影響
オタクバッシング[編集]
宮崎がいわゆるおたく・ロリコン・ホラーマニアとして報道されたことから、同様の趣味を持つ者に対して強い偏見が生じた。宮崎が殺害後の幼女をビデオカメラで撮影し、膨大なコレクションのビデオテープの中に隠し持っていたことから、おたくは現実と空想・妄想と犯罪行為の境界が曖昧で、明確な規範意識の欠落が犯罪に及んだなどとされた。
この事件により「有害コミック騒動」が活発化してアニメ・漫画・ゲームなどが青少年に悪影響を及ぼすとする風潮が高まり、マスコミやPTAなどでの議論となった。これら議論では、事件の代表格である「幼女連続誘拐事件」が槍玉に挙げられた。
宮崎勤が第1の事件を供述して以降、NHKや民放のテレビの報道・ワイドショー番組は連日、連続幼女誘拐殺人事件関連の報道を大々的に伝えた。その直前、海部俊樹が第76代内閣総理大臣に就任し、第1次海部内閣が発足したばかりだったが、宮崎が第2・第3の事件の供述をしたことから、事件の経緯を検証する形で誘拐殺人事件報道を優先していた。民放各局のワイドショーは8月下旬まで、連日30分〜1時間(場合により2時間も)程度で誘拐殺人事件関連の話題を優先していた。
当時の報道では、後のオウム真理教事件以降顕著になった報道のワイドショー化、マス・ヒステリーが激化。これらは80年代サブカル文化人にとっての「連合赤軍事件」となり、これ以降大塚英志などのサブカル文化人が「社会派」に転じる動きが起きた[20]。
8月26日に礼宮文仁親王(現・秋篠宮)が川嶋紀子との婚約を発表してからは、事件報道の扱いが次第に縮小されていった。
「10万人の宮崎勤」デマ[編集]
コミケ会場を取材したあるテレビ番組のレポーターが来場者を前に「ここに10万人の宮崎勤がいます!」と言った、という噂が2000年代にWikipediaを含むネット空間で真偽不明のまま広まった。ライターの石動竜仁が2017年に行った調査によると、事件発覚当時、新聞や週刊誌などで似たような記述は多くみられたが、「10万人の宮崎勤」という文言は使われていなかった[21]。また「10万人の宮崎勤」をテレビで見たという証言は多数あり、中には発言者が東海林のり子であると名指しするものもあった(東海林のり子#「10万人の宮崎勤」デマ被害を参照)が、報じた局、レポーターの名前・性別、状況がみなバラバラであり、噂と一致する映像は確認できなかったという。石動によれば、2004年9月に発売されたとある雑誌に掲載されていた漫画の中で「10万人の宮崎勤」発言をネタにしたシーンがあり、これ以降、ネットで噂が大きく広がったとしている[21]。
ホラー作品[編集]
宮崎の部屋から押収された大量のビデオテープの中に、『ギニーピッグ2 血肉の華』が含まれていたと報道されると、この作品に影響されて犯行に至ったという解釈が世間に広まり『ギニーピッグ』シリーズは全作品が廃盤となった。しかし実際に部屋から押収されたのは全編コメディ調の『ギニーピッグ4 ピーターの悪魔の女医さん』であり、宮崎は『ギニーピッグ2』を見ていないと供述している。しかしながらこの影響で宮崎の逮捕後しばらく、ホラー映画のテレビ放送が自粛された。
ポルノ作品[編集]
この事件後、1989年あたりから創作物における性的描写に規制が強まった。少年漫画などで女性の裸体を表現する場面で乳首が見えないように修正を施されたのもこのころからである。青年誌では『ANGEL』などの人気作品が連載中止となった。
当時この事件の取材をしていた木村透は、偏向報道があったと「読売ウイークリー」のブログ(2005年11月21日)にて主張している(当該エントリーはすぐに削除された。関連記事)。削除されたエントリーで木村は、民放カメラマンが部屋の隅に数十冊あった雑誌のうち、成人向け書籍を一番上に乗せて撮影するという行為があったと主張している[注釈 7]。5,787本という膨大なビデオテープの大半は『男どアホウ甲子園』や『ドカベン』など大量のアニメ作品の録画テープが占めており、いかがわしいビデオや幼女関連のビデオ作品は44本に過ぎなかった。
これらのテープのほとんどは一般のテレビ放送を録画したものや、そのテレビ録画がマニアによってダビングされたもので、これらは文通などの方法で交換されたものという話がある。当時の報道によれば、こういったマニア間でのテレビ録画したダビングビデオの交換は方々で行われていたが、宮崎はこの交換で望みのテープを入手する際に、相手への返礼が十分でなく、遅延するトラブルもあったという。また宮崎が自分の欲しい作品をどんどん入手する反面、相手の頼みはできるだけ断るという態度を取ったため、宮崎を除名したサークルもあった。またサークルのメンバーからは、宮崎は「完録マニア」(全話を録画しないと気がすまないタイプ)であり子どもっぽいとの印象も持たれていた。
小児児童への影響[編集]
この事件をきっかけに、年端もいかない小児に性衝動を覚えるペドフィリア嗜好の存在が広く知られることとなり、保護者が子どもをめぐる性犯罪に対して強い恐怖感を抱くようになった。
テレビの幼児番組などでも、児童(女児)の裸・下着が画面に映ることを避けるようになった。さらに、宮崎が年少のころより動物に対して残虐な行為を行っていたという報告もあり、動物虐待行為がこれらの犯罪行為の予兆であると考える向きもある。
その他の影響[編集]
事件当時、フジテレビで放送中のアニメ『らんま1/2』において、8月19日放送予定だった 第14話「さらわれたPちゃん 奪われたらんま」が誘拐を連想させるとして急遽放送内容を差し替え、後日放送予定だったアニメオリジナルエピソードの回を放送したが、その話の回想シーンにまだ未放送回のシーンがあったため、話がつながらない部分が発生する影響があった。また、この回は放送枠移動後に放送されたが、移動後の放送枠がローカルセールス枠であったことから一部の局では移動の際に打ち切られたため、再放送かソフト化まで見られない地域もあった。
日本のロックバンドARBの楽曲「MURDER GAME」の歌詞の内容が本事件に酷似しているとNHKから指摘があり[要出典]、放送禁止となった。また同楽曲の歌詞の内容は、テレビゲーム狂の男が遊び相手の子供を殺したというもので、宮崎の起こした事件の概要とは異なる。
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