科学技術庁資料「原発事故研究」その4 |
(最新見直し2011.03.21日)
6. 吸収された放出物により骨・消化器・肺・甲状腺以外の主要な身体部分が受ける線量身体に摂取された放射性放出物による上記各臓器に対する被曝線量は 2〜5 節によつ て算出されたが、体内に吸収摂取された放出物は上記の核臓器ばかりでなくその他全身 体部分に対しても線量を与えるものと考えられる。 しかしながらどの核種が身体のどの部分にどの位の割合で蓄積し、且つ、どの程度の 線量を与えるかはきわめて複雑な問題であつて、これを一つ一つの核種について考慮す ることは不可能であるので、非常に大雑把な想定により、放出物全体について、次のよ うに考える。
5. 吸収された放出物により骨が受ける線量 / もくじ / 戻る / 7. 考察及び総括 |
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7. 考察及び総括以上身体各部の受ける線量として、
を被曝後の色々な時間的段階において算出を試みた。 すでに述べた如く、身体全部が放射性放出物より蒙る被曝を単に上記の六つの部分の線 量だけで代表させるということは、生物学的な評価の立場からは必ずしも妥当で合理的な ものであるとはいえない。 しかし色々な未知の要素や労力を考え、一応これ等をもつて、身体が受ける代表的な 被曝線量であると考えて、これにもとずいて起り得べき効果を評価することにした。従つ て、今後未知の要素や労力の不足がのぞかれる場合には、さらに多くの重要な部分(生物 学的に)の受ける線量が算出され且つ既算の数値が修正されて、より合理的な評価が可能 になることが予想されるが、今回は上記の六部分の受ける被曝線量を評価の基準としC単 位の倍数として総括したものが次の各表である。
以上の結果を見て気のつくことは、身体の各部の受ける線量は被爆よりの時間によ り大きく変化するが全身に対する線量は、大体最初の1日中に大部分を受けその後 は微小な線量しか受けないが、肺はかなり長期間にわたつて線量を受けつづけ、大体 9〜6ヵ月間位つづく。又甲状腺は1ヵ月間位の間にわたつて、線量を受けるが最初 の1週間位が最も大量の線量を受けることになる。 これに対し骨は、はじめの1週間位は線量が少いが、その後次第に蓄積線量が大と なり、1ヵ月後で約5倍、3ヵ月後で約10倍、1年では20倍以上となる。そして、 その後も50年間にわたつてその数倍の線量を受けることになる。 以上の如く、全身各部の蓄積線量は時間と共に変化するばかりでなく、各部の受け る線量の比率も時間と共に著しく変化するのであるがら、これを―括して、加算をす るというようなやり方では本当の生物学的な効果を評価することは出来ない。 又、これによりわかる通り肺の受ける線量は大きな変動があるが、これは肺に沈着 した Aercsol の非溶解性のものの物理的減衰が不明であるためにおこつたもの で、実際の値はこの中間にあると考えてよいであろう。 又全放出物による肺の線量が非常に大きくなつているが、これは放出物の半分は非 溶解性で肺の内で体液にはほとんど溶解しないと仮定したからで、この仮定が修正さ れれば変るものであると考えられる。 又全身の受ける線量はγ線による外部被曝と放出物摂収による内部被曝が加算して ある。 6. 吸収された放出物により骨・消化器・肺・甲状腺以外の主要な身体部分が受ける線量 / もくじ / 戻る / IV 身体の■る被曝線量より見た被曝濃度の安全限界の評価 |
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IV 身体の■る被曝線量より見た被曝濃度の安全限界の評価前節による考祭の結果として、事故発生後一定時間後に放射性放出物Cc-sec/m3に 被曝した人が身体の各部に受ける線量は、種々の条件のちがいにより著しく異ることがわか る。これ等の諸条件の内最も大きな影響を与えると考えられるものは放出物の種類・粒度、 放出後の時間及ぴ被曝後の時間であるが、これ等四つの条件のちがいによる身体各部の受け る被曝線量をCの倍数として示したものが、次の表 B1〜8 である。 なお、この表には判定に便なるため放出後被曝受けるまでの時間が、 この表B は前節の総括の表Aを平均化、又端数取捨等を行うことにより簡略化したもので あるが、肺、甲状腺等では種々の条件によりなおかなり大きな巾が生ずる場合があるのでそ の平均に近い値をもつて、被曝の代表値として()内に記載し、これを被曝量と見なした。 そこで表Bによつて示された身体各部の被曝線量による身体の蒙る生物学的な影響を評価 し被曝量の安全限界(これ以下の被爆の場合には一応身体には損害が与えられないと見な し得る限界)を推定することが、課せられた最終的目標であるが、このように外部被曝、内 部被曝の混合し、時間的にも複雑に変化のある各種の被曝量を合理的に評価することはきわ めて難しい多くの問題を含み、その合理的結論を得ることは甚だと困難である。 即ちこのような被曝はただこれを単純に加算して見るというような方法では生物学的には 全く無意味である。 例えば24時間後の値として100 sec/m3 の放射能雲の被曝を事故発生後1時間目 に被曝した人を想定して見よう。もしこの放出物が揮発性のもので粒度が7μ前後の平均的 大きさをもつものからなるとすると、この人は全身に 120 rad のγ線を受け、さらに摂 取された放出物より最初の1〜2日間に約10rad のβ線の被曝を全身に対して受ける。 さらにこの人は、1週間以内に肺に約5.0rad 消化器に100rad 甲状腺に10,000rad 位の被曝を受ける。 さらに、被曝にひきつづく3ヵ月の間にこの人は肺に大体 150〜100rad 位。甲状腺には実に 13,000〜11.000rad の被曝を受けるが 骨には 160rad 位の被曝しか受けないであろう。しかしその後、骨以外の臓器の被曝は 終るが、骨はさらに引つづいて被曝を受け5年間で630rad、50年間では 1620 rad の被曝を受けることになる。 したがつてこれ等の被曝量をただ加算して見ただけでは生物学的には何を意味しているか 全く不明確であつて評価は甚だ困難である。しかるに同じ 100C c-sec/m3 に被曝した としても、もしその Aerosol が Total Fisson Products で粒度が 1μ 前後の小たるものであつたとすると、この人の受ける被曝は全く様相を異にする。 表B 放出後1時間目に C c-sec/m3 (24時間目の値として)に被曝した人が身体各部に受ける線量
表B 放出後6時間目に C c-sec/m3(24時間目の値として)に被曝した人が 身体各部に受ける線量
即ち、この人は全身にわずかに 28rad 位のγ線被爆を受けるだけで、その後摂取され た放射性物質を考慮しても高々全身に 30rad 位しか受けないが、その代り肺は3ケ月位 の間に 10000〜50U0rad という大量のβ線被爆を受ける。この間甲状腺は、大体 750rad 位の被曝を受けるにすぎない。しかし腸管は 2〜3日の間に約 55rad の被 曝を受けるであろう。又骨ははじめは少いが時と共に蓄積線量は増大し3ヵ月では約 2700rad、5年では8250rad、50年間は実に15000rad位を受ける ことになる。このように同じ100 c-sec/m3 にさらされた場合といえども、その条 件こよりその人が受ける生物学的被曝は著しく異るということが、明らかであるが、もう 一つ考慮しなければならない重要なことは、色々な臓器の放射線への感受性とその受ける Dose rate が著しく異るということである。例えば全身が受けた100rad と肺、 甲状腺等が受けたけた100rad とは明かに生物学的には等価のものではない。又肺が100 rad を受ける場合と甲状腺が受ける場合とではその受ける期間が全然異り、甲状腺は その大部分を1ヵ月以内に受けるが、肺は9ヶ月位かかつて受ける。従つて、平均の Dose rate は甲状線の方が10倍位大きいと考えられる。 従つてこのように量的及ぴ質的に異る被曝を何か一つの単位に還元することが生物学的 に可能であるかどうかは甚だ疑問であるが、少くも単なる加算は全く無意味であることは 明らかである。そこで還元的な処理をもう少し生物学的に合理化するため次のような考え 方を取つて見る。 即ち先ず身体各部分の受ける被曝を
生物学的に見ると 1)によつてうける影響は所謂急性効果 ( Acute Effect )
であつて組織の急性壊死と造血器病変とを主徴候とする典型的な障害をおこす。 又 1)では期間が短いので、被曝量は線量率として考えてよいが、 3)では線量率
は通常きわめて小であつて、影響は大体総蓄積線量によつて左右されると考えられる。 勿諭この区分は相対的なものであるから、各期の長さはどの位が適当であるかは確実な
根拠はないが、ここに問題とされている災害においては、 そこで全身への被曝は大体大部分が20時間以内に終るので、短期だけを考え、又骨は 数10年にわたつて被爆を受けるので長期だけを考え、他の臓器は大体1ヵ年以内に被曝 が終るので短期と中期を考えるとととする。 そこで、短期被曝による効果は主として全身急性効果を中心としたものであるから、こ の期間においては Critical Organ を全身とし、その他の臓器の受ける被曝は それが、どの程度全身障害に対して寄与するかという点に注目して、評価を行うものとす る。 この場合、各部分の受ける線量を全身に等価な線量に換算をする係数を定めて、これに より、各部の線量の加算をし、これを全身等価線量と定義する。 この場合全身等価換算係数は生物学的な影響を考慮して次の如く定めることとする。
* 肺は容憤も大きく且つ附近に心臓などの重要器菅があり、且つ淋巴腺にも富んでいる ので急性の被曝に対しては甲状腺より重く考える。消化管は急性全身症に対してはとく に関係が深く、影響が大きい。これに対し甲状腺は急性症状に対しは相当耐久性があ ると考えられる。 例えば、揮発性放出物粒度小 放出後1時間目の被曝の場合を例にとれば 最初の約1日の被曝は大体全身1.3Crad 肺 0.4C rad 消化器 0.05C rad 甲状腺 53C rad であるから、これを短期の全身等価線量に換算すれば 1 1 1.3C + 0.4C × ― + 0.05C + 53C × ―― = 1.96C rad 5 100 となる。このようにして各場合の短期被曝量をそれぞれ全身の等価線量に換算することが 出来る。 次に中期被曝ではこのような換算は生物学的にあまり意味がない。 この間の被曝については、もし各臓器間における Synergic な影響があまりない ものとすれば、** 各部分の放射線感受性、各部の受ける平均的な線量率、各部分が生命 の維持についての重要度等を考慮して、夫々の臓器について、臓器耐久線量を定め、夫々 の臓器の受ける被曝がその何部に当るかを見ることにより、それぞれの部分の被曝の効果 を比較検討することが出来ると考えられる。 そこでこのような考慮の下に、中期被曝の臓器耐久線量を一応次のように定めることと する***
この線量でそれぞれの臓器被曝量を割つたものが臓器耐久単位と呼ぶ事とする。 最後に長期の被曝量を考えるが、ここでは骨だけが問題となる。 そこでこの場合、骨が50年間に受けることを許されると考えられる線量を基準とし、 この線量で骨の50年間の蓄積線量を割つて、その商を、骨の蓄積許容単位と呼ぶことに する。そしてこの量をもつて他の臓器又は全身への効果と比較することとした。 そこで骨の蓄積許容線量であるが原子炉安全基準部会は骨に対して 45±15 rad を許すという提案をしているが、骨の受ける線量は、きわめて長時間徐々に与えられるの で、むしろ年間の線量率というようなものを考える方が合理的かも知れない。 M.R,C.( British Medical Research Council ) の提案によれば Sr90 に対して年間 1.5rad を許し得るといつているから、これに50年を掛けると、 50年間に75radまで許すとして、年間平均 1.5rad を許したことになる。 従つて、ここでは一応この二つの提案の値を基準として計算を行つた* かくして、これ等の基準にもとずき表Bの各表の値に対しそれそれ全身等価線量、臓 器耐久単位、骨蓄積許容単位を算出し全身に1日に許し得る線量を12rad として、 これで全身線量を割つたものを全身等価許容単位とすると、表Cを得ることが出来る。 * Evens et al. の研究によれば Ra を摂取した人約30名をしらべ、障害のな かつた群の最高の Body Burden は約 0.5μc であつた。又摂取後の時間の平 均は約20年間であつた。0.5μc を20年間骨に保持したとして骨の受ける総線量に 約 300 rad であるが I.C.R,P.に示された Ra の許容量 0.1μc をとるとこ の 1/5、即ち60rem が許容値だということになる。
即ち C c-sec/m3(24時間後の値)の被曝を受けた人々は身体各部に表Cの値 のC倍に当る相対的効果を受けていると判断することが出来る。 これ等の各効果は、生物学的な立場から見て質のちがつたものであるから、これ等をむ やみに足し重ねることは無意味である。 且つ、線量が非常に少い間はこれ等各効果の間には Synergic な影響は先ずない であろうと考えることは生物学的にはさほど不当ではない。 従つてこれ等の効果の内最高のものをとつて、これを1におさえるような被曝量を c-sec/m3単位で示すとすればこの量が生物学的に見て、人体に何等の障害をあたえ ることのない被曝の安全限界をあらわすものと考えることはあまり不合理ではないと思わ れる。 従つて、各単位が丁度1になるような被曝を、24時間後の放射能雲の濃度・時間単位 c-sec/m3で求めると表Dを得る。 即ちこの表Dの意味は、前述した各期間毎のそれぞれ身体部分における許容単位が1で あるような被曝量は、それぞれの部分に対して、全く等価な影響を与えると考え、且つそ れらの影響間には相互に Synergic な効果はないと想定するとき、各部分に与える 効果が丁度許される限界に達するような放射能雲への被曝量を放出24時間後の c-sec/m3 の単位であらわしたものである。 従って、各条件の場合この表の最低の値を安全限界としてとればその他の効果は絶対に 許容限度をこえることはないので、 Synergic の効果がないという想定が正しいと すればこれにより身体のどの部分も障害を蒙ることはないであろう。 従って、ここではそのような濃度時間を被曝の無障害安全限界と定めることとする。 即ちこの限界は表中(下線)をひいた部分である。しかしながら、その部分が骨の蓄積 許容量を50年間で45radとした点に集中されておるが、この量はRaによる人体の 経験から見ても50年間の蓄積許容量としてはあまりに小さすぎると考えられる。 従って M.R.C.の勧告による75rad(50年間)をとるとすれば表中 のマークの部分が安全限界をきめる値となる。従ってこれを整理すると
のような結果を得る。 この端数を適当に取捨する場合若干の他の部分への影響を考えて整理すると、次の如き被 曝濃度・時間(但し24時間後の値として)が無障害の安全限界であると考えて、生物学的 にはあまり不合理でないと考える。
単位は放出後24時間目の値としての c-sec/m3 従つて、この結果から最も危険な場合は、揮発性放出物の粒度大なるものを事故後比較 的短時間に受ける場合、及ぴ全放出物の粒度小なるものに被曝する場合であると考えられ る。 又、全体的に見て、揮発性放出物は全放出物に対してより安全であり、安全の度合は大 きた場合で6倍位に及ぷと考えることが生物学的に合理的であると考えられる。 又揮発性放出物の場合は、事故後放射能雲が到達するまでの時間が安全限界を定めるの に大きく影響し、即ち炉よりの距離が遠くなればなるほどより安全な範囲がが速に拡がる が、全放出物の場合は。拡散によるうすまりの他はあまり期待が持てないことがわかる。 7. 考察及び総括 / もくじ / 戻る / V 土地よりの立退基準及び住居制限 |
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V 土地よりの立退基準及び住居制限1.土地よりの立退及ぴ主居の制限については土地に沈着した放射性放出物により人体が受 ける被曝線量により評価されるべきである。 先ず汚染された土地よりのγ線量を見ると、線量は一様の汚染度 Sa c/m2 の土地 (平面とする)の上の人体が高さhにおけるγ線量率はγ線の平均エネルギーを γ Eav とすれば (13) γ ∞ e-y R = 1.07 × 102 (μm) tissne × Eav Sa 〔∫ ―― dy + e-μh 〕rad / hr μh y となる。 但し(μm) tissue はEγ 0.1 〜 2Mev のハンイでは0.03cm2/g とする。 h = 1m とすれば、計算より ∞ e-y 〔∫ ―― dy + e-μh 〕≒ 5.0 μh y とすることが出来るから γ E = 0.7 Mev とすれば av 土地平面上 1m の高さの人体の受けるγ線量率は R = 1.07 × 102 × 0.03 × 0.7 × 5.0 × Sa = 11.2 × Sa rad/hr 今 Sa c/m2 を事故後24時間後の沈着濃度とし、放射性物質の崩壊は t-m の法則によるとすれば、事故後2時間目の汚染度は 2 Sa 2h = Sa ( ―― )-m 24 従つて2時間目より14時間目までに受ける線量は 2〜14 14 t D = 11.2 × Sa ∫ ( ―― )-m dt rad S 2 24 Total F.P のときは m=0.2 と想定するから、 2〜14 14 t 2.40.2 D = 11.2 × Sa ∫ ( ―― )-m dt = 11.2 Sa × ―― (140.8 - 20.8 ) TFP 2 24 0.8 1.88 = Sa × 11.2 × ――― ( 140.8 - 20.8 ) = Sa × 11.2 0.8 1.88 × ――― ( 8.248 - 1.741 ) 0.8 1.88 = Sa × 11.2 × ――― × 6.507 = 173 Sa 0.8 Volatile F.P. のときは m = 0.8 とするから 2〜14 14 t 12.7 D = 11.2 Sa ∫ ( ―― )-0.8 dt = Sa × 11.2 × ――― × 0.547 = 390 Sa V.F.P. 2 24 0.2 もし放出後6時間目に放射能雲が飛来したとすれば、 Total F.P. のとき 6〜18 18 t D = 11.2 Sa ∫ ( ―― )-0.2 dt = 155 Sa TFP 6 24 Volatile F.P. のときは 6〜18 18 t D = 11.2 Sa ∫ ( ―― )-0.8 dt = 250 Sa VFP 6 24 Volatile F.P. の減衰を3ヶ月まで-0.8が有効と想定すれば、3ヶ月間に受け る線量は Total F.P. では 〜3ヶ月 2160 t D = 11.2 Sa ∫ ( ―― )-0.2 dt TFP 2 24 = 12200 Sa rad Total F.P. では 〜3ヶ月 2160 t D = 11.2 Sa ∫ ( ―― )-0.8 dt VFP 2 24 = 2580 Sa rad となる。 従つて、1日目より3ヶ月までの、1日の平均線量率は Total F.P. では 12200 Sa ÷ 90 = 135 Sa rad/日 Volatile F.P. では 2580 Sa ÷ 90 = 29 Sa rad/日 となる。 2 土地よりの立退基準今、被曝後12時間以内に12rad以上の被曝を受ける地域をA級の緊急立退地域と すればその限界は
次に被曝後3ヶ月以内に25rad 以上を受けるおそれのある区域をB級の立退地域と
すれば、これに当る土地汚染の限界は 3. 住居制限地表面の汚染より受ける線量は自然の物理的減衰、雨、風等による地表面よりの移動等 の原因により、次第に減弱するから、一定の期間の後には汚染された地上において単に居 住する程度の事はさしつかえなくなるであろう。とくに都市においては食物等をたの汚染 のない地域より移入し、又飲料水を適当に浄化する施設があるとすれば、単なる地面の若 干の汚染により住居の永久制限をすることは甚だしく不経済であり、且つ、大きな社会 的負担となるから、住居のみを許し得る限界、とくに一定の期間の後に再び住居してよ い限界というものをきめる必要がある。このような限界をC級の住居制限限界とすれば、 これをどのような基準で行うかが問題となる。
Volatile F.P. の自然減衰は比較的早く 従つて、1ヶ月以後毎日の線量として、0.033rad(年間12rad、13週間 3rad) を許される線量とすれば1ヶ月後に居住が許されると考えられる地域は、 0.033 ÷ 29 ≒ 1.1 × 10-3 C/m2 である。(長期の平均日線量率は明らかに 30 Sa rad/日より小となる) Total F.P. による汚染の場合は、自然減衰がかなりゆつくりであるから 住居許容限界基準はより severe にする必要がある。 1ヶ月の平均日線量率は 〜1ヶ月 26.3 × Sa ( 192.8 - 1.74 ) D = ――――――――――――――― = 170 Sa rad/日 /30日 30 3ヶ月の平均日線量率は 〜3ヶ月 26.3 × Sa ( 464.5 - 1.74 ) 12200 D = ――――――――――――――― = ―――― Sa = 135 Sa rad/日 /90 90 90 1ヵ年間の平均日線量率は 〜1ヵ年 26.3 × Sa ( 1424 - 1.74 ) 37000 D = ―――――――――――――― = ―――― Sa = 100 Sa rad/日 /365 365 365 従つて、事故後1ヶ月たつて、居住を認めるとして、その後日平均線量率が 0.0135 rad をこえない(即ち年間5radをこえない)地域を居住許容地域とすれば、その ような地域は表面汚染として 0.0135 ÷ 135 = 10-4 C/m2 より低い地域とすれば間違いない。 以上を総括して、C級の地域として、1ヶ月後に居住を容許し得る地域とし 揮発性放出物の汚染では 10-3 C/m2 以下 全放出物の汚染では 10-4 C/m2 以下とすることが妥当と考えられる。 しかし、日本の特異性と計算の便宜とを考慮して、附録(E) にある農耕禁止の基準 6×10-4 4×10-5 にそれぞれ合わせることにした。 但し、気象条件などによる地表の除染効果を大きく認め得るとすればこの限界はさらに中に入り得ると考えられる。 二頁欠け。おそらく、この間にVからVIに入ると思われる。入手次第掲載予定。
以上の想定の上、治療及び検査の内容を具体的にあてはめれば、それらの計算は可能となる。 2.次に、事故後に放出された分裂生成物の煙霧に曝された場合、人体の受ける線量は別の 計算により第B表の如くなる。この表のCの値を種々変えると、全身その他の臓器の被曝 線量が分る。これにより、1で述べた全身一時被曝による障害と同程度の障害を与えると 考えられるCの価を決定すれば、人体に対する災害の評価を行いうる。 この場合、判定の基準を主として被曝後1日間に受ける線量におき、それ以後の被曝量 は参考とすることにした。その理由は、例えば骨が1年間に何rad受ければ死亡するが、 或いは何radで治療を要する障害が現れるかということは分つていないからである。勿論 1日目の被曝にしても、各臓器の被曝が占める割合を決定的にいうのは困難であるが、長 期のことを考えるよりは容易であろう。 また、白血病、骨腫瘍、白内障等が、放射線被曝によつて後年、発生率が高くなるで あろうことは想像出来る。然し、被曝線量と発生率の関係は決定的なことはいえない。 従つて、ここではこれらの考え得る晩発症については、一応除外した。然し、これらの 補償については別に考慮する必要があろう。 1)揮発性放出500c-sec/m3の被曝では a) 粒度小で放出後1時間目なら、全身 に715rad、肺に220rad、消化管に27.5rad、甲状腺には29.150 radを第1日に受け、骨は1年間に5.885radを1年間に受けることになる。 この時の甲状腺の被曝は、放射能症の発生やそれによる死亡には、決定的な寄与を なすものとは考えられず、また、肺、消化管の被曝量は比較的少い。従つて全身被 曝量のみを注目してよかろう。
b) 粒度大なる場合は、消化管の被曝量が、a)に比して約12倍となる。これは 全身状態に影響するだろうが、550 c-sec/m3 の濃度で消化管は 330 radを受ける。消化管の被曝を全身被曝と等価とみると、700rに相 当するのは400c-sec/m3位という計算になるが、両者にはそれ程大きい 差は実際には存在しないだろう。 また、検査のみ実施する範囲は、安全限界を越える被曝で、100〜相当濃度 以下にすべきであろう。 放出後6時間目の被曝では、それぞれ1時間目に比し、約2倍の濃度となるだろう。 全放出物(1時間目及6時間目)a)粒度小 上と同様にして推定するが、肺及び消化管の被曝を考慮して、全身被曝に加算 した。
a)粒度大 同様にして
a)で最も問題となるのは、被曝后1年間に受ける骨の線量の判定であろう。従来も 長年月(20年以上)のRa障害者に骨腫瘍の発生をみた報告もあるが、被曝後、初期 における見通しは立てられない。また、投書の1年間に大量の被曝を骨が受ければ、造 血障害も起り得ると思われるが、治療費の計算を行い得る程のデーターはないため除外 した。 以上の数値は大部分推量である。出来るだけ既存のデーターを参考にしたが、これは あく迄も、災害評価のために引いたラインであると考えていただきたい。 IV 身体の■る被曝線量より見た被曝濃度の安全限界の評価 / もくじ / 戻る / VI Pu239 による危害の評価 |
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Pu239 による危害の評価事故による放出物中には、微量ではあるが Pu239 が含まれていることは II 節の第 1 表に記された如くである。Pu は色々な理由から非常に微量でもかなりな危害を与えることが わかつているので、これについて一応の危害評価を行い、既に述べられた安全限界に対して、 これがどのような程度の危害をもつかを検討する必要がある。 最近発表された Pu の生理学及危害評価の結果によれば* Pu は
この結果により今回の場合による危害の評定を行うと、最も危険な場合として、全放出物 粒度小の 1 時間目被曝を考えると、1 c-sec/m3 に被曝した人は、肺内に 2×10μμc-sec/cc × 0.5 cc/sec × 0.5 = 2500μμc の Pu を沈着させる。 消化管へ移行したものはほとんど吸収されないで排泄されるから無視する。 但し、これは 24 時間後の値としてであるからこれを放出後 1 時間目に換算するために係 数 1.6 をかけねばならず、この人は 24 時間後の値として 1 c-sec/m3 に被曝した 場合は実際は 2500 × 1.6 μμc の Pu を体内に摂取すると考えられるが、これは 0.004 μc に当る。 今 Pu の生理的排泄は全く無いと考えると、許され得る Body Burden は 0.04 μc であるから、これに 至るまでには 10c-sec/m3 の被曝を受けても良いことになる。即ち Pu の Body Burden に着目した場合の 安全限界は他の核種の混合物に比して 10〜20 倍の値であるから、Pu はこの場合には limiting factor にならないと考えることが出来る。
V 土地よりの立退基準及び住居制限 / もくじ / 戻る / VII 人体の障害の評価 |
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VII 人体の障害の評価
1)揮発性放出500c-sec/m3の被曝では a) 粒度小で放出後1時間目なら、全身 に715rad、肺に220rad、消化管に27.5rad、甲状腺には29.150 radを第1日に受け、骨は1年間に5.885radを1年間に受けることになる。 この時の甲状腺の被曝は、放射能症の発生やそれによる死亡には、決定的な寄与を なすものとは考えられず、また、肺、消化管の被曝量は比較的少い。従つて全身被 曝量のみを注目してよかろう。
b) 粒度大なる場合は、消化管の被曝量が、a)に比して約12倍となる。これは 全身状態に影響するだろうが、550 c-sec/m3 の濃度で消化管は 330 radを受ける。消化管の被曝を全身被曝と等価とみると、700rに相 当するのは400c-sec/m3位という計算になるが、両者にはそれ程大きい 差は実際には存在しないだろう。 また、検査のみ実施する範囲は、安全限界を越える被曝で、100〜相当濃度 以下にすべきであろう。 放出後6時間目の被曝では、それぞれ1時間目に比し、約2倍の濃度となるだろう。 2)全放出物(1時間目及6時間目)a)粒度小 上と同様にして推定するが、肺及び消化管の被曝を考慮して、全身被曝に加算 した。
a)粒度大 同様にして
a)で最も問題となるのは、被曝后1年間に受ける骨の線量の判定であろう。従来も 長年月(20年以上)のRa障害者に骨腫瘍の発生をみた報告もあるが、被曝後、初期 における見通しは立てられない。また、投書の1年間に大量の被曝を骨が受ければ、造 血障害も起り得ると思われるが、治療費の計算を行い得る程のデーターはないため除外 した。 以上の数値は大部分推量である。出来るだけ既存のデーターを参考にしたが、これは あく迄も、災害評価のために引いたラインであると考えていただきたい。 VI Pu239 による危害の評価 / もくじ / 戻る / 参考文献 |
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参考文献
(註2)(1) 空気中の濃度χμc/cc の Aerosol を毎秒 Vcc ずつ t 秒間吸入した とき肺内に沈着している Aerosol の量は χVR/λ(1-e-λt )e-λ(T-t) 但しRは肺内での沈着率、λは肺の生理的排除指数である。λは Soluble のものでは大きく10-3以上を考えてよい。(肺での滞留時間約1000秒とする。) 又 Insoluble には肺胞でのλは 0.8×10-7/sec (半減期100日)、 上気道でのλは 0.8 × 10-4/sec (半減期2.5時間)と想定した。Tは被曝後 の線量算出までの時間。 (2) 以上の事から Soluble のものから肺が受ける線量は、 d = 7.5 × 10-2 RC rad R は粒度により 0.75 又は 0.55。これに一定の係数 a をかければ放出後 t 時間目 の肺の線量が算出できる。 (3) Insoluble については、肺胞と上気道をわけて計算する。肺胞ではλは非 常に小さいとして D(肺胞) = 1.85 × 10-4 Rav aCt rad 上気道ではλは10-4/sec 位であるから被曝中の生理的減衰を考えねばならな いから χ t D(上気道) = 7.4 × 10-7 × Rup VEβ × ― ∫ ( 1 - e-λt ) dt λ 0 1 - e-λt ≒ 0.1 × RupaC ( 1 - ――――― ) rad λ となる。以上のように insoluble のものよりの線量は C だけの函数ではな く、t の函数でもあるから被曝が長時間になると c.sec/m3 単位で表わすことに は問題がある。 (4) 放射能煙霧の吸入が終つて後の肺線量は insoluble だけを考えればよい が、このうち上気道に沈着したものは1日後においては95% 以上が排泄されてし まうと考えられるから、実際的には肺線量は肺胞からのものだけを考えればよい。 算出方法の概略は次の通り t 放間の被曝が終了したとき肺胞間に存在する Aerosol の量は q(t) = q(t) = RavVac(μc) とみてよいから1時間に受ける線量は 3.7 × 104 × 3600 × 1.6 × 10-6 D = q × ―――――――――――――――――― Eβ rad 100 × 80 しかしその後 T 時間目に肺内にある放射能の量は q(T) = qe-λT T-n であるから1時間目からT時間目までに肺の受ける線量は T D ∫ e-λT T-n dT 1 である。T の大きくないときは、λを小として近似的な計算を行なつた。T が大の ときは q(T) はかなり小トなるから3ヶ月以上については生理的減衰だけを考えて計算した。 VII 人体の障害の評価 / もくじ / 戻る / 附録(E) 放出放射能の農漁業への影響 |
(私論.私見)