのであります。以上、財政法の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げた次第であります。(拍手) |
今般御審議をいただく財政法の改正点は二点でありまして、その中で問題にせられておるものは、前段の第一点でございます。それは、剰余金の二分の一を国債整理基金に繰り入れなければならないというのを、二カ年間に限って五分の一にする、こういうことだけでございます。一体、二分の一ということと、五分の一ということに際して、財源が全然なくなったから赤字公債でも発行しようという前段の体制として五分の一にしたのだ、こういうことでございますが、率直に申し上げまして、いまも総理が申されましたが、無制限に国債整理基金に繰り入れを必要とするわけではございません。国債の残高が多くなる場合に、この国債償還に必要な財源を繰り入れるという財源確保のためと、もう一つは、財源が一般会計の財源として余った場合、これをたな上げをするという立場でこの制度がつくられたことは御承知のとおりでございます。ところが、この制度をつくりました昭和二十二年当時は、一般会計の規模と借り入れ金を含む国債の割合は一体どの程度だといいますと、一・四六%でございました。それが三十八年には〇・二一%になっておるのであります。しかも、国債の現在高に対するその年度の繰り入れ額というものの割合を見ますと、昭和の初年、昭和二年は二・九五%でございました。ところが、昭和四十年度に現行の繰り入れ率二分の一を使いますと、八・三九ということになるのであります。それを五分の一に少なくしましても三・三六、こういうことで、先進諸国に比べましても、国債残高の非常に少ない日本としては、このような制度をそのまま使うことは、これは健全ではなく超健全ということでございます。現在どうかといいますと、皆さん御指摘になるとおり、いろいろな歳出の要求もあるわけでありまして、財源の効率的運用という面から見ましても、二年間五分の一にしていただく、こういうことで、ひとつ十分御理解をいただきたいと思います。要らないところに――まあ要らないところというわけじゃありませんが、少なくともいますぐ使わないところに全部たな上げをしておいて、そして財源がないから中小企業も農村政策もできないというならば責めらるべきでありますが、必要な財源に対して十分確保をして諸般の施策を行なうというのでありますから、政府が当然とるべき姿勢であると思います。(拍手)
それから、政府は本件を契機にして赤字公債というものにつながるのではないかという御指摘でございますが、内国債の発行に対しても非常に慎重な態度をとっておることは御承知のとおりであります。もちろん、赤字公債などの考えは全く持っておりません。
それから、一般会計から産投会計へ繰り入れておりました原資を削減して利子補給の制度を使ったことは憂慮すべきことである、不健全財政につながるものだということでございますが、御承知のとおり、いままででも利子補給の制度はとっておったわけでございます。しかし、利子補給というものが安易に流れると、将来の負担が非常に大きくなりますので、その政策効果を十分考えて利子補給制度をとったことは御承知のとおりであります。でありますから、農業問題及び天災融資法による利子補給というようなものに限っておったわけであります。また、その当時は、政府が企図したものよりも高度の成長を続けましたために、税収における自然増収が十分確保されたわけであります。でありますから、一%の農業の金融に対して利下げを行なうという場合に、これに対する原資を何十億、何百億と、こういう繰り入れの方針をとってまいったわけでありますが、これも、あり余るような状態のときは、そういう方法も、健全の名において、ある意味における超健全の施策がとられたわけでありますが、だんだん安定成長になって、乏しい、限られた財政の中で、より効率的な財政運営を行なおうとすれば、このような措置を導入することも正しいことであります。しかも、一般会計と合わせて財政投融資の中で、国民の蓄積資本である民間資金の導入が行なわれ、バランスある投資が行なわれるということも、ある意味において正しいことだと考えます。しかし、これを無制限に利子補給制度を拡大していくということは、将来の国民に対する負担を大きくすることでありますから、かかるものに対しましては、政策効果を十分見きわめて、慎重な態度をとるべきだと考えております。(拍手)
それから、野党用の財源を設けよということでございますが、これは、内閣の予算編成権との問題もございまして、非常にむずかしいと思います。しかも、総理が申されたとおり、国会は与野党を含めて修正権をお持ちであるわけでありますので、現在の状態において、予備費を千億に増して、その半分を野党用、修正用ということは、法律の趣旨から考えてもできにくいことだと思います。
それから、最後に一点申し上げますが、このような利子補給の制度をつくったり、また財政法の繰り入れ限度額を低くすることは、これは赤字政策につながると言いますが、これは全く逆であります。日本の経済発展が非常にたくましく行なわれまして、その過程において健全財政政策がとられてきましたために、現在の時点において償還しなければならない国債の残高は非常に少なかったということは、経常収入をもってまかなってきた、いわゆる高度成長の過程において健全財政が維持されたという証左でありまして、この事実を十分御理解、評価のほどを願います。(拍手) |