科学技術庁資料「原発事故研究」その3

 (最新見直し2011.03.21日)

 附録 (D) 放出放射能の人体及び土地使用に及ぼす影響

 I はしがき

 大型原子炉の大事故に際して、原子炉より放出された分裂生成物によつて、人体が蒙むる 影響は非常に複雑な様相を呈するもので、これにより人体の受ける被爆を正確に評価するこ とは非常に困難である。さらに放射性放出物が、土地・海水等を汚染し、これから何等かの food chain を通つて、人間が蒙むる影響をも附加して考慮しなければならないとすれ ば、その実態の把握と評価とはさらにきわめて困難なものとなる。

 従つて、これから考察する影響の本当の実態については未知、不明の要素があまりにも多 く、科学的な推論といつても、その実は scientific fiction に近い面もあること はいなめない。

 しかしながら、この種の影響についてのより合理的な推定を行うことは、大事故より起りう る損害をより合理的に評価するために欠くべからざる要素の―つであるとともに、 起りうべき損害を未然に防止するための基木となるべき資料の有力な手がかりを与える点か ら我々の推定は意味のある試みであると考えた。

 そこで先ず、原子炉の事故に際して放出される核分裂生成物 (又は燃料の―部を含む) に よつて人体がどのような種類の被曝を蒙むる可能性があるかと考察すると、大体図 1 にか かげる図式の如くなり、これを整理すると、概ね次の如くなる。

1. 外部技曝
( External Exposure )
(1) コンテナーよりのγ線被曝
(2) 放射能雲よりのγ線被曝
(3) 土地・建物等に沈着した放射物よりのγ線被曝
(4) 身体表面に沈着した放出物より身体の受けるγ−β線被曝(この内とくに皮膚の受けるβ線被曝が重要)
 
2. 内部技曝
( Internal Exposure )
(5) 放射性放出物の身体への侵入部位が蒙むる被曝
(i) 呼吸器よりの侵入では
(ii) 消化器よりの侵入では 消化器
(6) 身体内に吸収された放出物による全身の受ける被曝
(7) 吸入摂取された放出物により、各 Critical Organ が受ける被曝
(8) 一度土地又は海水等に沈着した放出物が food chain を通じて、徐々に身体内に摂取されることにより、各 Critical Organ が受ける被曝

 注 内部被曝はβ、γ線の被曝を共に受ける(燃料の一部が放出した場合はγ線被曝も考えられる)が全身の被曝をのそけばγ線被曝はβ線被曝に対し影響が小さいのでβ線 被曝を主として考える。

 * 呼吸器よりの Aerosol の侵入においては常に一部は、消化器に移行すると考えるのが妥当である。

 これらの身体各部への各種の被曝量を支配する諸因子はまた、非常に複雑であり、これら のすべてについて考慮することは不可能であるが、概ね次の如きものが考えられる。

図1.

 1. 環境の諸因子

(1) 風向、風速、温度勾配等の各種の気象条件、
(2) 土地の起伏、水陸の分布等の地理的諸要因
(3) 河川、海洋、地下水系等、水理学的、海洋学的諸要因
(4) 土壌の性質、種類等の地質学的な諸要因
(5) 環境の生態学的な諸条件

 2. 放出物の物理的、化学的諸因子

(1) 放出物の放射能特性 放出物の放射能濃度、各核種の含有成分比、エネルギー減衰特性など
(2) 放出物の他の物理的特性 Gas - 非 Gas の成分比:Aerosol の粒度Aerosol の拡散係数など
(3) 放出物の化学的特性 各核種の化学的形態、溶解性揮発性などの性質、他の物との反応性など

 3. 時間的諸因子

(1) 事故発生後(又は放出後)被曝までの時間
(2) 被曝が継続した時間
(3) 被曝後何らかの汚染除去が行われるまでの時間
(4) 被曝後、経過した時間
(5) 汚染した食物、水などを摂取した時間

 4. 生理的話因子

(1) 呼吸器の機能に関する諸因子 呼吸量、肺への Aerosol の沈着率、肺よりの排泄速度等
(2) 消化器の機能に関する諸因子 消化器内の滞溜時間、腸よりの吸収率等
(3) 各 Organ における蓄積、分布を支配する諸因子 各 Organ における Metabolism 物質の分布状態 等
(4) 排泄機能に関る諸因子 腎、消化器各 Organ 等における排泄速度等
(5) その他 放射線又は他の影響による生理機能の変化、食物、水などの要求量、食習慣等

 以上のごとく、身体の受ける被曝の種類とそれを支配する諸因子は誠に多岐に亘るのであ つて、これらについてすべてを、科学的資料と合理的な基礎の上に考察することはほとんど 不可能なことである。

 従つて、今回の考察においては、被曝のあるものはこれを省略し、又あるものはその一部 のみを考慮し、また諸因子についても、多数の未知な因子について―定の想定を行い、又あ るものは全く無視するか、常に一定であるかの如き取扱いを行わざるを得なかつた。

 故にこのようにして得られた結果については、現実に起り得ぺき被曝に対して、かなり大 きな偏異をもつている事も考えられ、又、その結果について、適切な評価を行うことは甚だ 困難であるが、その想定や省略を生物学的に見て出来るだけ合理的なものとするべく努力し した。しかし、要求されている問題の精度に対して、不必要に精細な計算を行うことは労力 と時間の制限からさけざるを得なかつたが、なお結果からみれば不必要な細かい考慮や、 不当な省略がなかつたとはいえない。ただ限られた時間と労力とにおいては、これもやむを 得ぬ事であつたと共に、今後の研究によつてこれらの不備な点を補足して行きたい。

 従つてここの一文の論述においては、考えられる被曝の型の内 (1) コンテナーよりのγ 線被バク、(4) 皮フ表面に沈着した放出物より身体及ぴ体表面がうける被パク及ぴ (8) food chain を通つて体に入つたものよりの被バク**を除いた各被曝についての み考察することにしている。

注* 身体表面に附着したものは何等かの人為的方法で払いおとし得るか又は洗い流し得るものと考える。
** この点は後に論じられる。
 I 基本的諸条件
  1. 原子炉事故における放出物より身体が蒙むる影響を支配する諸因子として先に掲げるものの 中、第―の環境的諸因子については他の部分について詳細に述べられることになるのでこ こでは全くふれない。

  2. 次の放出物の物理・化学的諸性質については、

    放出物は揮発性の放出物 ( Volatile Fission Products ) と全的放出物 ( Total Fission Products ) の二つを想定する。

    その放射性特性は

    揮発性放出物では、2 〜 500 時間位のの間では、減衰係数 -0.8 の時間の Power Function で減衰し、全放出物は -0.2 の Power Function で減衰するもの と想定する。(WASH) 但しその中の Insoluble な部分の減衰については適切な データがないので減衰係数を -0.2 と -0.1 の間にあるとし、二つの場合を算定して、 その平均を取る事とした。

    又その内に含まれる各核種の内骨、甲状腺等に蓄積する重要な核種の含有率については、 他の専門家の検討の結果にもとずき、次に掲げる表のごときものであると想定する。

    注* ある場合この時間を数千時間まで外挿して計算を行つた場合もあるが、これは本当は正しくない。
    放出される放射性生成物の量
    1キュリー当りの各生成物の量
      炉停止直後 炉停止 24 時間後
    全生成物放出 揮発性放出 全生成物放出 揮発性放出
    Total 1.0 1.0 1.0 1.0
    Noble Gases 0.092 0.57 0.021 0.13
    I131 0.015 0.047 0.014 0.043
    I132 0.022 0.069 0.000022 0.000069
    I133 0.033 0.11 0.015 0.049
    I134 0.038 0.12 2.1×10-10 6.7×10-10
    I135 0.030 0.093 0.0025 0.0077
    Cs137 0.0029 0.018 0.0029 0.0018
    (Soluble Total) 0.50 0.98〜0.95 0.25 0.95
    Sr89 0.024 0.0015 0.024 0.0015
    Sr90 + Y90 0.0030 0.00019 0.0030 0.00019
    Y91 0.030 1.9×10-6 0.030 1.9×10-6
    Zr95 0.032 1.5×10-5 0.032 1.5×10-5
    Ba140 0.032 0.001 0.030 0.00095
    La140 0.032 0.0005 0.030 0.00047
    Nb95  032 1.5×10-5 0.032 1.5×10-5
    Ce141 0.030 0.0018 0.029 0.0018
    Ce144 0.031 0.0019 0.031 0.0019
    Pr144 0.031 ? 0.031 ?
    Pm147 0.0085 ? 0.0085 ?
    (Insoluble Total) 0.50 0.02〜0.05 0.75 0.05
    Pu239 〜 5×10-5 〜 10-6 〜 5×10-5 〜 10-6

    なおこの際、Soluble な部分と Insoluble な部分の含有比率については適 切なデータがないので一応表に掲げた値であると想定した。

    又この他多くの核種が各種の臓器に蓄積する可能性があるが、計算があまりにも複雑にな るので省略することとした。

    揮発性生成物の全ベータ及ぴガンマエネルギーの変化は 2 〜 500 時間までは t-08 に 比例するが、これより早い時間、及ぴ 500 時間の後ではこの法則は適用出来ないことが経 験上わかつている。しかしある場合にはこの法則が 3 ヵ月以上にわたつて適応されると想定 した場合があるが、従つてその結果にはかなり大きな誤差を伴つているものと考えられる。

    又、放出後 2 時間までは放出物の減衰はほとんどないものとして線量を算出したが、 ここでも若干の誤差を生ずることは明かである。

  3. 時間的因子

    身体の受ける被爆線量(とくに蓄積線量)は、放出物の放射能の減衰があるため放出後 被曝がはじまるまでの時間や被曝が継続している時間の長さによりかなり異るものである。

    ここに用いられた線量算出のために、被曝の量の単位を、キュリー・秒 /m3 であらわす ことにする。これは μc・秒 /cc と同じものであり、一般の空気中の放射性物質の濃度を表 わす μc / cc に時間(秒)を掛けた単位である。

    このような単位を被曝量(又は放射能雲の被曝濃度)の単位として用いる理由は、生物学 的な要求よりむしろ放射能雲の拡散や空間・時間的分布の程度を表わすのに便利なためであ る。

    生物学的な評価の立場からみると、このような単位はむしろ若干の問題があり、ある場合 には不便であるということも出来る。

    例えばこの単位によれば Aμ c/cc の濃度の空気に 1 秒間さらされた場合も 1/1000 Aμc /cc の 濃度の空気に1000秒間さらされた場合も被曝単位としては同じ量として表わされる。

    もし、さらされる時間が比較的短時間の場合には両者の生物学的被曝量のちがいはあま り大きなものとならず同一と見做すことも出来るが、被曝時間が非常に短いか又は相当長く なる場合には生体に与えられる線量は物理的・生物学的に異つて来ることは明らかである。

    従つて適切な生物学的評価の立場から、もしこのような単位を用いる場合には、被曝時間 はあまり大きな差がないこと、被曝時間はあまり極端に短かくもなく ( 大体 1000 秒以上 であることが望ましい)又あまり長くもない事(数時間以内)が必要と考えられるので、こ こでは被曝の継続時間は短時間 (1000 秒位 ) と 4 時間 ( 約 15000 秒 ) の二つの場合 について考察することとした。被曝時間がこれより長くなる場合には濃度×時間の積が同一 であつても、生物学的な被曝量の評価は次第に困難になつて、もはやこのような単位は使用 が適切でなくなるのであろう。

    次に間題となる重要な点は、事故が発生し、放射性物質が原子炉より放出されてから、これ が人体に到達するまでの時間による影響である。

    すでに述べた通り、放射性放出物は全体として、常にある速度で減衰をしているのである から放出後時間が経過するに従つて、はじめの濃度は次第に少くなつて行く。とくに揮発 性放出物ではこの減衰ははじめの数時間では非常に著しいと考えられる。故に放出後どの位 の時間で放射能雲が人体に到達するかということが、人体の受ける被曝の全量に対し非常に 大きな差を生ずる(もし被曝時間が、各人に対しほぼ同じような値であるとすれば)ことに なる。従つて、身体の受ける被曝線量を、適切に算定するためにはその人が放出後どの位の 時間で放射能雲の被曝を受けるかを想定する必要があるが、地理的条件から見て、各場所に いる個人が放出後被曝を受けるまでの時間は連統的に変化するのであつて、これを一定時間 ときめることは厳密には出来ないが、ここでは想定された地理的立地的条件から考え、気象 的想定を加えることにより、―応、放出後、1 時間目に放射能雲に被曝した人と放出後 6 時 間目にそれと同じ放射能雲に被曝した人の受ける被曝量のみを算出することとした。

    これは想定された立地条件において、風速が大体 6m/sec 位とした場合に、前者は Reactor に近い小都市の人、後者は大部市に住む人が受ける条件にほぼあたる。

    以上の二種類の時間的因子の他に、さらに、第三の因子として、被曝を受けてから後の時間 を考えることが被曝量の算出には必須の条件である。しかしこれは身体の各部分の生理的 な条件によつて、一様ではなく、ある臓器では非常に長期間に亘つて、考慮をしなけれまな らないしある臓器では、かなり短時間の被曝量のみを考慮すればあとはほとんど無視して もよい。従つてこれ等の時間的因子は各臓器毎に考慮の基準を変えねばならないのでこの点 は、各論において考えることとする。

    以上の点を考慮して、身体の受ける被曝線量と被曝濃度 − 時間との関係を考えて行くわけ であるから被曝濃度 − 時間の表現を一定の単位できめておかなければならない。

    従つて、ここにおいて単位は事故発生放出が起つて後 24 時間目における濃度−時間単位 とし、常に、放出後 24 時間目のキュリー・秒/m3 で被曝量を表現するものと定める。

    このようなやり方は実際問題として、事故発生後数時間以内に、空気中の放射能の濃度 を有効適確に測定することが困難であり、通常 24 時間位たつた後において、比較的正確 な測定乃至は推定がなされ得るであろうという点に理由がある。又、放出後被曝を受ける までの時間や、被曝の継続時間の長短による影響をすべて同一の単位に修正して比較す るために便利である。

    以上の理由から、全体から見るとかなり複雑でわかりにくい算出を必要とするが、一応 ここではすべての被曝量を放出後 24 時間目の被曝濃度−時間単位〔キュリー・秒/m3 (24時間)〕の何倍にあたるかという数値であらわすこととする。

    さらに放射能雲の被曝を受ける場合にはいずれも同じ時間的な条件で披曝を受けたもの と想定して算出を行つた。( 即ち短時間被曝といえば他の条件は異つていても、被曝時間 は皆 1000 秒位であつたとするという意味である。)

  4. 次に、被曝量の算出は身体の被曝を受ける部分が決められねば不可能である。

    従つて、その部分をどのように定めるかは生物学的評価の点からきわめて重要である。 というのは身体のあらゆる部分の被曝量を全て算出することは理論的にも不可能であるば かりでなく、労力的にも実際上無理である。故に出来るだけ少数の部分で出来るだけ身体 全体が受ける効果を適切に評価出来るような部分を算出する必要がある。

    このような選択の基準は非常に決定困難なものであつて、現在学問的に完全な基準とい うものはない。従つて、ここでは次のような基準によつて、算出を行うべき身体の各部分 を選定した。

    (i)  全身  全身が被曝を受けることは最も危険な状態であつて、又全身は多量の造血臓器を含み、全身被曝は Volume-dosis が最も大となる。
    (ii)  放射性放出物が身体に侵入する部分にあたる膀器  即ち、肺及ぴ消化器。これ等の Organ は最も早く被曝を受け又最も濃厚に被曝の危険にさらされる。
    (iii)  身体の内最も多量の被曝線量を受ける可能性があると考えられる臓器。

    放出物の内容から見て、このような臓器の代表として、甲線腺と骨とを考える。

    この他選択の基準として、最も放射線に対して感受性の強い臓器、生命の推移に最も重 要な臓器などが考えられるが、これらに対する生物学的に評価の基準や線量算出の条件が 不明なものが多いいので、ここにおいては、前述の (i)全身* (ii)肺 (iii)消化器 (v) 甲状線 (v) 骨の五つの身体部分のみを取上げて、被曝線量を計算し、これにより全 体への効果を評価することとした。

注*  全身だけを計算すればそれですべてをつくしているように考えられやすいが、全身が 受ける線量というものは他の臓器の受ける線量から見て必ずしも大きなものではなく、 甲状腺、肺、骨などははるかに大きな蓄積線量を受ける。

ただ吸収線量というものは組織が小さく Organ の重量が小なものでは比較的に大きく算出されるものであるから、生物学的立場からは吸収線量のみならず容積線量 (volume - dosis) をも考慮する必要があるように思われる。この点では全身線量はいかにも重要な役割を有していると考えられるが、Volume-dosis と 全体的な生物学的効果との関係が未だよく解明されない点が多いいので、ここでは従来 の習慣に従つて、各器官 (身体部分) の吸収線量で被曝の程度を意味づける方法を取つた。


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 III 身体の各部の受ける被曝線量

 1. 全身の受ける外部線量(全身γ線量)

 全身の受ける被曝線量は大きくわけて外部よりγ線によつて受ける被曝と、放出物が体 内に摂取される事により、内部より全身が受ける被曝線量(主としてβ線による)とにわ かれるが、ここでは全身が外部よりのγ線への被曝により受ける線量を算定する。

 @ 今 C c-sec/m3の濃度・時間の放射能雲に潜没 (immerse) した場合に 放射能雲の拡がりが、そのγ線の飛程に対して充分大きな空間にひろがつているとすれ ば、それから全身が受けるγ線の線量は、(数式図略)。今、被曝時間が短時間であつて、その間の放出物の減衰が無視出来るものとすれば 放出後 t 時間目に放射能雲に immerse した人の全身の受けるγ線の線量は D = 0.173C (t / 24)-n である。

 注* 組織−空気の stopping power ratio 考慮に入れなかつた。が、これを考慮すれば線量は約 10% 増となる。但し、(数式図略)。

 しかしながら、被曝時間が比狡的長期に亘る場合は被曝中に放射能のエネルギーの減衰が あるため実際受ける線量は、これより小となる。

 今エネルギーの減衰が図の如く行われるとすれば、(図略)


放出後 1 時間目より被曝を受けて、それが 4 時間つづいたとすれば、減衰を考慮に入れて、 平均 Aav のエネルギー強度で 4 時間被曝を受けた
ものと考えて線量を計算しても誤 差が少い。この場合、Aavは次の如き式で表わせばよい。(図略)
n = 0.8 及ぴ 0.2 に対して、Aav を夫々求めると
次の表を得る。
n 1 時間目被曝の時 6時間目被曝の時
0.8 6.17A24 2.41A24
0.2 1.55A24 1.25A24

 この値はいずれもそれぞれの被曝時間後夫々 1.4 及ぴ 2.0 時間たつたときの A の値 に近いので、夫々 A24 及ぴ A8 の値をもつて表わしてさし
つかえない。
従つて、被曝が 4 時間つづいた場合には、全身の受けるγ線量は、

放出後 1 時間目よりの被曝の場合は

        0.246 × 0.7 × 6.17C = 1.07 C rad     Volatile F.P. のとき
        0.246 × 0.7 × 1.55C = 0.268 C rad    Total F.P. のとき.

放出後 6 時間目より被曝の場合

	0.246 × 0.7 × 2.41 C = 0.42 C rad    Volatile F.P. のとき
	0.246 × 0.7 × 1.25 C = 0.216 C rad   Total F.P. のとき

以上のの結果を総合すれば放出後 24 時間目の濃度 C c - μc/m3の放射能雲に潜没 (immerse) した人の全身の受ける線量は (γ線被曝量) 次
の図に掲げる如くであ る。(図I)


 2. 肺の受ける線量について

 肺は放射能雲の吸入により肺に沈着又は吸収された放射性物質よりの放射線(主として β線を考えればよい) により被曝を受けるが、その被曝線量は、次の諸条件により異なる。
1) 吸入する放射性物質の空気中濃度 μc/cc で表される。
2) 呼吸量率 一定時間に吸入する空気の量を示す。
3) 空気中の Aerosol の粒度 肺における沈若華を定める
4) 空気中の Aerosol の溶解性 肺にとどまる時間に関係する'
5) 放射性物質の減衰の状態
6) 事故後被曝までの時間
7) 被爆の継続時間
8) 被曝後経過した時間   等

 従つて、以上の諸条件に一応一定の値を想定しなければ、線量の算出が出来ない。

 1)について、放射性放出物の空気中濃度は

 放出後 24 時間目の濃度を C c-sec/m3 とするが 7) の被曝継続時間は、短時 間の場合を、約 1000 秒、やや長くつづく場合を約 15000 秒 − 約 4 時間と想定する。

 従つて、濃度は、短時間被曝は大体 C / 1000 μC/cc やや長時間被曝でほ大体 C / 15000 μC/cc であると想定されたことになる。

 但しこの濃度は放出後 24 時間目の空気中の濃度である。

 2)については最近における科学技術庁資源調査局の調査によれば、我が国における色々な作業、 労働時における空気の呼吸量は、

中等度作業 10 M3/8hr ≒ 21 l/min
一般作業 6.5 M3/8hr ≒ 13 l/min
坐作業、静止状態 4 M3/8hr ≒ 8 l/min

であるから、今放射能汚染空気を N hr 吸つたとし、その間、中等作業の時間 : 一般作業の時間 : 静止状態が、5 : 5 : 2 と想定すれば

            20×5+13×5+8×2
 呼吸率は ―――――――――― = 15 l/min = 250 cc/sec
                   12

従つて、呼吸量は 15×60 Nl = 90 QNl
故にここでは呼吸率として

            15 l/min = 250 cc/sec をとるものとする。

4)については、粒度は一般にかなり巾のあるものであり、想定はかなり難しいが、ここで は比較的粒度大なる Aerosol として、粒度 7μ の場合と比較的粒度小なる Aerosol として粒度 1 μの場合の二つを想定する。

この想定は実際におこり得ると考えられているものの二つの典型をとつたものと考えてもよい であろう。現実にはこの二つの混合されたようなものが多くおこり、炉よりの距離がはなれ るにつれ、粒度は小になる傾向があると考えられる。

この場合、肺における Aerosol の沈着率は、後に述べる理由により(注1)
前者では 細胞沈着率(*) 50%
上気道 〃 (**) 5%
全 〃 55%
後者では 細胞 〃 10%
上気道 〃 65%
全 〃 75%

と想定することを得る。

注(*) 

一部の Lower respiratory における沈着を含み、機械的に肺外に排除されない。

(**) 

一部鼻、咽喉などへの沈着をのぞき、嚥下される可能性ある肺内沈着をいう

注1

今、空気中の Aerosol の粒度を 1μ及び 7μの二種類があるとすれば、その おのおのが肺における沈着率は次の各図から次表のようになると考えられる。
沈着率\粒度 平均 平均
Rar 45〜55% 50% 5〜15% 10%
Rup 0〜10% 5% 70〜90% 80% *
Rt   55%   90% **
* この中 10〜20% は鼻、咽喉への沈着と考える
** 鼻、咽喉への沈着をのぞくと肺内への全沈着率は 75% としてよい。
但しこれは非常に conservative な想定ではない。



4)については、実際の放出物の溶解性(ここでは、厳密にいえば体液に対するもので あるが、大体水に対する溶解性を考えることとする)は非常に様々であろう。しかしそ れでは線量の算出が出来ないので、一応、放出物を soluble ,なものと insoluble なものとの混合物と考え、前者は、肺の中でかなり速かに溶解し、大体平均して肺 内での滞留時間は、100〜1000 秒であると想定する。又後者は、肺内での溶解が きわめてゆつくりで、肺の生理的な排泄機序だけによつて、肺外へ排除されるものと想 定する。

 但、この二者の含有率は、前に掲げた放出された生成物の表中に掲げたものを参照し、

全放出物では放出後 1 時間目では     Sol : Insol =  0.5 : 0.5
              〃   6 時間目では     Sol : Insol =  0.4 : 0.6
         揮発性放出物では一様に     Sol : Insol = 0.95 : 0.05

と想定する。
 6) の被曝までの時間は
         放出後      1時間及び6時間とする。

 7) の被曝継続時間は既にのべた如く
         1000 秒及約 4 時間(15000秒)とする。
 8) については、
     被曝後大体その 1 日間に受ける線量
           〃      30 日間に受ける 〃
           〃      90 日間に受ける 〃
           〃       1 年間に受ける 〃

     の 4 段階に分けて算出することにした。

又最後に 5) については

     Volatile Fission Products の場合は

                                t
                      A
t
 = A
24
(――)
-0.8
                                24

     Total Fission Products

                                t
                      A
t
 = A
24
(――)
-0.2
                                24

とし、又 Insolable の物質だけを考慮する場合は
At = A24(t/24)-0.2 及び = A24(t/24)-0.1の二つの場合を想定して算出し、この中間の値を取ることとした。

以上のような想定にもとずいて、肺の受ける線量を算出することが出来るが、これは 先ず被曝中(即ち放射能雲を吸入中)に受ける線量と、被曝が終わつてから一定時間まで に受ける線量とにわけて考察する。溶解性の物質に対しては後者はほとんど考える必要 がないが、不溶解後の部分はかなり肺及びその附近に長時間とどまるものが考えられ、 その肺に与える線量は非常に大きくなる場合がある。

又被曝時間が長くなればなる程不溶解性のものは、肺に蓄積する傾向があり、この点 の影響を確かめるため被曝時間を 1000 秒、3500 秒(約 1 時間)7000 秒(約 2 時間) 10000 秒(約 3 時間)、15000秒(約 4 時間)の五段階に分けて 比較して見た。

(A) 被曝時間中に肺の受ける線量を算出するには、

(i) soluble は Aerosol の部分より受ける線量
(ii) insoluble な部分により肺が受ける線量

これはされに二つに分かれ、(a) 肺胞に沈着したものより受ける線量と (b) 肺上 気道に沈着したものより受ける線量とになる。

(i)と(ii)の線量の算出については参考文献(15)にゆずる〔本附録の末尾にある(注 2 )参照〕。 先ず Volatile F.P. に被曝したときを想定すれば

この場合 C c-sec/m3に被曝したとして

放出 1 時間後及び6時間後共に
         Soluble のものが95%  insoluble のものが 5% 含まれると想定する。

又 Total F.P. に被曝したときには
放出後 1 時間では、 Soluble の量が  50%
                    insoluble のものが 50% と想定するが、6時間後では
soluble のものの decay が早いので、
        soluble が 40% になり
        insoluble のものが 60% になると想定する。
従つて Volatile F.P. の被曝では大部分の線量は、
       soluble の Aerosol より来ると考えられるが。
  Total F.P の被曝の場合は
        soluble からくるものつと、insoluble から来るものが半分くらいずつ
になると考えられる。

(B)

(1) Volatile F.P. に被曝したとき被曝中に受ける線量

今放出後24時間において、放射能雲の濃度がχ24c/m3のものに t 秒間さらされたとする。

χ24× t = C c-sec/m3であらわすものとする。

事故放出後1時間で被曝がはじまつたとすると、
C c-sec/m3より肺が受ける線量は
被曝時間(秒) 粒度 1 μのとき 粒度7μのとき
1,000 0.28C + 15 × 10-4C = 0.28C 0.40C + 19 × 10-4C = 0.402C
3,500 0.24C + 53 × 10-4C = 0.245C 0.33C + 0.007C = 0.337C
7,000 0.20C + 0.011C = 0.211C 0.28C + 0.012C = 0.292C
10,000 0.20C + 0.015C = 0.215C 0.28C + 0.017C = 0.297C
15,000 0.16C + 0.036C = 0.196C 0.22C + 0.02C = 0.24C

        最高  0.245C               最高  0.337C
                     平均 0.22C                 平均 0.3C
        最低  0.196C               最低  0.24C
        同上の比 1.25              同上の比 1.40
(2) Total F.P. に被曝したとき受ける線量

同様に、放出後24時における放射能雲の

      濃度 × 時間を C c-sec/m
3
 で表わすと
被曝が放出後1時間の場合で N = 0.2 のとき
時間(秒) 粒度小 粒度大
1,000 0.034C + 0.015C = 0.049C 0.046C + 0.02C = 0.066C
5,000 0.032C + 0.054C = 0.086C 0.044C + 0.069C = 0.11C
7,000 0.030C + 0.11C = 0.14C 0.041C + 0.123C = 0.16C
10,000 0.030C + 0.15C = 0.18C 0.041C + 0.168C = 0.21C
15,000 0.029C + 0.36C = 0.39C 0.040C + 0.22C = 0.24C
       最高 0.39C               最高 0.24C
       最低 0.047C              最低 0.064C
        比   8.3                 比   3.75


事故発生後6時間で被曝がはじまつたとすると、
       Volatile F.P. の場合は decay がすみやかであるので、
        C c-sec/m
3
より肺が受ける線量は、減少する。
時間(秒) 粒度小 粒度大
1,000〃 0.117C + 12.6 × 10-4C = 0.12C 0.16C + 16×10-4C = 0.162C
5,000〃 0.117C + 44 × 10-4C = 0.12C 0.16C + 57 × 10-4C = 0.166C
7,000〃 0.193C + 0.009C = 0.10C 0.13C + 0.01C = 0.14C
10,000 0.093C + 0.013C = 0.11C 0.13C + 0.014C = 0.144C
15,000 0.093C + 0.03C = 0.12C 0.13C + 0.017C = 0.15C
          最高 0.12C                  最高 0.166C
                     平均 0.12C                    平均 0.15C
          最低 0.10C                  最低 0.14C
           比   1.2                    比   2.8

      Total F.P. の場合は                        のものの量が増大し、0.6になる。
時間(秒) 粒度小 粒度大
1,000〃 0.049C + 0.015C = 0.064C 0.067C + 0.019C = 0.09C
5,000〃 0.049C + 0.054C = 0.10C 0.067C + 0.068C = 0.14C
7,000〃 0.039C + 0.11C = 0.15C 0.054C + 0.123C = 0.18C
10,000 0.039C + 0.15C = 0.19C 0.054C + 0.168C = 0.22C
15,000 0.039C + 0.36C = 0.40C 0.054C + 0.202C = 0.26C
        最高 0.40C                   最高 0.26C
        最低 0.064C                  最低 0.09C
         比   6.25                    比   2.8

全体における開き
  Volatile F.P. の場合
      最高  0.337C                   最低 0.10C
             比率    3.37
  Total F.P. の場合
      最高  0.40C                    最低 0.047C
             比率    8.5

(c) 被曝後に肺の受ける線量

吸入された Soluble Aerosol は大部分が速かに肺より溶解し去ると考え られるから、被曝後その影響があるのは高々 1 〜 2 hr であり、ここでは肺への滞留 は平均 1000sec としたから被曝後の長時間経つての soluble 物質の与える線 量は無視することができる。

しかるに Insoluble の物質は肺に沈着して後しばらく肺に滞留するから一 定期間に亘り相当量の線量を肺に与えることが考えられる。

     この場合も (i)  肺胞に沈着した部分と
                (ii) 上気道に沈着した部分とは著しく異なる。

前者は相当長期間肺に留まるが(半減期 約100日) 後者は、気道の排泄機序によりかなり速かに肺外へ排除され、大部分は消化器へ移行 する。(半減期 2.5 時間とする)

従つて、先ず肺胞に沈着したものの与える線量は Aerosol の粒度と放射能の 物理的減衰係数により異なるが、次の如くなる。(註2を参照)

但しC' は C 中の insoluble の部分の濃度とする。

粒度 小(1μ) 大(7μ)
減衰係数 0.2 0.1   0.2 0.1  





20時間まで 1.8C' 2.5C' rad 0.2C' 0.25C' rad
30日まで 37C' 65C' 3.7C' 6.5C'
90日まで 85C' 175C' 8.5C' 17.5C'
90日より 130C' 130C' 13C' 13C'
1年まで より小である より小である

但し、放出後1時間目で被曝が短いときはこれに1.3を掛けた値になる。*

次に、肺上気道に沈着したものより受ける線量は、詳細は省略するが、粒度及び被 曝を受けた時間により異なるが、次の如く見なして良い。

(* なお、6時間目の被曝で4hr 続いた場合にはこの値に 0.9 を掛けた値になる。)

表 被曝後20時間までに上気道が受ける線量
  被曝 粒度小 粒度大
放出後
1時間

4hr
0.14C'
0.08C'
0.91C'
0.52C'
放出後
6時間

4hr
0.12C'
0.07C'
0.75C'
0.45C'

20時間以後は上気道への沈着する放出物の量は極めて小となるので、その後の 線量は無視してよい。

以上を加え合わせると被曝後20時間までに肺の受ける線量は次の如くなると考え られる。

放出後 被曝 粒度小 粒度大
0.2 0.1 0.2 0.1
1時間目
4hr
2.6 C'
1.88C'
3.4 C'
2.58C'
1.17C'
0.72C'
1.24C'
0.77C'
6時間目
4hr
1.92C'
1.7 C'
2.62C'
2.32C'
0.95C'
0.63C'
1.0 C'
0.68C'

ここに C' は C c-sec/m3中の insoluble の部分の濃度であつて、

                                              1
        Volatile F.P. の場合は  C' = 0.05C = ―― C
                                             2 0

        Total F.P. の場合

                                                    1
              放出後1時間目被曝では  C' = 0.5C = ―― C
                                                    2

              放出後6時間目被曝では  C' = 0.6C

以上(A)(B)(C)を綜合して C c-sec/m3に被曝した人の受ける線量は、放射 性放出物の種類、粒度、被曝までの時間、被曝中の時間、放出物とくに insoluble の 部分の減衰の速さ、及び被曝後の時間により次の表のごとく考えられる。


C c-sec/mに被曝した人の肺が受ける線量(但しCは放出後24時間目の値とする。)

 
放出後
被曝まで
被曝
時間
被曝中 被曝後
20hr
(0.1)
まで
被曝後
20hr
(0.2)
まで
被曝後

0.1
1ヶ月
まで
0.1
被曝後

0.2
3ヶ月
まで
0.1
被曝後
3ヶ月
〜1年








1時
間目

4hr
0.4 C
0.24C
0.46C
0.28C
0.46C
0.28C
0.69C
0.46C
0.86C
0.59C
1.01C
0.7 C
1.58C
1.14C
<0.85C
<0.65C
6時
間目

4hr
0.16C
0.15C
0.21C
0.18C
0.21C
0.19C
0.39C
0.34C
0.52C
0.47C
0.63C
0.56C
1.07C
0.97C
<0.65C
<0.58C


1時
間目

4hr
0.28C
0.2 C
0.41C
0.3 C
0.45C
0.33C
2.58C
2.06C
4.53C
3.46C
5.81C
4.46C
11.65C
8.96C
<8.5C
<6.5C
6時
間目

4hr
0.12C
0.12C
0.22C
0.21C
0.25C
0.24C
1.98C
1.8 C
3.38C
3.06C
4.38C
3.96C
8.88C
8.04C
<6.5 C
<5.85 C






1時
間目

4hr
0.07C
0.24C
0.66C
0.60C
0.69C
0.63C
2.96C
2.4 C
4.7 C
3.73C
6.2 C
4.8 C
11.9C
9.2 C
<8.5C
<6.5C
6時
間目

4hr
0.09C
0.26C
0.66C
0.64C
0.69C
0.60C
2.82C
2.59C
4.41C
3.95C
5.7 C
5.17C
13.7C
9.9C
<7.8C
<7 C


1時
間目

4hr
0.05C
0.39C
1.35C
1.33C
1.75C
1.68C
23.1C
18.9C
4.26C
3.3 C
55.4C
42.9C
114C
89C
<85C
<65C
6時
間目

4hr
0.06C
0.4 C
1.21C
1.42C
1.63C
1.79C
22.4C
20.4C
39.2C
35.6C
51.2C
46.4C
132C
95C
<78C
<70C

以上の結果から、明らかな点は、肺に与える数量を最も大きく支配するのは、放出 物中の insoluble な部分の割合であり、次に大きな factor は粒度である。

又肺胞における生理的排泄の速度を半減期 100 日位と想定したが、これが変化す れば蓄積線量は大きく変化する。肺胞内における物質の排泄速度は物質の種類や溶解 度や粒度等によく著しく異るし、又多くの物質は1μくらいの粒子であればかなり溶解性 が高くなるので、ここにおける想定は充分に Conservative なものであると 考えられる。

要するに肺の受ける被曝線量は、これを支配する核種の要因が確定困難なもの、又 は未だ科学的に明らかでないものが多いため、場合により非常に大きな差異を生ず ることが判る。

WASH では甚だ簡単な想定により線量の算出を行つているが、このような想定は 生物学的には甚だ不合理な点が多いいので、ここではこれを出来るだけ生物学的に合 理性のあるものとしたが、ここに用いた想定が必ずしも、すべてより合理的であると いいきることは出来ない。

しかし、ここに見られる大きな巾から見て現実に怒り得る事故の影響はこの巾の範 囲内に入ることが多いと考えることはあまり不合理なことでは無いであろう。


1. 全身の受ける外部線量(全身γ線量) / もくじ / 戻る / 3.消化器の受ける線量

3. 消化器の受ける線量

呼吸器に吸入されて沈着した放射性 Aerosol の一部及び口腔等に付着した Aerosol の一部は、生理的機序に従つて、消化器へ移動する。

排泄機序は時間により変化するから、腸管の受ける線量を時間的に正確に算定するこ とは非常に困難であるので、ここでは呼吸器及び口腔に沈着した Aerosol のあ る割合が一定の時間の後に消化器に到達し、且つそれが、一定時間消化管内を通つて、 体外へ出るものと想定しその間に消化管が受ける総線量のみを算定する。

又放射性物質の吸入の続く時間及びその消化管への侵入は比較的短時間に完了す るものと想定する。

放射性物質が消化器中にとどまる時間は I.C.R.P. によれば次の如く想定されている。

表I
  重量(g) 滞留時間  
200g 1hr 但し、重量は日本人に
対して補正してある。
小腸 900〃 4〃
下部大腸 110〃 8〃
上部大腸 120〃 18〃

次に呼吸器にQμc が沈着した場合そのどの位の割合が消化器へ移行するかは、 Aerosol の溶解性、と沈着部位に主として左右される。が、一応上気道に沈着 したもののみがいこうするし、

       Volatile は soluble が 95% insoluble が 5%
       Total    は    〃      50%     〃      50% 含
まれるとし、soluble のものの10% insoluble の全部が移行するものとする。

又上気道及び口腔への沈着率を

粒度小なものでは 10%、粒度大なものでは 80% とする。しかるときには、消 化管へ移行する放射性物質の量は空気中に含有されるものに次表の割合を掛けたもの となる。

表II 消化器へ移行する放出物の割合
  Volatile F.P. Total F.P.
(放出後1時間後)
Total F.P.
(放出後6時間後)
Sol. Insol. 合計 Sol. Insol. 合計 Sol. Insol. 合計
粒度小 0.001 0.005 0.006 0.005 0.05 0.055 0.004 0.06 0.064
粒度大 0.075 0.04 0.115 0.04 0.4 0.44 0.32 0.48 0.512

従つて、消化管内へ移行する放射性放出物の割合を次のごとく想定する。

表III
  Volatile F.P. Total F.P.
(放出後1時間後)
Total F.P.
(放出後6時間後)
F.P. μc F.P. μc F.P. μc
粒度小 1% 25C 5.5% 14C 6.5% 16C
粒度大 12% 30C 45% 112C 50% 125C

今 C c-sec/m3 に被曝した人の肺には CVμc の放出物が侵入する。故に 250C に表IIIの割合を掛けた放出物が消化器へ移行することになる。

消化管に移行する放出物の大部分は insoluble のものがあるから、この混合 物の物理的減衰係数は 0.2 〜 0.1 と考えられる。

今 C c-sec/m3 を放射後24時間後の値とすると、

  放射後1時間目の放射物の強さは C
24
(2/24)
-0.2
 = 1.65 C
24
                         又は   C
24
(2/24)
-0.1
 = 1.28 C
24

但し、被曝が4時間続いたとすると、I節に述べた如く、

  放出物の平均の強さは          C
24
(24/24)
-0.2
 = 1.58 C
24
                又は            C
24
(24/24)
-0.1
 = 1.26 C
24

としてこれが4時間つづいたと考えればよい。

  放出後6時間目の被曝の場合には同様に考えて

  短期被曝のとき      1.32 C
24
                      1.15 C
24
  4時間被曝のとき     1.25 C
24
                      1.12 C
24

従つて消化器に入る放出物の線量は次表の通りと考えられる。
表IV
放出後 減衰係数 被曝時間 Volatile F.P. の場合 μc Total F.P. の場合 μc
粒度小 粒度大 粒度小 粒度大
1時間目 0.2
4時間
4.6C
4.2
55.5C
47.4C
25.9C
22.1C
207C
177C
0.1
4時間
3.4C
3.15C
41.1C
37.8C
19.4C
17.6C
154C
141C
6時間目 0.2
4時間
3.3C
3.1C
39.6C
37.5C
22.1C
20.0C
165C
156C
0.1
4時間
2.9C
2.8C
34.5C
33.6C
18.4C
17.9C
144C
140C

今、qμc が重量mgの消化管内にT時間あるときその消化管の受ける線量 DGI


             3.7 × 104 × 3600 × 1.6 × 10-6                1.06
     D
GI
 = ―――――――――――――――――― ∫qF
β
 dT =      ∫qE
β
 dT
                       2 × 100 × m                            m


但し、消化管は管状と考えβ線の飛程から考え organ への線量の吸収は 2πで行 われるものとする。

Eβは放出物のβ線平均エネルギーとし、ここでは 0.4 Mev を想定する。

    q は時間の函数で q
T
 = q
0
 T
-m
 とする。

但し q
0
 ははじめの放射性物質の量である。
             n は0.2乃至0.1であるとする。
q
0
 は表 IV で示した数値である。

消化管の各部にとどまる時間及び organ の重量は表 I に示すとおりであると想定する。

又、被曝が短時間の場合は、吸入後平均して、2時間後に全放出物が胃に到着すると仮定すれば

胃の受ける線量は

             1.06 × 0.4     3
     D
st
 = ――――――― ∫  qo T
-n
 dT rad
                 200         2

小腸の受ける線量は


             1.06 × 0.4     7
     D
SI
 = ――――――― ∫  qo T
-n
 dT rad
                 900         3


大腸の受ける線量は


               1.06 × 0.4     33
     D
L.T.
 = ――――――― ∫   qo T
-n
 dT rad
               100 + 120      7


但し、a は小腸内における放出物の吸収率であつて、これは甚だ明らかでないが、一 応平均して 0.3 とする。

今 n=0.2 とすれば




                              3
     D
st
  = 2.12 × 10
-3
 qo∫  T
-0.2
 dT
                              2


          = 1.8 × 10
-3
 qo rad




                             7
     D
S.I
 = 4.7 × 10
-4
 qo∫  T
-0.2
 dT
                             3


          = 1.37 × 10
-3
 qo rad




                             33
     D
L.I
 = 1.3 × 10
-3
 qo∫   T
-0.2
 dT
                             7


          = 1.9 × 10
-2
 qo rad




n = 0.1 とすれば




                               1
    D
st
 = 2.12 × 10
-3
 qo × ―― ( 3
0.9
 - 2
0.9
 ) = 1.93 × 10
-3
 qo rad
                              0.9




                               1
    D
S.I
 = 4.7 × 10
-3
 qo × ―― ( 7
0.9
 - 3
0.9
 ) = 1.6 × 10
-3
 qo rad
                              0.9



                               1
    D
LI
  = 1.3 × 10
-3
 qo × ―― ( 33
0.9
 - 7
0.9
 ) = 2.4 × 10
-2
 qo rad
                              0.9



従つて、消化管の受ける全体の線量は

   n = 0.2 のとき D
st
 + D
SI
 + D
LI
 = qo( 1.8 × 10
-3
 + 1.37 × 10
-3
 + 1.9 × 10
-3
 )
                                     = 2.2 × 10
-2
 qo rad

   n = 0.1 のとき    qo( 1.93 × 10
-3
 + 1.6 × 10
-3
 + 24 × 10
-3
 )
                   = 2.75 × 10
-2
 qo rad

被曝が 4 時間続いた場合ににもその平均の強さの放出物が 1 時間に 1/4 ずつ入 つてきたと考えれば、全線量は同じ式で算出できる。故にこれらの結果を総合すれば、 消化管の受ける総線量は次表のごとくなり、この総量は大体 30 〜 40 時間の間に与 えられる。

図 3

被 曝
放出後
減衰係数 被曝時間 Volatile F.P
の場合(rad)
Total F.P.
の場合(rad)
粒度小 粒度大 粒度小 粒度大
1時間目 0.2
4時間
10.1×10-2C
9.2×10-2C
1.22C
1.04C
0.57C
0.49C
4.55C
3.9 C
0.1
4時間
9.4×10-2C
8.7×10-2C
1.16C
1.04C
0.53C
0.48C
4.2 C
3.9 C
6時間目 0.2
4時間
7.3×10-2C
6.8×10-2C
0.87C
0.82C
0.49C
0.44C
3.63C
3.43C
0.1
4時間
8×10-2C
7.7×10-2C
0.95C
0.92C
0.51C
0.49C
4.0 C
3.9C

§ 考察 §

消化器の受ける線量の算出で問題になるのは (i) 消化器内における生理的滞留時 間 (ii) 消化器内における物質の吸収 (iii) 消化器内容物によるβ線の吸収、減弱等 である。

第一の滞留時間は食物の種類、食習慣、個人的生理差の巾等かなり大きく、これりよ り非常に、変化の巾があるものと予想される。従つて ICRP の想定が、どの程度、 このような場合の評価において妥当であるかはよく解らない。

第二の点は、腸内の放射性物質は、その化学的性質や他の物との共存、生理的状態な どで著しく異なるので、放出物全体として考慮することは本当は不可能である。従つ て、吸収率 30% という数時にはあまり有力な根拠はない。又、腸内での吸収は一時 に行われるのではなく、小腸を通過中に徐々に行われるのであるから、放射性放出物 の量や割合も連続的に変つて行くものであると考えられるが、ここではその点は全く 考慮していない。

もし小腸内での吸収が著しく悪いとすれば大腸がより大きな線量を受けることは明 らかである。(滞留時間が長いから)

第三の点も腸内の物質は常に激しい流動や運動をしてまぜ合されているし、又、次第 に流動体の濃度が変化していくのであつて、非常に想定が困難であるから、それによ るβ線エネルギーの減弱はないものとして、ただ 2π のジオメトリーのみを想定した。


2. 肺の受ける線量について / もくじ / 戻る / 4. I混合物により甲状腺の受ける線量

4. I混合物により甲状腺の受ける線量

今、C c-sec/m3(この値だけは便宜上24時間目の値ではない)の放射能雲に被 曝した人は CRtV なる量の放射性物質を肺内に沈着させる。この中で I の占める割合を A とすれば、CRtVAμc の I 混合物が肺に沈着する。

I 混合物の種類を I131,I132,I133,I134,I135 とし、それぞれの含 有量(%)、及び減衰を次の通りとすると

表1
放出直後 Volat.F.P. 中% Total F.P. 中% 半減期(hr) λ(1hr) 実効エネルギー
I131 4.7 1.5 1.93 3.6×10-3 0.23
I132 6.9 2.2 2.32 0.3 0.65
I133 11.0 3.3 20.85 3.3×10-2 0.54
I134 12.0 3.8 0.86 0.8 0.82
I135 9.3 3.0 6.71 1.03×10-1 0.52
合計 43.9 13.8 (但し放出直後の含有量とする)
    I 混合物の物理的減衰は図VI A の如くなる。これによればI混合物の減衰は
           1〜2hr より 20hr までは T
-0.4
 に比例し、
           20hr より 200hr までは  T
-0.65
 に比例し、
           200hr 以降は I
131
の物理的減衰に従うものと見ることが出来る。
       今放出後1時間目、6時間目等の I 混合物の含有%を求めると、次の表の如くなる。
表2
  1時間後 2.5時間後 6時間後 7.8時間後 20時間後
Volat. F.P. 32% 24% 19% 17% 10.5%
Total F.P. 11% 8.5% 6.2% 5.5% 3.5%

又被曝が4時間つづいた場合は夫々2.5時間後及び7.8時間後の値が4時間つづいたもの のと考えてもよい。*

    又 1〜2〜20hr までの平均実効エネルギー  E
1
 を 0.5
**
        20〜200hr までの        〃          E
2
 を 0.3   と想定する。
    今、C c-sec/m
3
 に被曝した人の肺には
               q = CR
t
VA μc の I 混合物が沈着するから、これが直ちに溶解吸収さ
  れるとすれば、これが1時間に与える線量は
                                    3.7×10
4
×3600×1.6×10
-6
  D
Thyr
 = CR
t
VA × 0.3
***
 × E1 × ――――――――――――――
                                            20×100


        = CR
t
VA × 1.6 × 10
-2
 rad/hr = CR
t
A × 4 rad/hr

但し、Aは、放出後1時間目より被曝の場合
      被曝が短時間の場合は Total F.P.   で            0.11
                           Volatil F.P. で            0.32
      被曝が4時間つづいた場合は
                           Total        で            0.085
                           Volatil      で            0.24
又、放出後6時間目より被曝した場合は
      被曝が短時間の場合は Total F.P.   で            0.062
                           Volatil F,P. で            0.19
      被曝が4時間つづいた場合は Total   で            0.055
                                Volatil で            0.17
* t-0.4 における1〜4 hr 目
t-0.65 における 6〜10 hr 目
までの積分平均値を示す時間である。
** 2〜20hr の内の適当な時の各I核種の量×Energy の平均
*** 血液中より甲状腺に移行するIの割合
である。又
    R
t
は、粒度小の Aerosol では 0.55
         粒度大の    〃    では 0.75 と想定したから、C c-sec/m
3
に被曝した人の甲状腺が最初の1時間に受ける線量は、
    Total F.P. の場合 Volatile F.P. の場合
粒度小 粒度大 粒度小 粒度大
1


4時間
0.24C
0.19C
0.33C
0.26C
0.7 C
0.53C
0.96C
0.72C
6


2時間
0.14C
0.12C
0.19C
0.17C
0.42C
0.37C
0.57C
0.51C

次に被曝してから20時間の間に受ける線量を求めると、短時間被曝の場合は

      1〜20         20
     D
Thy
 = D
Thy
 ∫   t
-0.4
 dt
                    1


          = D
thy
 / 0.6 × ( 20
0.6
 - 1
0.6
 ) = 9.9 D
thy




被曝が4時間つづいた場合は




               4                   20
     D
Thy
 = ∫  D
Thy
 dt + D
Thy
 ∫   t-0.4 dt
               1                   5

                          1
          = D
Thy
 { 4 + ―― ( 200.6 - 50.6 )} = 11.2 Dthy
                         0.6

従つて、C c-sec/m3 に被曝した人の甲状腺が被曝より 20 時間に受ける線量は次 の表のごとくなるものと考えられる。

    Total F.P. の場合 Volatile F.P. の場合
粒度小 粒度大 粒度小 粒度大
1



4時間
2.4C

2.1C
3.3C

2.9C
6.9C

5.9C
9.5C

8.06C
6



4時間
1.4 C

1.35C
1.9 C

2.9 C
4.2 C

4.15C
5.65C

5.7 C


図 4 1000C の F.P. 中における I 混合物の減衰
図 5 Volatile F.P. 中の I 混合物の減衰
図 6 Total F.P. 中の I 混合物の減衰

但し放出後6時間より被曝の場合は t-0.4 の法則が 26 時間まで保たれるものとし て計算したから、実際よりは少し大きく見積もられている。

なお、20 時間位の間では甲状腺における生理的減衰はほとんどないものと見なして計 算した。

次に、被曝後 20 時間経て後に甲状腺が受ける線量を算出する。20 時間より 200 時 間(約 8 日間)までの線量を求めるには甲状腺の生理的減衰を考慮しなければならぬ。今 被曝後 20 時間後における I 混合物の量は、甲状腺の生理的排泄を無視すれば、

0.3×CRtV×A20
A20 は、 放出後1時間目の被曝のときは  Volatile F.P.  で  10.5%
 Total F.P.  で  3.5%
放出後6時間目の被曝のときは  Volatile F.P.  で  9.0%
 Total F.P.  で  3.0%

とみなし得る。

又甲状腺の生理的減衰係数 λb は、

           λb = 0.693 / 生理的半減期 = 2.1 × 10
-4
 / hr   であると想定する。
                             (138日)

又、I132 及び I134 はほとんど無視できる位 decay するから、平均実効エネ ルギーは、約0.3Mev と見なし得る。

従つて、甲状腺が 20〜200hr 間に受ける線量は

                         3.7 × 104 × 3600 × 1.6 × 10-6      18C
    0.3CR
t
VA
20
 × 0.3 × ―――――――――――――――――― ∫    t
-0.65
e
-λbt
 dt rad
                                     2.0 × 100                 1

この前項は 4.8CRtA20 であるが、後項の積分は解法が困難である。しかし、 λ = 2.1 × 10-4 程度であるから t ≦ 200 のハンイでは

                     (λt)
2
e
-λbt
 = 1 - λt + ――― 
                       2
とおいても誤差はきわめて少ないのでこれにより e-λbt を置換してこの積分を解くと、
   180                            1       λt      (λt)
2
 ∫   t
-0.65
e
-λbt
dt = 〔 t
0.35
( ――― - ――― + ―――― )〕
180
,
   1                            0.35     1.35        4.7


                        1      3.8×10
-2
     1.45×10
-3
       1
       = 〔 180
0.35
( ――― - ――――― + ――――― ) - ――― 〕
                       0.35       1.35          4.7          0.35


       = ( 6.15 × 2.822 - 2.85 ) = 14.5

故に求める線量は 69.5CRtA20 即ち、下表の如くである。

  Total F.P. Volatile F.P.
粒度小 粒度大 粒度小 粒度大
放出後1時間目被曝 1.35C 1.8C 4C 5.5C
放出後6時間目被曝 1.15C 1.55C 3.4C 4.7C

200時間目に甲状腺に残留するIはほとんどI131 のみであり、その量は

     Volatile F.P. の場合は  0.3 × CR
t
V × 0.025 × e
-2.1×10-4×200
                                                     = 1.8 CR
t
μc
     Total F.P.    の場合は  0.3 × CR
t
V × 0.0075 × e
-2.1×10-4×200
                             = 0.54 CR
t
μc
従つて、甲状腺が 1 日間に受ける線量は
                                                     0.54
    3.7 × 10
4
 × 1.6 × 10
-6
 × 3600 × 24
    ――――――――――――――――――――  × E × or   × CR
t
                  20 × 20
                                                     1.8

                                              E は I
131
 の実効エネルギー、即ち0.23Mev
   即ち、Volutile F.P. の場合は
           2.56 × E × 1.8 CR
t
 = 1.05 CR
t
 rad
         Total F.P.    の場合は
           2.56 × E × 0.54 CR = 0.32 CR
t
 rad

I131 の実効半減期は甲状腺に対して7.6日であるから、8日目より30日までに甲状腺の受ける線量は、

                  30
         1.05CR
t
∫   e
-(0.693/7.6)t
 dt = 1.05CR
t
 × 4.53 rad
                  8


                  30
         0.32CR
t
∫   d
-(0.693/7.6)t
 dt = 0.32CR
t
 × 4.53 rad
                  8


同様にして30日より90日までの甲状腺の線量を求めることがでぎる。

        90
即ち、∫   e
-(0.693/7.6)
dt = 6.8 であるから
        30

Volatile 1.05CRt×0.68rad
Total 0.32CRt×0.68rad

さて以上の計算において

C c-sec/m3 はこの節では放出後 24 時間目における放射能の濃度を意味してないか ら、放出後 t 時間目においては、これにある係数を掛けて、補正を行わないと、t 時間目 に被曝を受けた人の本当の被曝線量 24 時間後の濃度単位で表わすことが出来ない。

換言すれば 24 時間目の値でC c-sec/m3の被曝を受けた人肺には、放出後 t 時間 目においては本当は q=aCRtVA μc の I 混合物が沈着していることになる。

この係数 a は、放出後の時間、被曝の継続時間、放出物の減衰係数により次表のごくく 変化するものと考えられる。

全放出物 放出後 短時間被曝 1.64
1時間目 4時間 〃 1.58
放出後 短時間 〃 1.32
6時間目 4時間 〃 1.24
 
揮発性放出物 放出後 短時間被曝 7.25
1時間目 4時間 〃 6.31
放出後 短時間 〃 3.03
6時間目 4時間 〃 2.41

以上の考察と、今までに算出された線量を総括して表示すれば次のごとき表を得る。 但し Rtは粒度大では 0.75 粒度小では 0.55 とする。

C c-sec/m3(24時間目の値)に被曝した人の甲状腺がその放出物中の I 混合物 により受ける線量

C c-sec/m3(24時間目の値)に被曝した人の甲状腺がその放出物中のI混合物により受ける線量
放出物 粒度 放出後被曝まで 被曝時間 被曝中最初の1時間に受ける線量 被曝より20時間までに受ける線量 左の1日間の平均線量率 20時間目より200時間までに受ける線量 左の期間の平均1日線量率 8日目より30日までの受ける線量 左の期間の平均1日線量率 30日より90日までの受け線量



1hr

4hr
0.39C

0.3C
3.9C

3.3C
4.8C

3.95C
2.2C 0.29C 1.2C 0.06C 0.18C
6hr

4hr
0.19C

0.15C
1.85C

1.65C
2.25C

2.0 C
1.5C 0.2C
1hr

4hr
0.54C

0.41C
5.4C

4.6C
6.6C

5.5C
2.95C 0.38C 1.6C 0.075C 0.24C
6hr

4hr
0.25C

0.21C
2.5C

2.35C
3.0 C

2.85C
2.0C 0.27C





1hr

4hr
5.07C

3.34C
50.0C

37.2C
60.2C

44.8C
2.4C 3.2C 15.6C 0.72C 2.3C
6hr

4hr
1.27C

0.89C
12.7C

10.0C
15.3C

12.0C
10.2C 1.3C 7.8C 0.36C 1.2C
1hr

4hr
6.96C

4.54C
68.9C

50.8C
82.6C

50.8C
33C 4.4C 21.6C 0.96C 3.2C
6hr

4hr
1.73C

1.23C
17.1C

13.7C
20.6C

16.4C
14.1C 1.9C 10.8C 0.48C 1.6C

以上のごとく、最も大きな被曝を受けるのは、揮発性放出物を放出後 1 時間目に受ける 人であつて、特に粒度大なるものでは、最初の 1 日間の被曝が 80〜60C に及ぶ。これ に対し全放出物では、これの 10 分の 1 にも及ばない。又放出後の時間がたつに従つて揮 発性放出物より受ける線量は急速に少くなることが明らかとなつた。

又甲状腺の被曝量の約半分が最初の 1 日で与えられ、又、最初の 1 週間に 4/5 位を 受けることが理解される。


3. 消化器の受ける線量 / もくじ / 戻る / 5. 吸収された放出物により骨が受ける線量

5. 吸収された放出物により骨が受ける線量

放射性 Aerosol 中に含まれる物質が身体中に吸収された時、その一部は血液中に 入り、さらにその一部は骨に沈着し、そこに長時間滞留して大きな線量を与える。

しかしながらこの際放射性放出物中のどの部分がいくらの割合で骨に沈着するかを正確 に定めることはきわめてこんなんであり、且つ、放出物中の Bone Seekers だけを一 まとめにして取扱うことは、夫々の化学的性質や生理学的特性が異なるので不可能である。

従つて、全放出生成物中の比較的含有量が多く、しかも骨における実効半減期が比較的 長く、骨に多量の線量を与えると考えられる10種程度の核種を取り上げ夫々別個にこれ が骨に与える線量を算出し、他の核種によるものについては無視することにした。

次に、これらの物質が体内に入り骨に到達する過程は、その物質を含む Aerosol の性質、又化学的性質、及ぴそれが肺胞を経て入るか又は消化管を経るかにより相当に異 るのであるが、それらの点をこまかく分析することは問題を甚だ複雑化し且つ、多くの 不確実な仮定を行う必要があるので、それらをきわめて簡単化し、次の仮定に基づいて計 算することにした。

(1) Aerosol に含まれて、肺に沈着したこれらの物質は、何等かの経路を通り、体 内に入り、その一定の割合が骨に到達し、蓄積される。
(2) この場合一定の割合は、各核種の種類とその呼吸器への沈着率と代謝の特性により異 るので、次の式によるものと想定する。
      f
a
 = (R
av
 + f
ab
 × R
up
 ) × f
b-c

但し、f
a
 は骨への移行率(吸入されたものの中骨に到達蓄漬する割合)
      f
ab
 は腸管におげる核物質の吸収率
      f
b-c
 は血液より Critical Organ へ移行する割合とする。
又R
av
、R
up
 は夫々肺胞、上気道における Aerosol の沈着率とする。

fab、fb-cについては I.C.R.P. の1958年度の勧告にある値を夫々採 用するものとし、Rav、Rup についてはすでに肺の線量を計算するときに定めた 値を取るものとすると fa について、次の如き表IIを得る。

(3)

以上の経過(骨への蓄積)がおこるのは核種の実効半滅期に対して、充分短い時間内 におこり、従つて、その時間は骨に与える線量に対してあまり影響を与えないものとす る。

ここではその期間を7日間と想定し、その間毎日各核種は同じ速度で骨に蓄積して行 くものと想定した。

この想定は生理的におこり得ると考えられる各 Bone Seeker の代謝とはか なり異るものであると考えられるが、計算の便宜のため、このような仮定を行うことに した。但しこのような仮定において算出された長期間の蓄積線量はより生理学的な想定 より算出されるものに対して、そう大きなちがいはないと考えられる。(短期間の線量 には若干の差異を生ずるであるうが)。

以上の想定にもとすき、ここでは放出された放射性核種の内で、とくに骨に与える線量 が大きくなると考えられた11種のものについて骨に与える線量を算出し(2) その合計を もつて、骨に与えられる被曝線量とした。この11種の核種は Sr89,Sr90+Y90Y91, Zr95+Drs., Ba140, La140, Nb95, Ce141, Ce144+Pr144, Pr143, Pm147 である。

この内 Ba140, Pr143, La140 については(3)の想定は必ずしも適切でないの で、骨への蓄積量について実行半減期(7日に比較してかなり短いので)を考慮して若干 の修正を行うことにした。

以上の各核種について、fa 及その算出のための各要素、及び放出物中の含有率、実効 半減期等を表I及表IIに示す。

表I
核種 放出物1C中の核種のC数(A) 物理的半減期
実効半減期
**
実効エネルギー
Mev
λef
Total F.P. Volat.F.P.
Sr89 0.024 0.0015 50.5 50.4 2.8 1.37×10-2
Sr90+Y90 0.0030 0.00019 104 6.4×103 5.5 1.08×10-4
Y91 0.030 1.9×10-6 58 58 2.9 1.19×10-2
Zr95+Drs. 0.032 1.5×10-5 63.3 59.5 1.1 1.16×10-2
Ba140+La140 0.032 0.001 12.8 10.7 4.2 6.47×10-2
La140 0.032 0.0005 1.68 1.68 2.7 4.12×10-1
Nb95 0.032 1.5×10-5 35 33.5 0.37 2.07×10-2
Ce141 0.030 0.0018 32 31 0.81 2.33×10-2
Ce144+Pr144 0.031 0.0019 290 243 6.3 2.85×10-3
Pr143 0.031 0.001 * 13.7 13.6 7.6 5.09×10-2
Pm147 0.0085 0.001 * 920 570 0.35 1.21×10-3
* 割合がよくわからないので Ba140 と同じと想定した。
** 骨に対する実効半減期である
表 II
核種 fab fb-c fa
粒度大 粒度小
Sr89 0.3 0.7 0.21 0.36
Sr90+Y90 0.3 0.3 0.09 0.155
Y91 10-4 0.75 0.075 0.375
Zr95+Drs. 10-4 0.36 0.036 0.18
Ba140+La140 0.05 0.7 0.091 0.35
La140 10-4 0.4 0.04 0.2
Nb95 10-4 0.38 0.038 0.19
Ce141 10-4 0.3 0.03 0.15
Ce144+Pr144 10-4 0.3 0.03 0.15
Pr143 10-4 0.4 0.04 0.2
Pm147 10-4 0.35 0.035 0.175
       f
a
 = ( R
av
 + f
ab
 × R
up
 ) × f
b-c

   但し    粒度大のとき    R
av
 = 0.1  R
up
 = 0.65
           粒度小のとき    R
av
 = 0.5  R
up
 = 0.05

今 C c-sec/m3(24時間目の値)に被曝した人の肺には aCVRtA μc の夫 々の核種が沈着する

但し、a は放出後被曝までの時間による修正係数、Aは放出物1c中に含まれる各核種 の割合

ここでRtは肺への Aerosol の全沈着率であるが、このようにして肺に沈着した各 各核種はその後色々な生理的経過を経て骨に蓄積するわけでその蓄積する割合は前述の fa であるから、かくてC c-sec/m3に被曝した人の骨には仮定により、1週間後に は aCVAfaμc の夫々の各種が蓄積するものと考えられる。

但し、若干の核種は実効半減期が7日の比較して、かなり短いので蓄積量を修正する必要が起る。

即ち、今、骨への核種の蓄積が7日間で完了し且つその間一定の速度で行われたとする。

毎日の蓄積量をQとすれば

      dQ
     ―― + λ
efQ
 = K  Q = K/λ
ef
 × ( 1 - e
 ef
t
)
      dt

Ba140,La140,Pr143 をのぞいてはλeft は t=7 の場合非常に小さ いから Q=kt とみなし得る。

故に7日までに骨が受けた線量は

        7               t2   7             7
     M∫  Q dt = MK〔 ―― 〕 = D
Bone
 × ―― rad
        0                2   0             2

前述の3核種については、もし減衰がないとしたときの蓄積量を Q0 とすれば、

                                    Qo                   1 - e
-λeft
     Qo = Kt                K = ―――         Q = Qo ――――――
                                    t                       λ
ef
t

t=7 とおけば、実際のQをもとめ得る。

これによりQを修正するから、従つて Ba140,La140,Pr143 が1週間に 骨にあたえる線量を上記のものよりは小となり、若干の修正を必要とする。

次に今、骨に Qμc の放射性核種が沈着したとして、これが骨全体に均一に分布して いるとすると、その核種が1日間に骨に与える線量は

                     3.7 × 10
4
 × 3600 × 24 × 1.6 × 10
-6
 × E
ef

       D
Bone
 = Q × ――――――――――――――――――――――――
                                 100 × m


                          Q E
ef

              = 51.1 × ――――   rad
                            m

但し、E
ef
 はその核種の実効エネルギー( R.B.E. 及
を考慮に入れた)。 mは骨の全重量であるがここでは m = 5500g
*
 とする。

*

日本人の体重は I.C.R.P. の      70kg      に対して約 8/10 である。骨の 重量は大体体重と比例すると考えられるから、日本人の体重に応じて修正を行つた。

故に、DBone = 9.3×10-3 QEef rad

即ち、第1週間目の1日の線量は DBone である。この以前Qは一定速度で蓄積する から、前述の如く、7日までの線量は、7/2 × DBone rad となる。又これ以後Qは、 実効半減期に従つて、減衰するから、T日までの骨の受ける線量は、

        T
     D∫  e
-λeft
 dt = D/λef( e
-λef
 - e
-λefT
)
        1

故に T = 23日、83日、1年(360日) 50年とおいて求めれば、次に掲げる如き表を得る

但しこの表にて30日間に受ける線量は、7日までに受ける線量+8日より30日までに受ける線量

90日間に受ける線量=7日までに受ける線量+8日より83日までの線量とする。

又1年間の線量=7日までの線量+8日より360日までの線量とする。

   又 e
-λef
 は Ba
140
 La
140
 Pr
143
 のぞいては 1
     La
140
 では             0.66
     Pr
143
,Ba
140
では        0.95  とする。

以上の結果をまとめて表示すると、第1週間の終りに骨に蓄積する各核種の量およびそれ により骨が受ける被曝線量の総計はそれぞれ第III表及び第IV表の 1)〜4)に掲げる如 くとなる。

表III 放出後24時間目に測つて1C c-sec/m3に被曝した人の骨に蓄積する核種および与える線量
核種 放出物1C中の核種の割合
(A)
骨への蓄積率
fa
1週間後に骨に蓄積する各核種の量 μc 実効エネルギー 1週間目の1日に骨にあたえる線量(rad)
全放出 揮発性 粒度大 粒度小 1hr後 6hr後 1hr後 6hr後 1hr後 6hr後 1hr後 6hr後 1hr 6hr 1hr 6hr 1hr 6hr 1hr 6hr
全放出粒度大 全放出粒度小 揮発放出粒度大 揮発放出粒度小 全放出粒度大 全放出粒度小 揮発放出粒度大 揮発放出粒度小
Sr89 0.024 0.0015 0.21 0.36 2.02 1.65 3.53 2.85 0.58 0.25 1.0 0.43 2.8 0.053 0.043 0.092 0.075 0.016 0.007 0.027 0.012
Sr90+Y90 0.0030 0.00019 0.09 0.155 0.11 0.09 0.19 0.15 0.031 0.013 0.054 0.023 5.5 0.006 0.005 0.011 0.008 0.002 0.001 0.003 0.001
Y91 0.030 1.9×10-6 0.075 0.375 0.91 0.74 4.57 3.72 2.8×10-4 1.2×10-4 1.4×10-3 6×10-4 2.9 0.025 0.02 0.125 0.101 ≒0 ≒0 ≒0 ≒0
Zr95+Drs. 0.032 1.5×10-5 0.036 0.18 0.46 0.37 2.3 1.87 8.4×10-4 3.6×10-4 4.2×10-3 1.8×10-3 1.1 0.005 0.004 0.022 0.018 ≒0 ≒0 ≒0 ≒0
Ba140+La 0.032 0.001 0.091 0.35 0.89 0.72 3.36 2.67 10-3 0.052 0.454 0.19 4.2 0.035 0.028 0.131 0.103 0.008 0.003 0.03 0.013
La140 0.032 0.0005 0.04 0.2 0.17 0.13 0.86 0.70 0.011 4.8×10-3 0.056 0.024 2.7 0.005 0.004 0.022 0.018 0.0003 0.0001 0.0014 0.0006
Nb95 0.032 1.5×10-5 0.038 0.19 0.49 0.39 2.4 2.0 0.121 4.3×10-4 5.0×10-3 2.2×10-3 0.37 0.002 0.001 0.009 0.008 ≒0 ≒0 ≒0 ≒0
Ce141 0.030 0.0018 0.03 0.15 0.34 0.27 1.70 1.48 0.089 0.038 0.45 0.19 0.81 0.003 0.002 0.013 0.010 0.0006 0.0002 0.003 0.001
Ce144+Pr144 0.031 0.0019 0.03 0.15 0.37 0.30 1.85 1.51 0.10 0.043 0.50 0.22 6.3 0.022 0.018 0.109 0.088 0.006 0.003 0.029 0.013
Pr143 0.031 0.001 0.04 0.2 0.42 0.34 2.08 1.69 0.059 0.025 0.29 0.13 1.6 0.006 0.005 0.032 0.026 0.001 0.0004 0.004 0.002
Pm147 0.0085 0.001 0.035 0.175 0.12 0.10 0.57 0.47 0.07 0.030 0.36 0.15 0.35 0.0006 0.0005 0.003 0.002 0.0003 0.0001 0.0013 0.0005

表IV 1) 全放出粒度大たる場合 C c-sec/m3に被曝した人の骨が受ける線量
  核種 被曝7日目の1日線量 被曝後1週間の線量 被曝後30日間の線量 被曝後90日間の線量 被曝後1ヵ年間の線量 3ヶ月〜1年の線量 被曝後5年間の線量 1年後より5年間での線量 被曝後50年間の線量









Sr89 0.053C 0.185C 2.166C 2.801C 4.009C 1.208C 4.037C 0.028C 4.037C
Sr90+Y90 0.006C 0.021C 0.161C 0.521C 2.198C 1.677C 10.073C 7.874C 48.048C
Y91 0.025C 0.087C 0.591C 1.405C 2.157C 0.753C 2.187C 0.029C 2.187C
Zr95+Drs. 0.005C 0.016C 0.106C 0.253C 0.394C 0.141C 0.400C 0.006C 0.40C
Ba140+La140 0.035C 0.121C 0.511C 0.631C 0.633C 0.002C 0.660C 0.027C 0.659C
La140 0.005C 0.007C 0.015C 0.015C 0.015C 0C 0.0198C 0.0045C 0.019C
Nb95 0.002C 0.007C 0.040C 0.079C 0.095C 0.016C 0.095C 0C 0.095C
Ce141 0.003C 0.009C 0.055C 0.106C 0.124C 0.018C 0.124C 0C 0.124C
Ce144+Pr 0.022C 0.076C 0.561C 1.681C 4.974C 3.293C 7.669C 2.694C 7.711C
Pr143 0.006C 0.021C 0.101C 0.138C 0.140C 0.002C 0.147C 0.006C 0.146C
Pm147 0.0006C 0.002C 0.016C 0.051C 0.183C 0.132C 0.446C 0.332C 0.515C
合計 0.163C 0.552C 4.323C 7.681C 14.92C 7.242C 25.858C 10.938C 63.94C









Sr89 0.043C 0.151C 1.769C 2.287C 3.274C 0.987C 3.297C 0.023C 3.296C
Sr90+Y 0.005C 0.017C 0.131C 0.425C 1.795C 1.370C 8.226C 6.431C 39.239C
Y91 0.022C 0.071C 0.480C 1.141C 1.753C 0.612C 1.777C 0.024C 1.777C
Zr95+Drs. 0.004C 0.013C 0.086C 0.205C 0.320C 0.114C 0.325C 0.005C 0.325C
Ba140+La 0.028C 0.097C 0.4125C 0.508C 0.509C 0.002C 0.531C 0.022C 0.531C
La140 0.004C 0.006C 0.012C 0.0125C 0.0125C 0C 0.016C 0.004C 0.016C
Nb95 0.001C 0.005C 0.032C 0.064C 0.076C 0.013C 0.076C 0C 0.076C
Ce141 0.002C 0.007C 0.045C 0.086C 0.101C 0.014C 0.101C 0C 0.101C
Ce144+Pr 0.018C 0.062C 0.456C 1.366C 4.042C 2.676C 6.231C 2.189C 6.265C
Pn143 0.005C 0.017C 0.082C 0.112C 0.114C 0.0015C 0.119C 0.005C 0.119C
Pm147 0.0005C 0.002C 0.013C 0.042C 0.150C 0.109C 0.367C 0.273C 0.423C
合計 0.131C 0.448C 3.519C 6.170C 12.147C 5.977C 21.066C 8.919C 52.17C
表IV 2) 全放出粒度小たる場合 C c-sec/m3に被曝した人の骨が受ける線量
  核種 被曝7日目の1日線量 被曝後1週間の線量 被曝後30日間の線量 被曝後90日間の線量 被曝後1ヵ年間の線量 3ヶ月〜1年の線量 被曝後5年間の線量 1年後より5年間での線量 被曝後50年間の線量









Sr89 0.092C 0.323C 4.790C 4.901C 7.016C 2.115C 7.064C 0.048C 7.064C
Sr90+Y90 0.011C 0.037C 0.281C 0.911C 3.847C 2.936C 17.627C 13.780C 84.084C
Y91 0.125C 0.437C 2.954C 7.024C 10.787C 3.763C 10.934C 0.147C 10.934C
Zr95+Dr 0.022C 0.078C 0.531C 1.264C 1.968C 0.704C 2.000C 0.032C 2.00C
Ba140+La 0.131C 0.455C 1.926C 2.375C 2.384C 0.009C 2.485C 0.101C 2.485C
La140 0.022C 0.035C 0.077C 0.077C 0.077C 0 0.099C 0.022C 0.099C
Nb95 0.009C 0.033C 0.198C 0.390C 0.468C 0.078C 0.468C 0 0.468C
Ce141 0.013C 0.045C 0.275C 0.531C 0.621C 0.089C 0.621C 0 0.621C
Ce144+Pr 0.109C 0.381C 2.806C 8.406C 24.873C 16.467C 38.346C 13.472C 38.557C
Pr143 0.032C 0.107C 0.505C 0.691C 0.701C 0.096C 0.733C 0.032C 0.733C
Pm147 0.003C 0.010C 0.078C 0.246C 0.885C 0.639C 2.160C 1.605C 2.490C
合計 0.569C 1.941C 13.421C 26.816C 53.627C 26.896C 82.537C 29.239C 149.53C









Sr89 0.075C 0.262C 3.068C 3.968C 5.679C 1.712C 5.719C 0.039C 5.719C
Sr90+Y 0.008C 0.030C 0.228C 0.738C 53.114C 2.377C 14.270C 11.155C 68.068C
Y91 0.101C 0.355C 2.400C 5.707C 8.765C 3.058C 8.884C 0.119C 8.884C
Zr95+Dr 0.018C 0.064C 0.432C 1.884C 1.891C 0.007C 1.971C 0.080C 1.971C
Ba140+La 0.103C 0.361C 1.527C 1.884C 1.891C 0.007C 1.971C 0.080C 1.971C
La140 0.018C 0.029C 0.062C 0.062C 0.062C 0 0.081C 0.018C 0.081C
Nb95 0.008C 0.027C 0.165C 0.325C 0.390C 0.065C 0.390C 0 0.390C
Ce141 0.010C 0.036C 0.224C 0.432C 0.504C 0.073C 0.504C 0 0.504C
Ce144+Pr 0.088C 0.309C 2.280C 6.830C 20.210C 13.380C 31.156C 10.946C 31.327C
Pr143 0.026C 0.087C 0.411C 0.561C 0.569C 0.008C 0.595C 0.026C 0.595C
Pm147 0.402C 0.009C 0.065C 0.205C 0.737C 0.533C 1.800C 1.337C 2.075C
合計 0.457C 1.569C 10.862C 21.739C 43.52C 21.785C 66.995C 23.746C 121.24C

表IV 3) 揮発放出物粒度大たる場合 C c-sec/m3に被曝した人の骨が受ける線量
  核種 被曝7日目の1日線量 被曝後1週間の線量 被曝後30日間の線量 被曝後90日間の線量 被曝後1ヵ年間の線量 3ヶ月〜1年の線量 被曝後5年間の線量 1年後より5年間での線量 被曝後50年間の線量









Sr89 0.016C 0.058C 0.394C 0.840C 1.202C 0.364C 1.213C 0.011C 1.212C
Sr90+Y 0.002C 0.005C 0.042C 0.136C 0.577C 0.441C 2.651C 2.074C 12.621C
Y91 ≒0 ≒0 ≒0 0.0003C 0.0006C 0.0003C 6.4×10-4C ≒0 6.4×10-4C
Zr95+Dr ≒0 ≒0 ≒0 0.0006C 0.0008C 0.0003C 7.6×10-4C ≒0 7.5×10-4C
Ba140+La140 0.008C 0.017C 0.065C 0.081C 0.068C 0.012C 0.084C 0.017C 0.084C
La140 0.0003C 0.0006C 0.001C 0.001C 0.0011C 0 1.2×10-3C ≒0 1.2×10-3C
Nb95 ≒0 ≒0 ≒0 ≒0 ncgl 0 1.7×10-4C 0 1.6×10-4C
Ce141 0.0006C 0.002C 0.012C 0.022C 0.027C 0.005C 0.027C 0 0.028C
Ce144+Pr 0.006C 0.020C 0.151C 0.454C 1.344C 0.8904C 2.072C 0.728C 2.083C
Pr143 0.001C 0.003C 0.014C 0.018C 0.019C 0.001C 0.0196C 0 0.019C
Pm147 0.0003C 0.0011C 0.005C 0.022C 0.08C 0.058C 0.194C 0.146C 0.141C
合計 0.0342C 0.1066C 0.684C 1.575C 3.32C 1.772C 6.263C 2.976C 16.19C









Sr89 0.007C 0.025C 0.169C 0.360C 0.516C 0.156C 0.520C 0.005C 0.519C
Sr90+Y 0.001C 0.002C 0.018C 0.058C 0.247C 0.189C 1.136C 0.889C 5.41C
Y91 ≒0 ≒0 ≒0 ≒0 0.0002C 0.0001C 2.7×10-4C ≒0 0.0002C
Zr95+Dr ≒0 ≒0 ≒0 ≒0 0.0004C 0.0001C 3.2×10-4C ≒0 0.0003C
Ba140+La 0.003C 0.007C 0.028C 0.035C 0.029C 0.005C 0.036C 0.007C 0.036C
La140 0.0001C 0.0002C 0.0005C 0.0005C 0.0005C 0 5.3×10-4C ≒0 0.0005C
Nb95 ≒0 ≒0 ≒0 ≒0 ≒0 0 7.2×10-5C 0 ncgl
Ce141 0.0002C 0.001C 0.005C 0.010C 0.012C 0.002C 0.012C 0 0.012C
Ce144+Pr 0.003C 0.009C 0.065C 0.194C 0.576C 0.382C 0.888C 0.312C 0.893C
Pr143 0.0004C 0.001C 0.006C 0.008C 0.008C 0.0006C 0.008C 0 0.008C
Pm147 0.0001C 0.0005C 0.002C 0.010C 0.035C 0.025C 0.084C 0.063C 0.097C
合計 0.0148C 0.0457C 0.2935C 0.6755C 1.424C 0.76C 2.685C 1.276C 6.976C

表IV 4) 揮発性放出物粒度小たる場合 C c-sec/m3に被曝した人の骨が受ける線量
  核種 被曝7日目の1日線量 被曝後1週間の線量 被曝後30日間の線量 被曝後90日間の線量 被曝後1ヵ年間の線量 3ヶ月〜1年の線量 被曝後5年間の線量 1年後より5年間での線量 被曝後50年間の線量









Sr89 0.027C 0.100C 0.682C 1.456C 2.089C 0.632C 2.102C 0.018C 2.102C
Sr90+Y 0.003C 0.009C 0.073C 0.237C 1.001C 0.764C 4.595C 3.595C 21.846C
Y91 ≒0 ≒0 ≒0 0.0014C 0.003C 0.0014C 3.2×10-3C ≒0 0.003C
Zr95+Dr ≒0 ≒0 ≒0 0.003C 0.004C 0.0014C 3.8×10-3C ≒0 0.004C
Ba140+La 0.03C 0.063C 0.246C 0.302C 0.257C 0.045C 0.315C 0.063C 0.315C
La140 0.0014C 0.003C 0.006C 0.006C 0.006C 0 6.2×10-3C ≒0 0.006C
Nb95 ≒0 ≒0 ≒0 ≒0 negl ≒0 8.4×10-4C 0 0.001C
Ce141 0.003C 0.010C 0.060C 0.112C 0.134C 0.022C 0.134C 0 0.140C
Ce144+Pr 0.029C 0.102C 0.756C 2.268C 6.72C 4.452C 10.360C 3.640C 10.416C
Pr143 0.004C 0.014C 0.070C 0.091C 0.098C 0.007C 0.098C 0 0.098C
Pm147 0.0013C 0.005C 0.027C 0.110C 0.393C 0.283C 0.958C 0.718C 1.103C
合計 0.0987C 0.306C 1.920C 4.5864C 10.705C 6.208C 18.576C 8.034C 36.064C









Sr89 0.012C 0.043C 0.293C 0.624C 0.895C 0.271C 0.901C 0.008C 0.901C
Sr90+Y 0.001C 0.004C 0.031C 0.101C 0.429C 0.328C 1.969C 1.541C 9.375C
Y91 ≒0 ≒0 ≒0 0.0006C 0.0012C 0.0006C 1.4×10-3C ≒0 0.001C
Zr95+Dr ≒0 ≒0 ≒0 0.0012C 0.0018C 0.0006C 1.8×10-3C 0 0.002C
Ba140+La 0.013C 0.027C 0.105C 0.129C 0.110C 0.019C 0.135C 0.027C 0.135C
La140 0.0006C 0.0012C 0.0024C 0.0024C 0.0024C 0 2.6×10-3C ≒0 0.003C
Nb95 ≒0 ≒0 ≒0 ≒0   0 3.6×10-4C 0 negl
Ce141 0.001C 0.004C 0.026C 0.048C 0.058C 0.010C 0.058C 0 0.06C
Ce144+Pr 0.013C 0.044C 0.324C 0.972C 2.880C 1.908C 4.440C 1.560C 4.464C
Pr143 0.002C 0.006C 0.030C 0.039C 0.042C 0.003C 0.042C 0 0.042C
Pm147 0.0005C 0.0023C 0.011C 0.047C 0.169C 0.121C 0.410C 0.308C 0.473C
合計 0.0431C 0.1315C 0.8224C 1.9642C 4.588C 2.661C 7.961C 3.444C 15.456C

4. I混合物により甲状腺の受ける線量 / もくじ / 戻る / 6. 吸収された放出物により骨・消化器・肺・甲状腺以外の主要な身体部分が受ける線量




(私論.私見)