―60年代、70年代は大学紛争全盛期。最近はほとんど聞かない。なぜ衰退したのでしょうか?
一番大きいのは国鉄分割民営化で、労働組合が基本的に崩壊しました。当時の学生の未熟さ故ではあると思うんですが、運動に参加した人たちが普通に就職した。なんというのかな、戦って社会を変えるというのはあんまり意味がないんだと、当時運動をやっていた人たちすらそう言っちゃうぐらいまで、運動する側が闘えなくなってしまった。
それが次の世代にも影響。負のスパイラルが続いた結果、「政治とは選挙なんだ。選挙のとき以外は、政治のことなんて考えなくていいんだ」となってしまった。そうじゃないとむしろマナー違反みたいな雰囲気がある。運動して「なんかやる」という感覚自体がなくなった。
政府の側が運動をつぶすためにキャンパスを移しちゃうとかいろいろありました。例えば、筑波大学、広島大学。法政大学も経済とか社会学部が一番学生運動強かったんですが、二つの学部を多摩の山奥に移した。大学側は移転理由を公然とは言わないが、理由はそうに違いないです。
―早稲田は1997年~2001年、学園祭がありませんでした。革マル派の資金源を断つためと言われています。そういった動きは他の大学でもあったのでしょうか?
ありますよ。4年かけると学生はだいたい入れ替わりますから。記憶がなくなったところで改革というのは大学側の常とう手段。法政も学費を上げる過程で、ボワソナード・タワーを建てるために暫定的に上げるという話をして、4年後に今度は建てるのにお金がかかったので更に学費を上げます、と。学生の側が自分たちの闘いの歴史を継承する組織がないと「やりたい放題」。大学の常識を変えていくスピードは社会よりも早いです。
―労組の崩壊。国鉄の民営化は学生運動にとっても大きな転機だったのでしょうか。
はい。
―国鉄だけの話ではなくて波及していったと?
そうです。運動は人間がやっていますから。当時最強だったのは国鉄。そこが解体されたら「もう戦えないよね」と。一気に連合の結成に向かって物事が進んでいく。
(以下中核派メンバー)
89年の総評(日本労働組合総評議会)崩壊。91年のソ連崩壊。それが与えた影響がとてつもなく大きい。基本的に日本の左翼と呼ばれる人たちは、それで心が折れた。あきらめた。雪崩を打ったというのは事実であります。
―ソ連崩壊というのはイメージが湧きますが、同じぐらい総評崩壊も大きいと?
(以下中核派メンバー)
ですね。でかい。まがりなりにも社会党があって、絶対反対で戦って、ストライキやって。春になると春闘デモ。それが一夜で、自民党となれ合うような連合に代わった。連合の方が総評より規模は大きいが、総評は力が強い。要するに戦闘力がある。要求が通らなければストライキをやる。僕ら総評を支持はしないし、社会党は嫌いですけど(笑)。
総評というところに体現されていた日本の労働者の力と言うのは、やはりでかい。90年前後までストライキというものがありましたからね。
―個別に強い労組は今でもありますよね。
はい。でも社会全体を止める力と言うのは……。その時代は総評の反対を押し切ってやれないから、正月とかに総評の会長と首相が話すとかイベントがあった。もう一人の首相、権力として労働組合があった。「賃金上げろ」とかは当時、総評の下で整然とメーデー、春闘、全体で団結して賃上げ闘争。いまは個別の労組。分断がものすごくある。
(以下中核派メンバー)
「むかし陸軍、いま総評」という言葉があったじゃないですか、80年代。いい意味で言われていたわけではないが、それぐらい力があった。
―総評崩壊、ソ連崩壊のほかに、左翼勢力の衰退の端緒になったイベントとして、他に何かありますか?
基本的にはそこで力関係がだいたい決まってしまいました。10年間くらい押しつ押されつ。そして郵政民営化があって、民主党政権のときに国鉄民営分割化の解雇闘争が正式に終わるというのが最後大きいと思う。国労とか、今まで左翼と呼ばれた勢力が「もう戦わない」と物事を決めていっちゃった。
(以下中核派メンバー)
90年代は混濁していた。あえて言うなら93~95年は、左が押していた。自民党政権崩壊、従軍慰安婦問題、河野談話、村山談話……。世の中よくなるんじゃないかという流れがあった。明白に96年以降はカウンター。つくる会教科書、歴史修正、不景気で労働者の賃金下がっていって……。とどめは小泉登場。そして民主党政権下で国鉄闘争が終わる。
―97年以降の金融危機で景気が悪くなる中で、というのも大きかったと思いますが?
それに乗じて、「会社の経営が悪いから仕方がない」と。そうなると労働者側が闘争できない。組合員を守るために、非組合員を非正規雇用に落とすとか、大手の労組では「原発現場は非組合員を送る」とか、平気でやっていた。それで「組合を信用しろ」とか「左翼を信じて」とか(はおかしい)。ある種、新聞に意見すら出てこない人、サイレントマジョリティはものすごく圧力を食らった。この20年間ぐらい左翼が注目してこなかった領域なのかな。
―昔のような強い左派ではなく、穏健なリベラルの人たちの受け皿はどこになっていくのでしょうか。
そういう人たちはすごく減っていて、その人たちが立憲民主党を支えている。とうの昔に絶滅していくという状況に基本的にはなっています。
(以下中核派メンバー)
単純に歴史が重なるわけではないが、資本主義の危機が進めば、社会の崩壊が進めば進むほど、二極分解化が進む。ナチスとドイツ共産党の戦いのように。自民党で今までやってきた連中がどんどん淘汰されて、安倍みたいな極右がのしちゃって。中間部分がどんどんなくなっていった。社会が右と左に分かれていくのは避けられないと思う。ちゃんと働いて食えて年金もらえてという社会なら、そんなにみんな(右へ左へと)走らないと思うんです。
|