麻生副総理の「ナチスの如く発言」撤回考

 (最新見直し2013.08.14日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、麻生副総理の「ナチスの如く発言撤回考」をものしておく。「麻生太郎副総理はワイマール憲法改正が間違いで、全権委任法成立だった歴史的事実を知らず世界に恥を晒した (板垣 英憲)」その他を参照する。

 2013.08.01日 れんだいこ拝


【麻生副総理兼財務相の「ナチスの如く発言」考】
 参院選余韻の冷めやらぬ中、安倍内閣のナンバー2の地位にある麻生副総理兼財務相の「ナチスの如く発言」が勃発し、すぐさまユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・米ロサンゼルス)の猛抗議が入り、麻生が発言撤回となった。これで一件落着となれば麻生は稀にみる強運の持ち主と云うことになる。これまでの例では政治生命に関わる致命傷となる。
 これを愚考する。

 麻生の「ナチスの如く発言」は、2013.7.29日、保守系改憲&軍事防衛推進派のシンクタンクとして知られている公益財団法人「国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)」主催の東京・平河町の都市センターホテル・コスモスホールでの「日本再建への道」と題した7月月例会の場で起こっている。この時、麻生は、国基研からの櫻井理事長、田久保忠衛・副理事長(「日本会議」代表委員)、遠藤浩一・拓殖大学大学院教授、ゲスト・パネリストとして麻生太郎・副総理兼財務・金融担当相、西村眞悟(無所属)、笠浩史(民主党)両衆議院議員の3人が登壇している。政治家、メディア関係者をはじめ会員、一般参加者など合わせ540人が詰めかけた云々。

 「口は災いの元」を地で行く「ナチスの如く発言」を確認する(朝日新聞の「麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細」より)。
 僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。

 そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ。ここはよくよく頭に入れておかないといけないところであって、私どもは、憲法はきちんと改正すべきだとずっと言い続けていますが、その上で、どう運営していくかは、かかって皆さん方が投票する議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持(きょうじ)であったり、そうしたものが最終的に決めていく。

 私どもは、周りに置かれている状況は、極めて厳しい状況になっていると認識していますから、それなりに予算で対応しておりますし、事実、若い人の意識は、今回の世論調査でも、20代、30代の方が、極めて前向き。一番足りないのは50代、60代。ここに一番多いけど。ここが一番問題なんです。私らから言ったら。なんとなくいい思いをした世代。バブルの時代でいい思いをした世代が、ところが、今の20代、30代は、バブルでいい思いなんて一つもしていないですから。記憶あるときから就職難。記憶のあるときから不況ですよ。この人たちの方が、よほどしゃべっていて現実的。50代、60代、一番頼りないと思う。しゃべっていて。おれたちの世代になると、戦前、戦後の不況を知っているから、結構しゃべる。しかし、そうじゃない。

 しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに、みんなでもう一度考えてください。どこが問題なのか。きちっと、書いて、おれたちは(自民党憲法改正草案を)作ったよ。べちゃべちゃ、べちゃべちゃ、いろんな意見を何十時間もかけて、作り上げた。そういった思いが、我々にある。

 そのときに喧々諤々(けんけんがくがく)、やりあった。30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた。自民党の部会で怒鳴りあいもなく。『ちょっと待ってください、違うんじゃないですか』と言うと、『そうか』と。偉い人が『ちょっと待て』と。『しかし、君ね』と、偉かったというべきか、元大臣が、30代の若い当選2回ぐらいの若い国会議員に、『そうか、そういう考え方もあるんだな』ということを聞けるところが、自民党のすごいところだなと。何回か参加してそう思いました。

 ぜひ、そういう中で作られた。ぜひ、今回の憲法の話も、私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない。靖国神社の話にしても、静かに参拝すべきなんですよ。騒ぎにするのがおかしいんだって。静かに、お国のために命を投げ出してくれた人に対して、敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かに、きちっとお参りすればいい。何も、戦争に負けた日だけ行くことはない。いろんな日がある。大祭の日だってある。8月15日だけに限っていくから、また話が込み入る。日露戦争に勝った日でも行けって。といったおかげで、えらい物議をかもしたこともありますが。

 僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか。昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。

 憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。ぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めてほしくない。

 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK151 」の麻生太郎の本音だろう。『(改憲でナチスの)あの手口学んだらどうかね』音声とその部分の忠実テキスト起こし」を参照する。

 僕はあの4月の28日、忘れもしません4月の28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だから、いって、月曜日だったかなあ、靖国神社に連れて行かれましたよ。それが、私が初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、まあ結構としくってからも毎年1回、必ず行ってると思いますけれども、そう言ったようなもんで行った時に、わーわーわーわー騒ぎになったのは、いつからですか、こらあ。

 昔はみんな静かに行っておられましたよ。各総理大臣もみんな行っておられたんですよ、こらあ。いつから騒ぎにしたんです。マスコミですよ!違いますかね(麻生大きな声で、それに続く大きな拍手)!僕はこう思ってますよ。いつのまにから騒ぎになったんだ、と私は。騒がれたら、中国も騒ぐ事にならざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうや、と言うんで。憲法も、ある日気がついたら、ドイツをさっき話しましたけれども、ワイマール憲法もいつの間にか変わってて、ナチス憲法に変わってたんですよ。だれも気がつかないで変わったんだ。あの手口学んだらどうかね。(会場の喜んだような爆笑)

 もうちょっと、わーわーわーわー騒がねえで。本当に、みんないい憲法、これは、言って、そう言うようみんな納得して、あの憲法は変わってるからね。だからぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりもまったくありませんし、しかし、私どもはこう言ったことは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めないで欲しい。それだけはぜひお願いしたいと思います。

 (英語テキスト)
I never forget...It was April 28, April 28 of 1952
From that day --the day of independence and because it was Monday...
I was taken to the Yasukuni Shrine.
That was my very first visit to the Yasukuni, as far as I recall.
Since that day, until today even after I was very old--
I think I visit there at least once every year.
So I started going, and then all of the sudden--
there is an uproar.
Where did all that start from?
In the old times, we all went there nice and quietly.
All the Prime Ministers went, you know?
So who started the uproar? The media!
Am I wrong?
It's the same for the Constitution.
When did the uproar start? I think.
If there is an uproar, China will have to make a fuss about it.
Korea will also make a fuss about it.
That's why I say "Do it quietly".
Even Constitution can be--
as I talked before about Germany just a while ago--
The Weimar Constitution was changed without even being noticed.
It was changed to the Nazi Constitution--
without anybody realizing it, it was changed.
Can't we learn from that tactic?

You know, without causing all the uproar?
Everyone said that "This is a good Constitution"
That's how the Constitution was changed with everyone accepting it.
So in that sense, I'd definitely...
I don't mean to denounce democracy.
Not at all.
But what we've been...
What I have to stress is that--
we don't want to see this done in the midst of an uproar.
This I really have to implore you.

 「麻生太郎副総理兼財務相の29日の講演における発言要旨は次の通り」を確認する。
 「日本の国際情勢は憲法ができたころとはまったく違う。護憲と叫んで平和がくると思ったら大間違いだ。改憲の目的は国家の安定と安寧だ。改憲は単なる手段だ。騒々しい中で決めてほしくない。落ち着いて、われわれを取り巻く環境は何なのか、状況をよく見た世論の上に成し遂げられるべきだ。そうしないと間違ったものになりかねない。ドイツのヒトラーは、ワイマール憲法という当時ヨーロッパで最も進んだ憲法(の下)で出てきた。憲法が良くても、そういったことはありうる。憲法の話を狂騒の中でやってほしくない。靖国神社の話にしても静かに参拝すべきだ。「静かにやろうや」ということで、ワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか。僕は民主主義を否定するつもりもまったくない。しかし、けん騒の中で決めないでほしい。  日本が今置かれている国際情勢は、憲法ができたころとはまったく違う。護憲と叫んで平和がくると思ったら大間違いだ。改憲の目的は国家の安定と安寧だ。改憲は単なる手段だ。騒々しい中で決めてほしくない。落ち着いて、われわれを取り巻く環境は何なのか、状況をよく見た世論の上に憲法改正は成し遂げられるべきだ。そうしないと間違ったものになりかねない。ドイツのヒトラーは、ワイマール憲法という当時ヨーロッパで最も進んだ憲法(の下)で出てきた。憲法が良くてもそういったことはありうる。憲法の話を狂騒の中でやってほしくない。靖国神社の話にしても静かに参拝すべきだ。国のために命を投げ出してくれた人に敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かにお参りすればいい。何も戦争に負けた日だけに行くことはない。「静かにやろうや」ということで、ワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか。僕は民主主義を否定するつもりもまったくない。しかし、けん騒の中で決めないでほしい」。

【サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)の猛抗議&合唱批判考】
 これに対し、7.30日、ロサンゼルスに本部を置くユダヤ教の人権団体、サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)が、「一体どんな手口をナチスから学べると言うのか」と題した抗議声明を発表し、麻生太郎副総理がすぐに発言の真意を明確に説明するよう求めた。同センターは反ユダヤ主義を監視し、ホロコースト(ナチスによるユダヤ人大虐殺)の教訓を伝える活動を続けている。

 声明は、SWCの副代表で宗教指導者エイブラハム・クーパー氏の発言を引用し、「ナチス政権のどの『やり方』が学ぶに値するのか。民主主義をひそかに無能にするやり方にどんな学ぶ価値があるのか」と皮肉った上で、「ナチス政権の台頭が世界を急速に深淵(しんえん)へと追いやり、人類を計り知れない第二次世界大戦の恐怖に陥れたかを、麻生副総理は忘れたのか」、「世界が学ぶべき教訓は、権力の座にある者はナチスのように振る舞うべきでないということだけだ」と結論づけた。

 ドイツの有力週刊紙ツァイト(電子版)は31日、「日本の財務相がナチス時代を肯定的にとらえる発言をして、国際的な怒りを買った」と報じた。その上で「現在の安倍政権は平和憲法の改正に言及している」と発言の背景を伝えた。ドイツではホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を引き起こしたナチス時代の反省から、ナチス賛美につながる言動が刑法で禁じられている。

 人民日報は次のように述べている。

 「ドイツなら安倍晋三・麻生太郎・下村博文・西村真悟・櫻井よしこらには民衆扇動罪で3カ月以上20年以下の懲役刑が下される。また、日本会議や国家基本問題研究所を含む関係機関は非合法化されるだろう」。

 韓国外務省の報道官は30日、記者団に対し、麻生氏の発言が「多くの人々を傷つけることは明らかだ」と表明した。韓国外務省の公式表明によると、報道官は「過去に日本帝国が侵略した近隣諸国の国民がこうした発言をどのようにみるかは明白だ。日本の政界のリーダーたちは発言や行動に慎重になるべきだと確信している」と述べた。

 日本の政府報道官はコメントを避け、この問題は麻生氏の問題だと述べた。菅義偉官房長官は31日の会見で、麻生氏の発言への認識を問われ、「麻生副総理が答えるべきだ」と述べるにとどまった。


【ワイマール憲法と全権委任法考】

 麻生氏が言及した1919年制定のワイマール憲法は、第一次世界大戦敗北を契機として勃発したドイツ革命によって、帝政ドイツが崩壊した後の1919年8月11日制定、8月14日公布・施行されたドイツ国の共和制憲法である。男女平等の普通選挙権、労働者の団体交渉権などが保障され、当時は世界で最も民主的な憲法とされた。アドルフ・ヒトラー支配下の「ドイツ第三帝国(ナチ・ドイツ)」期において、ヒトラーはワイマール憲法に替わる新たな憲法を制定することはなかったため、ワイマール憲法はナチスが政権を握った1933年以降も正式には廃止されなかったが、ヒトラーの独裁の下、事実上死文化した。形式的にいうと、1949年5月23日のドイツ連邦共和国基本法(ボン基本法)に替わるまで存続したことになる。実質的には1933年3月23日の全権委任法の成立によって効力を失った。全権委任法とは、授権法と呼ばれ、立法府が行政府に立法権を含む一定の権利を認める法律のうち、1933年のドイツで定められた、ヒトラーの政府に国会が立法権を委譲した「民族および国家の危難を除去するための法律」を指す。ヒトラーは、国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP/ナチス)の独裁政権を築き強大な権力を掌握していたうえで、この法律によって「法的正当性」を得て、名実ともに独裁政権を確立した。

 この経緯は次の通り。

 1923年、ミュンヘン一揆。ナチス党は禁止されたが、後継組織が国会議席を獲得。
 1928年、ナチス党として初の国政選挙。12議席を獲得。
 1930年、この年の選挙でナチス党は第2党の地位を獲得。
 1932.3月−4月、大統領選挙にヒトラーが出馬したが次点となる。
 同年7.31日、国会議員選挙。230議席を獲得し第一党となる。
 同年11.6日、国会議員選挙。34議席を失ったが、196議席を確保し第一党の地位を保持する。
 1933.1.30日、パウル・フォン・ヒンデンブルク大統領は、周囲に説得されてクルト・フォン・シュライヒャーに代わってアドルフ・ヒトラーを首相に任命する。
 同年2.27日、国会議事堂放火事件発生。ヒトラーは緊急大統領令を布告させ非常事態を宣言、ワイマール共和国憲法によって成立した基本的人権や労働者の権利のほとんどは停止され、地方行政を支配した。
 同年3.5日、国会議員選挙結果発表。ナチスは43,9%の票を獲得、288議席を得た。
 同年3.23日、議会において授権法(全権委任法)が成立。立法権を政府が掌握し、独裁体制が確立された。ヒトラーが、強大なナチス独裁政権を築けたのは、第1次世界大戦に敗れて、莫大な賠償金を課せられ、国民の大半が疲弊しているなかで、戦勝国に対して恨み骨髄の感情を募らせた結果、ナチスに大きな期待を寄せたからであった。
 同年4.26日、プロイセン州警察政治部門がプロイセン州秘密警察局(ゲシュタポ)と改名。
 同年7.14日、「政党新設禁止法」(de)公布。ナチ党以外の政党の存続・結成が禁止される。
 同年10.21日、ジュネーブ軍縮会議の決裂を理由として国際連盟脱退。
 同年12.1日、「党と国家の統一を保障するための法律」公布。ナチ党と国家の一体化が定められる。
 1935.5.16日、 ドイツ再軍備宣言。
 1936.3.7日、ラインラント進駐。
 1938.3.13日、ドイツ、オーストリアを併合。
 同年9.1日、ドイツがポーランドに侵攻。第二次世界大戦が始まる。ヨーロッパでは世界大戦が本格化。9.3日、イギリス・フランスがドイツに宣戦布告。9.16日、ソ連は独ソ不可侵条約の密約によってポーランドへ進駐。9月27日、ワルシャワ陥落。
 1945.4.30日、ヒトラーが自殺。5.7日、(〜8日)。ドイツ軍が無条件降伏。
 1949.5.23日、ドイツ連邦共和国基本法(ボン基本法)制定。

 8.1日、麻生副総理兼財務相は、ナチス政権を引き合いに「手口を学んだらどうか」と発言したことについて、「誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい」と記者団に述べた。コメントを読む形で記者団に、憲法改正をめぐる議論の重要性を強調するためにあしき例としてナチス政権を引き合いに出したとして「私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である」と釈明した。「麻生副総理「ナチス憲法発言」撤回に寄せたコメント全文(産経新聞)」は次の通り。

 7月29日の国家基本問題研究所月例研究会における私のナチス政権に関する発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。私は、憲法改正については、落ち着いて議論することが極めて重要であると考えている。この点を強調する趣旨で、同研究会においては、喧騒にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげたところである。私がナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らかである。ただし、この例示が、誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい。(原文通り)

 ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK151」の ダイナモ氏の2013.8.2日付け投稿「社説:麻生氏ナチス発言 撤回で済まない重大さ  毎日新聞」を転載する。

 何度読み返しても驚くべき発言である。もちろん麻生太郎副総理兼財務相が憲法改正に関連してナチス政権を引き合いに「あの手口、学んだらどうかね」と語った問題だ。麻生氏は1日、ナチスを例示した点を撤回したが、「真意と異なり誤解を招いた」との釈明は無理があり、まるで説得力がない。まず国会できちんと説明するのが最低限の責務だ。

 麻生氏の発言は改憲と国防軍の設置などを提言する公益財団法人「国家基本問題研究所」(桜井よしこ理事長)が東京都内で開いた討論会にパネリストとして出席した際のものだ。要約するとこうなる。

 戦前のドイツではワイマール憲法という当時、欧州でも先進的な憲法の下で選挙によってヒトラーが出てきた。憲法がよくてもそういうことはある。日本の憲法改正も狂騒の中でやってほしくない。ドイツではある日気づいたらワイマール憲法がナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口、学んだらどうかね−−。

 「憲法がよくても……」までは間違っているとは思わない。問題はその後だ。「ナチス憲法」とは、実際には憲法ではなくワイマール憲法の機能を事実上停止させ、ナチス独裁体制を確立させた「全権委任法」と呼ばれる法律を指しているとみられる。麻生氏の史実の押さえ方もあいまいだが、この変化が後に戦争とユダヤ人虐殺につながっていったのは指摘するまでもなかろう。

 いずれにしても麻生氏はそんな「誰も気づかぬうちに変わった手口」を参考にせよと言っているのだ。そうとしか受け止めようがなく、国際的な常識を著しく欠いた発言というほかない。麻生氏は「喧騒(けんそう)にまぎれて十分な国民的議論のないまま進んでしまったあしき例として挙げた」と弁明しているが、だとすれば言葉を伝える能力自体に疑問を抱く。

 憲法改正には冷静な議論を重ねる熟議が必要だと私たちも主張してきたところだ。しかし、麻生氏は討論会で自民党の憲法改正草案は長期間かけてまとめたとも強調している。そうしてできた草案に対し、一時的な狂騒の中で反対してほしくない……本音はそこにあるとみるのも可能である。

 米国のユダヤ人人権団体が批判声明を出す一方、野党からは閣僚辞任を求める声も出ている。当然だろう。これまでも再三、麻生氏の発言は物議をかもしてきたが、今回は、先の大戦をどうみるか、安倍政権の歴史認識が問われている折も折だ。「言葉が軽い」というだけでは済まされない。

 2日からの臨時国会で麻生氏に対する質疑が必要だ。安倍晋三首相も頬かぶりしている場合ではない。

 http://mainichi.jp/opinion/news/20130802k0000m070123000c.html


れんだいこのカンテラ時評bP158  投稿者:れんだいこ 投稿日:2013年 8月 3日

 「麻生のナチスの如く舌禍事件」考

 2013.7.29日、麻生の「ナチスの如く発言」が物議を醸している。これを仮に「麻生のナチスの如く舌禍事件」と命名する。

 れんだいこの見るところ多少オーバーラン的物言いであるが、いつもの麻生式放言の範疇のもので、サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)が出てくるのは勝手であるにせよ、雑誌「マルコポーロ」の廃刊に匹敵するような麻生失脚まで追い詰めるには値しないと判断する。しかし、SWCの後ろ盾を得たマスコミ及び社共及びその類の批判が執拗に続けられようとしている。まもなく鎮火しようが、興味は麻生追い落としの政治的背景の勘繰りにこそある。

 発端が、保守系改憲&軍事防衛推進派のシンクタンクとして知られている公益財団法人「国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)」主催の東京・平河町の都市センターホテル・コスモスホールでの「日本再建への道」と題した7月月例会の場である。

 この時、麻生は、国基研からの櫻井理事長、田久保忠衛・副理事長(「日本会議」代表委員)、遠藤浩一・拓殖大学大学院教授、ゲスト・パネリストとして麻生太郎・副総理兼財務・金融担当相、西村眞悟(無所属)、笠浩史(民主党)の両衆議院議員3名が登壇している。政治家、メディア関係者、会員、一般参加者など合わせ540人が詰めかけている。

 この場での「麻生発言」が問題化されたが、こうなると対談座長の櫻井よしこ理事長の弁が一言あってしかるべきではなかろうか。音沙汰がないのが不自然である。こういう時に矢面に立たない櫻井よしことは何者ぞ。こうなると、麻生は「飛んで火に入る夏の虫」とばかりに誘い込まれたと読むことも可能である。

 「麻生のナチスの如く舌禍事件」は麻生失脚騒動に転じつつある。この背景には安倍政権の後継問題がある。安倍政権は挙党一致体制とはいえ、これを子細に見れば安倍−麻生連合政権の観がある。自民党内ではこの後継を麻生ラインが引き継ぐのか石破−石原ラインが引き継ぐのかを廻って暗闘している。そのさ中の麻生失脚騒動であるからして石破−石原ラインには好都合な事態となっている。こういう流れの中でのSWCまで巻き込んだ巧妙な麻生失脚騒動の臭いがする。こう読む必要がある。

 SWCの笛吹きに合わせてマスコミが又もや調子を合わせている。ここでは2013.8.2日付け毎日新聞社説「麻生氏ナチス発言 撤回で済まない重大さ」を確認する。この社説士は麻生発言に対し、「麻生氏は討論会で自民党の憲法改正草案は長期間かけてまとめたとも強調している。そうしてできた草案に対し、一時的な狂騒の中で反対してほしくない……本音はそこにあるとみるのも可能である」と評している。

 社説士の読解能力が危ぶまれるところである。これは何も毎日社説だけではない。SWC的理解の下請け的に各社が同様の見解を述べている。しかし、れんだいこは、1950年末の池田蔵相の「貧乏人は麦を食え発言騒動」と似ていると解している。かの時も、池田蔵相はマスコミが造語したような発言はしていないにも拘わらず「貧乏人麦食え発言」として一斉に批判されている。「ナチスの手口を見倣え発言」も相変わらずのマスコミ扇動の感がある。

 これにつき麻生にも責任があることはある。なぜなら、何もわざわざ「手口をまねる」などの怪しげな言葉づかいをする必要がないのに持ち出しているからである。これが為に騒動を呼ぶことになった。「麻生発言」は例によって非論理的、舌足らず、漫画好きなところを評すれば漫画的なものである。

 が、れんだいこが読解すれば、毎日新聞論説士の読解の反対の如くに読める。即ち、麻生発言の趣意は、衆参で絶対多数を握った政権与党が暴力的に一気に改憲しようとする動きに出る恐れに対し、数の論理で強行採決までして為すべきではないと述べていると読める。「私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない」の真意は、野党の反対に対してではなく与党に対する自制の弁であると解する方が自然である。それを、「自民党草案に対し、一時的な狂騒の中で反対してほしくない」と読解するのは逆の受け取りであり即ち為にする曲解であろう。

 「あの手口を学んだらどうか」も然りである。SWCは、「ナチスの手口を学んだらどうかと述べている」としているが曲解である。正確には「ナチス」ではなく「ドイツ」と読み「ドイツの手口を学んだらどうか」と読解した方が真意に近いであろう。もとより、「麻生発言」が既に述べたように非論理的、曖昧、漫画的なものなので読解するのに誤解を生み易い下地はある。

 但し、批判するのなら、その前に当の発言を正確に読み取る読解能力を持つべきではなかろうか。麻生の言語能力が低いところへ、さらにそれ以下的な読解能力を見せて批判の合唱に転ずるなどはよほど恥ずべき愚挙でしかない。

 これについては、れんだいこのみならず他の者も指摘している。れんだいこは、橋下大阪市長の弁を好評することは滅多にないが、麻生氏の発言について大阪市役所で記者団の質問に答え、「ちょっと行き過ぎたブラックジョークだったんじゃないか」、「ナチスドイツを正当化したような趣旨では全くない。憲法改正論議を心してやらないといけないということが趣旨だったんじゃないか」と述べている。これは真っ当な見識である。

 れんだいこの「麻生のナチスの如く発言事件」のもう一つの興味は、例によってSWCが登場し、ヒトラー及びナチス問題の薀蓄を披露した挙句に解釈の仕方までをテキスト化し、そのテキスト通りに口パクしている日本言論界のお粗末さを浮上させたところにある。ご丁寧なことに社民党、共産党がいち早くSWC声明に沿う形で批判声明している。これが日本左派運動の生態であり、この生態が本来のものではないことを、この現場で確認すれば意味がある。

 民主党の海江田代表の弁も然りでお粗末の極みである。生活の党の小沢代表の「麻生副総理のナチス発言、内閣の本音を示す」も似たり寄ったりの弁で物足りない。と云うか、生活の党だけは単なる批判に堕さず、世の冤罪的なものを庇護する側に回ってほしいと思う。そういう度量が欲しい。そういう党がないのが寂しい。

 jinsei/


【麻生の迷言録】
 麻生氏は失言や政治的論争と無縁ではない“舌禍男”である。これを確認する。

 2001年、経済財政相だった麻生は外国特派員クラブで行われた講演で次のように述べている。「日本に外国人が働いていることは良いことだと思う。独断と偏見だが、金持ちのユダヤ人が住みたくなる国が良い国だと思う」。

 2005.10.15日、九州国立博物館開館記念式典での麻生氏(当時=総務相)の祝辞で、「(日本は)一国家、一文明、一言語、一文化、一民族、ほかの国さがしてもございません」。

 麻生氏は2007年参院選中、国内外の米価を比較し次のように述べている。「7万8000円と1万6000円はどちらが高いか。アルツハイマーの人でもわかる」。

 麻生太郎首相は2009.8.23日夜、都内で行われた学生主催のイベントで、若年層の結婚について次のように述べている。「金がないのに結婚はしない方がいい。稼ぎが全然なくて(結婚相手として)尊敬の対象になるかというと、なかなか難しい感じがする」。会場は凍りついたそうな。

 2013.1.21日、午前に開かれた国民会議で、医療費問題、終末期医療めぐる発言として次のように述べている。「私は遺書を書いて『そういうことはしてもらう必要はない、さっさと死ぬんだから』と渡してあるが、そういうことができないと、なかなか死ねない」、「チューブの人間だって、私は遺書を書いてそういう必要はない、さっさと死ぬからと手渡しているが、そういうことができないと死にませんもんね、なかなか」、「(私は)死にたい時に死なせてもらわないと困る」、「しかも(医療費負担を)政府のお金でやってもらうというのは、ますます寝覚めが悪い。さっさと死ねるようにしてもらわないと、総合的なことを考えないと、この種の話は解決がないと思う」(「死にたいと思っても生きられる。政府の金で(高額医療を)やっていると思うと寝覚めが悪い。さっさと死ねるようにしてもらうなど、いろいろと考えないと解決しない」)。午後、この日の社会保障制度改革国民会議での自身の発言に関してコメントを発表し「私個人の人生観を述べたものだが、公の場で発言したことは適当でない面もあった」として発言を撤回し、議事録から削除するよう申し入れる考えを明らかにした。

 他にも「分かっていない人が多すぎる」。「生まれはいいが、育ちは悪い」。「(かつての自民党実力者評の中で)部落出身者を日本の総理にはできない」。

 8.2日の生活の党の小沢代表の「麻生副総理のナチス発言、内閣の本音を示す」発言。
 短期のとはいえ、国会が召集されました。この間、今いろいろ話題になっておりますが、麻生(太郎)さんのナチスについての発言等がありました。非常に大きな、多分本質的な、体質的なところからくる発言だと思いますけれども、民主主義にとりまして、また国際社会の中の日本ということを考えてみましても、ちょっと言い過ぎた、ということでは済まされないことでもあります。なのでこれは幹事長、あるいは国対委員長等で、各党協力して、この会期中にきちんとけじめをつける、ということが必要であろうと思います。いずれにいたしましても、自民党が衆参で多数ですので、数の上では何とも致し方のない面もありますけれども、そういう不要に、いろんな危うい、前から申し上げていましたが、現在の内閣、そこから出てきたいわば本音の発言ではないかという気も致します。そういった問題をきちんと捉えながら、国民の皆さんの理解を得るような活動をしていく、ということに尽きるのだろうと思います。いずれにしても、盆前の短な国会ですが、皆さんにそれぞれの部署で頑張っていただきますようにお願い申し上げます。

 2013.8.2日、日本共産党、民主党、日本維新の会、みんなの党、生活の党、社民党の6野党は2日、国会内で国会対策委員長会談を開き、麻生副総理によるナチスの「手口を学んだら」とした発言について協議し、この問題で予算委員会の集中審議を開くよう与党に要求することで一致した。

 8.3日付け赤旗は、「麻生ナチス肯定発言で6野党 集中審議要求で一致」の見出しで次のように記している。

 日本共産党の穀田恵二国対委員長は「ナチス肯定発言は、極めて重大だ。閣僚として失格であることはもちろん、政治家としての資格も問われる」と述べ、「国会のしかるべき場できちんと議論すべきだ」と主張。ヒトラーが暴力と弾圧で独裁体制を築いた経緯を指摘し「『この手口に学んだら』というのはまさにナチズムの肯定そのものだ」と厳しく批判しました。会談では、発言を批判する声明を検討することも確認しました。同日、衆参両院の議院運営委員会理事会で日本共産党の佐々木憲昭衆院議員と仁比聡平参院議員も麻生氏によるナチス肯定発言を批判し、臨時国会の場で議論すべきだと意見表明しました。

 8.2日、麻生副総理兼財務相は閣議後記者会見で、憲法改正を巡る講演でドイツのナチス政権を引き合いに出した自らの発言が内外から批判されている問題について進退を問われ、「(閣僚や議員を)辞職をするつもりはありません」と述べ、引き続き職責を担うことを強調した。麻生氏は1日、講演でのナチスに関する発言を撤回すると表明した。2日の会見では「ナチス政権の例をあげたことは誤解を与えることになったので、撤回すると申し上げた。憲法改正は落ち着いた議論の中でやるべきだということに関して撤回するわけではない」と強調。一方で、「私の発言を全部読んでも、ナチス政権を正当化するような発言はまったく出ていない」と述べた。また、米国のユダヤ系人権団体や中国外務省、韓国外務省が抗議や批判を強めていることに関しては「(別途謝罪することは)ありません」と述べた。【葛西大博】

 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK152」の 笑坊氏の2013.8.8日付け投稿「麻生太郎氏ナチスに学べ発言擁護論の意味不明 (植草一秀の『知られざる真実』)」を転載する。

 http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-e31f.html
 2013年8月 8日 植草一秀の『知られざる真実』

 安倍晋三政権の副総理を務めている麻生太郎元首相が憲法改定問題に関連してナチス政権に言及した問題に関する論議に、この国の病理がくっきりと浮かび上がる。

 麻生氏の発言の最後の部分は次のものだ。

 「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。」

 ワイマール憲法がだれも気づかないで変えられた。その憲法改正を実行したナチス政権の手口を学んだらどうか、と発言している。この発言が問題になるのは当然のことだ。

 民主、みんな、共産、生活、社民の野党5党は8月7日、この問題について、「釈明の余地のない暴言で、国際社会におけるわが国の信頼を大きく傷つけた」として、安倍首相に麻生氏の罷免を求める声明を発表した。野党代表者は首相官邸を訪れ、安倍首相に申し入れを行なおうとしたが、安倍首相は面会を拒絶した。同時に野党は開会中の国会で集中審議を求めたが、安倍政権はこれも拒絶して国会を閉幕した。日本の民主主義は死を迎えたとしか言いようがない。このなかで、さらに驚くべき光景が広がっている。

 麻生発言が罷免に値するものであることは明白であるなか、この麻生発言を擁護する支離滅裂な主張が横行している現実である。テレビでコメンテーターなどを務めている青山繁晴氏などは、麻生発言に問題は皆無であることを絶叫するが、まさにこの人物の正体を鮮明に表す事例である。独自の視点や主張を持つことを私は否定しないが、客観性のないことを、疑いようのないこととして断言する人物は、まったく信用に値しない。

 麻生氏の発言全体を詳細に検証してみると、その段階で改めて、麻生氏の発言は妄言であるとしか判断できない。これが、日本語についての常識、学識を持つ者の標準的な判断であると、私は思う。

青山氏が個人的な事情で麻生氏を擁護したいとする気持ちは推測がつくが、それを合理性のある説明によって主張しないのでは、青山氏の信用そのものが地に堕ちると言わざるを得ない。これ以上信用を落とす心配はないと高を括っているのかも知れないが、筋の通らぬ主張でも、大声でがなり立てれば道理も引っ込むと思っているなら大間違いだ。

 麻生氏の発言を以下に改めて示す。

 「僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。

 そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ。ここはよくよく頭に入れておかないといけないところであって、私どもは、憲法はきちんと改正すべきだとずっと言い続けていますが、その上で、どう運営していくかは、かかって皆さん方が投票する議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持(きょうじ)であったり、そうしたものが最終的に決めていく。」

 (中略)

 「しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに、みんなでもう一度考えてください。どこが問題なのか。きちっと、書いて、おれたちは(自民党憲法改正草案を)作ったよ。べちゃべちゃ、べちゃべちゃ、いろんな意見を何十時間もかけて、作り上げた。そういった思いが、我々にある。

 そのときに喧々諤々(けんけんがくがく)、やりあった。30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた。自民党の部会で怒鳴りあいもなく。『ちょっと待ってください、違うんじゃないですか』と言うと、『そうか』と。偉い人が『ちょっと待て』と。『しかし、君ね』と、偉かったというべきか、元大臣が、30代の若い当選2回ぐらいの若い国会議員に、『そうか、そういう考え方もあるんだな』ということを聞けるところが、自民党のすごいところだなと。何回か参加してそう思いました。

 ぜひ、そういう中で作られた。ぜひ、今回の憲法の話も、私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない。」

 (中略)

 「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。

 わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。ぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めてほしくない。」

 青山氏は、麻生発言の全文を正確に読むと、「ワイマール憲法を民主主義を使ってナチの憲法に変えたあの手口、そういうことが起きてしまうんだということを反面教師にして、そういうことが起きないように憲法改正もきちんと静かな環境で国民が考えつつやりましょうと発言されている」と述べて、麻生発言を問題視したメディア報道が、麻生発言の文脈を完全に逆さまにした誤報であると述べる。

 あえて私がここで反論する必要もないような低次元の素材であるが、テレビなどに登場する人物が、このような奇怪極まる発言をすると、その発言に付和雷同する人々が登場してくることは、驚きを超えて恐怖である。国が進路を誤るときには、常にこのような世論の暴走が席巻するようになる。正論が排撃され、暴論がはびこるのだ。日本が直面している巨大な危機の断面を端的に示す事例である。

 麻生氏の発言を精査したときに、青山氏が示す「解釈」が生まれることはあり得ないと私は判断する。青山氏は自己のユニークな解釈を絶対的な真実であるとして、この解釈に反する論評は認めないとの姿勢を示しているが、この姿勢の異常さに気付かぬ人々が増えることが本当の「恐怖」である。

(私論.私見)

 植草氏は、ついこの間、自身がミラー盗視事件で裁判沙汰にまでされた当人であろう。それを思えば、この種の批判に控え目になっても良い。にも拘わらずのこの攻撃性はなんだろう。そこが解せない。仮に上草見解を認めても、「麻生氏の発言を精査したときに、青山氏が示す『解釈』が生まれることはあり得ないと私は判断する」とまで述べるのは行き過ぎだろう。「麻生発言」は玉虫色であり、いかようにも読めると踏まえるべきだろう。いずれにせよ、「この種この程度の玉虫色発言」をもって政争の具にしてはいけないと心得るべきであろう。

 2013.8.8日 れんだいこ拝

 【麻生のナチス発言騒動考】
 「麻生のナチス発言騒動」も一段落した模様である。このことは、「麻生のナチス発言」の発生経緯は良くわからないが、次の石破政権の道を敷くためにここぞとばかりに「麻生失脚」を策したが不発に終わったことを意味する。それはともかく、この騒動から透けて見えて来たことを確認しておく。何が見えたかと云うと要するに、ナチスとかヒットラーについて言及するとユダヤ系人権団体のサイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)が出て来て「SWC裁定」し、これに呼応する飼い馴らし勢力が馬脚をあらわに一斉蜂起し、これにより目クジラされた者はエライ目に遭わされるということである。こたびこういうことが確認できた。これは、当人が望んでいたかどうかは別にして結果的に麻生の功績である。
SWCについては別サイト「ユダヤ人人権擁護団体・略称SWC考」で確認する。 

 この事件をそれだけの確認で済ませてはならない。この騒動を通してもう一つ確認しておきたいことがある。それは「ナチスとかヒットラーについての言及の許容度問題」である。日本ではそれほど緊張関係はないが、世界ではどうなのかについて知りたい。結論から申せばどうやら、日本の方が例外で世界では特にドイツではいわゆる絶対のタブーと化しており、このタブーを犯す者には極刑の道が敷かれているらしいと云うことである。具体的にどういう犯罪になりどの程度の刑罰が与えられるのか知りたいが分からない。判明していることは決して軽犯罪ではないらしいと云うことである。

 これにつきネットで確認すると、「ドイツ国内では刑法第86条でナチズムのプロパガンダ及びそれに類する行為が、民衆扇動罪で特定民族に対し憎悪を煽る行為が禁じられており、ドイツ社会主義帝国党など後継政党と見なされた党は即座に禁止されている。また、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、チェコ、フランス、ブラジル等でも同様にナチス関連のプロパガンダを禁じる法律が存在している」との解説がある。そういう取締法があるのは確かなようである。しかし、「それに類する行為」なる規定が臭い。こういう条文にすると歯止めがかからないことになろう。なお、イスラエルはホロコーストに関するナチス党戦犯を国家として訴追しており、現在でもナチ・ハンターによる戦犯捜索が続けられている。「ナチス犯罪訴追には時効がない」ことも知られている。

 しかしこれは日本の常識ではヤリ過ぎであろう。ところが大真面目に日本の方が非常識にされてしまう。この場合、日本の方が非常識なのか欧米の方がヤリ過ぎなのか議論があっても良いのではなかろうか。れんだいこが思うに、戦後の欧米に定式化されている反ヒットラー、反ナチス論はいわば原罪論的に位置付けられ糾弾され続けているのではなかろうか。こういう原罪論は明らかにユダヤ−キリスト教的なもので日本思想にはこの種のものはない。これがヤリ過ぎと思い感じる所以ではなかろうか。

 例題を出してみる。例えば、飼い犬の名前にアドルフ・ヒトラーのアドルフをつけたらどうなるのか。子供の名前にアドルフとつけることができるのかどうか。これについて正確に答えられる日本人は少ないだろう。れんだいこも知らないので教えてもらいたい。ネット検索で、「ドイツでは今でも息子にアドルフと名付ける人はいますか?」の質問に対して次のようなアンサーが為されている。「ドイツ在住の方のブログで、アドルフという名前は、名づけ可能な名前の掲載されている書物に掲載されていないということが書かれていました。アドルフという名前や、ヒトラーという苗字は、無条件で改名が認められているとのこと」。日本的感覚では理解できまい。

 仮に田中角栄が諸悪の元凶だとして、角栄と云う名前が禁止されるなどと云うことはあるまい。角栄と云う名前の子供がイジメられたと云う話しは聞いたことがあるが。仮に東条英機が大東亜戦争の責任者だとしてA級戦犯として処刑されたが、英機の名前が使えないと云うことはない。ところが、ドイツでは許されられないらしい。これが欧米スタンダードであり国際スタンダードらしい。果たして、こういうスタンダードを受け入れねばならないのだろうか。国際スタンダード流行の今日であるからして腕組み黙考してみたい。

 以上は前置きである。このブログで云いたいことは次のことである。この欧米スタンダードが強権的な著作権論とワンセットになって強いられていると云う現実について知られているだろうか。別の角度から云えば、強権的な著作権論が欧米スタンダードを補強しており、そういう類として強権的な著作権論が発生しているということについて認識が共同されているだろうか。れんだいこが強権的な著作権論胡散臭いと断ずる所以であるが、日本の自称知識人が好んで強権著作権論の旗振りをしている現実に掉さしておきたい。これについて説明しておく。

 次のことは史実であり、日本人の我らは「ちょっと待てよ」と思う者が多かろうが、欧米スタンダードでは既に確立されているようである。そしてそのような強権系の著作権が日本に持ち込まれ、今や正義の美名であちこちの分野を侵食しつつある。果たして真似るに値するのかと問うのは少数派で、多勢は強権系著作権の導入こそ文明国の証し的乗りで、そう述べることでいっぱしの知識人顔している。れんだいこには滑稽である。昔から「この田舎者」と呼ばれるのが恥ずかしくて一もなく二もなく都会人風を競ったセンスに似ている。

 内容については「『ヒトラー古記事問題』で見えてくる著作権の本質」に記す。これによれば、原罪論的に極悪とされているヒットラー、ナチスの事を悪しざま以外に言及することは許されないと云う現実が透けて見えてくる。ヒットラー、ナチスを客観化することさえできない。これにより「かの時代に於けるヒットラー、ナチスの台頭過程の歴史的考察」も大きく掣肘される。どうにも不細工にして不便な言論の自由の名の下での言論統制が敷かれているようである。してみればドイツの政論に於いて反ヒットラー論、反ナチス論しか聞こえて来ないが、それは操作された、そういう発言しかできない言論でしかないと云うことになる。そういう種類の言論を有難がって拝戴し、説教する御仁に出くわしたとき、我々の態度ははっきりしている。いわゆる鼻じらみながら聞き流すに限る。このことが言いたかった。

 補足。ナチスという用語の正しい理解を確認しておく。(「」参照)
 「ナチスという言葉について説明しておこう。ドイツ労働者党は、翌年2月に二十五項の綱領を定めて、国家社会主義的ドイツ労働者党と名前を改める。その頭文字をとったNSDAPが、正しい略称である。それをどうして『ナチ』(Nazi)というのかというと、元来は、反ナチスの人達による、ナチスに対する蔑称であった。丁度社会民主党が、その反対者から。『ゾチ』あるいは『ゾチス』と呼ばれていたのと同じである。NationalのNa, Sozialistischeのziをくっつけてナチとしたもので、ナチスはいうまでもなく複数形である。一般には、複数形のナチスを用いるのは正しいであろう。こういう事情だから、ヒトラーたちは。自分たちの党を決してナチスとは呼ばなかった。いまでも、ドイツ人でナチスという呼び方をする人は、決して多くはない。たいていは、NSDAPをつかう」(三好徹「夕陽と怒涛―小説松岡洋右」、文春文庫、p233)。

 なお、三好徹「夕陽と怒涛―小説松岡洋右」は次のように評されている。
 「“外交”によって戦争は回避できると信じた男。「国際連盟」脱退、「日独伊三国同盟」締結、「日ソ中立条約」調印の立役者・松岡洋右である。しかし、その彼の外交手腕を裏切ったものは、常に“日本的な何か”だった。第1次大戦後から第2次大戦開戦までをみつめつつ、悲劇の外交官、松岡の痛恨を抉る傑作伝記小説」。

 2013.8.9日 れんだいこ拝

【「国家基本問題研究所」座長・櫻井よしこの現場証言)】
 2013.8.5日付け産経新聞の「櫻井よしこ氏 歪曲された麻生発言…舌を巻く天声人語子の想像力」を転載する。
 【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】

 なるほど、朝日新聞はこのようにして事柄を歪曲していくのか。麻生太郎副総理発言を朝日新聞が報じる手口を眼前にしての、これが私自身の率直な感想である。8月1日と2日、朝日の紙面は麻生発言で「熱狂」した。日によって1面の「天声人語」、社会面、社説を動員し、まさに全社あげてといってよい形で発言を批判した。討論会の主催者兼司会者として現場に居合わせた私の実感からすれば、後述するように朝日の報道は麻生発言の意味を物の見事に反転させたと言わざるを得ない。

 7月29日、私が理事長を務める国家基本問題研究所(国基研)は「日本再建への道」と題した月例研究会を主催した。衆議院、都議会、参議院の三大選挙で圧勝、完勝した安倍自民党は、如何にして日本周辺で急速に高まる危機を乗り越え、日本再建を成し得るかを問う討論会だった。日本再建は憲法改正なしにはあり得ない。従って主題は当然、憲法改正だった。月例研究会に麻生副総理の出席を得たことで改正に向けた活発な議論を期待したのは、大勝した自民党は党是である憲法改正を着実に進めるだろうと考えたからだ。が、蓋を開けてみれば氏と私及び国基研の間には少なからぬ考え方の開きがあると感じた。憲法改正を主張してきた私たちに、氏は「自分は左翼」と語り、セミナー開始前から微妙な牽制球を投げた。


【西欧諸国の「反ユダヤ法」について】
 「反ユダヤ法」に、これに関する「太田龍の時事寸評」が掲載されている。これを転載しておく。

 グローバリズム・アンチ・セミティズム・レビュー・アクト(全世界反ユダヤレビュー法)

 ある人物が反ユダヤ的と見なされるための条件は、次の十四項目。

  1. ユダヤ社会が政府、マスコミ、国際ビジネス世界、金融を支配して居る、との主張。
  2. 強力な反ユダヤ的感情。
  3. イスラエルの指導者に対する公然たる批判。
  4. ユダヤの宗教を、タルムード、カバラと結び付けて批判すること。
  5. 米国政府と米国社会が、ユダヤ=シオニストの影響下にある、との批判。
  6. ユダヤ=シオニスト社会が、グローバリズム又はニューワールドオーダーを推進している、との批判。
  7. ユダヤ指導者などをイエス・キリストのローマによる、十字架に付けての死刑の故に非難すること。
  8. ユダヤのホロコーストの犠牲者を六百万人の数字をなんらかの程度で切り下げる主張。
  9. イスラエルは人種主義的国家であるとの主張。
  10. シオニストの陰謀が存在すると主張すること。
  11. ユダヤとその指導者たちが共産主義、ロシアボルシェビキ革命を造り出した、とする主張。
  12. ユダヤ人の名誉を毀損する主張。
  13. ユダヤ人には、パレスチナを再占領する聖書に基づく権利はない、との主張。
  14. モサドが9/11攻撃に関与したとする主張。」

 この法律を執行する任務は、米国の国務省に与えられ、この法律にもとづいて全世界を監視する、というのだ。

 ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK152」の「侵略神社参拝の右翼政治屋とドイツ刑法第130条 民衆扇動罪」を参照する。

 ドイツ刑法第130条 「民衆扇動罪」は、「人種間の憎悪を挑発したり、ナチスの民族殺害犯罪を賛美し、或いは史実として否定するような文書を作成し、流布させることにより、人間の尊厳を侵害した者に3ヶ月以上5年以下の懲役を科する」。ドイツ刑法第194条「1、「アウシュビッツの嘘」擁護に2年以下の自由刑、2、「ドレスデンの嘘」擁護にも同様」。

 フランスにも人種差別に対する法律があり、人種・性・障害・
宗教などによる差別をかたく禁じている。ビトロール(人口35000人)市長カトリーヌ・メグレが「治安の悪さは移民問題と結びついている」と発言。この発言に対し、「人種差別SOS」という市民団体と720人の市民が「人種憎しみ教唆」の疑いで告訴。97年9月、メグレ市長に罰金100万円、懲役3ヶ月(執行猶予付き)。面白いことにメグレ市長は、「新聞記者が私の発言の意味を誤解した」と言い逃れ、マスコミを非難。 

 ハンス・ヨアヒム・フォン・メルカッツ(ドイツ党)が、西ドイツ連邦議会で次のように発言している。

 「ドイツ兵に加えられた名誉毀損は償うことができません。ドイツ兵の名誉は侵害できない確かなものです」。「名誉ある人びとを品位のない環境で拘禁しておく企てには反対しなければなりません。ドイツ人の魂にのしかかる負担を取り除くために、力強い行動が必要です。マンシュタイン将軍やケッセルリンク将軍のような男たち、つまり目下ランツベルクとヴェルルに収監されている男たちとわれわれは一体です。我々は、我々の身代わりに彼らにおしつけられたものをともに背負わねばなりません」。

  ニュルンベルク裁判についての次のような発言がある。

 フォン・メルカッツ(キリスト教民主同盟)
 「法的根拠、裁判方法、判決理由そして執行の点でも不当なのです」。
 メルテン(ドイツ社会民主党)
 「この裁判は正義に貢献したのではなく、まさにこのためにつくり出された法律をともなう政治的裁判であったことは、法律の門外漢にも明らかです」。
 エーヴァース(ドイツ党)
 「戦争犯罪人という言葉は原則として避けていただきたい。……無罪にもかかわらず有罪とされた人びとだからです」。
 リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー(大統領)は、ドイツ軍の戦争犯罪を取り上げた「国防軍の犯罪展」について1995年11月27日付けフォークス誌にて、
 「集団としての罪を主張することは、人道的、倫理的、そして宗教的に嘘なのです。無実についてと同じように、罪はいつも個人的なものです」。
 ヘルムート・シュミット(首相)
 「国防軍の犯罪展」について、98年12月23日南ドイツ新聞にて「祖国に対するある種の自己暗示的なマゾヒズム」。98年3月1日ヴェルト・アム・ゾンダーク誌「こういう極左の意見は、危険なのにもかかわらず、禁じられていません」。

 【アテネ】ギリシャのアブラモプロス外務相は24日、第2次世界大戦の賠償をドイツに求める考えを明らかにした。現実になれば、ギリシャ救済策への拠出額が最も多いドイツとギリシャの関係が試されることになる。アブラモプロス外務相は議会で、ギリシャはドイツから戦争賠償を受けることをあきらめたことはないとし、今後はどのように請求するかを決定すると語った。アブラモプロス外務相は「必要なあらゆる措置を推し進めている」と述べた。「厳しい占領期間中のギリシャ人の苦痛に関する正義・真実の回復」が必要だと訴え、ドイツ占領中は「他国に例を見ないほどギリシャ国民が苦しみ、飢え、略奪された厳しい時期」だったと表現した。ドイツ財務省の担当者は、約70年前のギリシャ占領に関連した補償の問題は解決済みだとするこれまでの見解を繰り返した。アブラモプロス外務相は請求額には触れなかったが、地元メディアは財務省の専門家チームが作成した報告を引用し、1620億ユーロ前後に上ると報じた。






(私論.私見)