WHY & WHEN

 

 (最新見直し2008.9.23日)
【MLMの趨勢について】
 目下深刻な不況が全世界を覆っている最中に有ってアメリカが好景気に湧いています。1999年3月X日にダウ平均株価指数が初めて史上空前の1万ドルを突破し、同月X 日には終値でもこの指数を維持しました。こうした力強いアメリカを支えている要因にベンチャー企業の隆盛があることを正確に知っておく必要が有ります。ベンチャー企業の多くはコンピュ−タ−の諸能力から生み出されており、アメリカは今やこうした“コ ンピュ−タ−革命”にいち早く取り組むことに成功したコンピュ−タ−先進国として再生しつつあります。ここで紹介するMLMも“コンピュ−タ−の落とし子”とみなすことが可能で、今アメリカではMLM企業が急発展しつつあります。総数数千社とも云われている程大変大きなビジネスになってきており、そのうちの有力会社は既成企業の過去の成長記録を桁はずれに塗り替えつつ、今なお止まるところを知りません。

 このような風潮から最近ではアメリカの大学の講義課目にMLMの講座が広がりつつあり、学生逹に人気を呼んでいます。奇妙なことに、日本の主流のマスコミはこうした動きを伝えていません。戦後日本のマスコミはアメリカ情報をいの一番に宣伝紹介してきたにも関わらず、ことMLMとなると黙殺し続けております。現代の不思議現象ですが、私はマスコミの知の退化を物語っていると考えております。とはいえ、黙殺にも関わらずこのところ外資系MLM企業の進出が相次いでおり、草の根的に広がろうとしています。MLMは、“ネットワーク.ビジネス”と変名されて知る人ぞ 知る人々から熱いまなざしが注がれつつあります。MLMに対するこのような気分 を踏まえつつ、本書においてMLMとは何かについて筆のおよぶ限り紹介して見たいと思います。今のところ、MLMの考察に本格的に取り組んだ書物としては、1984年12月31日に初版された「マルチ.レベル.マーケティング」(小林忠嗣著) の他見当りません。同書の功績を踏まえつつ本書を世に送ります。追伸。1999年4月 27日に「ネットワーク.ビジネスの研究」(野中郁次郎著)が発行予定との情報が入りました。

 その序としてMLMのマクロ的な考察をしておこうと思います。マーケティング(ビジネス)の世界においてMLMが登場したことの意義は、MLMが初めて有史以来の流通のパラダイム(既成の秩序)を変革していることと、 この変革をセールスの複次元的組織化によって担わせているということにあります。前者がMLMの“流通革命”性で有りこれを〈正統の系譜〉とみなし、後者が“セールス 革命”性でありこれを〈異端の系譜〉とみなして両面から考察する必要があります。

 〈正統の系譜〉とは、誰でもが納得し得る系譜という意味であり、〈異端の系譜〉とは “鬼っこ”的な系譜という意味合いで使用しています。MLMにはこの両面があり、 この二つの系譜がタイアップしてワンセットとなっているのがMLMと云えます。 MLMを理解する場合、この二つの系譜を区分しつつ且つ補完し有っている関係において理解することが必要です。この点で従来の解説書一般のアプローチの仕方は不十分ではなかろうかとの思いから僭越ながら本書をもって補筆したいと思います。

【MLMの〈正統の系譜〉について】

 まず、MLMの〈正統の系譜〉の証である“流通革命”性について明らかにしたいと思います。従来のマーケティング界の常識では、メーカー又は商売人(流通業者)と消費者の関係は鼎立(相対)しており、MLMの登場までこの関係は不変のままのトライアングルな関係で位置づけられて参りました。この関係の特徴は、対消費者関係において、「私売る人、あなた買う人」の対峙関係が前提とされていることにあります。これまでのマーケティングの歴史とは、メーカー又は商売人の側から一方的な情報受発信されてきた歴史であったとみなすことができます。MLMの観点から見れば“上か らの変革”でしかなかったと云えそうです。“消費者は神様”と位置付けられようと、 マーケティングがどのように変革されようとも、消費者は購買上の顧客の地位に留まっています。

 ところが、MLMでは、トライアングルな関係が消滅されています。消費者はメーカー又は商売人(流通業者)と対置されるような位置に存在するのではなく、メーカ ー製品の販売流通に協力し合うパートナー関係として想定されています。MLMに おける消費者は、メーカー側から、従来メーカー又は商売人(流通業者)が行ってきた 営業部門をアウトソーシング(外部委託)されており、「買う人が且つ売る人にもなれる」という流通参加が期待されています。この手法はマーケティング史上初めての方法で有り、“流通革命”と云われる所以になっています。その結果、MLMは、メーカー側に 従来のマーケティング界の常識であった広告宣伝費以下の流通経費費用を不要とさせる ことに成功しています。何と!従来手法による流通経費は価格の平均7割を占めている といわれております。この経費をまるまる不要とするようなマーケティングは誰しも思いもよらなかったことであり、MLMならではの魅力となっています。経営者には常識破りなマーケティングであり、起業家には夢のような話しと云えます。

 他方で、消費者も恩恵を蒙ります。消費者は、単に購買顧客として愛用者としてのみ 関わることも出来ますが、それだけではなく、もし製品の販促流通に貢献した場合にその流通分に応じてバックマージンを貰うことができます。このマージンは紹介料とみな せますが、MLMでは、このような紹介料を支払うためのルールを構築して報酬プランとして呈示することになります。ここに消費者のビジネス機会(チャンス)が発生 します。消費者にはこの報酬プランに基づいて紹介料がマージンされることになり、これを意識的に取り組むとすればサラリーマン収入を凌ぐことが可能なように設計されています。

 しかも、このビジネス機会は、従来の勤務形態のように会社に出勤する必要も無く、当然タイムカードで時間拘束されることもなく、自宅に居ながらにして可能となっています。オフィス等特段の設備投資不要で、徹底して任意自由性が保証されつつ、 自身のスケジュールにより、「口コミ」一つを手段として収入にありつける可能性が呈示されています。判りやすく云えば、無理の無いサイドビジネスが可能ということです このような消費者を流通に参加させるというマーケティングは誰しも思いもよらなかっ たことであり、MLMならではの魅力となっています。それだけ消費者の立場が尊重されていると考えることが出来、消費者主権時代に相応しいマーケティングともみなせます。以上がMLMの正統の系譜の理論です。


【MLM」の〈鬼っこの系譜〉について】

 それでは、MLMの〈異端の系譜〉の証である“セールス革命”性について明らかにしたいと思います。MLMをいかがわしく感じる場合、大抵この“鬼っこ”の 側面の誤解に基づいていると云えます。MLMは、ある“発見”のマーケティングへの活用により実現されることになりました。その“発見”は、数値的な『乗数の法則(倍々理論)』をビジネスに応用し得るのではないかという“ひらめき”から生まれています。この“ひらめき”に基づき具体的に報酬プランを生みだし、実際にセールス.マーケティングに応用したのがMLMです。

 この手法の仕組みは次のように“アイデア”されました。まず消費者を会員登録させ この会員の「口コミ」により新規会員を増殖させる。新規会員も又同様に新.新規会員 を増殖させていく。このようにして次々と作られる会員間の連鎖を「講組織」化する。 この「講組織」間に流通した取引量に対して順次その働きに応じて複次元的にバックマ ージンを発生させればどうかなという訳です。いわば、『乗数の法則(倍々理論)』を梃子の原理にしつつ全面的にマンパワーを活用してビジネス化しようという手法と云えます。このようなセールス.マーケティング手法が有効なのではないかという気づきが “発見”であり、問題は如何なる報酬システムを構築すれば良いのかということになり ました。

 してみれば、「MLM」とは、どのような商材をどのような報酬プランでとり行うのかが生命線になっていると申せます。この商法には、一攫千金型とコツコツ塵も積もれば山となる型の二通りが考えられます。どちらの方式を選ぶか折衷するかが経営感覚で あり、そういう意味ではMLMにおいてはより一層経営者の責任と質が深く問われていることになります。

 このような観点からMLMの胞芽は1945年頃のアメリカで誕生しました。以来、様々な企業で採用され、歴史の試練と審判を仰ぎつつ今日へと至っています。俗に「ネズミ講、未熟なマルチ商法、今日的レベルの「ネットワーク.マーケティン グ商法」の系譜に至る様々な商材と報酬プランが登場して参りました。MLMの今日的水準は、製品においての【高品質.手頃価格.安全性】の保証、 ビジネス会員においては【ノーリスク.ノー在庫】.【高報酬プラン】の呈示の実現という魅力的な発達段階に至っています。付言しますと、これらの特徴はまだまだ発展段階であり、例えば高報酬プランにしてもプランとしてそうだという意味であり、参加した者全員が高報酬を取ることができるとかいう意味のものではありません。念のため誤解なきよう付け加えて起きます。

 メーカーと会員又は会員同士の当事者の関係は、「7つの習慣」の著者で有名なコービー博士の表現を借りれば全て「Win−Win」 であり、従来式の「Win−Lose」の関係から見事なまでに転換昇華されています 「Win−Win」の関係とは、「Win−Lose」のように一方が得すれば他方が 損するというのではなく、関係者双方にメリットがあり誰も損をしないという関係とい うことです。MLMのこのような健全化への成功は今日ますます脚光を浴びつつあ り、参入会社が後を絶たない状況を迎えつつあります。

 このような「MLM」的発想の驚天動地さは天文科学の世界における地動説の登場に まさるとも劣らないと云われており、その衝撃はますます既存のマーケティング常識を覆していくことになるでしょう。


【「マルチ.レベル.マーケティング」(MLM) 発祥前夜の諸情勢について】
 このような性格を持つMLMの発祥の考察の前に、MLMが誕生した1945年直前までの歴史的な状況の概括をしてみようと思います。20世紀前半とは、19世紀に進行した産業革命の勢いを倍加させつつ各国が富国強兵政策に基づき世界の資源と物産の分捕り合戦に明け暮れた時代であったとみなすこと ができます。今から思えば、野蛮の対極として文明を築き産業を興して見たものの、産業の成果を利用する人たちの心が野蛮であったから非常に野蛮な方法で世界を席巻していったということになります。16世紀から始まったそのような西欧諸国列強による世界の分割.植民地化競争は、最終的に第二次世界大戦で米国が覇権の地位を得ることで決着がつくことになりました。他方で、この間ソビエト連邦(旧ロシア)を盟主とする 共産主義国家が誕生し、米国を盟主とする資本主義国家と対峙することになりました。 これが1945年の第二次世界大戦が終了した直後の国家間の構図です。こうして新たに米国とソビエトのそれぞれを盟主とする資本主義圏と共産主義圏の緊張関係が続くこ とになりましたが、この時代の大きな特徴は、軍事能力的に見て原子爆弾等人類全体の存亡を左右するような最終兵器が開発されるに及び、もはや本格的全面的な戦争に向かうことができない時代に入ったことにあります。これを冷戦時代と云います。冷戦時代の本質は、政治の最終手段として常用された軍事の比重が相対的に低下したことにあり、勢い各国は戦争に疲弊した国家の立て直しも含めて経済発展に力を注ぐことに懸命となりました。なお、冷戦時代以降今日まで世界の人々の運命が密接に関連し始め、地球が一つになりつつあるという流れも注目しておく必要が有ります。

 つまり、冷戦時代とは、本質的に経済一辺倒の時代で有り、経済を通して世界が再編され始めた時代と規定することが出来ます。特徴的なことは、この間科学技術が大幅に発展しており、技術の進歩を経済活動に転用することで飛躍的に生産能力の向上がもたらされていました。本格的な産業社会が到来したということですが、こうして世界大戦後の時代のテーマは、一層の工業技術の発展のベクトル、そのことによってもたらされる大量生産物資を如何に効率良く大量消費に向かわせ経済の循環を良くさせるのかというベクトル、このようなテーマに向かう国家間又は企業間競争にそれぞれがいかに勝利するのかというベクトルというような三方向に働くことになりました。

【「MLM」発祥前夜の様々な小売革新について】
 このような時代のテーマを受けて各方面で様々な革新が生み出されていくことになり ました。その中でも最も活発に且つ指導的役割をになうことになったのが米国でした。 歴史的に見て、20世紀の半ば以降は、産業のあらゆる分野において新しい試みは全てアメリカから生まれているとさえ云える程です。ここでは、MLMを考察することにしていますので、その関連する小売業の世界を見て参ります。小売業の革新は、先ほど述べたように物資の大量生産時代の緊急の時代の要請であり、こうして他の産業にも増して業態革新の波が押し寄せてくることにな りました。基本的な構図は、大量生産−大量消費の循環つまり流通を如何に今まで以上に効率良く為すべきかをめぐっての新工夫にあります。
 (百貨店について)

 それまでの小売理論の究極は百貨店へと辿り着きました、小売の王者としての「百貨店」の最大の功績は、同一店舗内における商品の品質保証付且つ豊富な品揃えにありました。百貨店方式の限界は、高級品イメージを戦略にして顧客層を富裕階層に絞ったことにより、大量生産−大量消費時代への対応を自ら難しくしていたことにあります 。
 (スーパーマーケットの登場)

 このような時代の空気を察知してスーパーマーケットが百貨店法のニッチ (隙)として登場して参りました。スーパーマーケットは、百貨店方式の品質保証付且つ豊富な品揃えを継承しました。但し、百貨店方式の高級品イメージに対し割安感を打ち出しつつ顧客層を庶民大衆階層に転換さすことで差別化しました。その新骨頂は、流通機構の短縮と店舗のチェーン化にありました。スーパーマーケット方式の意義は、スケールメリットを発生させ、そのことにより大量仕入れ−大量販売を可能にするマーケティングの開発に成功し たことに有ります。その為に「スーパーマーケット」は、既成の小売商法の常識にあらゆる角度から挑戦し成功しました。

@、レジスターを横並びで徹底的に活用するセルフサービス方式の導入は、対面販売の常識に対する挑戦でした。
A、車社会を先取りした郊外型の店舗展開とそのチェーン化は、駅前一等地に店舗を構えることを優先する常識に対する挑戦でした。
B、商品の全量買取りによる大量仕入れは、業者委託販売によるノーリスク.ハイリタ ーン商法に対する挑戦でした。
C、業務のマニュアル化による積極的なパートタイマーの活用は、社員のスタンドプレイ的な能力販売に依存する常識に対する挑戦でした。
D、薄利多売式販売理論は、高級品取り扱いによる高利ざや販売理論に対する挑戦でした。
E、顧客を最大マス勢力である庶民大衆に照準を合わせていたことは、富裕顧客層に照 準を合わせていた百貨店商法に対する挑戦でした。

 つまり、スーパーマーケット商法は、様々な革新的画期的な流通のノウハウを確立す ることにより、時代が要請していた大量生産−大量販売時代に相応しい合理的な販売システムの確立というテーマに応えたものになっていました。

 なお、スーパーマーケット 商法は、
F、副産物として大量仕入れを常態化することによりメーカーとの五分五分の力関係をも生み出すことになりました。こうして商業資本が産業資本の風下の軛から解き放たれ自立化を生み出すはしりともなりました。これらの意味においてスーパーマーケット商法は、まさに時代が生んだ落 とし子であったと云えます。
 (フランチャイズ商法の登場)

 このような時代の空気を察知してフランチャイズ商法がスーパーマーケット商法のニッチ(隙)として登場して参りました。発生的にはほとんど同時ですので戦後のアメリカ小売業の世界は、同時にフランチャイズ方式をも生み出したということになります。

 フランチャイズ方式とは、事業者本部が参加企業と事業提携を為し、経営の全てのノ ウハウ(商品ブランドの選定、その商品の仕入れ、販売から、店舗の作り方、広告の方法、従業員の教育、経営の仕方まで全てのこと)をフランチャイジーに有料で提供し複製させていくことにより、小売店舗のチェーン化を実現させていくというマーケティン グのことを云います。

 フランチャイズ商法のスーパーマーケット商法との差別化は次の通りです。スーパー マーケット商法が自社直営店舗でチェーン化するのに対して、フランチャイズ商法は店舗オーナーを募集する方式でチェーン化を目指しました。フランチャイズ商法には、直営店ではない経営意思の不統一というデメリットがある一方で、次のようなメリットがありました。スーパーマーケット商法の場合、店舗のチェーン化に伴う資金需要は相当なもので、参入を難しくしていました。フランチャイズ商法は店舗オーナーの資金でチェーン化を促進させようという方式ですので、スーパーマーケット商法に比べて本部の資金負担が少なくなり参入を容易にしました。他方、店舗オーナーの側から見れば、販売の素人でも所定の加盟店料を支払えばオーナーになれるという小資本開業のメリットを発生させています。但し、参加企業は本部に経営指導料(ロイヤリティー)を支払うシステムとなっており、この経営指導料の適正を廻って物議を醸して参りました。その為フランチャイズ商法登場の初期(1940年から50年頃)においてはいかがわしいビジネスであるかのように喧伝されていました。フランチャイズ商法も又まさに時代が 生んだ落とし子であり、今日では社会的認知と隆盛を手にしています。

 フランチャイズ商法も又眼目は店舗のチェーン化にあり、スケールメリットを追及す る大量生産−大量販売時代に相応しい合理的な販売システムの開発という観点から生み 出された商法と云えます。

【「MLM」発祥後の様々な小売革新について】
 MLMの登場後も高利流通業は引き続き発展を遂げて行きます。MLMは、これらの新業態との競合の中で生き残りと発展を掛けていると捉えるべきと思われます。これを確認しておきます。
 (カタログ通信販売の登場)

 このような小売業の流通変革の動きに対して観点の異なるユニークな革新が生み出されました。「カタログ通信販売」という業態がそうであり、スーパーマーケットや「フランチャイズ商法のニッチ(隙)として登場して参りました。カタログ通信販売の特徴は、スーパーマーケット商法やフランチャイズ商法が店舗の チェーン化によりスケールメリットを追及する方式であるのに対し、店舗販売を採用せず、カタログと消費者の会員制の組織化を生み出したことに最大の差別化が認められます。 この手法も又時代が要請していた大量生産.大量販売時代に相応しい合理的な販売シス テムの確立というテーマに応えようとして生み出されたものとみなせます。
 (訪問販売の登場)

 非店舗販売の様々な試みが為されるようになりました。訪問販売も又その有力なものです。訪問販売の特徴は、通信カタログ販売同様に店舗販売によらずドア.ツー.ドア方式で 時代が要請していた大量生産.大量販売時代に相応しい合理的な販売システムの確立と いうテーマに応えたものになっていました。訪問販売は、消費者が店舗へ足を運ぶのではなく、店舗が消費者のところまで行くという発想の転換を生み出していることに功績が 認められます。
 (テレビショッピングの登場)

 メディアショッピングも又有力な非店舗販売と云えます。雑誌広告販売やテレビショ ッピングがこれにあたります。
【通信販売商法について】

 今から120年以上も前、日本で云えば明治初期の頃、米国ではすでに通信販売が広 がりを見せ始めていました。その当時、地方に住んでいる住民に取って大都市の小売店 の商品が購入出来ることは、まさに画期的なことであったように思われます。今も通信販売を利用する動機は、欲しいものがいながらにして購入出来るという点では変わりません。基本的に小売店はその所在地によって顧客が限定されることに対して、通信販売 の場合はすくなくとみその制限は無くなります。通信販売が小売業の中で際だつ特色はまさにこの点に在ります。

 当時の米国の通信販売の代表的企業、シアーズやモンゴメリーワードといったカタロ グは現在で云う電話帳ほどの厚さで、一つ一つの商品がペン画で描かれると共に詳細な解説が書かれていたことに驚かされます。

 日本の通信販売の歴史は意外に古く、米国に遅れること20年ぐらいに同様の商法が あったということです。但し、本当の意味で離陸するのは1970年代の中ごろのこと になります。生活に必要な商品の大量消費、大量販売を基礎としたチェーンストア等の発展が先となって下地を準備したものと思われます。

 現在では、日本の通信販売の市場規模は2兆2000億円(97年度推計)で、おおよそ小売全体の1,5%を占めており、伸び率としてはここ10年間でおおよそ2倍の 市場規模になっている。83年には社団法人日本通信販売協会(JADNA)が設立され、通信販売協会にお ける商業倫理の確立を目指して様々な活動を行い業界の整備を進めている。設立時92 社でスタートした会員社数も現在では282社となり、通信販売専業企業のほかに、百 貨店、卸売業、メーカー、メディア等様々な企業が会員になっている。

 通信販売は、企業と顧客が離れている状況の中で取引をします。顧客は、見えない企業あるいは商品を信用して注文し、多くの通信販売企業は商品到着後の後払い方式を採用しています。これは相互に信頼し在っていてこそ初めてできる取引関係ともいえます 利用される媒体は多様なメディアです。かたろぐ、新聞広告、テレビショッピング、雑 誌広告、DM、新聞折り込み散らし等です。まさにメディアあるところ通信販売ありき というがごとく、将来的にはインターネットの利用者も増加が予想されています。購入した商品としては、婦人衣料品、下着、紳士衣料品、,家具.インテリア、子ども.ベ ビー衣料品ガベスト5となっています。

 90年代に入って、海外の通信販売企業のカタログで注文する顧客が増えています。 顧客にとっては、まさに居ながらにして世界中の商品が購入出来ることになっています 通信販売の世界には国境という壁が存在しません。将来的に期待されるのは、電子商取引、インターネットを利用した通信販売です。今や、日本のインターネットの利用人口は約100万人を越え、コミニケーション見にケーション手段として定着していますがインターネット上で開店している日本のショップは約1万店にもなると云われていますいつでも、どこでも、世界中の商品を安心して購入出来る

 (コンビニエンスストアの登場)

 19XX年頃よりコンビニエンスストアが登場して参りました。コンビニエンススト アのコンセプトは、経営内容が限り無く消費者本意にシフトされているということに画期性があります。特徴として、店舗が消費者の身近に一層近寄っていったという地理的利便性、原則的に24時間営業を行うことで消費者に対する時間的利便性、豊富な商品の中から品目分野別に商品をセレクトしており、消費者に買いやすいシステムを開発しているという購買的利便性が認められ差別化となっています。まさにコンビニエンスにされている訳です。

 以上のような小売業の様々な革新のるつぼの中からMLMが生まれていることを踏まえねばなりません。結果的に見ますと、MLM方式は、小売業の様々な革新の精華を全て引き寄せながらさらに革新を深めているように思われます。この意味でまさ に正統のマーケティングとみなすことができます。MLMの革新性は、冒頭で指摘した通り、消費者を単に受け身の消費者の地位に留めること無く、愛用者ないしビジネ ス主体者に組み立てたマーケティングであるという点に認められます。

 その系譜を次のように追うことが可能です。MLMは、遠因としてスーパーマーケットのマスマーケティング.チェーン化販売理論の経験且つ地均しを経て生み出されたものであり、 これにフランチャイズ商法のオーナー化業務提携販売システムの成果を加え、フランチャイズの場合あくまで一定規模の資本を持つ会社主体のチェーン化マーケティングであるのに対して、MLMは小資本さえ持たぬ替わりに草の根的存在の消費者である個人に呼びかけ、これを事業経営者と想定した個人主体のチェーン化マーケティングと して深化させました。この意味においてフランチャイズを究極まで発展させたものと認識することが出来ます。更に、通信販売のノン店舗カタログ通販且つ消費者の会員制の組織化を引き継いでいます。更に、訪問販売のドア.ツー.ドアの形態をパースン.ツ.ーパースンの転換で、それら一切を個人型のコンビニエンス.システムに大胆に切 り替えたマーケティングとして再構築しています。つまり、MLMとは、本部事業者が個人会員とフランチャイジ−契約を結び、この個人会員をビジネスの提携事業者とみなして、全ての流通段階における既存の流通業者のすべての役割を簡略且つ効率的に担わせるという形態であり、その見返りとして消費者にマージンが支払われるマーケティングということになります。

 現在流通小売業は二極化しつつあります。一方は、引き続きスーパーマーケット又はフランチャイズへと向かう流れです。この流れは、更に巨大な資本化と規模の利益の追及を目指させるものと思われます。他方は、究極の草の根資本である個人をネッ トワーク化する方向に向かおうとする流れです。MLMは、後者の流れに沿った究極段階のマーケティング理論とみなすことが出来、最先端を行く有力な販売科学理論として更に工夫されていくものと思われます。


【MLMの歴史的特徴その1、「ユニレベル方式MLM」誕生】
 「MLM」の実際上の“発見”は、本部事業者の側から発想されたのではなく、現場のセールスマンの気分の中から“セールス革命”として誕生して参りました。 時代的にはっきりしておりませんが、1940年代の頃には早くも「MLM」の胞芽が生まれていたようです。昔から“乗数の法則”の凄さそのものについては知られており ましたが、そのビジネスへの応用の仕方が判らないままに埃をかぶってきました。「M LM」とは、新旧セールスマンの矛盾を解決しようとしてこの“乗数の法則”を実際に ビジネスに応用しているところに意味があり、古手のセールスマンに対して、彼が面倒 を見て育てた新手のセールスマンのコミッションのうちから幾分かの報酬を“のれん分け料”として支払われる仕組みにして、これを多段階にわたって組み合わせたセールスにおける一種の〈のれん分けマーケティングシステム〉とみなすことが出来ます。この当時の「MLM」は、今日の様々な方式と区別して【ユニレベル方式】と云われております。

 【ユニレベル方式】とは、任意のセールスマンA氏の直下にのれん分けし たセールスマンB氏が派生し、このセールスマンB氏は、自己の売上げの一部をロイヤ リティーとしてA氏に支払うかA氏から製品を購入する等何らかの方法でA氏に利益を発生させ、このB氏の直下にC氏が派生した場合同様にシステムアップされ、この方式が何世代にもわたって続いていくという方式のことを云います。

 但し、この方式にはセールスマンの先後登録が機械的に踏襲され重視されるという重大な欠陥が有りました。A氏をはじめ組織上部のセールスマンの収入がうなぎのぼりになるにも関わらず、新規のセールスマンには同様の機会の保証がないというビジネスチャンスに関わる不公平の発生が つきまとっていました。しかしながら、そのような欠陥を持つ【ユニレベル方式】であれ、セールスマンを繋 ぎ合わせるという手法そのものがビジネスの新しい発想であり、功績が認められます。「MLM」は販売に伴う利益分配方式に関わる新提案であり、その方法とは、セールスマンに対し、セールスマンが自分自身で商品を売った儲けだけではなく、リクルートし た人の売上げに対してもコミッションが入るようにすることで、セールスマンにやる気を起こさせるというものでした。どんなビジネスでも、商品を小売すればコミッション なりマージンが入りますが、新提案は、自分が見つけて小売人に仕立てあげた人の売上げからもコミッションが入るという、これまでにないビジネス手法でした。

【MLMの歴史的特徴その2、「ブレイクアウェイ方式MLM」の誕生】

 「MLM」は、第二次世界大戦が終わった1945年頃より新たな需要を生み出しました。その社会的背景は次のようなものでした。第二次対戦後、戦地から帰国した米国 の復員軍人のうち、かってのセールスマンには過酷な現実が待ち受けていました。帰国 して見ると、出征前に開拓していた顧客たちは新しいセールスマンのマーケットにされており、生活の場を奪われてしまっていたのです。中には自分が面倒を見て育てたセールスマンにより市場が喰われているという有様でした。古手のセールスマンは、こうして新旧交替の波の中で失望する以外為す術がありませんでした。「戦争が終わり帰国すると、俺の開拓していたテリトリー(商域)は若手に取られており、新しく開拓するには遠くへ行かぬと駄目だ。それには骨が折れる。俺も年だし、老後をどうすりゃいいの だ」という当時大ヒットしたブロードウェイの戯曲「セールスマンの死」に表現され た通りの状況に遭遇していた訳です。このような現実を背景にして、新旧セールスマンの利害を調整する新たなアイデアが求められることになりました。この解決法の一つとして【ブレイクアウェイ方式】と呼ばれる「MLM」的解決案が登場して参りました。

 【ブレイクアウェイ方式】を考案し たのは、カリフォルニア州出身のリー.マイティンガーという墓地用地のセールスマン と、ウィリアム.キャッセルベリーという心理学者だといわれています。太平洋戦争が終わった年の1945年、リー.マイティンガーは、ウィリアム.キャッセルベリーに 新しいビジネスの発想を伝え、そのシステムの構築を依頼しました。ビジネスの新しい発想とは、販売に伴う利益分配方式に関わる提案であり、その方法とは、セールスマンに対し、セールスマンが自分自身で商品を売った儲けだけではなく、 リクルートした人の売上げに対してもコミッションが入るようにすることで、セールスマンにやる気を起こさせるというものでした。どんなビジネスでも、商品を小売すればコミッションなりマージンが入りますが、新提案は、自分が見つけて小売人に仕立てあげた人の売上げからもコミッションが入るという、これまでにないビジネス手法でした。

 このような歴史的 経過を考えると、新旧セールスマンの矛盾を解決しようとして登場してきたのが「ML M」であるということが確かめられます。【ブレイクアウェイ方式】のユニークな点は次のところに有ります。【ブレイクアウ ェイ方式】は、【ユニレベル方式】の先位者の優位性という構造的な欠陥に対し、一定の組織力を蓄えた後位者を半独立させることにより先位者の優位性を減じさせ、こうして後位者との不公平さをなくそうとしたところに工夫が認められます。逆から云えば、 より実力主義化したシステムが構築されているとも云えます。

 この発想は、西欧社会のキリスト教会の組織構成を真似ようとするところから生まれたとも云われています。教会の信者ネットワークは次のような仕組みになっています。 最も信仰心が熱い司祭をトップにしてその司祭が次なる司祭を育て、別の教会を開かせ ます。新たに司祭を育てた司祭は司教に出世し、これにより司教の支配教区と信者はどんどん拡大していきます。このようなキリスト教会におけるヒエラルキー(教職者の育成とその支配体制)と信者組織の有様こそ、見方をかえれば非常に上手なビジネスのや り方そのものではないかと素朴な驚きを覚え、このような信者組織の作り方に則ってビ ジネスを展開したらどうだろうかと気がついた人がいたという訳です。訪問販売はドアツー.ドアにより販路を拡大していきますが、信者組織の場合にはパースン.トー.パースンで人間性と人間性の接触により販路を切り開いていくことになります。あたかも 教会の布教活動が神の福音を説き、未だ救われぬ人々に洗礼を勧めていくように、商品の有効性と利益の有利性を説き、洗礼に代わってサインを勧めていけばどうだろうかというアイデアが「MLM」誕生の伏線になったとも云われています。


【MLMの歴史的特徴その3、「セールス革命MLM」誕生】
 【ユニレベル方式】に続く【ブレイクアウェイ方式】のアイデアは、考案されてしま えば何気ないことのように思われますが、“セールス革命”とでも云うべき内容を秘めていました。それまでのセールスコミッションの常識は、担当した当事者の一馬力型の 販売努力と結果に対してそのセールスマンに対して一身専属的に報われるものでした。考案された「MLM」は、セールスコミッションの一身専属性を打ち破り、営業を系列組織的に行うというものでした。こうした営業の系列組織化はビジネスのまったく新しい発想と云えます。この発想を組織の上部構成員からみれば、「MLM」とは販売に伴 う利益分配方式に関わる提案であり、どんなビジネスでも商品を小売すればコミッショ ンなりマージンが入りますが、新提案は、セールスマンに対し、セールスマンが自分自身で商品を売った儲けだけではなく、自分がリクルートして小売人に仕立てあげた人の売上げからもコミッションが入るようにするというこれまでにないビジネス手法であり、やる気を起こさせるに充分なマーケティングシステムということになります。

 「MLM」の特筆されるべき特徴は、「消費者が販売員も兼ねている」ことにあります。こうした「消費者が販売員も兼ねる」手法こそ「MLM」の起点と云えます。この原点に組織販売がワンセットとなったのが「MLM」と云えます。このMLM方式は誕生するや否やすぐさま事業者にも魅力的な販売システムであることが嗅ぎ付けられることにな りました。「MLM」は事業者側に画期的な経費節減をもたらすマーケティングであり 、この方式に従えば、企業側には従来の事業には不可欠であった広告宣伝費や営業者員の雇用や店舗設営等々の営業経費が大幅に削減でき、ユニークな商品さえ開発しさえすれば特段の財力なしに商品の流通販売が可能になる手法であることが判明した訳です。こ のマーケティング.システムは、他方で、新規起業家にとっても、自らが事業会社を興すまでもなく、任意に選定した「MLM」企業との事業提携により魅力的な報酬にありつけるという可能性が呈示されることになりました。こうして「MLM」は新しいマーケティング理論として認識されはじめ、アメリカ人の旺盛な起業精神とフィットしていくこととなりました。やがて「MLM」方式としての意識的な取組みの元に1940年 末から50年初頭にかけて、一群の人たちが本格的に事業戦略に取り組んでいくことに なりました。「MLM」は、そのようなマーケティングとして採用されていくこととな りました。

 同様の手法は、西ドイツにも源流を垣間見ることが出来ます。1949(昭和24年 年頃西ドイツのハンブルクの靴屋ヴェルナーオットーが、靴を店頭に並べて販売するだ けでは飽きたらず、他の商品も扱う通信販売を手掛けたシステムにも認められます。この販売システムは「SB方式」と云われており、SB会員が本社から送られて来るカタ ログをもとに近所の友人や知人から注文を取るシステムを採用しました。SB会員は、自社の商品群を卸値で入手して愛用できると共に、さらにこれを友人.知人などに販売することによって副収入(6〜14%のマージン)を得ることができました。つまり、 オットー社の通販カタログ販売の顧客が単に顧客に留まらず、自ら営業することにより マージンを稼ぐという、消費者が販売者を兼ねるネットワーク.ビジネスの最初の仕組みがスタートしたのです。

 SB方式のもう一つの特徴は、その組織構成にありました。SB会員を指導する本社の社員である販売指導員としての地区リーダーがおり、この人 たちはSB会員をリクルート(勧誘)し、その管理指導をすることで収入を得る仕組みになっていることにありました。地区リーダーは、自分が管轄する地区内の商品売上高により収入が左右されていました。つまり、管轄地域内の会員数を増やす等により売上げ を増加することにより、収入がアップするという仕組みになっていました。これらの地 区リーダーの上部に100人のディストリクト.マネージャーを置き、さらにこれらのマネージャーを管轄する9人のブロック.マネージャーを置きました。これらのマネージャー全てが歩合制になっていました。同社はこのシステムによって1980年には売 上高36億マルクを達成するまでに成長しました。こうしたオットー社のマーケティング.システムにも「MLM」の原形を見ることが出来ます。

 以上見てきたとおり、時代が「MLM」を生み出したのであり、「MLM」は人類史上最大の発見となる可能性さえ秘めていると云えます。





(私論.私見)