外交官・村田光平氏の反原発運動考

 (最新見直し2012.6.8日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 「2012.6.16日号の週刊現代」の巻頭のモノクログラビアで元外交官・村田光平氏の反原発活動が8ページに亘るインタビュー記事で紹介されている。興味を覚えたのでサイト化しておく。村田氏のホームページは「村田光平オフィシャルサイト.」。

 2012.6.8日 れんだいこ拝



 原発・放射能 原子力独裁者たちが断末魔の叫びを上げる日がやってくる」を転載しておく。
 原発に躊躇するというのは倫理の欠如という誹りを免れない

 3月22日、参院予算委員会の公聴会が開かれました。福島第一原発の4号機プール、そして敷地内の共用プールに格納・冷却されている使用済み燃料の状況について、国会議員たちに説明されました。民事・軍事を問わず核廃絶を目指して、国際的な活動を行っている元スイス大使・村田光平氏に、国会議員は深い影響を受けたようです。私たち日本人の行く末に一条の光が差し込んできたようです。

 この日の午後の公聴会では、・政策研究大学院大学学長/ 白石隆、岡本アソシエイツ代表/ 岡本行夫、地球システム・倫理学会常任理事 元駐スイス大使/村田光平の三氏が質疑の受け答えをしています。白石氏、岡本氏は内容が貧弱なので割愛します。元スイス大使の村田光平氏の質疑の受け答えは、日本の進むべき未来を指し示すものであり、議員の側からの質問が相次いでいます。また、質問した議員たちは、深く感銘を受けたようです。ここでは、その村田光平氏をフィーチャーします。

 公称人:元スイス大使・村田光平氏の意見

 このような場で発言させていただくことは、大変光栄に存じます。今日、ここに参りますに当たりまして、特に、みなさま方に伝えたいことがございます。それは、いかに現在、日本、そして世界が危機的状況に直面しているかということであります。人間社会が受容できない、この原発のもたらしうる惨禍のリスク、これをゼロにしなければならない、と私は福島事故は全世界に想起させつつあると信じております。そして、このような事故を体験しながら、なお脱原発に躊躇するというのは倫理の欠如という誹りを免れないと、私は考えております。特に、この処理方法がいまだに発見されていない核廃棄物、これに象徴されるのは、今の世代の倫理の欠如と言えると思います。そして、これは人類が緊急に取り組まなければならない課題だと信じております。そして、この放射能汚染と、これを許すあらゆる行為は、計り知れない害悪を永久に人類と地球に残すものです。私が出席した2005年のOBサミットは最終文書で、「未来の世代を含む、すべての人の認められる人権」ということで、未来の世代の人権を認めているわけですが、放射能汚染は、まさにそれを蹂躙するものであります。

 原発の死角、使用済み燃料は過去に危機的な状況を何度も引き起こしてきた

 特に今日、みなさまにお伝えしたいのは、福島4号機の危険な状況でございます。毎日、日本すべての国民は、余震が起きるたびに怯えております。この燃料プールが、もし崩壊して、1535本の燃料棒が大気中で燃えだした場合には、果てしない放射能が放出されると。もちろん、東京は住めなくなるわけです。この1353本という数字は、実は控えめでございまして、つい数日前、私が発見した数字がございます。それは、1号から6号、共有のプールがございまして、それは4号機から50メートル離れたところでございますが、そこに、なんと6375本の燃料棒が収められていると、いうことであります。まさに、この4号機が事故を起こせば、世界の究極の破局の始まりと言えるわけであります。それにも関わらず、嘆かれるのは、危機感の欠如であります。 この対策として考えられている燃料棒取り出し作業の開始が※来年末以降というのは断じて理解できませんし、放置してはならないと考えております。 国の責任が極めて重要だと信じます。この点に関して、ついにアメリカが動き出したようであります。数日前、入った情報によりますと、この著名な核科学者が中立の評価委員会の設置の提唱を始めました。 これは、元国連職員で、世界中の著名な学者と連携を取っている松村昭雄さんが、米政府の元・上級政策アドバイザーで、使用済み核燃料の第一人者であるボブ・アルバレス氏、他の科学者たちに働きかけたものです。この経緯については、2月に4号機プールにはチェルノブイリ原発の8倍のセシウムがあるで書いておきました。

 太平洋を越えて、アメリカ西海岸へも放射性プルームが飛んでいき、事実、多くのアメリカ人に重大な健康被害が出ています。4号機プールが破損でもすれば、本当に北半球が終ってしまうので、米政府も、いまだに危機感もなく世界に対しての責任感もない野田政権と日本政府に業を煮やしたのです。 そして上下両院の軍事委員会に、米軍の命の安全のための公聴会を開くように働きかけ出した、ということでございます。次に日本から世界の究極の破局をもたらし得るものとして指摘できるのは、六ヶ所村の再処理工場であります。この六ヶ所村の再処理工場(が、いかに危険か)につきましては、1977年の1月15日、毎日新聞が記事を書いております。これによりますと、ケルンの原子炉安全研究所の発表では、極秘レポートでありますが、西ドイツの人口の半分、3050万人が死ぬであろうという報告であります。 そして、この再処理工場の恐ろしさは、実はヨーロッパでもシェルブールの停電事件としてグーグル検索で、すぐ出てまいりますが、欧州全土を滅ぼしうるものだったと言われております。

 これは、20年以上前に出版された広瀬隆氏の東京に原発を! (集英社文庫)の本の一部抜粋です。1980年、タイトルどおりの事故が、フランスのシェルブール近くのラ・アーグ再処理工場で起きそうになりました。事故が起きていたら、下の世界地図のとおり、ほぼ北半球のみならず、南半球まで致死量の放射能に襲われるという非常事態。さらに、2011年12月1日の、アレバ社は、アレバ社・ラ・アーグ(La Hague)の核・放射性廃棄物再処理工場は、「放射能による危険性は無い(いつもの言い回し)」という「レベル1の事故」があったことをマスコミに公開したのです。まさに、ヨーロッパの抱える時限爆弾です。

 日本のラ・アーグは、青森県下北半島の六ヶ所村です。この再処理工場の危険性を、私は内外に伝えておりましたところ、先週、欧州の代表的な環境学者、エルンスト・フォン・ワイゼッカー教授から、その伝えを正式に指示するという連絡が入っております。この日本は、福島事故を経験しまして、民事・軍事双方の核使用の犠牲国となったわけでありますが、悲しいかな、今や世界的規模の放射能汚染の加害国にもなってしまっています。毎日、毎時1億ベクレル近い放射能が出ているということも、さきほど東電で確認いたしました。毎時0.7億ベクレルでございますが、おびただしい放射能がでているわけでございます。

 これを聞くにつけ、私はメキシコの原油流出事故が止まらないときに戦慄したのを覚えております。まさに原油ならぬ放射能が同じような状況に置かれているということであります。私は、福島を経験した日本は、民事・軍事を問わない真の核廃絶を世界に伝える歴史的責務を担っていると信じております。そして、私が今まで、あちこちで講演する際、この主張に対して異論を唱える人は皆無でありました。そして、私はこのような危機的状況、そして福島では、まさに、事故当初、作業員の全面撤退が考えられていた。もし、その全面撤退が行われていれば、確実に世界の究極の破局の第一歩が始まっていたわけであります。このような認識が世界に正確に伝わるならば、脱原発というものが非常に早い時期に世界的に実現し得るし、また、そうしなければ今の危機的状況を回避できないと、そのように私は信じております。

 核を推進する国に対する最大の貢献は、その国を核の恐ろしさに目を向けさせること

 私は、そういう中で、ひとつの希望を与えてくれるものは、お配りした資料に書いてあります「天地の摂理」であります。天地の摂理は人類と地球を守る、これが悠久の歴史から導き出される歴史の法則であると。しかし、そのためには惨い警告を与えてきました。私は、1年半前、バーゼルの核戦争防止会議で、「次の大惨事は核惨事である。もし、これが起これば究極の破局につながりかねないので、人類の英知を導入して、これを未然に防ごう」という呼びかけを行いました。残念ながら事故は起きてしまいました。そうした中で、この日本の事故の経験から、ほとばしり出る声は、ますます国際社会の心ある人からの支援の対象になりつつあります。

 具体的事例を申しますと、一月ほど前、マハティール元首相(マレーシア第4代首相)から私に対しまして、いかに脱原発というものが正しいかと、マレーシアは、核技術−人類がまだ把握していない技術−を、断固拒否したという主旨の手紙を受け取っております。それから福島の事故の教訓のひとつとして、これからは新しい文明作りを始めなければならないということでございますが、この新しい文明の突破口となるのが、地球倫理の確立である、ということで、国連倫理サミットの開催と言うのを呼びかけているのでございますが、これに対しまして、今月に入りまして、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長から、私に手紙がありました。そして、加盟国が国連総会にこの議題を提出すれば、喜んで支持するという手紙をくださいました。

 そして、アメリカのルース大使を通じまして、私たちがやっているこの国連倫理サミット、それから今の文明を、力の父性文明から和の母性文明に変えると、こういう努力はオバマ大統領の提唱した「核兵器なきビジョン」が、そのために力をあわせていくことがいかに大事であるかということを想起させるものであるとして、私に感謝の意を表明する手紙を下さっております。そして、この核廃絶、真の核廃絶、民事・軍事を問わない核廃絶、これは福島事故を契機に具体的な動機になってきましてた。

 それは、何と言えば、日本は、もし核廃絶が実現せず、中国がおびただしい数の原発を造る場合には、黄砂だけでも被害者は出てしまいます。

 これは、なんとしてでも防がなければならないわけであります。それから福島事故で、もうひとつ立証されたことは、いかに原発は核テロが容易であるかと、水と電気を止めればいいと。そして、防護されていない冷却燃料プール、これさえ襲えばいいと。そういう事実を世界に知らせてしまったということで、核保有国に取りましても、核廃絶は重要な、実質的な動機を与えられたということでございます。そして、私は今までの経験から、核を進めようとしているフランス、インド、アメリカ等が、このような核廃絶を求める運動に対して、理解を示めしていると。中国でさえ、天津科技大学が私に名誉教授の称号を与えました。それからフランスは、昨年の国際会議に、私を招いてくれましたし、アメリカは、先ほどのルース大使の書簡がありますし、インド前石油大臣は、私にエールを送ってきております。パチャウリIPCC議長も、しかりであります。

 このように私は、核を推進する国に対する最大の貢献は、その国を核の恐ろしさに目を向けさせること、これこそ、こういった国々に対する最大の貢献であると、そのような信念のもとに活動を続けております。そして、特にこの際、みなさま、福島4号機の危機的状況、再処理工場の恐ろしさ、こういったものについて、ぜひ必要な危機意識を持って、これからその対処に、急いで、緊急に、もっと国が責任を持って、対処、対応できるような体制づくりに、ぜひご尽力いただきたいと思います。以上であります。

 ここから村田光平・公述人に対する質疑に入ります。

 外山斎(いつき)議員(民主党):

民主党の外山斎でございます。今日は公述人のみなさま、貴重な後述をありがとうございます。それでは村田公述人に、ご質問をさせていただきます。さきほど、福島第一原発の4号機が、大変危ないというお話がありましたが、私たちも震災発生後、また原発事後が発生した直後から、この4号機の問題に関しては、大変、危ないんじゃないかというふうに、いろいろ議論をさせていただいております。その中で、ずーっと思っているのが、この福島第一原発4号機の問題というには、たぶんすべての、日本全国の原発に同じような状況が起こる可能性があるのではないかというふうに思っております。ただ、残念ながら、我が国は最終処分場も含めて、使用済み核燃料の処分場が決まっておりませんが、今、この4号機と同じような核燃料プール、他の地域のですけれど、それをどのように対応しなければならないとお考えでしょうか。

 村田光平公述人:

 ご指摘のように、すべての原発に共通の問題でありまして、あまり知られていない事実は、これから数十年にわたって、厳密な管理をしていかなければ、いつでも大惨事が起こりうると。そういうことでございます。そういうな中で、私が二つを特記しましたのは、この二つが即、世界全体に及び得るという点で、緊急の対応を必要とする、そういう主旨でございます。それにしても、なんと未来の世代の代表となるべく志してきた立場の者としまして、この廃棄物に象徴される倫理の欠如、これは真剣に反省しなければならないと、そのように信じております。

 外山斎議員:

 お答えを、ありがとうございます。まあ、六ヶ所の問題もあるわけですけれど、核燃料サイクル、私は、どちらかというと大変厳しい状態に置かれているのではないかな、というふうに思っております。しかしながら、どんどん使用済み核燃料というものが増えてきております。最終処分場が、この国にはまったくない中で、最終処分場の候補地として手を挙げようかなとすると反対の住民運動が起こる。ただ、これを外国に持っていけばいいという話もありますけれども、私は、そういう無責任なことはできないのではないのかなと思っております。どのように最終処分場を含めてですね、我が国としては、解決をしていかなければならないのか。どのようにお考えでしょうか。

 村田光平公述人:

 そもそも、このような放射性物質を作ることをすぐに止めなければならないはずであります。その原点に立って、ものを考えなければ解決しない問題だと思います。私は、夏までにも、脱原発政策の日本政府としての政策を確立して欲しいということを私は叫んでおります。そういう政策の確立がない限り、たとえば電気料金が上がるにしても、それをやれば、福島のような事故を避けられるという考えであれば、国民も納得して高い電気料金を払うはずであります。しかし、脱原発政策の確立なしには、解決はありえないと思います。そして、廃棄物の問題も、まさにそうだと思います。そして、この現状が続けば続くほど、たとえば再処理工場は1日で原発が1年に放出する放射能を出すという、それほど危険なものであります。事故が起きなくても、近辺に害を与えているわけでございます。この放射能の持つ倫理性、本当に真剣に考えるべきだと思います。倫理の欠如、不道徳という問題でございます。

 浜田昌良議員(公明党):

 村田公述人に、北朝鮮の問題をお聞きしたいと思っているんですが、いわゆる北朝鮮のミサイル発射というんですか、人工衛星打ち上げ問題があります。その中にあって、3月26、27日にソウルで核セキュリティ・サミットがあるんですね。6ヵ国協議の北朝鮮以外の5ヵ国が集るんですよ。このときに、どういうメッセージを出すのか、求められているんですよ。そういう意味では、核廃絶を進めておられる中にあって、この核セキュリティ・サミットで、どういうメッセージを日本が主導しながら出すべきかについて、ぜひ、お答えいただきたいと思います。

 村田光平公述人:

 私の立場は、一貫しております。北朝鮮に、核の問題で日本が迫る際に、今の日本のダブルスタンダードの恩恵を受けている日本の立場では、説得力を持ち得ないと思います。そして、福島事故を経験した今こそですね、民事・軍事を問わない核廃絶を伝えるべきだと、私は先ほど、夏前までに、と言いましたが、次の会議までにもやるべきではないかと。そして、先ほど申しましたように、今の本当の危機的状況というのは、脱原発を早める状況になりつつあると。世界は、日本の実態を知り尽くしたんです。一週間前は、ドイツが原子力ムラの衝撃的なものを放映しました。多くの友人から衝撃を受けたと聞いております。もう福島は世界の問題になったと。そういうことでございます。

 (管理人:
 公明党の浜田昌良議員は、今度、ソウルで開かれる「核セキュリティ・サミット」に、日本として何を言ったらいいのか、と村田公述人にアイデアを求めています。この人には議員としての資格はないでしょう)。

 小野次郎議員(みんなの党):

 みんなの党の小野次郎です。村田公述人にお伺いしますけども、昨年末にわが国会は、日本と4ヵ国の間の原子力協定を承認しました。それは、ヨルダン、ベトナム、韓国、ロシアでございました。この原発輸出に関連する協定なわけですけれども、他にも報道ではトルコ、リトアニアなどとも政府は協議を開始しているようでございます。こうした原発輸出先国について、私は自然災害による事故、福島の場合には、少なくとも原油は自然災害から始まったわけですけれども、このリスク以外に、原発の耐用年数っていうのは、造り始める段階から終わりまでを考えれば4、50年あるわけですけれども、この非常に長い時間にわたってですね、当該地域が武力紛争とかテロに巻き込まれるリスク、これ我が国の国内と比べたら、比較できないほど高いものがあると私は認識してます。それは、言葉を換えれば、新たなその地域の緊張要因を我が国自らが作り出すという恐れもあると心配しているわけですけれども、この点について、公述人は、どのように認識されますか。

 村田公述人:

 ただ今の小野先生のご懸念、私、まったく賛成いたします。そして、福島の教訓の一つは、先ほど申しましたように、いかに原発というものが脆弱であるかと、燃料プールを狙えばいいと、電気を断てばいいと。それ大惨事と。そういう状況でございます。そういう中で、この原子力協定の問題とは、とうていあってはならない倫理の不足を反映していると。これを変えるというのは、今、すでに盛り上がりつつある世論だと思います。今や、経済重視から生命重視への大きなパラダイム・シフトを福島原発は世界に起こしつつあるわけです。そして、ウクライナ政府の発表によれば、チェルのブイリの犠牲者の数は、最終的に病気になった260万人と。そのうち、子供は60万人。こういうものが、悲しいかな日本でも出てくるわけでして、世論は、今のような日本の不道徳を認めることはありえないと。時間だけの問題だと、そのように考えております。

 小野次郎:

 続けてお伺いしますけれども、村田公述人は、六ヶ所村の再処理工場についても心配、危険性を大変指摘されていますけれども、それにも関連すると思うんです。日本では核燃料サイクルが完結していないわけですね、できあがっていないわけです。国内が難しいからとって、じゃあ使用済みの核燃料を海外で再処理するという方式については、どう評価されるか、特に4つの協定と僕が言いましたけれども、このロシアとの原子力協定と言うのは、別にロシアに原発を造ってあげようと、というのではないんですから、むしろ日本の核燃料の再処理をロシアでするための協力協定だと言われています。そうした日露の原子力協定なんていうのは、特に私たちが進めようとしている脱原発には、まったく逆行しているという指摘もあるんですけれども、これについて、公述人はどのように認識されますか。

 村田公述人:

 まったく、お考えに賛同いたします。そして、これはさきほどの協定の問題とまったく同じであるということが言えると思います。そして、そのようなことを、この日本の国民が認めることにはならないと確信しております。

 小野議員:

 こうした我が国の原発輸出の−初対面なんですけれども、こうして意見が一致することもあるんだな、と思うんですが−外交政策ですね、ある種の、次々とこうして協定を結んできているわけですから。こういった原発輸出政策と言うのは、去年の福島の東京電力の原発事故の後の放射能汚染の問題というのは、依然として国内では、大きな問題であるにも関わらず、こうやって海外には進めていっているという方向性について、地球規模で考えて公述人は適切な方向だと思いますか。

 村田公述人:

 私は2004年に、「日本の命運を左右する電力会社」という文書を指導層に提出しました。それからしばらくおいて、スマトラの津波の後、この日本における85メーターの例、カナダにおける500メーターの津波の例を挙げて、海岸にある原発のすべての危険性を指摘しました。この意見を、いささかでも聞き入れていたならば、福島は防ぎ得たわけです。私は痛感しました。これは原子力独裁というものが日本にあるんだ、と。そして、その独裁体制は、いまだ残存していると。悲しいかな、残存しているわけであります。だからこそ、さきほどご指摘の諸問題が、まかり通っている、ということであります。しかし、もう限界であります。福島の事故は、これに終止符を打つための、すでに兆候が始まっております。ということで、ある意味では、私の資料でも差し上げました、この「母性文化への潮流」というものは、オバマ大統領がその旗を振って、歴史的役割を果たしつつあるわけですが、すべての独裁を終焉さしめるという方向で、働き出していると。これは、時の流れが、すでにいつくか実証している例もありますが、そういう母性文明、母性文化という流れの中で、今のこの原子力ムラの残存が見られる諸政策は、必ず頓挫すると確信しております。

 小野議員:

 村田公述人は、この国連倫理サミットに向けて、いろんな方と交流されておられるようですけれども、どういうコンセプトの、サミット級の会合をイメージされておられるのか、分かりやすくご説明いただきたいと思います。

 村田公述人:

 そもそも、この働きかけを始めましたのは、さきほど言及いたしましたバーゼル世界大会で、私の演説が評価されまして、私が窓口となって、当時の国連事務総長に働きかけると。そして、その趣旨は倫理の内容を討議するのではなく、倫理の重要性を想起するものです。そういうことで地球倫理国際日というものを、そのサミットで定めようと。そして、今年出した私の関係する学会の研究アピールで3.11を地球倫理国際日にしようという呼びかけを始めているわけであります。そして、具体的には、今年9月の総会にオバマ大統領がイニシャティブをとって、その場で、このサミットを実現すると。オバマ大統領は、このプラハ演説以来、まだ世界が待ち受けている第二弾が出てきていないわけです。そのフォローアップとして、9月の国連総会における国連倫理サミットを実現すると。そのイニシャティブをとるために、駐日ルース大使にお願いしているところであります。

 小野議員:

 ちょっと話題を変えますけれども、村田公述人にお伺いしますけれど、今、日本国内は原発再稼動、いつ、どこから認めるかという話になっています。そのロジックは簡単でございまして、この原発50基近くあるすべて止めたままにしておいたら、日本のエネルギーは賄えないという問題があり、一方で電力料金の値上げ、このままでは値上げをして、燃料価格の高騰のために高くなっちゃうよ、という、国民には、「どうするんだ」と投げつけられている状況にあります。しかし、同時にこれは日本国内だけの内向きだけの損得勘定だけで、良いか悪いか結論を出せる問題ではないと私は思っているんです。それは、国際的に日本が去年の事故を経て、1年経った今、どういう評価を得ているかっていうことを、ちゃんと認識した上で、国民が決めていかなければいけないことだと思うですね。それで、お伺いしますけれども、事故の再発防止、それから日本国産の食料品、農産物の安全の確保。そして去年から1年経った間に、この原発事故に対する事故収束の能力、技術等について、我が国の能力は十分に国際的な信頼を回復していると認識されますか。

 村田後述人:

 まさにそれとは逆でございます。世界は日本の経済重視の姿勢が、まだ生命重視に転換していないと。その犠牲になる恐れを抱き出したんではないかと見ております。さきほど、ご紹介しましたアメリカの議会の公聴会、軍事委員会を求める動きといったものに、すでにその兆候が表れております。ドイツの微に入り細をうがった原子力ムラの実態の紹介と、さらに世界的に権威のあるネイチャー誌が、例の黒塗り資料提出の問題について、表紙でですね、それを露出すると。このようにすでに地震原因説がほぼ確立している状況の中で、この安全と認定する信用のおける機関も存在せず、そして、その地震原因説に対する手を打つこともなしに、再稼動するなど、とうていありえないはずであると、そのように確信しております。

 小野議員:

 まあ、私もあんまり倫理といっても、人に倫理を説くほどの人間ではありません。悩みの多い人間ではありますけれども、ただ、言えるのは、誰も他人に対して、他人が不安に思うことを、あたらめてやってはいけないというのが倫理というのか当然の条理だと思うんですね。そういう意味で、原発再稼動を日本が急げば、その国際的信頼が回復していないまま、それをするならば、やはり周辺の諸国に、というか世界中に不安を感じさせる心配があるんじゃないか、ということがひとつ目。二つ目には、この国際的な信頼が回復しないまま、原発再稼動を進めるということも、日本の主権の中でやる分には、物理的には可能かもしれません。

 しかし、そのことがですね、今、多くの農家の方、あるいは、いろんな日本と海外の貿易に関係している方たちが、非常に迷惑を受けている風評被害、こういうことについて、海外諸国において日本の農産物、食料品に対する、ま、風評被害だと我々、言っていますけれども、おそらく日本地図を地球儀で見れば、ここは原発に近いところだ、ここは距離があるんだってなことは、なかなか世界の人には理解しづらいと思うんですね、地球儀の上でみれば。そういった中で、日本に対する信頼がまだ回復していないうちに、また原発を動かし始めますとすれば、そういった多くの方が不安に思っている海外との取引、農産物などの輸出における風評被害と言うものが、かえって、また、外国にしてみれば、止めろということができないんだったら、少なくとも、そこから出てくるさまざまな制約というものは、なくならないんじゃないかなと心配しているのですけれど、その点についてのご認識をお伺いしたいと思います。

 村田公述人:

 全面的に賛成して恐縮でございますが、そういう懸念をすべて私も持っております、同じような。そして、特に私が今日、伝えたかったのは、戻りますが、4号機につきましては、放射性セシウムの量は、4号機だけで、戦後、大気中で行われた核実験すべてものと同じであると。かてて加えて、さきほどの共用プールの6700本などをやれば、事故が起きれば世界が終ると断言できるほどの放射性物質が放出が予想されるわけであります。それにもかかわらず、なぜでしょう。危機感がありません。私は、これは想像力の欠如だと思います。想像力が欠如すると、倫理が欠如するわけであります。そういう意味で、今こそ、福島の犠牲者の声を、もっと国民全土に広げましてですね、そして、いかに原発事故が罪深いものであるかということを、しかも世界の為政者にも伝えなければいけないと思います。ある意味では、菅さんが東電の撤退を止めたと、あれは歴史的役割だと評価されております。これは何を意味するかというと、究極の破局が発生すると、その可能性が現実のものであるということが示されたわけです。そして、4号機の危機。それは、まさにその実例であります。どうか、危機感を持って、その対策を早めるように、ご尽力をお願いしたいと思います。

 小野議員:

 4号機の危険性については、他の向きからもいろいろ指摘されていることですので、私たち、国会議員として政府に対する追及というか、正して生きたいと思います。今日は、ありがとうございました。他の、お二人には質問する時間がなく、大変、恐縮でございますが、今日はご苦労様でございました。これで終わります。

 02:53:00からは、荒井広幸(新党改革)の村田公述人への質疑がありますが、荒井議員が、この災害の本質を理解していないため、内容のない質問になっています。従って割愛しました。


 
 ここから管理人:

 アメリカを中心に、日本の原子力ムラへの圧力が増している

 この参院予算委員会に公述人として呼ばれた村田光平・元スイス大使は、野田佳彦に、危機的状況にある福島第一原発4号機プールをはじめ、使用済み燃料が世界の破滅につながる核惨事になる可能性があることを憂慮し、何度も何度も諮問文を送ってきました。これは、村田光平氏だけではありません。世界から日本の危機的状況を憂いている有識者たちも、野田佳彦に要望を出しています。野田は、これらすべてに目をつぶり、原子力独裁の勢力の利益のためだけに働いています。日本の被災地の小学生でさえ、あのオバマのいるホワイトハウスに手紙を複数回送れば返事がもらえるでしょう。今の日本のトップの姿は、こういうことなのです。

 私も、日本人は倫理観を喪失してしまったと思います、こと原発に関しては、国家主権の問題と、彼らのメンツを押し通すべき問題ではありません。世界の問題です。私たちは、新しい世界的な倫理感を持たなければ、となりの中国の核エネルギー暴走を止められないでしょう。日本人の被曝は許されないことではありますが、今や、私たちは凶悪犯罪者集団の原子力ムラの被害者であると同時に、私たちは世界に対して加害者にされてしまったのです。このまま行けば、否が応でも世界中を放射能で破滅させるかもしれない、さらに極悪な加害者にされてしまうのです。

 ですから、日本を守るという視点だけではなく、世界中の罪もない人々を、これ以上放射能被曝させない、という志が必要です。それなくして、日本の信頼は回復できないのです。国際社会は、そんなに甘くありません。少なくとも、福島の子供の顔を思い浮かべるときに、世界の子供の顔を思い浮かべてください。私たち加害者となってしまった日本人は、彼らの将来に健康・命という金で買えないほどの負債を背負わせようとしているのです。どうか、日本人の心を取り戻してください。

 野田政権は、原子力安全・保安院を原子力規制庁と名を変えつつも、実質は今までどおりの原子力ムラの傀儡を、経済産業省から環境省に移管させて、原発推進路線を踏襲しようとしています。これはまさに、国民に対する詐欺行為そのものであることは、海外に筒抜けです。その原子力規制庁の職員は、経済産業省へ「ノーリターン」だと細野は言っているのですが、これは真っ赤なウソです。今のところ、「ノーリターン」が確定しているのは、たったの19人だけ。同じ人間が、そっくり原子力規制庁と名前を変えた組織に移動するだけです。実質は、今までの世界の人々を放射能被曝させてきた原子力安全・保安院のままなのです。彼らは、外部から新しい血を入れるつもりはないようです。さらに、最初から分かりきっていた「準備不足」を理由に、環境省への移管時期を遅らせ、その間に、大飯原発を再稼動させてしまおうという魂胆なのです。国会で、福島瑞穂議員から、「なぜ、そんなに再稼動を急ぐのか、その理由を説明せよ」と迫られて、野田、枝野はたじたじ。しかし、この厚顔無恥の首相と経済産業大臣は、何食わぬ顔をして、今日も国民に対して詐欺を働いているのです。枝野は、東電の100%飼い犬なのですが、国民のごく一部は、彼の巧妙な立ち回りに、「ひょっとして、我々の味方なのか」と淡い期待を抱かせています。枝野の特技はカメレオンのような擬態です。とうとう本性をあらわしたようで、たった1日で、「暫定的な安全基準策定」などという、ペテンを強行し、原発再稼動に突き進もうとしているのです。彼らが、法的にも犯罪者であることを立証することは、法律を知らない国民にも易々とできることでしょう。

 まず、アメリカが動き出しそうです。原子力安全委員会は、関東上空を高濃度のセシウムが舞っているのに、これを米軍に教えませんでした。駐日米軍は、放射能汚染された食品を食べてしまいました。アメリカは、今や、この政権に対する信頼は皆無です。皆無。これは事実。アメリカは、日本にいる米軍の兵士の命を守るために、軍事委員会の公聴会を立ち上げようとしています。そして、著名な世界的核学者たちが連携して、原子力推進とは何も関係のない中立の評価委員会の設置を提唱しています。近いうちに、その結果が報告されるでしょう。もっとも、アメリカが日本の原子力ムラにメスを入れるなどということはありません。アメリカ自体が、新たに二つの原子炉の新規建設を承認したのですから。むしろ、原発事故の収束など、そっちのけで消費税増税にぱかりに囚われている野田政権に「とっとと福島第一原発を止めろ」と、尻を叩く程度でしょう。とても情けないことですが、日本の政治家は、まだこの深刻な事態を認識できていません。アメリカは、この政権では福島第一原発の事故収束などできないと考えているのです。

 私は、海外の大変信頼のおけるソースから情報を得ています。福島第一原発の4号機使用済み燃料プールは、本当に憂慮される事態なのです。twitter上で原発作業員(この人たちは、本物の福島第一原発で働く人々だということが分かりました)に4号機の状態を訊ねる人たちがいます。彼らが、いくら英雄であっても、ヤクザまがいの恫喝をする東電のガチガチの守秘義務に縛り付けられているのですから、肝心なことは言えるはずがありません。自分の目で見て判断したことが正しいのです。

 4号機建屋は傾いていますか?

 世界の人々は、本当に福島第一原発の状況を憂いています。それに引き換え、「収束宣言」詐欺を世界に向けて発信し、平然と海外に原発輸出を促進しようとしている野田の政府は、まさに異常な集団だと世界には映っているのです。世界は、もう知っています。日本の野田政権が、原子力独裁側の人々で固められており、彼らを放置していたら、世界中が破滅に導かれることを。彼らの断末魔の叫びが聞こえてきませんか?聞こえないのであれば、これから耳掃除をしてみてください。

 これから何年先、いやいや何十年先、んでもない、何百年だよ。それも嘘、何千年だよ。気が遠くなるような使用済み核燃料の後処理。

 これだけの税金を何十年にもわたって注ぎ込んできても、何もできていないのです。つまり、日本には原発を稼動させる資格がないのです。これは日本だけではありません。野田は、消費税増税の根拠に、必ず「将来の子孫に借金のツケを回さないために」という詭弁とも、安値の精神論ともつかない言葉を使います。今は消費税どころではありません。福島第一敷地内の共用プールには6400本の使用済み核燃料があります。4号機建屋の使用済み燃料プールには、未使用のロッドも含めて1535本が収納されています。プールのひび割れができただけで、本当に終るのです。すべてが。そのとき、どれだけの借金、つまり健康と命、そして遺伝子の破壊、これを何世代にも、いや、永遠かもしれません、野田、枝野、細野は国民に背負わせようとしているのです。野田政権は、そのコストは勘定に入れないのです。そのコストは金で支払うことができないのです。これほどの独裁政権は、かつてなかったでしょう。
彼らは、強力な原子力ムラの独裁に後押しされ、後ろ盾を得て自信満々のように見えますが、とても幼い人々です。

 一方、相変わらず、テレビ、大新聞は誤報を垂れ流しています。東電は、すでに証明されましたが、関西電力でさえ、もともと原発なしでも電力不足にはならないのです。彼らは、まだ嘘をつき、国民を恫喝しているのです。どうあがいても、日本には、最初から原発など不要だったことが、近いうちに証明されるでしょう。よく、ドイツが脱原発を実現できたのは、ピーク時には、いつでもフランスの原発で作られた電力を買うことができる安心感があるからだ、と言うコメンテーターがいます。これも真っ赤な嘘です。ドイツはフランスからなど電力を買っていません。逆にフランスに電力を供給しているのです。ヨーロッパのソースはありますが、日本語のソースでいちばん読みやすいのが次のリンク先の記事です。必読−「ドイツはフランスから電気買ってるからは逆って話。10年後には、ドイツはエネルギーで儲け、脱原発に後手後手となるフランスは衰退していくでしょう。このままでは当然、日本の未来はないでしよう。
こうした一見、温和な脱原発を装ったコメンテーターがテレビ(特にNHK)番組に出るのですが、彼らは良識派の仮面をかぶった隠れキリシタンならぬ、隠れ原発推進派なのです。ゆめゆめ、信じないように。

 私たちは、まだまだ電力会社、原子力規制機関、関係省庁、政治家、マスコミの連中たちのマインド・コントロールにかかっています。ただ、どこにマインド・コントロールが仕掛けられているかが一目瞭然、分かるようになってきたことは大きな進歩だと思います。みなさんと私が、やることは、こうした連中の言うことに耳を傾けないことです。最初からペテンなのですから。そして、諦めることなく、動じることなく脱原発の旗を振り続けること。そして、それをこの国から一掃すること。村田光平・元スイス大使が働きかけているように、民事・軍事問わず、核の廃絶を世界中に訴えかけていくこと。日本がそれをやらなければ、お隣の中国が次々と数百基の原発を造り、黄砂に乗った放射性物質を生涯、吸い込むことになるのです。日本は、それを止める論拠をなくすからです。

 福島第一原発事故から1年以上経って、なにやら、脱原発を訴える人々が「泣き叫ぶ駄々っ子」であるかのような、「分別のない人間」であるかのような雰囲気を作る人々が出てきました。私から見れば、そうした人々は精神異常です。脱原発など当然のことで、世界中の全人口の人たちが核に反対するのが当然なのです。なぜなら、核が好きな人など、本当のところ、誰一人もいないからです。「分別ある大人」、「理性ある大人」、「現実を見据えて」、「一部再稼動も暫定的な措置として」… 原発で儲けようとする人々は、まるで言葉のマジシャンのようです。これらがすべて嘘で、実はもっとも不純な表現であることを見抜いてください。

 先進国の脱原発の潮流と、日本国内での脱原発熱には、少なからずギャップがあります。海外のほうが脱原発への潮流はダイナミズムに溢れているのです。これは、いまだにマスコミが原子力ムラの囲いの中から外に出られないという証明です。日本人は、これ以上、恥をかかないためにも、マインド・コントロールにかからないように。いい加減、世界から見れば、本当に恥なのです。それをあらためて認識させてくれた村田光平氏のような日本人がいることに深く感謝したいと思います。そして、世界のトップクラスの核科学者たちに、日本を救うため、世界を救うため、寝食を忘れて働きかけをされている松村昭雄氏に深く感謝したいと思います。私たちの仕事は、これからが本番です。

 明日に向けて

 明日に向けて(447)村田光平氏が4号機の危険性と核廃絶を格調高くアピール(参院公聴会)

 2012年04月10日 23時30分00秒 | 明日に向けて(401)〜(500)
 守田です。(20120410 23:30)

 以下の記事は、気仙沼のアビスさんからの情報に基づいて書きました。

 これまで僕はこの「明日に向けて」の紙面で、繰り返し4号機崩壊の危険性を指摘し、それが日本の崩壊を招きかねないこと、それゆえ、強い危機意識を持ち、これへの構えを作るべきことを主張してきましたが、3月22日に行われた参議院予算員会の公聴会で、元スイス大使の村田光平氏が、4号機崩壊は世界的危機をもたらすものであること。こうした中で脱原発に向かうことを躊躇することは「倫理の欠如というそしりを免れない」という指摘を格調高く行われました。感動しました。

 村田氏はこの中で、4号機のそばには、1号機から6号機までの共用プールがあり、そこには6375本もの燃料棒が収められていることを指摘しています。4号機が崩壊すれば、この管理も放棄しなければならなくなるため、放射能の放出がさらに絶望的に拡大してしまうことになります。まさに世界的危機の勃発です。私たちはそれを未然に防ぐために努力しなければなりません。

 とくに日本政府は、いますぐにでもこのことを内外に明らかにし、日本のすべての英知を福島事故の真の収束にむけて総動員するべきです。そのためには、全くのウソでしかない冷温停止宣言をただちに取り下げ、危機の実相を明らかにして、世界中に協力を仰ぐべきです。

 同時に再び原発を大地震が襲い、4号機倒壊が現実的になった場合を世界的にシミュレーションし、必要な限りの放射線防護を世界レベルで行うべきです。そんなとんでもないことはできないという言い逃れは通用しません。できないと言う論理は、そんなことは起こらないという希望的観測に結びつき、だから対策をたてなくてよいという結論を生みます。とんでもないことです。

 そもそもその発想で、原子炉の崩壊の可能性がありえないと退けられ、何らの対策も立てないままに直面したのが今回の事故だったのです。そしてそれは、本当に、とんでもない対処をしなければならない現実を作り出してしまったのです。まさに世界が崩壊する危機が作り出されてしまった。核戦争をなんとか回避してきた人類は今、最大の危機の前に立っています。

 いやそもそもそれが、原子力政策の現実なのです。危機の前に立っているのは福島原発だけではありません。世界中の原発が危険であり、再処理工場はそれを大きく上回る危険性を持っています。だからこそ、世界中でただちに、軍事、民事を問わない核の廃絶に取り組み、核燃料の危険性をいかに減らしていくのかの研究・実践に入り、何百年もかけて、核物質を大事にいたらないように管理していかなくてはならないのです。

 広島・長崎を経験し、今また原発大災害を経験した私たちの国は、その悲惨な歴史と共に、今回の事故の加害責任にかけて、その先鞭をつけていかなければなりません。それを世界に向けて発信し、リードしていくべきです。にもかかわらず、こんなときに、放射能の危険性を隠して、放射性がれきの地方へのおしつけなど行なっている場合ではありません。

 そうした行為の総体が、現実に目の前にある危機への対応を弱め、気の緩みや隙を作り出し、そうして防げるべきものも防げない状態を作り出してしまうのです。何度も言いますが、そうして福島原発事故は最悪のコースをたどったのであり、まさにそれは「原発安全神話」の中で作られた破局への道だったのです。しかも安全神話は今なおこの国を支配しています。私たちはこれをこそ、ひっくり返していかなければなりません。

 村田光平氏は、これらのことを実に格調高く、指摘してくださいました。後ろの方に出てくるアメリカへの評価等で、僕とは分析視角が違う面もありますがそれはともあれ、ぜひ多くの人にこの発言に触れて欲しいと思い、文字起こしを始めましたが、途中で、これまでも有力な情報を発信してきた「カレイドスコープさん」がすでに文字おこしした内容を、アップされていることを知りました。

そこでアビスさんから提供を受けた動画とともに、カレイドスコープさんの文字おこしした内容に若干の訂正を入れたものを、以下にご紹介しようと思います。村田さんの訴えをぜひ多くの人で共有していきましょう!

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 参議院予算委員会公聴会での村田光平氏の発言(2012年3月22日)(村田光平 地球システム・倫理学会常任理事 元駐スイス大使)

 動画アドレス
 http://www.youtube.com/watch?v=9bq81boQL_Y
 文字おこし(カレイドスコープさん)アドレス
 http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-1198.html

 このような場で発言させていただくことは、大変光栄に存じます。
今日、ここに参りますに当たりまして、特に、みなさま方に伝えたいことがございます。それは、いかに現在、日本、そして世界が危機的状況に直面しているかということであります。人間社会が受容できない、この原発のもたらしうる惨禍のリスク、これをゼロにしなければならない、と私は福島事故は全世界に想起させつつあると信じております。

 そして、このような事故を体験しながら、なお脱原発に躊躇するというのは倫理の欠如という誹りを免れないと、私は考えております。特に、この処理方法がいまだに発見されていない核廃棄物、これに象徴されるのは、今の世代の倫理の欠如と言えると思います。そして、これは人類が緊急に取り組まなければならない課題だと信じております。そして、この放射能汚染と、これを許すあらゆる行為は、計り知れない害悪を永久に人類と地球に残すものです。

 私が出席した2005年のOBサミットは最終文書で、「未来の世代を含む、すべての人の認められる人権」ということで、未来の世代の人権を認めているわけですが、放射能汚染は、まさにそれを蹂躙するものであります。

 原発の死角、使用済み燃料は過去に危機的な状況を何度も引き起こしてきた。特に今日、みなさまにお伝えしたいのは、福島4号機の危険な状況でございます。毎日、日本すべての国民は、余震が起きるたびに怯えております。この燃料プールが、もし崩壊して、1535本の燃料棒が大気中で燃えだした場合には、果てしない放射能が放出されると。もちろん、東京は住めなくなるわけです。

 この1353本という数字は、実は控えめでございまして、つい数日前、私が発見した数字がございます。それは、1号から6号、共有のプールがございまして、それは4号機から50メートル離れたところでございますが、そこに、なんと6375本の燃料棒が収められていると、いうことであります。まさに、この4号機が事故を起こせば、世界の究極の破局の始まりと言えるわけであります。

 それにも関わらず、嘆かれるのは、危機感の欠如であります。政治家にも危機感がない。こんなときにも笑っている議員がいるこの対策として考えられている燃料棒取り出し作業の開始が来年末以降というのは断じて理解できませんし、放置してはならないと考えております。国の責任が極めて重要だと信じます。

 この点に関して、ついにアメリカが動き出したようであります。数日前、入った情報によりますと、この著名な核科学者が中立の評価委員会の設置の提唱を始めました。これは、元国連職員で、世界中の著名な学者と連携を取っている松村昭雄さんが、米政府の元・上級政策アドバイザーで、使用済み核燃料の第一人者であるボブ・アルバレス氏、他の科学者たちに働きかけたものです。この経緯については、2月に4号機プールにはチェルノブイリ原発の8倍のセシウムがあるで書いておきました。

 太平洋を越えて、アメリカ西海岸へも放射性プルームが飛んでいき、事実、多くのアメリカ人に重大な健康被害が出ています。4号機プールが破損でもすれば、本当に北半球が終ってしまうので、米政府も、いまだに危機感もなく世界に対しての責任感もない野田政権と日本政府に業を煮やしたのです。そして上下両院の軍事委員会に、米軍の命の安全のための公聴会を開くように働きかけ出した、ということでございます。

 次に日本から世界の究極の破局をもたらしうるものとして指摘できるのは、六ヶ所村の再処理工場であります。この六ヶ所村の再処理工場(が、いかに危険か)につきましては、1977年の1月15日、毎日新聞が記事を書いております。

 これによりますと、ケルンの原子炉安全研究所の発表では、極秘レポートでありますが、西ドイツの人口の半分、3050万人が死ぬであろうという報告であります。そして、この再処理工場の恐ろしさは、実はヨーロッパでもシェルブールの停電事件としてグーグルで、すぐ出てまいりますが、欧州全土を滅ぼしうるものだったと言われております。

 この再処理工場の危険性を、私は内外に伝えておりましたところ、先週、欧州の代表的な環境学者、エルンスト・フォン・ワイゼッカー教授から、その伝えを正式に支持するという連絡が入っております。

 日本は、福島事故を経験しまして、民事・軍事双方の核使用の犠牲国となったわけでありますが、悲しいかな、今や世界的規模の放射能汚染の加害国にもなってしまっています。毎日、いまだに毎時1億ベクレル近い放射能が出ているということも、さきほど東電で確認いたしました。毎時0.7億ベクレルでございますが、おびただしい量の放射能がでているわけでございます。

 これを聞くにつけ、私はメキシコの原油流出事故が止まらないときに戦慄したのを覚えております。まさに原油ならぬ放射能が同じような状況に置かれているということであります。

 私は、福島を経験した日本は、民事・軍事を問わない真の核廃絶を世界に伝える歴史的責務を担っていると信じております。私が今まで、あちこちで講演する際、この主張に対して異論を唱える人は皆無でありました。

 そして、私はこのような危機的状況、そして福島では、まさに、事故当初、作業員の全面撤退が考えられていた。もし、その全面撤退が行われていれば、確実に世界の究極の破局の第一歩が始まっていたわけであります。

 このような認識が世界に正確に伝わるならば、脱原発というものが非常に早い時期に世界的に実現しうるし、また、そうしなければ今の危機的状況を回避できないと、そのように私は信じております。

 私は、そういう中で、ひとつの希望を与えてくれるものは、お配りした資料に書いてあります「天地の摂理」であります。天地の摂理は人類と地球を守る、これが悠久の歴史から導き出される歴史の法則であると。しかし、そのためには惨い警告を与えてきました。

 私は、1年半前、バーゼルの核戦争防止会議で、「次の大惨事は核惨事である。もし、これが起これば究極の破局につながりかねないので、人類の英知を導入して、これを未然に防ごう」という呼びかけを行いました。残念ながら事故は起きてしまいました。

 そうした中で、この日本の事故の経験から、ほとばしり出る声は、ますます国際社会の心ある人からの支援の対象になりつつあります。具体的事例を申しますと、一月ほど前、マハティール元首相(マレーシア第4代首相)から私に対しまして、いかに脱原発というものが正しいかと、マレーシアは、核技術−人類がまだ把握していない技術−を、断固拒否したという主旨の手紙を受け取っております。

 それから福島の事故の教訓のひとつとして、これからは新しい文明作りを始めなければならないということでございますが、この新しい文明の突破口となるのが、地球倫理の確立である、ということで、国連倫理サミットの開催と言うのを呼びかけているのでございますが、これに対しまして、今月に入りまして、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長から、私に手紙がありました。

 そして、加盟国が国連総会にこの議題を提出すれば、喜んで支持するという手紙をくださいました。そして、アメリカのルース大使を通じまして、私たちがやっているこの国連倫理サミット、それから今の文明を、力の父性文明から和の母性文明に変えると、こういう努力はオバマ大統領の提唱した「核兵器なきビジョン」が、そのために力をあわせていくことがいかに大事であるかということを想起させるものであるとして、私に感謝の意を表明する手紙を下さっております。

 そして、この核廃絶、真の核廃絶、民事・軍事を問わない核廃絶、これは福島事故を契機に具体的な動機になってきましてた。それは、何と言えば、日本は、もし核廃絶が実現せず、中国がおびただしい数の原発を造る場合には、黄砂だけでも被害者は出てしまいます。これはなんとしてでも防がなければならないわけであります。

 それから福島事故で、もうひとつ立証されたことは、いかに原発は核テロが容易であるかと、水と電気を止めればいいと。そして、防護されていない冷却燃料プール、これさえ襲えばいいと。そういう事実を世界に知らせてしまったということで、核保有国に取りましても、核廃絶は重要な、実質的な動機を与えられたということ
でございます。

 そして、私は今までの経験から、核を進めようとしているフランス、インド、アメリカ等が、このような核廃絶を求める運動に対して、理解を示めしていると。中国でさえ、天津科技大学が私に名誉教授の称号を与えました。それからフランスは、昨年の国際会議に、私を招いてくれましたし、アメリカは、先ほどのルース大使の書簡がありますし、インド前石油大臣は、私にエールを送ってきております。パチャウリIPCC議長も、しかりであります。

 このように私は、核を推進する国に対する最大の貢献は、その国を核の恐ろしさに目を向けさせること、これこそ、こういった国々に対する最大の貢献であると、そのような信念のもとに活動を続けております。

 そして、特にこの際、みなさま、福島4号機の危機的状況、再処理工場の恐ろしさ、こういったものについて、ぜひ必要な危機意識を持って、これからその対処に、急いで、緊急に、もっと国が責任を持って、対処、対応できるような体制づくりに、ぜひご尽力いただきたいと思います。以上であります。

 野田佳彦内閣総理大臣殿 平成24年5月31日 村田光平

 拝啓
 
 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。世界中が4号機問題と関連した世界の保障問題として注目する再稼働につき重大な決断をされることになりました。
 
 貴総理がこれに前向きであるとの報道を踏まえ世界の各地で緊急アピールを発出して反対しようとの動きが始まっております。本日ニューヨークから松村昭雄氏を通じ、スタンフォード大学のNISHI TOSHIO博士の指摘「日本の原発は無免許運転」が届きました。アーニー・ガンダーセン氏の「放射能が強すぎて3号機は一切修理、補強されておらず120数本の燃料棒に最悪の事態が発生すればその影響は4号機と同じで第一全体がやられる」との見解、ロバート・アヴァレス氏の「暫定冷却用のパイプが切断することが憂慮される」との指摘など寄せられております。週刊朝日の最新号(6月8日)は「2号機は再臨界する」との警鐘を鳴らしております。さらに「フライデー」は次号で1号機の地下の溶融燃料棒の問題を取り上げるとの情報に接しております。
 
 他方、最近「原子力村」の存在が露呈し「基本計画」の審議中断、原子力35%案の撤回など政府への信頼は失墜の極みに達しております。原発推進が国策でなくなったにもかかわらず、その体制が改革されてないことは「原子力独裁」の存続を許しており重大な問題です。緊急な課題です。このような状況下で強引に再稼働に踏み切れば川勝平太静岡県知事が浜岡原発の有事に際し米軍に直接出動を要請するとルース駐日米大使に申し入れ好意的反応を得た事例(5月19日付毎日新聞)と同様の動きが出てくることは確実と思われます。残された日本、そして貴総理の名誉挽回の唯一の道は8月までに脱原発政策を確立することであることは多言を要しないと存じます。
 
 貴総理のご英断を心からお願い申しあげます。 敬具


 元駐スイス大使 信念訴え十数年 村田光平さん 脱原発 世界中に書簡   (東京新聞)

 元駐スイス大使 信念訴え十数年 村田光平さん 脱原発 世界中に書簡  (東京新聞「こちら特報部」5月2日)

 十数年前から原発の危険性に着目し、自然エネルギーへの転換を訴え続けてきた異色の元外務官僚がいる。駐スイス大使などを務めた村田光平さん(74)。各国要人らに原発の危険性についてのメッセージを送り続ける。そこにあるのは「脱原発こそが世界に平和をもたらす」との思いだ。(小倉貞俊)

 「いかに日本、そして世界が危機的状況に直面しているかを伝えたい」。今年三月二十二日、参院予算委員会の公聴会。公述人として出席した村田さんは、穏やかな表情に強い意志をにじませながら、こう切り出した。
 村田さんが特に訴えたのは、福島第一原発4号機の危険な状況だ。4号機建屋の上部にある使用済み核燃料プールには、千五百三十五体の燃料集合体が今でも残っている。建屋は、水素爆発によって激しく壊れもろくなっている。

 現在は何とか冷却できているが、地震などで倒壊することにでもなれば、燃料棒は溶け出し、大量の放射性物質をまき散らす。さらに付近の1〜6号機の共用プールや使用済み核燃料プールにある約一万体の燃料集合体にも被害は拡大。そうなれば、放射性物質は広範囲に拡散し、「首都圏住民が避難を余儀なくされるだけにとどまらない。世界の究極の破局が始まる」と口調を強めた。

 「『福島』を経て放射能汚染の加害国になってしまった日本は、民事、軍事を問わず核廃絶を世界に伝える歴史的責務を担っている。なおも脱原発に躊躇(ちゅうちょ)するのは倫理観、危機感の欠如だ」

 参院予算委の公聴会に招かれたのは、4号機の危険性を伝えようと関係者に送った村田さんのメッセージが、旧知の国会議員の目にとまったのがきっかけだった。
 外務省時代を含め、講演や著作の中で脱原発と自然エネルギーへの転換の必要性を繰り返し訴えてきた。だが、著作や講演に接してもらえる人数は限られる。そこで思い付いたのが、一枚の紙またはメールに伝えたいメッセージをまとめ、政治家や経済人、有識者らに送る“一枚書簡作戦”とも呼べる活動だ。

 現在、4号機の危険性についてのメッセージはインターネットを通じ、世界の約百六十カ国で読まれるまでに広がっている。
 現役時代の人脈を生かすなどし、各国の要人らにも送っている。一月にはマレーシアのマハティール元首相から「倫理観の高揚を目指す村田氏の運動を全面的に支持する。生活の質の向上と引き換えに、子どもたちの命を脅かすべきではない」との返信を受けた。国連の潘基文(バンキムン)事務総長には文書で「世界の非核化を目指す第一歩として、国連倫理サミットを開くべきだ」と提案。潘氏からは三月に「私も核軍縮に努めてきた。加盟国が望むなら、喜んで支持する」との手紙が届いた。「世界規模の意見交換で、議論を巻き起こしたい」と笑顔を見せる。
 
 村田さんの活動の原点にあるのは、若き日に抱いた「国際平和の役に立ちたい」との思いだ。中学生のころ、カナダ大使館付の軍人と知り合って外国に興味を持ち、外交官を志望。大学在学中には平和をテーマにした論文コンテストで優勝したこともある。
 エネルギー問題に傾倒する最初のきっかけになったのは、第四次中東戦争当時に務めた在エジプト一等書記官としての経験だ。「原油不足の情勢下、日本政府の“油ごい外交”の情けなさを痛感した。エネルギーの自給を模索しなければ、と」

 五十一歳で初めて大使を拝命し、セネガルに赴任。アフリカの強烈な日差しから着想を得て、当時のディウフ大統領に太陽エネルギーの導入を提言したところ、大統領はその場で部下に検討を指示。その縁から日本政府との橋渡し役を担い、二十五億円の無償援助によるソーラープロジェクトの実現にこぎ着けた。
 アフリカの奥地を回る機会もあり、「経済的には貧しくとも幸福に暮らす人々に感銘を受けた。『幸せとは心の持ちようがすべて』と、経済至上主義に疑問を持ち始めた」と振り返る。

 九六年からのスイス大使時代には、一般の電気料金より割高な太陽エネルギーによる電気を国民の多くが購入していることに驚いた。原発依存からの脱却方針や環境税導入の検討など、スイスの先進的な環境政策も目の当たりにし「日本も見習うべきではないか」と自問するようになった。
 講演やメッセージの送付など、村田さんが官僚の枠にとどまらない活動を始めたのもこのころだ。
 石橋克彦神戸大名誉教授が提唱した、震災によって原発事故が誘発される「原発震災」への懸念を募らせた。「想像を絶するような破局は起こり得る。何としても食い止めねば」と警鐘を鳴らし続けた。

 浜岡原発での原発震災を防ごうと、〇四年から同原発の即時停止を求める署名運動の呼び掛け人になった。
 昨年三月十一日、恐れていたことが福島第一原発で現実になってしまったものの、秋には浜岡の署名が目標の百万人を超えた。村田さんは「菅政権が昨年五月に浜岡の運転を停止したのは、国民の声を看過できなくなった証拠。何としても再稼働はさせない」と誓う。
 震災以前、とりわけ官僚の間ではタブーだった脱原発を主張してきた日々は、決して穏やかなものではなかった。

 九九年四月、村田さんはスイスの環境政策を評価した文書を現地の日本企業関係者に配った。ところが、当時の閣僚の一人が「欧州の大使が政府の原子力政策に反対する文書を持ち歩いている」と問題視。上司から注意を受けた。
 「今まで周囲から白眼視されたり、批判を受けることは少なくなかった。妻たち家族や知人らにも迷惑が及んだかもしれない」。あふれる思いをかみしめ、涙を浮かべる。「自分だけでも声を上げなければ、との信念だけが支えでした」

 喫緊の4号機問題だけでなく、政府が原発の再稼働をもくろむ現状だからこそ、「手を休めるわけにはいかない」と思う。「福島の最大の教訓は『危険な科学技術はゼロにしなければならない』ということ。ゼロにならない限り、何基減らそうが結果は同じ。放射能の被害は無限大だ」と言う。
 「今こそ、物質的な豊かさより精神的な豊かさ重視へとシフトしていくべきだ。利用するエネルギーを、再生可能な範囲だけにとどめることも不可能ではない。一人一人が意識を変えること、それしか世界の未来を良くするすべはありません」

<デスクメモ> 震災前、霞が関で脱原発を口にすることは、とても勇気のいることだったろう。しかも、現職の大使だ。大臣ににらまれたというだけで、普通はへこんでしまう。涙の中にはいろんな思いがあるに違いない。どんな方かと思ったら、小柄で物腰の柔らかな人だった。その胸の奥に強い強い信念がある。(国)

 むらた・みつへい 1938年、東京生まれ。61年に東京大法学部卒業後、外務省に入る。中東第一課長などを経て、アルジェリア公使、フランス公使、セネガル大使などを歴任。スイス大使を最後に退官。東海学園大教授、京セラ顧問なども務めた。





(私論.私見)