囲碁と将棋のトップ鼎談

 更新日/2018(平成30).11.12日

 (囲碁吉のショートメッセージ) 
 ここで、「囲碁と将棋のトップ鼎談」をものしておく。

 2017.3.22日 囲碁吉拝


【井山裕太&藤井聡太】
 2015.2.2日、週刊ポスト2015年2月13日号「羽生善治氏と井山裕太氏 将棋と囲碁の天才2人が8冠対談」。

 プロの勝負師の世界で全タイトルを独占することは卓越した技量を持っていたとしても至難の業だ。将棋では19年前に天才棋士・羽生善治(44)が25歳で史上初の7冠制覇を達成した(現在は4冠)。そしていま囲碁の世界にも新たな天才が出現した。井山裕太、25歳。一昨年は7大タイトルのうちの6冠を獲得。昨年は王座、天元を失って4冠に後退したものの、「史上初の7冠に最も近い棋士」と期待され、現在、囲碁界最高のタイトル棋聖戦の防衛戦の真っ最中だ。19歳違いの天才2人の「8冠対談」が週刊誌で初めて実現した。その一部を紹介しよう。

─羽生さんは15歳、井山さんは12歳でプロ入りした。天才棋士としてどんな育てられ方をしたんですか。
羽生  私は師匠(二上達也九段)に指してもらったのは入門のときと、新年に挨拶に行ったときに1回、そして公式対局の3回しかない。将棋も囲碁も、師匠から直接教わるという伝統はほとんどないが、井山さんは入段まで師匠の石井邦生九段に1000局も打ってもらった。珍しいケースでしょう。
井山  小学生になる前からネットを通じて打ってもらいました。師匠からは定石を覚えなさいとか、もう少し全体のバランスを考えてとか、一切いわれたことがないんです。もうとにかく、『打ちたいように打ちなさい』と。羽生:確かに、子供のセンスは一局対局しただけでわかる。手を選ぶときに、考えずに直感的にいい手を指せるかどうか。この世界で活躍するには個性や持って生まれた資質が必要なんじゃないかと思う。
井山  日本棋院の院生(プロ予備軍)時代、対戦した棋譜をつけて、わからないことは質問として師匠に郵送しました。毎回助言する師匠にしてみれば、大変な労力だったと思います。
─師匠は井山さんの7冠制覇を一番期待しているのでは。
井山  勝負はもちろんですが、いまはもっと強くなっていい碁を打ちたいという気持ちが強いですね。

◆羽生善治(はぶ・よしはる)/1970年、埼玉県生まれ。12歳で二上達也九段に弟子入りし、15歳で史上3人目の中学生プロに。デビュー以来、注目を集め19歳最年少で竜王位を獲得。1996年、25歳で将棋界初の全7冠制覇。昨年、史上最速・最年少の1300勝を達成し、現在は名人・王位・王座・棋聖の4冠。

◆井山裕太(いやま・ゆうた):1989年、大阪府生まれ。5歳でテレビゲームをきっかけに囲碁を始め、6歳から石井邦生九段に指導を受ける。中学入学と同時にプロ入りし、20歳で史上最年少名人の記録を更新。23歳で囲碁界初の6冠独占を成し遂げた。現在は棋聖・名人・本因坊・碁聖の4冠。

 撮影■藤岡雅樹、撮影協力■ホテル椿山荘東京「料亭錦水」、取材協力■作家・大崎善生、王真有子


【井山裕太&藤井聡太】
 2017.6.30日、週刊ダイヤモンド編集部藤井聡太が井山裕太に教えを請う、将棋と囲碁の若き天才が初対談」。
 中学生プロ将棋棋士である藤井聡太四段(14歳)は歴代最多連勝記録を30年ぶりに塗り替える1週間前の6月18日、大阪市内のホテルに向かった。この日の相手は囲碁界の国内最強棋士、井山裕太六冠(28歳)だ。異種格闘技で対局を挑んだわけではない。盤を挟まない対談である。偉大な先輩を出迎えるべく、30分前に対談会場入り。前日も対局したばかりだが、空いた時間はやっぱり将棋。スマートフォンで将棋を指していると、井山六冠も早々に現れた。両棋士とも忙しい日々だが、とりわけ藤井棋士はプロ1年目。連勝を続け日本中から注目を浴び、慣れない慌ただしさの最中にある。そんな時期だからこそ、今回の対談には意味があった。時間的な制約が増えた藤井四段は、高校進学をどうするかを迷っている。プロとなった以上、将棋界の8大タイトル戦(竜王、名人、叡王、王位、王座、棋王、王将、棋聖)での優勝という目標がある。12歳でプロ入りした井山六冠は、16歳4カ月で囲碁界史上最年少でのタイトル戦優勝、26歳で史上初の7大タイトル戦(棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段)同時制覇を成し遂げた。その生き様は道標となり得る。進学に対する決断、タイトルの獲得、防衛、失冠、奪回──。井山六冠は、自らが直面した葛藤や人生の決断を惜しむことなく明かした。藤井四段も呼応するように胸中を語った(対談司会はジャーナリストのタカ大丸氏)。
井山  将棋は四段からプロですけど囲碁は初段からで、私は中学入学と同時にプロデビュー。中学時代も囲碁でそれなりの成績は残せても、まだプロとしてやっていけるか不安が付きまとっていました。囲碁界では高校に行かない人が結構いて、大学まで出られる棋士はかなり少ない。だから高校進学せず囲碁に専念するという選択には全く迷いがなかった。せっかく自分の一番好きなことを職業にできて、この時期は今後の棋士生活にとって非常に大事な時期だから、ここは精いっぱい囲碁に専念して悔いのないようにやってみたいという思いが強かったです。
藤井  そうですね。学校に行くと時間的な制約がかなり増えますので、そういった点で高校進学については自分の中で迷う気持ちというのはあります。
井山  藤井さんの場合、もちろん勢いもあるでしょうが、ここまでくるのは実力がないと無理です。私の場合は、16歳のときに大会一回戦で当時の張栩名人と対戦して、戦う前の自分の状態は決して良くなかったのですが、それでも勝てた。勝つ前と後でそんなに棋力が上がるはずもないけれど、張栩名人に勝てたなら他の人にも勝てるだろうという変な自信が付いたのは大きかったですね。
藤井  自分は加藤一二三先生(九段。6月に引退)と対戦して勝つことができたのが大きかったかなと思います。勝負の上でメンタルも含めてすごく大きくて、デビュー戦で勝てたっていうことはすごく自信になりました。

 六冠は真っ白な色紙に「雅」と、藤井四段は「無極」と揮毫した。

 ――2時間に及ぶ対談後、井山六冠は真っ白な色紙に流麗な筆運びで「雅」と揮毫した。「勝敗はもちろん大事だが、そういうことだけではない棋士の思いを込めて」と井山六冠。次の手を決断するとき、無難に逃げずリスクを背負い、自分の最善を信じて「打ちたい手を打つ」という美学を貫く。


 藤井四段が振るったのは「無極」の2文字。果てがないこと。もっともっと成長したいし、成長する。自らに限界をつくらない覚悟を込めた。まだ筆さばきはたどたどしいが、一文字一文字を丁寧に書き上げた。棋士は経験を積んで将棋の実力を高めるとともに、書の腕も磨かれていくものだ。7月3日(月)発売の『週刊ダイヤモンド』7月8日号では、両棋士の初対談を全10ページで独占掲載した。リアルな棋士人生を語る端々に両者の志が現れた対談は、何かを成したいと望む者に大いなるヒントを与えてくれる。

 いやま・ゆうた/1989年生まれ。大阪府出身。国内最強とされる六冠の囲碁棋士(九段)。12歳でプロ入りし、史上最年少の16歳4カ月でタイトルを獲得。26歳で史上初の七冠同時制覇。
 ふじい・そうた/2002年生まれ。愛知県出身。16年に史上最年少14歳2カ月でプロ入りした将棋棋士(四段)。17年6月26日、公式戦無敗のまま連勝数で歴代単独1位となった。






(私論.私見)