51年ぶりに地下潜伏活動をやめた理由 |
田原 |
60年安保闘争の当時、僕は岩波映画の社員でしたが、毎日デモに参加して「安保反対! 岸(信介)辞めろ!」とやっていました。本多延嘉さんとも会ったことがあります(革共同書記長/1975年3月、革マル派から襲撃を受けて殺害された)。 |
清水 |
そうでしたか。田原さんは本多さんと年齢が近いんじゃないですか。 |
田原 |
同じ1934年生まれです。本多さんは道半ばで殺されたが、清水さんは革命家として今日まで生き抜きました。それにしても、51年間も地下に潜って運動を続けるとはすごいことですよ。 |
清水 |
いやいや、そんなことはないです。 |
田原 |
1969年から50年以上にわたって、公安当局も新聞記者も、清水さんの姿は誰も見たことがありませんでした。完全なる潜伏活動を経て、実に51年ぶりに清水さんが表に出てきたのは2020年9月のことです(革共同政治集会〈荒川区〉に姿を見せた)。この間、一人で地下に潜って論文を書き続けてきたのか。あるいはどなたか支援者と一緒に共同生活していたんですか。 |
清水 |
その質問には答えられません。 |
田原 |
50年以上にわたる潜行活動を経て、なんでこのたび公然化しようと決めたんですか。 |
清水 |
一言で言えば、情勢が大きく変わってきたからです。 |
田原 |
どういうこと? |
清水 |
2022年2月24日、ウクライナ戦争が勃発しました。ああいうことが起きる不安定な情勢へと、この20、30年の世界は急速に変わってきたのです。 |
田原 |
地下潜行している間、何を目指して活動されてきたんですか。 |
清水 |
革命ですよ。プロレタリア革命です。 |
田原 |
革命といったって、相手は革マル派でしょ。 |
清水 |
いやいや、全然違います。 |
田原 |
清水さんはもともと日本共産党で活動していました。東大生だった1958年12月、島成郎や香山健一、北小路敏らと一緒に第一次ブント(共産主義者同盟)に参加します。そもそもこの目的は何だったんですか。 |
清水 |
日本共産党が、本来進むべき共産主義の道からそれてしまったからです。 |
田原 |
60年安保闘争の当時は、共産党と学生の距離がそんなに離れていなかったと思います。清水さんは共産党のどこが気に入らなかった? |
清水 |
自国の政府、帝国主義とちゃんと闘おうとしない。彼らは逃げていました。 |
田原 |
共産党には戦う気持ちがない。 |
清水 |
まるでない。共産党のもとで運動なんかしていたって、革命なんて絶対成功しないと思ったのです。今も共産党をはじめとする野党は、与党がやることに口先で反対しているだけで、現実的に政治を動かしていないでしょう。彼らは今も昔も本気で闘う気がない。遊戯のようにただ人を集めるだけのカンパニア(※ロシア語で「大衆闘争」という意味)をやっているだけなのです。 |
革マル派の存在はすでに過去形だ |
田原 |
日本共産党と袂を分かってブントを結成したあと、そのブントは崩壊し、清水さんは革共同(革命的共産主義者同盟)に加わります。その後革共同は、中核派と革マル派に分裂する(62年2月)。中核派と革マル派はどこが違うんですか。
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清水 |
カクマルは大衆運動を進める論理をもっていません。彼らがやっていることは、黒田寛一(革マル派議長。2006年死去)のイズムを広げていく運動でしかない。かたや中核派は、反帝国主義・反スターリン主義という世界革命の綱領をちゃんと確立しています。 日本社会党や日本共産党に代わる本当の労働者の党を、日本につくらなければいけません。中核派はそのための組織論ももっています。 |
田原 |
社会党や共産党は労働者の党じゃないんですか。 |
清水 |
現実に何もやっていない。 |
田原 |
だって日本の労働組合は、ほとんどが社会党系か共産党系じゃない。連合(日本労働組合総連合会)は最近、反共産党だけどね。 |
清水 |
一部を除いて、今の労働組合はほとんど無力化しちゃっています。彼らは労働者のために闘えないんですよ。 |
田原 |
なんで戦えない? |
清水 |
今は資本主義が危機に陥っています。恐慌によって資本主義はメタメタになり、コロナの問題まで覆いかぶさりました。こういう状況で、社会党や共産党に闘う力なんて全然ありません。 |
田原 |
あなたたちは革マル派と手を組んで一緒に自民党をぶっ潰すべきなのに、なんで革マル派とケンカしてるんだよ。権力はありがたい限りだよね。自民党は大喜びだ。公安警察なんか大バンザイだよ。敵は革マル派じゃない。本当の敵は自民党のはずじゃないですか。 |
清水 |
そうです。だから我々はちゃんと闘っていますよ。 |
田原 |
何もやってないじゃない。 |
清水 |
何もやってない? 田原さん、その言い方は冗談じゃないですよ。 |
田原 |
中核派は、革マル派と仲良くして自民党をぶっ潰すべきじゃないですか。 |
清水 |
カクマルは反政府運動を進めると標榜してはいますが、いまは分裂して無力化しています。彼らは権力と闘う論理をもっていません。かつての彼らの目的は、権力と一体となって、中核派をつぶすことでしかなかったのです。 |
田原 |
中核派をぶっ潰しておかなければ、自分たちがぶっ潰されるという恐怖心をもったんじゃないですか。 |
清水 |
我々はカクマルに対して組織的に反撃を続け、徹底的に闘って勝った。その後、我々の運動はどんどん前進しています。我々にとって、カクマルの存在はすでに過去形です。今の我々は、彼らの存在なんてとっくに乗り越えて次の段階に進んでいます。 |
連合赤軍事件と赤軍派のハイジャック事件 |
田原 |
連合赤軍の連中は、「総括」という名のもとで仲間たちを12人も殺しました。あの連合赤軍について、清水さんはどうとらえていますか。 |
清水 |
1950年代末からの運動の中で、弾き飛ばされたごく少数の人たちが連合赤軍事件を引き起こした。そういう認識です。 |
田原 |
なんで弾き飛ばされたんですか。 |
清水 |
大衆運動をきちんと組織することができない。革命運動についていけない。だから自分から吹っ飛んでいってしまったのです。 |
田原 |
つまり中核派から見れば、連合赤軍の連中は怠け者ということですか。 |
清水 |
ええ、怠け者です。武力だとか銃だとか爆弾といった道具を使って、自分たちの特徴を必死で表そうとした。自分たちが左翼だということを自己確認し、外部に示すために、銃だの爆弾だのと没頭していったのです。彼らの亜流である赤軍派の連中は、航空機を乗っ取る事件も引き起こしました。 |
田原 |
1970年3月の「よど号」ハイジャック事件ですね。 |
清水 |
「連合赤軍事件や赤軍派の暴走が新左翼運動の終末を表す」なんて言う人がいるが、とんでもない。我々に言わせれば、彼らがやったことなんて我々の革命運動には全然影響していません。ごく少数の人たちが引き起こした特殊な運動のせいで、我々の運動が誤解されてはたまったもんじゃない。 |
田原 |
「総括」の名のもとで、12人もの仲間をリンチ殺人した事実は日本中に衝撃を与えました。連合赤軍事件によって革命は幻滅へと変わり、全国の学生運動はほとんど解体していきます。なんで中核派と革マル派は、あの事件に影響されることなく今も活動を続けているのですか。 |
清水 |
カクマルはどうか知りませんけど、少なくとも我々はあの事件からは全然影響を受けていません。組織で運動できなくなって弾き飛ばされて、勝手に自己運動している。彼らの存在は、左翼から必然的に生み出されるものでは絶対ありません。 |
田原 |
つまり、本来の革命路線から弾き飛ばされた亜流が、連合赤軍であり赤軍派だったというわけですか。 |
今はカクマルなんか殺してないですよ |
田原 |
バイデン大統領はやることなすこと無為無策で、ウクライナ戦争をまったく止められなかった。今アメリカでは、トランプが盛んにバイデン批判をしています。このままいくと、2022年秋の中間選挙でバイデンの民主党がトランプの共和党に負けるかもしれません。ただ負けるだけでなく大敗すれば、2024年11月の大統領選挙でトランプが再選される可能性もあります。 |
清水 |
そうですね。そうなるかもしれない。だからバイデンはさしあたり、ある程度トランプ的なことをやるでしょう。 |
田原 |
バイデンもプーチンも狂っている。日本はどうすればいいですか。 |
清水 |
その点ははっきりしています。帝国主義を打倒し、スターリン主義を打倒するしかありません |
田原 |
帝国主義って何? |
清水 |
帝国主義は、資本主義の最後の発展段階です。今の日本やアメリカは、帝国主義段階にあるわけです。独占資本の支配のもとで経済的な発展を続け、軍事的には対外的な侵略を繰り返す。 |
田原 |
日本は侵略なんてしてないじゃない。 |
清水 |
そんなことないですよ。日米同盟のもとで、日本はアメリカの侵略に同調しています。 |
田原 |
今やトマ・ピケティをはじめ世界中の有名な経済学者たちが「資本主義は行き詰まりだ」と言ってるんだよ。だから清水さんたちにチャンスが訪れているのかもしれない。ポスト資本主義の時代をどうする? |
清水 |
簡単です。資本主義を倒すんですよ。 |
田原 |
どうやって倒すの? |
清水 |
革命ですよ。プロレタリア革命です。暴力革命です。 |
田原 |
だったらあなたたちは、内閣総理大臣や防衛大臣、自民党の幹事長を×××なきゃ駄目だよ。 |
清水 |
そんな……。 |
田原 |
革マル派なんか殺したって意味ないよ。 |
清水 |
今はカクマルなんか殺してないですよ。 |
田原 |
あなたたちがねらうべきは、総理大臣であり防衛大臣であり自民党幹事長ではないか? |
清水 |
まいったなあ。あまりにも議論にならないな。労働者階級が革命で勝利して、資本家の財産と生産手段を没収する。労働者階級が財産と生産手段を社会的に共有して、生産体制を組織するのです。我々が言うプロレタリア革命、暴力革命は、田原さんが言うような単純な話じゃない。今の資本主義を倒して、社会主義体制を樹立する。このプロレタリア革命、暴力革命を推進するしかないんですよ。(2022年3月13日、前進社本部で収録) 記事後編につづく |
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