パレスチナ問題を解くための歴史 12、現代史篇その6、2020、30年代 |
更新日/2023(平成31.5.1栄和/令和5).10.16日
2021年、イスラエルは2008年、2012年、2014年に続き4度目の、ガザに対する長期的な軍事攻撃を開始した。
2022年11月1日に執行されたクネセト総選挙でリクードは32議席で第1党を維持し、右派連合が過半数の64議席を獲得し勝利。13日にイツハク・ヘルツォグ大統領より組閣を要請された。 |
2022.12.21日、極右・宗教政党と連立政権樹立で合意しベンヤミン・ネタニヤフがイスラエルの首相に就任する意向を表明した。同月29日、国会でこの連立政権が賛成多数で承認され、ネタニヤフ政権が正式に発足した。 その4カ月後、イスラエルの警官隊がイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクに突入。、10月3日、イスラエル軍に保護されながら同じモスクへ832人のイスラエル人が侵入。イスラム教徒に対する強烈な挑発だ。ネタニヤフ首相、そして彼の後ろ盾が新たな戦争を望んでいた可能性は高い。 アメリカやイスラエルを支配する私的権力にはガザを消滅させたい理由がある。イスラエル北部で推定埋蔵量約4500億立方メートルの大規模なガス田を発見したとノーブル・エナジーが発表したのは2010年。USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガスと34億バーレルの原油が眠っている。そのエネルギー資源を売るマーケットとしてヨーロッパが想定されたはずだ。ライバルはロシアということになる。 ネタニヤフ首相の父親、ベンシオン・ネタニヤフは1910年3月にワルシャワで生まれ、40年にアメリカへ渡った。そこで「修正主義シオニズム」の祖であるウラジミル・ヤボチンスキーの秘書を務めている。その年にジャボチンスキーは死亡、ベンシオンは第2次世界大戦後にコーネル大学などで教鞭を執った。ヤボチンスキーに接近したひとりにレオ・ストラウスという人物がいる。1899年にドイツの熱心なユダヤ教徒の家庭に生まれ、17歳の頃にヤボチンスキーのシオニスト運動に加わったのだ。このストラウスは後にネオコンの思想的な支柱と言われるようになる。カルガリ大学のジャディア・ドゥルーリー教授に言わせると、ストラウスの思想は一種のエリート独裁主義で、「ユダヤ系ナチ」だ。(Shadia B. Drury, “Leo Strauss and the American Right”, St. Martin’s Press, 1997) ストラウスは1932年にロックフェラー財団の奨学金でフランスへ留学し、中世のユダヤ教徒やイスラム哲学について学ぶ。その後、プラトンやアリストテレスの研究を始めた。(The Boston Globe, May 11, 2003) 1934年にストラウスはイギリスへ、37年にはアメリカへ渡ってコロンビア大学の特別研究員になり、44年にはアメリカの市民権を獲得、49年にはシカゴ大学の教授になった。 ストラウスと並ぶネオコンの支柱とされている人物が、やはりシカゴ大学の教授だったアルバート・ウォルステッター。冷戦時代、同教授はアメリカの専門家はソ連の軍事力を過小評価していると主張、アメリカは軍事力を増強するべきだとしていたが、その判断が間違っていたことはその後、明確になっている。 ヤボチンスキーの系譜に属すネタニヤフ親子やネオコンはユーフラテス川とナイル川で挟まれている地域を支配しようとしている。「大イスラエル構想」だ。 |
2021.5月、ハマスとイスラエル軍の前回の大規模戦闘。その際、イスラエル軍はガザ地区への空爆でハマスの軍事拠点、地下兵器工場、軍事用地下トンネルの多くを破壊した。 2021年の戦闘の前の大規模戦闘が2014年だったので、この戦闘の準備には7年をかけていたことになる。 |
2023.10.9日、「イスラム組織ハマスがイスラエルに大規模攻撃、これまでの経緯は」。 |
10.7日午前6時半ごろ、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが、大規模な奇襲攻撃を実施しロケット弾がイスラエル上空に飛来した。サイレンはテルアビブの地域でも聞こえた。イスラエル軍によれば、イスラエルに向けて発射されたロケット弾は約2200発。ハマス側は5000発を発射したとしている。ハマスのメンバーが陸海空からイスラエルに侵入した。パラグライダーを使ったものもいた。これにより数百人のイスラエル人が死亡した。ハマス軍事部門のデイフ司令官は今回の作戦を「アルアクサの嵐」と呼び、イスラエルに対して攻撃を行ったことについて、女性への攻撃やイスラム教の聖地「アルアクサ・モスク」に対する冒とく、現在行われているガザ包囲への対応だと説明した。ハマスは、イスラエル軍兵士を拘束したとし、拘束したとされる兵士の動画をSNSに投稿している。 ハマスは2021.5月、ハマスとイスラエル軍の前回の大規模戦闘から2023年10月までの2年5か月で、数千発のロケット弾を製造し、多くの発射機を製造、兵士たちの携行兵器を調達し、奇襲に使う多くの地下トンネルを再建し、訓練所を建設し(襲撃後にハマスが発表した動画によれば最低6か所)、兵士の訓練を行ったことになる。 |
ハマスとは ハマスは軍事部門を有するイスラム組織で、イスラム教スンニ派の「ムスリム同胞団」を母体に1987年に発足した。 ハマスという単語自体は、「イスラム抵抗運動」のアラビア語の頭文字から来ている。ハマスは、パレスチナの大部分の派閥や政党と同じく、イスラエルは占領国であり、パレスチナを解放しようとしていると主張している。ハマスはイスラエルを国家として認めていない。 イスラエルを国家として承認していないことが、ハマスにとって、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)の間で成立した93年の「オスロ合意」に反対する理由の一つとなっている。 ハマスは自身について、イスラエルを承認し、和平構想に何度も失敗しているパレスチナ自治政府に代わる存在と位置づけている。 ハマスは何年にもわたり、イスラエルに対して複数の攻撃を行っており、米国や欧州連合(EU)、イスラエルはハマスをテロ組織に指定している。 |
10.16日、「世界最重量級のイスラエル軍装甲兵員輸送車「ナメル」 1両がハマスの手に」。
|
10.8日、イスラエルは報復の空爆を行い正式に宣戦布告した。ネタニヤフ首相はハマスによる攻撃の直後、ビデオメッセージで、「我々は軍事作戦ではなく、戦争状態にある」、「ハマスは多大な代償を支払うことになる」と述べた。ハマスは大量のロケット弾を撃ち込んだほか、武装集団をイスラエルに送り込み、多方面にわたる前代未聞の攻撃を行った。イスラエルは攻撃を受けて、「ソード・オブ・アイアン」作戦を開始し、ガザ地区の複数の目標を攻撃した。
イスラエル軍はガザ地区の民間人に対して、即座に居住地域を離れるよう呼び掛けた。 今年は特に暴力が激化している。ヨルダン川西岸地区でイスラエル軍によって殺害されたパレスチナ人の数は、武装組織のメンバーと民間人を合わせて、過去20年間で最も多い。パレスチナ人による襲撃で死亡したイスラエル人や外国人の数もやはり過去最多の水準となっている。殺害されたのは大部分が民間人だ。 イスラエルとハマスの武力衝突は87年に起きた、イスラエルによるガザ地区とヨルダン川西岸地区の占領に反対する第1次インティファーダ(対イスラエル蜂起<ほうき>)にさかのぼる。 イスラエルは67年の戦争でエジプトからガザ地区を奪ったが、2005年にガザ地区から撤退していた。ハマスは07年、パレスチナ自治政府の主流派「ファタハ」と衝突した後、ガザ地区を支配下におさめた。ガザ地区には約200万人のパレスチナ人が暮らす。 ハマスがガザ地区を掌握した後、イスラエルとエジプトはガザを厳重に包囲した。イスラエルはガザ地区の空と海も封鎖している。 |
「ガザにおける今回の戦闘激化が提起した疑問」
|
10.11日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と前国防相で野党「国家統一」を率いるベニー・ガンツ党首は、パレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの武力衝突に対応するため、抗議デモにまで発展した両者の激しい政治的対立を一時的に脇に置くことで合意し、国家緊急政府を樹立することを表明した。イスラエル首相府が発表した声明において、ネタニヤフ首相は「わが国の運命が危機に瀕しているため、われわれは他のあらゆる事項を脇に置き、イスラエル市民とイスラエル国家のため、肩を並べて協力する」と述べた。また、「われわれはあらゆる前線で全力で戦っている。世界がISを排除したように、われわれはハマスを排除する」、「ハマスのメンバーは全員「死人も同然」、同組織の一掃を期す」とした。 ガンツ党首は「戦争をする時が来た。今、われわれは皆、イスラエル国家の兵士なのだ。今こそ団結し、勝利する時だ。ハマスというものを地球上から抹殺する用意ができている」、「私は、イスラエルの全ての市民に向けて、敵は滅び、治安は回復し、われわれの英雄たちが倒れた殺戮(さつりく)の場は再建され、イスラエル国家全体が新たに栄え、強化されることを告げたい」と述べた。 なお、イスラエル国防軍(IDF)によると、10月13日現在まででハマスから6,000発以上のロケット弾が発射され、2,687弾が着弾し、少なくとも1,300人が死亡、3,200人以上が負傷している。ガザ側では、パレスチナ自治政府(PA)の保健省によると、12日午後10時30分時点で1,532人が死亡し、6,612人が負傷した。 |
2023.10.12日「ハーバード学生団体がイスラエル非難声明 富豪ら「署名者は雇わない」と激怒」
|
2023.10.13日、TBS報道番組にイスラエル大使が大激怒『これは何だ?』連呼 ネット上では「国際問題」「子に罪はない」。 10.11日、BS―TBS「報道1930」にジャーナリスト、重信メイが、「中東やパレスチナ問題を長年取材しているジャーナリスト」という紹介で出演した。「メイ氏はレバノン・ベイルート生まれで、母親は2022年5月に出所し、話題になった元日本赤軍リーダーの重信房子氏。父はパレスチナ人活動家です。日本赤軍は1972年、イスラエルの空港で旅行客らに自動小銃を乱射し、24人が死亡する事件を起こしている。身を隠しながら生活していた房子氏の影響で、長年、無国籍状態でしたが、2001年に日本国籍を取得。同年4月に初めて、日本に入国して以降、ジャーナリストとして活動を始めました」(国際担当記者) 11日の放送では、メイ氏は「パレスチナ人はなんで武器を持っていることがいけないの?」という疑問を呈したうえで、パレスチナが弾圧されてきた歴史を説明。「イメージがわかないと思うが、例えて言うと、要は日本で、学校でいじめる子がいたら、常に常に毎日のようにいじめられていじめられていじめられている子が、やっと初めてやり返したら、それに対して焦点が当たったような感じ」、「パレスチナの場合は“抵抗”ではなくて、テロになってしまうことが問題」などと発言した。番組冒頭に、現在の戦闘状況について聞かれた、慶応大学教授の田中浩一郎氏、笹川平和財団上席研究員の渡部恒雄氏らほかのコメンテーターが、1分程度のコメントだったのに対して、メイ氏は約4分にわたりコメントを述べていた。 「番組としても『“天井のない監獄”ガザ地区の現状』と題して、パレスチナ側の悲惨な実態をクローズアップする内容になっていました。そのため、パレスチナ側を全面擁護するメイ氏のコメントが番組全体でも多く占めるようになっていました」(前出・国際担当記者)。 |
メイ氏の起用についてSNSで疑問の声があがった。 《日本赤軍の指導者重信房子の娘として生まれ、その思想を色濃く受け継いだ重信メイをゲストに招いてイスラエル批判させる程度には本邦マスコミは左翼過激派のシンパに牛耳されていた》 《テロリスト重信房子の娘の重信メイをジャーナリストとして出演させるのがTBSです》 《重信メイさんは、重信房子の娘さん。自分の母親のテロが正義だと考えている人を番組に迎えたTBS》 |
10.15日、ネタニヤフ首相は、与党と野党党首らが連携して発足させた戦時下の「挙国一致内閣」を初めて招集。ネタニヤフ首相 「(兵士たちは)再び我々を殺そうとする血まみれの怪物を根絶やしにするために行動する準備ができている」。大規模な侵攻を改めて強く示唆した。 |
アメリカのバイデン大統領はイスラエルがガザ地区を再び占領することについて「大きな過ちだ」と述べた。バイデン大統領 「(ガザの再占領は)大きな過ちだと思う。私の考えでは、ハマスやその他の過激派はパレスチナの人全員を代表している訳ではない」。一方で、ハマスについては「排除されなければならない」との考えを示した。バイデン大統領について、アメリカのニュースサイト「アクシオス」などは、近日中にイスラエルを訪問することを検討していると報じてい。。 |
イスラエル ネタニヤフ首相 「(兵士たちは)再び我々を殺そうとする血まみれの怪物を根絶やしにするために行動する準備ができている」。イスラエル南部・スデロット。JNNのクルーが訪れた15日も、ハマスの攻撃がありました。この一帯には、衝突が始まってからハマスのロケット弾900発以上が飛来。120発ほどが着弾し、市民2人が犠牲になりました。 一方で… 記者 「今、煙が上がりました。そして大きな音、またガザに今、攻撃がありました。煙がこちら側に流れてきていますが、焼け焦げた臭いも感じます」。ガザでは、この日もイスラエル軍の報復攻撃が続き、救助活動が行われていました。すでに100万人が家を失ったとされるなど、人道危機は深刻に。南部にいる国連機関の職員は… ガザ南部にいるUNRWA職員 「ガザを助けて下さい。お願いですからガザを助けて。ガザは死にかけているんです」。国連機関によりますと、ガザではイスラエルが電力と燃料の供給を止めたことで停電も続き、病院では非常用電源の燃料がまもなく底を尽くということです。 そして、イスラエルが近く踏み切ろうとしているのが、ガザに対する地上侵攻。 |
イランの外相は、イスラエルが地上侵攻の準備を進めるなか、ガザ地区への残虐的な攻撃が続けばイランが直接関与する可能性を示し、イスラエルに警告しました。ロイター通信によると、イランのアブドラヒアン外相は「ガザ地区での残虐行為を止めなければ、イランは傍観者ではいられなくなる」と述べ、イスラエルに警告した。イスラエルを支援するアメリカに対しては、「戦争が拡大すれば、アメリカにも大きな損害が及ぶだろう」と牽制(けんせい)した。アブドラヒアン外相は14日、国連の中東和平特使との会談で、「イスラエルがガザへの地上侵攻を実行に移せば対応せざるを得ない」と述べ、イランが直接関与する可能性に言及した。ハマスの指導者とも会談し、イスラエルへの攻撃について「歴史的な勝利だ」と称賛した。 |
(私論.私見)