東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年になるのを前に、ドイツでは世界各国の原発に反対するデモが行われました。ベルリン在住の作家、多和田葉子さんも参加し、原発の停止を呼びかけました。福島第一原発の事故を受けドイツは脱原発の方針を決め、来年までに国内すべての原発の運転を停止することにしています。
首都ベルリンでは6日、原発に反対する市民グループの呼びかけでデモが行われ、およそ200人が再生可能エネルギーへの転換のシンボルとして風車を手にし「福島を忘れるな」とか「ただちに脱原発を」などと書かれた横断幕を掲げて行進し、日本など世界各国の原発の廃止を訴えました。デモでは、ベルリン在住でドイツで最も権威のある文学賞の1つ「クライスト賞」も受賞している多和田葉子さんが壇上に立ち「原子力のシステムは人生の意義をいつでも破壊しうる。存在するだけで、私たちの心の中は絶えず汚染されてしまう」と、原発をただちに停止するようドイツ語で呼びかけました。スピーチのあと、多和田さんは「政治的にそれほど活動してこなかった普通の人間としてどういうふうに考え、なぜ絶対に原発をやめたほうがいいと思うのか伝えたいと思った」と話していました。参加した女性は「福島の事故は原発を安全に運転することはできないとはっきり示した。世界中の原発をただちに止めなければならない」と話していました。ドイツでは7日以降も原発反対のデモなどが各地で行われる予定です。
ドイツは来年まで全原発を停止予定 再生可能エネルギー割合50%超
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、ドイツは2011年、国内に17基あった原発を段階的に廃止する脱原発の方針を決めました。現在稼働しているのは6基で、いずれも来年までに停止される予定です。代わりに風力や太陽光などの再生可能エネルギーを推進していて、去年、再生可能エネルギーが総発電量に占める割合は50%を超えました。
一方、脱原発政策をめぐっては、政府の急な方針転換によって損害を受けたとして、原子力発電所を運転する電力会社による訴訟が相次いでいました。政府は5日、電力会社4社に対しておよそ24億ユーロ、日本円で3100億円余りを支払うことで合意したと発表しています。