日米軍事同盟の新段階考

 小泉政権以来、日米軍事同盟がますます強化されつつあり、急ピッチで新局面が「創造」されつつある。一体、小泉首相は如何なる政治哲学で持ってこれを押し進めようとしているのだろうか。大方の善意の勘繰りにも拘らず、識見などは無く、「米英ユ同盟の言いなり首相」なのではなかろうか。我が国の「議会制民主主義」はこれに為す術も無く追認機関へと堕している。戦後は戦前と違って、曲がりなりにも言論、集会、結社の自由が認められ、反体制的左派政党と雖も公然活動が認められているというのにこのテイタラクだ。要するに、日本は漂流し始めており貧相な国になり始めている。

 もはや我が国は本来の意味での主権国家の態を為していない。れんだいこは、これは偶然そうなったのではなく、ここ三十年来このように仕掛けられ、左右両翼がこれに相和して推進した結果である、と見ている。あの、危険極まりない、本当のところ最終のところでソロバンはじくと採算も定かでない原子力発電の妙な形での推進もそうだ。賢明なる西欧諸国は逸早く脱原発しているというのに、我が国では日本列島各地に敷設され安全性を自賛しては事故に見舞われている。この多発地震国家に大丈夫なのかよ。誰も責任を持って問おうとしていない。原発利権組合の意のままに操られている。

 今年は、新潟を始め全国各地に地震被害が発生した。被害対策に財源不足が露呈しつつあり、施策が後手後手に廻っているというのに、数兆円規模のミサイル防衛網敷設計画は着々と進行しつつある。この不自然さに誰も異を唱えない。小泉政権の下、自衛隊が異常に米軍と一蓮托生的「深入り」を強制されつつある。明らかに憲法違反であり、「高度な政治判断」としての許容枠を超えているというのに誰も掣肘し得ない。

 今の日本は、ブッシュご一統ネオコン派が誇るだけのことがある。小泉政権の登場とその施策を見て、日本の馴致化が完成したことを確認している。彼らからすれば、第二次世界大戦の勝利がもたらした果実であり、50年経って完璧に手なづけたことを意味する。イラク戦争もこの論理で貫徹されようとしている。レジスタンス掃討後に、数十年経過すれば、親米英ユ連合政権が登場することを確信し、日本を見よ、と説いている。これを心ある日本人民大衆の見地から見れば、戦争で負けるということは要するにそういうことである、ということになろう。

 この局面で、れんだいこは、以下のことをどうしても発信せざるを得ない。

 れんだいこの見るところ、ソ連邦の解体も軍事的重圧にヤラレタ。そういう反省もあって、世界の歴史的な流れは軍縮にある。戦後憲法による非武装平和国家宣言はむしろ時代の先取りとして垂訓されており、それは大いに評価されるべき原理原則であった。そのお陰で戦後日本は、財源を民生経済の活性化に傾注することができた。社会基盤整備の公共事業が強力に推進された結果、日本は実に国力を伸ばし、いつの間にか世界各地に経済援助できる地位にまで発展した。それは、戦後保守本流を形成したハト派政策の英明な舵取りに負っている。あぁ池田−角栄−大平が懐かしい。

 そのことがはっきりしつつある今、小泉政権は、ハト派政策の遺産のことごとくを解体しつつある。小泉政権はなぜこれほど逆行政治に勤しむのか。尋常では考えられない。そういう風に仕向ける勢力が居り、これに呼応する連中の後押しで、小泉ご一統が権力を乱用していると考える以外に理解できない。

 日本はますます軍事愛好国家に染色されつつあるが、当の米国は、世界の軍縮の流れを読み取り、ソフトランディングで移行しようとしている。「世界の憲兵」たる米国は今、世界各地の基地及び兵力の再編に着手している。現役兵力(現在141万人)は既に第二次世界大戦後最低員数であり、今後更に在ドイツ米軍7万人を2分の1に、在韓米軍3万7千人を3分の1への削減を検討している。

 米国は今、小泉首相を政権トップに戴く日本を絶好機会とみなし、上手く利用し、バックターンの利かない形で楔を打ち込もうとしている。日本は今、米国の世界軍事支配戦略にますます組み込まれようとしている。まさに「軍事的肩代わり」に向けて急ピッチで編成替えが推進されつつある。バルカン−中近東−湾岸−南アジア−東南アジア−北東アジアに至る「不安定の弧」地域の治安対策として、日本を戦略的拠点として位置づけ、「活用」しようとしている。

 この戦略が明らかになりつつあるにも拘らず、既成の与野党から「ちょっと待った」の声が出てこない。口で云えば云ったというそのことで責任果たし顔する万年正義党がこれを裏から支えている。そういうアリバイ的反対は何の役にも立たず、却って悪質だろうに。

 何と!米国西海岸ワシントン州フォートルイスの陸軍第一軍団司令部が座間基地、横田基地に移転されようとしている。2003.11月、ハワイで開かれた外務・防衛当局の審議官級による日米安保事務レベル協議(ミニSSC)の席上で、米側から打診されたとのことである。現在日米間で調整が続いている。この場合、「調整」とは段取りの調整であって、「ノンと云える日本」になって折衝している訳ではない。

 沖縄の基地縮小化の世論を逆手に取り、沖縄から本土への機能移転という名目で、本土の基地機能が強化拡充されようとしている。米軍指揮下への自衛隊の組み込み、それによる基地・施設の共同使用、合同演習、その果ての近未来に自衛隊の実戦部隊としての海外派兵が目論まれている。現在、日米合同の市街戦訓練が演習されていることがこれを裏付けている。

 既に法的整備としては、1996.4月に日米両国が共同宣言で日米同盟を再定義して以来、防衛協力ガイドライン、日米特別行動委員会(SACO)、周辺事態法、有事法制、日米物品相互提供協定(ACSA)改正を手がけてきた。いよいよ最終コースとしてあまりにも目障りな憲法改正に着手せねばならない。これが我が国に敷かれたロードマップである。

 拡声器で憲法改正を声高に唱えてきた諸君、君らの憲法改正論は何のことは無い、米英ユ同盟の指図の受け売りでしかないことが、判明しつつある。何たる非道の愛国者め。

 世の識者は、この流れを、「日本の防衛能力の向上であり危機管理能力の強化である」と嘯いている。こういう提灯族は生涯そういう語りをし続けるのだろう。我が日本の政・官・財・学界のトップはこういう手合いに占拠されている。彼らはマスコミに頻繁に登場し害悪を垂れ流している。御用聞きスタイルのマスコミがそのように後押ししている。こういう手合いが権力を握り、栄耀栄華を極め始めた時代だということを確認せねばなるまい。

 それがなぜ良くないことなのか、いわずもがなのことであるがコメントしておく。一つは、日本の国家予算がますます軍事費調達に向けられ、我々は泣かされることになるということ。戦前もそうだった。その反省から始めた戦後の健全財務体制は遂に戦前並みに先祖帰りした。二つは、米軍中枢を日本に呼び込むことにより、いよいよ日本がゲリラのテロ標的にされるだろうということ。日本をそのような紛争地域にさせたいという仕掛けに意図的に誘われつつあるように思われる。このままいけばいずれ、世界から恨みを買う日本になるであろう。三つに、戦後営々と築いてきた国家的国民的富がますます外資の手に落ちるだろうということ。しなくても良い民営化により、国家が集中管理しておくべき分野の中枢機能がズタズタにされつつある。その窮乏の道へひた走りつつある。四つ目に、神風は何度も吹かない。今度ヤラレタら我が民族は再起不能の損傷を負い、現代米国におけるインディアンのように歴史的文化的遺制として囲い地にのみ棲息するという事態さえ予見される。れんだいこはそれほど危惧している。それはあまりにも無残、ご先祖様に申し訳ないと思う故に発信する次第である。

 2004.12.3日 れんだいこ拝





(私論.私見)