短歌その2

 更新日/2022(平成31.5.1栄和改元/栄和4)年.3.20日



【明治天皇】
 よもの海 皆はらからと 思ふ世に 
 など波風の たちさわぐらむ

【樋口一葉()の歌】
 あるじなき 垣ねまもりて 故郷の
 庭に咲きたる 花菫かな
樋口一葉和歌集
 あらたまの 年の若水 くむ今朝は
 そぞろにものの 嬉しかりけり
樋口一葉和歌集

【正岡子規()の歌】
季節  瓶にさす 藤の花ぶさ みじかければ
 たゝみの上に とゞかざりけり
竹の里歌
 いちはつの 花咲き出でて 我目には
 今年ばかりの 春いかんとす
竹乃里歌
 くれなゐの 二尺伸びたる 薔薇の芽の
 針やはらかに 春雨のふる
竹の里歌
 足たたば 北インヂヤの ヒマラヤの
 エヴェレストなる 雪くはましを 
竹乃里歌

北原白秋()の歌】
君かへす 朝の舗石 さくさくと
雪よ林檎の 香のごとくふれ
桐の花

木下利玄()の歌】
季節  牡丹花は 咲き定まりて 静かなり
 花の占めたる 位置のたしかさ
一路

佐佐木信綱()の歌】
季節  ゆく秋の 大和の国の 薬師寺の
 塔の上なる 一ひらの雲 
新月

島木赤彦()の歌】
季節  みづうみの 氷は解けて なほ寒し
 三日月の影 波にうつろふ
太虚集
 夕焼け空 焦げきわみれる 下にして
 氷らんとする 湖の静けさ
切火
 生まれ出でて 命短し みづうみの
 水にうつろふ 蛍の光
出典不明

【斎藤茂吉()の歌】
 あはれあはれ ここは肥前の 長崎か
 唐寺の甍に ふる寒き雨 
あらたま
 枇杷の花 冬木のさなかに にほえるを
 この世のものと 今こそは見め
齋藤茂吉歌集
 みちのくの 母のいのちを 一目見ん
 一目見んとぞ ただにいそげる
赤光
 最上川 逆白波の たつまでに
 ふぶくゆふべと なりにけるかも
白き山

【若山牧水()の歌】
 白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の
 酒はしづかに 飲むべかりけれ
路上
 白鳥は かなしからずや 空の青
 海のあをにも 染まずただよふ
若山牧水歌集
 幾山河 超えさり行かば 寂しさの
 はてなむ国ぞ 今日も旅行く
若山牧水歌集

与謝野晶子()の歌】
心境  その子二十 櫛にながるる 黒髪の
 おごりの春の うつくしきかな 
みだれ髪
 やわ肌の 熱き血潮に 触れもせで
 淋しからずや 道を説く君
みだれ髪
 海恋し 潮の遠鳴り 数えては
 少女となりし 父母の家
みだれ髪

【石川啄木()の歌】
心境  東海の 小島の磯の 白砂に
 われ泣きぬれて 蟹とたはむる
一握の砂
 働けど働けど 我が暮らし 
 楽にならざり じっと手を見る
 たはむれに 母を背負いて そのあまり
 軽きに泣きて 三歩進まず
一握の砂
 いのちなき 砂のかなしさよ さらさらと
 握れば指の あひだより落つ 
一握の砂

【太田垣蓮月()の歌】
 野に山に 浮かれ浮かれて 帰るさを
 閨まで送る 秋の夜の月
海人の刈藻

【吉井勇()の歌】
 かにかくに 祇園はこひし 寐るときも
 枕の下を 水のながるる 
酒ほがひ

【俵万智()の歌】
 「この味がいいね」と 君が言ったから
 七月六日は サラダ記念日
サラダ記念日早春歌
 「寒いね」と 話しかければ 「寒いね」と
 答える人の いるあたたかさ 
サラダ記念日早春歌
 思い出の 一つのようで そのままに
 しておく麦わら 帽子のへこみ
サラダ記念日早春歌

【山川登美子()の歌】
 それとなく 紅き花みな 友にゆづり
 そむきて泣きて 忘れな草つむ

  





(私論.私見)