著名な詰め碁書

 更新日/2022(平成31、5.1栄和改元/栄和4).2.11日

 (囲碁吉のショートメッセージ) 
 ここで、著名な「囲碁の古典書」を確認しておく。囲碁吉が思うに、プロとアマの差は要するにこういう「囲碁の古典書」に習熟しているかどうかにある。これに習熟するには幼少より日々鍛錬せねばならず、明治以来の近代教育制としての義務教育に時間を取られるのが惜しいほどの質を持っている。プロとは、曲がりなりにもこれを修行した者を云う。そのプロと、それを習わないアマの棋力の差が歴然とするのは当たり前である。こういう位置づけで「囲碁の古典書」を確認したい。願うらくは「囲碁の古典書」をネットで見られるようにすることであるが、例の偏狭式著作権理論に抵触して阻まれるのだろうか。

 2014.11.1日 囲碁吉拝


【囲碁の四古典】
 プロが修行の過程で必ず読む囲碁の四古典は次の通り。
玄々碁経  1347年に中国宋代の晏天章、厳徳甫により大成され元の至正7年(虞集)によって再編された詰碁の中の詰碁と云われる名著である。376題。古代の囲碁全書と見られるもので論説・定石・布石・詰碁を含んでいる。この本は囲碁の棋書にも影響している。(玄玄碁経
官子譜   玄玄碁経と並び称される中国の古典問題集。1690年に中国明の国手の(その時代の第一人者に与えられた称号)過百齢が集めた囲碁手筋を陶式玉によって編集・完成されたものである。玄玄碁経の問題も多数含まれるが、より広範な手筋を扱っている。原本は3巻で構成され、合計1478問(540+558+380) ある。 「官子」は盤上の侵分(ヨセ)を意味する。ここでは死活から攻め合いまで手どころの妙着を意味している。官子譜は石の死活、攻め合い、侵分(よせ)等の手筋を集大成しており、碁の手筋は遠い昔にほぼ解明されたのではないかと錯覚を起こさせるほどである。「実戦形を徹底的に集めた膨大な作品群だ。ありとあらゆる変化を網羅しており、碁の手筋は遠い昔にほぼ解明されたのではないか、と錯覚を起こさせるほどである」。(官子譜
発揚論  1713年に名人四世井上因碩が著した詰碁の本で不断桜(桜を絶やさないほどの名品の意味)とも呼ばれる。202題。形のシンプルさ、筋の鮮やかさ等、どこを取ってもすばらしさに満ちている。玄々碁経・官子譜のものも入っているが、殆どが因碩や当時の棋士たちのオリジナルな名品である。難解のものが多いのでアマチュアは鑑賞に止めるのが良いであろう。(発陽論
碁経衆妙  1811年に林家11世元美が著した書で、内容は全部詰碁で実戦に現れやすい基本的な死活の基本を集めている。520題。易しいのが特徴で玄々碁経・官子譜・発揚論の問題も易しく作り直して入っている。これらは200~650年も前の本であるが、死活・攻め合い・侵分等の手筋を殆ど含んでいる。プロは若い頃熟読しているので、これらの手筋は盤上に現れるのを見た瞬間に分かるという訳である。これがアマとの間に基本的かつ徹底的な差をつけている。これを完全にマスターすればプロ級になれるという(三堀将氏説)。(碁経衆妙

 2005.6.4日 2013.5.22日再編集 れんだいこ拝


【詰め碁名著その他】
 詰め碁名著その他は次の通り。
玄覧  1846(弘化3)年、12世井上節山因碩が赤星因徹(あかぼし いんてつ)の「棋譜玄覧」、「手談五十図」を1冊にして発行したものである。
活碁新評  1848年、江戸時代の名棋士岸本左一郎が遺した手筋教本。実戦から採られた130の筋と形が纏められている。秋山次郎監修「名著再び活碁新評」(日本棋院、2018/09/05初版)
死活妙機  1910年、秀哉名人が明治時代の「時事新報」に掲載された懸賞詰碁120題を増補訂正して一巻にまとめ「新案詰碁死活妙機」として刊行したものである。実戦形がそのまま出ているため相当のヨミが必要だ。深刻なヨミで一世を風靡した秀哉先生ならではの問題集。
呉清源(Go Seigen)  棋風と同様にキレがある作品が多い。実戦的で自然な形からヒネリのきいた結末に導く過程は上の二人と同様にセンスの良さを感じさせる。「呉清源の詰碁1,2」、「100万人の詰碁3」、「寿石不老」 (1995 誠文堂新光社)。
趙治勲  実戦形を網羅した名作。即戦力、という言葉がふさわしい本だ。これをマスターすれば、誰でもアマ高段者になれるかも。基本の大切さを教えてくれる。「基本死活事典上下2巻」。
橋本宇太郎  「西の詰碁の大家」と云われる。石を碁盤にパラパラと置くだけで詰碁ができあがったという伝説を持つ。コラムもひねりがきいており面白い。「風と刻・上 (1993 松籟社) 」、「風と刻・中 (1993 松籟社) 」、「風と刻・下 (1994 松籟社) 」、「100万人の詰碁2 」、「詰碁歳時記」等々。
加田克司(Kada Katsushi )  実戦的ではないが奇想天外な形を次々と世に送り出した功績は偉大だ。形も複雑なら難易度も激しく高い、答えを見ても分からない難問を連発している。マニア向け。「傑作詰碁1-8 」、「衆妙詰碁1-4 」。
前田陳爾  「詰碁の神様」と呼ばれたのはこの人だけである。鬼童丸と言われた怪腕の持ち主でユーモアのセンスも抜群だった。
石榑郁郎(Ishigure Ikuro)  前田陳爾の流れをくむ作風。形はすっきりしていて小粒ながらピリリと辛い。「基本詰碁123(1996 棋苑図書)」、「六段挑戦の詰碁」。
佐藤直男(Sato Sunao)  橋本宇太郎と加田克司の中間あたりの作風。 「さわやか詰碁 (1999 誠文堂新光社) 」、「佐藤詰め碁120題」。
張栩  傑作の数々。変化図も、そのまま問題になってしまうという奥の深さ。どこをとっても超一流の名に恥じない、すばらしい作品群だ。「張栩の詰碁」。
塚本惠一(Tsukamoto Keiichi )。  アマチュアでありながら詰碁作家として名を馳せる有名人。(参考:詰碁を楽しむ会) 「算月」 (1998 亘香通商/星雲社)。
 その他に次のものがある。瀬越憲作『詰碁辞典』 - 実戦形の詰碁集として究極。1000図を筋で分類。関山利一『傑作詰碁辞典』 - 難解なことで有名。加藤正夫『死活小辞典』。リファレンス的内容。江場弘樹『基本死活辞典』 - 実戦死活でハネ・ダメの有無に焦点を絞った。東野弘昭 Tono Hiroaki。岩田昇二 Iwata Shoji。

 2005.6.4日 2013.5.22日再編集 囲碁吉拝


 詰め碁ではないが、囲碁上達の好著として影山利郎氏の著作集がある。特に「素人(アマ)と玄人(プロ)」(日本棋院、2013.9.30日初版)が必読本である。著作は次の通り。

定石破りの裏表 1965
素人と玄人   1970
続素人と玄人 1971
影さんの置碁秘伝 1974
囲碁を始める人のために 1975
囲碁実力テスト 1976
影山囲碁教室 入門コース(ルールと基本技)
影山囲碁教室 基本コース(接触戦)箱痛
影山囲碁教室 基本コース【石の組み合わせ】
1977
碁の真髄1 
碁の真髄2 上達への助言
1978
新格言あらかると 別冊囲碁クラブ15
1978
親と子の囲碁教室 1979
囲碁親と子の定石教室 
囲碁親と子の布石教室 
囲碁親と子のテスト教室《実力判定つき》
囲碁親と子の手筋教室
1979
影さんの定石開眼 上下巻共署名入
影さんの定石開眼 上下巻揃
1979
囲碁への招待1 ルールと基本技
囲碁への招待2 基本技のレッスンⅠ
囲碁への招待3 基本技のレッスンⅡ
1980
必勝の手筋 初段に挑戦する囲碁シリーズ①
会心の一手 初段に挑戦する囲碁シリーズ②
置碁の戒め 初段に挑戦する囲碁シリーズ③
1980
影山囲碁教室 二間専科
影山囲碁教室 ケイマ専科
影山囲碁教室 大ケイマ専科 
影山囲碁教室 カド専科 
1981
影山囲碁教室 1 一間専科 1981
影山囲碁教室 2 二間専科 1981
影山囲碁教室 3 ケイマ専科 1981
影山囲碁教室 4 大ゲイマ専科 1981
影山囲碁教室 5 大々ゲイマ専科 1981
影山囲碁教室 6 ナラビ・コスミ専科 1981
影山囲碁教室 7 ツケ専科 1981
影山囲碁教室 8 ハネ専科 1981
影山囲碁教室 9 ノビ専科 1981
影山囲碁教室 10 カド専科 1981
1981
布石三大作戦―楽しく碁を打つために 1981.1
影山囲碁教室 (その1) (新・碁学読本) 1987.9
常識やぶり 影山囲碁教室〈その弐〉ケイマ専科・大ゲイマ専科の巻 (新・碁学読本) 1987.9
常識破り 影山囲碁教室〈その3〉大々ゲイマ専科・ナラビ・コスミ専科の巻 (新・碁学読本) 1988.1
常識やぶり 影山囲碁教室〈その4〉ツケ専科・ハネ専科の巻 (新・碁学読本) 1988.2
常識やぶり 影山囲碁教室〈その5〉ノビ専科・カド専科の巻 (新・碁学読本) 1988.2
アマの悪手ワースト10(NEW別冊囲碁クラブ゙ 13) 1987
影山囲碁教室1、一間・二間専科の巻
影山囲碁教室2、ケイマ専科/大ゲイマ専科の巻
影山囲碁教室3、大ゲイマ・ナラビ・コスミ専科
影山囲碁教室4、ツケ・ハネ専科の巻
影山囲碁教室5、ノビ・カド専科の巻
常識やぶり影山囲碁教室 全五巻揃
1987
布石の要点 (アマの碁ここが悪い) 1988.11
定石の前後 (アマの碁ここが悪い) 1988.12
打ち込み (アマの碁ここが悪い) 1989.2
烏鷺うろブックス コスミの戦法 1989
最新囲碁を始める人のために 1992
アマの碁ここが悪い ② 定石の前後 1992
アマの碁ここが悪い ①布石の要点 1993
アマの碁ここが悪い ③ 打ち込み 1993
決定版よくわかるやさしい囲碁入門 2002.11
10分で打てる碁 ( 2002.12
置碁の戒め―置石に自信をつけるために 2005.3




(私論.私見)