ロシアのウクライナ軍事侵略弾劾! 全世界の人民は反戦闘争に起て!(2022.2.27日)

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 2022.12.23日 れんだいこ拝


 「 ロシアのウクライナ軍事侵略弾劾! 全世界の人民は反戦闘争に起て!(2022.2.27日)」。
 ロシアのウクライナ軍事侵略弾劾!
 全世界の人民は反戦闘争に起て!
 ロシアの労働者人民はプーチン政権を打倒せよ

 二〇二二年二月二十七日 日本革命的共産主義者同盟・革マル派
 (1)
 二月二十四日、戦争狂の大統領プーチンの号令一下、ロシア軍はウクライナ全土への全面的な軍事侵略を開始した。プーチンは、ウクライナ東部のドネツクおよびルガンスクの武装勢力をモスクワに呼びつけ、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認するとともに(二月二十一日)、この二つの「国」の要請を受けたと称して、一挙にウクライナへの軍事侵略の挙に出たのだ。ロシア軍は、ウクライナの軍事施設と飛行場をミサイルとサイバー攻撃などで破壊しつくすとともに、ロシア本土・ベラルーシ・クリミア半島の三方向からなだれこんだ。そしてチェルノブイリ原発を制圧するとともに、首都キエフを陥落させようとしている。ウクライナ人民への威嚇のために、わざと市民の住む集合住宅にもミサイルを撃ち込んでいる。プーチンはうそぶく――「ウクライナを非軍事化し非ナチス化する」と。プーチンの野望が、ウクライナ全土を軍事制圧し現政権の斬首作戦を強行し、傀儡政権をでっちあげることにあることは、明らかなのだ。これにたいしてウクライナの大統領ゼレンスキーは、「いまウクライナで起きていることは欧州でも起きることだ」「それなのに世界の強国は誰も助けてくれない」と悲痛な叫びをあげながら「徹底抗戦」を呼びかけ、国民総動員令を下して十八歳から六十歳までの男性すべての出国を禁じ戦闘に動員しつつある。プーチンの放った戦争放火によって、ウクライナの人民は血の海に沈められようとしているのだ。
 (2)
 こうしたなかで、ロシアの「NATOの不拡大」の要求を無視するとともに「アメリカはウクライナに軍隊を派遣することは検討していない」(昨二〇二一年十二月七日の米露首脳会談の翌日)と早ばやと言明したのが、アメリカ帝国主義の大統領バイデンであった。そうすることによって、かつての「一超」帝国アメリカは――わが同盟が一貫して暴露してきたように――すさまじい凋落ぶりをまたもやみずから白日のもとにさらけだしたのだ。ちなみに、そもそもエネルギー自給率が七パーセント以下でしかないがゆえに、現出した「ウクライナ危機」に驚愕し、ただただ「国際秩序を壊す試みには国際協調で……」とくりかえすことしかできないのが、日本の岸田政権である。

 他方、すでにプーチンが「ソ連邦の解体とNATOの東方拡大は二十世紀最大の地政学的惨事」との主張を再三くりかえしてきたにもかかわらず――「社会主義ソ連邦」の崩壊以後、「経済の民主化」は「政治の民主化」に必ずつながるという妄信に酔いしれてきたことのゆえに――その意図を察することもできなかったのが、欧州の権力者どもであった。このゆえに欧州の権力者どもは、「現代のヒトラー」プーチンが強行した侵略戦争に顔面蒼白とならざるをえなかったのだ。

 この米欧日の権力者どもは――ウクライナに一定の武器を供与するとともに――ウクライナをロシアのもとに事実上組みこむというプーチンの野望が誰の目にも赤裸々となってはじめて、国際的な銀行間の決済ネットワークであるSWIFT(世界の一万一〇〇〇以上の金融機関が利用し決済額は一日あたり五七五兆円にのぼる)からロシアの一定の銀行を締め出すことに踏みきった(二月二十七日)。

 SWIFTからのロシアの銀行・企業の締め出しは、エネルギーの供給をロシアからの輸入に頼ってきた欧州をはじめとする国々も返り血を浴びざるをえない。けれども、「ウクライナがNATOに加盟すれば、クリミアの帰属をめぐってロシアはNATOと戦争することになる。このことが分かっているのか」「ロシアは今も最強の核保有国だ。われわれを直接攻撃するものは壊滅し、悲惨な結果に遭うことは明白だ」と凄むプーチンの前に、米欧日の権力者たちは、こうした経済制裁に踏みだすことしかできないのである。

 こうしたなかで習近平の中国は、「ウクライナ問題は複雑で特殊な歴史的経緯があり、安全保障問題におけるロシアの懸念も理解する」(外相・王毅)、「制裁は問題解決のための有効な手段ではない」(中国外務省)などとうそぶき、国連でのロシア非難の決議にも棄権したのであった。ロシアと中国とは、明らかにロシアのウクライナ侵攻について腹合わせしているのだ。
 (3)
 親欧米政権と親露政権とのあいだを揺れ動いてきたウクライナをロシアに併呑しようとするプーチンを突き動かしているもの――それは、まず第一に、大ロシア主義である。ロシア=大ロシア、ウクライナ=小ロシア、ベラルーシ=白ロシアの三つを一つの単一の民族とみなすこの大国ナショナリズムの貫徹が、ウクライナの武力による併合なのである。第二には、「亡国ロシア」の経済を立て直すためには、肥沃な穀倉地帯を抱えるとともに欧米資本のバックアップにより工業が盛んな大国ウクライナをロシアに組みこむことが必要だからである。現在のロシアは――後に触れるように――FSB強権型支配体制のもとでの歪んだ国家資本主義のゆえに、擬似資本主義というしかない経済的破局の危機にさらされている。ロシアの輸出は、石油(産出量世界第三位)と天然ガス(同第二位)が七割を占め、あとは武器と小麦くらいしかなく、その経済は一九九九年以降の石油高によって辛くもなりたっているだけなのである。
 そしてこのことは、旧ソ連邦においては、産業構造が共和国別・地方別に分断されていたことに淵源している。第三に、このゆえにソ連邦崩壊の直後から、ロシアはかつてのソ連邦構成諸国にロシアとの経済関係を密にすることを迫ってきた。しかしこれを押しつければ押しつけるほどに、その民族主義的・分離主義的遠心力を助長することとなった。こうした事態を打開するためにその後ロシアの国家権力がおこなったことは、かつてソ連邦を構成した諸国にたいする、非ロシア人を支配するためのロシア人の移住政策であった。まさしく大ロシア主義の実行である。このゆえに旧ソ連邦内のあちこちで、ロシア人と非ロシア人とのあいだの民族紛争が激発した。そしてロシア政府は、まさにスターリン主義ソ連邦の時代と同様のやり口――軍事力をバックに傀儡政権をでっちあげたり、領土を分割してロシアの版図に組み入れたりする、というそれ――をもって、大ロシア主義に反対する人民の抵抗を圧殺してきたのだ。
 (4)
 プーチンは言う――「レーニンとその仲間(ボリシェビキ)は歴史的にロシアの土地であるものを分離し切断した」「(一九二二年、スターリンは、自治の原則にもとづいて国を建設することを提案したが)レーニンはこの計画を批判し、民族主義者に譲歩することを提案した」「なぜ民族主義者をなだめる必要があったのか」と。だがこのレーニンへの悪罵こそは、プーチンという人物がまさしくロシア皇帝気取りの俗物でしかないことを、自己暴露したものといわなければならない。

 言うまでもなく民族問題についてマルクス主義者は、「分離ののちに連邦制」、「他民族を抑圧する民族は自由ではありえない」というマルクス・エンゲルスの伝統を引き継ぎ、社会主義への過渡期におけるプロレタリアート独裁の国家は、(結合のための)分離をもふくむ民族の自決権をみとめると同時に、民族のちがいをこえた労働者階級の国際的なつながりに立脚しなければならない。このゆえにレーニンは、連邦の名称を「ヨーロッパ・アジア・ソビエト共和国同盟」とすること、同盟議長は各共和国から輪番で選ぶこと、共和国の同盟からの離脱の自由を保障すること、の三つを主張し、絶対に譲ろうとはしなかったのであった。

 ところがスターリンは、ウクライナ・ベラルーシはもとより、カフカス諸国をもロシア連邦共和国に統合しようとしたのであった。そして共和国・自治共和国・自治州・自治区などに序列化し、官僚主義的中央集権体制を敷いたのであった。脳卒中でたおれ半身不随になりながらもレーニンはスターリンとたたかい、まさにこの問題でスターリンを書記長から解任せよという遺言を残したのである。

 にもかかわらず、「ウクライナが増長するのはレーニンのせいだ」と喚くプーチン。東ドイツでKGBの任につき「ベルリンの壁崩壊」をその目で見ていたプーチンとは、スターリニストとしての罪深い過去など心の片隅にもない・およそ思想とは無縁な・まさしく皇帝気取りの小スターリンでしかないのである。ロシアの労働者人民よ! 今こそ戦争狂のプーチン政権を打倒せよ!

 ソ連邦の解体以後のロシアは、資本主義の復活を策したエリツィンのもとで、インフレの三十倍にものぼるハイパー化、失業者の増大、諸物資の極端な偏在と物流構造の崩壊、経済マフィアの横行、そして物々交換経済へと、まさに「亡国ロシア」の悲惨を露わにした。そしてエリツィンから権力の座を譲り受けたプーチンがやったことは、モスクワのビルを爆破するという謀略を五回にわたって強行し・「チェチェンのテロ」という濡れ衣を着せてチェチェンの人民を血の海に沈めたことである。また、ユーコスという欧米資本のバックアップを受けた最大の民間石油会社のトップを脱税容疑で投獄し、会社そのものをのっとったことである。さらに「シロビキ」と呼ばれた元情報機関員や軍人や治安機関員や縁故ある者を、石油会社をはじめとする国営企業に送りこみ国有財産を簒奪し、また放送局や新聞社に送りこんだ。こうしてプーチンはFSB強権型の支配体制を固めたのだ。

 ロシアの労働者人民よ! プーチンを頭とするFSB強権型支配体制を打ち倒すことなしには、ロシアに未来はない。「悲惨なロシア」から復活する道は、二十世紀後半の世界を手玉にとったスターリンとその末裔の時代への郷愁と回帰にあるのでは決してない。まさしくスターリン主義のエセ・マルクス主義としての虚偽性に今こそ目覚め、全世界の労働者階級に希望と勇気と理想を与えたあのレーニン率いるロシア革命の時代をこの暗黒の二十一世紀に再び蘇らせることにこそあるのだ。

 そして侵略軍にたいするレジスタンスを果敢にたたかうウクライナの労働者人民よ! ロシア革命を憎悪する大ロシア主義者=プーチンの狙いは、ウクライナのロシアへの併呑ないし属国化だ。この策動をうち砕くために、ウクライナ人民は一致団結しレジスタンスをたたかえ! 都市占領にたいしてはゼネストで反撃せよ!敵はプーチンが差し向けたロシアの軍隊であって、ロシアの民衆ではない。ロシアの労働者人民に「プーチン政権打倒」を呼びかけ、「連帯」を呼びかけてたたかえ。殺人鬼プーチンが最も恐れているのはこのことなのだ。

 今から約一〇〇年前のロシア革命に「ウクライナ社会主義ソビエト共和国」として合流したウクライナの労働者人民よ! あの精神を呼び覚まし、ロシア人民とともに戦争を革命に転化せよ!われわれは、全世界の人民に呼びかける! 今こそ反戦闘争に決起せよ! アメリカの人民は、今日のプーチン・ロシアの戦争は、ムスリム人民にたいするかの「ブッシュの戦争」と酷似していることを、しかもこの「ブッシュの戦争」を淵源としていることを想起し自覚し、断固たる反戦闘争に決起せよ!欧州の人民は、「ナチスの狂気」に蹂躙されたかの第二次世界大戦に似た状況が現にいま生みだされていることに思いをいたし、断固たる闘争に決起せよ!そして中国の人民は、「現代のヒトラー」プーチンの暴挙を習近平政権が擁護していることを、怒りを込めて弾劾せよ!
 (5)
 ウクライナでいま現出しているロシアの侵略戦争は、コロナ・パンデミックで一挙にむきだしになった東西新冷戦構造への世界の推転の・その新たな局面をあらわすものといわねばならない。「一超」軍国主義帝国アメリカのまるで急坂を転げ落ちるかのごとき衰退。米中対決時代への突入。そして東西新冷戦への急転回。まさしくこのような地殻大変動のなかで、米―中・露の激突による第三次世界大戦勃発の危機が、いま急速に醸成されつつあるのだ。しかもこの戦争的危機は、「使える核」をも投入したところの熱核戦争となる危険をも抱えているのだ。

 わが革マル派は、現代世界の危機とその本質を洞察し断固として暴きだし・警鐘を乱打し、そして帝国主義権力者とネオ・スターリン主義中国および「亡国ロシア」の権力者どもによる戦争と圧政と貧困の強制にたいする全世界労働者階級人民の反撃を呼びかけてきた。日本の反スターリン主義運動は、一九五六年十月に勃発したハンガリー革命を契機として、ソ連が反マルクス主義の虚偽の「社会主義」国家でしかないことを完膚無きまでに暴きだし、以来スターリン主義の超克と真の共産主義運動の創造のためにたたかってきた。そして今われわれは、ウクライナ危機に際して「ロシアもNATOも時代錯誤だ」とか「多角的外交を」とかと対応することしかできない日本スターリニスト党を断固として弾劾しつつ、スターリニストの末裔たるプーチンのロシアによるウクライナ侵略戦争反対の闘いをたたかっているのである。全世界の労働者人民よ! 東西新冷戦下の戦争的危機を突破するために、反戦闘争に決起せよ! そして<反帝・反スターリン主義>世界革命戦略にもとづいてこの暗黒の二十一世紀をプロレタリアの世紀へと転化するために奮闘しよう!ともにたたかわん!

 「ウクライナ反戦、反改憲に起て 「反安保」を放棄する日共をのりこえ反戦反安保闘争を創造せよ2022年4月3日)  」。
ウクライナ反戦、反改憲に起て


「反安保」を放棄する日共をのりこえ反戦反安保闘争を創造せよ


中央学生組織委員会



 プーチンのロシアが放った侵略軍は、ウクライナ人民にたいする残虐無比な殺戮戦を、東部ドンバスのマリウポリ、ハリコフ、南部のオデッサなどにおいて強行している。そして、ウクライナの労働者・人民は、このプーチンの殺戮部隊をうち破るために、ウクライナ軍との連携のもとに武器を手にして命を賭して戦いぬいている。
 ロシアの侵攻軍は、数多のウクライナ人民を血の海に沈め、都市を徹底的に破壊し、すでに四〇〇万を超える人民を国外に追いやった。まさにそれは、四二〇〇万の人口と欧州第二の国土をもつウクライナ国家を民族まるごと地上から抹殺するという歴史上かつてない蛮行にほかならない。しかも、プーチンは、ウクライナを引き裂いて分断国家をつくりあげようとしているのだ。
 いっそう熾烈化する<新東西冷戦>のもとでユーラシアの東でも戦争勃発の危機が高まっている。台湾・南シナ海を焦点として米・日の帝国主義とネオ・スターリン主義中国とが政治的・軍事的角逐をいっそう激化させているのである。
 この世界史的な激動のただなかで、日本の岸田政権は、アメリカのバイデン政権とともに対露制裁を強化しつつ、日米軍事同盟をグローバル同盟として強化する策動に狂奔している。そして、アメリカの核兵器の共同保有というかたちで核武装をはたすという野望をたぎらせながら、<軍国日本>の再興をかけた憲法改悪の策動に血道をあげているのが、安倍晋三らネオ・ファシストに羽交い締めにされた岸田政権なのだ。
 全学連のたたかう学生は、いまこそ、ウクライナ反戦の闘いの大爆発をかちとれ! ウクライナ、そしてロシアのたたかう人民と連帯してたたかおう!
 「反安保」を放棄する日共翼下の反対運動をのりこえ、反改憲・反戦反安保の巨大な闘いを創造せよ!
 <新東西冷戦>下で高まる戦争勃発の危機を突き破る革命的反戦闘争を嵐のようにまきおこそうではないか!

1 ロシアのウクライナ軍事侵略と熾烈化する<新東西冷戦>

 A キエフ侵攻軍の敗北とウクライナ東部総攻撃

 プーチンのロシアが、ウクライナにたいする軍事侵略にうってでてから約一ヵ月半――「首都キエフなど二日間もあれば陥落できる」などとうそぶいていたプーチンは、ウクライナ政府軍および領土防衛隊・住民組織の連携した猛反撃によって、「キエフ陥落」を狙った総攻撃戦において敗北を喫した。キエフ北部のイルピンをはじめとする諸都市では政府軍と連携した住民組織がロシア侵攻軍を叩きだした。いま街にはウクライナ国旗が翻っている。<占領下においたキエフでゼレンスキー政権を倒して親露派政権を樹立し・もってウクライナ全土をロシアに併合する>などというプーチンの野望は、いまや打ち砕かれたのだ。
 このキエフ総攻撃戦における惨めな敗退に直面したプーチンは、残存している北部の侵攻部隊とグルジアの南オセチアの部隊や民間軍事会社(ワグネル)の部隊などをかきあつめて東部・南部地域での戦闘に集中的に投入している。復讐心をたぎらせているプーチンは、東部・南部の地域をロシアの完全制圧下に組み敷くことを狙って、包囲するマリウポリやハリコフにたいする無差別攻撃を命じているのだ。
 東部地域と南部地域・クリミア半島をむすぶ要衝である港町マリウポリでは、ロシア軍は、食糧・水・燃料などの物資の搬入を阻んで一〇万人以上の市民を飢餓状態に陥れている。このマリウポリで、ロシア軍部隊は、ミサイル攻撃、戦車による砲撃、歩兵による銃撃によってウクライナ人民を虐殺している。このロシア軍に包囲されたなかでウクライナ軍の精鋭部隊が「マリウポリ防衛」のために徹底抗戦をおこなっている。
 そしてこのなかで「人道回廊」などの名で住民たちをロシアのシベリアやサハリンに強制連行しているのが、プーチンにほかならない。まさにそれはかつてスターリンがおこなったのと同じ蛮行ではないか!
 いままさに第二次大戦時の「独ソ戦」における「レニングラード包囲戦」のような残虐な攻撃にさらされているマリウポリ。「二十一世紀のヒトラー」プーチンの焦土作戦によってすべてが完全に破壊されたこの街には、殺戮された人々の亡骸(なきがら)が弔うこともできずに放置されたままにされているのだ。
 こうしたドンバス地域の諸都市にたいする総攻撃に戦力を集中するにあたって、プーチンは、国防省をして「軍事作戦の主要な段階は達成された」「ウクライナ軍の戦闘能力が低下したので、ドンバスの解放という主要目的に集中することができる」などと発表させたのであった。だがそれは、侵攻当初の「キエフ陥落=ゼレンスキー政権打倒」のための軍事侵攻が打ち砕かれたがゆえに、プーチンがドンバスに残存兵力を集中するほかはなくなったことを自己暴露するものにほかならない。
 いまやプーチンは、二〇一四年にロシアが一方的に併合したクリミアとともに東部ドンバスのドネツク州・ルガンスク州を新たにロシアに併合し、さらにウクライナ海軍の拠点であるオデッサを陥落させウクライナ南部地域をもロシアに併合するということに、その目的と作戦を変更したのである。
 あさはかにも「速戦勝利」を夢想したプーチンがキエフ侵攻における敗退を突きつけられたのは、このKGB(旧ソ連国家保安委員会)出身の男が、ウクライナの人民が祖国と民族をまもるために一致団結して侵略軍を迎え撃つことなど思いもよらなかったからだ。しかも、このウクライナ人民が政府軍と一体となって武器を取ってロシア軍にたちむかい、これを撃退することなど予想だにしていなかったからである。
 ウクライナ軍は、気温上昇でぬかるんだ道をノロノロとすすむロシアの戦車部隊にたいして、木立や草むらにひそんでドローンや携行型の対戦車ミサイルなどを駆使して撃破した。莫大な燃料を消費する戦車部隊に燃料や食糧を補給するために駆けつける車両部隊も標的にし攻撃した。司令官の指示がなければ軍事行動一つできないロシア軍は、司令官の多くが携帯電話をウクライナ軍に傍受され位置情報もつかまれ殺害されたがゆえに、その部隊の多くが壊滅に追いこまれたのであった(二十人の司令官のうち六人が死亡)。こうしたウクライナ軍の攻撃は、領土防衛隊に入隊した人民および武装住民組織などのレジスタンス部隊の援護なしには決して実現されなかったのだ。
 プーチンは追いつめられている。すでに戦死者は二万人にもおよび、戦費も一日二・五兆円にのぼり国家財政は破綻寸前になっている。そして何よりも米欧による経済制裁によって労働者・人民の窮乏はいっそう深まっているのだからである。
 このなかでプーチンは、「反戦・反プーチン」のうねりがひろがることを怖れて、「戦争の真実」を伝えようとする報道機関にたいする徹底的な弾圧やSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の遮断などに狂奔している。そして、子供たちの避難先であった劇場をロシア軍が攻撃したことも「ウクライナ過激勢力の仕業」などと描きだすフェイクニュースを連日たれ流しているのだ。だがしかし、プーチンが放ったロシア軍に殺戮された数多のウクライナ人民の亡骸を隠しとおすことなど決してできはしない。
 「偉大なロシアの復活」という野望をたぎらせて世紀の蛮行に踏みきったプーチンに未来はない。キエフへのさらなる無謀な前進も、ウクライナから去りゆくという後退も、プーチンには無惨な敗北のうえに戦争犯罪人として歴史の裁きをうけるという奈落しか待ってはいないからだ。
 そうであるからこそプーチンは、東部ドンバスおよび南部の地域のウクライナ人民を殺戮しつくし完全に制圧しロシアのもとに併合するまで、この悪逆無道な<プーチンの戦争>を続けようとしているのだ。
 このプーチンは、「停戦協議」でゼレンスキー政府の代表が「NATO加盟」を断念する代わりに「NATOに代わる安全保障の枠組み」(米・英・仏と中国・ロシアなどで構成する枠組み)を提案したことにたいしても、「機は熟さず」などとほざきながらこれを時間稼ぎのためにのみ利用し、その時間的猶予のうちにロシアの支配地域を東部から南部オデッサまで一挙的に拡大することをたくらんでいるのだ。
 このプーチンにたいして、ゼレンスキー政権もまた、「ロシア軍の全面撤退」を熱願するウクライナ人民を背にしているがゆえに屈辱的な妥協をすることはできず「徹底抗戦」を貫くにちがいない。
 明らかにロシアのウクライナ侵略戦争は泥沼化・長期化することは必至である。このなかで追いこまれれば追いこまれるほどプーチンは、生物・化学兵器や小型核兵器をウクライナ攻撃で使用する衝動を強めていくであろう。それは、間違いなく熱核戦争としての第三次世界大戦の勃発の引き金になるにちがいないのである。

 <プーチンの戦争>の現実的・歴史的背景

 いままさにウクライナ人民を血の海に沈めている<プーチンの戦争>――それはもちろん、直接的には、二〇一九年に登場したウクライナの大統領ゼレンスキーが「NATOへの加盟」の志向を表明したこと、そしてこのNATOへの加盟が実現するならばモスクワの目と鼻の先にミサイルが配備されること、これにたいするプーチンの危機感と焦燥感にもとづくといえる。
 プーチンは二〇一四年、クリミア半島を力ずくでロシアに組みいれたのであったが(このことのゆえに、その後のウクライナの権力者はNATOとの関係を一挙に強化したのであった)、このクリミア半島のロシアへの併合にたいして、NATO加盟諸国は経済制裁をおこなっただけで、併合を実質上は黙認したのであった。
 まさにこの欧米の対応を見て、ドンバス地方(ドネツク州・ルガンスク州)に触手を伸ばすために親露勢力にテコ入れしウクライナ政府軍との内戦を演出してきたのが、プーチンであった。
 そして、われわれが終始一貫して「暗黒の世紀」として暴きだしてきているように、「一超」帝国アメリカの衰退と米中対決時代への転回、さらに米―中・露の新東西冷戦の激化のなかで、米・日・欧の帝国主義がアジアの東の「台湾問題」への対応にその力を集中させ、かつインド太平洋地域での「米中覇権争い」に狂奔しているまさにその間隙をついて、プーチンは今回のウクライナ侵略戦争の挙にでたのである。
 このことは、ウクライナ侵略戦争の勃発というこの世界史的大事件を、一九九一年のソ連邦の崩壊を結節点的転換とする現代世界史の展開がもたらした現局面としてとらえるのでなければならないことをしめしている。
 ソ連邦の崩壊をもって「世界独覇」の野望をむきだしにした軍国主義帝国アメリカは、「自由と民主主義と市場」を掲げて全世界の政治的・軍事的支配と市場経済のグローバル化のために暴虐のかぎりをつくした。
 この「一超」帝国は、軍事的には、ユーゴ空爆(一九九九年)、アフガニスタン空爆(二〇〇一年)、イラク侵略戦争(二〇〇三年)という三つの戦争を強行した。そしてロシアにたいしても、「NATOの東方拡大」によって東欧諸国・旧ソ連構成諸国を切り崩し・それらをNATOに組みこむかたちで、欧州におけるアメリカ主導の支配秩序をロシア国境に迫るようにおし広げてきたのであった。
 このようなソ連邦崩壊以後のアメリカ帝国主義による「NATO東方拡大」にたいして、「アメリカはNATOを一インチも拡大しないという約束を破った」と非難し・これに断固反対してきたのがロシアのプーチン政権であった。
 このプーチンは、グルジアの「バラ革命」(二〇〇三年)、ウクライナの「オレンジ革命」(二〇〇四年)、キルギスの「チューリップ革命」(二〇〇五年)などを「カラー革命」と呼び、アメリカ帝国主義がロシアの勢力圏を突き崩すために仕組んだ政治工作と見て警戒を強めてきた。
 現にプーチンのロシアは、旧ソ連構成諸国に親米欧の政権が誕生しようとするたびごとに、「大ロシア民族の版図復活」の野望をたぎらせて、グルジアへの軍事侵攻(二〇〇八年)、そしてウクライナのクリミア軍事占領の強行(二〇一四年)などをくりかえしてきたのである。
 現在のプーチンのロシアによるウクライナ軍事侵略は、こうしたソ連邦崩壊以降の「NATOの東方拡大」をめぐる米・露の角逐を歴史的な背景としてもっているのである。
 そしてさらにロシアのウクライナへの軍事侵略をつき動かしているもの――それは、プーチン政権がロシア=大ロシア、ウクライナ=小ロシア、ベラルーシ=白ロシアの三つを単一の民族とみなす大ロシア主義にほかならない。ウクライナ侵略は、これをウクライナにたいして暴力的に貫徹するいがいの何ものでもないといえる。また経済的には、「亡国ロシア」の経済を建て直すために、肥沃な穀倉地帯を抱えるとともに工業が盛んな大国ウクライナをロシアに組みこむことを狙ったものでもある。FSB(連邦保安局)強権型支配体制のもとでの歪んだ国家資本主義(擬似資本主義)のゆえに経済的な危機にたえずさらされているのがロシアである。石油と天然ガスのほかには、武器や小麦ぐらいしか輸出するものがないロシア経済のこの脆弱性を突破するために、プーチンによってウクライナ軍事侵攻は強行されたのである。
 まさにこのような政治的・経済的な目的を貫徹するために、「NATO加盟」を志向していたゼレンスキー政権を武力でもって打ち倒し・ウクライナをロシアに組み敷くことを狙った世紀の蛮行にうってでたのが、スターリンの末裔にして現代の雷帝を装うプーチンなのだ。
 このプーチンはいま、ロシア革命の指導者レーニンの民族政策こそが「ウクライナを増長させた」などと悪罵を投げつけている。
 レーニンの死後、「一国社会主義」という虚偽のイデオロギーを掲げて革命ロシアを簒奪し、かつ全世界のプロレタリアートを裏切ったスターリン。そして「反スターリン的」とみなした共産党員や人民にたいする大量の粛清をおこない、また六〇〇万人ともいわれるウクライナ人民を餓死に追いやった「ホロドモール」に象徴される、ロシア人以外の諸民族にたいする苛烈きわまる抑圧政策を強行したスターリン。このスターリンがかつてウクライナ・ベラルーシはもとよりカフカス諸国をもロシア連邦共和国に統合しようとしたとき、断固としてスターリンとたたかったのがレーニンであった。
 だが今、かのソ連邦崩壊を「二十世紀最大の地政学的悲劇」と呼んできたプーチンは、このレーニンこそが「ソ連解体」の原因をつくったなどと断罪している。そうすることによって、「資本主義ロシアの復活」をはかったゴルバチョフやエリツィンによって埋葬された革命ロシアを再び埋葬したのだ。

 B 熾烈化する米・日・欧と中・露の<新東西冷戦>

 「ウクライナ問題」をめぐる米欧日と中露の角逐

 ロシアによるウクライナ軍事侵攻にたいして、アメリカ帝国主義のバイデン政権は、これをロシアのみならず中国にたいする米・欧・日の帝国主義諸国の世界的な包囲網を形成するための契機たらしめようとしている。そればかりではない。アフガニスタンからの惨めな米軍撤退、物価の高騰などによって支持率が低落しつづけ、トランプ人気に水をあけられているみずからの窮地からの挽回をはかるために、ウクライナ問題を利用しているのだ。
 NATO首脳会議(二〇二二年三月二十四日)においては、米欧諸国の首脳によって対露経済制裁の強化が確認されるとともに、アメリカの主導のもとで対ロシアの「前線」となるバルト海から黒海までの八ヵ国にNATOが戦闘部隊を置き・かつそれを増強することが決定された(エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドに加えて、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア)。
 これをもつうじてバイデンは、欧州諸国からの「兵とカネ」の拠出を増大させるかたちでNATOをば対露の軍事同盟として再構築する道筋をつけることに奏功したかにみえた。だがしかし、「世界大戦は起こさない」などとうそぶきつつ・ウクライナ政府がもとめる「飛行禁止区域の設定」を頑として拒絶しつづけているアメリカ権力者と、多くの避難民をうけいれているポーランドを筆頭にウクライナへの「平和維持軍」の派遣をもとめる旧東欧諸国権力者との政治的亀裂が、はやくも露わとなっているのだ。
 こうしたなかで、ロシア国防省がおこなった三月二十五日の「第一段階の特別軍事作戦の終了」という発表を区切りとして中国の習近平政権は、侵略国ロシアにたいする露骨な擁護姿勢をむきだしにして、「対ロシア制裁反対」と「ウクライナの即時停戦と対話の継続」の旗を公然と掲げてインドをはじめとしてアフリカ・中央アジア・東南アジア諸国にたいする外交攻勢に猛烈にうってでている。
 そして、この中国の外相・王毅のインドへの電撃的訪問(三月二十五日)が露払いとなるかたちで、ロシアの外相ラブロフのインド訪問(四月一日)も実現された。この外相会談では、ロシアからのインドへの安値での石油輸出の拡大にかんして協議を開始することが合意されたのである(ロシアはインドに、ドルではなくインド通貨ルピーでの取引を提案)。
 このインド訪問によって中国権力者は「対ロシア制裁」の国際的な陣形に風穴を開けるべくたちまわった(中国は、中国独自の銀行間決済網CIPSとロシアのそれとを相互運用することもロシア側に提案している)。
 それは同時に、インドを対ロシア包囲網に組みいれるというアメリカの追求に横やりを入れることによって、対中国包囲網としてつくりだされているクアッドにおける米・日・豪とインドとの政治的連携を突き崩すという中国権力者の政治的目的にもとづくものなのだ。
 こうしてロシアのウクライナ侵略によって街が灰燼と化し数多の人民が殺戮されているこのときに、ロシアを擁護する中国とアメリカとは、酷たらしいまでの政治的な駆け引きをエゴイスティックにくりひろげているのである。

 台湾・南シナ海をめぐる米中の激突

 こうしたロシアとの連携を強化するとともに、中国の習近平政権は、バイデン政権がウクライナ問題への対応に力を割かざるをえないこのときを狙って、米・英・豪のAUKUSと日米軍事同盟を連結するかたちでのアジア版NATOの構築に反対する気運をつくりだすために、ASEAN諸国にたいして「アジアへの冷戦思考の持ち込み反対」の旗を掲げた政治的な攻勢を強めている。
 その裏面で中国政府は、南シナ海の軍事拠点化にふまえて西太平洋への軍事的進出の足がかりをつくりだすために、みずからは南シナ海の南沙諸島の三礁(ミスチーフ礁・ファイアクロス礁・スービ礁)に軍事要塞(ミサイルや航空機の格納庫・レーダー施設を擁する)を完成させるとともに、オーストラリアの北側に位置するソロモン諸島の政府とのあいだで中国海軍艦船の寄港を認める「安保協力の枠組み合意」を締結する動きを強めているのだ。
 そして、バイデンに「台湾関係がうまく処理されなければ両国関係に破滅的な影響をおよぼす」と警告を突きつけたオンラインでの首脳会談(三月十八日)のその日に合わせて、国産空母「山東」を台湾海峡の金門島付近を航行させるというデモンストレーションをおこなったのが習近平であった。
 まさにこのように「台湾統一」の野望をたぎらせている習近平の中国による台湾・南シナ海における軍事的攻勢にたいして、アメリカ帝国主義のバイデン政権は、日本帝国主義の岸田政権をしたがえて沖縄周辺での日米共同軍事演習の連続的な強行で対抗している。
 そして、いまや反米国家連合を築きつつある中国・ロシア・北朝鮮。これらの諸国家にたいして、アメリカが軍事的即応態勢をとっていることを見せつけるために、バイデン政権は、米海軍第七艦隊のロナルド・レーガンを中国・北朝鮮の喉元に位置する黄海にまで侵入させるという軍事的な威嚇行動をおこなっているのである。
 このように東アジアにおいても、台湾・南シナ海を焦点として、米・日と中国との政治的・軍事的角逐が激化しているのだ。まさに世界の覇者の座をかけての米中の冷戦的激突はいっそう熾烈化しているのである。

2 憲法改悪・日米軍事同盟強化への突進

 A ネオ・ファシズム反動攻撃をうちおろす岸田政権

 ロシアにたいする経済制裁を強化する米欧諸国の権力者に同調することによって、プーチン政権から「非友好国」という烙印を押され〝逆制裁〟に直面しているのが、日本帝国主義の岸田政権にほかならない。石油・天然ガスの代金のルーブルでの支払いの強要、撤収する企業の資産没収などの制裁がそれである。これに加えて軍事的にも、北方諸島での三〇〇〇人を動員した大規模な軍事演習(三月二十五日~)や、ロシア海軍軍艦による津軽海峡を航行する海軍演習の強行など軍事的な威嚇にさらされている。
 そして岸田政権は、このプーチンのロシアとの「戦略的パートナーシップのさらなる強化」を確認した習近平の中国による台湾にたいする軍事的な攻勢、さらにはロシア(および中国)に支援された北朝鮮の金正恩政権による全米をその射程に入れるICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験と核実験の再開準備の策動にも直面している。岸田政権下の日本は、ロシア、中国、北朝鮮という反米諸国家に近接する最前線にたたされているのだ。
 ウクライナ軍事侵攻を契機にして米―中・露の激突がいっそう熾烈化している東アジアのただなかにある日本の岸田政権は、バイデン政権に安保の鎖で締めあげられたアメリカの「属国」として日米グローバル同盟の強化にますます狂奔している。
 この岸田政権にたいして、バイデンの軍国主義帝国アメリカは「同盟の再構築」という戦略にもとづいて日本帝国主義に東アジアにおける対中国包囲網づくりを率先してとりくむことを要求するとともに「日米同盟における役割の拡大」という軍事分担要求を強めている。これらの政治的・軍事的要求に積極的にこたえるために、日本での日米首脳会談の開催、そしてそれに続くクアッド(米日豪印)首脳会議の日本開催を実現しようとしているのが岸田政権なのである。
 岸田政権は、政治的には、クアッド首脳会議に向けて、ロシア擁護を鮮明にしているインドのモディ政権がプーチン政権との関係をいっそう強めることで、対中国の米・日・豪・印の政治的枠組みたるクアッドにも亀裂が生じることを回避するために、モディ政権のつなぎとめに躍起となっている。(日印外相会談で日本はインドから「力による現状変更は認められない」という確認をとりつけた。しかし、「ロシア」の文言は盛りこまれず。)
 そして、軍事的には、バイデン政権が日本に「打撃力」という名の攻撃型兵器を保有することをもとめていることにこたえて、岸田政権は、先制攻撃のための軍事システムの構築に血道をあげているのだ。
 こうしたなかでプーチンによるウクライナ軍事侵略を、日本の軍事強国化と憲法改悪の絶好の好機たらしめようとうごめいているのが、安倍晋三を頭目とする「右翼の軍国主義者」の勢力であり、これに羽交い締めにされた岸田政権にほかならない。
 核兵器の保有はおろか限定的な核攻撃も「合憲」という持論をもつ安倍晋三。このネオ・ファシストは、かつての盟友たるプーチンが「国家の危機には核兵器を使用する」と公然と主張し核攻撃の態勢をとっていることを見て、みずからも核保有の野望をたぎらせているのだ。この輩は、米軍の核兵器を日本に配備し・日米が共同で管理・運用する「核共有」(ニュークリア・シェアリング)をすべきだと叫びはじめた。これに日本維新の会の松井一郎も「非核三原則は昭和の価値観だ」などと呼応しはじめた。まさに自民・維新の極右政治エリートどもは、ウクライナ戦争を利用して、アメリカとの核兵器共有をもふくむ軍事力強化・憲法改悪の気運を煽りたて、もって戦争への道をきりひらこうとしているのだ。
 すでに憲法審査会では、自民、維新、国民民主などの改憲勢力の連携のもとに「緊急事態条項の創設」などの改憲条文案づくりを射程に入れた「緊急事態におけるオンライン国会」などをめぐる審議が強行されている(このなかで自民党・新藤義孝は「憲法改正にかかわる本体論議を具体的かつ本格的に深めてゆく時期にきている」などと主張した)。
 こうした国会の憲法審査会における改憲案づくりの策動と結びつけて、岸田自民党は、憲法改正実現本部に新設した「タスクフォース」の指揮のもとに、ゴールデンウィークまでに全都道府県で「改憲対話集会」なるものを開催するというかたちで改憲翼賛のネオ・ファシズム運動の組織化にも着手しているのである。
 そして、五月十五日に沖縄の「施政権返還五〇年」を迎えるこんにち、岸田政権は、バイデン政権とともに、沖縄本島をはじめとする南西諸島を対中国の軍事攻撃拠点としてうちかためるための策動に血道をあげている。
 アメリカ政府・在日米軍当局は、一月には沖縄のあらゆる基地・演習場において南西諸島などの離島に「戦時の臨時拠点」を構築することを想定した軍事演習を強行した。そしてこれに直続して二月には在日米軍一万人もの海兵隊・海軍を動員して――日本国軍をその翼下に組み入れつつ――島嶼部に分散展開した核部隊が敵国の空母・戦闘機を攻撃する軍事訓練〔「ノーブル・フュージョン(気高い融合)」〕を沖縄近海で強行した。まさにそれらは「遠征前進基地作戦(EABO)」構想にもとづく軍事訓練であり、日米両軍の一体化にもとづいて強行実施されたのである。
 かつて沖縄は、第二次世界大戦時には米軍による艦砲射撃による「鉄の暴風」によってウクライナのような焦土と化し、戦後は米軍事基地権力の支配のもとにおかれ、「施政権返還」後も「核基地の島」とされてきた。この沖縄は現在、「台湾の中国化」をめぐってアメリカ帝国主義とネオ・スターリン主義中国とが激突するフロントラインに位置している。沖縄を中心とした南西諸島・九州は、これを対中国の軍事攻撃拠点たらしめようとする米日両権力者によって、いま再び戦場とされようとしているのである。

 B 「憲法九条を生かした平和外交」宣伝に狂奔する日共中央の腐敗と全学連の闘い

 全学連のたたかう学生は、二月二十四日に強行されたロシアのウクライナ軍事侵攻に際して、ただちにロシア大使館にたいする緊急闘争や街頭での抗議街宣行動に決起した。これを皮切りに、労学統一行動(二月二十八日、三月十七日)に、三月五日には革マル派・反戦青年委員会とともに新宿駅頭での街頭情宣に連続的に起ちあがった。ウクライナ人、ロシア人が参加した三月五日のウクライナ反戦のパレードにも参加し、集会終了後には革マル派の声明が掲載された『解放』号外(ロシア語版)をも配布して、彼らに連帯を呼びかけ討論をつくりだしてきた。
 たたかう学生は、全国のキャンパスから、そして街頭から、労働戦線の深部でたたかう労働者と連帯して「ロシアのウクライナ軍事侵略弾劾」の闘いを反改憲・反戦反安保の闘いとともに創造しているのである。
 このときに日本共産党の志位指導部は、「プーチンに国連憲章を守らせる」などという宣伝活動をおこなうとともに、七月に迫った参院選挙に向けて「憲法九条を生かした外交戦略」という日共式の外交政策の代案の宣伝に一切をきりちぢめている。
 こうした日共指導部の議会主義的な闘争歪曲をのりこえるかたちで、ロシアのウクライナ侵略戦争に反対する諸集会に結集した労働者と連帯して、「ウクライナ反戦」「反改憲」「日米グローバル同盟反対」の闘いを創造しているのが全学連のたたかう学生なのだ。

3 ウクライナ反戦、反改憲・反安保の闘いに起て

 A 学生戦線から闘いを創造せよ!

 (1)全学連のたたかう学生諸君!
 われわれは、プーチンの世紀の蛮行をまえにして、日本政府に「憲法九条を生かした平和外交の推進」を請願するにすぎない日本共産党翼下の反対運動をのりこえ、<ロシアのウクライナ侵略戦争反対>の反戦闘争を日本の地から断固として創造しようではないか。新歓期の全国のキャンパスからウクライナ反戦の闘いの巨大なうねりをまきおこせ!
 いまウクライナ各地でロシア軍の無差別攻撃によって数多の人民が虐殺され、そしてウクライナ人民は兵士とともにロシア軍への血みどろの戦いに身を投じている。この現実を眼前にして、プーチンへの憤激もウクライナ人民への共感の一かけらさえもなく、プーチン政権およびソ連共産党との区別だてに血眼となっているのが、日共の志位指導部にほかならない。
 いうまでもなく、プーチンのさしむけた軍隊によっていま虐殺されているのはウクライナの労働者・人民である。そしてこの侵略をはね返そうと命を賭して戦っているのもウクライナの労働者・人民である。たとえそれがたんなる「反戦・反プーチン」意識に・しかも永い歴史のなかで心の中に刻みこまれた民族意識にもとづくものであるのだとしても、いやまさにそうであるからこそ、このウクライナ労働者・人民の立場にわが身を移しいれることは、ウクライナ侵略戦争問題と対決し肉迫するための出発点なのだ。この現実的ヒューマニズムとしてのプロレタリア・ヒューマニズムを欠如したままになされる一切の評論など、それじたいが害毒でしかないのだ。
 肉親や友人が殺されながらも命をなげうって祖国と民族をまもるためにロシア軍と戦うウクライナ人民。この彼らに心も動かず共感することもできない代々木「共産党」は、そうすることによって死滅していることを自認したのである。
 彼らの頭の中を占めているものは、自己保身でしかない。先の衆院選での大惨敗に続いて三ヵ月後に迫った参院選でも敗北してしまうならば、「野党と市民との共闘」は最後的に凄絶なパンクをとげ、「解党の危機にあえぐ創立百年」を迎えることに怯えているのだ。まさにそれゆえに彼らは、党消滅の危機ののりきりをはかるために、「ソ連共産党は社会主義とは縁もゆかりもない覇権主義だと断固反対を貫いたのが共産党」などという真っ赤な嘘をたれ流しつづけているのだ。
 だが、醜悪なゴマカシはやめよ。一九五六年、ハンガリーでソビエトを結成して起ちあがった労働者・人民とこれにたいするソ連軍のタンクによる血の弾圧にたいして、死のような沈黙を決めこみ、モスクワや北京にならってソ連の弾圧を支持したのが、代々木官僚どもであった。そしてその後も、一九七九年のソ連のアフガニスタン侵略にたいしては、侵略の直前に日・ソ両共産党の「共同声明」を確認していたがゆえに、二週間の沈黙の後になって「同意することはできない」とつぶやいたにすぎなかったのも彼らであった。こうしたみずからがくりかえしてきた反労働者的な犯罪の数々を消しさろうと躍起となればなるほど、われわれは、彼らもまたスターリン主義ソ連邦の巨悪に加担してきたネオ・スターリニストにほかならないことをあますことなく暴露する弾劾の矢を放ってやらねばならない。
 わが反スターリン主義運動は、一九五六年のハンガリー革命とこれにたいするソ連軍による圧殺という歴史的事件に「共産主義者としての主体性」をかけて対決した同志黒田寛一によって創造された。いらい六十五年間にわたって、スターリニスト・ソ連邦が反労働者的な犯罪をくりかえすたびに、これと対決したたかってきた。
 アンチ革命ゴルバチョフによるソ連邦の解体にたいしても、この革命ロシアの埋葬を弾劾して闘いを創造した。以来、この「世紀の逆転」を再逆転するために、われわれはたたかってきた。
 そして、エリツィンの後継として登場したプーチンが「シロビキ」とよばれる元情報機関員や軍人や治安機関員や縁故あるものを石油会社などの国営企業に送りこみ国有財産を簒奪してきたこと、そしてうちかためたFSB強権型支配体制のもとで旧ソ連圏諸国やシリアにたいして暴虐のかぎりをつくしてきたことにたいしても一貫してたたかってきたのだ。
 われわれ革命的左翼は、「大ロシアの復活」という野望のためにウクライナ民族そのものを地上から消しさるジェノサイドに狂奔するプーチン、この世紀の犯罪人にしてスターリンの末裔たるプーチンを絶対に許しはしない。レーニンの民族政策に「ウクライナを増長させた」などと悪罵を投げつけることで、再び革命ロシアを冒〓し埋葬したことを怒りをこめて弾劾するのでなければならない。
 わが日本の反スターリン主義革命的左翼と全学連のたたかう学生、革命的・戦闘的労働者は、この日本の地において、日共翼下の平和運動をのりこえ、ロシアによるウクライナ軍事侵略に反対する闘いを総力をあげて推進し、さらにこの闘いを国際的に波及させるために奮闘しようではないか!
 (2)われわれはこの闘いのなかで同時に、ロシアの労働者・人民に訴えかけなければならない。
 プーチンは、ロシア軍によるウクライナ人民の大量殺戮を「ネオ・ナチからの解放のため」などと正当化している。まさにそれが正真正銘のデマゴギーであるにもかかわらず、これに唱和しているのがロシア共産党なのだ。ロシア人民は、官憲を動員した暴力的な弾圧をもはね返して、ロシア軍のウクライナ無差別攻撃を阻止する闘いに起て!
 プーチンを頭にするFSB強権体制を打ち砕くことなしには、ロシアの労働者・人民には、戦争と暗黒支配とソ連崩壊直後のような経済的な奈落しか待ってはいない。
 いまこそ、ロシア人民は、革命ロシアを埋葬したスターリン主義者とその末裔どもの犯罪を弾劾し、ソ連邦の国有財産を簒奪し勤労人民を賃金プロレタリアに突き落としてきたプーチンら支配者どもに創意工夫をこらして反撃せよ!
 ロシアの人民よ。「悲惨なロシア」を突破する道は、「スターリン時代の偉大なソ連邦」への郷愁を抱き・その復活を願うことにあるのでは断じてない。スターリン主義の反マルクス主義的な本質にいまこそ目覚め、プーチン政権打倒の闘いに起ちあがることこそが、暗黒のロシアを未来に向かってきりひらいてゆくのだ。
 ロシア軍の兵士はその銃口をプーチンに向けよ!
 すべての労働者・人民は、ソビエトを結成して革命ロシアを実現したあのロシアの労働者・農民・兵士たちのように、ウクライナ人民と連帯してたたかおうではないか!
 (3)そしてわれわれは、ロシア軍にたいしてたたかうウクライナの人民に訴える。
 現代の皇帝プーチンの姿にスターリンを重ね合わせながら、侵略軍を打ち砕くために決死の闘争をたたかいぬいているウクライナ人民よ。スターリンいらいのソ連邦によって筆舌に尽くしがたい苦しみを味わわされてきたウクライナの人民よ。アゼルバイジャン軍の副司令官が「プーチンはこの戦争に勝てない。なぜならばウクライナは全国民が団結しているからだ」と言うように、プーチンの戦争を打ち砕く真の根源的な力はウクライナ全人民の団結にある。全人民がうって一丸となってプーチンの戦争を打ち砕け! ロシアで反プーチン闘争をたたかう労働者・人民と連帯し、「プーチン打倒」を呼びかけたたかおうではないか。
 重ねて呼びかける。ウクライナ人民の脳裏と体に憎悪とともに刻みこまれている「コミュニズム」の正体とは、ニセのマルクス主義としての血塗られたスターリニズムにほかならない。いまこそ「社会主義」ソ連邦の反労働者的な本質に目覚め、そしてまたウクライナを見殺しにしている米欧帝国主義の階級的本質にも目覚めよう。
 ウクライナ労働者・人民は、みずからが進むべき道が、ロシア人民と連帯して、いま一度一九一七年のあのロシア・プロレタリア革命によって実現した「ソビエト共和国」を樹立することのなかにあることを自覚し決意して、いまこそ前進しようではないか!

 わが同盟は、このような呼びかけをウクライナ反戦の闘いのただなかで、ウクライナの、そしてロシアの人民に向けて発してたたかっている。われわれは、二月二十四日のロシアのウクライナ軍事侵攻に際して、その三日後に緊急声明を掲載した『解放』号外を――和文だけでなくロシア語版・英語版をも作成――ウクライナおよびロシアの人民に向けて断固として発表した。
 このような呼びかけを、ロシア軍にたいする血みどろの戦いを続けているウクライナの人民に、そしてプーチンの戦争に反対する闘争を官憲の暴力的弾圧をうち破りつつたたかうロシアの労働者・人民に発しているものは、世界でもただ一人わが反スターリン主義革命的左翼いがいには存在しない。
 われわれが日本の地からこうしたウクライナ人民への呼びかけを発したのは、ウクライナにおいて戦う人民の立場にわが身を移しいれつつ、ロシアの侵略といかに戦うか、そして何をめざしていくべきかという方向性をさししめすためにほかならない。ウクライナ人民とともにたたかう立場に立脚することによってはじめて、たたかう人民にスターリン主義の反マルクス主義性と帝国主義のブルジョア階級性への自覚を促し、たたかう戦列を階級的質的に高めていくことも可能となるのである。
 これがまさに内在即超越であって、こうした内在即超越の論理にもとづいてはじめてウクライナ人民への呼びかけの内容は明らかにすることができるのである。
 われわれ反スターリニズム革命的左翼は、こうしたわれわれの訴えを、かつてソ連邦のもとにあったウクライナの、そしてロシアの人民のなかになんとしても届け、彼らとの真のプロレタリア的な連帯を創造してゆくのでなければならない。それこそが、「暗黒の二十一世紀」をプロレタリア革命の世紀に転じるためにたたかっているわれわれの任務なのだ。
 いまこそ、全学連のたたかう学生、戦闘的・革命的労働者は、ロシア軍にたいしてレジスタンスをたたかうウクライナ人民と連帯して、全国のキャンパス・職場からウクライナ反戦の闘いの巨大なうねりを創造しようではないか!

 B <米中冷戦>下の戦争勃発の危機を突破する反戦闘争を推進せよ!

 われわれが、昨年末いらい、全世界人民に向けて明らかにしてきたとおりに米―中・露の<新東西冷戦>のもとでウクライナにおいてロシアによる侵略戦争の劫火が吹きあがった。まさしく現代世界は、<戦争の時代>に突入した。このもとで、東アジアの台湾および南シナ海を焦点としたネオ・スターリン主義中国と米日両帝国主義国家との軍事的・政治的な角逐が熾烈化し、刻一刻と戦争勃発の危機が高まっている。いままさに第三次世界大戦の勃発の危機が切迫している。
 われわれは、<新東西冷戦>下の戦争勃発の危機を突破する反戦の闘いを断固として創造するのでなければならない。すべてのたたかう学生は、労働戦線の深部でたたかう労働者階級と連帯して、「反安保」を放棄した日共系の既成反対運動をのりこえ、「憲法改悪阻止・日米グローバル同盟粉砕」の巨大な闘争をいまこそ全国のキャンパスからダイナミックに創造しようではないか!

<軍国日本>再興のための憲法改悪を絶対に阻止せよ

 第一にわれわれは、岸田政権による憲法改悪の策動を木っ端微塵に打ち砕くのでなければならない。
 憲法第九条の破棄と緊急事態条項の創設とを二本柱とする「自民党改憲四項目」の憲法審査会への提出を断じて許すな!
 憲法改悪の先導役を任じている安倍を筆頭とする自民党内ネオ・ファシストグループと真正ファシストの党・日本維新の会とが結託しながら、日本に米軍の核兵器を配備し・これを日米共同で管理するなどという「核兵器シェアリング」を叫びたてている。プーチンのロシアのウクライナにたいする核攻撃の危機が迫っているときに、安倍らは、これに乗じてかねてから安倍が抱いてきた核保有の野望をむきだしにしている。まさにそれは、「戦力不保持」「交戦権の否認」を謳った憲法第九条の破棄をたくらむものたちが、プーチンの亜流というべき<軍国日本>の再興をたくらむ戦争亡者にほかならないことを自己暴露するものにほかならない。
 岸田政権が強行しようとしている憲法改悪こそは、台湾を焦点として米・日―中が激突する切迫した情勢のもとで、日米軍事同盟をグローバル同盟として強化し・日本の軍事的役割を一挙的に拡大するためのそれにほかならない。それは対中国のグローバル同盟の一方の担い手である日本国家を「一流の帝国主義国家」にふさわしく「交戦権」はもちろんのこと核兵器をもふくむ「打撃力」を有した軍事強国たらしめるための一大攻撃なのだ。
 この決定的なときに、改憲反対闘争方針から「反安保」を抜きさる日共官僚の犯罪性は明らかではないか。彼ら代々木官僚どもは、「憲法を生かした外交政策」なるものを岸田政権が採用するように請願している。だがしかし、彼らがみずから吹聴しているように、この「憲法を生かした平和外交」なるものは、代々木官僚どもによって日米軍事同盟の存在するもとでもとりうる外交政策などとされているのだ。いま日米軍事同盟をグローバルに強化し・日本が軍事的役割を拡大するために、まさにそのために岸田政権によって憲法改悪がたくらまれている。そうであるからして、こんにちの日共が明らかにしている「反安保」を抜きさった反改憲方針なるものが、岸田政権の憲法改悪を打ち砕くことなど決してできないことは明らかではないか。
 われわれは、「反安保」を完全に放棄する日共指導部を弾劾しつつ、憲法改悪阻止の闘いを、<日本の軍事強国化を阻止する闘い>として、そしてまた<反安保>=<日米軍事同盟強化反対>の闘いとしておしすすめるのでなければならない。核兵器のシェアリング絶対反対! 日本の核武装を断じて許すな!
 緊急事態条項の創設を許すな! 「ウクライナ戦争を見ても必要だ」などと吹聴するネオ・ファシストどもが注視しているのは、大統領権限で侵略戦争を開始し・国内での反戦=反プーチンの闘いを弾圧するための大統領令などを乱発するロシアのプーチンである。まさに、「二十一世紀に蘇ったヒトラー総統」のような強権を首相が手にし、労働者・人民を戦争に総動員するために民主主義的な諸権利など根こそぎに剥奪することこそが、緊急事態条項創設の狙いなのだ。
 こうしたドス黒いたくらみを満天下に暴きだし、岸田政権の緊急事態条項の創設を阻止するために、戦争遂行のためのネオ・ファシズム支配体制の強化に断固反対するという旗幟を鮮明にするのでなければならない。

 「日米グローバル同盟粉砕」の闘いに起て

 第二にわれわれは、改憲阻止の闘いとともに、日米軍事同盟のグローバル同盟としての強化に断固反対する闘いを、<米中冷戦>下で高まる戦争勃発の危機を突き破る反戦反安保闘争としておしすすめるのでなければならない。
 四月末にも日本で開催されようとしているバイデンと岸田の日米首脳会談こそは、対ロシア制裁を日米共同でおしすすめること、そして何よりも日米軍事同盟を対中国のグローバル同盟としていっそう強化することを確認する場となるにちがいない。
 すでに一月の日米2プラス2において、対中国の戦争計画にのっとって日米両軍を完全に一体化させること、沖縄・南西諸島・九州をはじめ日本列島全域を対中国攻撃の軍事拠点たらしめることなどが確認された。来たる首脳会談においては、日本が長射程のミサイルを保有することやアメリカの中距離弾道ミサイルを日本全土に配備することなどが合意されるであろう。
 われわれは、日米軍事同盟の飛躍的強化のための日米首脳会談の開催を断じて許さず、アメリカ大統領バイデンの来日を絶対に阻止しようではないか! 全学連のたたかう学生は、バイデン来日阻止闘争に全国から決起せよ! 対中国包囲網を形成・強化するための米・日・豪・印のクアッド首脳会談の開催に反対する闘いにも起て!
 われわれは、「反安保」を投げ捨てる日共翼下の反対運動をのりこえ、<安保粉砕>の巨大な闘争を全国各地から創造するのでなければならない。
 「施政権返還五〇年」を迎えた沖縄では、在日米軍が対中国・対北朝鮮の準臨戦態勢に突入している。この米軍は沖縄全島で実戦さながらの軍事訓練を昼夜わかたず強行している。台湾の「武力統一」をも公言する習近平中国の軍隊の西太平洋への進出を阻むために南西諸島にミサイルの壁をつくるとともに、中国海軍空母部隊を撃滅するために日米統合軍が島嶼などに軍事拠点を構築することがたくらまれている。このような軍事作戦構想にもとづいた日米合同軍事演習が連続的に実施されているのだ。
 われわれは、沖縄・日本全土を対中国の軍事攻撃拠点たらしめる一切の策動に反対する反戦反安保の闘いを創造しようではないか!
 日米共同での先制攻撃体制の構築反対! 対中国の戦争計画の練りあげを許すな。EABO構想にもとづく日米合同軍事演習反対。バイデン政権による日本への中距離ミサイルの配備を許すな。核兵器の日米シェアリング反対。日米軍事同盟の核軍事同盟としての強化を許すな!
 沖縄県学連のたたかう学生を先頭とする全学連のたたかう学生は、不屈にたたかう労働者・人民とともに辺野古新基地建設を阻止する闘いの大爆発をかちとろうではないか!
 いまこそ、われわれは、<すべての米軍基地撤去・安保破棄>めざしてたたかおうではないか!
 われわれは同時に、台湾を併呑することをめざしたネオ・スターリン主義中国の一切の軍事的威嚇行動に反対する反戦の闘いをもまきおこすのでなければならない。南シナ海における軍事拠点の構築や他国の漁船などにたいする威嚇などの反人民的な策動を弾劾しよう。「尖閣諸島」の領有を狙った中国権力者の強硬策を断じて許すな!
 われわれは、日米両帝国主義権力者による対中国の軍事的威嚇行動にたいして、そしてまた中国権力者の対米・対日の軍事行動にたいして、日本全国からの巨大な反戦闘争の創造でもってこたえるのでなければならない。
 ロシア・中国を後ろ盾にした北朝鮮の金正恩政権によるICBM発射実験を弾劾せよ!
 全学連のたたかう学生は、「国連幻想」を煽りたてる日共翼下の平和運動をのりこえ、ウクライナ反戦の闘いとともに、台湾を焦点として高まる米日―中の戦争の危機を突き破る反戦の闘いを総力で創造しようではないか。そしてこの闘いを国際的にも波及させるために奮闘しようではないか。
 すべての学生はいまこそ、<反戦全学連>の真価を発揮して革命的反戦闘争に決起せよ!

 C 一切のネオ・ファシズム反動攻撃を粉砕せよ!

 われわれは、岸田政権による「経済安全保障推進法」の制定を阻止する闘いを創造するのでなければならない。
 その核心的な内容は、「官民連携での先端技術開発の促進」「技術流出防止のための特許の非公開化」「半導体などの特定重要物資の指定と供給網の構築」、「基幹インフラ事業の事前審査と機密漏洩への罰則導入」などである。
 こうした「経済安保法」を岸田政権が制定しようとしているのは、「権威主義国家」とみなした現代中国が巨額の国家資金を投入して「軍民融合」での最先端技術開発をおしすすめていることに対抗して、バイデンのアメリカとともに「経済安全保障」のための共同の取り組みをおしすすめようとしているからである。
 こうした「経済安全保障」のための策動は、経済版の日米2プラス2を司令塔として日米一体でおしすすめられているものであって、日米軍事同盟の強化にもとづく日米両国家による対中国の戦争準備策動とかたく結びつけられているのだ。
 同時にわれわれは、こうした「経済安保法」の国会審議の裏面ですすめられている「中国のスパイ摘発」のための治安・諜報部門の日米一体化の策動が、日本型ネオ・ファシズム支配体制を一挙的に強化するものであることをも暴露するのでなければならない。
 われわれは、「経済安保法」の制定に反対する闘争を<日米グローバル同盟反対><経済の軍事化反対><日本型ネオ・ファシズム支配体制の強化反対>の旗幟を鮮明にして断固として創造するのでなければならない。

 すべての全学連のたたかう学生諸君! 労働戦線で首切り・合理化に反対してたたかう労働者とかたく連帯して、日共指導部による闘争の議会主義的歪曲をのりこえ、「ウクライナ反戦」「反改憲」「反戦反安保」の闘いを総力で創造しようではないか! 「経済安全保障法」の制定をはじめとする一切のネオ・ファシズム的な攻撃を粉砕する闘いに起て! ウクライナ軍事侵略と米・欧・日の対露経済制裁とによって拍車がかかっている狂乱的な物価高騰に反対する政治経済闘争をも推進しようではないか!
 こうした一切の諸闘争を結びつけつつおしすすめ、労働者階級・学生の階級的に団結した力で岸田日本型ネオ・ファシズム政権を打倒することをめざしてたたかおうではないか!
 全国のたたかう学生は新歓期のキャンパスから、新入生とともに闘いを創造せよ!
 (二〇二二年四月三日)

 〔付記〕
 四月三日、ウクライナ政府は、ウクライナ軍が解放したキエフ近郊ブチャなどで四一〇名のウクライナ人民の遺体が見つかったと発表した。路上では射殺された遺体、民家の地下では拷問された遺体、子供もふくめて手足をしばられた状態でバラバラに切断された遺体が発見された。ロシアの侵攻軍は残虐極まりない殺戮をおこなった。このプーチンとその軍隊による歴史的大罪を断じて許すな!
 (四月四日)

 「自称「左翼」の錯乱を弾劾しウクライナ反戦の炎を! (2022年5月22日)」。
自称「左翼」の錯乱を弾劾し

ウクライナ反戦の炎を!



中央労働者組織委員会


 プーチンのさし向けた侵略ロシア軍にたいして、ウクライナの労働者・人民はウクライナ軍とともに懸命の戦いを続けている。彼らの勇猛果敢な戦いのまえに、いまやロシア軍は敗退しつつある。
 いまこそわれわれは、<プーチンの戦争>を最後的にうち砕くために、労働戦線からウクライナ反戦闘争の炎を赤々と燃えあがらせるのでなければならない。
 だが、日本の諸政党・既成労組指導部は、権力者らの「外交交渉」に期待しつつ避難民への支援金などを募ることに「ウクライナ支援」を解消している。日本共産党中央にいたっては、「平和の流れ」ができているなどとほざいて国連への幻想を煽り、反戦闘争をいっさい組織化しようとはしない。彼ら転向スターリン主義者は、参議院選挙に向けた票田開拓に没入しているのであり、その「票」ほしさにみずからとプーチンや旧ソ連との区別だてに狂奔しているありさまなのだ。
 また「連合」および「全労連」傘下の諸労組のなかには、今なお〝旧ソ連邦への郷愁〟をもつ役員や活動家が存在する。彼らは、「西側メディアはフェイクだ」などと喧伝して、ロシア軍の残虐行為から労組員の目をそらすことに躍起となっている。彼らは、スターリニストの末裔にして「現代のヒトラー」プーチンによる世紀の犯罪をまったく弾劾できないのだ。
 いまこそ革命的・戦闘的労働者は、腐敗を極める既成労組指導部をのりこえ、たたかう全学連の仲間と連帯して「ロシアのウクライナ侵略戦争反対」の反戦闘争を断固として創造しなければならない。そしてこの闘いを全世界の労働者・人民に波及させていくのでなければならない。


Ⅰ ロシアのウクライナ強奪戦争の敗北とその根拠

 (1)ロシア侵略軍の敗北

 ロシアの侵略軍は、ウクライナ軍とウクライナ労働者・人民の戦いのまえに、いまや敗退の急坂を転げ落ちはじめている。
 東部ハリコフ付近では、ウクライナ軍がロシア軍を撃退し国境まで押し返している。この勝利は、アゾフスターリ製鉄所に八十数日にわたって立てこもりロシア侵略軍の一割にあたる一万数千人をマリウポリに釘付けにしたアゾフ連隊などの英雄的な決死的戦いぬきにはありえなかった。まさにこのゆえに、処刑・拷問・収容所送り・反ウクライナ宣伝への協力の強要といった苛酷な前途が待ちうけていようとも、「任務を完了した」彼ら・彼女らの表情はすがすがしいのだ。
 キエフ攻略戦に続く東部戦線でのロシア軍の敗退は、二〇二二年五月九日の対独戦勝記念式典――第二次世界大戦における「ナチスへの勝利」とロシアへの「愛国」を謳う最大行事であるこの式典におけるプーチン演説のなかに、はっきりと示された。そこにおいてプーチンは、「脅威が国境付近にあるなかで〔ウクライナへの『特別な軍事作戦』は〕唯一の正しい判断だった」などと弁明し、ロシア軍の戦死者にたいして対独戦の戦死者と重ねあわせつつ「追悼」と「感謝」を述べることに終始したのだ。
 いまロシアでは、戦争の長期化にともなってロシア軍兵士の戦死者が激増していることが、人民のまえに次第に露わとなってきている。兵士の家族をはじめとして「早く戦争を終わりにしてほしい」という声が高まっている。国内のプーチンの支持率もジリジリと低下している。プーチン政権はウクライナへの侵略以来、反戦運動を徹底的に弾圧し何万人もの人びとを逮捕するとともに、政府を批判するメディアを廃刊・停波に追いこんできた。だがそれにもかかわらず、戦勝記念日の放送番組がハッキングされ「政府はウソつき」などと書きこまれてもいる。今も政府系メディアにプーチン批判の記事が掲載されている。「兵士の母の会」は、ウクライナ政府に息子の安否を問い合わせ、ロシア政府には「情報公開」を求めている。そしてロシアの労働者たちは、お札や緑のリボンに「反戦・反プーチン」と書いて配っているのだ。

 (2)敗北の根拠

 いまやロシア軍は、戦略的後退どころか〝敗退〟が露わとなっている。キエフ陥落・傀儡政権樹立というプーチンの当初の目論見が完全に破綻したばかりではない。「東部と南部の制圧とロシア化」という、キエフ攻略軍の壊滅ののちに転換した軍事戦略もまた、いまや破綻をとげつつある。ロシア軍はキエフ周辺から撤退し東南部に戦力を集中したものの、イジュームやハリコフでウクライナ軍に撃破されているのだ。
 ウクライナ軍に比して戦力で圧倒的に優位に立っていると言われていたロシア軍が、これほどまでに惨めな敗走を続けているのは何故なのか。
 それはまず第一に、ウクライナの労働者・人民が「侵略者を追い返せ!」と闘いの意志に燃え、一致結束して勇猛果敢にたたかってきたがゆえである。
 既存のウクライナ軍に加えて、志願してきた労働者・人民が軍や領土防衛隊に加わり、さらに村落・街などの自治体ごとに住民が首長のもとに自治組織をつくり結束して軍事的行動にたずさわった。道路標識を壊したりバリケードを築いたりしてロシア軍戦車をおびき寄せたり落とし穴に落としたりして集中砲火を浴びせる手助けをするなど、労働者・人民は自主的に臨機応変に軍事行動や準軍事行動に参加したのだ。「わが町から侵略者を追い出せ!」「プーチンの戦争を許すな!」「スターリンと同様のウクライナ民族圧殺を許すな!」という闘いの意志を燃えあがらせて団結してたたかってきたのが、ウクライナの労働者・人民たちなのだ。
 ロシア軍敗退の第二の根拠は、軍事戦略上の大失敗である。プーチンは、この戦争を始めるにあたって主客諸条件を完全に読み間違えた。彼は、二〇一四年のクリミア侵攻の「勝利」に思いあがり、「ウクライナ軍はとるにたりない」と思いこんだ。大統領ゼレンスキーも国民からあまり支持されていない今、一気にキエフを陥落させてゼレンスキーを暗殺してしまえばロシア傀儡の大統領を据えられる、などという計略をたてた。侵略をはねかえすために戦うウクライナの労働者・人民の団結力を、この〝小スターリン〟は予測もできなかったのである。
 他面、ロシア軍の軍隊組織の士気の低さ・規律性のなさ・臨機応変に動けない機動性の弱さも、プーチンが予想だにできないことであった。ロシア軍の司令官たちは、軍隊を組織し兵士を教育するにあたって、旧ソ連時代と同様の上から下への一方的指令スタイルを護持している。それゆえに兵士たちは、指示・命令がないと動けないし、指示されたことしかやらないという体たらくになっている。
 また、ロシア軍の使う戦車や武器も故障が頻発した。元スターリニスト官僚やその親族たちからなる軍需産業の資本家どもは、ロシア軍司令部・将校たちと癒着し汚職を常態化している。彼らは、戦車のメンテナンスも〝手抜き〟しているのであり、これが戦時におけるエンストや武器の不具合を招いているのだ。
 第三には、軍事作戦上も、ウクライナの人民が軍に全面協力したことが大きい。
 ウクライナ軍は米・欧や東欧の国ぐにから供与された各種の情報提供や数かずの対戦車戦に有効な武器をもって戦っており、とりわけロシア軍将校たちの動きの詳細を掴んでいることがロシア軍中枢への大打撃につながったといえる。その場合、ウクライナの労働者・人民は自主的に手持ちの〝民間ドローン〟を軍に提供したり、それで得た情報を自治体・政府にドシドシ提供したりしたのである。そして、ウクライナ軍と政府はそれを迅速に集約・分析して前線まで伝える機動的な指揮系統をつくっていたのである。
 こうしたロシア軍の軍事戦略上の破綻の実体的根拠は、「軍事」には素人の元KGB(ソ連国家保安委員会)たち(プーチンの元同僚のシロビキたち)が中心のFSB(連邦保安局)が、軍事戦略を立てかつ軍隊を指揮したことにある。戦場のリアリズムのないプーチンとFSBの面々による軍事的な情勢分析や戦略目標の設定などは、しょせん〝絵に描いた餅〟であったのだ。
 いまやロシア軍は、敗走しつつある戦地に追加の兵力をつぎこみ、それでもダメならまたつぎこむというアリ地獄のような泥沼に引きずりこまれつつあるといってよい。

Ⅱ 死滅する「左翼」

 ウクライナという国家を破壊しその民族を抹殺しその土地を強奪してロシアに組みこむという<プーチンの戦争>――この「暗黒の二十一世紀」を象徴するかのごとき世紀の暴挙にたいして、全世界の左翼は断固としてたたかわなければならない。だが日本の・そして世界の「左翼」は、混迷どころか驚くべき対応不能をさらけだし、反マルクス=レーニン主義を露わにしてしまっている。

 (1)代々木官僚どもの腐敗

 日本のネオ・スターリニスト党たる日共官僚どもはいま、ロシアのウクライナ侵攻にたいして「国際法違反」となじり、「国連憲章守れの一点で」「世界は団結」しようなどと弱よわしくつぶやいている。彼らは、「国連の機能不全と無力」が誰の目にも明らかになっているにもかかわらず、「国連憲章を基準にしよう」などと喧伝しているのだ。プーチンの悪逆無道な侵略戦争にたいして反戦闘争を呼びかけ組織することを一切やろうとせず、ただただ国連加盟の各国権力者に期待し幻想を煽っているのが彼らなのだ。
 委員長の志位和夫は、七月参議院選挙に向けての「決起集会」などの場面で、恥ずかしげもなく言う――今日の世界情勢を「大局においてとらえるならば、平和の流れは着実に広がりつつあります」と。現にいまウクライナの地においてロシア軍による大量虐殺がおこなわれ第三次世界大戦勃発の危機さえ深まっているにもかかわらず、国連総会においてロシア非難の決議に一四〇ヵ国以上が賛成したことを「平和の流れ」として天までもちあげ、国連総会での各国権力者どものおしゃべりを事細かに紹介しているのが、志位なのだ。
 しかも志位は、「平和の流れ」という「大局的な見かた」こそは、「歴史は無駄に流れていない」という「党綱領の世界観」にもとづく考え方だなどと誇ってさえいる。
 現在ウクライナで、侵略者によってどれほど多くの労働者・人民の血が流されたと思っているのか。「社会主義(実はスターリン主義)」ソ連邦を解体し「資本主義ロシア」を復活させると同時に国有財産を簒奪したのが、かつてのスターリニスト・ソ連邦の権力者どもではないか。そしてソ連邦の元諜報員であり、いまや五〇万人のFSB員による強権支配体制を敷きそのうえに君臨しているのが「亡国ロシア」の「皇帝」プーチンではないか。このスターリニストの末裔たるロシア権力者への階級的憎しみもなく、呻吟する労働者・人民の血叫びも聞こえないのが、転向スターリニスト・日共官僚なのだ。
 ちなみに、ロシアのウクライナ侵攻当初、日共系学者の一部は、〝NATOとロシアの「どっちもどっち」論〟を唱えた。これに慌てた代々木中央は、「プーチン政権の無法」を「キッパリ表明」しようと強調した。そして「〔ソ連の〕崩壊した体制は、もともと社会主義とは縁もゆかりもない覇権主義と専制主義の体制」であり、わが党は「旧ソ連の時代から覇権主義に反対してきた党」であるなどと、弁解に汗だくだくとなってきたのであった。
 彼らが旧ソ連との区別だてに汲々となり、挙げ句の果てに「平和の流れ」なるものの強調に逃げこんでいるのは、次のことにもとづく。すなわち、今日の彼ら日共官僚を突き動かしているのは、次の参院選で敗北すれば〝党に未来はない〟という自己保身なのである。
 昨秋の総選挙について立憲民主党や国民民主党の内部から、「共産党と組んだから負けた」という声が高まり、選挙共闘の見直し・日共排除の動きが巻き起こっている。日共官僚が唱え実行してきた「市民と野党の共闘」の破綻が露わになっているのだ。
 こうしたなかで〝党の存亡をかけた〟来たる参院選挙での現有議席確保のために狂奔しているのが日共中央なのであって、ウクライナ戦争問題についての彼らの関心事は、〝保守層を含めた幅広い層に受けいれられる〟ことでしかない。まさにこのゆえに、彼らは、「プーチン=旧ソ連=共産党」の犯罪というキャンペーンに恐れおののき、自分たちとプーチンとの区別だてに躍起となっているのである。

 (2)いわゆる「リベラル知識人」の自殺

 日本国内の「リベラルな」文化人も「左翼的」知識人もまた、世紀の事件にたいする対応不能をさらけだしている。
 その第一の傾向は、〝ロシアのウクライナ侵攻だけを責めるべきではない。根本的にはNATOの東方拡大こそが問題だ〟などという主張である。そのなかには「西側はロシアとの間の信頼関係の形成に失敗した。だから戦争を予防できなかった」などというように、「戦勝記念日」におけるプーチンの演説と見まごうばかりの主張を展開している論者もいる。
 彼らの多くが、侵略者プーチンへの怒りをいっさい表明しない。そしてしたり顔で〝世界情勢〟やら〝ロシアの歴史〟やらを評論したり開陳したりしているのである。
 第二の傾向は、「ウクライナの武装抵抗」について露骨に違和感を表明したり反対したりしていることである。
 彼らは、ゼレンスキーは「武器を取って祖国防衛戦争に立ち上がるように求めている」、これは「国家が自国民に命を捧げることを強いる」ことである、などと主張する。そして、今日のウクライナを七十七年前の日本軍国主義とダブらせ、「火炎瓶をつくり、徹底抗戦を叫ぶ大統領。〔これは〕太平洋戦争末期の悲惨な竹やり戦術と酷似する」と言う。なかには、「ウクライナがロシア軍に対して一切応戦せず、いわゆる『無血開城』をしていたとしたら、どうなっていただろう。……街は今ほど破壊されず、人も死なずにすんだのではないか」などと、「降伏」を勧める者まであらわれる。
 ロシア軍は侵攻以来、学校や病院や住宅や住民の避難所にまでミサイルを撃ちこみ、ブチャをはじめいたる所で残虐な殺害をおこなっている。これを目の当たりにしてもなお、「無抵抗の方が良い」というのか。何も抵抗せずに殺されろというのか。それは、戦争の悲惨は見たくないということであり、つまるところ大事なのは己れ自身の小ブル的な市民生活の安泰なのだ。
 既成諸政党や労組活動家(たとえば向坂派=旧ソ連派)のなかには、これらの知識人と癒着して、「ロシア軍の犯罪行為という宣伝に〔ロシア政府は〕反論済み」「ブチャはウクライナ側のフェイクだ」などと公言する輩もいる。〝ウソも百回言えば真実〟とばかりにあらゆることについて「白を黒」と言いくるめる元KGBのプーチン、このプーチンの言をオウム返しするこうした徒輩もまた、非人間的ではないか。

 (3)中核派の錯乱

 もはやどこにも棲息していないし、労働者・人民にまったく影響がないとはいえ、今なお機関紙=スパイ通信だけは細ぼそと出している中核派――彼らが機関紙で書き殴っていることには、ただ唖然とするしかない。
 ロシアのウクライナ侵攻直後、崩壊して久しいニセ全学連のやっとこさ担ぎだしたデガラシ委員長・赤嶺や杉並区議の洞口らは、「ロシアへの経済制裁もウクライナへの武器供与も、世界戦争になるから反対」(赤嶺)とか「戦争に良い戦争も悪い戦争もない。一切の戦争反対」(洞口)とかと、血塗られた走狗のくせに小ブル平和主義(?)まるだしで実に気楽にしゃべりだした。だがこれでは「帝国主義戦争を内乱へ」「革命戦争へ」という中核派の唯一の党是である「戦争テーゼ」が吹き飛んでしまう。焦った官僚は、「とにかく悪いのは帝国主義だ」「戦争激化の元凶は帝国主義だ」とこじつけねばならない。そこで急きょ、昔の清丈テーゼ=「帝国主義のスカートにスターリン主義が巻き込まれる」などを参考にして、「バイデンがプーチンに戦争をやらせているのだ(!)」とか、「米欧を後ろ盾とする新自由主義者ゼレンスキーは、ウクライナ人民を逃げ場のない戦火に追いやった張本人だ(!)」とか、「ウクライナ戦争は……全世界で繰り広げられてきた新自由主義が大崩壊し、その全矛盾が戦争という形で爆発したものだ」とか、とわめきだした。プーチンへの非難が一切ないどころか、徹頭徹尾プーチンを擁護するとは! わが同盟との党派闘争に完敗して国家権力のもとに逃げこんだスパイ集団が、今なお左翼であるかのように装うために、〝ロシア権力者のまわし者なのか〟と疑うほどにプーチンに寄り添うとは! 錯乱の極みというしかないのだ。

 (4)世界の「左翼」諸潮流の荒廃

 ロシアによるウクライナ戦争をまえにして、「左翼」を自称する者が驚くべき混乱と頽廃を露わにしているのは、たんに日本ばかりではない。侵略国ロシアの旧スターリニスト党出自の「左翼」のほとんどが、いまやプーチンの軍事侵略に賛同し、翼賛政党と化してしまっている。
 ロシア連邦共産党はいまや「愛国勢力を結集せよ」「通敵分子を放逐せよ」などとファナティックにわめいている。ロシア共産主義労働者党もまた、ロシア軍の苦戦が伝えられだした三月に入るや、それまでの煮え切らない態度を一変させて、「ウクライナのファシスト的体制にたいする戦いは正当であり支持する」などと叫びはじめた。彼ら旧スターリニストは、ロシアの軍事的・政治的・経済的危機の深まり、ロシア国家存亡への危機的事態に直面して、二十世紀後半の米ソ角逐時代における大国ソ連「復活」の願望にとりつかれ、プーチンの大ロシア愛国主義にからめとられてしまったのだ。
 他方、まがりなりにもスターリニズムに反対してきたはずの世界のトロツキスト系の諸潮流もまた、腐敗と混迷を露わにしてしまっている。
 「ソ連=赤色帝国主義」論を掲げてきた修正派トロツキストであるクリフ派は、「ウクライナでの戦争反対」のスローガンを掲げている。「……での」という表現に示されるように、彼らは、誰の誰にたいする侵略なのかを意図的に曖昧にしているのだ。
 それだけではない。彼らは、「ウクライナでの戦争」は「帝国主義間戦争である」などと、観念的解釈丸出しの主張を開陳する。資本主義を復活させたとはいえソ連邦時代の官僚主義的システムの残存とスターリニスト官僚による国有財産の簒奪のゆえに今なおいわゆる発展途上国並みの経済力しかもっていないロシア。他方、ネオ・スターリン主義の党たる中国共産党が人民を支配する中国。彼らは、このロシアおよび中国を、ただ領土・版図・勢力圏の拡大をはかっていることをもって「帝国主義」などとみなすのである。あまつさえ、「NATOの拡大の方が問題だ」というように、彼らはいまやプーチンを公然と擁護するのだ。トロツキーの末裔のなんという堕落!
 こうしたなかで、世界のトロツキストのなかには、わが同盟がロシアの労働者・人民およびウクライナの労働者・人民に向けて発した呼びかけに触発されて、民族問題にかんするレーニンやトロツキーのスターリン批判に依拠しつつプーチンを弾劾する者(ランベール派)や、「ウクライナの武装抵抗支持」を掲げる者(マンデル派)があらわれてきている。だがそれは、今なお少数派にとどまっていることは事実である。われわれは、さらにわが同盟からの呼びかけを強化していかなければならない。

Ⅲ 腐敗と混迷の思想的根拠

 このような「左翼」諸潮流の混迷と腐敗は、いったい何故にもたらされているのか。

 労働者・人民との共存共苦の欠如

 まずもって、常日頃は「労働者・人民の側に立つ」と自称している彼らが、現にいま侵略に苦しみ侵略と戦うウクライナの労働者・人民と共存共苦する立場に立っていないこと、これが第一の決定的問題である。
 プーチンの放ったロシア軍は、学校も病院も避難所も攻撃し、ウクライナ労働者・人民にたいする拷問・銃殺をおこない、女性を暴行・陵辱し、金品も農産物も強奪している。ロシア軍は撤退時にもあらゆる残虐・非道な行為をおこなっている。ロシアの権力者・プーチンによっておこなわれているこの侵略戦争に苦しめられているのはウクライナの労働者・人民であり、そのウクライナ労働者・人民が武器を持ってたたかっている。すべての自称「左翼」や知識人や労組指導部は、この労働者・人民と共に生きる立場に立ってウクライナ戦争問題と対決すべきなのだ。
 もしも自分じしんがウクライナの地にいたならば、敵を迎え撃とうとしている同志や家族や友人たちに「武器を捨てよ」と言えるのか。「その方が命が助かる」などと評論するのは、あまりにも観念的ではないか。
 いま直接的にはなお戦火が燃えてはいない「安全」に見えるこの日本の地において、見せかけの「平和」に安住する小市民的な現状肯定主義におちいっているのが、これら多くの日本の知識人たちではないか。
 そこには、「命が大事」と言いながらヒューマニズムはない。絶対的平和主義もない。ましてやプロレタリア的な現実的ヒューマニズムはまったくないのだ。

 誰が誰を侵略しているのか

 第二は、侵略しているものは誰であり・蹂躙されているものは誰であるのかという、この実体的対立を押さえないならば、あらゆる主張は錯誤に陥るほかはないということである。
 マルクスやレーニンを少しばかりかじった知識人のなかには、レーニンの「革命的敗北主義」をもちだして、「ウクライナの労働者の降伏」を基礎づける者まであらわれている。だが、侵略され蹂躙されているウクライナの労働者・人民に「革命的敗北主義」を説教するのは、戦争の勃発といったある種の極限的状況においてしばしば露わとなる知識人の観念性と反動性を示す錯誤といわなければならない。
 レーニンが述べているのは次のことである――「革命的階級は反動的戦争において自国政府の敗北を希望せざるをえない」と。帝政ロシアは自国の領土拡大を狙って第一次世界大戦に参戦し、「祖国防衛」の名のもとにロシアの労働者・農民を動員したのであった。この戦争をレーニンは、「祖国防衛ではない・反動的戦争」であり、「敗北を希望」すると論じたのだ。
 そして、侵略されている国については事態はまったく異なることを、レーニンは明確にしている。
 「……たとえば、明日にでも、モロッコがフランスにたいし、インドがイギリスにたいし、ペルシアか中国がロシアにたいして宣戦を布告したとすれば、こういう戦争は、どちらがはじめに攻撃をくわえたかには関係なしに、『ただしい』戦争、『防衛』戦争ということができるであろう。そして、社会主義者ならだれでも、抑圧され、従属させられ、同等な権利をもたないこれらの国が、抑圧者、奴隷所有者、略奪者の地位にある『強国』にたいして勝利をしめることに共感するだろう。」(レーニン『社会主義と戦争』国民文庫七八頁、傍点は引用者)
 ウクライナは今ロシアに侵略されているのであって、この地で労働者・人民が対ロシアの戦争を断固戦うことは、レーニン流に言うならばまさしく「ただしい戦争」なのである。
 労働者階級は、侵略され抑圧され従属させられている国や民族の内部においては、人民の先頭に立って戦わなければならない。そして、もしもそこに反スターリン主義革命的左翼が実存したならば、侵略者と通じた傀儡分子や買弁ブルジョアどもを駆逐しつつ統一戦線を結成しその内部で戦うのである。それがいまだ存在しない場合には、侵略者にたいする戦いのなかから・その内部から反スターリン主義のプロレタリア党が発芽することを促すように、この日本の地から呼びかけていくのである。わが同盟が、ウクライナの労働者・人民にたいして、「<プーチンの戦争>と戦うロシアの労働者・人民と連帯し、スターリン主義の虚偽性に目覚め、レーニンが現実にめざしたような真のソビエト共和国の再建に向かって前進しよう」と呼びかけてきたのは、まさにそのためなのだ。
 全世界の自称「左翼」の混乱と対応不能のなかで、まさにわが日本の反スターリン主義革命的左翼のみがこうした追求をなしえているのはなぜか? それは――
 ①一九七〇年代に、「全世界的な米帝叩き出しの一環として日本の反戦闘争を闘う」という偏向の克服の過程において同時に、ベトナム解放闘争論を解明してきたこと。すなわち、われわれはわが身をベトナム人民の立場に移しいれ、革命闘争論的立場に立つとともに、民族解放戦争をわれわれののりこえるべき対象として措定しつつその内部からの<のりこえ>の構造を明らかにしてきたこと。
 ②一九九五年のタヒチにおいて、FLP(ポリネシア解放戦線)が「フランス核実験の強行弾劾」の大衆闘争を「タヒチ独立・ポリネシア解放」の反権力闘争におしあげた際に、全学連・労働者代表派遣団は――「こんな経験は滅多にできない。FLPの指揮のもとで断固としてたたかえ」という同志黒田の示唆にもとづいて――マオイ人民と一体となって命懸けで空港占拠闘争をたたかいぬいたこと。
 そして③イスラエル軍のパレスチナ自治区への大規模侵攻と「一超」帝国アメリカによるイラク攻撃準備の策動にたいして、アラブ世界・ムスリム人民に反米・反シオニズムの気運が高まっていた二〇〇二年、だが同時にイスラーム人民のあいだで宗派間・部族間対立が激化していたなかで、われわれは「イスラーム人民は、パレスチナ国家独立をめざして、イスラミック・インター‐ナショナリズム(イスラーム的族際主義)にもとづいて反米・反シオニズムの闘争を組織せよ!」という呼びかけを発したこと。
 この三つに貫かれているのは、共産主義者は常に必ず、虐げられた労働者・人民とともに在りともにたたかわなければならない、ということである。われわれはこれらをめぐる論議においてつねに、侵略され踏みにじられている労働者・人民の立場にわが身を移しいれ、<内在的超越の論理>にのっとって追求するべきことを、同志黒田とともに深めてきたのである。
 ちなみに、今日のウクライナ侵略戦争と太平洋戦争末期の沖縄戦とを重ねあわせて、「軍隊によって無辜の民衆が殺されている」がゆえに「ロシアの権力者にもウクライナの権力者にも反対する」という意見も存在する。かの沖縄戦において沖縄人民の四人に一人が、上陸した米軍ばかりでなく日本軍によっても死に追いやられたことは事実である。だが、今ウクライナでは国軍と領土防衛隊と武装する住民の自治組織とが一体となってロシアの侵略軍と戦っているのであって、「どこの軍隊が誰を虐殺しているのか」という実体構造から遊離して両者を重ねあわせるわけにはいかない。そもそも第二次世界大戦において、日本は侵略者であったことを曖昧にすべきではない。日本軍国主義の天皇制軍事ボナパルチズム権力が、「八紘一宇」の掛け声のもとに日本ナショナリズムを煽りながら中国大陸をはじめとした東アジアへの侵略戦争に労働者・人民を動員したことを、われわれは弾劾しなければならないのである。

 マルクス主義への無知蒙昧

 第三に、今述べたような主張を〝基礎づける〟ためにマルクスやレーニンの言説を一知半解のままにもちだして解釈主義的にアテハメる誤りである。
 たとえば、「ウクライナにもブルジョアとプロレタリアがおり、ロシアにもブルジョアとプロレタリアがいる」(イタリア・ロッタコムニスタなど)、だから「挙国一致はオカシイ」と言う。あるいは「労働者は祖国をもたない」という『共産党宣言』におけるマルクスの言葉をもちだして、ただただ「国際主義を」と主張する(トロツキストたちに多い)。だが彼らは、「労働者は祖国をもたない」というプロレタリア的存在についての本質論だけを振りまわしこれを現に今生みだされているウクライナ侵略戦争問題に投影しているだけであって、そこでは民族問題をマルクス主義者はどう考えるのかということを完全に考察のらち外に追いやってしまっているのである。
 レーニンは言った――「大国民族、抑圧民族にたいする不同権民族、従属民族の――大ロシア民族のような民族に対するウクライナ民族のような民族の――憤りと不信が、何世紀もの間に蓄積されてきた」「われわれは、民族的不信の名ごりにたいしては、きわめて慎重で、辛抱づよく、譲歩的でなければならない」と(「デニーキンにたいする勝利にさいしてウクライナの労働者と農民に送る手紙」)。
 ウクライナの労働者・人民のなかにあるナショナールな意識は、即否定できるわけではない。スターリニストによる数かずの迫害のゆえに、ウクライナ人民の民族意識がソ連邦やロシアへの怨嗟となって蓄積されていることを、われわれは受けとめて考察するのでなければならない。こうしたことの考察抜きに「国際主義」の原則を振りまわしても何の役にもたたないのだ。
 われわれは、日本の地においてウクライナ反戦闘争を断固としておしすすめるとともに、「反帝国主義・反スターリン主義」世界革命を実現するという立場に立って、ロシアの労働者・人民に「ウクライナ侵略反対・プーチン政権打倒」を呼びかけ、「スターリン主義のエセ・マルクス主義としての虚偽性」に目覚めるべきことを呼びかけている。
 そして、ウクライナの労働者・人民にたいしては、<プーチンの侵略戦争>をうち砕くための決死的闘いに熱い連帯を送るとともに、「ソ連型『コミュニズム』とはニセのマルクス主義でありスターリン主義であること」を自覚し「かつてロシア革命に『ウクライナ社会主義ソビエト共和国』として合流した、あの精神を呼び覚まそう」と呼びかけているのである。
 このようなプロレタリア的連帯の彼岸において、「それぞれの国にはブルジョアとプロレタリアがいるので挙国一致には反対」とか「祖国防衛主義反対」とかと並べたてる者たちは、ただただ頭のなかでだけマルクス・レーニンの言葉をもてあそぶにすぎない「観念左翼」にすぎず、現実には<プーチンの戦争>の随伴者となってしまうのだ。

 スターリン主義との対決の放棄

 そして第四には、スターリニズムとの対決の放棄という根本問題である。
 自称「左翼」や進歩派の輩がプーチンを事実上擁護するような言説をふりまくのは、帝国主義の西側諸国の権力者よりは、かつてはソ連であった「東側」のロシアの権力者の方がましであるかのような感覚に陥っているからではないのか。
 プーチンは一九九一年のソ連邦の崩壊を「二十世紀最大の地政学的悲劇」などと捉えたうえで、ロシアのウクライナ侵略はこれを失地回復するものであるかのように強弁している。自称「左翼」どもは、こうしたプーチンによる世紀の蛮行の居直り=正当化とまったく対決できない。それは彼らが、クレムリン官僚自身によるソ連邦の自己解体と資本主義ロシアの復活というこの現代史の結節点を、革命ロシアを埋葬した「歴史の逆転」としてとらえかえすことができないからである。根本的には、スターリニズムとの対決をまったくやってこなかったことのゆえであるといわねばならない。
 元KGBにしてスターリニストの末裔のプーチン――この男は、ソ連型「社会主義」への信奉などはもちろんなく、ただただ米ソ二大大国時代の「大国ソ連」への愛国主義的な誇りと執着に取り憑かれているにすぎない。
 だがしかし、ソ連邦を構成した諸共和国の人民は・そして東欧の人民民主主義諸国の人民は、「社会主義」ソ連邦におけるスターリン主義官僚どもによるすさまじい圧政のゆえに、西欧の資本主義諸国が掲げる「自由・人権・民主主義」を憧憬しこれに幻惑されて、いわゆる「西側」へ雪崩を打って駆けこんだのであり、こうして東欧の衛星諸国は倒壊し、ソ連邦もまた解体したのだ。
 そしてそれ以降、アメリカ帝国主義は、台頭する中国を横目で見ながら、みずからの経済的苦境をのりきるためにグローバライゼイション=アメリカナイゼイションをユーラシア大陸にも拡大しようとしてきた。グルジアにおける「バラ革命」(二〇〇三年)、ウクライナにおける「オレンジ革命」(二〇〇四年)、キルギスにおける「チューリップ革命」(二〇〇五年)、そして二〇一四年のウクライナにおける「マイダン革命」(「独裁者」ヤヌコビッチがデモ津波によって包囲されロシアへ亡命した事件――これを契機にプーチンはその後、ロシアによるクリミア半島の併合やウクライナ東部ドンバス地方の独立の策動を強めていった)。これらのバックにアメリカのなんらかの蠢きがあったことは確かであろう。
 またドイツ・フランスをはじめとする西欧帝国主義も、旧東欧諸国や旧ソ連邦構成諸国をEUおよびNATOへととりこみ、それらの労働者を本国の三分の一、四分の一という超低賃金と無権利でこき使ってきたのだ。
 だがこれらの「革命」と呼ばれる政変のなかで、怒りに燃えて決起した人民によって辞任に追いこまれたりロシアへの亡命を余儀なくされたりしたのは、すべて旧ソ連時代のスターリニスト官僚であり、ソ連崩壊後はいわゆる「独裁者」に転態していた輩なのだ。すべてを西側の陰謀と工作のせいにするのは、まさしく元諜報員のプーチンならではの言辞ではないか。
 EUとNATOの東方拡大という事態をまえにして、ソ連崩壊以降ロシアの「版図」がジリジリと削られていくことに怨念をつのらせたのがプーチンであった。そして今、ゴルバチョフやエリツィンらのかつてのクレムリン官僚どもがおこなったソ連邦構成諸国の独立を一挙に「卓袱台(ちゃぶだい)がえし」して、ウクライナを丸ごとロシアの中に編みこもうとしているのが、FSB国家に君臨する「皇帝」プーチンなのである。
 プーチンは今、ロシア革命のときにレーニンが「分離ののちに連邦制」を唱えウクライナに民族自決権を認めたことを「民族主義者をつけあがらせた」などと断じている。そして「もともとロシア・ベラルーシ・ウクライナは歴史的に一体であった」などとうそぶいている。プーチンは今、大ロシア愛国主義を鼓吹しそのためにロシア正教を活用するとともに、「大国・ソ連」への郷愁を煽るために人民にソ連のスターリン時代の赤旗を振らせてもいるのだ。
 プーチンはいま再びロシア革命を侮辱し、反革命者・ゴルバチョフやエリツィンに続いていま一度革命ロシアを埋葬しようとしているのだ。すべての世界の自称「左翼」たちは、このプーチンの犯罪に目を向けるべきではないか。
 そして、ロシアが今なお「亡国」の悲哀をかこっているのはなぜなのか。
 一九九一年ソ連崩壊後のエリツィン政権下で大混乱・無秩序・破産経済に陥った「亡国ロシア」において、元KGBのプーチンは謀略を駆使してチェチェン人民を血の海に沈め〝強い指導者〟を演出して権力の座に就いた。プーチンは汚い手口で国有財産を簒奪し、自分の親族や取り巻きのシロビキを国有企業や新聞社などに送りこみ、FSB強権型支配体制を確立してきたのであった。そして、プーチンによるチェチェン人民にたいする謀略や国有財産を詐取する手口などを少しでも暴こうとした反対勢力やジャーナリストたちを次々に謀殺してきたのが、極悪非道なプーチンなのである。
 「罪深き己が過去をも免罪し 強権体制かたむるや プーチン」(黒田寛一『日本よ!』)
 われわれは<プーチンの戦争>を絶対に許してはならない。かつては「対ソ連」の軍事同盟であった北大西洋条約機構(NATO)やアメリカ帝国主義をはじめとする帝国主義権力者の悪は、われわれには自明のことである。ソ連邦崩壊以後に「一超」帝国アメリカは、ユーゴ空爆・アフガニスタン侵略・イラク軍事侵略など、まさに今日のプーチンと同様の国家テロリズムをほしいままにし無法の限りをつくしてきた。われわれはこれにたいして断固としてたたかってきたのだ。
 われわれは、スターリン主義・ソ連邦の崩壊以後の軍国主義帝国アメリカの「一超」世界支配とその終焉を、ネオ・スターリン主義中国の台頭と米中対決時代の到来を、<米―中・露>の東西新冷戦の激化を、すべて予見してきた。すでに昨秋以来、ロシアによるウクライナ侵攻に世界に先駆けて警鐘を乱打してきたのだ。今になって<プーチンの戦争>に驚き慌て、やれ「帝国主義間戦争」だのやれ「悪いのはプーチンを追いつめた米とNATO」だのとほざき、プーチンの弁護人を買ってでている腐りきった自称「左翼」どもを弾劾し、われわれは、「現代のヒトラー」プーチンの野望を断固としてうち砕かなくてはならないのだ。

Ⅳ すべての労働者はウクライナ反戦に決起せよ

 侵略者・プーチンとその政権はいまや、軍事的にも政治的にも経済的にも、窮地に追いつめられている。首都キエフ攻略戦の大敗と東部ドンバス地方制圧戦における敗勢によって、すでにこの戦争に投入した戦力(兵と武器)の三分の一を撃破され、一日二兆円以上といわれる戦費(国家予算は三一兆円)と経済制裁によるダメージは、ロシア経済の危機を招いている。ミサイルも在庫切れが迫り、戦車は半導体の不足などのゆえに増産できない(すでに戦車には冷蔵庫などの家電から転用した半導体が使われている)。だが、プーチンはこの戦争を何の「戦果」もなしに終わらせるわけにはいかない。プーチンはありとあらゆる悪行を重ねたことのゆえに、政権倒壊はみずからの監獄入りに直結しているからだ。
 まさにこのゆえにプーチンは、マリウポリの一応の制圧にふまえて、今後は黒海沿岸の一帯のロシア軍による支配の死守(いわば防衛戦)に血眼となるであろう。そして同時に、東部とともに南部の「ロシア化」に狂奔するにちがいない。
 ロシア軍はこれまで、タンクの砲撃やミサイル爆撃によって街も村も破壊しつくし、無辜の人民を無差別に大量虐殺し、そして水・電気・ガスなどの生活インフラを破壊してきた。ロシア軍の配給する水と食料なしには人びとが生きていけない状況に追いこみ、そうすることによって制圧地域の「ロシア化」なるものをはかろうとしてきた。そこでは、全住民を調査し、多くの労働者・人民を拘束し拷問し、反ロシア的な人びとは「ネオ・ナチ」などと烙印して処刑し・あるいはロシア国内に連行し、また夥しい数の人びとをシベリア・サハリン・極東地方に送りこんでそこで働かせている。これが<プーチンの戦争>なのである。
 こうして今ロシア軍は、ウクライナ軍が掌握している東部の要衝セベロドネツク(ルガンスク州)の奪取に血道をあげるとともに、ヘルソン州などの「ロシア化」を遮二無二おしすすめ、同時に「次」を狙ってオデッサの破壊に懸命になっている。黒海の沿岸をすべて押さえれば、ウクライナは国家そのものが弱体化し、やがては親欧米政権を倒壊させられる――これが、侵攻以後三ヵ月の侵略戦争における基本的敗北のゆえに「長期戦」「消耗戦」を構えざるをえなくなっている現時点のプーチンの野望なのだ。
 しかも戦争が長期化すればするほどに世界にはエネルギー危機・食糧危機などの様ざまの危機が生みだされ、その深まりによって米欧の結束は崩れ・逆に中露を軸とするBRICSは強化される――これが人非人の「皇帝」プーチンの企みなのだ。たとえ世界で幾千万の餓死者が生まれようとも歯牙にもかけず、ウクライナの港からの食糧の輸出を阻止しているのも、そのためなのだ。
 そればかりではない。プーチンは、もしもロシア軍が支配している地域にたいしてウクライナ側が攻撃を仕掛けたならば、これをロシアそのものへの攻撃とみなして、核攻撃による反撃の挙にでる策謀をも練りあげつつあるのだ。
 こうしたプーチンの戦略転換をまえにして、にわかに浮き足だちはじめたのが、それぞれの国家的利害からこの戦争に関与してきた米欧帝国主義にほかならない。米欧帝国主義はこれまで、ロシアのウクライナ侵攻に戦慄し「今ヒトラー」の逆襲(=西進)を阻止するために、ロシアへの経済制裁とウクライナへの武器供与などをおこなってきた。だがいまや、いわば「ウクライナの勝ちすぎ」を恐れはじめている。
 アメリカ帝国主義のバイデン政権にとっての第一義的課題は、あくまでも米中対決に勝ちぬくことにこそある。「ロシアを弱体化させる」というその言辞に端的なように、この中国と結託する核大国ロシアの「強大化」は、なんとしても防がねばならない。だが、ロシアのウクライナ侵略戦争によって「NATOの束の間の結束」をはかりえたとしても、東アジアでは中国の「対外膨張」がますます加速している――八方美人のインドの蠢きを台風の目として。このゆえにバイデン政権は、「属国」日本の軍事力と経済力を動員して、中国に対抗しないわけにはいかないのである。しかも米国内では、政権の支持率は四〇%しかなく、秋の中間選挙では上下両院とも共和党への敗北が必至となっているのだ。
 他方、EUおよびNATOの諸国もまた、次第に足並みの乱れを露わにしはじめている。イギリスを襲う歴史的なインフレ、ドイツにおけるロシア産天然ガスの購入をめぐる政治エリート内部の対立と独占資本からの突きあげ、そしてフィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請にたいするトルコの反対。……
 ウクライナ侵略戦争が長期化すればするほどに、米欧権力者どもはウクライナを見捨てようとするにちがいない。
 だからこそわれわれは、たたかうウクライナ人民と連帯して、いまこそ全世界の労働者・人民の力で<プーチンの戦争>を粉砕するために奮闘しなければならない。この「<プーチンの戦争>粉砕」闘争の炎を全世界で燃えあがらせFSB国家の「皇帝」を包囲することによって、権力の苛酷な弾圧に抗するロシア人民の「静かな反戦」はやがて「プーチン打倒」を掲げた反権力の闘いへと発展していくのだ。
 プーチンは今、ロシアの人民に向かって、二千数百万の戦死者をだしながらもナチス・ドイツを壊滅させた第二次世界大戦におけるスターリン指導下の「偉大なソ連」を喧伝し、そうすることによってみずからのFSB強権型支配体制を護持することに躍起となっている。だがロシアの労働者・人民がソ連邦崩壊以後の悲惨な社会経済状況を突破する道は、スターリン主義・ソ連邦のような「強い指導者を戴く大国の復活」にあるのではない。全世界の労働者・人民を裏切り「革命ロシア」を簒奪したエセ・マルクス主義としてのスターリン主義の反労働者的本質にめざめ、かつゴルバチョフらがおこなったソ連邦解体の反革命性を弾劾しつつ、まさに一九一七年のロシア・プロレタリア革命をこの現在に再び実現することにこそあるのだ。
 そしてまたウクライナの労働者・人民は、プーチンがさし向けたロシア侵略軍を断固として撃破するとともに、ロシアの心ある人びとと連帯し、かつてのレーニンの時代のようにウクライナとロシアの地にソビエト共和国を建設する方向へと前進していかねばならない。
 われわれは右のことを、ウクライナ反戦闘争の推進とともに・またそのただなかで、ロシアの労働者・人民、ウクライナの労働者・人民に訴えつづけていかなければならないのだ。

 すべての労働者諸君!
 われわれはこの日本の地において、既成諸政党・労組指導部らによる募金と避難民支援だけにきりちぢめられた「ウクライナ支援」運動をのりこえ、「プーチンのウクライナ軍事侵略弾劾」の旗幟を鮮明にした反戦闘争を、労働戦線のなかから断固として創造しようではないか!
 われわれはまた同時に、このウクライナ反戦闘争とともに日米軍事同盟の強化反対・憲法改悪阻止の闘いを高揚させなければならない。
 ウクライナ戦争は米―中・露の新冷戦を一挙に激化させ、東アジアにおいても戦争勃発の危機が高まっている。アメリカ帝国主義につきしたがう自民党・岸田政権はいま、「憲法九条で日本が守れるのか」などと叫びつつ、日米軍事同盟の「対中国」のグローバル同盟としての飛躍的強化・軍事費の大増額・憲法改悪に突進している。この歴史的攻撃をわれわれは絶対に許してはならない。
 いまや「ネオ産業報国会」に純化している「連合」芳野指導部は、陰に陽に傘下諸労組の反戦や護憲の取り組みを抑圧している。また「全労連」日共中央盲従分子は、「安保容認」「自衛隊活用」を主張し、反戦反基地闘争の破壊者の姿をむきだしにしているのだ。
 これら既成労組指導部の闘争放棄を弾劾し、いまこそ職場生産点からウクライナ反戦闘争とともに改憲阻止・反戦反安保闘争の大爆発をかちとろうではないか!
 すべての労働者諸君! 新たな戦争的危機をうち砕くために、全世界の労働者階級・人民と連帯し断固としてたたかおう!
 (二〇二二年五月二十二日)


 「 第60回国際反戦集会海外アピール] <プーチンの戦争>を全世界人民の総力でうち砕け! 米-中・露激突下の熱核戦争勃発の危機をうち破れ! (2022.6.27日)」。
第60回国際反戦集会海外アピール 

<プーチンの戦争>を全世界人民の総力でうち砕け!

米―中・露激突下の熱核戦争勃発の危機をうち破れ!


第60回国際反戦集会実行委員会(全学連・反戦青年委員会・革マル派)


 ロシア権力者プーチンが強行しているウクライナ侵略戦争――ウクライナという国家を抹殺し「大ロシア」に組みこむことを狙ったこの悪逆無道の戦争によって、いまや数万のウクライナの人民が虐殺され、じつに一〇〇万を超える人民がシベリア・極東などへ強制連行された。この〝今ヒトラー〟の<世紀の蛮行>を、われわれは絶対に許してはならない!
 プーチンの軍隊は、東部ルガンスク州のウクライナ側の要衝セベロドネツクにたいして雨あられと砲弾をぶちこんで町を破壊しつくし、住民たちを無差別に殺戮して、この都市を制圧した。この凶暴な攻撃にたいしてウクライナの軍と領土防衛隊は、一ヵ月半の死闘の後に住民の避難を完了し、戦力をも保持しつつ撤収した。彼らはいま態勢を立て直し、南部のヘルソンをはじめとして占領された都市を奪還するための反転攻勢を開始している。
 いまやプーチンによる天然ガス供給削減などの〝逆制裁〟に怯んだ独・仏・伊などの権力者たちは、「徹底抗戦」をつづけるウクライナのゼレンスキー政権にたいして「停戦」への圧力をかけはじめた。侵略軍を撃退するために「大量で急速な武器援助」を要求しているゼレンスキー政権にたいして、彼らはわずかな援助しか与えようとしていない。国家エゴイズムを剥きだしにした欧米の権力者どもによるウクライナの見殺しを許すな! 不屈に戦うウクライナの労働者人民・兵士と固く連帯してたたかおう!
 わが日本の革命的左翼は、二月二十四日の侵略開始の直後に、「ロシアのウクライナ軍事侵略弾劾! 全世界の人民は反戦闘争に起て」と呼びかける革共同革マル派の国際アピールを全世界に発した。全学連と反戦青年委員会は、在日ロシア大使館への抗議闘争など数波にわたる「ウクライナ反戦」の闘いを果敢に創造してきた。
 いまわれわれは、全世界の労働者人民に呼びかける。ただちにこの<プーチンの戦争>を粉砕する反戦の闘いを世界のあらゆる地域から創造しよう。戦うウクライナ人民を孤立させるな! 全世界労働者人民の反戦の炎を赤あかと燃えあがらせ、殺戮者プーチンを包囲しふきとばせ!
 ここアジアにおいても、習近平のネオ・スターリニスト中国――彼らはいまやプーチンを公然と擁護している――が、「台湾併呑」の野望を剥きだしにして、大々的な軍事的威嚇行動をくりかえしている。これにたいしてアメリカ帝国主義権力者バイデンは、米日軍事同盟の飛躍的強化と・それを中軸とする多国間軍事同盟の構築をもって対抗しようとしている。ウクライナと連動するかたちで、アジアにおいても米・日―中・露のあいだの戦争の危機が日増しに高まっているのだ。
 すべての諸君。世界はいま、一九六二年のキューバ危機以来の核戦争の危機に直面している。われわれは被爆国日本の革命的左翼として全世界に訴える。米―中・露激突下の核戦争の勃発を、第三次世界大戦の勃発を絶対に阻止しよう!
 われわれは、八月七日に日本の地で第六十回国際反戦集会を開催する。全世界のたたかう労働者人民は、ともに「反戦」の雄叫びを全地球上に轟かせようではないか!

プーチンの<世紀の蛮行>=ウクライナ侵略をうち砕け!

 プーチンの軍隊のセベロドネツクにたいする攻撃は、かのマリウポリ包囲戦と同様の凄惨な焦土化作戦として強行された。それは、この<プーチンの戦争>の残虐性を象徴している。
 住居や病院や学校や商業施設など「民間人」の生活の場所を意図的に標的にした嵐のような砲爆撃。これによって住民を地下壕に閉じこめたうえで、地上に出てきた人間を侵略軍は情け容赦なく射殺した。そして、水道・電気・食糧供給などのライフラインを破壊して住民を飢餓状態に追いこんだ。
 市内を制圧したロシア軍は、占領した地域の住民を「選別キャンプ」に送りこみ、ロシアへの協力者だけを残して反抗的な者は処刑するか、シベリア送りにしている。――このような残忍なやり方は、ウクライナ民族を丸ごと抹殺しようとしたスターリンのやり方そのものではないか。
 占領下に置いた南部のヘルソン州やザポリージャ州などにおいては、侵略軍はそれらの地域を「ロシア化」する策動に狂奔している。インフラや公共機関を破壊してロシア側の配給などに頼らざるをえない状況をつくりだし、ロシアのパスポートの配布、ロシア語教育の義務化、ロシア国営放送によるプロパガンダなどを強引に進めている。だが、ヘルソンやザポリージャの人民は、「ウクライナをロシアには絶対に渡さない」という闘志を燃えたたせて、侵略者にたいするパルチザン闘争や「不服従」の抵抗を勇猛果敢に展開している。
 プーチンがこのかん東部ルガンスク一州の「完全制圧」に攻撃目標を絞りこんで凶暴な焦土化攻撃に狂奔したのは、彼が四ヵ月前に宣した「特別軍事作戦」なるものの惨めな破綻をのりきるためにほかならない。「二、三日でゼレンスキー政権を倒せる」とタカをくくって開始したキエフ攻略作戦は、ウクライナ軍と人民の強力な反撃の前に完全に撃破され、累々たる戦車の屍を築いた。第二の工業都市ハリコフの制圧作戦もまた、マリウポリでのウクライナ軍の頑強な抵抗によって戦力結集を阻まれ、無惨な敗退を喫した。ロシア軍の戦死者は三万人を超えた。五月九日の対独戦勝記念日に「特別軍事作戦の勝利」を宣言するというプーチンの企みは完全に吹き飛んだ。
 プーチンの最大の〝誤算〟は、ウクライナの軍と人民が、「ロシアには絶対に屈しない」「三十年前には戻らせない」を合言葉にして団結し、かくも勇敢に・かくも強固にロシア軍に立ち向かうとは想像だにしなかったことにある。ウクライナ民衆のなかに息づいている「抑圧者ロシア」(スターリン以来のそれ)にたいする怒りの深さ、闘志の強さに想いもおよばなかったこの小皇帝は、みずからの墓穴を掘ったのである。
 この侵略戦争・大量殺戮を、プーチンは「ネオナチからウクライナを解放する戦い」であるなどと強弁してきた。だが、いまや大量の戦死者が出ていることが国内に知れ渡り、「戦争反対」の声が拡がりつつある。この人民の「反戦」の声をもはや抑えこめないがゆえに、この男はいま、「ロシアをナチスから守った大祖国戦争を想起せよ」と絶叫し、スターリンへの礼賛をはじめた。「大祖国戦争」のようにどんなに多くの戦死者を出したとしても怯むことなくロシアのために命を捧げよ、と叫んでいるのだ。だが、いまやこの戦争の真実に気づきつつあるロシア人民を、このようなやり方で洗脳することなどできるはずはない。
 プーチンはいま、戦死者の激増と戦力の喪失、軍隊の士気低下、膨大な戦費支出の負担をつきつけられている。そして西側諸国の経済制裁によって半導体などの供給が停止され、ハイテク兵器の更新・増強がなしえない、という苦境に追いこまれている。だがこの小皇帝は、何がなんでも「勝利」のかたちをとりつくろうために、予備役や少数民族、囚人などを強制的に最前線に送りこんで戦死者の山を築いている。そしてロシア軍は、いまや半世紀前の戦車や大砲を倉庫の中から引きだして独ソ戦なみの〝物量第一〟の攻撃に頼るしか術をなくしているのだ。
 マキャベリスト・プーチンは、このようにして「戦争の長期化」をはかりながら、ロシアの石油・天然ガスに依存してきたドイツ・フランス・イタリアなどの権力者どもに音をあげさせようとしている。「西側が天然ガスの輸入を止めたらどうなるかをみせてやる」とばかりに、みずからガスの供給を削減したのだ。
 それだけではない。プーチンは、〝世界のパン籠〟たるウクライナからの穀物の輸出を海上封鎖で阻止して世界的な食糧不足をつくりだし、それを手段として各国権力者に「制裁解除」を迫っている。このゆえにいま世界は食糧危機と食糧価格暴騰に襲われ、アフリカ・中東などの途上国の民衆は破滅的な飢餓を強制されつつある。貧困と飢餓にあえぐ途上国人民を地獄に突き落とすこのような人非人的所業を断じて許すな!
 このプーチンの悪らつな〝逆制裁〟によって、エネルギーや食料品の価格高騰に見舞われている独・仏・伊をはじめとする各国権力者たちは、「ロシアに屈辱を与えてはならない」(マクロン)などとほざきながら、ゼレンスキーに「早期停戦」を求めて動きだした。それは、ロシア軍に制圧された領土をウクライナは放棄せよ、と言うにひとしい。アメリカをも含めて、戦争が長期化すればするほど、西側権力者の多くはウクライナを見捨てようとするにちがいない。
 このような困難な状況のなかにあってもウクライナの勇気ある労働者人民は、「ロシア軍を撃退するまでたたかう」という決意を燃やして、領土防衛隊やパルチザン部隊の一員として断固として戦っているのだ。
 全世界の労働者人民は、不屈にたたかうウクライナ労働者人民と連帯し、<プーチンの戦争>をうち砕くために全世界的な反戦闘争の嵐を巻き起こそうではないか!

アジア太平洋での戦争勃発の危機を突破せよ!

 ロシアのウクライナ軍事侵略は、ユーラシア大陸の東側でも激震を引き起こしている。
 習近平の中国は、西側の経済制裁で苦境に立つロシアから石油・天然ガスを大量に買いこむとともに、国連などにおいて「ロシア非難」決議をことごとく葬りさることで、プーチンを助けている。ウクライナ侵略で決定的となった米―中・露の激突のなかで、習近平政権は、西側諸国の対露制裁の足並みの乱れを睨みながら〝アメリカを追い越すチャンス到来〟と見てとり、「台湾併呑」への衝動を強めている。そのためにもいま中国軍は、南シナ海から西太平洋全体において、ロシア軍と連携しての軍艦や戦闘機・爆撃機の威嚇行動を頻繁にくりかえしている。ウクライナ侵略をみて「核をもたなければ自国を守れない」という妄念をますます深めた金正恩の北朝鮮は、中・露の支援をうけて核ミサイルの開発と「実験」に狂奔している。
 アジア太平洋におけるこの中・露の軍事的行動のエスカレーションに危機感を募らせるバイデン政権は、米日および米韓の首脳会談、米・日・豪・印のクアッド・サミットなどを連続的に開催し、対中・対露の多国間軍事同盟――「アジア太平洋版NATO」というべきそれ――を急速に構築し強化することに躍起となっている。いまや日本列島は、対中国の戦争を遂行するための米日両軍の最前線拠点としてうちかためられ、沖縄をはじめとする南西諸島は中国にたいする「先制攻撃」の拠点として軍事要塞化されつつある。
 日本の岸田自民党政権は、バイデン政権と結託して、日米安保同盟を対中・対露の攻守同盟として飛躍的に強化するとともに、ウクライナ侵略を恰好の口実として国防費の「二倍増」にむけて急加速する方針を決定した。この軍事費増額は、日本を世界第三位の軍事大国へとおしあげるものにほかならない。岸田は、六月末のNATO首脳会議に出席し、NATO諸国と緊密に連携して対中・対露のグローバルな政治的・軍事的包囲網づくりの中軸を担うことを宣明した。
 それだけではない。元首相の軍国主義者・安倍は、「日米の核共有」を声高に叫びたてた。岸田政権は、核兵器禁止条約締結国会議へのオブザーバー参加をも傲然と拒否した。このことは、彼らが「日本核武装」を狙っていることを自己暴露するものにほかならない。
 こうした軍事強国化の道を突進する岸田政権は、いま「交戦権否定」と「戦力不保持」を謳った日本国憲法の第九条を破棄する、というウルトラ反動攻撃に突進しはじめているのである。
 日本においては、労働運動は独占資本家どもの下僕となった「連合」の労働貴族によって支配され歪められている。そして日本共産党という名のネオ・スターリニスト党は、「安保反対」を放棄するばかりか「自衛隊活用」論をも提示して、自民党政府の補完物に成りさがっている。わが革命的左翼は、こうした日本の労働運動・平和運動の腐敗をのりこえ、「日米安保同盟の強化反対」「改憲阻止」を掲げて果敢にたたかっているのだ。
 いまや東アジア・太平洋は、台湾を焦点として、米・日―中・露(北朝鮮)の新たな戦争の危機に突入している。この米―中・露激突下の世界的戦乱の危機を突き破る強力な反戦の闘いを、全世界からともに創造しようではないか!

全世界から反戦闘争の炎を!

 すべての諸君。<プーチンの戦争>を阻止することができるのは、ただウクライナ労働者人民、ロシア労働者人民、そして世界の労働者人民の共同した闘争だけである。
 だが、万余のウクライナ人民が侵略者ロシアによって血の海に沈められているときに、世界の自称「左翼」は何をやっているのか!
 或る者は「NATOを引き入れたゼレンスキーもプーチンも両方悪い」としたり顔でほざき、死に物狂いで戦っているウクライナ人民に「銃を置け!」と降伏の説教をやっている。他の者は「ロシアは防衛的に対応しているだけだ」と喚いてプーチンの手先に成り下がっている。
 ロシア皇帝気取りのプーチンが隣国ウクライナを蹂躙し人民を大量虐殺しているときに、それを弾劾しない「左翼」なるものは、左翼としては死んでいる!
 もちろん、多くの心ある左翼が<プーチンの戦争>を弾劾し、ウクライナ人民とともにたたかっていることを、われわれは知っている。けれども少なからぬ自称「左翼」が、右のような反労働者的な対応を曝けだしているのだ。
 口を開けば「虐げられた民衆の側に立つ」と自称してきたにもかかわらず、このような者たちには、ウクライナ民衆を無差別に殺戮しているプーチンにたいする怒りが微塵もない。理不尽な砲爆撃に晒されているウクライナ人民と共存共苦しようとする立場もまったくないのだ。死を賭して戦っているウクライナ人民にむかって「抗戦放棄」を〝勧告〟するなどというのは、帝国主義国で牙をぬかれて安穏としている自称「左翼」の傲慢と腐敗いがいのいったい何であるのか!
 いうまでもなくレーニンは、抑圧者たる「強国」の侵略戦争にたいして被侵略側の国家が反撃の戦争を戦うのは「正しい戦争」である、と喝破した。被抑圧民族の労働者階級は断固としてこの侵略者にたいする戦争を先頭でたたかえ、と檄を飛ばしたのである。このレーニンの革命的精神を、左翼たるものはこんにちのウクライナ侵略戦争に際して貫徹すべきなのである。
 <プーチンの戦争>と対決できない惨めな姿を晒している多くの自称「左翼」は、帝国主義諸国にたいしてはかつて「ソ連」であったロシアを擁護すべきであるという感覚を護持しているのだ。それは彼らが、スターリニズムとの対決をまったくやってこなかったことのゆえなのだ。
 彼ら堕落した「左翼」は、そもそも一九九一年のソ連邦の自己崩壊という歴史的事態にたいして、プロレタリアートの立場にたって対決することを回避してきた。
 一九九一年にゴルバチョフは、スターリニスト・ソ連邦をブルジョア民主主義と市場経済の導入をもって解体し、そうすることによって同時に、プロレタリア世界革命への過渡期を切り拓いた一九一七年ロシア革命を埋葬したのだ。この世界プロレタリアートにとっての痛憤の事態を、わが反スターリン主義革命的左翼は<アンチ革命>としての「歴史の大逆転」と捉え、この逆転を「再逆転」するという決意のもとにたたかってきた。
 われわれは、ソ連邦崩壊の直後には傲り高ぶり全世界で暴虐の限りを尽くしてきた「一超」軍国主義帝国アメリカの没落を暴きだすと同時に、「新東西冷戦下の世界戦争勃発の危機」への警鐘を乱打してきた。「世界の中華」としての覇権を求めてアメリカにたいする政治的=軍事的な挑戦にのりだしたネオ・スターリン主義の習近平中国と、「亡国」の淵から這いあがれずにFSB型の強権支配と強大な核戦力だけに頼って〝版図奪還〟に盲進してきたプーチンのロシアとが、全世界労働者人民を――帝国主義諸国に対抗し競いあって――戦争と強権政治と飢餓・貧困の地獄へと突き落とす元凶となってたち現れていること。――このことをわれわれは暴きだし弾劾してたたかってきたのである。
 ソ連邦の自己崩壊に憤激をもって対決しえなかったすべての自称「左翼」は、今日の中国とロシアの反労働者的な犯罪から眼をそらし、「帝国主義のほうが悪い」という干からびたテーゼをふりまわすことしかできないのである。それは彼らが、かつてのソ連邦を「社会主義国」や「労働者国家」などと呼び、そのたび重なる犯罪行為に目をつぶってそれを擁護してきたみずからの(プロ)スターリン主義的本質をまったく反省していないからだ。根本的には、<スターリニズムとの対決>を一貫して放棄していることこそが問題なのである。
 わが日本の革命的左翼は、一九五六年のハンガリー事件との対決をつうじてみずからを創成した。それ以降われわれは、スターリニスト・ソ連邦が強行した数多の反労働者的な犯罪――チェコスロバキア事件、アフガニスタンへの軍事侵略、ポーランド「連帯」の圧殺、チェルノブイリ原発事故などの諸事件――のことごとくをそのつど徹底的に弾劾し、このスターリン主義の犯罪を暴きだす闘いを大衆的に創造してきた。
 まさにそれゆえにわが日本反スターリン主義革命的左翼は、「国連での話し合いでの解決を」などとほざいているネオ・スターリニスト党の腐敗を弾劾し、日本で唯一、<プーチンの戦争>を弾劾してたたかっているのである。
 すべての諸君。全世界の自称「左翼」の腐敗をいまこそ弾劾し突破し、<プーチンの戦争>をうち砕く国際的な闘いを断固として創造しようではないか。
 われわれは、ロシアの侵略を粉砕するために戦うウクライナの労働者人民に心から呼びかける。労働者階級が中核となり、軍と領土防衛隊と住民・義勇兵が一体となって、憎むべき侵略軍を叩きだせ!
 われわれはロシアの労働者人民に呼びかける。凶暴な弾圧に抗して「プーチン政権打倒」にむけた闘いを、今こそつくりだそう!
 ウクライナとロシアの労働者人民は、両民族のプロレタリアート・農民・兵士が合流したあの一九一七―一八年ソビエト革命の精神を甦らせて、互いに連帯してたたかおうではないか。
 全世界の労働者人民は、いまこそ殺戮者プーチンを怒りの炎で包囲せよ! そして台湾を焦点とする戦争勃発の危機をうち破る反戦闘争を創造せよ!
 われわれは、ソ連の核実験が強行された一九六一年秋に、これを擁護した日本のスターリニスト党とその傘下の原水爆禁止運動の腐敗と対決し、「ソ連核実験反対」のスローガンを掲げて果敢にたたかった。六三年には、「米・ソ核実験反対」の革命的スローガンのもとに第一回国際反戦集会を被爆地広島において実現した。それから六十年。いま世界は米―中・露激突下で再び熱核戦争―第三次世界大戦の危機に直面している。
 世界人民は、この新たな世界戦争勃発の危機を突破するために全力で奮闘しよう。すべてのたたかう人民は、わが日本の革命的左翼とともに起ちあがれ!

2022年6月27日 





(私論.私見)