現役官僚・若杉冽(わかすぎ・れつ)氏の内部告発考

 (最新見直し2015.02.24日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、「現役官僚・若杉冽(わかすぎ・れつ)氏の内部告発」を確認しておく。

 2015.02.24日 れんだいこ拝


【人気の移住先岡山県の危険な情報】
 「★阿修羅♪ > 原発・フッ素42」の赤かぶ氏の2015 年 2 月 24日付け投稿「原子力ムラの“最深部”を暴露した現役官僚が再び問う、原発再稼働がもたらす「最悪の結末」(週プレNEWS)」を転載しておく。
 原子力ムラの“最深部”を暴露した現役官僚が再び問う、原発再稼働がもたらす「最悪の結末」
 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150224-00044042-playboyz-soci
 週プレNEWS 2月24日(火)6時0分配信

 霞が関で働く現役のキャリア官僚が匿名を使い、真実をベースに「ノンフィクション・ノベル」という形で原発利権の闇を鋭く突いた話題作、あの『原発ホワイトアウト』の続編が登場した。 その名も『東京ブラックアウト』。今回、著者の若杉冽(わかすぎ・れつ)氏が描くのは、「某国」のテロリストが高圧送電線網を破壊したことをきっかけに、深い雪に閉ざされた日本海側の原子力発電所で重大事故が発生! 首都・東京をはじめ、日本全体が再び深刻な危機へとのみ込まれてゆく…というストーリー。 前作同様、現役のキャリア官僚だからこそ知り得る事実が、今作でも小説の軸となっているだけに、そのリアリティと説得力はハンパじゃない。小説としてだけでなく、複雑な「原発問題」の全体像を理解する上でもオススメの一冊だ。

 ―まず伺いたいのですが、本書で描かれている「送電線破壊」による原発の重大事故は、現実に起こり得ることなのでしょうか?

 若杉 はい、十分に起こり得ると思います。高圧送電線が警備もなく、むき出しでテロリストにさらされていることに、私自身、恐怖を感じています。 また、この小説の基本を構成しているのは私が直接、見聞きした事実と、間接的に見聞きした事実ですから、純粋な「想像」はほとんどありません。

 ―話題となった前作から1年3ヵ月。なぜ今、続編ともいえる作品を刊行したのでしょう?

 若杉 前作を書いたとき、私は「政治」「官僚」「産業界」がそれぞれの利権を通じて深く結びついた「モンスターシステム」の存在こそ原発問題の核心だということを示しました。 その事実を国民が知ることで原発推進への動きが止まればと考えたからです。ところが現実はまったく変わらないどころか、むしろ酷(ひど)いことになっています。 原発推進、再稼働に向けた動きが着々と進み、その一方で事故が起きた際の避難計画は穴だらけです。避難計画を策定している官僚自身も、住民に説明する自治体も、当の住民だってそのことをわかっているのに、誰も再稼働への流れを止められない。こうした現状に対する「怒り」がこの作品の根底にあります。

 ―今作では、日本海側で起きた原発事故の深刻な影響が東京にも直撃します…。

 若杉 仮に何か事故が起きたとき、「被害」がその地域だけにとどまるのであれば、最悪、地元の自治体や周辺住民の同意が取れればいいのだ…という考え方もあるかもしれません。 しかし「原発」はそういうものではありません。事故が深刻であれば、その影響を受けるのは立地自治体だけにとどまりません。大都市の住民もまったく無関係ではいられないのです。原発問題がいかに一地域の問題ではなく、日本全体の問題なのかということを、原発立地自治体だけでなく都会の住民にも「当事者意識」を持って理解してほしかったのです。

 ―「原発問題」といっても、実際には多くの問題が複雑に絡み合っています。この小説はそうした「原発問題の全体像」を理解する意味でも格好の教科書でもあると感じました。

 若杉 原発問題というのはあまりにも大きな問題ですから、ひとりひとりの目に入っている問題の範囲は限られていて全体像は見えにくい。 私はたまたま、官僚としてそうした情報の「結節点」みたいな場所で、この問題の全体像を把握しやすい立場にあった。実際のところ、そうした立場の人間は政府の中でも決して多くはないと思います。 私がここで見たことを国民の皆さんにお伝えしなければ、この先も、「民は之(これ)に由(よ)らしむべし、之を知らしむべからず」(為政者は人民を施政に従わせればよいのであり、その道理を人民にわからせる必要はないという意味)という政治が続いてしまうという意識がありました。

 ―また、興味深かったのは、この小説に出てくる官僚たちの生き方や考え方、意思決定に関する優先順位です。「官僚という生き物の習性」が一般人にとってはリアルで新鮮でした。

 若杉 それは書き手としては「うれしい誤算」というか…。私としては自分が普段見ている、ごく当たり前の景色を描いたつもりですが、外から見れば「ビックリ」という部分もあるのでしょうね(苦笑)。 ただ、「役人の世界」がすべてゆがんでいるかというと、実際にはそんなこともないわけです。ザックリと分類すると「酷いやつら」が1割、一方、私と同じような気持ちの人たちも1割ほどいて、残りの8割は「風見鶏」といった感じでしょうか…。 原発に関しても時々、内部から「不祥事」のニュースが流出しますが、そういうのは私と同じような「1割」が情報をリークしているのだと思います。

 ―原発推進へと進む現状が「変わらないどころか酷くなっている」と指摘されましたが、このままだと4月、5月以降には川内(せんだい)原発(鹿児島県)が再稼働しそうです。

 若杉 そうですね。川内原発を再稼働した後は、しばらく様子を見つつ、集団的自衛権に関する国会議論の陰で、秋以降に向けて粛々とほかの原発の再稼働準備を進めるのではないでしょうか。 政治・官僚機構・産業界のモンスターシステムが全力で原発推進への動きを推し進める一方で、自民党への政権交代後、参議院選挙、昨年末の衆議院選挙で「原発を見直そう」という国民の意識がなかなか政党の得票に結びつきませんでした。 民主制がきちんと機能していれば民意が反映されるはずなのですが、モンスターシステムの「金の力」がメディアを通じて伝わる情報や民意をゆがませているので、原発推進の機運が止まらないのです。 ほかの産業と違い「地域独占」が制度的に認められている電力産業には、より高い「規律」が求められているはずなのに、彼らはむしろそれを悪用しているので非常にタチが悪い。 私は今、我々日本人の「心の持ちよう」が問われているのだと思っています。モンスターシステムがどんなに強力でも、我々ひとりひとりの「心の中」までは買えないはずです。 だからこそ、私は希望を捨てていないし、こうして本を書いている。モンスターシステムの側も、それを恐れているから、血眼で私の正体を暴こうとしているのだと思います。 (構成/川喜田 研 撮影/有高唯之)

 ●若杉冽(わかすぎ・れつ)
 東京大学法学部卒業。国家公務員Ⅰ種試験合格。現在、霞が関の省庁に勤務。著書に『原発ホワイトアウト』(講談社)がある

 ■『東京ブラックアウト』(講談社 1600円+税)
 原子力ムラから政治家へ金が流れる仕組み…。政治、官僚、産業界が一体となってつくり出している「原子力モンスターシステム」の全貌を暴露して話題となった『原発ホワイトアウト』から約1年半。著者で現役官僚でもある若杉氏が、多くの国民の声を無視して進められようとしている原発再稼働のウラにある欺瞞だらけの避難計画の中身と、懲りない原子力ムラの内情を再び告発する。


 『東京ブラックアウト』若杉冽×古賀茂明 告発対談 「キャリア官僚はメルトダウン中に再稼働を考え始める生き物です」 現代ビジネス 2月20日(金)11時1分配信

 『東京ブラックアウト』は、フクシマ原発の事故後、原子力ムラの思惑通りに原発が次々再稼働して行く過程を描写するところから始まるノンフィクションノベルだ。その後、再稼働した「新崎原発」がテロにあい、全電源を喪失、メルトダウンする。避難計画は機能せず、やがて東京にも放射能の雨と雪が降りそそぐ・・・・・・。

 現役キャリア官僚だから書けたリアリティある悪夢。近い将来、このシナリオは現実のものとなってしまう可能性が高い。 原発再稼働はなぜ止まらないのか、安倍官邸を牛耳るのは誰か、この流れを止める政治家はいないのか、などについて、作者の若杉冽氏と、同じく霞が関の官僚を知り尽くした古賀茂明氏が、120分語り合った。

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 若杉冽(わかすぎ・れつ) 東京大学法学部卒業。国家公務員Ⅰ種試験合格。現在、霞が関の省庁に勤務するキャリア官僚。著者には、ベストセラーになった『原発ホワイトアウト』がある。
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 古賀茂明(こが・しげあき) 1955年、長崎県生まれ。80年東京大学法学部卒業後、現在の経済産業省入省。経済・産業政策の要職を歴任、08年、国家公務員制度改革推進本部事務局審議官に就任。急進的な改革を提言したが、民主党の反対で廃案に。東日本大震災と福島第一原発事故を受け、東電の破綻処理などを『日本中枢の崩壊』(講談社刊)で好評、11年9月退官。その後は『報道ステーション』ほかメディアで精力的に発信。近著『国家の暴走』(角川oneテーマ21)では安倍政権の危険性を指摘、「改革はするが戦争はしない」国の実現を模索する。 
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 霞が関で若杉冽の犯人探しは?

 古賀茂明: 若杉さんとは、前作の『原発ホワイトアウト』が出たあとに、『週刊プレイボーイ』と『週刊現代』で対談しまして、それ以来です。2作目の『東京ブラックアウト』でも、また私の実名を出していただきまして……。安倍首相、小泉元首相、新潟県の泉田知事、他にも 原発ムラの実在する住民たちを連想させる登場人物がみんな仮名。東京電力や電事連、柏崎原発や川内原発も仮名なのに、私はなぜか実名で、ありがとうございます(笑)

 若杉冽: すみません。仮に電車の中で見かけたら声をかけたくなるくらい親しい人は、実名でも後で許してくれると聞きまして。限りなく事実に近くてもウラが取れない話だったり、今後起こり得るんだけれども、もちろんまだ起こっていない話を書くときはどうしても仮名にするので、実名が古賀さんくらいになりました。

 「官僚制に辛辣だが紳士的で主婦層に特に人気がある」「総理夫人の加部咲恵とFB友だちで密かに好意を寄せられている」と褒めてありますので、どうかお許しください。

 古賀: さて、1作目も感動したんですけど、それをしのぐおもしろさで、引っかからずに読めました。避難計画のずさんさとか、再稼働への政府の動きとか、半分くらい自分のメルマガでも指摘したテーマなんですが、それが実際に起きたらこうなってしまうという映像が浮かぶ面白さ、というか怖さです。売れてるんですか? 

 若杉: まだ、古賀さんの霞が関からの告発第一作『日本中枢の崩壊』ほどではありませんが、2作めの『東京ブラックアウト』が7万部で、合計で23万部を超えました。

 古賀: それだけ影響力があると、若杉冽は誰なんだと。現役のキャリア官僚と称しているけど、どこの役所のどいつなんだ、実在するのかと、犯人探しが凄いんではないですか。

 若杉: いや、怖いですよ。私は正直、脅えています。

 古賀: いや、危ないんですよ。普通に考えると犯人を突き止められて、トバされたり、いじめられたり、何をやられてもおかしくないんですが、ただ彼らも少し頭がよくなったようで。下手に若杉冽に手をつけると・・・・・・。

 若杉: そうです。やり過ぎると、窮鼠猫を噛むじゃないですけど、第2の古賀茂明を生んでしまう。それは最悪の事態で(笑)、追い込んだ人間が責任を取らないといけなくなりますから。

 古賀: ギリギリのバランスのところに今はあって、自民党は圧倒的多数で多少余裕がある。これが昔の麻生政権みたいに、もう自民党も終わりじゃないかみたいなときだと、この本で原発再稼働のウラが暴かれて政権の致命傷になるんじゃないかと、本気でつぶしにくると思うんです。だからこれから情勢が変われば「この大事なときに、こいつ」みたいなことが起きると本気でつぶしにくる。

 若杉: 実際、大手の新聞社から著者インタビューの依頼があって、取材を受けたのに、記事にもならなかったという、探りに来たとしか思えないひどい話もありましたね。あれは危なかったです。

 古賀: それは相当いろんなことやってくるでしょう。僕のときは全然、前例がなくて、役所の中で実名でめちゃくちゃ告発を始めたときに、向こうはこいつと思って、いろいろ封じ込めようと思ったんでしょうけれど、僕が常に彼らの想定外のことをやり続けて、どんどん向こうが墓穴を掘ってたって感じでしたね。『日本中枢の崩壊』も事前に秘書課と広報室に出したんですよ、それで内容を検閲してくださいって言った。ところが2週間ぐらいじっと時間がたっても、何も文句を言ってこれない。

 若杉: 検閲したことの責任をだれもとりたくなかったんでしょうね。

 古賀: でも、渡した原稿がダミーで、実は違う内容のものが出て、大臣に怒られたりする可能性があるから、出来上がった本の包みを僕が部屋の机の上に置いておいたら誰かがそれを盗みに来たんですね。で、全部コピーして戻して想定問答を作っていたようです。

 若杉: それは確実な話なんですか? 

 古賀: 私の部屋は、廊下との間に鍵のあるドアがあり、その内側に秘書がいて、さらにその内側の自分の部屋に入るところにも鍵付きのドアがあるんですね。廊下との間のドアには鍵をかけるんですが、秘書のいるところから入るドアにはカギなんてかけたことのないのに、朝になったらカギがかかってた。

 掃除に入った秘書が、おかしいなと思って、私が出勤したとき、「古賀さん、昨日本を見たら1冊だけ新品じゃなくて大きく本を開いた感じのものがあって・・・。向こうは大事なものをしまっているのにカギをかけないはずがないと、勘違いしてバレたんです(笑)。

 『東京ブラックアウト』若杉冽×古賀茂明 告発対談 「キャリア官僚はメルトダウン中に再稼働を考え始める生き物です」現代ビジネス 2月20日(金)11時1分配信

 古賀: 『東京ブラックアウト』は、新崎原発がメルトダウンして、福島第1のときにシミュレーションした最悪の事態、二百何十キロ避難が本当に起きて、ずさんな避難計画のせいで原発20㎞30㎞圏の住民が逃げ惑ってパニックになる。その状況を知ってか知らずか、ずっと離れた官邸の関係者、家族をすでに海外に避難させた霞が関の官僚たちがどういう反応をし、どう自分たちは生き延びようとしているのか、これらがものすごく細かく描写されています(笑)。

 あれはやっぱりキャリア官僚じゃないと絶対に書けない。普通の人から見たらすごい衝撃で、えーっ、官僚たちはそんなひどいやつらなの、えっ、そんなばかなこと、考えちゃうのとか、そういう場面が1ページに何回も何回も出てくるみたいなおもしろさがあります。

 若杉: そうなんですか。古賀さんにそういうふうに言っていただくと大変私としても新鮮な驚きというか、私からしてみると福島第一原発の事故以後は特に、いろんな報道が散発的に出てくるんですけど、やっぱり報道っていうのはウラが取れないといけないから、本当の真実のごくごく一部しか出ないんですよね。

 ウラが取り切れないところにも真実はあって、実像はもっと別のところにもある。実像を知っている私からすると別に日々起きて見聞きしている話、日常的にごくごく当たり前のやり取りで記憶に残ったものを、小説という形に置き換えて書いているだけなんです。それが霞が関の外の人から見ると、とても非常識なことなんだなというのを、外に出られた古賀さんにあらためて言われると、ああ、そうなのかと気がつくものがありますね。

 古賀: いや、そうなんですよ。僕は若杉さんが全国で講演したらおもしろいなと思うんです、さすがにすぐはできないでしょうけれど、講演したらわかります。僕も霞が関の外に出てから、いろいろ講演するようになって難しい話もしますけれども、みなさんが聞いておもしろかったっていうのは、実は官僚ってこういうときはこういうふうに考えて、こういう行動をとっちゃうんですよという普通の話をしたときが1番盛り上がるんですよ。

 驚きだったっていう人もいるし、すごい憤りを感じたっていう人も、めちゃめちゃ滑稽で笑えましたっていう人もいる。官僚ってこうだとは夢にも思えなかったという人が多いんです。『東京ブラックアウト』で例を挙げると、新崎原発周辺がパニックになっているときに、遠く離れた官邸で、原子力ムラの二人が 密談する場面とか。

 若杉: 新崎原発がメルトダウンして、格納容器が爆発して首相官邸も騒然となる中、二人の原子力ムラの人間が騒然とする官邸を抜け出して、「まずいことになりましたな」と言いつつ、今後のことをそっと打ち合わせします。経産省キャリアで資源エネルギー庁の次長と、 「日電連」の関東電力出身の常務理事の二人ですね。

 古賀: ひとりは今、安倍官邸で中心的存在の人がモデルで、もう一人も、東京電力から電事連に出向して、電力会社が政治家にカネを配る仕組みを作った人がモデルでしょう? この二人が、フクシマに続く2度目のメルトダウンの直後に、またしても作業員や住民の被ばく限度を引き上げるところから始まって、懲りずにまた原発を再稼働させるスキームを作っていく。一般の人にとってはさすがにありえないと思う場面ですよ。

 若杉: でも官僚的には当然、ああいう会話になるわけなんです。それはそうですよね、メルトダウンで格納容器が 爆発して、日本がパニックになっているときに、同じ方向に電力関係者も役所も官僚も走っていっちゃったら、事態の収拾はできないわけですから、パパッとああいう今後へのロードマップを作ります。

 ロードマップを作るときには、当然、省益や自分の将来に不利益にならないことを考えます。たとえば与党の政治家が次の総選挙で、「脱原発」と言うのは認めるが、「即ゼロ」と言ってしまう人間は電力業界として支援しないことにしよう。

 原発事故の被災地の復旧・復興の財源を、事故を機会に原子力発電に課税することでひねり出してまおう。つまり実質再稼働するのを前提にしよう、などをメモにする。メモを作るというのは、有能なキャリア官僚なら必ずやりますよね。

 古賀: 福島第一原発事故のときに、『東京ブラックアウト』で描かれたメモと、そっくり同じじゃないけれど、まさにあったんですよ1枚紙が。「Yペーパー」と呼ばれるものです、確か。今、安倍官邸で総理を支えている人ですよね。この事故からどうやって原発再稼働をするかを書いたメモ。

 若杉: 何でしたっけ。大間と島根は動かす、とか、今、建設途上のやつは完成させて稼働させるとか、そういうようなメモですよね? 

 古賀: 福島の原発事故直後で、まさにどうしよう! ? どうしろ! と言っているときに、もうそういう、原発復活へのシナリオをメモにして作っているキャリア官僚がいたわけです。

 若杉: 私としては、キャリア官僚が考えることをそのまま書いただけなんです。

 古賀: ところがそれが実は普通の人から見ると、とんでもない驚きなんです。そういう思いもよらないことが実際に起きているんだというのを知らないまま、表向きの世界だけを知らされて、新聞を読んで、テレビを見る。そして、ああ、やっぱり原発を動かすしかないのかな、いや、原発がないとやっぱり俺たちの生活は貧しくなるんだとか、本当に今でも思っている人がけっこういたりしますね。

 若杉: 集団的自衛権を認めないと北朝鮮との関係でやられちゃうとか、そういうふうに思わされちゃうわけですね。

 『東京ブラックアウト』若杉冽×古賀茂明 告発対談 「キャリア官僚はメルトダウン中に再稼働を考え始める生き物です」現代ビジネス 2月20日(金)11時1分配信

 安倍官邸にいる「優秀な」キャリア官僚たち

 古賀: 官邸主導でそう思わせる術が、すごくうまくなっていると思いませんか? 昔に比べると。

 若杉: そうですね。やっぱり霞が関から行った、官邸のスタッフが悪いやつらだけど優秀だっていうことなんでしょうね。

 古賀: 去年の9月に出した『国家の暴走』という本、サブタイトルは「安倍政権の世論操作術」にしたんですが、政権運営の中でも世論操作を非常にうまくやっているのが安倍政権だなと思うんですね。

 今まで政権運営っていうと派閥のバランスとか、野党との裏取引とかが、大事な要素でした。ところが圧倒的多数を持っているので、いかに世論を操作し ていくか、という政権運営術が最近では小泉内閣に次ぐ、いや、むしろ小泉内閣を超えたと言って良いくらいレベルが上がったんだという感じがするんです。

 若杉: おっしゃるとおりですよね。怖いですよね、本当に。経産省から官邸に来ている3人が、非常に仕事ができ るという意味では尊敬に値する。しかしちょっと方向感覚を間違っていませんかという意味では心配になる人たちがそろってますよね。そういう意味ではよりチームプレーでできているかもしれませんね、小泉内閣のときよりも。

 古賀: そうですね。筆頭秘書官の今井尚哉さん、事務秘書官に柳瀬唯夫さん、内閣広報官の長谷川さん、この経産省キャリアたちはすごくうまく機能していて、その3人って僕が役所にいるときはもちろんだけれど、常にいろいろ議論したり、一緒に仕事したりもした、 ちょっと恐ろしい人たちなんですね。しかも、今年は総選挙がなくなりましたから。

 若杉: やりたい放題ですよね。それにしても今回の解散は永田町自体、ほとんどみんな騙されてましたよね。財務官僚も日銀の人たちも怒り狂ってましたよ。

 古賀: そうでしょうね。特に日銀が、ぎりぎりでバズーカ第二弾で援護射撃したのに恥をかかされた。

 若杉: 消費増税のためじゃなくて自民党を勝たすために俺たちは騙されたんだという感じでした。

 古賀: そこら辺はやはり、官邸の経産官僚が恐ろしいほど活躍しましたね。この調子で川内原発再稼働なんでしょうが、僕は無理やり統一地方選のあとまで延ばさせるんじゃないかと思っています。

 若杉: そうかもしれません、佐賀県知事選で負けたりしたのが影響するかもしれませんよね、再稼働したら統一地方選も厳しいでしょうから。ただ、圧力を散らす可能性もあるんじゃないでしょうか。

 古賀: 集団的自衛権もあるから全部統一地方選後というわけにもいかない? 
 若杉: 私は、川内原発の再稼働も工事計画の認可の遅れを口実に少し遅らせて、集団的自衛権の大騒ぎの裏でスルスルっと川内と高浜の再稼働をやるのかなあという気がしています。後はベルトコンベアのように続くでしょう。

 『東京ブラックアウト』若杉冽×古賀茂明 告発対談 「キャリア官僚はメルトダウン中に再稼働を考え始める生き物です」現代ビジネス 2月20日(金)11時1分配信
 官僚にとって安倍官邸の強権人事は恐怖

 古賀: いずれにせよ再稼働しないという可能性は『東京ブラックアウト』に書かれているように、まったくありませんね? 若杉さんは再稼働反対ではないんですか? 
 若杉: 心情的には反対なんですが、今の安倍政権のもとでは、もう再稼働する以外の選択肢はないでしょうね。それは役人がどうということじゃなくて政治の選択として示されている以上、もう、そこの自由度はなくなっていると思います。

 古賀: 「19兆円の請求書」の文書を出して核燃料サイクルを止めるべきだと主張した改革派官僚じゃないですけど、そういう人たちは今、いないんですか、私がリクルートしたくなるような。

 若杉: いや、いないわけじゃなくて、息を潜めているということだと思います。やはり官僚だって当然、議会制民主制のもとで、政治からガバナンスされているわけなので、そのガバナンスの範囲の中でどこまで動けるかということだと思いますね。

 古賀: 歴代の政権に比べて安倍政権は怖いっていうイメージがありますよね。

 若杉: ありますね。人事も含めて徹底的にやりますからね。

 古賀: 要するに何かやったら徹底的につぶしに来るだろうなと。お前、気をつけろよじゃ済まない。

 若杉: 官僚からすると、そういう怖さがありますね。

 古賀: 昔の自民党なんか、けっこう緩かったですよね。

 若杉: 自民党の中にもいろんな考え方の人がいて、ある先生との関係で問題が生じてもサポートしてくれる別の先生がいるとか、懐が深かったんです。けれども、いまは小選挙区制になったことと、なによりも安倍官邸が非常に強くなっている結果なんでしょうけれども、党内が金太郎飴みたいになってきて異論が許されないんです。自民党の中の議論の幅というのが、ものすごく少なくなってきていると思います。

 昔だったら、別に河野太郎先生とか、村上誠一郎先生みたいに「原発反対」「集団的自衛権反対」と言ったからといっても、ああ中にはそういう先生もいるよな程度の認識だったと思いますが、いまや二人はものすごく異色、異端に見えているというのが残念ですよ。

 古賀: やっぱり安倍さんの個人的なキャラクターが反映しているんでしょうね。一般民間人をツイッターやフェイスブックで、やっつけに行ったりするじゃないですか。一国の総理が個人攻撃をする怖さ。

 たぶん官僚っていう人種はそういう勝負には、強くない人が多いでしょう。ということは、いわゆる原子力ムラのモンスター・システムは結局変わらず維持されるということですか? 若杉さんが『原発ホワイトアウト』や『東京ブラックアウト』でリアルに書き続けている、「電力モンスター・システム」について少し 解説してもらえますか。

 若杉: 「電力モンスター・システム」というのは、電力業界が政界への影響力を高めるための錬金術ですね。電力会社には総括原価方式という電気料金の決め方が法律で決まっていて、かかったコストから料金を決められるわけです。

 浮かせた金を調達先などを使うことによって政治家に配ったり、広告としてマスコミに配る。金で政治を買っているということですね。それで民意が反映されなくなってしまっている。小説では、関東電力から日電連の常務理事に出向している小島が考案した仕組みですね。

 古賀: かかったコストは全部料金に乗せていいという仕組みなので、電力会社は発電所をつくっても、日常的に資材を買っても、いろんなところで政治家やマスコミと飲食しても、全部いくらでも高く払える、その分料金に上乗せすればいいというのが総括原価方式ですよね。

 普通の民間同士だったら100億円で成立する調達を全部120億円にして、高く発注してあげた20億円の超過利潤をプールさせて、政界工作、マスコミ対策用にそれを全部集めてくると、おそらく1000億円単位のお金ができてくるんだけど、それを全部電力会社とか、あるいは電事連とか。この本の中では……。

 若杉: 日本電力連盟ですね。日電連が差配をして、この先生にいくらパーティー券を買ってあげる、いろんな広告とか幹部接待でテレビ局とか新聞社とか雑誌社にもお金が回る。

 古賀: 学者には「先生、研究してください」とか言って、どうでもいいレポートを1本書いてもらうと何百万円と いうお金が行って、いざというとき学者として原発を擁護してくれる。与野党問わず電力業界を応援してくれそうな落選議員は、ちゃんと大学の何とか講師とかを紹介する。あとは何がありますかね。どういうところにお金が回ってますかね。

 若杉: そんなものですかね。「電力会社からの上納金だけでも日本電力連盟に年間400億円が渡り、電力業界全体では年間2000億円が自由に使える」と、『東京ブラックアウト』では書いています。

 古賀: 日本中、ありとあらゆる人が電力会社のおかげで生活しているというのが「電力モンスター・システム」ですよね。みんなで大臣のパーティー券を買ってあげていましたとか、電力会社の役員が個人で献金しましたとか、新聞にポロッと出ますよね。『東京ブラックアウト』にもリアルな例が紹介されていますし、去年あたり談合で、東電も捕まったし、関電も捕まってましたよ。

 要は高く買ってあげるときに昔は全部、いわゆる随意契約。電力会社側が最初から高い値段で入札させてあげるっていう構図が公取が入って実際に摘発して、朝日新聞には大きく出るんだけど、それ以外は大きく出ないです。

 若杉: あれだけの衝撃的な話なのに、ほとんど報じられませんでしたよ。

 古賀: それで僕がわざわざツイッターでつぶやかなきゃいけない(笑)。ところが事故の後、東京電力はそういう変なことがやりにくくなって、コストを下げろ、ちゃんと入札しろと、調達を本気でやっていくうちにどんどん利益が出ちゃいました。

 若杉: 4000億円も改善してしまいましたね。

 古賀: 一方で、総括原価方式があって、東京電力が何であんなに利益が出るのに関西電力はどうしてあんなに赤字なのか? 
 若杉: それはおもしろいですよね。本当は東京電力でやったのと同じことを、横展開すれば関西電力だって、どこだって、みんな原発なしでも黒字になるはずですよね。

 古賀: 関電は一生懸命やったふりをしているけれど、結局、原発依存度が高いから、その分ダメージが大きい。値上げすりゃいいやと思っていたら「値上げするなら、給料削れますか? リストラしますか?」という社会状況になってきた。そうすると官僚の側では天下りで関西電力に行った人の給料もカットするということになって、天下りに行ってる先輩がかわいそうだ、電気料金はあげにくいなあっていうことも考える。

 若杉: それから政治に回っている金も動かせるから、政治との関係でもリストラやコスト削減が許されないでしょうね。

 古賀: そうですね。電力モンスター・システムで養われている政治家から、お前、何やってんだ。何、勘違いしてるんだっていう話になっちゃうんでしょう。だから関西電力は赤字のままなんでしょうね。(以下、後編に続く)


 「安倍政権に危機感を持ってるハト派の官僚は実はたくさんいるんです」『東京ブラックアウト』若杉冽×古賀茂明 対談 【後編】 」。
 『東京ブラックアウト』『原発ホワイトアウト』の著者で現役キャリア官僚の若杉冽氏と古賀茂明氏の対談。前編では、官僚の生態を中心にお届けした。後編では、2冊の著書のような破滅への道から日本の軌道を修正する方法はないのか。永田町、霞が関の人材について本音トークが炸裂する。

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 若杉冽(わかすぎ・れつ) 東京大学法学部卒業。国家公務員Ⅰ種試験合格。現在、霞が関の省庁に勤務するキャリア官僚。著者には、ベストセラーになった『原発ホワイトアウト』がある。古賀茂明氏とは、週刊現代で対談して以来の再会となる。
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 古賀茂明(こが・しげあき) 1955年、長崎県生まれ。80年東京大学法学部卒業後、現在の経済産業省入省。経済・産業政策の要職を歴任、08年、国家公務員制度改革推進本部事務局審議官に就任。急進的な改革を提言したが、民主党の反対で廃案に。東日本大震災と福島第一原発事故を受け、東電の破綻処理などを『日本中枢の崩壊』(講談社刊)で好評、11年9月退官。その後は『報道ステーション』ほかメディアで精力的に発信。近著『国家の暴走』(角川oneテーマ21)では安倍政権の危険性を指摘、「改革はするが戦争はしない」国の実現を模索する。 

 小泉進次郎は期待できるのか?

 古賀茂明: 再稼働が進んだ原発がテロで狙われれば、『東京ブラックアウト』のように、日本はとんでもないことになっていく可能性がありますね。自民党でも民主党でもない勢力が、台頭しなければ、原子力ムラは安泰、再稼働が進み、若杉さんのようなキャリア官僚も、改革には動きづらい。小説では、大泉元首相が「原発即ゼロ」でがんばりますが、現実では小泉進次郎さんあたりが「脱原発」で、立ち上がらないかという期待もありますがなかなか難しい。

 若杉冽: 小泉進次郎さんというのは、国民の多くが、小泉純一郎元首相の面影を感じ、連想したところから、人気が始まっているんですよね。純一郎さん自身が「自民党をぶっ壊す!」と言った変革者であったわけだから、進次郎さんも変革者であり続けないと本当は失速するわけで、彼はそれをどこまでわかっているかですよね。

 古賀: 人間、どうしても放っておくと守りに入っちゃうでしょ。小泉進次郎さんだって、人気絶頂のところから始まっているから、この人気は保ちながら着々と少しずつ自民党の中で地位を上げていこうかと、タイミングをうかがっている感じですよね。あそこまで人気があったら、自民党をいきなり飛び出して、どんどん勝負に出てっちゃったらいいじゃんと思うけれど、コケたくはない。そろそろみんな、何だ何もやらないのかと、感じ始めてくるんじゃないかと思うんです。

 若杉: 最近、週刊誌もあおってますけどね、自民党を飛び出して、進次郎と純一郎で親子新党を作れ! ですから。守りということで言うと、武雄市長だった樋渡啓祐さんが佐賀県知事選に出て、彼はやっぱり県知事に乗り換えるタイミングでオスプレイと原発再稼働に、官邸との関係でコミットした。変革者というよりも、変人として人気を博していた人間が、ある日、気がついたら県知事の切符と引き換えに体制側に回って、それで失速するという本当に非常に象徴的な例だったと思います。

 古賀: 橋下徹さんを思い出しますね。

 若杉: ほぼ同じですよね(笑)。

 古賀: 似てるところがありますね。

 若杉: 再稼働容認で失速です。

 古賀: そう。あれで相当みんな、がっかりしました。僕は全然、恨みには思ってないんだけど、相当だまされちゃったって感じで。今回、『東京ブラックアウト』を読んでいて、橋下さんの大飯原発再稼働のこと思い出したんです……。

 最初、大飯再稼働に反対するとき、「みなさん、福島の事故を見たでしょ。あの事故を見て、まだ原発を動かしたいと思っている人はロボットだ。なぜなら人の心がないんだ」、そこまで言っていたんです。それなのに、ある日突然、「やっぱり動かしてもいい」って言ったんですから。周囲の期待をこんなに高めてくれただけに失望も、思い切り大きかったという結末でした。
 
 若杉: なぜ橋下さんは、変わったんですか? 

 古賀: 僕らに対しては「いやあ、古賀さん、ごめん、ごめん」っていう感じで。「やっぱり大阪市長っていうのは大阪市民の生活を預かっているんだ。古賀さんとか飯田哲也さんとか佐藤暁さんとか、原発の専門家から話を聞いて、確かにうまくやれば原発なしでもいけるような気もした。でも万が一、原発ゼロにした結果、電力供給不足で停電になって、いろんな支障が起きるっていう可能性を、どうしても自分として排除しきれなくなった。政治は結果だから、万一のことが起きたらっていう、そこがやっぱり怖くなっちゃったんですよね」っていう言い方。端的に言えばビビッたんです、関電とか経産省にいろいろ脅かされてね。やはり今井(尚哉・現首相政策秘書官)さんですよ。

 若杉: そうですよね。あの時、資源エネルギー庁次長だった今井さんが、橋下さんを説得したということなんでしょうか。

 古賀: 今、安倍官邸で一番権力を握っているわけですけれど、前原さんのところに今井さんが足繁く通っていました。前原さんはもともと原発推進の超タカ派の人ですが、前原さんと橋下さんがすごく親しくて、橋下さんは将来、国政に出ていったとき組合を切り捨てた民主党という形ができれば組める、その民主党のリーダーは前原さんだろう、と。まあ、反りも合うんでしょうけどね。

 その前原さんのところに今井さんがいつも行って理論武装させて、橋下さんが月に1回ぐらい前原さんのところの勉強会に行くんですね、東京の。そのたびに今井君が一緒に説明して橋下さんの心が揺れるわけですよ。きれいなカラー刷りの資料を見せられて。そうこうしているうちに最後は細野豪志環境大臣が出てくるんですよ。これが超人たらし。すごいんですよ。

 「安倍政権に危機感を持ってるハト派の官僚は実はたくさんいるんです」『東京ブラックアウト』若杉冽×古賀茂明 対談 【後編】 現代ビジネス 2月21日(土)6時2分配信

 若杉: 民主党の代表戦の頃の「週刊新潮」にも書いてありましたけれど、あそこに書いてあるとおりですね、細野さんっていう男の人格は。まったく何ていうんですかね。中身がないし、背骨がないし、環境大臣になって経産省出身の秘書官から「やっぱり原発しかありません」と、ささやかれたら、そう思っちゃうっていう、そういうことですよね。

 古賀: 民主党のだれについても、かわいがられるんですよ。鳩山さんにも、小沢さんにも。そして、菅さんになっても野田さんになっても決して疎まれることはない。

 若杉: 何か、調子のいい経産官僚みたいですね(笑)。

 古賀: ああ、すごい。そのとおり(笑)。

 若杉: 民主党政権でも、こうやって(ゴマをするポーズ)、安倍政権になっても、こうやってる(ゴマをするポーズ)。

 古賀: 私が麻生政権で公務員改革をやっていたときに、麻生さんっていうのは公務員改革が大嫌いな人。官僚とべったりだし、今も財務省とべったりでやってますけど、だから総理大臣が公務員改革をやりたくないわけですよ。

 でも、公務員改革担当が甘利さんで、すごい貧乏くじなんですね(笑)。甘利さん自身は公務員改革をやってもいいかなという思い。組合なんて蹴散らしてやれみたいな、ちょっと武闘派的なところがあるから、けっこう関心を持っていたんですよ。でも上が麻生さんだからあんまり本気でやったって怒られる(笑)。僕らとしては、選挙がもうすぐ来ますよ。これで公務員改革に後ろ向きっていうレッテルを貼られたら、自民党はもう地に落ちますよというのを脅しにして、ずっとやっていたわけですね。 

 若杉: 古賀さんが、新聞にリークしたり、民主党をたきつけたりしながらですよね(笑)。

 古賀: 国会ではその流れをつくるためには民主党にガンガン質問してもらうわけです。それでいろんなネタを持っていくわけですね。細野さんとか長妻さんとか馬渕さんとか、松井孝治、松本剛明、それから原口一博、この辺がワーワー言って責めるわけですよ。

 若杉: 国会で攻められ続けるのが甘利さん。

 古賀: 特に細野さんが、弁舌さわやかでツボにはまって甘利さんをガンガン攻撃したわけです。「天下りを全部やめさせろ」とか。それで翌日、大臣室に甘利さんを訪ねたら、機嫌が悪いかなと思いきや、「しかし細野っていうのはいい男だな、すごい追及の仕方も格好いいし、男前だし、ああいうのが自民党にほしいんだよな」と言うわけです(笑)。攻撃されて、ケチョンケチョンに言われているにもかかわらず、甘利さんが「いやあ、山本モナが惚れるのは本当にわかる」って。どんどん話がそれてますけれどね。

 若杉: まあ、細野さんが代表になれば民主党も復活できるんじゃないか、とも思いましたけれど、あの暴露合戦で失敗しましたよね。

 古賀: ちょっと何か、人格に、細野さんに「はてなマーク」がついちゃった。でも安倍さんもあそこまで1回、落ちて復活してますからね。

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 ?「戦争はしないけれども改革はする」党は成立するか

 若杉: 今日の対談の前に私も『国家の暴走』読ませてもらいましたけれど、いや、大変興味深かったんです、古賀さんの言う「戦争しないけれども改革をするっていう」のは、確かに国民はそこのところを求めていると思うんです。けれど、なかなか現実の政治で出てこないじゃないですか。江田憲司さんが一時、そうだったかもしれないけど、橋下さんと手を握っちゃって、わからなくなってしまったし。そこって、どうして有力な政治家が出てこないんですかね。

 古賀: 安倍政権の人たちは古賀はあんなこと言っているけど、あれは妄想なんだと。

 若杉: 妄想ですか(笑)。

 古賀: つまり改革はするけど戦争はしないなんていうことを支持している層がいないから、だれもそういう政策を掲げないんだ。こういうふうに一生懸命宣伝してるらしいです。だけど僕がいろんな地方とかを回って講演したり、いろんな地方の議員とか、いろんな人と話をしてると全然、そんなことはなくて、マグマとしてはそこの部分っていうのは相当たまってるなって。

 若杉: いや、本当に、飢餓感がすごくどんどんマグマとして蓄積しているような気がしますね。私の周りでも、ハト派の官僚はいっぱいいます。ただ、あれよあれよと、日本版NSCができ、特定秘密保護法ができ、集団的自衛権の閣議決定がなされてしまった。危機感をもっている役人も多いですよ。

 古賀: 自民党が気がついてないだけで、今、だんだん山体膨張みたいな感じになってるというのが僕の見方で、選挙直前になればみんな、どこの党を選ぼうかというので政党支持率というのを見ると無党派がだんだん減っていくんですけど、選挙がないときは無党派がずっと膨らんできたじゃないですか。もう半分前後、常にあるという。集団的自衛権を閣議決定しました。それで10%落ちましたと。結局、今、受け皿になる政党、政治家がいないなと、みんなが感じていて、だからしょうがないな、無党派だと。

 若杉: ところが選挙になると、入れるところがないという。しかたないから共産党に入れた。

 古賀: 僕は、このまま行くと、安倍政権っていうのは確実に戦争に向かっている。しかも安倍さんとして見れば何が何でも、ただ戦争したいと思っているわけじゃもちろんなくて日本を守るためには戦争できるような体制をどんどん整えなくちゃいけない。それは武器輸出三原則をなくしちゃったっていう、ここがすごい大きいと思うんですね。

 最初は、武器輸出解禁したって、アメリカとかイギリスとかフランスとかロシアとか中国が入り乱れてものすごい競争をやっている中にポッと出の日本の業界が、はい、性能がいいです。買ってくださいなんてやったからって、そんな簡単に売れるようなことはないし、全然、心配ないですよという話だった。ところが4月に解禁して、今や日本の潜水艦がすごいとか、日本の何とか式戦車がすごいとか、ありとあらゆる分野で日本の技術はやっぱりすごいですよ。あとは値段だけだと。 

 若杉: にもかかわらず、豪州に潜水艦を売り込もうとしたら、豪州国内で反発を招いて、アボット首相が解任されそうになる始末です。いきなりやりなれていない商売で、武士の商法という印象を受けます。

 古賀: 僕が1番驚いたのは、江渡(聡徳)さんかな、前の防衛大臣の発言です。今までなら国会で防衛産業の問題になると、「決して金儲けじゃなくて、国民の命を守るためには日本の防衛産業も成長してもらわないといけないんです。金儲けは夢にも考えていません」っていう答弁をして逃げるという想定問答を共有してみんなでそれを守っていたわけですよ。だから、『報道ステーション』で「防衛産業を税金で援助する動き」のニュースを去年の12月にやった時も、どうせ質問してもまともな答えはかえって来ないだろうけれど、せめて防衛大臣が逃げてる感じを出そうか、そういう絵を撮ろうと思って質問したら、「いや、武器輸出で国内の産業の基盤充実を考える、国民の雇用にもなる」と防衛大臣が答えてしまったんです。「えっ」て言って、みんなが驚いて、その先の関連質問ができなくなっちゃった。とプレスの人が言ってましたよ。

 若杉: 呆気にとられて終わったと(笑)。

 古賀: 今、とんでもないこと言っちゃったよっていう場面があったんですよ。

 若杉: 不思議ですね。

 古賀: 武器産業を成長の柱にっていうね。もしそれが起きたらどうなるかっていうと、まさに戦争できる国じゃなくて、アメリカで今、起きている、これからどんどん防衛予算は削減です。長期計画がつくられちゃいましたと。それで何が議論になっているかというと、ロッキード社がどこかの工場の何割の人をレイオフですとかいう話になって、景気が悪くなるとか、その地域が沈んじゃうとかいう議論を一所懸命やってるわけですよ。日本でもそれが起きるっていうことですね。

 若杉: やめられなくなってしまうわけですね、一度武器輸出を始めて、軍需産業で潤うと。

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 悪魔のジグソーパズル

 古賀: もちろん防衛産業をやっている人だって世界中で人殺しをしたいと思っている人は1人もいないんだけど、何を願うようになるかというと、やっぱり戦争が起きればな。これは売れるぞというのをどうしても考えちゃうでしょ。戦争のほうへという政治的圧力が高まって、これは公共事業と同じになるわけですよ。

 知り合いの土建屋さんで、「人間としてこんなこと思っちゃいけないんですけど、誰も死者が出ない災害が起きてほしい、っていう気持ち正直あるんですよ」というね。そうすれば公共事業で生活がラクになる。

 若杉: 正直な人ですね。防衛産業でもそう考える人が出てくるんですね。

 古賀: 原発もまったく同じ構造ですよね、結局。あの事故を見たら「やっぱり動かすって人間じゃないよね」って橋下さんが言った言葉、ほとんどの日本人が共有したと思うんだけど、気がついてみると、しばらくするとね。ああ、完全に復活してると気がつくんです。

 若杉: 『東京ブラックアウト』で書きましたが、新崎原発の格納容器爆発の直後、官僚と日電連の二人が、ロードマップを考える場面。見せ掛けじゃない発送電分離を作ると言いながら、実はできるだけ先延ばしして、その間に既存の電力会社が生き延びられるように、制度的に全部きっちり保証してしまうというやり方をするんですね。

 古賀: 国民から見れば、東京電力はまだまだ、だれも責任とってないじゃないかという話なんですが、他の電力会社から見ると、国に対して俺たちを同じ目に遭わせるつもりじゃないでしょうね、万一、事故があっても、東京電力みたいな惨めなことにはならないようにしてくださいよということなんです。だから、発送電分離の前に今、ものすごい細かいことまで含めて全部経産省がたぶんリストアップして、はい、これは何々審議会の何々小委員会ね。これは内閣府の方でやってもらえますか、と制度的に保証しようとしている。

 若杉: おっしゃるとおりなんですよ。今まではそもそも原発事故は起きないという前提だったので、もしものことが起きたときについての制度的な備えはなかった。何かあったら国が面倒見てくれるだろうという電力会社と、経産省の間で、阿吽の呼吸という感じの信頼関係があったんです。けれど、原発事故があって、そういう阿吽の呼吸でやるとか信頼関係とかそういうのも崩れてきている。だから、全部制度的に担保しなくちゃいけなくなって、それをやっているんです。そういう意味ではまさに改悪なんですよね、制度としては。

 古賀: そう。だから今までなんとなくふわふわとした部分があったんで、だから原子力ムラのモンスターといっても、なんとなくちょっとやや弱いところもありそうな、アキレス腱がありそうな感じのモンスターだった。

 若杉: そうですよね。ところが、最後のアキレス腱のところまで鎧で覆ってしまうような改正を今、進めつつありますよね。ガチガチに重武装して、だれがどうやってかかっても絶対に簡単に払いのけられるようなモンスターになろうとしている。で、その重武装が全部バラバラに行われてるんですよ。

 古賀: マスコミはとても理解できていない。本当は一覧表にして、事故が起きたときとか起きないときも含めて原発にまつわるいろいろなコストっていうのを、こういうものは必要です、こういう対応は必要です。全部1から20、30ぐらいまで挙げてこれはここで手当します、どこの審議会で議論しています、どこの大臣がこういう発言してますという一覧表をつくってパッと貼り出すとすごいおもしろいだろうなと。

 若杉: 今は完成したジグゾーパズルをわざわざ一度、ばらけてマスコミに投げつけてるから、どのピースがどうはまっているのかわからない。

 古賀: それ、すごい、いいたとえです。もうジグゾーパズルのようにわかりにくい。

 若杉: そういうことですよね。私なりに、そのジグゾーパズルをなるべくつなぎ合わせてわかりやすくしたのが、この『東京ブラックアウト』での再稼働への霞が関や永田町の原子力ムラの住人のヤリ口の描写なんです。避難計画をどこの責任で作るのか、発送電分離をどう進めるのか……。けれども、まだまだ政府の中にいる私ですら、ピースでわからないところもありますしね。

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 安倍政権は最悪の組み合わせ

 古賀: そうするとまだまだ本当は書ききれないウラもたくさんあるし、これから先、どうなるのかなとか、次のタイトルを何か、考えてますか? 
 若杉: この悪だくみが続く限りはできるだけがんばりたいとは思いますけどね。

 古賀: でももう、僕は「改革はするけれど、戦争はしない」第4象限の党、「フォーラム4」とかいろいろ言ってるんですけど、そろそろ若杉さんも正体を現して日本の政治に打って出るんだみたいなことをやってくれませんか? そういう投書とか来ません? 

 若杉: 講談社には来ているそうですけれど、私は政府の中にとどまって発信し続けるほうが、今の時点では意味があるかなと思っています。第2、第3の若杉冽が出てくるのであれば、もう私は不要になる。そうなればそういうこともあるかもしれませんね。

 古賀: これは『原発ホワイトアウト』のときの対談より、一歩踏み込みましたね(笑)。あのころは「何がなんでも私は中にとどまって発信するほうが意義があると思います」で、そこで終わりでしたけれども。

 若杉: そうでしたか。いや、だから第2、第3の若杉冽が出てくれば。

 古賀: 出てきますかね。

 若杉: どうですかね。ただ相当おかしいなと思っているやつらは、霞が関にもいっぱいいますよね。

 古賀: 今の安倍政権っていうのはすごい悪い組み合わせなんですよね。政策がおかしいんです。だけど政権運営はすごくうまいんです。

 若杉: 最悪の組み合わせですよね。悪い政策が着々と実現していくという恐ろしい組み合わせです。

 古賀: 民主党の場合はみんなが一時期、期待して、いい政策も持っていたのかもしれません。けれども政権運営がめちゃくちゃだったので、何もできないで終わった。1番いいのは素晴らしい政策を持っていて、かつ政権運営もきっちりできるということになれば国民のためになることがどんどん実現していく。

 それを仮に第4象限の勢力が大きくなって政権を担うということになったときでも政策はいいんだけど政権運営をきっちりやらなきゃいけない。そのためにはおかしな官僚にだまされたり、あるいは足を引っ張られたりとか、そういうチャレンジがあっても、だまされないようにする。

 若杉: 民主党政権は目指していたことは、自民党のオルタナティブとしていい政策もたくさんあったと思います。ただ、前作『原発ホワイトアウト』でも書いたとおり、烏合の衆で、政権を取るまでが目的化していて、政権をとった後の官僚の操縦術、掌握術がまるでだめだった。

 「改革派官僚を行政内部で公募する」なんて気張ってみても、官僚は政治家と180度違ってリスク回避志向が強い人種です。政治家の側が見極めて引っ張り上げないといけない。

 「安倍政権に危機感を持ってるハト派の官僚は実はたくさんいるんです」『東京ブラックアウト』若杉冽×古賀茂明 対談 【後編】 現代ビジネス 2月21日(土)6時2分配信

 古賀: 心ある官僚をちゃんと見分けて引っ張り上げて、政権運営をしていくという、それをやらなくちゃいけないので、そうするとやっぱりある程度の数の心ある官僚とか、元官僚とかいう人をリクルートしておく必要があるんです、事前に。

 そういう人がいるとなれば、第4象限の党に行ったってうまくいくのかなっていう不安感を持っている政治家に対しても、こんなにサポートする官僚部隊がいますよとアピールできる。もうすでに霞が関を辞めた人の中でも改革派といわれる人は少しはいるんだけど最近、ちょっと辞めた人たちがおかしくなっていってるような感じもあってね。

 若杉: ああ、そうですか。あっ、確かに一部、そういう人たちもいますね。

 古賀: いきなり原発推進派になって、電力会社に買収されちゃったのかなという人とか、急に専門でもないけど集団的自衛権とか、バンバン応援してみたりとか。結局は安倍政権があまりにも強いので、反対していても飯の種にならないなって判断するという。

 若杉: せっかく役人を辞めたのに残念なことですよね。本当に。

 古賀: 辞めろとまでは言わないけど若杉さんみたいな形でチャレンジしたり、あるいは政権の中からいろんな改革を叫んだり、叫ぶとつぶされるというのであれば、外の人を使って、それを実現しようとしたり、あるいは思い切って外に出て、中の人と協力しながらそういう政治勢力をつくっていこうとか、そういう改革派的な官僚というので、もう1回、ちょっとね。

 若杉さんが私が若杉ですよと言ってやるわけにいかないけど、本名で。いや、若杉という正体とは全然、違う本来の自分の現場の立場でそういう人をちょっと探してもらって僕ら外にいる人たちといろいろ勉強したり、何か、そういうのってできないですかね。

 若杉: もちろん私も努力しますけれども、当然、私が知らないところにも改革派の卵はいると思うので、ぜひ、このメルマガなり、雑誌の記事を読んだ方にはですね、直接、第4象限の党首の古賀さんに連絡をしてください。

 古賀: いや、いや、私は党首とかはいいんです(笑)。

 若杉: そこで古賀さんが党首じゃないっていうのもちょっと話の流れ的に・・・・・・。

 古賀: まあまあ、それはさっきの逆襲ですね。逆襲を受けてますけど(笑)。

 それで第4象限の党っていうのはわかりにくいので、今、フォーラム4っていうのを始めようかと。フォーラム4の霞が関支部だったり、あるいは何々省支部的な人たちをつくってもらう。それでやりたいという人はもちろん僕に直接、連絡をとってもらってもいいし、あるいは講談社のこの『東京ブラックアウト』編集部宛に若杉冽さんを私は手伝いたいという手紙でもメールでももらってもいいし、それは本当に10人とか20人とか集まったらすごいことになりますよ。

 若杉: そうですよね。「改革はするけれど戦争はしない」というのは、僕は思想信条的には大賛成ですよ、それは。

 古賀: もうすぐにも立候補したいと。

 若杉: いや、いや(笑)。たださっきも出ましたけれど、現実の政治を今、やってる人で、それを担ぐ個人名はあまり見えてこないのは・・・・・・。渡辺喜美さんとかはそうだったんですか? 
 古賀: 昔はそうだったけど、思い切りタカ派になっちゃった。江田憲司さんはそのうちタカ派の橋下さんと大ゲンカして割れたら、第4象限という可能性はあります。民主党の中で実は潜在的にはけっこういると思うんですね。だけど強力なリーダーがいないんですよ。今、1番近いのは長妻さんなんだけど、長妻さんはやっぱり…。

 若杉: 長妻さんは代表選で官公労が支持してましたよね。霞が関改革派の長妻さんが公務員の組合の支援を受けるというのは、あれ、どういうことかわかんないんですけどね。

 古賀: 長妻さんだけでしたからね、民主党政権で天下り撤廃とか本気で戦って、厚労省の逆鱗には触れるし、財務省はつぶしにかかったんですね。

 だから公務員改革とか1番熱心なはずなんだけど、今回は、岡田さんにしても、細野さんだって本当は組合なんか嫌いなんだけど、とにかくみんな、組合票っていうのが1番当てになるんですよ。今回は長妻さんの考えはやっぱり離党するより、代表戦で勝った方が近道だろうということだったんでしょう。でも勝たなかったのでよかったかなと(笑)。

 若杉: じゃあ、将来の第4象限の党は長妻党首の可能性もありますね。

 古賀: もう、霞が関アノニマスとか、そういうのもいろいろ始めてみたいと思いますので、ぜひ、心ある官僚の方々はわれこそはと。あるいはちょっとのぞいてみようでもいいんですけど、まあ、難しいんでしょうけど、若杉さんのように覆面してでもいいので、是非参加してほしいと思っているんですよ。 (文中一部敬称略)








(私論.私見)