WHAT(ネットワーク.ビジネスとは)

 (最新見直し2008.10.19日)

目次

題名
口コミ商法の原理−「乗数の法則」の活用について
ねずみ講について
悪質マルチ商法について
「MLM」とは何か
マーケッティング理論について
ビジネス理論について


【はじめに】

 MLMとは何か、このテーマに正面から取り組んだ論及がなかなか見当らない。そこで、れんだいこが、MLMの定義に立ち向かってみようと思う。MLMとは、「マルチ・レベル・マーケッティング」の略で、「乗数の法則」を経営学的に利用して人海戦術商法であり、従来の流通経費に要した費用の大部分を組織構成員に還元しようとするマーケティングの総体」とでも定義し得る。「乗数の法則」とは、例えば2の乗数で見た場合次のような変化をみせる数の動きであり、2X2=4.4X2=8.8 X2=16.16X2=32.32X2=64−−−−−と続く倍々理論のことを云う。MLMとは、それを マーケティングに応用した場合の法則のことを云う。

 「倍々理論」は自然界に於ける細胞分裂に比せられる。 マーケティングの場合、実際にこのような発展をみせることは無いが、原理的にこの法則を利用した場合どうなるのかというのがMLM的関心となる。付言すれば、倍々理論でこれを33倍すれば地球の総人口を覆ってしまう。ここにMLMの凄さと危うさがあると云える。

 こうしたMLMをズバリ取り扱った小林忠嗣氏の「マルチ.レベル.マーケティング」が世にだされたのは19**年であり、以来今日まで**年を経過しているというのにこれに続くMLMを本格的に扱った著書が出されていないのは奇異なことのように思われる。小林氏の著書が送り出された19**年頃のMLMと云えば「ウェイブ.ワン」か ら「ツー」の時代への移行期であり、今日の「スリー」から「フォー」へ至ろうとしている時代の勢いとは比べるべくもないにも関わらず、以後本格的なMLM本が著わされていないということは不幸なことのように思われる。

 今日MLM企業の勢いは止まる ところをしらず、1999年の現時点において日本市場に進出した主な外資系MLM企業を挙げれば、タッパーウェア、シャクリー、アムウェイ、FLP、ハーバーライフ、ニュースキン、ニューウェイズ、モリンダ、レクソール、エンリッチ等が目につく。これを迎え撃つかの如く国産MLM企業も誕生しているが、いずれも成長の速度は見劣りする。

 これら各社にはディストリビューターと云われる会員が多数活動 しており、各社なりにMLMの何たるかを周知徹底させている。が、今日まで本格的なMLM本がないということは、MLMそのものを理論的に掘り下げることの必要よりは、MLMを金儲けの手段として捉える傾向によって余儀なく推移しているように思われる。

 MLMがそのような手段として有効であることを否定しないが、少々理論的考察をしておこうと思う。まず、MLMには人類の文明史的な転換を迫る程の革新的な意義が宿されていることを確認したい。次に、このような観点からMLMに取り組むことを通じて路銀を手に入れるビジネスの是非を問いたい。次に、MLMが依然胚胎している問題点を切開させたい。本書が各社ディ ストリビューターの必読本となることを願う。本書はこの種の本としてはまだまだ未完本ではあるが、読者の忌憚の無い意見を賜りたい。

 2006.11.24日再編集 れんだいこ拝


【「乗数の法則のすごさ」について】
 「乗数の法則」を活用するということ自体が駄目だという頑迷者にはつける薬がない。いわば、口コミを通じた人の活用が駄目だということになるが、口コミ又は井戸端会議がけしからんとお考えの方とは、席を改めて別に議論させて頂きたいと思う。そういう方はさて置いて、以下「ねずみ講」と「悪質マルチ 商法」と「ネットワーク(以下、NWと記します)商法」との違いを簡単に確認しておくことにする。その前に「乗数の法則」とは一体どういったものかということについて見て参りたい。

 【MLMの乗数の法則(一)、乗数の法則の数式による段階式変化考】

 まず、単純に数式の乗数による数字の変化を見ておく。ここでは、2から9までの基数を6段階まで乗数化させ、基数の増加(横の関係)と6段階に至る乗数による数字の大変化(縦の関係)を確認致します。この関係を図示しますと次の通りとなる。 
倍 率 2乗数 3乗数 4乗数  5乗数 6乗数 7乗数 8乗数 9乗数
1段階
2段階 16 25 36 49 64 81
3段階 27 64 125 216 343 512 729
4段階 16 81 256 625 1.296 2.401 4.096 6.561
5段階 32 243 1.024 3.125 7.776 16.807 32.768 59.049
6段階 64 729 4,096 15,625 46,656 117,649 262.144 531.441

 ○、「ネズミ算」について

 ネズミは生後2カ月半から3ケ月で親になる。1回に平均6〜7匹、多いときは18匹も子を生むと云われている。仮に、雌雄2匹のネズミが1ケ月後に12匹の子供を生み、更に1ケ月後成育した雌雄のネズミが同じように12匹の子供を生むとすると--------12ケ月後には276億8257万4200匹になる。このようにネズミの繁殖力がすさまじいことから、数字がどんどん大きくふくらむことを和算では「ネズミ算」、数学で倍々になるのを等比級数(幾何級数)と云う。

 つまり、乗数とは通称「ネズミ算」とも云われるが、ネズミの繁殖の生態が幾何級数的であることにより付けられた呼び名であるということになる。

 これを2の倍数で図示すると次のようになる。

 ネズミ算表
1日目
16
32
64
128
256
10 512
11 1.024
12 2.048
13 4.096
14 8.192
15 16.384
16 32.768
17 65.536
18 131.072
19 262.144
20 524.288
21 1.048.576
22 2.097.152
23 4.194.304
24 8.388.608
25 16.777.216
26 33.554.432
27 67.108.864
28 134.217.728
29 268.435.456
30 536.870.912
31 1.073.741.824

 【MLMの乗数の法則(二)、乗数の法則の自然界での活用の姿考】

 「乗数の法則」活用の代表例として「ガチョウのV字型飛行」が挙げられている。。ガチョウがV字型を形成して飛んでいくのは、一羽一羽で飛ぶよりも少なくとも71%も遠くへ行けるということからだという研究が為されている。各々のガチョウが羽をはばたてせると、すぐ後ろを飛ぶ鳥を浮揚させる力をつくりだす。一羽のガチョウがその群れから遅れると、すぐに単独で旅する困難さを察し、急いで群れに戻る。先頭のガチョウが疲れると後ろにまわり、その次のガチョウが頂点の位置を飛ぶ。又、前の方を飛んでいるガチョウを励ます為に、後ろのガチョウが鳴き続けるのも興味深い。このガチョウの知恵を「シナジー(協働作用)」として見ることができる。シナジーとは、単純に云えば1+1が3かそれ以上になる作用のことを云う。

 ガチョウにはもう一つ面白い習性がある。病気ゃ怪我をしたガチョウがいると、別の二羽が群れから出て、その跡を追い地上に降りる。この二羽は、具合の悪い鳥がまた元気に飛べるようになるか、あるいは死ぬまで一緒にいる。そしてこの二羽は、独自に縦列を組んで、元のグループに戻ろうとするか、南に向かう別のグループにくっついて行く。

 「ガチョウのV字型飛行」からさらに次のことを学ぶこともできる。ガチョウの群れには、目的地へ着く為に風や雨の中や、測り知れない距離を旅するうちにできる絆がある。人の乗数の法則にも同じ絆が生まれる。落胆や拒絶や生活上の挑戦の嵐を乗り切る手助けとしての絆が生まれる。


 【MLMの乗数の法則(三)、乗数の法則の社会生活での活用の姿考】
 次に、「人の乗数梃子の法則」が応用されている非ビジネスな面での実際の生活の場面を確認しておく。ここでは、具体的事例としてPTA連絡網と歴史的逸話を採り上げて見る。

 
(具体的事例T)PTA連絡網

 緊急連絡として会員625人に連絡を入れる場合に、これを一人の作業でやるとすれば次のようになる。口伝ての場合には余りに効率が悪いので電話を利用する。不在の場合も有るのでFAXを入れることにする。この場合でも、625人の会員全員に片っ端からでFAXを入れるとして、仮に1回につき3分かかったとすると、数式:3分×625人=1,875分=31時間15分=1日と7時間15分ということになる。一人でするとすれば相当の難作業であり、実務的に不可能だということになる。

 そこで、連絡ネットワークを使うことになる。連絡ネットワークとは、最初の一人が何人かに連絡し、その何人かが受持ちの班員に連絡して行く連絡網のことであり、自然と「MLM」の手法を利用していることになる。例えば最初の代表役員一人があらかじめ決めておく5人の役員に連絡すれば、順次5人ずつの受持ちで連絡していくことにより、極めて短時間のうちに会員全員に連絡が行き渡るというシステムになる。

 これを計算すると、同じように所要時間を3分として、最初の1人が5人に連絡し、その連絡を受けた5人がそれぞれ別の5人に連絡する。これを順次繰り返せば次のようになる。、
段階数 伝達人数 所要時間
1段階目 1 ×5= 5人 3分×5人=15分
2段階目 5 ×5= 25人 3分×5人=15分
段階目 25 ×5=125人 3分×5人=15分
段階目 125×5=625人 3分×5人=15分

 以上の数式に従えば、数式:15分+15分+15分+15分=60分ということになり、なんと1時間で625人に連絡できることになる。1人で625人に連絡する場合の実に30倍以上(1,875÷60=31,25)の速さで処理できることになる。厳密には30倍というのは正しくない。というのは、先ほどのネットワークシステムで連絡をすると625人ではなく、もっと多くの人たちに連絡できることになるからである。というのは、先ほどのネットワ−クでは連絡を受けるだけの最終段階の人たちが625人ということになるから、ネットワークの中に含まれる総人員は、数式:1+5+25+125+625=781−625=156であり、625人よりも156人分多くの人に連絡できることになる。従って、もしそれだけの人に1人で連絡するとすれば、数式:3分×781人=2343分=39時間3分の時間が必要だから、この連絡が1時間でできるということは結局39倍の速さになる。ネットワークを使うことの威力がいかにすごいものであるかが理解されるだろう。これが、乗数の法則の原理である。

 (具体的事例U)歴史的逸話

 「乗数の法則」を語る歴史的な逸話として次のような話がある。ある時、戦国時代の武将豊臣秀吉の寵臣、頓智で名高い曽呂利新左衛門が知恵比べに勝ち、「何でも欲しいものを所望せよ」と秀吉から云われた。新左衛門は、「一日目に米一升、二日目には2升、三日目には4升.....毎日、前日の2倍の米を1カ月間ほしい」と答えた。秀吉は、「欲のないやつだ」と承知した。ところが、秀吉は気づいた。この方式で1カ月間も続ければ10億升という途方もない数字になる。急きょ前言を翻し、かぶとを脱いだと云われている。

 数列には、等差数列や等比数列などがある。等差は前の数と次の数の差が一定(例えば、2、5、8、11、14....というように前の数字に3を足したもの=算術級数)の数列を云う。等比は、前の数と次の数の比(公比)が一定である(1,2,4,8,16,32....二つの比の等しいこと=幾何級数)数列を云う。「人の乗数梃子の法則」とは等比数列のことであり、凄い威力となる。

 等比数列の初項から第N項までの和SNは、a(rn−1)Sn= r−1(事例:初項が1、公比が2、1日ごとに倍々計算すれば20日後には1X(230−1) 230−1S30=2−1 = 1 =230−1=10億7374万1823となる。


 【MLMの乗数の法則(四)、具体的事例−乗数の法則をビジネスの面で応用した実際活用例考】
 具体的事例としてセールス応用を採り上げて見る。乗数の法則をMLMとして例えば製品流通の手段に利用するとすれば、先ほどの数式に合わせれば、通常の販売方法なら30年間かからないと達成できない売上規模へわずか1年で到達することが可能になる。これを、1人の販売員の販売活動に置き換えて考えると、MLMの可能性の絶大さに胸踊る思いになる。販売活動というものは結局は時間との勝負であり、どんなに優秀なセ−ルスマンも普通のセ−ルスマンが30年間に売るだけのものを1年で売ることはできない。しかし、MLMを活用すればそれができるということになる。

 とはいえ、1人1人の会員(ディストリビュ−タ−)をリクル−ティングしていくのは実際には手間暇のかかる仕事であり、絵に描いたもちに終わるケースが多い。特に、組織作りの最初の段階は思うように広がらず遅々として売上が伸びない。しかし、少しずつ組織が確立していくに連れて、売上高は確実に伸びていくことになる。そしてやがて、爆発的な売上げが実現されるようになるという訳である。

 但し、これを成り立たせる条件が前提であり、その条件が悪い場合には徒労に終わってしまう。例えば、取り扱う製品が市場競争に勝ち抜けるだけのものか、報酬制度が適正且つ持続性のあるものであるか、ランク維持の為の押し付けは発生していないか、後から参加する者に対してビジネスとしての公正性が担保されているか、時流に合っているか等々が決め手になる。根本のこの部分がしっかりしていないと、徒労に終わってしまう。

 乗数の法則のビジネスの応用が有効であることは既に確認されており、数多くの企業の驚異的な成長ぶりが示しているところである。しかしながら、或る一定のラインで売上が止まる例も多い。現下のMLM企業は、この限界突破に向けて競争している。先行企業の行き止まり原因を手直しした後続企業が次から次へと新規参入し、先行企業会員の横取り事態も発生している。

 つまり、MLMが有効だとしても、これを生かすのは並大抵でないことが分かる。こういう段階であることを知っておく必要が有ろう。

【人の乗数(倍々)梃子の法則考】
 乗数の法則のすごさは以上見てきた通りである。この法則は、1・すごさ、2・時代的合理性、3・活用の困難さの三側面から一考に値する。

 1・すごさについて

 「人の乗数(倍々)梃子の法則商法」が生まれたことには大いなる意味があると云うべきであろう。通常、「ネットワーク商法」(以下、NW商法と云う)と云われるが、学問的に正しくは「マルチ.レベル.マーケティング(Multi Level Marketing=MLM)」と命名されている。MLMは、「人それぞれの持つ人脈に対して、『乗数の法則』(倍々ゲーム)”を梃子の原理のごとく活用して費用対効果の最大効率を得ようとするマーケティング理論」と云えよう。

 乗数の法則をビジネスに応用することはビジネス上の一大発見であり、 自然科学の分野におけるコペルニクスの地動説や近代医学における抗生物質の発見に匹敵する人類史上に革命的な影響力を持つものとして捉えることができる。ネットワーク商法を理解するには、ここのところの認識が非常に大事となる。

 そもそも「乗数の法則のビジネスへの応用」は、カリフォルニア州出身のリー.マイティンガーという墓地用地のセールスマンと、ウィリアム.キャッセルベリーという心理学者により発見されたといわれている。この二人は、セールスマンに対し、セールスマンが自分自身で商品を売った儲けだけではなく、リクルートした人の売上げに対してもコミッションが入るようにすることで、 セールスマンにやる気を起こさせることに気がついた。

 この時の「発見」は、乗数の法則の二段階活用のレベルに留まるものにしか過ぎなかったが、原理的に見てMLMの要件を備えていた。つまり、人それぞれの持つ人脈に対して、乗数の法則(倍々ゲーム)を梃子の原理のごとく活用することで講組織を作り上げ、このようにして形成され拡大していく講組織内に物流を起こすという新しい販売促進手法であり、画期的な可能性を呈示していた。

 つまり、企業側には、従来式のマーケティングによる広告宣伝費や問屋から店舗にいたる流通経費ないし営業社員の雇用他の営業経費が大幅に削減できるという利点がもたらされ、他方で消費者側には、消費者が単に消費者にとどまらず、気に入った愛用製品をPRしていくことによりリクルート力に応じた魅力的な報酬プランが呈示されるようになったという利点がもたらされることになった。

 このような独特の特徴を持つマーケティング上の新発見は、新規起業家にとって格好のマーケティングとして魅力的であった。このようなマーケティング理論の導入は、凡そ1950年代のアメリカに登場した無店舗式紹介販売型カンパニーの登場に起源を発していると云われており、この起源をもってMLMの「端初」とみなすことができる。この「端初」は乗数の法則の始めてのビジネスへの活用という意味において大きな意味をもっている。
 「『乗数の法則』の時代的合理性」について
 「『乗数の法則』の活用の困難さ」について

【乗数の法則活用ビジネスの三態考】

 とはいえ、乗数の法則のビジネスへの成功的応用は一朝一夕に成し遂げられたのではない。歴史的に見て、乗数の法則活用ビジネスはいきなりネットワーク商法に辿り着いたのではなく、ねずみ講や悪質マルチ商法を発生させ、混在してきた。乗数の法則活用ビジネスが今日のレベルに至るまでには、ねずみ講や悪質マルチ商法との枝分かれを廻っての長期に亘る試行錯誤の歴史が有り、この流れを踏まえないとネットワーク商法の画期性が理解しえないように思われる。

 ねずみ講と悪質マルチ商法とネットワーク商法の関係について確認する。通説とは異なるが、次のように理解すべきではなかろうか。乗数の法則をビジネスとして応用する商法として、ネズミ講と悪質マルチ商法とネットワーク商法の三つの系譜がある。この三商法は、乗数の法則の活用ビジネスという点で同じであり、いずれも「講」を活用する。これを共通点又は同一性とみなすことができる。

 「講」とは、一種の組合または相互扶助組織のことを云う。歴史的には、頼母子講や無尽講がこれに該当する。ネズミ講と悪質マルチ商法とネットワーク商法は、乗数の法則の活用の仕方の違いと心得る必要が有る。よく全く同じものとして又は全く違うものとして説明される場合があるが、不正確のそしりを免れない。

 この三者間には共通点と異質性があるということを正しく理解する必要が有る。この同一性がある故に世間で誤解が生じているとしても無理からぬものがある。いわば「同根異種の間柄」と云えよう。以下、ネットワークビジネスが、乗数の法則をどのように活用しているのかという課題の解明を試みる前に、誤解されがちなねずみ講並びに悪質マルチ商法とネットワーク商法の、乗数の法則の活用のさせ方の違いを考察しておく。


 【NW商法はねずみ講並びに悪質マルチ商法とどこが違うのか】について

 既にネットワーク商法とネズミ講、悪質マルチ商法が共に乗数の法則を活用する点では同じであることを指摘したが、ここでは三者の違いについて確認する。この違いについて判りやすい例えがある。「みそ」と「くそ」の違いである。外形上は似ているが全く異なる。ネットワーク商法とネズミ講、悪質マ ルチ商法との違いを「似て非なるもの」の違いとして捉えるべきであろう。

 【ねずみ講】について

○、非合法性

 ネットワーク商法ととねずみ講との違いは、これをもっとも判り易く説明すれば、早い話、堂々とセミナーできるかどうかの違いでもある。ねずみ講は現在「『無限連鎖講を取り締まる法律」で禁止されており公然とセミナーを開く事ができない。

○、被害者が生まれる

 では、ねずみ講はなぜ禁止されているのか。被害者が続出するからである。被害者が出るようなシステムであるからである。ねずみ講はアメリカでも「ピラミッド商法」と呼ばれて禁止されている。

○、ねずみ講システムの基本形

 ねずみ講には商品が必要でない。要は、「上納金の分配システムであり、マネーゲーム」であると云える。通常、利息の何倍になるとか投資金額が倍になるとかの口車に乗せて、「会員を増やせば儲かるぞ」という式で射倖心をあおりながら乗数の法則を活用する。概略説明すると、仮に最初に100万円を出資した場合、その会員がリクルート した次の方の出資金から仮に50万円を本部に渡し残りをグループで分配する。射倖心をあおりながらこれを無限に繰り返すことになる。

 その会員勧誘の仕方は「人狩り」色を強めるところに特徴がある。その結果は、本部は丸儲けする。初期の会員もダウンラインが広がる裾野に応じて丸儲けできる。しかし、これ以上ダウンラインが広がらないという限界点にいつしか達し、その時参入した方は丸損になる。これがねずみ講システムの基本形である。

○、「早勝ち馬草場」のビジネス

 ねずみ講は、主催する会社と初期の会員つまり先行者だけが成功 するシステムであるからして必然的に「早勝ち馬草場のビジネス」 となる。確かに一攫千金を手にする人も生まれるが、大勢の被害者を前提に した少数者の成功ビジネスである。

○、「我さえ良ければ」の精神性

 ねずみ講をビジネスといってよいのかどうか疑問であるが、仮にこれがビジネスだとしてこのようなビジネスを行う者は、自分さえ良ければ良いという人間性の持ち主.エゴイストばかりが寄り集まることになる。当然のことながらこのような品性の持ち主ばかりが寄り合うからして、組織の内部は猜疑心の塊になる。そもそも、このようなシステムであるねずみ講には信用を重んじる常識のある人は関わらない。友人.知人に広めた結果人間関係はズタズタになる。それは、「我さえ良ければ」が招いた自業自得とあろう。

○、現状

 但し、これが昔の話と思ったら大間違いで、現在でも手を替えシステムを替え登場 しては消えている。最近ではインターネット上でねずみ講が独り歩きしている。

 【悪質マルチ商法】について

○、ねずみ講とマルチ商法の違い

 では、ねずみ講と悪質マルチ商法の違いはどこにあるのか。はっきりとした違いは、マルチ商法においては、商品の流通が介在していることにある。

○、マルチ商法システムの基本形

 悪質マルチ商法は、商品の流通を前提にしているが、「不当なほどに利幅の高さを条件設定」しつつ、「売れば儲かるぞ」という式で射倖心をあおりながら乗数の法則を活用するところに特徴がある。

 説明すると、高額商品(不用不急の耐久性商品)の場合は1ケを20万から100万見当の価格で、低額商品の場合にはセット販売で同様価格での購入を義務づける。このような高額の販売には困難を伴うが、「信販ローンの斡旋」により毎月の支払い額を少額にすることでクリヤーさせる。射倖心をあおりながら乗数の法則を活用する。その会員勧誘の仕方もねずみ講同様「人狩り」色を強めるところに特徴がある。

 その結果は、 本部と上級会員には相当な利益が発生し、直接販売した会員には5万から50万程の差 額利益が発生する仕組みになっている。この利益幅を煽ることで在庫を持たせる手法が採用されることが多いが、ダウンラインが広がる裾野に応じて丸儲けできるものの、思うようにダウンラインが広がらない会員にとっては「とらぬタヌキの皮算用」となる。これが悪質マルチ商法システムの基本形である。

○、マルチ商法が悪質化する根拠

 マルチ商法がなぜ悪質化するかというと根拠がある。マルチ商法の欠陥の第一は、そもそも「商品の利幅を不当に高いものに設定している」ことに原因がある。ここを改良しない限り、マルチ商法の悪質化を避けることはできない。なぜこの商法が悪質化するのか。高い利幅を設定していることだけが悪質なのではない。

 悪質マルチ商法の欠陥の第二は、「思うように組織が広がらない」ことに内在している。そもそも金儲けに釣られて値打ちの無いものに法外なお金を突っ込む人はそうはいない。このように思うように組織が広がらない現実に対して、様々な悪質な方法でビジネスを展開しようとすることに問題が発生する。つまり、システム上は儲かることが約束されているにも関わらず、現実の組織の広がりが追いつかないことにより焦って事を進めることになる。結局、「この欠陥を穴埋めする為に、強引な方法で組織の構築を目指すことになり、この方法が悪質になる」という仕組みになっている。

○、様々な悪質商法について

 例えば、「詐欺商法」又は「脅迫商法」又は「催眠術商法」又は「洗脳型マインドコ ントロール商法」又は「霊感.因縁商法」等「良質でない潜在心理術的な方法を駆使しつつこのビジネスを進めて行くやり方が横行する」こととなり、こうしたビジネスの進め方が悪質ながゆえに悪質マルチ商法と呼ばれる。

○、マルチ商法に発生する在庫の問題

 マルチ商法の欠陥の第三は、様々な名目で射幸心を煽りながら、会員に在庫を持 たせるように誘導して大きな損失を与えることにある。このような在庫システムの背景には、儲けようとする者から儲けようという、会員同士を喰いものにする組織原理が働いている。つまり、講組織の仕組み自体が儲けの順送りになっており、決してビジネスパートナーとして助け合う関係にはなっていないということをうかがうことができる。

○、「早勝ち早抜け」のビジネス

 この商法においても、企業は丸儲け、先行者も又丸儲け、ダウンラインにおいても確かに一時的には成功者がでる。但し、商品そのものに魅力がなく不当に高い値段に設定されているものに人はリピートしない。まして、家具とか温水機とか健康用品とかの耐久性商品である場合一回こっきりの商いになる。リピートがなければビジネスの安定的継続的な成長はない。永続きしないビジネスに参加すれば、次から次へとビジネス替えをしなければならなくなる。悪質マルチ商法の限界はここにある。

○、「我さえ良ければ、今さえ良ければ」の精神性

 当然このような悪質マルチ商法に携わる人の人間性も又いい加減な者となる。基本的に「我さえ良ければ、今さえ良ければ」の一攫千金型の人が集まる。そもそも射倖心だけで不要不急の商品を購入し、それを友人知人に広めるとすれば、そういう話に乗ってくる人は限られるし、信用を失うことにもなるが、のれんよりもお金儲けを優先するというレベルの人が参加することになる。

○、現状

 マルチ商法自体は今日でも隆盛の一途を示している。悪質と悪徳の間を玉石混 交しつつ横行しているというのが現状である。決して昔の話ではない。この様子を善意に解釈するとすれば、悪いシステムであることが判らないまま悪いシステムを替えぬままに悪戦苦闘しているというのが実状と云えよう。
 【ネットワーク商法】について

○、マルチ商法とネットワーク商法の違い

 では、マルチ商法とネットワーク商法の違いをどこに認めるべきか。はっきりとした違いは、ネットワーク商法においては、「商品のリピート流通が介在しており」、「薄いマージンを多段階よりのバックマージンシステムにより補完する」ことにある。

○、ネットワーク商法システムの基本形

 ネットワーク商法では商品のリピート流通を前提にしており、市場競争に打ち勝ちえる 「合理的な利幅を条件設定」しつつ、「リピートが重なればビジネスになる」という方程式に従って乗数の法則を活用している。

 概略説明すると、ネットワーク商法においては、安全、高品質、低価格な生活必需 消耗品をバラ売りでメーカー直販のダイレクトセリング方式により販売している。ここには、信販ローンの介在する余地もなく、在庫も基本的には不要となる。このようなシステムの元に会員の自主的なリピート購入を誘引し、このシステムに乗数の法則を掛け合わすことになる。その会員勧誘の仕方は愛用者づくりであり、ビジネス パートナーづくりとなる。その結果は、本部と会員同士も又ビジネス.パートナーであり、初期会員と後続会員との間にも極力の公平性に裏打ちされた報酬制度を用意している。

 なお、エンドユーザーの消費者に対する満足度を重視している為、製品の一回当りの流通マージンは少なく、ビジネスの初期段階においては労力の方が多い仕組みになっている。ダウンラインが広がり、製品のリピート回数が増すことによりビジネスが本格化することになるが、思うようにダウンラインが広がらない会員にとっても製品の満足度が高いため被害者の生まれる余地はない。これがネットワーク商法システムの基本形である。


○、ネットワーク商法が良質である根拠

 ネットワーク商法がなぜ良質であるのかというと次の根拠に支えられている。ネットワーク商法の良質性の第一は、そもそも商品が値打ちに較べて格段の価格安であることにある。安全、高品質、低価格はネットワーク商法において初めて実現した。

 なぜこの商法が良質であるのか。製品が優れていることだけに理由があるのではない。第二の理由は、「頑張れば頑張っただけ組織が広がりやすいシステムづくりに成功している」ことに有る。世の中には頑迷な人もいるが、良いものは良いという眼力又は体感力を持っている人も多くいる。そういう方にビジネス.アプローチするには格好の製品と販売システムと報酬制度になっているというのがネットワーク商法の段階である。

 ネットワーク商法良質化の第三は、基本的に会員には在庫が不要のシステムがつくられていることにある。この違いも大きい。但し、古典的なネットワーク企業は毎月のランク維持を科すことにより、結果的に在庫型ビジネスになっている。この点は大いに改善される余地がある。

 ネットワーク商法良質化の第四は、企業理念が「共生エバ」を詠っているところに認められる。但し、組織原理が「共生エバ」ビジネスになっているかどうか、まだまだ改善の余地がある。「For You」の精神性も然りである。掛け声倒れに終わっている嫌いが認められる。

○、現状

 ネットワーク商法は様々な問題点を抱えながらも、まだまだこれからのビジネスであると思われる。


【「マルチ.レベル.マーケティング」(MLM)についてその1】

 MLMは、前章“MLMのアイデアの端初”で見てきたように、アメリカ人リー.マイティンガーの脳裏に浮かんだあるマーケティングのアイデアから始まったとされている。

 このアイデアを実際にビジネスに取り入れたのがカール.レンボーグと云われている。同氏はかねてMLMに注目しており、ビタミン剤を販売する為に設立したニュートリライト.プロダクツ社の経営又は販売手法として史上初めて採用したという栄誉に輝いてる。今日レベルから云えば胞芽的なレベルのものではあるが、同社がMLM企業の発祥(端初)とみなされている。ドイツのオットー社もMLM企業のはしりであり、第二次世界大戦後のアメリカとドイツの小売業界にほぼ同時的に呱呱の声が上がったことになる。

 以来MLMは様々に試みられ深化していく。勢いをつけていったのはアメリカの方で、1950年代より60年代、60年代より70年代というように次第に勢いを増して行った。とはいえ、MLMは新しいビジネスの常として黎明期から今日に至るまで世間から中傷や批判を浴びて来ている。特に、鬼っこ的側面の消費者活用商法は史上初めてのことでもあり、又実際に様々なMLM商法が横行したことにより社会的認知を受けるまでには相当の時間を要することになった。MLMは今日においても試行錯誤しつつ改良に次ぐ改良を重ねている未だ実験途上の段階と云える。この間、1950年前後の勃興以来何千何万社という企業の挑戦と淘汰が演ぜられている。

 MLMは歴史的試練を経つつ凡そ1970年代より漸く成功事例に辿り着くこととなった。その象徴が1975年5月、アメリカ連邦取引委員会(略称FTC.Federal Trade Commission)が下した次のような判決である。

 「悪徳MLMシステムの本質的な特徴は、参加すれば製品を販売する権利を得るとともに、別の参加者をリクルートするだけで製品が売れようが売れまいが報酬を受ける権利が得られるとして、会社側に金銭を支払わせることである。製品販売と無関係な報酬を得るというリクルート条項は、まさに無限連鎖講的仕掛け〈ねずみ講〉に他ならない。リクルートによって得られる報酬を期待して多額の金銭を支払った参加者は裏切られることになる。しかし、〈MLMシステム〉を正しく行っている会社は、ピラミッド.システムの持つ本質的な特徴を含んでいないので、本質的に偽りで人を騙すような商法ではない」。

 続いてアムウェイ社とFTC(連邦取引委員会)との係争で、1979年にアムウェイ社が同社のMLM商法に対し勝訴することになったこともMLM発展の大きな契機となっした。同裁判での審決は次のように結ばれていた。

 「アムウェイのセールス.マーケティング.システムは、ピラミッド商法の持つ本質的な特徴を含んでおらず、従ってそれは本質的に偽りで人を欺すようなものではない」

 この勝訴判決判決以降MLMは歴史的正当性を獲得し、正当な商法として認知されることになり、MLMを廻る画期的な動き(ウエーブ)が沸き興ることとなった。

 MLMは80年代より一層真価を発揮し始めた。その要因に二つのベクトルがある。一つは、コンピューターの発達であった。コンピュ−タ−は80年代に入って高度演算処理能力を持つようになったが、MLM企業も又そのおかげを受け取ることになった。もう一つは、宅配便の発達である。宅配便は、製品配送の面でMLM企業と会員間をダイレクトに結びつけ、代理店方式から直接会員への配送が可能となったことに大きな貢献をすることになった。こうしてMLMにフォローの風が吹き始め、潜在的な威力がますます発揮される土壌がつくられていくことになった。

 MLMの次のウエーブは、1990年に米国全国版雑誌「サクセス5月版」で、MLMを肯定的に扱う特集記事が組まれたことで一挙に社会的認知度を増幅させた。同誌は信用と水準を誇る全国版ビジネス誌であるが、編集長スコット.デガルモの同意の元に編集記者リチャード.ポーが徹底的な調査に基づき、「ネットワーク.マーケティング、90年代最強のビジネス」としてMLMを紹介することになった。 こうしてMLMは著名なビジネス情報誌に相次いで紹介されるようになった。

 こうしたこと拍車をかけるかのように、世界的に有名な雑誌「ウオール.ストリート.ジャーナル」と「スタンフォード研究所」レポートにより、「1990年代の終わり頃には、大衆が日常消費する商品やサービスの50〜60%が、この「ネットワーク.マーケティング」方式(DDS)で販売されるようになるだろうと予想される」とコメントされた。こうしてMLMは一層の注目を浴びることになった。MLM の素晴らしさについて、世界一の経営コンサルト会社を主宰する船井幸雄氏は次のように述べている。

 「私はこれからは顧客を包み込んでモノやサービスを提供するネットワーク.ビジネスの時代が到来すると考えている」。

 MLMは、1990年代後半の現時点においても、今尚変貌を遂げつつあり、一層最新最先端最有力のマーケティングの一つとして認知されつつある。一部先進的なマスコの支援を受けることにも成功しつつ、今後どのように発展していくのか熱いまなざしが注がれている。21世紀初頭には「インターネット」時代の到来が予想されているが、MLMは「インターネット」時代に一層威力を発揮するマーケティングであることが判っており、今後ますます有力な地位を獲得していくものと思われる。


【「マルチ.レベル.マーケティング」(MLM)についてその2】

 このような歴史的意味を持つMLMとは何か、その定義について明確にしておきます。

 【MLMの定義】

 MLMは、通称「ネットワーク.マーケティング」(Network Marketing)と云われているが、専門的な正式名称は「マルチ.レベル.マーケティング」(Multi Level Marketing、以下「MLM」と略します) と云い表わされる。「マルチ.レベル」とは、「多重層段階」という意味で、MLMを直訳すれば「多重層段階販売方式」ということになる。つまり、MLMとは、『人の乗数の法則(倍々理論』を梃子の原理として活用しながらマンパワーを最大限に引き出し、そのようにして形成される「人脈講組織」(以下、ネットワークと言い替える)を通じて何らかの対価の流通を為し遂げるマーケティングということになる。

 MLMは、前章“MLMのアイデアの端初”で見てきたように、正統の系譜と異端の系譜両面から把握しないと全体像が見えない。正統の系譜とは、“流通革命” のことであり、消費者を単なる購買顧客に限定せずパートナーとして位置づけることに画期性がある。従来の商法ではどんな優れた製品であれ、一方は売方であり、他方は買方であるというように、売方と買方とは利害反目的な対極関係に位置している。これに対し、MLMでは、消費者が買方と売方の一人二役を演じることになる。一方、異端の系譜とは、“セールス革命”のことであり、消費者のセールス成果が複次元的にもたらされることが画期的となっている。この両面の系譜がワンセットとなっているのがMLMと云える。その結果としての販促流通の凄さは、これまでの小売販売はいわば足し算的な販売に過ぎず、MLMは掛け算的更に乗数的とも云える程の桁違いな普及度を示すことに認められる。

 【MLMの実際の運用の仕方について】

 MLMの実際の運用の仕方は次のようになる。製品は会員制販売で流通される。MLMの“愛用消費者”はまず会員登録をする。会員登録のメリットは、 卸値での購入資格を得ることにある。会員は、通称“ディストリビューター”(Distributer、以下、Dと略します)と呼ばれる。“distribute”には仕分け、分配とするいう意味があり、まさにDは流通に関与する人という意味で呼称されている。Dは、自己愛用者としてのみ登録したり小売りすることもできるが、ビジネスチャンス(機会)も与えられる。ビジネスチャンスは、他の人に製品の素晴らしさ伝え、新規のDを勧誘(スポンサー又はリクルートと表現される)し、 その流通を促すことによりもたらされる。このような「消費者が販売員も兼ねている」 流通方式を「愛用者活用方式」と云うが、MLMならねばの独特の方式と云えよう。こうして愛用者であると同時にセールスマンをも兼ねるDが連鎖式に連なって製品を流通させていくのがMLMということになる。

 Dの報酬は、従来式の自己の直接の売上げによる小売商法による利益(一馬力型) と、前述のようにして形成される連鎖的に構築されたネットワーク”内に流通した売上げに応じて会社から支払われる報酬(多馬力型)との二部構成になっている。後者は、「製品やサービスがその消費者や利用者の手に渡る為のきっかけをつくった人に、直接報酬が提供される」というものであり、こうした“ネットワーク収入”がMLM の醍醐味となっている。通常この収入は“ボーナス(以下、Boと云う)”と表現されており、このBoの支給形態(最高何段階に渡って支払われるか等)によりMLM各社の特徴が表れる。ニュースキン社の場合「6段階ブレイクアウェイ方式」を採用しており、この段階まで進んだDにはかなり高率のボーナス配当システムとなっている。

 【MLMにおける報酬の源泉について】

 報酬(コミッション)の源泉は、通常の販売であれば、〈メ−カ−→販社→問屋→小売店舗→消費者群〉経由に要したであろうと思われる流通経費、広告宣伝費をカットしたところから生まれる。一般に商品の価格に占める流通経費の割合は何と70%と云われている。そのうち広告宣伝費の占める割合は15%と云われているが、MLMの流通では〈メ−カ−→(販社)→会員愛用者群〉へというように可能な限りの直販方式(ダイレクトセリング)で製品を流通させて行くことになる。MLMから見れば、幾段階にも渡って製品流通させて行く従来型の流通は「暗黒の流通トンネル」であり、これを「多針複雑アナログ」式とすれば、MLMの流通は「三針簡明アナログ.デジタル」式と云えるかと思われる。

 ここで、ダイレクト.セリングについて見ておく。ダイレクト.セリングとは、最新のマーケティング形態の一つであり、メーカーとユーザー間を直結させたメーカー直販の無店舗式販売形態のことを云う。こうした無店舗式販売システムには、カタログ通信販売、テレビショッピング、インターネット販売、訪問販売、催事販売、産地直送販売、MLM等の手法が考えらる。MLMと他の手法との違いは、インターネット販売を除いて他のそれが広告宣伝費に関しては相当の費用をかけるのに対して、MLMでは可能な限り広告宣伝費さえ削減していることにある。インターネット販売はまだ緒についたばかりであるからひとまず置くとすれば、MLMは、今のところ様々なダイレクトセリングの中においてもっとも徹底した流通経費削減型の究極のダイレクト.セリングであるとみなすことができよう。

 MLMの特徴は、こうして節減した流通経費の対価としてDに報酬を還元するシステムを構築していることにある。つまり、従来であれば企業側が負担し結局のところ製品価格に転嫁していた流通経費一切を省略した替わりに、Dが独立した事業主体となってこの費用一切を負担する立場に立つことにより、その対価として相応の報酬を受け取るシステムと云える。営業部門が消費者にアウトソーシング(外部委託)されているマーケティングと考えれば良い。Dは専ら口コミによるセールスを通じて人から人へと流通促進活動をしていくのが通常であるが、この「口コミビジネス」こそ最小限費用による最大限効果を期待するシステムとも云えよう。以上見たとおり、MLMは、まさに企業側にとってもビジネス志向のD側にとっても垂涎のマーケティングということになる。


【MLMの「三方良し理論」について】

 一般に商売の極意は「売り手、仲立ち、買い手の三方良し」にあると云われている。「MLMは、ダイレクトセリング方式とコンピュ−タ−の諸能力を最大限駆使しながらこの「売り手、仲立ち、買い手の三方最良」のマーケティングを実現している。

 まず、売り手ないしメーカー側の立場に立ってMLMを見てみる。そのメリットは流通経費を大幅に削減しており、飛躍的な販促流通増大の可能性をも期待させる。なお、一店舗を出店する場合の総経費が次第に高くなりつつある経営環境を考慮すると、そうした費用を要しないマーケティングであるということも大変有り難いシステムと云える。理論上のこのような可能性が、資本力は十分ではないが本当に良い商品を持っている、それを世にだしたいと願う企業経営者にとって大きな魅力であり魔法の杖となる。MLMが成功裡に発揮された場合には、ミラクルな成長スピードで効果が発揮していくことになる。起業家にとって、彼らに資金力がなくても大企業に互すマーケットを構築することを可能にしている。アメリカでは、MLM手法を採用する会社総数が現在約3700社、毎年9%ずつ伸びているという勢いを示している。MLMカンパニ−はメジャーになりつつあるといえよう。ちなみに通信販売の伸びは5%と云われているので、まさに脅威の伸び率と云える。

 次に、仲立ちの立場に立ってMLMを見てみる。MLMの場合、 純然たる仲立ちというものは存在せず「ビジネス派のD」がこの役割を引き受けることになる。「ビジネス派のD」にとってMLMはとてもメリットのあるものである。Dにはネットワークの成長如何により流通量に対するバックマージンがもたらされることになる。MLMは省略した流通経費の相応分を「講組織」内に利益還元させる報酬システムを確立しているので、グループとして高い販売高を示した会員に思いもかけぬ高配当の報酬が与えられることになる。ちなみに、アメリカでは、80年代から90年代前半の6年間におけるミリオネラー(億万長者)は50万人誕生したが、その内訳は、株式関係者が10%、不動産関係者が18%、「MLM」関係者は何と20%を占め、約10万人を数えている。

 次に買い手の立場に立ってMLMを見てみる。MLMの場合、純然たる買い手というものは存在せず「愛用者D」がこの役割を引き受けることになる。「愛用者D」にとってMLMはとてもメリットのあるものである。MLMの取り扱う製品はかなりな値打ち品であり、そうした値打ち品を他の流通方法では叶えられない正味卸値価格で購入することができるという訳である。安全性も知らされないままに広告に乗せられ踊らされ衝動買いするのではなく、自分の目で確かめた効用のある商品を卸値価格で取得できるという魅力がある。賢い消費者の創造であり、MLMはこのような消費者のライフスタイル気分とフィットしている。


【「MLMがコンピュ−タ−ビジネスである所以について】
 MLMを理解する為のもう一つの脈絡に、MLMとコンピューターとの密接な関連性があげられる。MLMは、ますます高性能化しつつあるコンピュ−タ−の諸能力とフィットさせることでコンピュ−タ−の発達と歩調を合わせながら格段の飛躍を遂げてきている。この流れをコンピューター側から見れば、MLMは、コンピューターが推し進める諸革命の一つの現われと理解することが可能である。MLMは、コンピューターを多方面且つ本格的徹底的に活用することで従来流通経費の大幅な削減と複雑を極めるネットワークの拡がりを記帳し、各Dの報酬を算出することに成功している。こうした結果、個人資本の“ノーリスク.ハイリターン”参入を可能にさせており、このことが「ビジネス革命」と呼ばれる所以のものになっている。こうした流れを読み取れば、MLMは最新の「コンピュ−タ−.ビジネス」であり、愈々科学性と合理性を増しつつ、インターネット時代の先取りをしながら、時代の趨勢としての広がりを見せつつあることが首肯けよう。

【宅配便の発達とMLMに与えた好影響について】
 コンピュ−タ−がMLMの真価を一層発揮すべく結びついたが、もう一つ宅配便の発達も注目される。宅配便以前の方式は、有力D単位に製品を配送するいわば代理店的な方式に頼っていたが、宅配便の普及により個別Dとのダイレクトセリング配送方式により製品が届けられることになった。宅配便は、メーカーと消費者を直接つなげたという意味でまさにMLMらしさを強める役割を果たすことになった。

【MLM」の現段階.現況について】

 MLMの凄さは、日々革新されつつある小売業界における最新の販売理論であり、 日進月歩の勢いで失敗事例型から成功事例型へと転換しつつある急成長システムということにある。この商法の有効性は、スーパーマーケット理論及びフランチャイジー理論及びコンビニエンスストア理論の成果を吸収して、カタログ通信販売と訪問販売それら一切の基盤の上に立って花開いた商法と看做すことができる点にある。実務的には、愛用者活用型への転換、ダイレクトセリング方式への転換、最新の高性能コンピューターとのドッキング等により、講組織販売手法の有効性を実証しつつあるマーケティングと云えよう。既に今日の段階においては、MLMは成功事例型が主流であり、先にみたようにアメリカにおける隆盛を見ている。

 アメリカという国柄にはフロンティア精神を源流とする起業家精神が旺盛であり、MLMがアメリカで隆盛を見せるのもいわば歴史的必然であったとも申せよう。このようなMLMは今最も熱いまなざしが注がれているマーケティングであり、この商法を、現代経営学の到達点、流通を含めた小売までの最新の販売科学理論と看做すことが可能である。

 とはいえ、MLMを採用すれば儲かるという生易しいものではない。5年以上継続する会社は1000社に1社しかない。逆に云えばわずか5年の期間さえ生き延びることが難しい厳しいビジネスであり、5年以上存続すれば本物であるとも云える。にも関わらずMLMが隆盛を見せる背景には、他のマーケティングが制度疲労しつつあり、コンピュ−タ−が生み出したビジネスとも云えるMLMが時流に向いていることにあるとも云えよう。





(私論.私見)