場の次第、場の位考

 更新日/2022(平成31.5.1日栄和改元/栄和4).8.26日

 (囲碁吉のショートメッセージ)
 ここで、「囲碁吉の天下六段の道、場の次第、場の位考」を書きつけておく。

 2005.6.4日、2015.3.3日再編集 囲碁吉拝


【場の次第、場の位考】
 剣聖宮本武蔵の「五輪の書」の「火の巻」の一説「場の次第」
 「一緒に読もう『五輪書 火の巻 場の次第』」その他参照。
 「場の次第ということ、場の位を見分けるところ、場に於いて日を負うということあり。日を後ろになして構うるなり。もし所により日を後ろにすることならざる時は、右の脇に日を為すようにすべし。座敷にても明かりを後ろ右脇となすこと同然なり」。
 場の位を見分る所、場におゐて、日をおふと云事有。日をうしろになして搆る也。若、所により、日をうしろにする事 ならざる時ハ、右の脇へ日をなす様にすべし。座敷にても、あかりをうしろ、右わきとなす事、同前也。うしろの場つまらざる様に、左の場をくつろげ、右脇の場をつめて、搆へたき事也。よるにても、敵のミゆる所にてハ、火をうしろにおひ、あかりを右脇にする事、同前と心得て、搆べきもの也。敵を見おろすと云て、少も高き所に搆るやうに心得べし。座敷にてハ、上座を高き所と思ふべし。

 さて、戦になりて、敵を追まはす事、我左のかたへ追まハす心、難所を敵のうしろにさせ、何れにても難所へ追かくる事、肝要也。難所にて、敵に場をみせず、といひて、敵にかほをふらせず、油断なくせりつむる心也。座敷にても、敷居、鴨居、戸障子、椽など、又、柱などの方へ、おひつむるにも、場をみせずと云事、同前也。いづれも敵を追懸る方、足場のわろき所、又ハわきにかまひの有所、何れも場の徳を用て、場の勝を得と云心専にして、能々吟味し、鍛錬有べきもの也。
 ●現代語訳●

 戦いには、有利な場所を選ぶことが必要である。原則は、太陽を背負うこと、背負えない場面では、右脇に太陽がくるようにすべきである。座敷内でも、あかりを背にし、または、右脇にすること、同様である。自分の後方が、詰まらないようにし、左側のスペースを充分にとり、右脇の場を詰めて搆えるべきである。夜間でも、相手の見える場面では、火を背にし、または、あかりを右脇にすること、同様である。「相手を見下す」といって、少しでも高い所に搆えるように心得ること。座敷では、上座を高い所と思えばよい。

 さて、戦いとなって、相手を追い廻す場合は、自分の左側へ追い廻す感じで、難所が、相手の後にくるようにさせ、なんとしても不利な場所へ、追い込むことが、ポイントである。不利な場所(難所)では、「敵に場を見せず」といって、相手に 場所を確認させる余裕を与えずに、油断なく、追い詰めるということである。座敷でも、敷居・鴨居・戸障子・縁側など、また柱などの方へ追い詰める場合にも、「場を見せず」ということも、相手に余裕を与えないようにと 同様である。どんな戦の場面でも、相手を追い込む方向は、相手に不利な場所 足場の悪い所、または脇にさし障りのある所、いづれにしても、その場の優位性を利用して、場の勝ちを得ることが大切である。とても重要なことだから、しっかり身につけるべきである。
 ■場の次第という事

 場の位*を見分けるについて、その場において「日を負う」ということがある。(つまり)太陽を背後にして搆えるのである。もし、場所によって太陽を背にすることができないときは、右の脇の方に太陽がくるようにすべし。 座敷〔屋内〕でも、あかりを背にし、右脇にすること、前に同じである。後方の場が詰まらないようにし、左の場を広くとり、右脇の場を詰めて搆えるようにしたいものである。夜間でも、敵の見える所では、火を背にし、あかりを右脇にすること、前に同じと心得て、搆えるべきである。「敵を見下ろす」といって、少しでも高い所に搆えるように心得ること。座敷では、上座〔かみざ〕を高い所と思えばよい。

 さて、戦いになって、敵を追い廻す場合、自分の左の方へ追い廻す感じで、難所を敵の後にくるようにさせ、どんな場合でも難所へ追い込むことが肝要である。  難所では、「敵に場を見せず」といって、(それは)敵に顔を振らせず、油断なくせり詰めるという意味である。座敷でも、敷居・鴨居・戸障子・縁側など、また柱などの方へ追い詰める場合にも、「場を見せず」ということ、前に同じである。  どんな場合でも、敵を追い込む方向は、足場の悪い所、または脇にさし障りのある所、いづれにしても、その場の徳〔得、優位〕を利用して、場の勝ちを得るという心を専〔せん、第一〕にして、よくよく吟味し、鍛練あるべきものである。
 場の立ち位置を見分けるのに、場において日を負うということがある。日を後ろにして構えるのである。もし所により日を後ろにすることができぬときは、右の脇へ日が来るようにすべし。座敷においても灯を後ろ右脇にすること、前に同じである。後ろの場が窮屈にならぬように左の場を寛げ、右の脇の場を詰めて構えたいものである。夜でも敵の見える所では、火を後ろに負い、明かりを右脇にすること、前に同じと心得て構えるべきものである。敵を見下ろすといって、少しでも高い所に構えるように心得るべし。座敷においては、上座を高い所と思うべし。

 さて戦になって敵を追い回す場合、己の左の方へ追い回す感じで難所を敵の後ろにさせ、いずれにおいても難所へ追いかけることが肝要である。難所は敵に場を見せず、といって、敵に顔を振らせず、油断なく攻め詰める感覚である。座敷においても、敷居、鴨居、戸、障子、縁側など、また柱などの方へ追い詰めるにも場を見せずということは前と同じである。いずれも、敵を追いかける方向は、足場の悪い所、または脇に障害物のある所、いずれも場の徳すなわち優位性を用いて場の勝ちを得るという手法を専一にして、よくよく吟味し鍛錬あるべきものである。

 2022.8.26日 囲碁吉拝










(私論.私見)