閣僚答弁

 (最新見直し2013.05.19日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
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 2013.5.19日 れんだいこ拝


【田中角栄の閣僚答弁】

 田中角栄の国会発言を確認する。「第28回国会衆議院本会議第14号(1958/03/11、27期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。

 放送法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。現行放送法が制定されましたのは昭和二十五年五月であります。当時の放送界は日本放送協会の独占の状態でありまして、いわゆる民間放送なるものは一局も存在しなかったのであります。ただ、漸次民間放送局の出現の機運は予見できる情勢でありましたので、放送法は、かかる事態に備えて、民間放送局に対する二、三カ条の条文を設けるほかは、すべて日本放送協会を規律する条文のみより成り立っているのでありまして、いわばこの放送法は日本放送協会法であると申しましても過言ではないのであります。加うるに、当時としては、協会におきましてもラジオ部門のみで、まだテレビジョン放送は皆無でありました。

 その後今日に至る八年間における放送関係の科学及び技術の発達並びに電波の利用の増大はきわめて著しいものがございます。なかんずく、新しい事業形態としての民間放送の出現、新しい放送形式としてのテレビジョン放送の出現及び放送局数及び受信者数の顕著な増高により、放送界の事情は一変してしまったのであります。すなわち、放送法制定当時皆無でありました民間放送局は、今日では、ラジオ放送については四十社、九十局、テレビジョン放送については、予備免許中のものを含めて、四十三社、四十五局が出現しております。一方、日本放送協会の放送局も、ラジオ放送については当時約百局であったものが今日では二百局に、テレビジョン放送については三十局近くに増加しております。受信契約者の数も、ラジオ放送については、当時約九百万であったものが、今日では一千五百万になんなんとしている状況であり、テレビジョン放送については、昭和二十八年発足の当初三千未満であったものが昨年末では七十五万に達し、今後三年間には四百万になると予想せられるのであります。

 かくのごとく、放送界の現状は、現行法制定当時には夢想だになし得なかった状態に成育しているのでありまして、現行放送法をもってしては、とうていこれを規律し得ないのであります。さらに、その放送内容につきましては、社会、経済、外交等国民の生活全般に及んで格段の進歩向上を見、国民のこれに対する関心も非常に増大を来たし、国民教育、国民教養、健全娯楽の各方面について、放送内容の向上、充実を要望する世論は異常に高まりつつあるのであります、特にこの傾向はテレビジョンの発達に伴いまして強烈なものがあります。しかも、今後さらに新しい放送としてFM放送やカラー・テレビジョンが登場し、UHF帯の電波が放送事業に利用されるようになるのも決して遠い将来ではないという情勢になって参っております。

 以上述べましたような事情からいたしまして、放送法についても全面的に考え直さなければならない時期が参っているものと認められます。

 翻って、現行放送法は、冒頭に申し上げましたように、昭和二十五年に制定された後は、昭和二十七年に議員立法によりテレビジョンの受信料徴収のための改正が行われたほか、何ら改正が行われておらず、昭和二十八年、第十六回国会においても、政府は放送法の一部改正案を提案いたしましたが、審議未了と相なっております。そのとき以来、現行放送法は、進歩発達する放送界の実情に即し得ない点があるとの理由で、国会初め各方面からその改正が問題とされるに至ったのであります。ここにおきまして、政府といたしましても、放送法の改正について、日本放送協会、民間放送連盟などの意見も徴し、臨時放送法審議会に諮問するなど、鋭意努力を傾注して参ったのであります。

 私も、このような進歩発達した放送界の現状及び国民の放送に求める要望を勘案いたしまして、昨年十月下旬、日本放送協会並びに民間放送三十六局に予備免許をいたします際、現行法の許容する最大限度において最善の努力をいたしたのでありますが、現行法の予想をはるかに越えた現実の放送界の状況に即応いたしますためには、あまりにも実情に即しない現行法をもってしては、いかにも不十分であると痛感いたし、早急に放送法を改正すべきことを決意し、放送法審議会の答申その他各方面の意見をも十分に検討いたしました結果、次のごとき方針により放送法の一部を改正することにいたしたのでございます。その第一は、放送が国民生活に及ぼす影響力がきわめて重大となってきていることにかんがみ、放送番組の適正を確保するため必要な措置を講ずることであります。この場合、放送の言論機関たる特性を十分に考慮し、ごうも表現の自由を侵すものでないように配意をいたしております。

 放送は、申すまでもなく、新聞、雑誌と同じく有力なマス・メディアの一つでありまして、積極的には、日々の国民生活上必須の知識を提供し、国民の資質の向上に資し、国民に健全な慰安娯楽を与え、もって国民生活を豊富にし、国民文化の前進に貢献することができる非常に有力な手段でありまして、条約上の制約を受け、技術的にも限りある貴重な電波の使用を許された特定人は、これを最もよく公共の福祉に適合するように使用する責務を有しているものと考えます。従って、一般放送及び教育放送に関して積極的意味における準則を設け、放送事業者の指標としてこれを明定することが、公共の福祉に適合するゆえんであろうと思われます。

 他方、放送事業が、ほしいままに、あるいは不注意によって国民の享受すべき放送の恩恵を奪い、あるいは国民に不測の害毒を流すことがないように、何らかの措置が必要であると考えます。この意味で、そのような害毒を防除するための規定が必要であると認め、従来規定されています、放送は公安を害してはならないことと、公平、公正でなければならないという規定のほかに、善良な風俗を害してはならない旨の規定を設けることにしております。

 さて、これらの準則を、いかにして表現の自由を侵すことなく実効あらしめるようにするかが最もむずかした問題でありまして、種々工夫いたしました結果、あとで申し上げます放送事業者の放送の準則及び番組審議機関を設けて、放送事業者の自律によって番組の適正をはかる措置を講ずることにいたしました。

 方針の第二は、日本放送協会の責務の重大化、業務の増大に対処する必要な措置を講ずることでありまして、協会の公共的性格の明確化、業務範囲の拡張、経営機構の整備、財務能力の拡大について所要の規定を整備しようとするものであります。先にも申しましたように、今日では、放送法制定当時実在しなかった民間放送局群の出現によりまして、放送界は異常なにぎわいと活況を呈しておりますが、この間にあって、もっぱら公共の福祉を目的として設立された法人である協会の負うべき責務がますます重大となっており、協会それ自体の業務の範囲及び業務量が著しく増大している今日、右の措置はきわめて当然のことでございます。

 この場合、協会が全国を放送区域とする言論機関である点にかんがみ、特に協会の自主性を尊重し、いやしくも言論機関に対する政府の圧力ということが案ぜられるごとき規定を避けております。会長の任免の手続、収支予算等に関する制度、協会の財務の調査等については、各方面の有力な意見があったにもかかわらず、現行に据え置いたのは、右のような配慮からでございます。

 方針の第二は、民間放送の増加及び事業者の間の競争の激化による弊害の発生を防ぐために、事業運営の自主性、主体性を確保するための措置を講ずることであります。この場合、その自由な事業活動を阻害しないため、必要最小限の規定にとどめることにいたしております。

 以上の方針にのっとり、改正案で規定しているおもなる事項は次の通りであります。第一は、番組の適正をはかるための措置に関する規定でありまして、これは大体において協会と一般放送事業者に共通なものでございます。国内放送の放送番組の編集及び放送に当っては、積極的に国民に必要なニュースを提供し、教育、教養に資し、健全な慰安娯楽を提供することによって、国民の生活を豊富にし、その向上に資するようにするとともに、その内容が、現行法の規定する通り、公安を害さず、公正なものであるばかりでなく、新たに善良な風俗を害してはならないこととし、これらの事項を法に明定しようとするものであります。特に教育番組については、これ自体が国民の資質の向上を目的とするものでありますので、明確にその準則を設けております。

 これらの法で明定した放送番組の編集及び放送についての準則の実効を確保する方法といたしましては、方針にもはっきり出しております通り、放送が言論機関たる特性にかんがみ、行政権による規制を避けて、次のごとき自律的な方法を採用いたしております。すなわち、放送事業者に自主的な放送番組審議機関の設置を義務づけ、放送事業者はこの番組審議機関に諮問して、その番組編集の基準を作成し、及び、これを公表する義務を負わせ、その事業者は、その番組基準に従って放送番組の編集及び放送をしなければならないものとして、その順守を公衆の批判にまかせようとするものであります。また、その番組審議機関には、放送された番組の批判機関たる任務をも持たせ、彼此相合して番組の適正をはかろうとするものであります。

 第二は、日本放送協会の責務の重大化並びに業務の範囲及び業務量の増大に対処するに必要な措置であります。右の措置の一として、協会の公共的性格を明確にし、その業務の範囲を拡張する措置に関する規定を設けました。現行放送法は、民間放送についてはきわめてわずかな条文しか規定しておりませんが、わが国の放送は、英国における公共放送一本建及び米国における民間放送一本建の長所を取り入れ、カナダや豪州と同じく、協会と民間放送の二本建をとっております。ただ、前にも述べましたように、現実に民間放送の発足前に制定されたものでありますために、協会が放送界全体において占める地位、特に一般放送事業との関係が必ずしも明らかでありませんので、今回の改正案におきましては、特にこの点を明らかにするため、次のように規定いたしました。すなわち、協会は、ラジオ及びテレビジョンを全国にあまねく普及しなければならない旨及び国際放送を行うものである旨を明定しています。また、現行法では、その業務は協会の放送に限ることに厳格に限定されておりますが、改正案は、この点を拡張して、一般放送事業の進歩発達にも寄与することができるようにいたしてお号ます。すなわち、協会の行うべき研究及び調査の実施に当っては、業務の遂行に支障がない限り、学識経験を有する者及び放送に関係を有する者の意見を尊重するとともに、研究の成果をできる限り一般の利用に供しなければならないこととし、また、放送番組及びその編集上必要な資料を一般放送事業者等の用に供し、委託を受けて放送及びその受信の進歩発達に寄与する調査研究、放送設備の設計その他の技術援助並びに放送に従事する者の養成を行うことができることといたしました。

 措置の二として、協会の責務の重大化並びに業務範囲及び業務量の増大に対応して、経営機構の改善をはかるため所要の規定の改正を行いました。すなわち、経営機構については、意思決定機関と業務執行機関の責任と権限を明確にする措置として、経営委員会の任務は、協会の経営方針その他業務運営に関する重要事項を決定することとし、会長を経営委員会の構成員であることをやめて、もっぱら業務を執行する機関としております。また、経営委員会の機能をより高めるために、有為な人材を広く選任することができるように、全国を通じて選出される委員四名を加え、若干ではあるが、選出の条件を緩和し、かつ、委員は従来報酬を受けなかったのを改め、勤務日数に応じ相当の報酬を受けることができるようにしました。また、業務の範囲及び業務量の増大に伴い、理事及び監事を増員することにしております。会長等の役員の任免の方式については、先にも述べましたように、現行の通りといたしております。

 措置の三として、財政能力の強化をはかるため、協会の業務の拡大による所要資金の増加に対応して、放送債券の発行限度額を引き上げるとともに、一般放送事業者が放送に対する対価を受けることを禁止することにより、その収入を確保する道を講じました。

 なお、収支予算等に関する制度及び受信料に関する制度については、これを改正すべきであるという意見もかなりございますが、今回は現行のままとしましたが、収支予算等について、示度頭初までに国会の承認が得られなかった場合の暫定措置を講じております。

 第三は、一般放送事業者の自主性、主体性を確保するため必要な措置であります。一般放送事業については、先に述べましたごとく、現行法ではきわめてわずかな規定があるのみでございます。一般放送事業に関する規定で最も重要なことは番組の適正をはかるための措置に関するものでございまして、これについては、すでに申し述べた通りでございます。番組の適正をはかるための措置以外の規定としてこの法案で規定しておりますのは、学校向けの教育番組の放送を行う場合の広告の制限並びに放送事業者の自主性及び主体性を確保するための措置であります。

 一般放送事業者の自主性及び主体性を確保する措置としては、名義貸し並びに番組協定について、特定の者からのみ放送番組の供給を受けることとなる条項、及び、放送番組の供給を受ける者がその放送番組の放送の拒否または中止を禁止する条項を含むことを禁止する規定を設けました。なお、そのほかに、事業経営のあり方として、一般放送事業者は受信者から放送の受信の対価を受けてはならない旨規定いたしました。

 以上のほか、郵政大臣は、放送法の施行に必要な限度において、日本放送協会及び一般放送事業者に対し、その業務に関し報告をさせることができることといたしました。

 今回の改正は、以上述べたところでおわかりのごとく、今日の放送界の実情を直視するとともに、明日の放送の姿をも想定し、これらに対応するため、表現の自由を確保しつつ、かつ、放送番組の適正を期するための自主的規制を中心とした番組の編集及び放送に関する準則並びにこれを確保するための規定を設け、日本放送協会については、その公共的な性格を明らかにし、及び、その活動をより活発にするため所要の改正を行うとともに、一般放送事業についてはその業務の運営に関する若干の規定を設けようとするものでありまして、きわめて現実に即した必要不可欠の改正のみであります。以上が、この法律案の趣旨でございます。
 竹内さんにお答えいたします。まず第一点は、放送法の改正に際して三本建か二本建にいうことを考えながら、なぜ一本建としたか、こういう御質問でありますが、私も、初めは、放送法改正に当って、できるならば三本建にしたいという考えを持ったことは、御承知の通りであります。この種の法律に対しては、大体、基本法及び事業法、もう一つは、特殊な公社や特殊な機関に対しては、その機関を律する法律、三本建になっていることは、御承知の通りであります。これは、電気関係においても、鉄道関係におきましても、そういうふうな形態をなしておりますので、できればそういうふうにいたしたいという考えでございましたが、放送法の持つ重要さ、また、放送法というものを、そういうように形式を変えることによって、無用にいじったというふうな感じを出すことは、摩擦を起すことでありますので、このたびの改正では、在来の放送法をそのまま改正を行うことにいたしたわけでございます。

 第二には、番組の向上の重点の一つとして番組の問題を考えておるけれども、現在行われておるテレビやラジオの番組に対して、一体いいと思うか悪いと思うか、こういう御意見でありますが、これは、いいという議論と悪いという議論か両方ございます。大体、放送事業者は、だんだんよくなりつつあるのだから、このままで自主的に規律をしていけばいいということをいわれておりますが、新聞、雑誌その他の論評によりますと、一部においては、一億白痴化だ、こういうこともいわれておりますので、私といたしましては、このよしあしの二つの議論の調和をこれから考えなければならないということが、この放送法の改正の大きな焦点になっております。しかし、番組につきましては、最近非常に番組がよくなってきておるという事実も、御承知の通りであります。しかし、一部においてまだ相当な批判もございますので、この批判には十分放送事業者もわれわれも耳を傾けて、りっぱな番組を放送しなければならぬことは、論を待たないわけでございます。そういう意味で番組審議会を法定いたしましたが、この番組審議会に対しては郵政大臣が免許を行なっておるのであるから、番組審議会に対しては、官が干渉しないという程度で相当強化しろという議論と、もう一つは、絶対に自主的な運営にまかすべきものであって、強化をしてはならないという両論がございますので、調和点をとって法律に明定はいたしましたが、業者の全くの自律にまかしてあるということでありますので、現在の状態では、これ以上規律をするといろいろな問題があり、全くないと一億白痴化だといわれるので、まあこの程度が妥当だ、こう考えておるわけでございます。

 第三番目は、NHKの公共性をさらに明確にするために、受信料についてはっきりとした明文を置いてはどうかという御意見でございますが、これは、さきに設けられました臨時放送法審議会の答申によりますと、NHKの受信料は法定すべきものである、こういうふうに明確に答申がなされております。私も、できるならば放送法改正に当りまして法定をいたすことがいいという考えでございましたが、これに対してもいろいろな議論がございます。特に、これを法定するということになりますと、いわゆる電波税式なものか、自由契約に基くものかという、受信料そのものに対して明確な線を打ち出さなければならないということで、今度の改正案では裏面からではありますが、逆に、一般放送事業者は、名目のいかんを問わず、受信料を受けることができない、こういうことを規定しましたために、受信料はNHKだけが受ける特権であるということを明確にいたしたわけでございます。これによりまして、国民の受信のための負担の増大を避けるとともに、協会の収入の確保に努めたということを御了承いただきたいと思います。

 第四には日本放送協会、すなわちNHKが国家機関だ、こういうことを言ったが、一体どういうことか、間違いだろうが、という非常に御親切な御発言でございますが、私も、もちろん、NHKが政府機関であり国家機関であるという考えは毛頭持っておりません。しかし、国会が、公共の福祉に供するものとして、特に法律によって設けました全国民的な放送機関、こういうのでありますから、広い意味で言うと、国家的な目的を持った機関、こういうことぐらいは言えると思いますが、少くとも、受信料を特別に受ける権利を有しておるだけをもって、政府機関、国家機関というような考えは毛頭持っておりません。しかし、民放とは違って、確かに国民的な、国家的な機関であるということは間違いないと思います。また、そうでないと、国の財政資金をこれに貸すようなことはできなくなるのでありまして、そういう意味から考えても、国民的な機関という方が正しいと思います。

 それから、受信料を値上げするようなことを言っておったが、どうして一体上げなかったのか、選挙対策じゃないかというような、ちょっとお話もあったようでありますが、受信料は御承知の通り、現行放送法――改正法でもそうでありますが、郵政大臣――政府が値上げ、値下げをきめるようにはなっておりません。協会が郵政大臣に提出し、大臣はこれに対して意見を付して、自動的に国会の承認を仰ぐことになっております。そういう意味で、政府が、また、郵政大臣が、固有の権限でこれを上げたりなんかできない状態でございます。その意味で、三十三年の予算提出に対して、NHKがどういう案を出してくるかと思っておりましたら、御承知の通り、今日の状態において値上げをすべきではない、こういう考えのもとでありましょう、値上げをしないで、二十二年度の徴収料率をもって三十三年予算を編成いたし、提出され、私の意見を付して、過日国会に御審議をわずらわすべく提案をいたしておるわけでございまして、決して政府の選挙対策などではございませんから、明確にお答え申しておきます。

 第六には、NHKに対して業務報告をさせる真意いかん、これが言論統制、干渉の突破口にならないかということでありますが、これは全くそういうことではないのであります。御承知の通り、放送法審議会の答申には、もう郵政省設置法に基いて監督をしておるのでありますから、業務の報告を求められないという規定自身がおかしいのであって、法律でもって報告を求めるばかりではなく、会計に対し監査を行えるように法律に明定すべきであるというふうな、きつい答申が出ておることも、御承知の通りであります。これらの問題を十分考えたのでございますが、新たに監督を強化するのではないという線を明確に打ち出しつつ、合理的なものとするにはどうするかということで、ついに答申案に出ておりました会計監査の規定を削って、報告を求めるというにとどめたのでありますから、新たに監督を強化し、統制の道を開くなどということは絶対にないということを、明確に申し上げておきます。

 第七に、NHKと民法との番組の相違と調和に対しての御質問でございましたが、これはざっくばらんに申し上げますと、NHKと民放に対して、聴取料を取れるものと聴取料を禁止せられておるものとの差は番組面に現われてこなければならないことは、常識的に当然であります。でありますから、NHKは、将来は、教育、教養、技術、産業というような、そういうものに重点を置いて番組が進められていくべきであることは当然であります。民間は、逆に、教育、教養ももちろんやってもらわなければならないのでありますが、国民の健全な娯楽をNHKよりも多少多く放送するような番組を組む、こういうことが理想的だと考えられるわけでございます。

 第八番目に、最後の問題でございますが、教育放送を普及させるためにどうするか。教育放送に対してはっきりした考えを申し上げますと、教育放送はNHKが行うべきだという考えを明確に持っております。しかし、民間放送は規定がないからといって全然やらないでいいというものではないのであります。公けの波を公けの立場で特殊な人たちが受けて、この波を運営しておるのでありますから、教育、教養に対しても意を用いてもらわなければならない。すなわち、報道、教育、娯楽の三者が調和のとれた番組を放送してもらわなければならぬことは当然であります。しかし、教育番組といいますと、これは大体ペイ・ラインに乗らない、こう見てもいいと思いますので、現在の考え方では、ラジオにおきましてはNHKの第二放送を使って教育番組の放送を行なっております。また、テレビに対しても、現行VHF帯の第二放送を使って教育放送を行うということを、先ほどもお話がございました通り、VHF帯だけではまかなえないので、UHF帯のチャンネル・プランの決定も早急に行なって、これも教育、教養番組を放送できるようなNHKのものを優先的に割当しなければならない、こういう考えでございます。なお、FM放送のチャンネル・プランも早急にこれを決定して、ラジオの中波帯から混信を防ぐ意味において移行するものを除いては当然教育放送にこれが使用せらるべきだと考えておるわけでございます。以上、八点にわたってお答えを申し上げた次第でございます。
 松前さんにお答えいたします。第一点は放送法の改正とあわせてこの国会に提案をせられておる郵政省設置法の一部を改正する法律案の中に、NHK及び民放の監督を強化する規定がある、こういうことを言われましたが、そういう改正案は提案いたしておりません。全然監督規定を新しく設けるというようなものではございません。現行法にNHKに関する事項というのがございますから、その次に新たに一般放送事業者に関する事項ということをつけ加える全く事務的なものでありまして、郵政省設置法のどこを見ても、NHK及び一般民間放送業者を監督する規定のないことは明確でありますから、御承知を願います。

 それから第二点は、値上げの問題であります。NHKの予算編成に対して郵政大臣は値上げをするということを言ったじゃないか。それをどうして政府資金のようなものにすりかえたのかというお話でございましたが、これは松前さん御承知の通り、現行放送法によって郵政大臣や政府が値上げができるものじゃないのでありまして、私自身が値上げをするというようなことを言明したことはありません。こういうことを申したのであります。三十三年度のNHKの予算編成に対して、現行の三カ月二百円で一体まかなえるのか、三十三年度の予算を組むときに当りまして新しく事業計画をしなければならないのでありますが、財源が不足であるので、郵政大臣は一体その場合どう考えるかということでありましたから、値上げをするというのも一案でありますし、政府が金を貸すというのも一案でありますし、それからNHKが自主的に民間から金を借りるということも一案であります、そういうふうに新しく事業を始め、しかも、一カ月六十七円でまかなえないという場合には、何らかの財政的措置をとらなければならない、こう申したのであって、値上げをしなければならないということは、私は権限がないのでありますから、そういうふうに申し上げたのではないということを、明確に申し上げておきたいと思います。

 三十三年分予算案は御承知の一通り、国会に提案をせられておりますが、公共企業料金の値上げを行う時期ではない、こういう経営委員会及びNHKの首脳者の考えによって、三十二年度予算におけるものと同率、すなわち、ラジオにおいては、一カ月六十七円、三カ月二百円という現行料率で変更なく予算を組んで、国会の審議を仰いでおるわけでございます。これが値上げをするか、財政資金、一般資金をもってまかなうこともいけないということをいって値上研をするとすれば、それは国会の力でもってやっていただく以外にないので、ありまして、現行放送法にも明確にそう規定してございますので、政府や郵政大臣が値上げができるものじゃないということだけを申し上げておきます。

 それから第三番目には、現行VHF帯においてテレビの免許は失敗じゃなかったかということ、もう一つは地方において新聞がラジオに対して相当な勢力を持っておる、そのラジオ会社がテレビを兼営することによってマス・コミの独占にならないか、こういうお話でございます。これは委員会でも十分御議論があったものでございまして、なるべくというよりも、できるだけマス・コミの独占を排除しなければならぬということは、私が申すまでもないことでございます。でありますから、政府は、昨年十月二十二日において三十四社、三十六局の予備免許を与えるに際しても、この問題を一番重要に考えたわけであります。その意味で、単独免許を行わないで、競願者の合併整理を行なって、御承知の通りマス・コミの独占を排除しようという措置をとり、かつ、その方式が円満に行われるかいなかを確実に認証する時期まで、すなわち、今年三月三十一日まで停止条件付の免許を与えておることも、御承知の通りであります。そういう意味で、いかにこの問題に対して慎重であったかということも、おわかりになっていただけると思いますこの予備免許を与えた民間テレビ局の効力発生の時期も間近でございますこの三月三十一日までの効力停止でございますから、近く確認を行わなければならないわけでございますが、全国的には円満と申し上げられるような状況で進行をいたしておりますので、期限の三月三十一日までには、おおむね予備免許を交付したときの条件が満たされ、円満に確認が行えるということを考えています。

 それから、放送番組審議会は、これはお手盛り機関であって、あまり大したことでないじゃないかというような御意見のようでありますが、これは非常にむずかしいところであります。放送法改正の山であります。放送番組の低俗化を防ぎ、そして、国民が喜ぶように、また、国民のためになるような番組を作らなければいかぬ。どれが一体教育に合致し、どれが教養に合致し、どれが娯楽であるかということを、だれが見分けるのかということは、非常にむずかしい問題であります。それを私が見分けたり、岸内閣が見分けたりするということは、これは言論統制のはしりであるというので、それもできない。では全然やらないでいいかという御議論になるようでありますが、全然番組審議会を作らぬでいいということにはならないのであります。少くとも倫理規定を設けまして、法律では番組審議会を作らなければならない、番組審議会の意見を尊重しなければならない、こういう倫理規定を作ることだけでも番組の向上に役立つであろうということは、これは論を待たないのであります。倫理規定さえも必要はないということは、まさに野放し免許であって、私が三十六局に免許を与えた責任者といたしましては、この程度は、最小やむを得ざる措置だと考えておるわけでございます。

 それから、NHKと民放の両立免許に対して、民放に対しては一切受信料を取ってはならないということを改正法では規定いたしております。NHKと同じように民放も取っていいじゃないか、どうして一体取らないようにしたのだ、アメリカにおいてはもうすでに有料テレビという問題があるじゃないかという、非常に示唆に富まれた御発言でございますが、これも改正の過程において十分論議した問題でございます。しかし、現在、アメリカも、民間有料テレビの問題は、御承知の通り、これは有線放送によるものであります。無線放送、いわゆる日本の放送法は無線放送による放送を律しておるものでありますから、アメリカといえども、無線放送による有料テレビの問題は起きておりません。この有線の有料テレビの問題も、御承知の通り、もう一週間ばかり前から、アメリカの各州は、全部有料テレビの免許をしてはならないという決議を各州で行なっていることも、御承知だろうと思うのであります。しかし、アメリカと日本と違うことは、先ほども申し上げましたように、NHKと民放と両立するような免許方式をとっておりますので、公共放送であるNHKの性格を明確にし、そうして、民間放送と公共放送との二本建を行うということになりますと、NHK以外の民放は、名目のいかんを問わず、聴取料を取ってはならないと規定することは、より明確である、こういう考えで、民間テレビに対しては聴視料の禁止を規定いたしたわけでございます。なお、いろいろ詳細につきましては委員会で御質問にお答えし、申し上げたいと思います。

 最後に申し上げますことは、先ほども申されたのでありますが、何か放送法が官の統制のはしりというふうにお考えでございますけれども、これは、番組の問題を含めて、学識経験者から成ったところの放送法改正審議会の答申よりも非常に後退した、現在の状態で必要やむを得ざるものだけ規定いたしたのでございまして、これを通していただかないと野放し免許になるおそれがございますので、ぜひ一つお願い申し上げたいと思います。

 田中角栄の国会発言を確認する。「第28回国会衆議院本会議第24号(1958/04/01、27期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。

 お答えいたします。合法にして正常な労働運動の発達を願っている私でございますから、労働運動の不当干渉となるような警察権の介入は不当にいたしておりません。先般来の警察官の出動は、違法行為の未然防止と、組合運動が行き過ぎて公安を害したり、社会秩序を乱さないための予防措置として、最小やむを得ない限度のものであることを御了承願います。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第34回国会衆議院本会議第17号(1960/03/30、28期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。

 ただいま上程になりました北陸地方開発促進に関する決議案につきまして、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表いたしまして、提案の理由を御説明申し上げます。まず、決議案の案文を朗読いたします。

   北陸地方開発促進に関する決議案

  わが国経済は、近時著しい伸長発展を遂げつつあるが、反面、これらの産業活動は、おおむね大都市を中心とする先進地域に集中して、後進低開発地域との格差を増大し、経済の跛行性をますます助長しているととは、国民経済の均衡ある安定的発展上、まことに遺憾とするところである。 ことに、北陸地方は、積雪寒冷地帯等の自然的悪条件に加えて、従来国の積極的施策に乏しく、ために産業経済ははなはだしく立ち遅れを余儀なくせられ、住民所得、地場資本、地方財政力等いずれも全国的水準を下まわり、経済の悪循環による本地方の低位後進性は、ますます顕著の度を加え、旧態依然として、いわゆる「裏日本的」宿命を脱却し得ない実情である。 しかしながら他面、本地方は、阪神、京浜及び中京の三大商工業地帯と密接につながり、各種資源の供給源として重要な地位を占め、かつ、日本海を中心とする対岸貿易の拠点的役割をにない、更にまた、幾多の観光資源に恵まるる等多大の開発効果を期待し得るものがある。すなわち、これがため、交通諸施設の整備拡充、災害の防除等経済基盤の培養強化と産業構造の高度化を図り、総合的地域開発を強力に推進するにおいては、ひとり本地方の民生の向上、福祉の増進に資するのみならず、広くわが国経済の発展に寄与するところきわめて大なるものがあると確信するものである。 よって、政府は、すみやかに国土総合開発の一環として、本地方における画期的開発計画を確立し、これに伴う必要適切な特段の措置を講じ、もって施策の万全を期すべきである。右決議する。

 そもそも、わが国経済の趨向を大観いたしまするに、その成長率は年を追うて上昇の一途をたどり、近来きわめて順調な伸張を遂げつつあることは、諸君とともにまことに御同慶にたえないところでありまするが、その反面におきましては、これらの産業活動が概して大都市中心に集中をいたしまりして、地方低開発地域との経済格差を増大し、国民所得の不均衡、地方財政力の懸隔等、著しい地域的アンバランスを助長いたしておりますことは、経済の均整ある安定的発展上、まことに好ましからざる事態であると思うのであります。ことに、政府がさきに策定いたしました所得倍増を目途とする長期経済計画の円滑適正なる実施推進を期するためには、特に、これらの地域開発の跛行性を打破して、全国的視野に立って経済施策を確立し、いわゆる経済の体質改善を行なうことが刻下喫緊の急務であると思うのであります。

 翻って、北陸地方の実情を見まするに、本土の中部に位して、阪神、京浜、中京等の先進商工業地帯と地域的につながりながら、常に日陰に取り残され、いわゆる裏日本的な宿命にあえいでいるのであります。すなわち、まず産業構造について見ましても、第一次産業の占むる割合は、全国平均四一%に比し四六%を占め、近代産業の見るべきもの乏しく、ことに、積雪寒冷地帯等の自然的悪条件のもとに置かれて、住民の所得水準は、全国平均八万五千余円に対し八万三千余円、実に二千円の低額を示し、地場資本は先進地に流出して蓄積に乏しく、従って、地方財政力においてもその自主財源の占むる割合は、全国平均四一%に比し、わずかに三〇%にすぎない実情であります。しかも、従来、本地方に対する国の積極的施策が立ちおくれておりましたために、その低位後進性が先進地に比してますます顕著の度を加えて参りましたことは、きわめて遺憾とするところであります。

 他面、本地方の経済立地条件について見まするに、前述のような先進商工業地帯に密接なつながりを持ち、内陸には、水力、労働力のほか、石灰、珪藻土、陶石等の原料鉱産資源を埋蔵し、海には、日本海を中心とする沿岸漁業基地としての水産資源をかかえ、また、対岸貿易の拠点的地歩を占め、将来における多大の開発効果を期待し得るものと思われるのであります。さらにまた、近来とみに重要視せられてきた観光事業の面におきましても、立山、白山の名峰その他幾多の温泉源を持ち、豊富な観光資源に恵まれております。

 このような特殊性にかんがみまして、この際、本地方の総合的地域開発に画期的方策を立て、強力にこれを推進いたしましたならば、二百八十万住民の生活の向上、福祉の増進はもとより、広く国家経済の大局的見地においても貢献するところきわめて大なるものがあると思わるるのであります。叙上のごとき趣旨をもって、政府はすみやかに本地方の実態に関する基礎調査を行ない、これに伴う基本計画の確立と相待って、開発事業の実施推進に特段の方途を講ぜらるるよう、特に要請するものであります。以上が本決議案を提案せんとする理由でありまして、こいねがわくば満場の御賛同を切にお願い申し上げる次第であります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第40回国会衆議院本会議第6号(1962/01/23、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 私は、自由民主党を代表し、政府の施政方針について、政治、外交、経済、文教、労働等、当面する重要問題に関し、若干の質問を行ない、政府の所信をただしたいと存じます。(拍手)

 現下内外の諸情勢は、はなはだ複雑多岐であり、今後の施政にあたっては、細心の配慮と強い勇気を要することは言うまでもありません。総理大臣の施政演説は、この間に処し、必要な施策を推進し、わが国の恒久的繁栄の基盤をつちかうとともに、世界平和に貢献せんとする強い決意を披瀝したものであります。(拍手) 私がこれから行なわんとする質問は、政府の方針が一そう明確にされるとともに、その質問と政府の答弁が、国民各位の理解と共感を得て、勇敢に、そして着実に遂行されるよう強く期待するものであります。(拍手) 第一の質問は、政治に関する諸問題についてであります。政治問題の第一は、憲法についてであります。

 内閣の憲法調査会は、すでに五年にわたり、広範かつ詳細にわが国憲法の調査を進め、すでに結論を取りまとめ得る段階に至っております。このため憲法に関する各方面の論議は次第に活発となり、中にはこれを政治的逆宣伝の具に供する傾向も強くなっており、社会党は、これを来たるべき参議院議員選挙の最大の争点となさんとしておるようであります。憲法は国の大本であり、われわれの生命であります。この重要な問題に国民各位が関心を払うことは当然のことであり、望ましいことでありますが、一部政党や政治家などの政治的意図による逆宣伝によって、国民に誤った先入観や偏見を与えることは、厳に避けなければならないと存じます。(拍手) 総理は、さきに、憲法問題は国民の意思に従って処理すると言明せられたのでありますが、調査会の結論が遠からず出されようとする今日、すなわち憲法調査会の報告が答申された場合、内閣としてこれをどのように措置するか、また本件に関し、総理としてのお考えを明らかにされるよう望みたいのであります。

 政治に関する第二の質問は、民主主義擁護と民主政治の確立についてであります。総理は施政演説において、この問題に対し強い決意を表明せられたのでありますが、要は、いかにしてこれを達成するかであります。私は、第一に、国会の運営を正常化し、公明かつ能率的な議会政治を確立することであり、第二は、一切の暴力を排除し、法秩序を確立することであると信じます。(拍手)われわれは、何回かこの議場で国会正常化と暴力排除を誓い合ったのであります。そして、池田内閣誕生から一年有半、低姿勢過ぎるとの一部世の批判に甘んじてさえ国会の正常化をこいねがってきたのでありますが、何ゆえに国民の要請にこたえ正常な国会制度が確立せられないのでありましょう。政府の低姿勢ともいわれる謙虚さと、国会において多数を有するわが自由民主党が、政府与党という名において、国会における審議時間の大半を少数野党に譲る等々、限りない譲歩を続けても、国会の正常化は遅々として進まないのであります。いわく、副議長をよこせ、委員長も議員の数によって割り振るべし、わが党の修正をいれなければ審議に応じない、政防法を廃案にしなければ審議ボイコットをする、野党が退場後多数で採決をしても、野党のいない委員会での議決は無効である、野党の引き延ばしに抗して本会議を開こうとすれば、神聖な議長席さえ占拠される、懲罰事犯を取り消さなければ何事も進行しない、こんなことで民主主義も民主政治も育成されるのでありましょうか。説をなす人は、それは過渡的な現象であると言い、民主主義と民主政治は気長に育てなければならないとも言います。私もそれを知らないものではありませんし、民主政治確立の大業をなし遂げるためには、少数野党の暴力的行為を責める前に、責任の地位にある政府与党がより多くの犠牲を払わなければならないことも認めます。がしかし、数の少ない野党が、自分たちの主義を押し通すための手段として、いささかの暴力はやむを得ないなどという議論がごく一部であっても容認されるようなことで、真の民主主義は発展するでありましょうか。(拍手)副議長や委員長は、数によって按分することが正しく、本院において全委員長を自由民主党が独占していることは多数横暴であると社会党の諸君は声を大にいたしますが、この主張は正しいのでありましょうか。過ぐる昭和二十二年、第一回の国会において、新しい憲法と新しい国会法によって国会ルールをきめたときに、特に社会党の要求によって、責任政治の建前より、正副議長はもとより、常任委員長は政府与党が全員占めることに確定しておるのであります。この原則に基づき、翌昭和二十三年十月、三党連立の芦田内閣総辞職のあとを受けて第二次吉田内閣が誕生したとき、社会、民主、国協の三党は、院内絶対多数でありながら、新たなる政府与党、民主自由党百四十名余の少数与党に、国会役員の全員を譲ったではありませんか。私は、この原則だけを主張するものではありません。その後、与野党の党首会談により、野党に副議長と委員長の一部を譲ったことも認めます。しかし、責任政治の原則を破ってまで妥協したことは、わが党が国会正常化を熱望したからであります。しかし、野党出身役員は、国会正常化の使命を遺憾なく果たし、国民の要望にこたえたでありましょうか。遺憾ながら、それは失敗であったといわざるを得ません。政治的重要法案を審議するとき、特に野党がその法案に反対を党議で決定したとき、その法案は、賛成者がどんなに多数であっても、円満な国会審議を経て成立した例はないのであります。(拍手)私も政党所属の議員の一人でありますから、公の立場が党議に拘束されるときの苦痛は十分理解できるのであります。しかしわれわれは、政党所属議員である前に、国会議員である自覚を忘れてはならないのであります。(拍手)特に国会役員に選任せられた以上、民主政治確立のためには私情を去って、公の職に殉じ、その責めを尽くすべきであります。(拍手)私は、お互いの過去のことどもを並べ立てて、とやかく言わんとするものではありませんが、副議長、委員長を政府与党で独占する原則に返ったことには、それ相当の理由と根拠のあったことを、野党の諸君みずからにも認めてもらえると確信をするのであります。(拍手)

 以上申し述べました通り、民主政治とは責任政治の確立にあり、国会正常化をはかることは、わが党に限りない忍耐と寛容、そうして譲歩を求めるだけで達成できるものではなくて、在野党も謙虚に議員の職責を行ない、院内より少数党の暴力行為が排除され、多数決原理を否定する反議会行為が抑制されない限り、国会の権威は保持せられないのであります。(拍手)私は、政党の自粛自戒とともに、国会運営の制度にも再検討を加え、国権の最高機関から反議会的思想と行為を排除するきびしい態度をとるべきだと存じます。総理の所信を承りたいのであります。

 政治に関する第三の質問は、暴力の排除についてであります。社会における暴力、特に政治暴力は、左右を問わず、また個人、集団たるとを問わず、民主主義の敵として峻厳に排除せらるべきであります。(拍手)ちょうど一年前、この議場で、この演壇で、与野党一致して暴力排除の質問演説がなされたことは記憶に今も新しく、特に野党第一党たる社会党代表の質問は、この暴力排除だけを取り上げ、世に訴えたのであります。政治暴力防止法、この法案が党議員の提議となり、参議院に送付されてから久しいのであります。私はこの法律制定だけですべての政治暴力が根絶するとは思わないのでありますが、民主主義を守るため、前進的手段の一つだと確信をしておるのであります。(拍手)その理由のいかんを問わず、暴力は民主主義の敵なのだと、もう一度この議場で声を大にいたしたいのであります。(拍手)大きな不祥事件は、起きてからではおそいのであります。政府は、そのよって来たる原因をきわめるとともに、民主主義の根底を脅かす政治暴力の排除と根絶に万全を期すべきであります。このための取り締まり査察機構の整備はもとより、必要な立法措置についても、ちゅうちょ逡巡することなく推進し、政府の責任を果たすべきだと考えます。以上三点について、総理及び法務大臣、国家公安委員長の所信を承りたいのであります。(拍手)

 政治に関し伺いたい第四の点は、行政運営と公務員のあり方についてでございます。戦後のわが国行政制度及び機構、組織は、一面において民主的に近代化された面もあるのでありますが、他面、制度をいたずらに複雑化し、機構、人員を著しく膨張し、国民負担を著しく増大したことも否定できないのであります。なかんずく、戦前の数倍にも達する公務員が、お互いなわ張り争いを繰り返し、行政の渋滞を来たしている少なからざる事実を思うとき、行政の改革、整理は万難を排しても断行すべきであります。(拍手)政府が今回、この問題に根本的メスを入れようと決意をせられたことに敬意を払うとともに、大きな期待を寄せるものであります。積極的な行政整理は明治以来の懸案でありましたが、歴史の示す通り、これをなし遂げることは難事中の難事であります。私は、行政制度の根本的改革のため、権威ある機関を設け、相当期間をかけて調査検討することも必要と思うが、それとともに、すでに明らかになっておる部分については、ちゅうちょすることなくこれを実行することが望ましいと存じます。(拍手)

 外交に関し第三にお伺いいたしたいのは、日韓問題についてであります。韓国とわが国は一衣帯水の近きにあり、しかも同じく自由国家群の一員でありながら、今なお国交の正常化を見るに至らないことは、両国のためまことに不幸なことであります。私は一日も早く日韓会談の公正な妥結を期待してやまないのであります。率直に申して、日韓問題ははなはだ複雑であり、国民の大多数は、この問題の所在や両者の主張の根拠等についていまだ理解しておらないのであります。ただ一部の逆宣伝だけが印象づけられておるのではないのでしょうか。すでに社会党や共産党がこの機に乗じて日韓会談反対の運動を活発に展開し、外国勢力と呼応して国論の分裂をはかっておることは、はなはだ遺憾なことであります。(拍手) 政府は、日韓国交正常化が大局的にどのような意義を持つのか、また韓国側請求権とはいかなるものであり、いかなる根拠に基づくものであるかなど、国民が理解できるような方途を講じて、一部逆宣伝に惑わないよう留意すべきであると考えます。(拍手)これらの問題について、外務大臣の所見を承りたいと存じます。

 第三に私の質問せんとするものは、経済関係についてであります。経済問題、なかんずく国際収支の問題、財政と金融制度の問題、中小企業対策、自由化の問題等、各般については、予算委員会において同僚議員の質問によって明らかにされることと存じますので、物価と賃金関係について承りたいと存じます。

 昨年の物価の上昇は、経済の好況による需要増加による部分もありますが、賃金の上昇による面が多く、ことに消費者物価の上昇は、その大部分が賃金関係によるものと思うのであります。(拍手)その最大の契機となったものは、昨年の春季における公企業体や大企業の大幅ベース・アップであります。月三千円という豪華な賃上げが中小企業やサービス業の賃上げを刺激し、それが消費者物価にはね返ってきたのであります。私は、現在における物価問題の根本は、需給関係より賃金問題にあると思うのであります。生産性を伴わない賃上げを抑制することができなければ、やがてはほんとうのコスト・インフレを招き、民生の圧迫、輸出の減退、経済の混乱をもたらすおそれのあることを忘れてはなりません。しかして、生産性を伴わない賃上げの最たるものは、公務員と公企業体職員の給与であります。ほとんど毎年のように行なわれてきたこれらのベース・アップは、能率とは何の関係もなく、国民の負担において行なわれてきたのであります。これが民間給与の引き上げを誘い、民間給与の引き上げがまた公務員給与の引き上げの要因となるといった悪循環を繰り返しておるのが現状であります。

 私は、まず公務員と公企業体職員の給与決定方式を根本的に再検討し、経済事情に特別の変動のない限り、ベース・アップはこれを行なわないこととなし、能率と責任等に応ずる合理的な給与制度の確立こそ望ましいと存ずるのであります。(拍手)わが自由民主党がさきに党内に給与に関する調査会を設置したのも、このことに思いをいたしたからであります。自由経済下における物価問題は、その根源をつかずして抜本的対策はないと考えます。総理の所信を伺いたいのであります。

 次に、経済成長政策の大眼目である各種所得格差の是正について承りたいのであります。経済成長があまりに高いときは、力のあるものがますます伸び、格差が拡大する傾向にあり、逆に景気が後退するときは、これまた優勝劣敗が顕著に現われ、格差が拡大するものであります。各業種間の格差解消においては、政府も熱意をもって対処しておりますから、私は特に地域格差の是正と低開発地の開発について政府の考え方を承りたいのであります。

 一般的な経済議論は、生産工業が集中的に発達をしておる大都会は設備投資と公共投資がアンバランスになっておることを指摘し、公共投資の大幅な集中的投入を求めるのであります。その反面、農山漁村、離島、僻地に対する公共投資はこま切れとなり、政治的価値はあっても経済的価値は少ないという人がおります。特に鉄道の新線を建設することは、赤字線の倍増であるとさえ極論する人もあります。しかし、私はこの考えは間違いだと思います。明治から大正にかけて行なわれた国家投資は、そんな近視眼的な経済論によったものではありません。(拍手)民族百年の将来に目をはせて、より合理的な長期投資を行なったところに、わが国今日の発展があるのだと信じます。(拍手)北海道の鉄道は、長いこと赤字続きであります。しかし、この国が行なった長期投資が、今日の隆々たる北海道の発展を招いたのではないでしょうか。(拍手)

 低開発地域はおおむね水力発電府県であります。そして工業用水も豊富であり、天然の良港にも恵まれておるのであります。私は、政府及び世の識者が、目を広く全国各地にはせ、拙速主義を排して、万世に太平を開くの気慨で国土の総合開発を進めたならば、この狭い日本の国土も合理的に開発され、人口も大都会に過度集中することなく、普遍的に定着し、生産工業の基盤もより合理的に強固になると信じます。後進性の高い農山漁村や僻地の開発利用においては、画一的な経済理論で律したり、一般的経済スケールでこの効果を測定すべきではないと存じます。国費を投入したら、明日その収穫を求める、そんな方法で進んでいくと、大都会には全人口の何割かが過度に集中し、その混乱排除は、作るよりもこわす方により大きな力と金が必要となるのであります。(拍手)

 第二次大戦直後より、イギリスがニュー・タウン法を制定して、国力の何割かを投入し、ロンドン市の分散に汗をかいておることを考えれば、一目瞭然たることであります。大東京と大阪は、今にして交通は混乱麻痺の寸前にあります。一大勇気をもって都市改造法の制定を求められておる現状を直視すべきであります。戦後、農山漁村は振興いたしました。しかし、都会にははだしで登校する子供はないが、農山漁村にははだしで登校する子供も少なくはないのであります。都会で子供を使うと、児童福祉法違反となる。しかし、農山漁村の子供は、学校から帰るやいなや仕事に追われるのであります。漁村の十二、三才の男の子は、一人で船をあやつる危険もあえていたしております。それは農山漁村が豊かでないからであります。都会の妻は、小さな部屋の掃除と、そして子供を育てることが大へんだと言います。農山漁村の妻は、大きな家の掃除をし、親や子供のめんどうを見る。しかも出かせぎに出た夫にかわって農耕漁撈をひねもす精を出す。近年都会に流出する子女が多過ぎ、農家の長男に嫁の来手がない。私はそんなことではいけないと存じます。(拍手)小さな産業都市がたくさんできて、夫は家庭から通勤し、勤労の余暇に妻とともに農漁にいそしむ、そんな理想的な姿こそ農山漁村の所得倍増政策でもあり、愛の政治だと存じます。また、農山漁村とは、われら民族九千万余の心のふるさとであります。過ぐる第二次大戦で戦火に焼かれたお互いは、立ち上がるまでの間しばしいずこに安住したのでありましょう。豊かならざる農山漁村からの愛の投資が、戦後十数年間の短い歳月で今日の日本の経済発展を築いたのではないでしょうか。(拍手) 私は、低開発地域の総合開発の推進、新産業都市の建設等は、このような事実の認識の上に立って強力に推進さるべきだと考えます。総理の所信を承りたいのであります。

 第四の質問は、教育についてであります。総理も言われた通り、教育の刷新充実は刻下の急務であります。かつ、国家百年の大問題でもあります。戦後の混乱時代に比べて、近年わが国の教育も年々改善充実を見ておることは喜ばしいことでありますが、青少年犯罪の増加や道義の頽廃を思うとき、教育行政制度、教育内容、大学管理制度、教職員の問題等、抜本的に検討を要する問題が山積をいたしておるのであります。

 特に私が案ずるものは、教育の基本についてであります。感受性の強い、そして感激の多い青少年子女に、たがために学び、働き・生きるのかについてりっぱな基本を定め、教える必要は一体ないのであろうかということであります。あらゆる国において、国に生まれ、国を愛せざる者はありません。その国の歴史を知るとともに、お互い真の姿を見詰めて前進をせねばならぬことは言うをまたないのであります。(拍手)

 祖国とは、民族とは、そして国家とは、自分を生み、そして育てた親と自分との関係、社会に対する自分の権利と責任、公益と私益はいずれが優先するか、愛は自然に体得をしても、社会の、そして人の恩とは何か、義とは、礼とは、幾多のことを学ばずして幼いこれらの青年少女は人生へと巣立つのであります。戦いに敗れた日本人は、戦前の教育のすべてが軍国主義に連なるような錯覚をしておるのではないでしょうか。古きをあたためて新しきを知る。教育はわがためのものではありません。将来の祖国をになう第二の国民のためのものであります。(拍手)彼らが世界のどこに住んでも恥ずかしくない日本人であり得るような教育をせねばならぬのではないでしょうか。(拍手)

 私たちは多くの犠牲を払って苦い経験もし、また、大きなことも学んだのであります。感情や思惑の世界から脱して、新しい日本のあしたのために、教育の刷新向上に勇気ある仕事をしたいと思うのであります。総理及び文部大臣の見解を求めたいのであります。

 第五の私の質問は労働政策についてであります。わが国産業の著しい発展の中にひそんだ一つの病根は、世界に類のない労働争議の過多と社会運動の政治的偏向であります (拍手)春夏秋冬スケジュールを組んで、定期的に争議をあおり立てる闘争主義、そして分配論争に終始して、生産性向上を否定する考え方、政党以上に政治活動に狂奔する組合活動、法秩序を無視して集団暴力をふるう破壊的性格等は、決して正常な労働運動ではないのであります。(拍手)このような異常性格的な労働組合運動を是正し、産業平和を確保することが、わが国経済一そうの発展と民生の向上を可能とする要件と信じます。すでに現行労働関係制度の再検討を望むの声は久しく、政府においても研究を続けておるのでありますが、もはやこの問題を真剣に取り上げるべき時期にきているものと思います。労働大臣の所信を承りたいのであります。

 わが国の歴史は古く、今は遠い明治の初めから百年にわたる教育は、今日の日本人の頭脳を作り上げたのであります。戦後結成せられた各政党も十余年のよわいを数え、相当な成長を遂げました。しかし、悲しいことに、アメリカにおける民主党と共和党のように、また、イギリスにおける保守党と労働党のごとく、内政政策について多少の差はあれ、事その国の民族の運命にかかる外交基調については、その精神と方向において全く同一であるのに比べ、わが自由民主党と社会党の外交路線が全く異なり、ことごとに対立激化の一途をたどっておることは、わが民族の悲劇であります。(拍手)特に、前段申し上げた通り、内政問題についても、全く妥協、協調の余地のない強固な方針を社会党が譲らぬ限り、わが国における民主政治の確立はいまだ道遠しであります。民主政治の発展には、強い忍耐が必要であります。私は、総理が、その昔、病のため長期療養のやむなきとき、西国の霊場をたずねて遍路の旅を続けられたことを知っております。人生の深さ、人の世の苦悩を身をもって体験された総理が、根強い精進と努力で病をいやされたごとく、わが国の民主主義確保の願望達成のため、組閣以来一年有余、耐えがたきを耐えてこられたことに対し、深い感銘を覚えます。わが党もまた、総理・総裁のこの政治に対する基本的態度を党是として今日に至ったのであります。そして、将来もまたこの謙虚な姿勢を続ける覚悟であります。が、しかし、われわれは宗教家ではありません。無制限に社会党の覚醒を待つわけにはいかぬのであります。(拍手)日々刻々前進をし、瞬時といえども停滞を許さない国民に対する政治責任を痛感するとき、社会党の覚醒を促すとともに、他の在野党と協力し、国民の要望にこたえて参らねばなりません。(拍手)

 最後に申し上げたい第一は、国防の第一線にある自衛官についてであります。世界のいずこの国においても、自国の安全保障のための国防について熱意と自覚のないものはないのであります。(拍手)左翼主義者たちは、何のための国防かと、冷たい目で見、激しくこれを非難する。しかし、戦後の教育に育った幾多の若人たちは、肩身の狭い思いをしながらも、黙々として激しい修練に寧日ないのであります。私はあえて言う。全国民は、この日本のたくましく発展した経済も、豊かな私たちの生活も、国の守りについておるこれら自衛官諸君のおかげであることを銘記しなければならぬのであります。(拍手)そして、彼らの真摯な態度に心からなる感謝をささぐべきであります。(拍手)

 その第二は、警察官に対してであります。戦後、警察官に対する風当たりは強い。私は、国民の一部が過去の悪い思い出のみに注目し、警察官の真の任務を理解せず、真に彼らの精神と努力と犠牲においてわれわれの生活が保たれておることに目をおおう態度を、強く非難したいのであります。(拍手)のみならず、警察官のたゆまない職務の遂行によって、今日のわが国の民主主義と民主政治が育ってきたことを知るべきであります。

 第三は、水防と消防職員についてであります。私は、恵まれない環境と制度の中で、不時の災禍に身を挺してわれわれの日常を守って下さるこれらの方々に、心から感謝をしたいと存じます。(拍手)

 政治も行政も、より高い立場で、新しい角度から、また、新しい視野に立って論じ行なわるべきであり、責任の地位にあるわれわれの不明によって、正しいこれらの人々の一人でもが日陰に置かれるようなことは許されないと思うのであります。(拍手)総理の所信を承りたいのであります。われわれの生命は短い。しかし、わが民族の将来は悠久であります。(拍手)池田内閣は、わが国の歴史に輝かしい一ページを加えるために、高い理想と、たくましい実行をもってその責めを尽くし、国民の信にこたえるよう心から期待し、健闘を祈って、私の質問を終わります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第41回国会衆議院本会議第4号(1962/08/11、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 お答えいたします。三点につきまして、予備費を使わなければならないような事態があるにもかかわらず、予備費で使うような考えを持っておって、補正予算を提出しないと言っておるが、一体どうかという問題でありますから、この三点に対して具体的にお答えを申し上げたいと存じます。

 第一点は、高校生急増対策についてでございますが、政府は、御承知の通り、三十六年から四十年にかけて、高校生急増対策の所要資金を試算いたしまして、工業高校の施設設備に対する補助金、地方交付税法の改正、起債の措置等で行なっておりまして、予備費から支出する予定は、今のところ全然考えておりません。

 それから第二点目の商店街組合につきましては、御承知の通り、との組合は経済事業団体でありますので、経費補助の前例もありませんし、また補正予算または予備費で支出をするという考えは現在のところ持っておりません。しかし、組合共同施設につきましては法律が成立をしておるのでありますし、三十七年度予算で御承知の通り現行中小企業協同組合等共同施設補助金のワクが三億ございますので、これが対象に適切なものがありましたならば、適切にこの予算の中で処置をして参りたいという考えを現在持っておるわけでございます。

 第三点の、昨日行なわれました人事院勧告につきまして申し上げますと、労働大臣が御答弁いたしました通り、この内容は膨大であり、非常に複雑な勧告が行なわれております。この勧告について、昨日から各省の間で慎重に検討いたしておるわけでありまして、今日直ちにこの段階において、補正予算を組んで処置しなければならないというような時期に立ち至っておらないことを御承知いただきたいと存じます。

 それから第四点は、昨年の景気調整策をとっておった当時の中小企業金融についてのお話でございますが、この問題につきましては、御承知の通り、景気調整策を行なう過程において、中小企業に金融面において特にしわ寄せが起こることは過去の事例でございます。昨年これが施策遂行にあたっては、十分この点を留意いたしまして、いやしくも中小企業にしわ寄せが起こらないことにつきまして万全の処置をいたしたわけでございます。金融機関の協力、財政資金の放出等、弾力的な処置をとりましたために、現在貸出総額の四二%を中小企業が占めておるというように、過去の例に比べて順調な資金処置がとられておるわけでございます。

 それから日銀法及び金融関係法等につきまして申し上げますと、この諸法規は、御承知の通り、戦後の混乱期、非常に特殊な状態で作られた諸法規、諸制度が非常に多いので、現在の複雑多岐にわたる金融面に対して妥当を欠く個条があるかないか、慎重に、かつ、十分に調査をする必要がございます。御承知の通り、金融正常化をはかるために、日銀法等を含めて、金融関係法その他につきまして、金融制度審議会において現在調査検討中でございますので、これが調査と相待ちまして、慎重かつ適切に対処いたして参りたい、こう考えるわけでございます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第41回国会衆議院本会議第5号(1962/08/14、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 産業投資特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を申し述べます。御承知の通り、政府は、前国会におきまして、いわゆるガリオア・エロア等の戦後の経済援助の最終的処理をはかるため、日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定を提出し、国会の議決を得ており、また、この協定に基づいて政府が本年度中に支払らべき第一回の賦払い金にかかる予算につきましても、昭和三十七年度産業投資特別会計予算において御承認をいただいております。さらに産業投資特別会計の本年度における投資の財源の一部に充てるため、一般会計から二百三十億円をこの会計に繰り入れることについても、予算上は御承認をいただいているところであります。

 本法律案は、この二点につきまして、産業投資特別会計法を整備するために所要の改正を行なうことを目的とした法律案でございます。すなわち、第一に、日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定に基づく債務は、米国対日援助見返資金特別会計廃止の際、その資産を承継した産業投資特別会計の負担とするとともに、この債務の元金四億九千万ドルに相当する円の金額千七百六十四億円を資本から債務に振りかえる等の措置を行ない、また、この債務の元利金の支払いをこの会計の歳出とする等所要の改正をいたしておるのであります。

 第二に、本年度の産業投資特別会計予算におきましては、日本輸出入銀行、農林漁業金融公庫、日本住宅公団、住宅金融公庫、商工組合中央金庫等に対する投資需要を充足するために、総額五百三十二億円の投資を行なうこととなっておりますが、この投資の確保をはかりますためには、その財源の一部は一般会計から補充する必要があり、本年度の一般会計予算では二百三十億円の産業投資特別会計への繰り入れが計上されておるのであります。よって、本法律案は昭和三十七年度において、産業投資特別会計の投資の財源の一部に充てるため、二百三十億円を限り、一般会計からこの会計に繰り入れることができるよう所要の改正を加えることといたしておるのであります。以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
 佐藤さんの御質問中、総理大臣よりお答え申し上げました部分を除いた四点に対してお答えを申し上げたいと存じます。第一点は、一般会計より繰り入れのある産投会計よりガリオア・エロアの返済をすることは二重払いにならないかというお話でございますが、二百三十億円を一般会計から繰り入れますのは、ガリオア等の債務の返済の財源として繰り入れるのではございませんで、今年度における輸銀、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫等に対する投資計画五百三十二億円の財源の一部に充てるために繰り入れるのでありまして、ガリオア等の債務は対日援助見返資金関係の資産の収入で十分返済できるのでありますから、二重払い論は起きないわけでございます。

 第二は、補正予算との関係でありますが、ガリオア返済のための支払い予算は、御承知の通り、今年度分におきましてはすでに産業投資特別会計予算において国会の御承認を得ておるのでありまして、補正予算を計上する必要はないわけであります。ただし、人事院勧告の実施のために、あわせて補正予算を組んだらどうかというお話でございますが、人事院勧告につきましては、他の特別職員の問題、地方公務員の給与、公務員全般に関する問題もあり、なおかつ、この勧告は非常に広範にわたっておりますので、これを今精査、検討いたしておりまして、現在この国会に補正予算を提出するような考えは持っておらないわけでございます。

 第三点は、外貨の内訳について知らせるようにというお話でございます。外貨準備高は、本年一月以降、御承知の通り、漸次増加の一途をたどりまして、七月末現在は、十六億三千五百万ドルに達しております。しかも、最近、国際収支が漸次好転をしておりまして、米国市中銀行からの借り入れ三億二千五百万ドルもあったわけでございますが、国際収支の見通しにつきましては、最近の信用状の動向等から見ましても、今後とも均衡を維持して参れるものと思われます。なお、外貨準備につきましても、その内容は十分流動性を確保しておりまして、今後の借款の返済等につきましては、金繰り上も支障は全然ないと考えております。七月末現在の外貨の内訳、すなわち十六億三千五百万ドルの内訳は、金が二億八千九百万ドル、外貨が十三億四千六百万ドルであり、うち、預金が七億五千九百万ドル、合わせて十六億三千五百万ドルでございます。

 第四点は、四億九千万ドル支払いとわが国外貨との関係について御質問がございましたが、ガリオア等対日援助につきまして、政府は、従来からこれを債務と心得ておるのでありまして、先ほど総理が申された通り、債務負担の能力も増大をいたしましたので、この機会に解決を妥当と考え、先般協定を締結いたしたわけでございます。ガリオア等債務の支払い手段につきましては、円貨による支払い分等をできるだけ多くするように米側と折衝したのでありますが、債務額、支払い期間等を総合的に判断をしまして、御承知の通り、四億九千万ドル、十五カ年といたしたわけでございます。第一回及び第二回賦払い金は、おのおの九百四十五万ドル、第三回分以降二十四回賦払い分まで各二千百九十五万ドルずつであります。その後の六回は、各八百七十万ドルずっとなっておりまして、しかも十五年間の分割賦払いでありますので、わが国の外貨事情にさして重大な影響を持たずして支払い得るものと考えておるわけであります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第42回国会衆議院本会議第2号(1962/12/10、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 石炭対策のうち、産炭地における中小企業者の問題について、私に関する部分だけお答えを申し上げたいと存じます。産炭地における中小企業につきましては、三つぐらいに問題が分類せらるるわけであります。その一つは、売掛金についてであります。売掛金を直接何とかしてやるということは、なかなかむずかしい問題でありますので、税法上の準備金制度の活用をはかって参りまして、中小企業の税負担の軽減等の具体的措置を考えていくということが第一点でございます。それから、第二は、中小企業がその地域で事業を遂行していこうという場合の事業資金の問題でございます。これらの問題につきましては、政府関係金融機関等から特別の配慮を行なうことを考慮いたしておるわけでございます。
 第三点といたしましては、炭鉱の休閉山等によって、他に移転もしくは転業をしなければならない方々の資金確保についてでありますが、国民金融公庫に特別のワクをつくる等、特別の配慮をいたして参るつもりでございます。(拍手)
 お答えいたします。中小企業の年末金融の問題につきましては、御質問の通り、政府も重大な関心を持ち、これが円滑化に鋭意努力を払っておるわけでございます。先ほど通商産業大臣がお答えを申し上げました通り、年末金融の具体的なものといたしましては、中小企業三機関に対しての政府融資と買いオペレーション百五十億を含めて、四百億の手当を行なっております。それに加え、市中金融機関も五千億になんなんとする年末中小企業対策を考えておりますので、この状態では、金融の環境好転もありまして、無事越年できるという見通しに立っておるわけでございます。しかし、現実の問題に対しては十分注視をして、配意をし、遺憾なきを期して参るつもりでございます。なお、中小企業の第四・四半期の問題につきましては、通産大臣が申し述べられました通り、必要に応じて所要の処置を行なう考えでございます。

 それから金利の傾向についての御質問がございましたが、御承知の通り、十月、十一月にわたって公定歩合の引き下げもございましたし、なお金融情勢も自然に好転をいたしておりますので、金利も漸次低下の傾向にあって、中小企業の金利負担も、御承知の通り下がっておることは事実でございます。それから、日銀による買いオペレーションの対象として、相互銀行及び信用金庫を考えてはどうかという御質問でございますが、対象に加えるべく、その方針でございます。相互銀行及び信用金庫も買いオペの対象にいたす方針でございます。それから、市中銀行が大企業向けに融資をする場合、下請に直接金が行き渡るように配慮しておるかということでありますが、御承知の通り、再三通達も出し、これが融資にあたりましては、金融機関の協力を得て、これが下請企業まで行き渡るような処置をいたしております。(拍手)
 産炭地の振興の問題につきましては、今総理大臣から詳しくお述べになりましたので、私からはお答えをしないことにしたいと思います。それから補正予算の問題につきましては、いろいろお話がございましたが、人事院勧告に伴う公務員の給与ベースの改定及び予算編成後に生じました緊急のものにつきまして、所要の予算措置を行なったのでございまして、残余の問題につきましては、今伊藤さんが言われたいろいろな不況産業対策その他につきましては、これからの租税収入の状況を見まして、財源確保がはかれるような状態になってから考えて参りたいというふうに考えておるわけでございます。(「第二次補正をやるのかやらぬのか」と呼ぶ者あり)第二次補正をやるかやらぬかは、ただいま申し上げましたように、財源の確保によって考えて参る予定でございます。

 田中角栄の国会発言を確認する。「第42回国会衆議院本会議第3号(1962/12/12、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 給与改定の予算化に際し人事院勧告をどのように考えたかという、第一問につきまして申し上げますと、勧告を尊重することを基本といたしたわけであります。初任給の引き上げ、俸給表の改定、それから期末勤勉手当の増額と支給の合理化というような問題に対して、必要な財源措置をいたしたわけであります。また、その第二の、実施時期を十月一日といたした理由につきましては、公務員給与改定問題は広く国民経済全般の情勢を考慮して決定をする必要があります。特に、国、地方を通じまして多額の財政支出を必要とすることでありますので、諸般の問題を検討して十月一日といたしたわけであります。十月一日という問題につきましては、これでもなお、ある府県市町村においては、一切の単独事業を廃止しなければ財源確保ができないというような事情もあることを、つけ加えて申し上げたいのであります。

 第二の問題といたしまして、地方公務員給与改定は国家公務員に準ずべしという御議論でありますが、この原則的な問題に対しては、私もその通り考えておるわけであります。国の公務員の問題については、予算措置は直接国が行なうのでありますが、地方公務員に対してのその建前は、御承知の通り、地方が財政全体の問題を勘案しつつ、独自の立場できめることになっておることは御承知の通りであります。地方公務員も国家公務員に準ずべしという基本に立ちまして考えますときに、地方税増収の状況、交付税増額の状況等考えますと、今般の分については、それらによって十分まかない得るものと考えておるわけであります。しかし、残余の問題その他については、自治大臣とも閣内において十分調整して、遺憾なきを期して参りたいという考えでございます。(拍手)
 御質問中、私に関する三点についてお答えを申し上げます。第一点は、一般金融ベースに乗らない炭鉱のために、石炭鉱業合理化事業団より直接融資をしたらどうかということでございますが、御承知の通り、政府は相当多額の財政資金の支出をいたしております。三十七年度融資の予定としては、設備資金として開発銀行から百二十五億円、合理化事業団より近代化資金として三十一億円、政府資金として百億円、中小企業金融公庫及び商中の二十億円、合計二百七十六億円の措置をいたしておりますし、特に市中金融とも相待ちまして、相当手広い万全の資金調達を考えておりますので、これ以上新しい制度を考える必要はないというふうに現在考えております。 

 第二点の重油消費税の創設についででありますが、単に財源措置としてのみ考慮すべきではなく、石炭対策の面からも検討すべきであるというお説でございまして、まさにその通りであります。同税創設の可否につきまして現在検討中でありまして、明三十八年度予算決定に際して、当然本件もそれまでに可及的すみやかに結論を出す予定でございます。 第三点目は、石炭調査団の答申の中に既往債務のたな上げということがありますし、特に経理の抑制、監督の問題は一体どうしたのかということでありますが、御承知の十一月二十九日の閣議決定石炭対策大綱という中に、既往債務の返済猶予と会社経理の規制及び監督ということをきめておるわけでございます。既往債務につきましては、経理状況が非常に悪い会社でありまして、その再建が特に必要である場合には、石炭鉱業審議会に諮問した上、やむを得ないと認めるときには、既往債務の返済条件の変更等につきまして、関係機関にあっせんを行なう等の処置を考えておるわけでございます。それから、第二点目の会社経理の規制及び監督についてでありますが、本件については、臨時立法措置をとりまして、財政資金を一定額以上借り入れておる企業に対して、利益金処分の制限、経理監査、利用計画及び資金計画に対する改善勧告等、所要の規制を行なうようにいたしておるわけであります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第2号(1963/01/23、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 わが国は、今や、国際経済社会の有力なる一員として、貿易立国の精神に徹しつつ、強力に自由化を推進するとともに、健全にして均衡のとれた成長のための基盤を一段と強化すべき新たな年を迎えたのであります。私は、この年の課題にこたえるための努力の焦点を一つにしぼれば、それは輸出力の増大であると信じております。(拍手) すなわち、貿易・為替の自由化は、諸国間の輸出入の拡大を通じて、国際分業の利益をもたらすものであり、さらに、わが国にとりましては、諸外国の差別的な対日輸入制限の撤廃を促進し、輸出市場を拡大するために不可欠な手段となるものでありますが、反面、輪出力の増大を伴わずして自由化を進める場合におきましては、輸入の一方的な増加から国際収支の均衡を失することになるのでありまして、輸出力の増大こそ自由化の実現に欠くことができない前提であります。(拍手)また、わが国経済の健全にして均衡ある成長を達成するためには、輸出力を増大して、経済規模の拡大に伴い必要な資源の輸入余力を増強することが絶対に必要であることは、特に論を待たないところであります。

 今回提出いたしました昭和三十八年度予算も、このような心がまえをもって編成せられたものでありますが、その際、私が最も意を用いた諸点は、次の通りであります。第一に、社会資本の充実、産業基盤の強化であります。わが国経済が、対外競争力を強化し、輸出力を増大し、自由化に邁進するためにも、また、日本経済の安定成長を実現するためにも、民間資本の拡充に即応して社会資本を格段に充実し、産業基盤を一そう強化し、国民経済全体として、近代的、合理的な国づくりを行なわねばならないことを痛感いたしたわけであります。(拍手)

 第二に、国内産業の体制整備であります。わが国産業の輸出力は、近年における飛躍的な経済発展を経て、大幅に強化せられたとはいえ、貿易の自由化を一段と推進して参るにあたりましては、世界的な視野に立って、産業構造の高度化、企業体質の改善等を急速に進めるとともに、必要に応じましては、雇用と資本の転換を促進し、さらに、過当競争を排除する等、産業体制を整備することがきわめて緊要であります。また、このことは、全体として、生産性を高め、資源の合理的な利用を進め、もって日本経済の健全な成長を促進することとなるのであります。(拍手)

 第三に、文教、社会保障等の重要施策であります。文教には文教としての、社会保障には社会保障としての本来の使命があり、意義があることはもとよりでありますが、同時に、人つくりの持つ経済的な役割が急速に増大しつつあることも事実であります。経済の健全にして均衡のとれた成長のためには、そのにない手たる国民の能力の開発活用に努めるとともに、成長の成果を広く各階層に及ぼすことが必要であるとかたく信ずるものであります。(拍手)このことは、国際的な経済交流の一そうの活発化にあたり、国際競争力を充実し、輸出力を増大するためにも、また同様に必要な事柄であります。

 今回提出いたしました昭和三十八年度予算について、項目別にその概要を申し述べます。まず、社会資本の充実のための公共投資の拡大であります。道路整備につきましては、最近における道路交通の実情にかんがみ、一般財源の投入を大幅に増額したほか、財政投融資計画におきましても、前年度に対し七割近い増額を行ない、中央、地方を通ずる道路網の整備を促進することとなし、特に、大都市及びその周辺の道路に重点を置くことといたしました。また、港湾につきましても、輸出の振興と地方開発に重点を置いて五カ年計画を促進するとともに、国有鉄道、電信電話施設の計画的拡充のため、必要な資金措置を講ずることといたしました。

 さらに、農業基盤の整備につきましても一そうの充実に努め、また、産業用地、用水の確保をはかるため、一般会計及び財政投融資を通じ、所要の措置を講じております。治山治水対策につきましては、既定の五カ年計画を特に推進するため必要な予算を計上し、災害復旧の進捗と相待って、国土の保全に万全を期することといたしました。以上、公共事業関係費の総額は、災害復旧関係費を除き、四千五百六十四億円に達し、昭和三十七年度当初予算に対し、七百七十八億円の増加となります。なお、公共事業の円滑な遂行をはかるため、特定公共事業に関する譲渡所得に対する課税を大幅に減免する措置を講ずることといたしております。

 文教施策の飛躍的な拡充をはかり、科学技術を振興して、現下の要請にこたえることは、政府として最も意を用いているところであります。これがため、道徳教育の充実、教育水準の質量両面における向上と教育環境の改善、小中学校の学級編成及び教職員定数の適正化と施設の整備をさらに推進するとともに、高等学校生徒の急増に備えての校舎の一そうの整備につき、所要の資金措置を講ずることといたしております。また、前年度に引き続き、国立高等専門学校を創設、整備するとともに、大学、高校における理工系の学生、生徒の増募、施設等の充実をはかり、産業の発展に伴う技術者の確保に遺憾なきを期しておるのであります。さらに、現下の科学技術の動向にかんがみ、各省研究機関の研究体制の強化、国産新技術の開発、原子力、防災科学等の重要研究を推進して、科学技術の一段の向上を期することといたしております。

 育英奨学、低所得者子弟の就学援助等、教育の機会均等を確保するための施策、勤労青少年教育のための方策につきましても特段の配慮を加えましたほか、義務教育教科書の無償措置を拡大するとともに、新たに、小中学校の全学童を対象とするミルク給食について、財政負担の措置を講ずることといたしました。以上、文教及び科学振興費の総額は、三千七百十七億円となり、昭和三十七年度当初予算に対し、六百三十四億円の増加となっておるのであります。(拍手)

 次に、社会保障及び社会福祉関係であります。わが国の社会保障制度は、戦後、目ざましい発展を遂げたのでありますが、昭和三十八年度予算におきましては、社会保障関係諸施策の画期的な拡充改善をはかることといたしました。すなわち、重ねて、生活保護基準の大幅な引き上げを行ない、児童保護及び老人福祉を中心に社会福祉費を増額するとともに、国民健康保険の世帯主七割給付、低所得者の保険料の軽減を新たに実施するほか、医療費の地域差を撤廃する等、医療保障の改善をはかることといたしたわけであります。また、国民年金におきましては、福祉年金につき所要の改善措置を講ずることといたしております。

 さらに、雇用対策の面におきましては、産業構造の変革に即応して、労働力移動の円滑化をはかるための諸措置を一そう拡充強化し、失業対策事業の刷新改善をはかるとともに、失業保険につきましても、給付日額の引き上げ等、給付内容の改善措置を講ずることといたしました。

 以上、社会保障関係費の総額は、三千六百七十九億円となり、昭和三十七年度当初予算に対し、六百七十六億円の増加を示しておるのであります。

 このほか、なお、環境衛生施設の整備につき、新たに五カ年計画を策定して、その計画的促進をはかるほか、住宅対策につきましても所要の改善措置を講ずることにいたしておるのであります。

 輸出力の増大は、申すまでもなく、国の総力をあげての経済の合理化、近代化によって達成さるべきものでありますが、貿易振興及び経済協力推進のための直接の措置といたしましては、引き続き、海外市場調査、国際見本市、技術協力等の事業を拡充強化するとともに、日本輸出入銀行に対し多額の財政資金を投入し、もって輸出の増進に資することにいたしたのであります。

 農林漁業の振興につきましては、成長農産物の選択的拡大、農林漁業の近代化、合理化と、生産基盤の強化をさらに促進し、経営の安定、向上を期するほか、農林水産物の価格安定対策につきましても特に意を用いたのでございます。

 また、農林金融につきましては、農業近代化資金の融資ワクを拡大するとともに、農林漁業経営構造改善資金融通制度を設けて、農林漁業金融公庫の資金の飛躍的な充実をはかり、特に、長期、低利の資金を確保する方途を講ずることにいたしたのであります。(拍手)

 中小企業につきましては、その基本的対策を確立するとともに、経営の安定強化に資するよう、従来からの諸施策の拡充強化に加え、新たに団地化、協業化を推進するための中小企業高度化資金融通特別会計を設置するほか、中小企業投資育成株式会社を新設して、自己資本の充実に資するとともに、税制面においても、これらの施策に即応して、中小企業者の設備等に関する割増償却制度の新設等を行なうことにいたしております。(拍手)

 また、中小企業金融対策といたしましては、中小企業信用保険公庫において、設備の近代化をはかるための新種保険を創設するほか、融資基金に充てるため、出資を増額するとともに、財政投融資において、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等の貸付ワクの拡大に必要な資金措置を講じ、民間資金の協力と相待って、中小企業金融の拡充、円滑化に資することといたしております。

 特定の産業に対する対策といたしましては、まず、石炭鉱業の安定強化が、エネルギー及び雇用対策の両面から見て、今日きわめて重要であります。昭和三十八年度におきましては、原油及び重油の関税率を引き上げることとなし、これによる関税収入の増加額を勘案しつつ、石炭鉱業の近代化、合理化、産炭地域の振興、炭鉱離職者対策等を一そう強力に推進するほか、新たに、鉱害処理の促進をはかるための鉱害賠償基金、電力用炭の引き取り確保のための電力用炭代金精算株式会社を創設することとなし、百八十億円を計上いたしております。また、財政投融資計画におきましても、日本開発銀行、石炭鉱業合理化事業団、産炭地域振興事業団の事業遂行に支障を生ずることのないよう、所要の資金措置を講ずることといたしております。

 また、海運業につきましては、合併等の集約化を行ない。自立態勢を整える企業に対し、既往の借入金の利払いを猶予することとし、業界の再編、合理化を推進するとともに、新造船に対する利子補給率の引き上げ等を行ない、国際競争力の強化をはかることといたしております。

 さらに、新たに、自由化に備える対策として、非鉄金属鉱業について金属鉱物探鉱融資事業団を設置し、また、日本開発銀行の融資対象においても特別の考慮を払うほか、重電機器や工作機械についても、外国製品の有利な延べ払い条件を利用した進出に対処するための措置を講ずる等、格段の意を用いております。(拍手)

 地方財政の内容は、幸いにして、近年著しく改善されつつありますが、昭和三十八年度においては、電気ガス税の負担の軽減をはかり、他方、市町村たばこ消費税の税率を引き上げ、地方財源の拡充をはかることといたしました。そのほか、地方交付税及び地方税の大幅な増収、地方団体の起債ワク拡大等により、地方の行政内容、住民福祉は、引き続き向上するものと期待される次第であります。(拍手)なお、地方団体におきましても、経費使用の合理化をはかり、財政の健全化の努力を続けられるよう希望するものであります。

 わが国の税負担は、相次いで行なわれた税制改正の結果、相当合理化されて参りましたが、わが国の社会経済の著しい進展に即応するため、現在、税制調査会において、租税制度の基本的検討を行なっているところであります。

 しかし、来年度におきましても、国民生活の安定に資するため、一般的な負担の軽減をはかること、及び現下の経済情勢に顧み、当面の産業及び金融政策上の要請に対応する税制上の措置を講ずることの二点を主眼として、平年度五百四十億円程度の減税を行なうことといたしました。すなわち、中小所得者の負担の軽減をはかるため、所得税の課税最低限を引き上げ、中小法人の留保所得課税を軽減するとともに、資本蓄積の促進、社会資本の充実、産業体制の整備、中小企業設備の近代化等のための税制上の措置を講ずることといたしたのでございます。

 財政投融資につきましては、以上、それぞれの項目においても触れたところでございますが、計画の策定にあたりましては、住宅、上下水道を初めとする生活環境施設の整備、及び道路、国鉄等の公共投資の拡充強化に重点を置くほか、輸出の振興と国内産業の整備合理化に努めるとともに、引き続き、中小企業金融の円滑化、農林漁業の振興に特に配慮いたしておるのであります。(拍手)

 以上、昭和三十八年度における財政の重点項目について、その概要を御説明いたしたのでございますが、一般会計予算の総額は、歳入、歳出とも二兆八千五百億円でありまして、昭和三十七年度当初予算に対し、四千二百三十二億円、すでに成立いたしました補正予算を加えた予算額に対しましては、三千六百九十億円の増加となっておるのでございます。また、財政投融資計画の総額は、外貨債等を含み、一兆一千九十七億円でありまして、昭和三十七年度当初計画に対し、二千四十五億円、改定計画に対しては、一千四百三十九億円の増加となっておるのであります。

 このように、昭和三十八年度予算及び財政投融資計画は、時代の要請と現下の経済情勢に即応して、昭和三十七年度に比し、一段とその規模を拡大しておりますが、通貨価値の安定と国際収支の均衡維持の配慮のもとに、健全均衡財政の方針は引き続き堅持せられているのでありまして、財政投融資における政府資金、民間資金を通ずる積極的な活用とも相待って、デフレの脅威もインフレの不安もない正常な経済の発展に大きく貢献すると信ずるものであります。(拍手)

 なお、この際、昭和三十七年度補正予算第二号について一言申し述べます。公務員の給与改善、石炭対策、過年災害の復旧等につきましては、さきに、補正予算第一号をもって対処したのでありますが、さらに、産業投資特別会計の資金の充実、義務的経費の不足補てん、地方交付税交付金の増額等を内容の財政資金を投入し、もって輸出の増進に資することにいたしたのであります。

 農林漁業の振興につきましては、成長農産物の選択的拡大、農林漁業の近代化、合理化と、生産基盤の強化をさらに促進し、経営の安定、向上を期するほか、農林水産物の価格安定対策につきましても特に意を用いたのでございます。

 また、農林金融につきましては、農業近代化資金の融資ワクを拡大するとともに、農林漁業経営構造改善資金融通制度を設けて、農林漁業金融公庫の資金の飛躍的な充実をはかり、特に、長期、低利の資金を確保する方途を講ずることにいたしたのであります。(拍手)

 中小企業につきましては、その基本的対策を確立するとともに、経営の安定強化に資するよう、従来からの諸施策の拡充強化に加え、新たに団地化、協業化を推進するための中小企業高度化資金融通特別会計を設置するほか、中小企業投資育成株式会社を新設して、自己資本の充実に資するとともに、税制面においても、これらの施策に即応して、中小企業者の設備等に関する割増償却制度の新設等を行なうことにいたしております。(拍手)

 また、中小企業金融対策といたしましては、中小企業信用保険公庫において、設備の近代化をはかるための新種保険を創設するほか、融資基金に充てるため、出資を増額するとともに、財政投融資において、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等の貸付ワクの拡大に必要な資金措置を講じ、民間資金の協力と相待って、中小企業金融の拡充、円滑化に資することといたしております。

 特定の産業に対する対策といたしましては、まず、石炭鉱業の安定強化が、エネルギー及び雇用対策の両面から見て、今日きわめて重要であります。昭和三十八年度におきましては、原油及び重油の関税率を引き上げることとなし、これによる関税収入の増加額を勘案しつつ、石炭鉱業の近代化、合理化、産炭地域の振興、炭鉱離職者対策等を一そう強力に推進するほか、新たに、鉱害処理の促進をはかるための鉱害賠償基金、電力用炭の引き取り確保のための電力用炭代金精算株式会社を創設することとなし、百八十億円を計上いたしております。また、財政投融資計画におきましても、日本開発銀行、石炭鉱業合理化事業団、産炭地域振興事業団の事業遂行に支障を生ずることのないよう、所要の資金措置を講ずることといたしております。

 また、海運業につきましては、合併等の集約化を行ない。自立態勢を整える企業に対し、既往の借入金の利払いを猶予することとし、業界の再編、合理化を推進するとともに、新造船に対する利子補給率の引き上げ等を行ない、国際競争力の強化をはかることといたしております。

 さらに、新たに、自由化に備える対策として、非鉄金属鉱業について金属鉱物探鉱融資事業団を設置し、また、日本開発銀行の融資対象においても特別の考慮を払うほか、重電機器や工作機械についても、外国製品の有利な延べ払い条件を利用した進出に対処するための措置を講ずる等、格段の意を用いております。(拍手)

 地方財政の内容は、幸いにして、近年著しく改善されつつありますが、昭和三十八年度においては、電気ガス税の負担の軽減をはかり、他方、市町村たばこ消費税の税率を引き上げ、地方財源の拡充をはかることといたしました。そのほか、地方交付税及び地方税の大幅な増収、地方団体の起債ワク拡大等により、地方の行政内容、住民福祉は、引き続き向上するものと期待される次第であります。(拍手)なお、地方団体におきましても、経費使用の合理化をはかり、財政の健全化の努力を続けられるよう希望するものであります。

 わが国の税負担は、相次いで行なわれた税制改正の結果、相当合理化されて参りましたが、わが国の社会経済の著しい進展に即応するため、現在、税制調査会において、租税制度の基本的検討を行なっているところであります。

 しかし、来年度におきましても、国民生活の安定に資するため、一般的な負担の軽減をはかること、及び現下の経済情勢に顧み、当面の産業及び金融政策上の要請に対応する税制上の措置を講ずることの二点を主眼として、平年度五百四十億円程度の減税を行なうことといたしました。すなわち、中小所得者の負担の軽減をはかるため、所得税の課税最低限を引き上げ、中小法人の留保所得課税を軽減するとともに、資本蓄積の促進、社会資本の充実、産業体制の整備、中小企業設備の近代化等のための税制上の措置を講ずることといたしたのでございます。

 財政投融資につきましては、以上、それぞれの項目においても触れたところでございますが、計画の策定にあたりましては、住宅、上下水道を初めとする生活環境施設の整備、及び道路、国鉄等の公共投資の拡充強化に重点を置くほか、輸出の振興と国内産業の整備合理化に努めるとともに、引き続き、中小企業金融の円滑化、農林漁業の振興に特に配慮いたしておるのであります。(拍手)

 以上、昭和三十八年度における財政の重点項目について、その概要を御説明いたしたのでございますが、一般会計予算の総額は、歳入、歳出とも二兆八千五百億円でありまして、昭和三十七年度当初予算に対し、四千二百三十二億円、すでに成立いたしました補正予算を加えた予算額に対しましては、三千六百九十億円の増加となっておるのでございます。また、財政投融資計画の総額は、外貨債等を含み、一兆一千九十七億円でありまして、昭和三十七年度当初計画に対し、二千四十五億円、改定計画に対しては、一千四百三十九億円の増加となっておるのであります。

 このように、昭和三十八年度予算及び財政投融資計画は、時代の要請と現下の経済情勢に即応して、昭和三十七年度に比し、一段とその規模を拡大しておりますが、通貨価値の安定と国際収支の均衡維持の配慮のもとに、健全均衡財政の方針は引き続き堅持せられているのでありまして、財政投融資における政府資金、民間資金を通ずる積極的な活用とも相待って、デフレの脅威もインフレの不安もない正常な経済の発展に大きく貢献すると信ずるものであります。(拍手)

 なお、この際、昭和三十七年度補正予算第二号について一言申し述べます。公務員の給与改善、石炭対策、過年災害の復旧等につきましては、さきに、補正予算第一号をもって対処したのでありますが、さらに、産業投資特別会計の資金の充実、義務的経費の不足補てん、地方交付税交付金の増額等を内容 国民各位におかれましても、政府の意のあるところを了とせられ、あらゆる理解と協力を寄せられんことを切望してやみません。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第3号(1963/01/25、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 経済及び予算の問題については総理大臣からお答えがありましたので、残余の問題については予算委員会でお答えをすることにし、特に御要求がありました石炭問題のうち、融資困難な事情にある炭鉱に対する御質問に対してお答えをいたします。政府といたしましては、将来有望ではありますが、当面市中その他からの設備資金等の調達に困難を来たしておる炭鉱につきましては、実情に応じまして開銀等より融資を行なうことにいたしたいと考えております。〔「前の話と違う」と呼び、その他発言する者多し〕
 先ほどの御質問のうち、炭鉱の融資困難な事情にあるものに対する特別融資制度の問題についてお答えをいたしましたが、もう一言つけ加えて申し上げます。増強、維持、並びにボーダー・ラインにある炭鉱を強化育成するため、特別の融資制度を設けることにいたしております。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第5号(1963/02/05、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 私に対する御質問は、農林関係予算と総予算との比率が、三十七年より三十八年は下がったじゃないかという御質問でございます。御説の通り、食管特別会計繰入金が百七十五億円ありますし、災害復旧事業費の高潮を含めた減が四十八億円ありますので、農林関係予算の予算総ワクに占める割合は若干下がっておりますが、これらの特殊経費を除けば、農林関係予算の三十六年当初に対する三十七年の伸び率は、御承知の通り一六%アップであったものが、三十八年度予算におきましては、三十七年当初に対し一九・二%のアップになっておるわけであります。なお、財政計画は、三十七年度に比して二八・一%の大幅の伸びを示しております。特に三十七年事業に着工いたしました農業改善事業費は、予算額で四十三億円から七十九億円と、大幅の増額をしておりますし、それから三十六年度創設いたしました農業近代化資金の融資ワクを五百億から五百二十億に、農業近代化助成促進費の予算額は、六十七億円から百二十六億円に増額をいたしてございます。新たに長期低利資金融通の円滑化のために、農林漁業金融公庫に農林漁業経営構造改善資金融通制度も設置をいたしたわけでございます。先ほどの御質問にもありましたが、私は、米どころ新潟県人であるだけではなく、財政責任者としても、農業基本法を尊重することはもちろん、農林漁業振興発展を期することに格別の熱意を持っておることを申し添えます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第7号(1963/02/08、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。政府は、今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度を確立するため、昨年八月税制調査会を設けまして、鋭意検討を加えて参りましたが、昨年末同調査会から、最近における社会、経済情勢の変化に応じて、現行税制につき、さしあたって改正を必要とする事項について、昭和三十八年度の税制改正に関する臨時答申を得たのであります。

 その後、政府におきまして同答申を中心に、さらに検討を重ねた結果、昭和三十八年度におきましては、中小所得者の負担の軽減をはかるとともに、当面要請される資本蓄積の促進、社会資本の充実、中小企業の振興等に資するため、国税において平年度五百四十億円程度の減税を行なうことといたしたのであります。これらの税制改正諸法案のうち、今回ここに所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。

 まず、所得税法の一部を改正する法律案についてその大要を申し上げます。第一は、中小所得者を中心とする所得税負担の軽減をはかることであります。すなわち、基礎控除を現在の十万円から十一万円に、配偶者控除を現在の十万円から十万五千円にそれぞれ引き上げるとともに、十五才未満の扶養親族の扶養控除額を現在の三万円から三万五千円に引き上げることといたしております。また、これらの諸控除の引き上げに関連して、専従春控除についても、青色申告者の場合は、年令二十才以上の専従者の控除限度額を現在の十二万円から十二万五千円に、二十才未満の専従者の控除限度額を現在の九万円から九万五千円に、白色申告者の場合は、その専従者の控除額を現在の七万円から七万五千円にそれぞれ引き上げることといたしております。

 以上、申し述べました諸控除の引き上げにより、夫婦、子三人、計五人家族の標準世帯を例にとりますと、所得税が課されない所得の限度は、給与所得者では現在の約四十一万円までが四十五万円までに、事業所得者のうち、青色申告者については現在の約三十九万円までが四十二万円までに、白色申告者については現在の約三十四万円までが三十七万円までにそれぞれ引き上げられることになるのであります。

 次に、少額貯蓄を優遇するため、従来の国民貯蓄組合制度にかえて、制度の合理化をはかりつつ、新たに一人一種類、一店舗に限り元本五十万円までの預貯金等について、その利子所得に対する所得税を免除することとしております。さらに、海外事業活動の振興に資するため、外国税額控除制度について、控除未済の外国税額について五年の繰り越し控除を認めることとする等、制度の拡充合理化をはかっております。

 次に、法人税法の一部を改正する法律案についてその大要を申し上げます。第一は、中小企業者の税負担の軽減措置の一環として、同族会社の留保所得に対する課税につき改正を行なうことであります。すなわち、現在同族会社の課税留保所得金額の計算は、同族会社が留保した金額から課税所得金額の百分の十に相当する金額と年五十万円とのいずれか多い方の金額を控除することとしておるのでありますが、今回この控除額を、課税所得金額の百分の十五に相当する金額と年百万円とのいずれか多い方の金額とするよう改めることとしておるのであります。また、海外事業活動の振興に資するため、法人の外国税額控除制度について、所得税と同様にその拡充合理化の措置を講ずることとしております。以上、これらの二法律案の趣旨につきまして御説明申し上げた次第であります。(拍手)
 御質問にお答えいたします。第一の問題は、政治姿勢、なかんずく減税についてであります。所得税を納めるまでに至っておらない低所得階層に対してのことでございますが、総理の先回、納め得るようにレベル・アップをするというお答えについての御質問でございます。低所御者に対しては、社会保障政策等を拡充をしながら、てれが生活環境のレベル・アップに資することはもちろんでありますが、なお加えて所得拡大施策をあわせ行ないますことによって、納税資格者になるように所得拡大をはかりたいと言われたものと考えております。

 なお、所得税を納めておられる方々に対しては、減税を逐年行なっておりますし、減税の実施によってこれが負担の軽減をはかっていかなければならないと思います。愛情を基調とする政治であるべしという議論については、もちろん賛成であります。それから、所得税減税につきましては、たびたび申し上げておりますように、一般的な減税に大いに歴年努めておるのでございます。特に昭和二十五年以降、減税総額約一兆一千億になるわけでありますが、その七〇%は所得税の減税に充てておる状況でございまして、低所得者の底上げに対しまして努力をいたしておりますことをお認めいただきたいと存じます。来年度につきましては、三十六、三十七年度と二年にわたりまして、大幅な減税を行なったあとでもありますので、自然増収や歳出の事情も勘案すると、おおむね御審議を願っておる程度の減税でやむを得ないと考えたわけでございます。

 それから、先ほどの御質問の中に、政策減税に比べて一般減税が非常に少ない、また答申無視だということでございますが、御参考までに申し上げておきますと、平年度五百四十億円の減税の中で、所得税を含む一般的減税は三百五十億円でありまして、俗に政策減税といわれておる特別措置関係の減税百九十億円、合わせて五百四十億円であることを申し添えておきます。

 それから、今回の税制改正で、政策減税を、税制調査会、大蔵事務当局の意に反して行なったことに対する理由についての御質問がございましたから、お答え申し上げます。税制調査会は、一般的税負担の軽減と、政策的に必要と認められる措置を答申しましたことは、御承知の通りでございます。政府の税制改正案は、大筋におきまして答申を尊重しておるものでございます。答申の段階では、来年度の財政収支の状況が必ずしも明らかでなかったわけでありまして、政府といたしましては、来年度の予算を編成するにあたりまして、三十六年度や三十七年度と比べると少ない自然増収の中で、公共投資、社会保障、教育等、緊急と認められる施策のための歳出の増加を考慮いたしますと同時に、これらとの関連において、当面要請される施策に即応するための税制土の措置について、税制調査会の答申の線よりも、政策減税において一歩を進めた、このようにお考えいただきたいと存するわけでございます。
 それから、三十八年度の自然増収の見込み額いかんという問題につきまして申し上げますと、三十七年度の当初予算額に対する自然増収額は、現行法で三千百三十一億円でございます。改正法は減税後において二千六百三十二億円でございます。

 それから、三十八年度の税収見込みが適切ではないのではないか、過大ではないがということでございますが、経済情勢の推移を十分見込みまして、税目別に詳細な積み上げ計算を行なっておりますので、この税収見積もりは適正なものであると考えております。

 それから、過大見積もりにつきましてのお話がございますが、来年度の経済は、ゆるやかな上界を後半において見込まれますので、三十七年度後半から三十八年度前半までの経済に強い影響を受ける法人税収の伸びは、期待できないと存じますが、個人所得につきまして、政府の経済見通しにもありますように、一〇%程度の伸びが想定されますので、この所得増を前提にして考えますと、税制改正以前の三十八年度税収見込み額が、三十七年度当初予算額に対して三千百三十一億円の増収額と、先ほど申し上げましたように計算をされておるのは妥当だと申し上げたわけであります。昨年度の自然増収額が四千八百七億円であったことに比べますと、本年度の三千百三十一億円は小幅なものであることは、御承知の通りでございます。

 なお、租税収入について、税法を適当に執行するか、徴税に対してどうかということでございますが、財源確保のために過大見積もりを行なっておりませんし、徴税強化をはかる意思などは、毛頭ないことをつけ加えて申し上げておきたいと存じます。なお、足らざるものは、委員会において詳細御説明申し上げたいと存じます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第8号(1963/02/19、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 お答えいたします。第一の問題は、租税負担の適正化とは軽減及び調整を意味するのかという御質問でございますが、中小企業を育成強化するためでありますので、租税特別措置等を意味するものであります。

 それから、第二点としましては、政策減税、なかんずく中小企業に対する租税特別措置の内容についてということでございますが、また租税特別措置については、中小企業対策は不十分のような御発言でございましたが、産業の助成、企業の体質改善、技術振興、それから設備の近代化、及び経済上の必要性から、各種の措置がとられておることは御承知の通りでございます。特に今回の改正におきましても、特定中小企業者の機械設備等について、五カ年間、三分の一割増し償却制度の創設、それから中小企業近代化促進法に規定する中小企業の合併の際における清算所得課税及びその登記の登録税等についての負担の軽減、それから同族会社の留保金課税の軽減等、中小企業に対する特別措置は、以上申し上げたように、積極的に行ない、かつ、将来も行なう方針をとっておることを御理解賜わりたいと存じます。

 それから次は、中小企業に対する税務行政について、行き過ぎはないか、また、税務行政の民主化の必要性についての御発言でございますが、御趣旨の通り尊重して参りたいと存じます。税務行政は適正な調査によって事実関係を明らかにし、税法を正しく適用することによって初めて法の期待する負担の公平がはかられるのでございますが、権力的になったり、行き過ぎになるようなことは、当然戒むべきであります。このようなことのないように、従来十分配意をいたしておるのでありますが、せっかくの御注意でありますので、今後ともこのような批判の起こらないように、十分注意して参りたいと存じます。

 それから次は、市中銀行、地方銀行等の中小企業金融についての御発言でございますが、特に二十四条の融資の指導という面についての御質問、両建、歩積の排除、それから中期、長期の安定的金融、それから消費者金融の問題、不動産金融の問題、中小企業については無担保信用貸しを前提とすべきであるというようなお説でございますが、特にこのような問題につきましては、予算委員会を通じても申し上げております通り、格別な処置を在来もとっておりますし、本法制定の後においても、できるだけお説のような方向に向って、金融の確保に資して参りたいと考えます。

 なお最後に、いわゆるターム・ローンの方向について指導すべきであるというお話でございましたが、地方銀行等については、このような運用をいたしておることは御承知の通りでございます。なお、地方開発等新しい要請もありますので、地方金融機関等がこの種の長期安定的な、また割賦返済方式による長期金融の道を開いていくととについては、政府も賛成をいたすとともに、これが方向について指導をいたしていく予定でございます。

 なお金利の問題につきましては、中小企業の金利負担がいかに中小企業の育成強化に障害になっておるかということに対しては、政府も十分承知をいたしておりまして、これが適正な金利の確保について、金利の引き下げについて種々考究し、適切な処置をとって参りたいと考えております。(拍手)
 井堀さんの政府に対する質問中、私がお答えすべきことは、小規模企業対策として小規模企業税法の確立が必要ではないかという一点であったと存じます。所得の種類、所得の大きさの異なるごとに、特別の税法を設けて課税を行なう必要はなく、また適当でもないという考えを持っております。また、政策的に小規模企業優遇の措置を講ずる趣旨から、特別税法を設けようというようなお考えでございましたら、現行租税特別措置におきましても、中小企業、小規模事業等に対して適切な配慮が行なえるのでございますから、特別措置をとる必要もなく、現行法の運用等において実効を上げ得ると考えております。(拍手)
 岡田さんにお答えいたします。第一問は、海運企業の再建整備について関係法律の運用にあたって思い切った弾力性を持たせないと、弱小オーナーを救えないという事実に対しての御質問でございましたが、オーナーの中には、御指摘の通りに現在のままでは経理内容の非常に悪い会社が相当にありますことは事実でありますが、これらの会社も、今回の措置によりまして、助成の前提となる体制を整備すれば、助成を受けることができるのでありますから、弱小オーナーだからといって助成の対象外になるというようなことにはならないわけであります。しかし、この助成措置は、あくまでも総花的にやるというのではなく、日本海運の将来のために海運業の抜本的な再建をはかろうというのでございますから、業者自体も政府の意のあるところを十分了解をしていただいて、これが再建に協力をしていただくということをお願いをしたいと考えるわけであります。

 それから、中古船を海外へ処分する際、輸銀を通じての延べ払い制度をやってはどうかということでありますが、中古船の延べ払いにつきましては、船価の相当額がすでに償却済みであるという事実もありますので、新規設備の延べ払い輸出とは異なっておりますが、お説のように、延べ払いが必要であるということは十分政府も了解いたします。御質問の通り、ケース・バイ・ケースで検討の上、適当と認められるものについては、延べ払い輸出を認めることにいたします。

 それから、この延べ払い輸出に対しては、頭金一〇%、十カ年というようなお話がございましたが、先ほど申し上げましたように、一〇%、十カ年延べ払いというようなことは少し緩和過ぎるような気もいたしますが、こういう問題につきましては、多少新規造船よりも頭金は多く、延べ払い期間は幾らか短くはいたさなければならないと思いますが、いずれにしても、お説のような処置をとりたいと考えます。それから、中古船の輸出に伴いまして、必要とされる資金につきましては、輸銀の融資の対象といたすように考慮をいたしたいと存じます。

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第9号(1963/02/22、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 加藤さんにお答えいたします。対米貿易の問題につきまして、輸出と輸入について非常に日本が入超であるということを言われたわけであります。三十六年度は、御承知の通り、輸出が十二億ドル余であり、輸入が十九億ドル余でありますから、七億七千万ドルの入超でございますが、これは御承知の通り、日本の経済が非常に過熱的な状態といわれるほど膨張したときのことでございまして、三十七年度は、十二月までの数字を見ますと、輸出が十一億九千万ドル、輸入が十一億六千万ドルで、逆に十二月まででは三千万ドルの出超になっております。このように対米貿易においては非常に大きく改善せられておるわけでございます。しかし、これは今通産大臣が申された通り、日本とアメリカの問題は、ただ数字によってだけ議論ができる問題ではございません。綿花の問題も、御承知の通り、原材料を入れて日本がこれに加工して、逆に輸出をするのでございますから、そのような意味においては、日本はアメリカに対して、アメリカが日本の輸出市場としては世界最大のものであるという事実を認識しながら輸出を伸ばしていくようにしなければならぬことは、言うを待たないわけでございます。われわれも十二月の日米経済閣僚会議におきまして、日米間の貿易、特に日本からの出超問題については十分意見を交換をして参ったわけでございます。

 第二の問題は、八条国移行によって自由化されると、アメリカ側の日本に対する輸出の方が伸びるのだというような観点に立っての御意見でございますが、私は日本の輸出を伸ばしていく方向になるのだ、また、そうしなければならないのだという考えに立っておりまして、フィフティ・フィフティというような考えではなく、より積極的に、前向きにアメリカに対する輸出を伸ばしていくという考えでございます。それから、自由化に対して外貨危機を一体どうして乗り切るのかということでございますが、その意味では、御承知の通り、国内産業を整備し、輸出第一主義として、国際競争力の培養等、各般な施策を行ない、予算措置を行なっておるのでございます。また、特に対米貿易におきましては、シップ・アメリカン、バイ・アメリカン政策に対しても、日本政府としての強い意思表明をいたしておりましたので、外貨危機等は招いてはならない、こういうことを考えておるわけであります。(拍手)
 田中(織之進)さんにお答えいたします。今度の鉄道建設公団ができましたことにつきましては、御承知の通り、建設審議会の建議に基づいて予算に計上いたしたわけでございます。

 それから今運輸大臣が、国鉄が新線建設ができないということを短い時間で申し上げましたが、鉄道の建設という問題に対して端的に申し上げますと、明治時代から大正につきましては、年間最高千キロにわたって新線が行なわれたというのが記録に出ておりますが、昭和十二年、十三年の戦争中を中心にいたしましてから戦後は、鉄道建設のテンポが非常に落ちまして、現在は年間わずか百キロにしか及んでおらないのでございます。鉄道が今日まで日本の経済、産業開発にいかに裨益したかは、もう私が申し上げるまでもなく歴史の示す通りでございます。北海道から北海道の鉄道を取ってみて、一体北海道の開発促進があり得るかどうかということは、これはまさに自明の問題でございます。

 いわゆる三公社五現業というものに政府がなぜウエートを置いて行なうかといいますと、この事業が民間で採算性に合わなくても、政策的に他に大きな要請がありますからこそ、国有鉄道のごとき状態が生まれておるのでありまして、建設に関して建議が行なわれたのもその通りでございます。でありますが、戦後の荒廃から立ち上がってくる日本国有鉄道の状態を見ますと、おおむね日本国有鉄道については独立採算制をより以上に要求をしておるのでございます。そうしますと、採算線以外は政策的に必要な地方の新線建設はほとんど行なえないというのは事実でございます。でありますが、政府が考えております大都会に対する人口、産業の過度集中を排除しながら、均衡ある地域の発展を行なうということでありますから、道路網の整備とあわせて産業発展の基盤である鉄道網の整備を行なうために、現在行なっておる法律で要請をしておる日本国有鉄道の新線建設業務を切り離して、公団をして行なわしめようということは理論的に正しいのでございます。(拍手)

 それから、どうせ赤字が出る問題であるので、損失補てんの問題について一体どう考えておるか。それから、公団の出資はそのような意味で全額国が行なうべきであるという御議論でございますが、これは公団設立後、これからの問題として十分検討すべき問題でございます。この公団で行なわれるいわゆる新線が、経済ベースを中心にウェートを置いて建設せられたものは、これは日本国有鉄道に移しても十分採算が合うものでありますが、四国や九州、北海道、また裏日本のように、あるいは山缶地帯を縦断するような線は、線そのものとしては、これはもう赤字であっても、そうすることによって他の政策面から見た、産業開発や経済伸展に非常に大きな貢献をする場合には、国が損失補てんに当たるわけであります。でありますから、これからのこの公団の行なう事業が、いわゆる政策をもとにしておるのか、また、採算線というところにウエートを置くのかによって、おのずから政府の出資額はきまっていくわけでありまして、そのような必要があるからこそ、公団の設立を要請しておるのであります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第22号(1963/05/14、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 生活環境整備計画につきまして、経済企画庁長官が反対をしておるというような御発言でございましたが、そのような事実はございません。ございませんのみならず、立ちおくれておりますこれらの問題を緊急に整備をしなければならないという熱意を持っておりますことは、社会党の皆さんと同じことでございます。それから国民所得の倍増計画におきまして、先ほども申し上げましたように、社会資本の充実をはかりながら、重要課題を次々と片づけてまいりたいというのが経済企画庁で考えておる考え方でございまして、先ほど私が大蔵省の考え方を申し上げましたが、五カ年計画につきましては閣議で決定をするということになっておりますので、関係各省間で十分に連絡をとりながら、これが目的達成に邁進をしたいということでございます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第23号(1963/05/16、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 浦野さんにお答えいたします。本法律案の措置としては、資金の確保、課税の軽減ということだけでありますが、そのほかの財政金融等の措置を必要としないかということでございますが、もちろんお説のとおりでありまして、各般の問題に対して推進をいたす予定でございます。

 第二の問題は、この程度の法文規定で、市中金融機関やその他の政府金融機関等の協力が得られるのかということでございますが、御承知のとおり、金融機関の資金運用は、国の経済発展ということに対して十分寄与しなければならないことは当然でございますし、また資金運用は、そのような趣旨に沿って運用せられておるのでございますが、法律によって資金統制を行なうというようなことは、このような法律によって産業基盤の強化をはからなければならないという命題を遂行する上においても、好ましいことではないということで、慎重に考えたわけでございます。しかし、御承知のとおり、この振興基準の策定等につきましては、金融代表がまいりまして、いろいろ参画をし、意見を述べ決定をするのでございますから、事実の上においては、十分これが協力は期待できると考えておるのでございます。また、金融機関の中には資金調整審議会というものをつくっておりまして、緊急の融資等についてはこれを促進し、また、不要不急のものに対してこれを抑制するように、現在においても十分その責めを果たしておりますので、この法律案通過後は、政府も金融界との連絡を十分密にしながら、遺憾なきを期してまいるつもりでございます。(拍手)
 本法の運用と外資の導入につきまして、特に八条国移行後の問題についての御質問でございましたが、御承知のとおり、八条国に移行後におきましても、為替制限をなし得なくなりますものは経常取引に関してのみでございまして、資本取引につきましては、国内事情等の問題も勘案しながら管理も規制も可能であることは御承知のとおりでございます。しかし、資本の蓄積が不足をいたしておりますし、科学技術の面でもおくれておる日本の産業の基盤を強化いたしますためには、良質な、長期安定的なものにつきましては、これを導入いたしてまいるという基本的な考えでございます。なお、第三点としましては、八条国移行後の外資の流入につきましては、具体的にどうするかという問題でございますが、国内に及ぼす影響も十分考えながら、また、国内の市場を混乱するようなものにつきましては、このようなことがないように、スクリーン制度を確立してまいるつもりでございます。日米通商航海条約との関係の問題に対しては、外務大臣からお答えを申し上げます。

 それから、わが国の産業につきまして、規模の小さいものがあったり、また、これから国際競争力を強化していくためには相当強く計画性を持たしたり、政府がこれに対して規制をしたりするほうがいいのではないかという、俗に計画経済的なお話がございました。確かに御説のような、実際の面においてまだまだ強化をしなければならない問題はたくさんございますが、先ほどの御質問にもありましたとおり、このような考え方を進めていくことは、すなわち、官僚統制式な色彩が濃くなるといって批判のあるところでございますし、この政府は自由経済を基本にいたしておりまして、まず民間人の、国民自体の創意くふうを基礎にいたしまして、政府はその環境づくりを行ないつつ、必要なものに対して強力な助成措置をとっていくという基本的な方策でありますので、この基本線を守りながら濶達な産業の育成強化に資してまいりたい、こう考えるわけでございます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第24号(1963/05/17、29期)に於ける田中角榮発言は次の通り。
 春日さんにお答えをいたします。私に対する第一の問題は、本法律案は、金融を国家権力の統制下に置いて、戦前の重要産業統制法のようなものになるのじゃないかということでございます。春日さんもそうお考えになっておられるわけではないと存じますが、この法案作成の過程において、このような考え方が起きては困るということで、私たちの考えを十分反映をいたしておるわけでございます。この法案によって、必要な産業体制を確立するために振興基準をつくりますときに、金融界の代表も入りましてこの実情をよく理解をするということが趣旨でございまして、これをもって、国家権力をもって融資をせしめるというような融資強制の部面は全然ないのでございまして、これが戦前における重要産業統制法のような力を持つものでないことは明らかでございます。

 それから第二の問題は、現在の財政金融原資は、国民大衆に還元をされておらないで、大企業に集中的に融資をせられておるということでございますが、これにつきましては、三十八年度の予算御審議の過程においても十分申し述べましたとおり、三十八年度の財政投融資の計画だけをごらんになっていただきましても、総額の四九・一%は住宅、生活環境整備とか、厚生福祉施設とか、文教施設とか、中小企業とか、国民大衆の生活安定のために必要なというよりも、直結する部門にこれを充てておるわけでありますし、なお、三三・五%にわたる面を国土保全や道路、運輸通信というような国民生活基盤の向上に資するように充てられておるわけでございます。残りの一七・四%さえも電源開発、輸出振興、石炭対策等に充てられておるのでございますから、本法案によりまして、国民の福祉を無視しておる、また、大企業にこれらの資金が集中的に投資をせられるというようなことは、当を得ないものと考えておるわけでございます。

 第三の問題は、本法の附則で租税特別措置を行なうことは、租税特別措置法の改正そのもので行なうべきであるという御議論でございますが、この議論は、滞日さんの御趣旨も十分私も了解いたします。いままでのこれらの租税特別措置の問題に対しては、特別措置法の改正をもって当てておりましたのが多いのでございますが、御承知のとおり、公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律とか、防災建築街区造成法等によりましては、その附則で租税特別措置を規定いたしております。そういうことはあまり好ましいことではないという御議論でございますが、私は租税特別措置法との関連も十分検討して、本法においては附則で改正をすることがより合理的である、このような考えのもとに附則で租税特別措置を行なったわけでございます。御理解賜わりたいと思います。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第28号(1963/05/31、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 荒舩さんにお答えいたします。天災融資法の問題、激甚災の指定の問題等につきましては、農林大臣からお答えがございましたが、いずれにいたしましても、降ひょう、突風の災害につきましては、これが復旧に遺憾なき処置をとってまいりたいと考えます。地方公共団体の問題について、特別交付税の繰り上げ支給等を考えることができないかということでございますが、御承知のとおり、法律によりまして、三十八年度の特別交付税は三十九年二月になってこれを決定することになっておるわけでございます。しかし、六月には普通交付税の繰り上げ概算交付も考えておりまして、地方公共団体の財政に支障のないように格段の措置をとってまいる予定でございます。公共事業の災害の問題につきましても、現在調査中でございますが、災害量が判明いたしましたら、予備費の支出等をもって処置してまいりたいと考えます。(拍手)
 高田さんにお答えいたします。第一は、災害復旧に対して補正予算を編成する必要はないかということでございますが、御承知のとおり年度当初でございますし、二百億円の予備費も三十八年度予算に計上せられておりますので、現在の段階において補正予算を組む必要はないと考えます。それから第二の問題につきましては、農業災害復旧のための制度融資のワクとか、予算に対して万全を期せということでございますが、農林大臣お答えをいたしたような基本的な線に沿いまして、災害復旧に万全を期してまいるつもりでございます。なお、農林漁業金融公庫の資金等でまかなえないものにつきましては、他の費目から流用いたしましたり、予備費の使用等をもって十分まかなえると考えます。

 第三は、特別交付税の問題でございますが、特別交付税の問題については、先ほど荒舩議員にお答えをいたしたとおりでございます。これは地方公共団体の財源処置につきましては、普通交付税の繰り上げ等によって十分考慮してまいりたいと存じます。

 第四点は、罹災者に対する税制上の問題でございます。御承知のとおり、所得税の制度の中に、救済措置としては、所得税法の雑損控除、減税措置としては軽減または免除、それから徴収猶予というような制度がございますので、これらを活用をしまして、罹災者の皆さんに迷惑がかかることがないように十分な処置をいたしたいと考えております。

 第五点は、天災融資法の問題でございまして、この問題については、農林大臣お答えしたとおりでありますが、五月二十八日現在の農業災害は三十億円という報告を受けております。御承知のとおり、過去における天災融資法の発動の基準は、農産物災害五十億円以上ということがおおむね基準になっておりますが、例外等もありますし、十分政府部内で意見をまとめ、期待に沿いたい、このように考えます。(拍手)
 石川さんにお答えいたします。私に対する質問は二つでございまして、その一つは、新河川法の原案策定の過程において全額国庫負担という議論があったが、なぜ現行のようにしたかということでございます。御審議を願っております改正案によりましては、一級河川につきましては三分の二、昭和四十四年まで四分の三、こういうことでございます。一般の公共事業につきましても、御承知のとおり、受益のあるところでは受益負担をするというのが公共事業の原則でございまして、河川の改修に対してもこの例外たり得ないわけでございます。しかも、現行の河川法よりも改正する河川法はどのように国庫負担がふえるだろうかといいますと、当然全体的にして相当額国庫負担がふえていくという方向にあることは御承知願えると思うわけでございます。それから一、二級国道の例をとって申し上げるとおわかりだと思うのでございますが、一級国道につきましても、直轄工事においては三分の二が法定でございますが、緊急五ヵ年計画の施行の過程において、昭和四十年までは四分の三国庫負担であるわけであります。

 それから第二の問題は、一級河川と二級河川の国庫負担の率が違うことによって、しかも水系別に指定をいたしますので、二級河川に落ちるもの等に対して府県負担、地方公共団体の負担が非常にふえるのではないかというようなお話でございますが、先ほど建設大臣がお答え申し上げたとおり、現在一級河川から二級河川に落とす、いままで直轄工事をやっておるものが二級河川に落ちるなどという原案をきめておらないのでございまして、本法の改正の趣旨から考えれば、そのようなことはないと考えております。

 それからなお、現在直轄でやりておりますものが二級河川になりましても、その部分に対しては直轄工事を進めてまいり、しかも、現行どおりの国の補助率で工事を施行するわけでございます。なお、地方負担につきましては、地方が負担をする単独財源というだけではなく、御承知のとおり、補助金、負担金、なお地方交付税等によって十分調整をせられるのでございますから、改正河川法による負担を考えますと、現行法より国の負担がより多くふえる、こう申し上げてよろしいと思います。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第29号(1963/06/04、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 お答えいたします。私に対する第一点は、利率を政令に委任した理由でありますが、いま総理大臣から申されたとおり、貿易・為替の自由化に対抗しまして国際競争力を強化していきますためには、金利政策を弾力的にかつ機動的に行なわなければならないということは御承知いただけると思います。市中金融機関の預金金利を弾力的に行なうという考え方に立ちますと、この金利政策の中の一環としての郵便貯金の金利につきましても、法定事項から政令に委任をしていただきまして、適時権衡をはかってまいりたい、このような考え方に立つものであります。

 第二の問題は、既設の定額郵便貯金、積立郵便貯金等の契約者が、新しく利息が下がった場合、不利益になる場合にどう考えるかということでございますが、当然慎重に検討しなければならない問題でございます。これは将来金利が下がった場合を仮定しての御質問でございますが、既契約者の利益保護という問題に対しては十分尊重して考えてまいりたいと考えます。

 第三の問題は、郵便貯金と民間金利との関連について再考する必要がないかということでございますが、これは、本件に対しては一番大きな問題でございます。総理大臣がただいま御答弁になりましたように、戦後の日本の経済復興にいかに郵便貯金が寄与したかということを考え、もう一つ、在来は民間金融機関と郵便貯金との金利の権衡をはかります場合には、郵便貯金は国家が預かっておるから信用度が非常に高いということで、常に民間金融機関の金利よりも一定の額下回っておったのでございますが、新しい立場から考えまして、郵便貯金が非常に零細な大衆の預金であるということと、もう一つは、これが日本の財政経済に大きく寄与しておるということと、三つ目には資金運用部資金として欠くことのできない新しい使命を持っておりますので、在来のように政府の預かっておるものであるから、絶えず民間金利よりも低くあらねばならないというような考え方は持っておりません。新しい視野に立って民間金利との権衡をはかってまいるという考えでございます。(拍手)
 私に対する御質問は、政令委任と法定の問題でございますが、私もこの問題に対しては真剣に考えたのでございまして、政府がこの改正案を提案した真意というものを、すなおに御理解いただきたいと思います。先ほども申し上げましたように、貿易・為替の自由化という大きな状態を目睫にしておるのでありまして、日本の経済に国際競争力をつけていくという、非常に重要な段階に立っておりますし、特に非常にテンポの早いときでありますから、金利政策に弾力性を持たせ、機動性を持たせるということは、これはもう理論上も絶対的必要な条件でありますことは、御承知のとおりでございます。でありますから、民間の金利に対しても弾力的に機動的に運用しなければならない、と同時に権衡上からも、政府の所管するものだけは法定事項にしておくということ自体が権衡を失するのであります。しかも、私も郵政大臣の経験者でありまして、国民の零細な資金を集め、これが日本の経済発展に寄与したという事実を十分認めておるのでありまして、今度の改正案が即利率を下げるものだというふうにお考えになられる反対意見に対しては、もう少し御理解を賜わりたいと思います。(拍手)それから先ほども総理大臣が申された通り、これは金利の弾力的、機動的な運用をするということが前提になりますと、下げるときも上げるときもあるのでありまして、こういう問題をそろえておかないと、経済に対する基本的な体制ができないのでありますから、どうぞひとつ御理解を賜わりたいと存じます。

 それから先ほども申し上げましたように、郵便貯金の金利というものに対しては、新しい視野に立って、新しい角度で十分慎重に検討をし、国民大衆の利益を確保するように考えますということを先ほどから申し上げておるとおりでございます。それから郵政省との間に問題がございました窓口直接貸し付けの問題につきましては、種々問題がありますので、本件については両省の間で引き続き検討をいたしておるのでございます。

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第31号(1963/06/07、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 仮谷さんにお答えいたします。第一点は、地方公共団体の災害に対する救助費及び復旧費の財源確保に対して、政府はどうするかということでございますが、御承知のとおり、国庫補助、地方起債、特別交付税等によって常に配分をいたしておるわけでありますが、三十八年度の特別交付税の配分に対しても、万全の処置をいたしたいと存じます。

 第二の問題は、被災者に対する税法上の処置についてでございますが、御承知のとおり、所得税法による雑損控除、災害減免法の規定によりまして、軽減、減免等を行ないまして、負担軽減をはかってまいります。

 それから第三点目につきましては、災害のため納税資金繰りが非常に困っておるというものにつきましては、納税を猶予いたしまして、納税によって生活を圧迫しないように、十分留意をいたしたいと存じます。(拍手)
 天災融資法による貸し付け金の金利の問題、種麦の問題等につきましては、農林大臣からいまお答えをいたしたとおりでございますが、これらの問題につきましては、十分事情を調査の上、適切な処置をいたしたいと存じます。なお、長雨による農産物の被害が非常に大きいので、先ほども御質問にありましたように、時期を失することなく、所要の措置を講じていくつもりでございます。(拍手)
 小林さんにお答えいたします。非常に熱意を持ってやってきておるのだから、竿頭一歩を進めて実員で考慮すればよいではないかということでありますが、ただいまも文部大臣が申されたとおり、この標準法の提出によりましても、相当われわれが考えておった理想に近づきつつあるわけであります。しかも、教育の機会均等、公平の見地からいたしまして、一定の基準によりまして国が負担をするというのが正しいことだと思います。しかし、定数以上におる人たちを否定いたしておるのではないのであります。より十分なる施設を行ない、また、現在おられる定員の配置をそのまま続けたいという方々に、地方は自分で負担をすることが、公平の原則から書っても当然のことだと考えております。それから、現在少ないところと定数以上のものまで全部実員によって国が負担するということになりますと、府県、市町村間において非常に不均衡ができるわけでありまして、当然基準までを国庫負担の限度とするということが常識的であり、正しいと考えたわけであります。しかし、事務職員の問題、養護教諭の問題、司書教諭の問題とか、栄養士の問題とか、非常に前向きで処置をいたしておるのでありますから、事情御了解を賜わりたいと存じます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第37号(1963/06/22、29期)に於ける田中角榮発言は次の通り。
 多賀谷さんにお答えいたします。産炭地振興のために北九州に造幣局の工場等をつくると総理が言明されたということについての御質問でございますが、御承知のとおり、閣議では、産炭地振興のために産業振興をはかることはもちろんでありますが、政府関係機関等の移転、新設等につきましても格段の意を払うように決定いたしておるわけでありまして、関係各省で鋭意これが調査を行なっております。それから、大蔵省関係におきましては、造幣局につきましても検討いたしておりますが、現在の段階におきましては、専売公社関係、特にフィルターの工場等は新設をいたすべく準備中であります。なお、そのほか、自衛隊の移転その他各般の問題について検討を進めておるわけであります。 第二の問題は、四月十五日付石炭対策連絡会議で決定しました各省関係で産炭地からの離職者を採用するという問題でございますが、大蔵省の関係約六十名、これにつきましては、専売で三十名、財務局で三名、印刷で七名、税関で三名、国税で十六名、造幣局一名というように、現在おおむね目標どおり採用する予定であります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第40号(1963/06/26、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 私に対する質問の第一は、中小企業協同組合法の小組合の組合員に対して、税制上、金融上、特別の処置を講じなければならないということになっておるが、特別の処置とは具体的にどのようなものか、また、政府はいままでどのような特別な処置をしたかということでございます。御承知のとおり、小組合員も含めまして、これと同程度の経済的地位にあります零細企業者につきまして、その負担に応じた税制をとるべき旨を明らかにした宣言規定でございます。現行の税制は、すでにこのような点を十分考慮いたしまして、まず第一には、個人企業に対する累進税率構造において、低所得階層に対しまして、税率の逓減をはかっております。それから法人税の年二百万円以下の所得に対する軽減税率の問題、第三は、個人企業における専従者控除の問題、第四は、同族会社の留保所得課税における一定額の基礎控除等の制度を通じましてこれらの実をあげておるわけでございます。なお租税特別措置におきましても、御承知のとおり本年度の改正におきまして、専従者控除の引き上げ、同族会社の留保金課税の軽減、中小企業者の機械等の割り増し償却制度の創設、中小企業の特定の合併についての清算所得課税及び登記についての登録税の軽減等を行なっておるわけでございます。

 それから中小企業者に対する金融上の問題でございますが、この具体的処置といたしましては、相互銀行、信用金庫等の中小企業専門金融機関の育成強化をはかりますとともに、財政資金による直接融資、すなわち、国民金融公庫、商工組合中央金庫等の資金量の確保をはかりまして、中小企業の育成強化をはかっておるわけであります。それから、第三点の問題は、中小企業の海外進出のために特別な対策ということでございますが、そのとおりでございまして、このためには輸出入銀行からの中小企業に対する長期貸し付け金の融資、新しい保険制度の設置等、海外進出を可能ならしめる条件をそろえることが必要でありますので、これらに対して政府は万全の処置をいたしておるわけであります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第41号(1963/06/27、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 中村さんにお答えいたします。第一は、中小企業信用保険公庫が保有する債券を引き当てで同公庫に日銀から資金を供給し、これをもって中小企業金融を潤すべきであるということでございますが、御承知のとおり、法制上保険公庫の業務の余裕金はすべて資金運用部に預託をすることになっておりますので、公庫が債券を保有することはないわけでございます。なお、信用保証協会の保証能力の拡充をはかるためには、本年度におきましても、保険公庫に対し一般会計から三十億の出資を行なっておりまして、本年度の分を入れますと、合計公庫の融資金は百四十二億円となるわけでございます。

 第二の問題は、第三条の問題でございます。政府関係機関に保険をつけるということはおかしいではないかということでございますが、これは政府金融機関の融資につきましても、市中金融ベースとは異なるものではございますが、基本的には独立の金融機関としての融資の原則があることは無視できないわけでございます。特に代理貸しの問題、災害等のときでスピーディーに貸し出しをするというような場合、当然このような措置が必要である、こう考えておるわけでございます。

 それから第三点は、再保険の限度額現行七割を八割にしてはどうか。八割は災害に適用しておるわけでございますが、御承知のとおり、信用補完制度を充実してまいる方向で育成強化をはかっておるわけでございますが、基本的には自己責任で健全な発達をはかっていくことが好ましいわけでございます。現在災害及び産炭地が八〇%でありますので、一般につきましては七〇%のてん補率が適当だと現在考えておるわけでございます。それから、第四点の登録税の問題につきましては、先ほどから御議論のあるとおりでございますが、この問題に対しては検討をしてまいりたい、このように考えております。(拍手)
 お答えいたします。 第一点は、中小企業の定義が拡大されましたので、必然的に中小企業関係の資金ワクが少なくなるのではないかということでございますが、商工中金等中小企業向けの資金確保に対しては、政府は万全の措置をとってまいるつもりでございます。

 第二点は、中小企業の組織の確立が行なわれないのは、財政の援助や金融、税制上の措置が的確に行なわれておらないからではないかというお考えでございますが、そのようなことはないと思います。中小企業の組織化に対しては、政府も熱意を持っておりますし、なお、中小企業の、先回も申し上げましたように、税制上また財政上、金融上の問題については格段の措置をとっておるわけでございますし、将来もとってまいりたいと考えます。

 それから第三点目は、中小企業等協同組合の剰余金の配当につきましての課税の問題でございますが、これは御承知のとおり、組合員間においての取引に生じました剰余金につきましては、これを割り戻しと考えておりますので、利用分量に応ずる配当として非課税といたしておるのでございますが、組合と組合員でない者との取引から生じました剰余金の分配につきましては、これらの規定の適用がないことは、その制度の趣旨から見ても当然でございます。

 最後に、東京昼夜信用組合の問題でございますが、昭和三十八年の一月三十日付で東京都知事名をもちまして、業務の停止命令を出しております。目下東京都の指導のもとに、善後措置につきまして鋭意検討中でございまして、零細な預金者の払い戻しにつきましては、できるだけ迷惑のかからないように、万全の措置をとっておる次第でございます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第42号(1963/06/28、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 一つは、会議の設置は地方自治を侵害しないかという問題でございますが、ただいま総理大臣からお答えをいたしました通り、広域行政の円滑化に資するためのものであり、しかも地方公共団体が組織するものに国の出先機関が構成メンバーとして参加するのでございますから、現在よりもより相互協調を深めることでありまして、地方自治の本旨を侵害するものだとは考えておりません。もう一つは、大蔵省の財務局長が構成メンバーになっておりますが、御承知のとおり、税を除く大蔵省の総合出先機関でありますので、以上の目的を達成するためにも構成メンバーとなることが必要であると考えておるわけであります。(拍手)
 ○国務大臣(田中角榮君) 通産大臣が申し上げましたとおり、石炭鉱業の経理規制につきましては、おおむね本臨時措置法をもちまして、その目的が達成できると考えております。産炭地の地元の商工業者の問題でございますが、もちろん、との振興、救済につきましては、政府も意を用いておるところでございまして、休閉山等によりまして未収金があります商工業者につきましては徴税延伸、その他の適切な処置をとっております。金融につきましても御承知のとおり、国民金融公庫、中小企業金融公庫等で十分なる配慮をいたしておるわけでございます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第43号(1963/06/29、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
お答えいたします。国民金融公庫法は、御承知のとおり、一般の金融機関から金融を受けられないものを対象にいたしておりますので、これをもって十分とは考えておりませんが、御承知のとおり、第一段階において、二十億円のワクをつくって、少しでも被買収者の方々の生業資金にこたえたい、このように考えておるわけでございます。(拍手)
 お答えいたします。第一の質問は、生業資金及び育英資金とお答えをしたようでありますが、育英資金は、国民金融公庫法上の制約がありまして、育英資金といったのは間違いでございます。第二の問題は、融資対象の問題でございますが、御承知のとおり、一人当たり二十万円と仮定いたしますれば、二十億でありますから、一万人になるわけであります。二十五万円ずっと仮定いたしますれば八千人ということが想定せられるわけであります。第三の問題は、金利九分と六分五厘との差額の問題であります。現在六分五厘を適用いたしておりますものは、御承知のとおり、引き揚げ者の国債担保貸し付け、第二には不況産炭地貸し付け、第三は激甚災貸し付けでございます。これらの問題は社会政策上行なわれておるものでございまして、報償を含むというような問題については、議論の存するところでございますが、ただいま申し上げましたものと同じ考えに基づいて六分五厘を適用いたすつもりでございます。(拍手)
 お答えいたします。第一の問題は、新線建設公団をつくることによって、国鉄の負担が軽減せられるかどうかということでございますが、御承知のとおり、現在のたてまえでは、新線建設については審議会の答申を受けましたら、いやでもおうでも国有鉄道はやらなければならないことになっておるのであります。でありますから、年間七十五億円という金額を出しておりますが、政府が国鉄に対して、これに見返りとして支出をするものは、年間四億七千万円という利子補給だけであります。一年間これしか政府は国鉄を見ておらぬのであります。でありますから、これが十年たちますと、七百五十億という大きな新線建設をやり、しかも、赤字は国鉄の会計の中でまかなわなければならないわけであります。これが現行法のたてまえであります。ところが、今度公団ができますと、国鉄は七十五億というものは年々出資をするであろうと思いますが、政府の出資額は非常に大きくなり、しかも国鉄が現在のようにやっておる場合には、赤字が出れば、全額永久にでもこれをしょわなければならないのでありますが、今度の公団でやりました場合には、国鉄と公団との間に協約を結びまして、原則としては貸し付ける場合有償でございますが、いつも申し上げておりますように、地方開発、産炭地の振興、それから低開発の振興というように、他の政策目的にウエートを置いて、相当期間赤字が出るというものは、これは無償にするのでありますから、現在の国鉄負担よりも大幅に軽減せらるることは自明の理であります。(拍手)

 それから第二の問題は、鉄道新線建設の今度の計画と資金の問題でございますが、これは先ほども申し上げましたとおり、政府出資、借り入れ金、債券の発行等によりまして、事業遂行に支障がないよう、遺憾なく資金措置を行なう予定でございます。

 第三番目は、答申を受けた審議会の建議と一体合っておるかどうか。御承知のとおり、審議会の会長は、赤城自民党の総務会長でございましたし、私は当時建議した責任者である小委員長でございます。私が建議いたしまして、運輸大臣がこれを受け、私が予算化したのでございますから、答申を尊重したことはこれ以上ないのでございます。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第44号(1963/06/30、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 公務員の給与が民間の給与に比べましてかなり低いというために、国費でせっかく養成をしました技術屋が民間にとられてしまうということに対して、公務員と民間給与の格差に対してどう考えるかということでございます。この問題につきましては、技術職員の給与の改善につきまして、人事院の科学的、専門的調査の結果を待ちまして検討、善処をいたしたいと考えておるわけであります。(拍手)
 本案は旧年金受給者のみに一時金を交付するものであるが、さきに公債で済まされた者の間に不公平がないか、また、どこまでこれを広げる考えかという御質問だと思います。ただいま提案者が御説明申し上げましたとおり、今回の一時金の支給は、旧年金受給者がかつて受けておった経済的処遇が失われ、かつ老齢者については生活能力が低下しておる状況にかんがみ、その処遇の改善をはかるため、特別の処置として給付するものでありますので、他に及ぼすという考えはございません。一時金の支給に要する金額は、一人七万円でありまして、対象者約九千人でありますので、所要額六億三千万円であります。(拍手)
 憲法でいう公平平等の原則からいいまして、このような措置の対象を支那事変、大東亜戦争を経た者及び非戦闘員まで広げるべきであると思う、財政的な見地から、という御質問であったと思いますが、ただいま総理大臣から申されたとおり――やるならばということでございますが、やることにいま院議がきまるところでございますので、私から申し上げます。本法第一条にありますように、「旧金鵄勲章年金受給者のかつて受けていた経済的処遇が失われ、かつ、老齢者について生活能力が低下している状況にかんがみ、その処遇の改善を図るため、特別の措置として一時金を給する」このように法律に書いてあるように承知いたしております。このような措置を右以外の戦争被害者及び犠牲者等に広げますときは、ばく大なる財政的負担になりますので、これを他に及ぼす考えはいまのところありません。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第45号(1963/07/01、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 私に対する第一の御質問は、ただいま法定である郵便貯金の金利をなぜ政令に委任するのかということでございます。この問題については、いま総理大臣からも御答弁がございましたが、基本的にはそのとおりでございます。しかし郵便貯金というものが、大衆、零細な預金者であるということと、もう一つは、資金運用部の資金として、これが国民生活のために大きく貢献し、特に戦後の日本の経済復興に寄与した力の大きいことを考えますときに、ただ、民間の金利が下がったから郵便貯金の金利も自動的に引き下げるというような考え方を前提にして政令委任をしておるものではないのであります。先ほどから申し上げておりますように、金利体系の一環といたしましてバランスをとり、弾力的運用を基本として政令委任をお願いいたしておるわけでございます。

 第二の問題は、貸し付け制度の問題でございますが、確かに昭和三十二年から三年にかげまして、私は郵政大臣在職中これらの問題に対して検討をいたしたわけでございます。その意味におきまして、皆さんが申されたようないわゆる貸し付け制度の問題に対しても検討いたしましたが、その後あらゆる方面から検討いたしました結果、郵便貯金というものは国民大衆、零細な預金者から預金を集め、しかもそれが資金運用部の資金として、直接国民のためになるように還元をするような仕組みになっておるのであります。郵便貯金の制度は、御承知のとおり、法律をお読みになればおわかりになるとおり、これは国民から資金運用部の資金源を集める法律のたてまえでございまして、政府が干渉する銀行のように、貸し付けを行なうたてまえにはなっておらないのであります。そういうことがございますので、現在この制度の問題については、郵政、大蔵両省間において引き続き検討いたしておるのでございます。

 それから第三点は、非常に重要な問題でありますが、政令委任にいたした結果、民間金融機関の金利が引き下がっても、何とか郵便貯金の金利を引き下げないようにして、大衆の利益を守るすべはないかということでございますが、先ほどから申し上げておるとおり、郵便貯金の金利は自動的に引き下げたりというような考えは持っておりません。しかも過去の事跡に徴して、過去は郵便貯金は政府管掌のものでありますので、信用度が高いということをもって、民間金利よりも確かに自動的に低かるべきであるという議論でございましたが、先ほど申したとおり、政府の信用云々によって差をつけるべきものではなく、資金運用部の原資としていかに裨益をし、貢献をしておるかという政策的効果も十分考えながら、大衆零細の預金者の利益は十分確保してまいるつもりであります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第43回国会衆議院本会議第48号(1963/07/04、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 学長の内閣任命につきましては、総理大臣からお答えをしたとおりであります。(拍手)

 田中角栄の国会発言を確認する。「第44回国会衆議院本会議第3号(1963/10/18、29期)に於ける田中角榮発言」は次の通り。
 私は、今般、日加閣僚委員会並びに国際通貨基金、世界銀行等の年次総会に出席するため、カナダ及び米国を訪問してまいりました。国際会議に列席しまして痛感いたしますことは、国際金融経済上におけるわが国の立場が近年とみに重要性を加え、いまや、わが国は国際経済の発展にとって不可欠の役割りを果たすに至っておるということであります。わが国の国際的地位の向上は、戦後の復興及びその後の発展を通じて、産業構造の高度化、所得水準の向上等、経済の基盤が着々と強化されてきたという事実に対する国際的評価によることはもちろんでありますが、さらに、わが国の貿易規模が大きく、世界各国との貿易関係が緊密であること、貿易・為替の自由化を強力に推進しつつあること、並びに低開発国に対する経済協力につき積極的に努力していることなど、国際経済に対する貢献と協調の実績がその裏づけとなっておるのであります。このようなわが国の地位の向上を可能ならしめた基礎的な要因は、勤勉にして、教育水準の高いわれわれ日本国民の力量にほかならないと考えまして、私は、心からこれを誇りと感じたのであります。(拍手)今後、世界の諸国がわが国に寄せる信頼と期待は増大するものと思われますが、われわれが確固たる自信を持ち、より広い国際的な視野に立って、自らの前途を切り開いていくならば、国際経済社会における有力なる一員としてのわが国の地位がいよいよ強固なものとなることは必然と信ずるものであります。(拍手)

 さて、最近におけるわが国経済の動向を見ますと、昨年秋の引き締め解除以来、経済活動は着実な回復過程をたどっておるものと見られるのであります。鉱工業生産は、本年に入って力強い上昇を示し、雇用、消費は着実な拡大を続け、国際収支もおおむね均衡を維持しております。このように、引き締め解除後における経済活動の回復は順調でありましたが、幸いにして、最近のわが国の経済界には、慎重、かつ、冷静な経営態度が支配的であり、経済活動の拡大が直ちに過熱に至るような勢いは、目下のところ、うかがわれないのであります。私は、わが国経済界が、今後ますます慎重、かつ、合理的な経営態度に徹していくことによって、着実な上昇傾向が持続することを念願いたしております。

 今後、わが国経済が、国際経済との交流をますます緊密にし、かつ、国際経済の大勢に即しながら、さらに大きな発展を実現していくためには、わが国経済の有する成長力を安定的な歩度をもって伸長せしめつつ、その基調の中で、経済の各部面において、所要の体質改善を着々となし遂げていくことが肝要であります。所要の体質改善とは、申すまでもなく、国民経済全体としての生産性を向上せしめ、もって、将来の健全にして調和のとれた経済成長をはかるための基礎的条件を、この際、一段と整備することであります。すなわち、わが国産業の国際競争力の強化、農業、中小企業等低生産性部門の近代化、道路、港湾や住宅等社会資本の充実のほか、産業立地の再編成、労働力移動の円滑化等をはかることであり、さらには、経済発展の根底にある国民の能力の開発と福祉の向上という課題にこたえるため、文教並びに社会保障の強化を期することであります。(拍手)

 このような経済の各部面における質的強化施策を推進し、国民経済全体としての生産性の向上をはかることは、同時に、わが国の輸出力の培養強化、消費者物価問題の根本的解決につながるものでありますから、これらの施策こそ、国際収支及び物価の長期的な均衡ないし安定に至る正道であると信ずるものであります。(拍手)政府といたしましては、このようなわが国経済の質的改善を、健全にして調和のとれた成長基調の中で進めていくことをもって、財政金融政策の主眼としてまいる所存であります。したがいまして、来年度の予算編成にあたりましても、引き続き健全均衡財政の方針を堅持し、経済に過度の刺激を与えないよう配意することを基本としつつ、税制面におきましては、国民生活の安定向上をはかり、あわせて、経済の各部面における体質改善を促進するため、大幅な減税をいたしますとともに、支出面におきましても、経費の思い切った重点化、効率化を通じて、さきに述べました国際競争力の強化、農業、中小企業の近代化、社会資本の充実等の質的強化策を効果的に展開してまいる考えであります。(拍手)

 なお、このような財政政策の実施にあたりましては、金融も財政と相補い、相助け、両者一体となって、さきに述べた質的強化策を推進するよう運営されるべきものと考えます。以上、わが国経済の現状と経済運営の基本的態度について申し述べましたが、次に、今回提出いたしました昭和三十八年度補正予算の大綱について御説明申し上げます。

 一般会計予算の補正におきましては、国家公務員等の給与改善、食糧管理特別会計への繰り入れ等、当初予算作成後に生じた事由に基づき緊要となった経費を追加することとなし、これに応じまして、法人税等経済の拡大に伴う租税及び印紙収入の自然増収を見込むことといたしております。その総額は、千二百四十二億円でありまして、これにより、昭和三十八年度一般会計予算総額は、歳入、歳出とも二兆九千七百四十二億円と相なるわけであります。

 歳出追加の第一は、国家公務員等の給与改善に関する経費でございます。国家公務員等の給与水準につきましては、民間給与との格差を是正するため、前年度におきましても、その引き上げをいたしましたにもかかわらず、その後の民間給与の上昇に伴い、再びこれとの間に相当の格差を生じております。このため、先般の人事院勧告の内容を尊重いたしまして、本年十月一日より所要の改定を行なうこととなし、これに要する経費として、総額二百六十二億円を計上いたしております。

 第二は、食糧管理特別会計への繰り入れでありますが、昭和三十八年産米の買い入れ価格が当初予算における見込みを上回って決定されたこと等によりまして、食糧管理勘定における損失が大幅に増加する見込みとなりましたので、同会計の経理運営の改善をはかるため、同会計の調整勘定へ二百五十億円を追加繰り入れすることといたしております。

 第三は、農業共済再保険特別会計への繰り入れでございますが、本年春以来の長雨により、三十八年産麦が著しい減収となったことに伴い、農業共済再保険特別会計の支出する再保険金が当初の予定をはるかに上回り、再保険金の支払い財源に不足を来たすことが見込まれますので、この不足額を補てんいたしますとともに、将来における異常災害の発生に備え、同会計の支払い財源を充実する等のため、百六億円を計上いたしております。

 第四は、災害復旧等事業に要する経費でありますが、昭和三十七年以前の発生にかかる災害の復旧等事業費につきましては、昭和三十八年度当初予算編成後、予定の進捗率を確保するためには、相当の増加を必要とすることが明らかとなりましたために、百三十五億円を追加計上するとともに、これに伴う地方公共団体の資金需要の増加に充てるため、財政投融資計画においても所要の追加を行ない、その復旧に遺憾なきを期しております。なお、三十八年発生にかかる災害に対しましては、すでに、既定の予備費をもって応急の措置を講じてまいったのでありますが、今回追加されます予備費百八十億円も主として災害対策に充てられることとなる見込みでございます。

 最後に、地方交付税交付金でありますが、所得税、法人税及び酒税を歳入に追加計上することに伴い、三百九億円を計上いたしておるのであります。

 また、特別会計予算におきましては、一般会計予算の補正及び公務員の給与改善に関連して、食糧管理特別会計等につき、所要の補正を行なうことといたしておりますとともに、政府関係機関の予算におきましても、日本国有鉄道につき、東海道幹線増設費に不足を生ずる見込みとなりましたので、四百四十三億円を追加し、予定どおり、明年十月の開業を期することといたしておりますほか、日本電信電話公社に九十億円の予算を追加計上して、工事の円滑な進捗に資することといたしておるのであります。

 なお、予算補正に伴い、財政投融資計画におきましても、すでに述べました地方公共団体に対する追加のほか、政府関係機関予算の補正に関連して、日本国有鉄道、日本電信電話公社についても、所要の資金措置を講ずることといたしておるのであります。

 以上、昭和三十八年度補正予算の大綱を御説明いたしました。何とぞ政府の方針を了とせられ、本補正予算に対し、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)

 次に、この機会に、当面の財政金融政策につきまして所信の一端を申し述べたいと存じます。まず、租税政策について申し上げます。政府は、昭和二十五年度以来、国税及び地方税にわたり、総額一兆一千五百億円にのぼる減税を実施してまいりました。その結果、国民の税負担は軽減合理化され、各税間のバランスも改善されてきておるのであります。さらに、明年度におきましては、まず、国民生活の安定向上をはかるため、所得税の減税と住民税負担の不均衡是正、住宅建設を促進するための不動産取得税、固定資産税の減免のほか、電気ガス税の減税を実施いたしたいと存じます。また、開放経済への移行に対処して、資本の蓄積を促進し、企業基盤の強化をはかるため、企業課税の軽減等の措置を講ずる所存であります。特に、貿易依存度の高いわが国経済におきましては、輸出の伸長がきわめて重要でありますので、この際、輸出産業の基盤強化のための税制の確立を期したいと考えておるのであります。(拍手)

 以上の見地から、明年度の税制改正におきましては、国税及び地方税を通じ、平年度二千億円に近い規模の減税を実施する所存であります。(拍手)

 次に、今後の金融政策について申し述べます。最近におけるわが国の金融情勢は、おおむね平静に推移しているものと認められますが、資金需要につきましては幅なお一部にかなり根強いものがあるように見受けられます。このような動向に加え、今後、年末に至る間は、財政の大幅な散超期となりますので、弾力的、機動的に金融調節を実施すること等により、金融基調に過度のゆるみの生じないよう配意し、資金需給の適正化をはかってまいる所存であります。なお、中小企業に対する年末金融の円滑化につきましては、財政資金を追加する等、必要な資金の供給に遺憾なきを期しております。

 貿易・為替の自由化に伴い、わが国経済は、各部門にわたって国際競争力の強化が要請されているのでありまして、産業界においては体質改善の努力がいまや喫緊の要務となっておるのでありますが、この点につきましては、金融界もまた例外たり得ないのであります。金融界は、この際、その公共的、社会的責任をあらためて深く自覚し、まず、みずからの体質改善をはかり、相互の過当な競争を自制し、進んで、新しい見地に立って協調の体制を確立し、開放経済のもとにおける金融機関の責務を十二分に果たしていかれるよう、切に期待するものであります。

 また、経済の新しい局面に対応して、中小企業等立ちおくれた部門の合理化、近代化を促進し、わが国経済全般の能率向上をはかることが今後の課題となるのでありますが、この面におきましても、民間金融機関の協力にまつところがますます大となるのであります。政府といたしましても、この見地から、中小企業金融公庫等政府関係金融機関の資金の確保につき、今後とも、格段の配慮をいたしてまいる所存であります。(拍手)

 さらに、この際、貯蓄の一そうの増強をはかることが基本的に重要であります。また、企業の自己資本を充実し、長期安定資金を確保することも、重要な課題の一つであります。政府におきましては、今後とも貯蓄の増強のため、積極的な配意を行なうとともに、株式市場及び公社債市場の健全化と育成強化を一段と促進する施策を講ずる考えであります。企業の側におきましても、健全にして堅実な経営を旨とし、自力による資本構成の改善につとめるとともに、資金の借り入れについても、節度ある態度を保持することが望ましいことは、言うまでもないのであります。

 次に、国際収支の状況並びにこれに関連する当面の国際金融政策について申し述べます。国際収支は、年初来、おおむね順調に推移しており、外貨準備高は、昨年末の十八億四千万ドルから本年九月末には十九億六百万ドルに増加いたしました。この間、一昨年の国際収支対策として米国市中銀行から借り入れました特別借款も、全部返済し終わったのであります。元来、国際収支は、内外経済の動向等によって変動しやすいものでありますが、先般のケネディ教書に見られるドル防衛策の強化、各国の輸出競争の激化、さらに、OECD加盟、IMF八条国移行等に伴う貿易・為替の自由化の推進など、よりきびしい環境の中で国際収支の均衡を確保していくためには、財政金融が一体となって、わが国の経済活動を安定的ならしめることも、もとより必要でありますが、直接には、輸出をはじめとして対外受け取りの一そうの拡大をはかることがきわめて肝要であります。

 このような情勢に対応し、従来にも増して、輸出力の強化、貿易外収入の増大の施策を強力に推進するなど、民間と政府が一体となって、国際収支の長期的安定を達成するため、格段の努力、くふうを傾注してまいりたいと考えます。

 なお、関税を引き下げることによって国際貿易を一そう拡大しようとする動きが、世界の大勢となっており、わが国も、ガットにおける関税一括引き下げ等の交渉に積極的に参加しております。関税政策を遂行するにあたりましては、各産業の実情を十分考慮して、周到な配慮をいたすべきことはもとよりでありますが、今後、関税一括引き下げを進めてまいりますためには、わが国産業の国際競争力を充実することが不可欠の前提条件でありますので、このための合理化、近代化の努力が一段と強化されることを切望する毛のであります。

 また、長期安定外資の秩序ある導入をはかることは、社会資本の充実、産業基盤の強化のための資金源を確保する上にも、きわめて重要であります。先般、私の渡米に際しまして、道路建設資金に充当するための世銀借款が調印せられ、また、今後の世銀借款の見通しも得られましたことは、まことに喜ばしいことであります。(拍手)

 近時、国際経済は、いよいよ相互依存の関係を深めており、諸国間の協調と協力の重要性も増大しております。わが国のOECD加盟につきましては、今国会において御承認を求めますなど、所要の手続が進められておりますが、この加盟によりまして、わが国は、加盟諸国との協力関係の緊密化を通じ、国際経済の発展に一段と寄与し得ることとなるのであります。他方、最近世界の関心が集まっております低開発国問題につきましても、わが国といたしましては、低開発国の立場に深い理解をもって協力してまいっておりますが、さらに、今後とも、できる限りの協力を推進してまいりたいと考えるのであります。

 このようにして、世界各国との貿易並びに資本交流を拡大して、国際分業の利益を一そう享受し得ることは、わが国経済の安定的成長に資するものであると存じますので、わが国の輸出振興及び経済協力に関しましては、金融の面におきましても、この際、格段の改善充実をはかる所存であります。以上、わが国経済の課題と当面の財政金融政策に関する所信を申し述べました。わが国経済が、なお豊かな活力に恵まれており、あすへの発展の可能性を蔵していることは明らかであります。私は、われわれ国民がすでに蓄積した力を自覚するとともに、いたずらに功を急ぐことなく、足もとを固め、着実な前進をはかることによって、さらに洋々たる将来が開けることを確信するものであります。(拍手)





(私論.私見)