イルミナティ論

 (最新見直し2007.3.21日)

 (れんだいこのショートメッセージ)

 2006.4.7日 れんだいこ拝


【太田龍・氏の慧眼】
 太田龍・氏の「 「啓蒙主義」と言ふユダヤ惡魔主義のでっち上げた思潮の祕密を、 今こそ日本民族は認識しなければならない。第三章、啓蒙とイルミナティ」を転載しておく。
  一、

 「啓蒙」は、明治以降の日本人の言語世界に定着した。しかし「イルミナティ」はさうでない。「イルミナティ」について何か知って居る日本人は、ごく僅かな事情通を別とすれば、殆ど居ない。「イルミナティ」と言ふ英語(その他のヨーロッパ系の言語)はたしかに存在するし、從って、辞典にも収録されて居る。これを、明治期の先人は、光明結社、啓明結社、 などと飜譯した。

 「光明結社」は、「イルミナティ」と言ふ英語の直譯ではある。けれども、この譯語は定着せず、このことばと、その實體そのものが、やがて日本人(とくに知識層)の視野から消えた。これは理由のないことではない。イルミナティは、嚴重な祕密結社である。そのことと、光明、と言ふ日本語が、なんとなく、矛盾するのではないか。日本人は、直觀的に、そのやうに感じたのであらう。「君子、危ふきに近寄らず」、と言ふことか。これは言はず語らずのうちに、或る種の禁忌事項となり、タナ上げされ、さうして居るうちに、日本人はそのことを全く忘れてしまった。こんな風に説明出來るであらう。

  二、

 日本では「イルミナティ」は殆ど知られて居ない。しかし、米國ではさうでない。米國では、「イルミナティ」に關する、「イルミナティ」側に よって意圖的に作られたニセ情報が一般公衆が、イルミナティの眞相に迫ることを阻止する目的で、そしてこの問題の研究を始めた 人々を、ワキ道に逸らすために、廣汎に世間に流布されて居るやうだ。彼等(「イルミナティ」)が、さうする必要を認めてのことであらう。

 日本の「イルミナティ」研究史を、簡單に振り返って見る。

1. 第一次世界大戰後、シベリアに出兵してソ連共産軍と戰鬪し た日本陸軍は、「日支鬪爭計畫書」(ロシア語)なるものを入 手した。この件については、「ユダヤの日本占領計畫」(荒地出版社 、太田龍著)、その他に解説して置いた。この「日支鬪爭計畫書」は、一九一八年、ロシアに、最光明 結社(これはイルミナティのことであらう)の代表と、ソ連共 産黨政權の代表、世界ユダヤ人の代表が集まり、日支兩國を衝突させる戰略を審議決定した、と言ふ。ここに、「イルミナティ」がチラリと姿を現はした。しかし、日本人は、その後、敗戰に至る迄、この問題を掘り 下げて研究しなかった。誰一人として、そんなことをする研究者は出現しなかったのである。

2. その後、敗戰占領。なにもなし。昭和五十年代になって、五島勉氏のノストラダムスの豫言解 釋、更に、宇野正美氏の聖書豫言解釋。 ここで、ユダヤの世界支配の陰謀、と言ふ問題がやや表面に 出て來るやうになり、赤間剛氏、鬼塚五十一氏はフリーメーソンの研究、昭和六十年代には、敗戰直後からの空白の三十年間に比べる と、かなり、その種の著作が公刊される。

3. 馬野周二氏は、この二十年來、何十册か、この關係の著作を  出版されると共に、アメリカの反ユダヤ文獻を蒐集し、若干の 飜譯も手がけられ、そしてその結果、「イルミナティ」に着目された。有名な(惡名高き)、あのヴァイスハウプトについての英文 小册子も飜譯されて居る。日本民族の視野に、「イルミナティ」が入って來たのである 。

4.  平成四年、私は、英米兩國の英文關連著作の収集調査研究を始めた。すると、フリーメーソンに關する各種の研究書の中に、フリーメーソンの最高級幹部層は、「イルミナティ」と呼ば れる祕密結社に所屬する、そしてこの「イルミナティ」の崇拜對象は、明確に、惡魔で あり、ルシファー(惡魔大王)である、と記述されて居るではないか。フリーメーソンとイルミナティの關係を、疑問の餘地なく、 5.理解することが出來る。

そこに、フリッツ・スプリングマイヤーと言ふ研究者が現は れた。彼は、一九九一年(九〇年)に、「もの見の塔(エホバの證 人)とフリーメーソン」、と言ふ著作を出して居り、私はすぐ、それを購入し、通讀す ると共に、彼が一九九二年から出し始めたニューズレター (「キリストに從ふ者より」)も購讀した。スプリングマイヤーは、「イルミナティ」研究を、歐米に於て、先人が成し得なかっ た非常に高い水準に引き上げつつある。

6.  私と小石泉牧師は、平成四年以降、ほぼ同時に、スプリング マイヤーのイルミナティ研究に接した。

  三、

 イルミナティとユダヤ教の關係如何。ごく表面的に言へば、ユダヤ教はヤーヴェ、ヤハウエを崇拜するが、イルミナティはルシファー(惡魔大王)を崇拜する。と言ふ具合に定義される。ルシファーは「堕天使」のこと。かつて天上界で、天使の三分の一が、ルシファーに率ゐられて神(造物主)に反逆した。そこで、天上界に大きな戰ひが起り、天使ガブリエル、ミカエルらを長とする、天使團が勝利し、ルシファーらは天上界を追放された、との傳説あり。

 地上に堕とされたルシファーは、人間を誘惑して神(造物主)に反逆させた。これが、聖書創世記に、ごく要約的に記されて居る。從って、「イルミナティ」なるものが、神(造物主)、でなく、ルシファーを崇拜するとしたら、これは實に奇怪な話しに成って來る。創世記は、神(造物主)による天地宇宙萬物の創造を描く。天使(エンジェル)が神(造物主)に反逆する、とは、つじつまが合はない。天使が萬物を創造したわけではないだらう。

 しかし、堕天使ルシファーは、神の姿に似せて作られたと言ふ人間をそそのかして、人間をして、神(造物主)に反逆させる、と言ふ。けれども、ルシファーを崇拜し、神(造物主)に反逆する人間 は、神に反逆して一體何をたくらむのか。日本の神話には、こんな、まがまがしい話しはない。けれども、聖書は、神(造物主)と神に反逆する陣營の戰ひに充ちて居る。「イルミナティ」は、疑ひもなく、神(造物主)に反逆する勢力に屬する。神(造物主)に反逆する。この發想が、傳統的日本人には分らなかった。

  四、

 デ・グラッペの「世界撹亂の律法ユダヤのタルムード」(久保田榮吉譯、昭和十六年)を讀むと、バビロニア捕囚期に、ユダヤ教の宗教指導者の一部が、バビロンの宗教を取り入れて、新しい宗教を作った、彼等は祕密結社パリサイ派を作り、そのパリサイ派が、イエス・キリストの時代には、ユダヤの政治的宗教的實權を握り、西暦一、二世紀、エルサレムが陷落したのちは、バビロンに本據を置いて、タルムードを編纂した、と書かれて居る。

 タルムードでは、生けるラビ(ユダヤ教の宗教指導者)は、ヤーヴェ(ヤハウエ)よりも偉い、とされ、ヤーヴェ(ヤハウエ)、神(造物主)は、嘲笑され、嘲弄されて居ると言ふ。つまり、パリサイ派によって、一度、ユダヤ教はまるで別の宗教に作り變へられて居る。パリサイ派タルムードユダヤ教では、造物主ヤーヴェ(ヤハウエ)は、生けるラビの下に、置かれる。生けるラビは、造物主ヤーヴェの上に在り、ラビの言は、トーラーのことばよりも高い權威を有する、
 と言ふ。

  五、

 しかしこれは未だ、惡魔崇拜ではない。タルムード教より更に一歩進むと、カバラ主義と成る。カバラはイルミナティと同水準である。いづれも、惡魔を崇拜する。ここに惡魔とは、造物主たる神に反逆するものを意味する。反逆してどうするつもりか。惡魔は造物主たる神にとって代る、造物主の地位を奪ふ、みづから造物主たらんとするのである。

 十九世紀後半の米國(及び全世界)フリーメーソンの最高指導者、アルバート・パイクは、「神を造ったのは人間である。人間は、自分の 姿 に似せて神を造った」(「道 徳と教義」七三六頁、この叙述は、フリーメーソ ン第二十八階級、「ナイト・オブ・ザ・サン、又はプリンス・アデプト」の中に在る。なほ、この章は二百二十一頁と、異常に長い。この章あたりからカバラ惡魔主義の奧義が説明される)、と言ってのけたと言ふ。

 この命題は、一八四〇年頃、ドイツの唯物論哲學者フォイエル バッハが「キリスト教の本質」と言ふ著作の中でも述べて居る。神(造物主)を造ったのは人間である。この言ひ方、これは、フォイエルバッハや、アルバート・パイクの獨創ではあるまい。神を造ったのは人間である、と言ふ。この神は、造物主であるから、人間は天地宇宙の萬物の造物主、創造主の上に位置する、人間は、神をしてこの宇宙を、いや、時間と空間そのものをすら、創造せしめた、
 と成るであらう。

 これは氣違ひのたはごとか。こんなものは正眞正銘の狂人の言としか思へない。思へないけれども、これは單なる孤立した一、二の狂人の妄想ではない。それは確固として確立されて居る社會制度に根差した命題であ る。この確立された社會制度とは、家畜制度であり、畜産であり、畜産の論理を人間社會の中に導入することである。畜産の論理を人間社會に適用すると、まづ第一に、奴隷制度が出現する。これはまったく見易い道理であって、何人もそれに反論出來ない。

  六、

 アルバート・パイクの「スコットランド系フリーメーソンの道 徳と教義」は、一八七一年初版。これは、フリーメーソン加盟會員用に頒布されて居る著作であって、一般書店市販用ではない。けれども、米國のフリーメーソン會員は數百萬人と、きはめて多い。この本を所持する會員がフリーメーソンを脱退したり、死亡した場合には、フリーメーソンの組織に返却するやう、卷頭に印刷されて居る。その通りに實行される場合もあるであらうが、すべてがさうとは限らない。或る程度、外部に流出する。米國では、キリスト教愛國派のさまざまなグループが、この本を、市販書籍目録の中に入れて居るので、入手出來る。

 私が購入した古本は、一九五〇年、米國ヴァージニア州。本文八百六十一頁。索引二百十八頁。合計一千七十九頁。フリーメーソンは三十三の階級から成り、第三十三階級が最高位。しかし、この本は、第三十二階級で終って居る。索引を見ると、「イルミナティ」の項目は、最後の第三十二階級に初めて出て來る。「イルミナティ」は、カバラ、ゾハール、ヘルメス的フリーメーソン、薔薇十字會、グノーシス派、などと關連付けられる。

 つまり、このやうにしてフリーメーソンの階段を登り詰めると、そこから、「イルミナティ」と言ふ、もう一つの祕密結社の階級組織が始まる、と言ふ仕組みだ。「道 徳と教義」とアルバート・パイクの存在は、何時頃、日本 人の視野に入って來たのであらうか。昭和初期に、ごく限られた專門家、專門筋には知られて居たかも知れない。

 この十年來、フリーメーソン研究家の鬼塚五十一氏は、或る程度、英文の著作類も讀んで居られる樣子だ。そして、英文のフリーメーソン關連文獻には、アルバート・パイク、及び「道徳と教義」が、頻繁に引用され、言及される。それ故、鬼塚氏も、時折、その名を引き合ひに出す。それによって、何千人か何萬人かの日本人の目に、アルバート・パイクの名前が觸れることと成った。平成四年以降、私は、米國の書籍目録を通じて「道 徳と教義」 の英文原本を購入し、この件については、繰り返し、紹介し、論評した。

 從って、この數年來、日本の一般公衆に、始めて、近現代フリーメーソンの古典的著作、「道徳と教義」、及びその著者たる、アルバート・パイクの名前が知られるやうに成った、或ひは少なくとも、努力すれば知ることが出來るやうに成った、と言へる。

 同時に、一八七〇~七一年頃(「道徳と教義」出版の頃)、パイクがマッチーニ(イタリー人。パイクと同世代、ヨーロッパ大陸に於けるフリーメーソンの最高指導者)に宛てた手紙についても、紹介された(鬼塚、太田らによって)。この手紙の主旨は、三つの世界大戰によって、フリーメーソンの目標とする世界支配を實現すべきこと、第三番目の世界大戰は、キリスト教世界とイスラムの間で戰はれる、と言ふこと、である。第一と第二の世界大戰は、パイクの論述した作戰計畫通りに、實現した。

  七、

 しかしながら、アルバート・パイクやマッチーニは、十九世紀後半フリーメーソンの最高指導者であったことは確かであったとしても、そのことは、彼等が、イルミナティ惡魔主義世界権力の頂點に位置して居たことを意味しない。むしろ彼等は、「イルミナティ」の中では、精々、前線指揮官クラスでしかなかったのではないか。

 「イルミナティ」内部の祕密は、ロビソン教授(英國)の著作 「陰謀の證據」(プルーフ・オブ・コンスピラシー)(一七九八年)によって始めて、世間に暴露された。ロビソン教授は、イルミナティの加盟者であったが、のちに、その眞相を深く知るに至ってそれから脱退し、更に、勇氣を持ってそれを世間に警告する著作を公刊した。

 當時の人々はそれを默殺した。殆ど氣にしなかった。しかし、幸ひにも、篤志家によって、細々ながら、米國などで復刻版が出され、この本が歴史の闇の中に消える運命は、今のところ、辛うじて避けられて居る。それから百年、英國の貴族、公爵夫人のエディス・スター・ミ ラー(レディ・クイーンズボロー)が出現して、生涯かけてイルミナティを含む西洋のオカルト祕密結社を調査した。彼女は、しかし、生前にはその著作を公刊せず、自分が死んだあと、出版するやうに遺言し、その遺言は幸ひに、實行された。 それが「オカルト神權體制」である。

 この本も、今日に至る迄、複刻され續け、研究者は入手出來る。私の知る限り、一九七〇年代迄、歐米でも、イルミナティの眞相調査についての、見るべき重要な進展はない。時々、イルミナティから脱出した個々人の告發、またはそのこころみはなされたがたちまちもみ消された。一九八〇年代に入って、何人かの勇氣ある米國のキリスト教徒が、大膽な告發を始めた。その主な一人が、フリッツ・スプリングマイヤーであり、その他に、テックス・マーズ、デーヴィッド・メイヤー(ラスト・トランペット・ニューズレター)も。かうした人々のおかげで、一九九〇年代の數年間に、米國での 「イルミナティ」に關する本物の調査研究は長足の進歩を遂げた、と評價出來よう。

  八、

 正直のところ、まさに今の時代に成って始めて、日本民族は、 「イルミナティ」の眞相に迫る手がかりを得たのであり、從って、いはゆる「啓蒙主義運動」、「啓蒙思潮」なるものの正體を全面的に把握し得る地點に來たのだ、と、結論を下すことが出來る。

 「イルミナティ」を、單に、一七七六年ドイツ、ババリアのヴァイスハウプトによる「イルミナティ」創立、と言ふ知識の水準にとどめてはならない。その先へ、進まなければならない。「イルミナティ」の核心は惡魔崇拜である。しかし、この「惡魔崇拜」と言ふ用語を、淺薄に安直にとらへる誤りに陷ってはならない。

 F・スプリングマイヤーは、「イルミナティの手口のより深い洞察」(一九九七年)、と言ふ最近の著作卷頭に、イルミナティ祕密結社の構造圖を提示して居る。ヴァイスハウプトが作った、ババリアのイルミナティは、十三の階級から成る。現在のイルミナティ結社の構造は、ババリアのイルミナティと そっくり同じではなくて、もとのものに、色々と手を加へて居ると言ふ。

 第一階級は、初心者ウイッチ。このウイッチ、と言ふ英語は、日本語にうまく移せない。通常、「魔女」と譯されるが、適切ではないし、女に限定されても居ない。と言って、魔術師、としてもぴったり來ない。「ウイッチ」とは、男であれ、女であれ、惡魔と交信し、又は惡魔に憑かれて、惡魔の力を與へられ、それを使用出來るもの、を意味する。

 このやうなものとしての「ウイッチ」が、第一段階(初心者、見習ひ、入門)から、第二(スペルと祕密を知るもの)、第三(マスター・ウイッチ、デーモン惡靈を呼び出すことの出來るウイッチ)、そして第四(光の姉妹たち)、第五(暗闇の母、及びグランドマスター)、…と言ふ風に、より高次の(?)惡魔主義に向って上昇(?)してゆく。

 こんなおどろおどろしい話しが、日本人に何の關係があるのか、我々はそんなものとは無縁だ、などと、輕率に口走ってはならない。十九世紀後半からの動物實驗(生體解剖)の奧の院は、まぎれもなく、「イルミナティ」惡魔主義の構造なのだから。

 平成十年三月二十六日記

 (注)[參考文獻]
 シスコ・ウイーラー、フリッツ・スプリングマイヤー共著、小谷まさよ譯「多重人格はこうして作られる― モナーク・マインド・コントロール」(一九九五年)徳間書店、平成八年

 「Electronic Journal」の2006.5.19日付け「イルミナティとフリーメーソンの関係(EJ1838号)」を転載しておく。

 2006年05月19日 イルミナティとフリーメーソンの関係(EJ1838号)

 ロックフェラーのことを述べてきた関係で、フリーメーソンについて詳しく説明する前に、イルミナティについて説明をしようと試みています。その方がフリーメーソンをより理解できると思うからです。

 イルミナティの創始者であるヴァイスハオプトは非常にカリスマ性があり、何人も彼の話を聞くと、強い共感を覚えたといわれます。彼はその時点で既に大きな組織になっていた秘密結社フリーメーソンのあるロッジに自ら入会するのです。「組織を支配しようと思うなら、内部に入るべし」というユダヤ人の考え方の実践といえます。ヴァイスハオプトの強烈な個性と巧みな説得力はその組織のなかでめきめきと頭角をあらわし、押しも押されぬこのロッジの中心人物にのし上ったのです。このようにして、ヴァイスハオプトは、メーソンの組織内部にイルミナティ派を増やしていき、事実上ロッジを支配するようになっていたのです。

 この動きをメーソンの本部は放っておかず、会員に命じていろいろな手を打ったのですが、既にメーソン内部でイルミナティの勢力は既にゆるぎないものになっていたのです。 1782年7月16日にイルミナティとフリーメーソンの間で会談が行われ、協議の結果、イルミナティは正式にフリーメーソンの中のひとつの派とすることになったのです。しかし、これはヴァイスハオプトの巧みにして、強引な説得力の賜物であり、イルミナティとの合併に強く反対するフリーメーソンの会員は少なからずいたのです。

 その一方でイルミナティが加わったことで、フリーメーソンの会員は300万人を超える大組織になり、著
にして有望な会員が次々とイルミナティの思想に取り憑かれるような事態になっていったのです。とくに感受性の強い学者や作家、芸術家などがイルミナティの魅力に取り憑かれたといわれます。その1人がゲーテなのです。ゲーテは晩年、「ファウスト」によってドイツ文学の金字塔を築いたのですが、その作品はイルミナティ的な神秘主義をロマン主義文学に託したものなのです。

 イルミナティとの合併以前からのフリーメーソンのメンバーでゲーテと同様にロマン主義文学者である哲学者のジャン=ジャック・ルソーもイルミナティに共感を抱き、その自由思想によってフランス革命に霊感を与えたといわれています。フランス革命といえば、経済的自由主義者として中心となって働いたオノーレ・ミラボーも、イルミナティに強い共感を覚えたフリーメーソン・メンバーとして知られています。

 しかし、イルミナティはその思想があまりに過激であるために反発し警戒するフリーメーソンの穏健派のメンバーも多く、イルミナティ派の動きには強い批判も多かったのです。1783年のことです。イルミナティ派の一部が、時の政府と教会の崩壊を狙ってテロによる軍事行動を起こすクーデター計画があるという内部告発を受けて、バヴァリア政府が調査に乗り出したのです。 そして政府に動かぬ証拠を掴まれたイルミナティは、1785年3月2日に活動停止処分なり、ヴァイスハオプトは国外追放されたのです。これによってイルミナティは、フリーメーソンからはもちろん地上から完全に消滅したかに見えたのです。

 秘密結社の研究家によるイルミナティについての一般的見解は次のようなものです。
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 イルミナティは、陰謀史家のとり憑かれた頭の中の妄想としてしか存在しないような秘密結社である。彼らは、私たちすべての生活は、ある秘密のエリートたちによって支配されているという恐ろしいセオリーを成立させるために、ありとあらゆるものを動員しているのだ。――ニック・ハーディング
 ――海野弘著、『秘密結社の世界史』より。平凡社新書315
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 しかし、現在ではイルミナティは大きく変質しているのです。現在イルミナティは「三百人委員会」というエリート・グループに支配されており、その目的は「ニュー・ワールド・オーダー/世界秩序」をつくることであるといわれます。この新しいイルミナティ観に火をつけたのは、女性の陰謀史家とされるネスタ・H・ウェブスターの次の本です。
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  ネスタ・H・ウェブスター著/馬野周二訳  『世界革命とイルミナティ』 東興書院/1990
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 ウェブスターによると、フランス革命からロシア革命にいたるまですべてイルミナティの仕業であるというのです。現在、多く出版されている、いわゆる陰謀論のネタ本のひとつです。このように、もともとあったフリーメーソンという秘密結社にイルミナティという一派が入り込み、一体化したのです。すぐイルミナティ派は犯罪を計画して姿を消したのですが、フリーメーソンにはイルミナティ的な因子が多く残されているのです。したがって、フリーメーソンを語るとき、本来のフリーメーソンについて語るか、イルミナティ的なフリーメーソンを語るかによって、その内容は大きく異なってくるのです。

 フリーメーソンについて書かれた本もどちらに重点を置いて書くかによって違ってきます。少しでも面白く書こうとすると、次の図式に重きを置くようになります。

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    ユダヤ = イルミナティ =フリーメーソン
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 私はフリーメーソンには、これらの両面があると考えるべきであると思っています。そのためには、イルミナティについても詳しく知る必要はあるのです。そういう意味からウェブスター女史の所説も取り上げたいと思います。 ・・・・・[秘密結社12]

≪画像および関連情報≫・ネスタ・H・ウェブスター女史について
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  ネスタ・H・ウェブスター女史は、大英帝国の最盛期、ヴィクトリア女王時代の富豪である父と、大僧正の娘である母との間に生れた、奇しき運命の子である。世人が全く知るところがない、近代西洋世界を暗黒の中から動かしてきた秘密結社の正体を、女史の霊眼は余すところなくここに剔抉した。本書は単に過去の分析をもって終るものではない。90年代を再び暗黒に鎖すべく活動するイルミナティの危険。女史が幽界から打ち鳴らす警鐘を、読者は聞くことが出来るだろうか。本書は1921年初版、1961年女史の死の直前に第6改訂版が出され、今日なお幾種類かの翻刻版が出回っている。      http://item.rakuten.co.jp/book/418931/
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 posted by 平野 浩 at 06:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 秘密結社の謎と真相




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