3272 エントロピーの法則


EBS 067/ March 2005

熱力学第二法則

− 理論と実験 −

Challenges to The Second Law of Thermodynamics

Theory and Experiment
(Fundamental Theories of Physics, Vol. 146)
Capek, Vladislav; Sheehan, Daniel P.

2005, XVI, 347 p., Hardcover EUR 125.00 ISBN: 1-4020-3015-0

熱力学は、マクロな系の示す熱現象を、マクロな物理量を使って記述する理論体系で、熱現象は熱力学第0法則、第一法則、第二法則、第三法則の4つの基本法則として表現される。

第一法則は、静止している物体が熱的な内部エネルギーをもち、熱現象についても一般原理としてのエネルギー保存則の成立を主張、物体の状態変化における内部エネルギーの保存を述べているのに対し、第二法則は2つの物体間に起きる熱量の状態変化の方向についての基本法則である。また、物体がある熱平衡状態から別の熱平衡状態へと移る時の変化をエントロピーを使って定式化することができる。

本書は、一世紀以上にわたって破ることが不可能な熱力学の第二法則について、最近の10〜20年間の物理学文献に見られた24以上の歴史的な課題について解説している。この分野の指導的な専門家により執筆され、科学・工学・技術分野の基本法則の理論と実験的成果について詳述されている。熱の移動がない不可逆的過程の熱力学(エントロピーの法則)と第二法則の基本的な問題について解説した重要な研究文献である。

<Contents>
Acknowledgements: 1. Entropy and the Second Law; Early Thermodynamics.- The Second Law: Twenty-One Formulations.- Entropy: Twenty-One Varieties.- Nonequilibrium Entropy.- Entropy and the Second Law: Discussion.- Zeroth and Third Laws of Thermodynamics.- 2. Challenges (1870-1980); Maxwell's Demon and Other Victorian Devils.- Exorcising Demons.- Inviolability Arguments.- Candidate Second Law Challenges.- 3. Modern Quantum Challenges: Theory; Prolegomenon.- Thermodynamic Limit and Weak Coupling.- Beyond Weak Coupling: Quantum Correlations.- Allahverdyan and Nieuwenhuizen Theorem.- Scaling and Beyond.- Quantum Kinetic and Non-Kinetic Models.- Disputed Quantum Models.- Kinetics in the DC Limit.- Theoretical Summary.- 4. Low-Temperature Experiments and Proposals; Introduction.- Superconductivity.- Keefe CMCE Engine.- Nikulov Inhomogeneous Loop.- Bose-Einstein Condensation and the Second Law.- Quantum Coherence and Entanglement.- 5. Modern Classical Challenges; Introduction.- Gordon Membrane Models.- Denur Challenges.- Crosignani-Di Porto Adiabatic Piston.- Trupp Electrocaloric Cycle.- Liboff Tri-Channel.- Thermodynamic Gas Cycles.- 6. Gravitational Challenges; Introduction.- Asymmetric Gravitator Model.- Loschmidt Gravito-Thermal Effect.- 7. Chemical Nonequilibrium Steady States; Introduction.- Chemical Paradox and Detailed Balance.- Pressure Gradients and Reactions Rates.- Numerical Simulations.- Laboratory Experiments.- Discussion and Outlook.- 8. Plasma Paradoxes; Introduction.- Plasma I System.- Plasma II System.- Jones and Cruden Criticisms.- 9. MEMS/NEMS Devices; Introduction.- Thermal Capacitors.- Linear Electrostatic Motor (LEM).- Hammer-Anvil Model.- Experimental Prospects.- 10. Special Topics; Rubrics for Classical Challenges.- Thermosynthetic Life.- Physical Eschatology.- The Second Law Mystique.- Index.


21世紀の環境学、エコロジー経済学 (2001年5月)

もう一つ「第3の経済学」(2005-2)


21世紀に相応しい、有限資源観に立つ新しい経済学が必要なのです。今主流の経済学が「地球の有限性」を考慮しない、限界を認めないからです。歴史的には百年以上も前、イギリスに石炭資源の「限界」を意識した「もう一つの経済学」が誕生していました。1865年イギリスの経済学者W.S.ジェボンズ(1835?1882)の「石炭問題」です。この書はイギリスは産業革命の進展と共に、採炭深度が深くなり、19世紀末には石炭が枯渇するのでは、との懸念から書かれたものです。
今の石油のように、当時は石炭は最も大切なエネルギー資源でした。それまでの主流の「2つの経済学」、つまり資本主義経済学とマルクス経済学は、それぞれ全く立場が全く違うにも拘わらず、地球資源の有限性を全く視野に入れませんでした。ジェボンズの経済学と、その流れを今も汲む経済学を「第3の経済学」、あるいは「もう一つの経済学」と呼ぶのは、このような理由からです。しかし、この先駆的な発想も、その後の豊富な石油時代の到来と共に忘れられたのです。 
そして1972年、第1次石油危機が訪れ、改めて地球資源、特に石油の有限性が問題となりました。難解なニコラス・ジョージェスク=レーゲンによる「エントロピー法則と経済過程」が世に出たのも1971年のことです。その基本理念は「人間活動は常にエントロピーを増大させる」、「そのプロセスは非可逆的」というものでした。
下記がその思想の要であって、2行、3行目がそれぞれ熱力学の第1法則、第2法則に相当します。特に第2法則「エントロピーは常に増大する」は、自然科学上の最も根源的な原理で、これによると「人は自然の悠久なエントロピー増大過程にある、小さな陽炎のような存在」と言うことになります。


経済のプロセスはエントロピー的である:
それは物質、エネルギーの生産も消費もしない、
ただ低エントロピーを、高エントロピーに変換するのみである。
(ニコラス・ジョージェスク=レーゲン)

人類は持続可能ではない、今のままでは (2002-10)


レバノン杉は戻らなかった。世界遺産に指定され、辛うじて生き長らえるレバノン杉、数千年の残映。周りは石垣で囲まれているが、心ない観光客が記念に自分の名を彫るという。人間に破壊し尽くされ、辛うじてわずかに残った数千年の樹齢の杉だが、いま酸性雨に晒され病んでいる。

かろうじて残る、樹齢数千年のレバノン杉(1996年9月、撮影:川村徒最子200mmズーム)

15体のイースター島のモアイ像は戻った、日本人の努力によって。しかし、人間によって最後の一木まで切り倒されたイースター島の森は今も戻っていない。絶海の孤島で、虚空を見つめるモアイ像は、愚かな人類の未来を見ているのか。


CO2排出が過去最高:2000年度環境省調べ、0.3%増(2002-7)


二酸化炭素の排出量が過去最高、00年度は99年度に比して0.3%増加、12億3950億トンになったという。これにメタンなど他の温暖化効果ガスを含めると、2000年度の国内総排出量はCO2換算で13億3400万トンに上る(環境省調べ)。

これは京都議定書の削減目標基準である、1990年のレベルを8%も上回る。従って議定書の目指す90年比で6%減を達成するには、合計で14%の削減の必要ということになる。そしてその内訳だが、民生部門が4.1%増(90年比20.4%)と目立っている。一方、運輸部門は2%減(同20.8%)、産業部門は0.2%減(同39.9%)である。民生部門の増加は、家庭、オフィスなどによる。

温暖化対策がなかなか進まないが、その理由のもとを質せ、大量浪費型経済に歯止めが掛からないからである。現代工業化社会を放置したまま、ただリサイクルと叫んでも駄目なのである。このままでは京都議定書の国際公約など守れそうにない。おそらく国民の多くは問題の原点、本質をもう理解しているのかも知れない。最近もうよけいなものを買わなくなった。そのためか不況が訪れた。そこで消費を奨励しなければならない、公共事業をもっと、と日本の政治家はの考える。しかしこれは国民の総反撃をかう。

そこで科学技術分野を公共事業化しはじめた。国の機関に、大学に次々と大型の建物作られ、分析装置、コンピュータなどが工夫のない研究プロジェクトとともに膨大な税が投入され始めた。宇宙から海洋、カタカナの並ぶフロンティアプロジェクト群、そして本質を忘れたエネルギー研究などが目白押しとなる。その多くは名前を変えただけ、中身は同じの研究がいつまでも惰性のように続く。

しかし、科学技術バブルもいずれ成果が問われる。ノーベル賞をという掛け声も、いずれ意味がなかっと気づかれよう。ノーベル賞は結果である、決して目標などではない筈であるが、今の日本の指導層はそうは思わないようである。しかしこれが日本の科学技術に様々な歪みをもたらしたのである。問題解決型、国民のための研究が阻害される結果となったのである。子供の夢ならともか、く大人に対して「ノーベル賞のための研究」など本来ない。

環境研究は総合的な視点、総合学が不可欠である。例えば京都議定書遵守は、現代大量型社会の見直から達成されるのであって、新発見、革新的技術からではない。今日本では、むしろ科学技術の在り方そのものが重要な研究課題である、といってよい。

最近、石油の生産量の減退が懸念されている。ここにも本質的な「エネルギー論」が必要である。日本では、人口のいずれ来る減少が心配されている。しかし持続型の社会には人口減はむしろ好ましいことかもしれない。それでは高齢化した人口を支えられないと言うが、これも考え方である。働く意欲のある人々の仕事を工夫すればよい。いま日本独自の国家戦略、理念が必要ということである。「それ行けどんどん」ではない、考えるのである。

市場至上主義者を「合理的な愚か者」と批判するアマルティア・センは、1998年世界の貧困と開発に関する深い洞察と倫理観によって、ノーベル賞を獲得した。この1933年インド生まれのセン博士に、2002年2月19日東京大学は新しく設けた名誉博士制度第一号に選んだ。世の批判を浴び勝ちな東京大学だが、味なことをした、20世紀の機械文明を痛烈に批判する同博士を、東京大学は非常に高く評価したのである。

「明治の初め、日本人は西洋諸国にいちじるしく遅れをとっていると考えた、西洋と日本の違いをそれぞれの生き方の違いとは考えず、あちらが進んでこちらが遅れていると考えた。中国は日本より30年程遅れた。中国の様子はこの文で日本を中国と置き換えるとそっくりそのままである」と、中国文学者の高島俊男は述べている(文芸春秋、2002-8)。同感である。

もう21世紀となった。アジアの「あるべき論」をそろそろ自分で考えよう。(00-7-29)


進むタイのマングローブ林破壊(大久保泰邦 2002-2)


タイのチャオプラヤ川河口のデルタの面積はおよそ東西100 km、南北40 kmです。デルタの成長とともにマングローブの生息場所が移動するはずなので、ちゃんとした調査・研究をしなければなりませんが、100年あるいは200年前はマングローブは現在のデルタの海側の半分程度を覆っていたのではないかと思います。もしそうであれば、最近の100年間に、約2000平方キロメートルのマングローブが破壊されたことになります。

タイのマングローブ破壊は、エビの過養殖の所為と見られます。日本での沿岸養殖、イギリスなどで鮭の養殖などで行われている、餌、抗生物質などの過度の投与、つすまり効率最優先の結果なのでしょう。


京都議定書と真鍋博士


アメリカのブッシュ大統領は京都議定書を否定している。これについて温暖化理論の元祖である真鍋淑郎博士は最近、日本のジャーナリストに、次のように語った(2001-9-22 週刊ダイヤモンド)。先進国を中心とした55カ国が批准すれば、米国が批准しなくとも発効は可能であるが、これに関して真鍋氏は、「ブッシュ政権発足直後、米国は批准するのではないかとの噂が流れたが、そのときのほうが驚いた」という。

真鍋淑郎博士は米国政府の姿勢に異議を唱えないのか、と改めて問われ「温暖化がシリアスな問題でないと言うのではなく、京都議定書が合理的な手段なのか、本当に目標どおりの効果が上がるのか、もう一度考えてみる必要がある。国際社会が一致団結して努力することが大事だが、実施国は本当に削減目標を守る気があるのか、努力したら削減目標を守れるのか。ゴールを設定しても守られる保証がないとすれば、むしろ京都議定書の削減目標に頼って、目標が達せられなかったときのほうが問題は大きい」と述べた。

科学者として当然の論理である。私も以前から温暖化対策だけが特殊なのではない、地球規模の環境問題を全体像としてとらえ、未来のエネルギー供給について本気で考えないかぎり人類の問題は一向に解決しない、そして現代の大量生産型の浪費指向を見直さないかぎり、21世紀の人類の持続可能性などありえないと主張してきた。今からでも遅くはない、「論理的に、戦略的に」考えたいものである。

現代の様々な環境問題にとって必要なのは「部分学で」はなく、論理的な「全体学」なのである。欧米に倣うことの多い日本の科学者は、問題解決型の全体学に弱いようである。自分で考えないのである。(2001-9-20 YI)


無限の経済成長は可能か?


2001年9月、日本の失業率が5%を越した。そして4〜6月期の経済性成長は-0.8%となり、日本中が危機意識に陥っている。そのうえ米労働省の7日の発表によると、アメリカも失業率が4.9%に悪化したとのことである。これは予想を上回る減少だそうで、前月比で非農業部門就業者数は11万3千人減であった。内訳はサービス業が2万3千人増えたが、製造業が14万1千人減したからである。これは2000年9、10月の30年ぶりの3.9%を記録した後の大きな景気減速という。

いま世界同時不況の様相を呈しているが、日本では公共事業投資に再び期待する向きがある。果たしてそれでよいだろうか。「成長は当然」なのだろうか。しかし、アメリカの史上最大とも言われた今までの景気は、元々バブル、いずれ弾けるはずであった。消費者がカードを使い「マイナスの貯蓄率」でものを買うことそのものが、元々異常だからである。

「有限の地球」で、人間が無限に膨張出来るはずはなく、「大量生産、大量消費、大量廃棄」が要求する「浪費型の成長」にはもともと無理がある。そろそろ「成長への幻想」から目覚める時がきたのであろう。

日本国民も「浪費の奨励策」にはもう踊らなくなったが、どうして指導者は「有限の地球」で「無限の経済成長」をいつまでも願うのであろうか。ゼロ成長、時にはマイナス成長でも仕方ないのではないか、心が豊かになれば。

そのためには、雇用対策がもっとも急がれる。しかし「今までとは違った形の」。最近、京都大学の内藤正明教授は、あるNPOを通じて「雇用促進、有機農業振興、日本農業の建て直し」などを願った「3兎を追う」、ホームレスに呼びかけの運動を始めたと言う。この呼びかけに、人が集りつつあるという。全く新しい発想である。成功をを期待している。(YI 2001-9-8)


21世紀、人類は持続可能か? (PDF) (2001-7



[Reduce, Reuse, Recycle] :リサイクルは3番目
(2001-6)


循環社会構築の国民運動が展開されている。大変結構なことである。しかし、最近心配なことも増えてきた。それは現代社会の大量生産、大量消費をそのままにしては、却って社会のエネルギー消費が増えそうだからである。事実温暖化抑止のかけ声のもとで近年エネルギー消費はむしろ増えている。

「無限のエネルギー」を使えば、文字通りの「完全リサイクル、ゼロエミッション」が、如何なる場合でも可能である。これは「無限のエネルギー・コスト」をかければ、ということである。一般には金銭で計った無限コスト、という方が分かり易いが、これは誤解を招きやすい。何故なら、安い石油の上に浮いた現代の経済システムでのコスト評価は、本質的な意味を持たないからである。

多くの新エネルギー資源、例えばオイルシェール(油母頁岩)、石炭液化などは油価が上昇すれば採算がとれる、と言われてきたが、実際はそうはならなかった。近づけば遠のく蜃気楼のようなものであった。エネルギーにおいては、エネルギーの出力/入力で評価するしかないのである。

「エネルギーリサイクル」という言葉は更に気になる。それは物質は繰り返し使えるが、エネルギーは一度しか使えない、一過性だからであ。物理学の大原則「エントロピーの法則」に反する永久機関のようなことを言ってはいけない。環境問題では「理念が大事」というのは、このような理由による。

循環基本法でも[Reduce, Reuse, Recycle]はこの順番に重要と述べている。重要なことは、それは無駄をしない、浪費しないことである。そして[ゴミ]になるもの[作らない、売らない、買わない]の”3ない”が重要である。浪費をそのまま放置して循環をというの殆ど間違いである。

日本の物流は国外起源も含め、57億トンに達する。これを全て循環して、はじめて循環型社会が達成される。因みに年間で産業廃棄物は4億トン、家庭からの一般廃棄物5000万トン、プラスチック類1000万トンほどである。いま鉄、アルミ、古紙、ガラスなどはかなり再生利用されているが、それでも全体で2.1億トンでしかない。

21世紀の循環型社会は、20世紀の延長線上には無い。しかし日本も含めて世界の先進工業国では、今日からでも出来ることはいくらでもある。何故なら、「無駄」は身の回りどこにもあるからである。

一方、我々先進国の人は発展途上国に較べ、一桁多い資源、エネルギー、つまり物流を消費している。「浪費、無駄」には色々な側面があるものである。


(環境庁、環境白書)


様々な環境理念
(2001-5)


21世紀は20世紀の延長線にはない。いま欧米で様々な経済、産業、社会のあり方が模索されている。今日本で推進されているリサイクルもその内の一つである。先ずそのリストを紹介する。
また、現在の市場至上主義のマネー経済に対して、一世紀前の有限地球観に基礎を置く「第三の経済学」、あるいは「もう一つの経済学」も復権しつつある。


リサイクル系:Recycle society, Recycling, Remanufacturing, Inverse factory
 廃棄物を再利用、循環させようとするもの.

ゼロ系:Zero emission, Zero waste
 廃棄物をゼロにする考え.これは標語としてはよいがエネルギー的に問題があるものが少なくない.

エコ系:Industrial ecology, Industrial metabolism, Biomimicry
 生態系に学ぼうというもの.今後の基本理念である.

無駄系:Muda, Lean technology, Learning organization, Ecological rucksack, Ecological footprint
 トヨタの無駄を省くプロセスに影響された考えであり、Taiichi Ohno(1912-90)に基礎をおいている.

環境手法など: LCA (Life Cycle Assessment), Streamlined LCA, Environmental management system
 物流の流れをアセスする手法そのもの

社会文明論:Natural capitalism, Next industrial revolution
 従来に資本主義、マーケット主義に対する言葉.自然を資本として組み込むことが必要との考え.今後の理念形成の主流である

ナチュラルステップ:Natural step (4 system conditions)
 持続的発展には地球の資源が限られていることを、強く意識した理念で、4つの条件を基礎におく、

  1. 地下資源の利用を増やさない
  2. 自然に分解される物質を使う
  3. 徒に生態系を損なわない
  4. 資源を有効に使う

その他標語:Think globally and Act Locally, Small green steps,, Factor 4, Factor 10


2005年1月12日
改訂2005-9-12

高く乏しい石油時代が来る:「脱石油戦略」を考えよう

石井 吉徳

1 高く乏しい石油時代が来る

1‐1 地球は有限、自然も無限ではない
この簡単だが、人類にとっての「本質」を理解するのは、至難のようである。そして「有限地球」で人類は今も増え続け、物質的に無限の成長を望む。その当然の帰結として、資源を大量消費する現代工業化社会は、際限なく地球を収奪することになる。自然環境破壊も、とどまるところを知らない。地球温暖化など、地球規模の難問は現代社会を象徴する。

2002年のヨハネスブルグのサッミット最終日、国連アナン事務総長は「WEHABそしてP」が大切と述べ、科学技術はそのためにあると総括した。これらは水(Water)、エネルギー(Energy)、健康(Health)、農業(Agriculture)、生物多様性(Biodiversity)、そして貧困(Poverty)である。

これに対して、日本では「IT、バイオ、ナノ、環境」が重要な科学技術分野とされる。ここで、環境だけが問題解決型である。日本社会では昨今経済が過度に優先され、効率が重んじられるからである。これに対して国民はもう欲しいものが余りないが、日本には成長神話があるためか、指導者は国民に無理に物を買わせようとする、まだ使えるものを捨てさせようとする。これを、嘗ては「浪費、無駄」と言った。それも、そう昔のことではない。エコノミストは雇用に消費が必要と繰り返すが、本当にそうなのだろうか。これは資源浪費型の「持続不能の道」ではなかろうか、「有限地球」で人類だけが無限成長できる筈はないからである。

インド生まれのノーベル経済学の受賞者アマルティア・センは「どんな経済学者もそれ程賢くなかった、純粋な経済人は事実、社会的には愚者に近い」と言っている。

私の専門は地球物理学である、地球は丸く有限に見え、地球資源は有限としか思えない。「足るを知らない人間」の欲望をそのまま増長させれば、いずれ地球は人類を支えきれなくなる、と考えるのである。
図1ー1は1984年、ある国際シンポジウムのため作ったが、関心を持ってくれたのは外国人のみで、日本人の反応は鈍かった。当時、人口はまだ44億人、それでも地球の限界は明らかであった。それから20年、人類、地球問題は一向に解決しない。

図1-1 「地球は有限」:過剰な人口、資源の大量消費そして自然環境破壊(1984年6月27日、未だ人口は44億人)

 
未だ識者は、地球の限界を認めない。主流の新古典派資本主義と言われるエコノミストは、市場至上主義を唱え、マネーが全て、地球資源すら市場が解決するというのである。市場で物の値が上がれば、資本が投下され技術も進歩する、と考えるからである。そして、永遠に経済成長は可能と思うようである。その尺度がGDPであり、この成長が全てのようである。環境問題も例外ではなく、地球温暖化対策としての二酸化炭排出権取引などは、市場主義の典型であろう。

物を大量に生産し、そして捨てる。これが現代社会の仕組みのようだが、自然はもう大量の廃棄物を処理しきれない。大気には二酸化炭素、酸化イオウが、河川海には各種の汚染物質や農薬など、そして陸にはゴミの山である。しかし社会は、大量生産型を捨てきれない。そこで循環となるが、この過程にも大量のエネルギーが不可欠である。「ゴミは資源」などというが、ゴミとは物流が拡散、散逸、分散、そして劣化した物に過ぎない。これを元の有用な物質に戻すには、必ず相応のエネルギーが要る。
熱力学第二法則によれば、これは増大したエントロピーを下げることであり、必ずエネルギーが必要である。一方、第一法則とはエネルギー、物質の保存則である。

 



図1-2 大量生産、消費、投棄社会:循環には大量エネルギーが必要

 
図1−2の過程は、質の良い資源、低エントロピー物質を分散、拡散させる流れであり、質を低下させる高エントロピー化の過程である。これを循環させる、ごみから資源を回収するには、必ずエネルギーが必要ということである。これは熱力学の第二法則からみても当然だが、社会の理解は必ずしもそうはならない。その典型的な例が、地球温暖化対策のため発電所の排ガスから二酸化炭素を抽出、つまり濃縮して海中あるいは地中に捨てる話しである。これでは却って石油消費が増えよう。
より一般的には、社会が大量生産型を止めない限り、環境保全には益々大量のエネルギーが必要である。これは地球の有限性と相容れない。その石油にも限りが見えてきた。石油の生産が需要に追いつかず、ピークを迎えるというのが「石油ピーク」だが、そのピークはもう来ているかもしれない。
しかし国際機関IEAなどは、今後もエネルギーは大丈夫、十分需要を賄えるという。そして戦略性に欠ける日本は、このような公式見解を鵜呑みにするのである。本当にそれでよいのだろうか、これが本論の主題である。


図1-3 国際的な公式見解:旺盛なエネルギー需要は常に満たされる(DOE, IEA)

 
世界には様々な公表データがある。意味、背景は様々だが、国際的なエネルギー情報の信憑性は国家の大事であるが、嘗て日本は第二次大戦の時、十分な情報も無いまま戦争を遂行した。そして次々と作戦に失敗した。「失敗の本質」という20年前の名著があるが、これによれば日本軍は、成功からも、失敗からも学ばなかったそうである。その旧日本軍、最大の失敗は「失敗を認めなかった事」にあるという。そのために軍は「言葉を奪った」そうである。また軍隊にとって最も重要なことは、不測の事態に適切に対応することだが、旧日本軍はこの能力を全く欠いたという。言い換えれば、ルーティンはこなせるが変化に適応出来なかった、ということである。これは今の日本にも言えること、21世紀は不明である、現代日本人は心すべきである。

1−2 現代石油文明は、過去の発見量を食いつぶして繁栄している
石油は発見されて、始めて生産出来る。当たり前だが今の日本人は、この当然のことを理解できないようである。それは長年、石油は外国から買うもの、と思って来たからであろう。
図1−4は石油発見の歴史である。基本的に石油発見量はごく小数の超巨大油田できまるから、この図のように凹凸が激しい。しかし、これを平均すれば1964年がピークであった。それ以来、発見量は減少の一途であり、一方生産量は増大するのみであり、特に近年の増加は鰻登りである。中国、インドなどアジア、それに依然アメリカの増加である。今でもアメリカは4%の人口で、世界の4分の一のエネルギーを浪費する国なのにである。

 


図 1−4 世界の石油発見ピークは1964年であった、そして価格の乱高下(ASPO News 2005)

 
この状態は、表1−1で一層明快である。発見の最大は第二次大戦直後の10数年間で、その後減少し今では生産量の4分の一でしかない。一方消費量は、この表では250億バーレル/年だが、最近では300億バーレルと、その増加傾向は納まりそうにない。この間、資本投下も技術の進歩もめざましいが効を奏していない。そして最後の頼りが中東となる。


表 1−1 世界の石油発見量の推移と今の消費量:発見量の4倍

1−3 中東油田は、なぜ巨大なのか
多くの方は中東の重要性を、漠然とは理解しておられようが、その本質はそうではなかろう。そのためであろう、まだまだ石油は見つかると思うようである。勿論中小の油田はこれからも発見されるであろうが、年間消費量が300億バーレルを補うのは到底無理である。
中東の埋蔵量は桁違い、その中程度の油田でも北海油田すべてより大きい。カスピ海周辺も、一頃は第二の中東と言われたが、南部が意外に伸びなかった。中東がなぜそんなに巨大なのか、それを理解するには、先ず億年単位の地球史を理解しなければならない。


図1−5 地球史上特異な中東、大陸移動と太古のテチス海、Tethys:右最上図の赤道上(USGSによる)

図1−5には2.25億年前、ペルム紀の超大陸パンゲアが次第に分離、現在の姿になるまでが示されている。誰もが知る大陸移動だが、この過程で中東油田が出来たことはあまり知られていない。2億年前の三畳紀(Triassic)、右上図のテチス海(Tethys)が中東油田の始まりである。
石油とは有機物が熟成したもの、太陽光による二酸化炭素の光合成で出来た植物、藻などの有機物が海底に堆積し石油になったものである。堆積盆地とは、盆のようなところに堆積した地層の集積で、これがその後の地殻変動で褶曲し、馬の背のような形のように盛り上がった地質構造の上部にガス、油、水が軽い順に移動、濃集したものである。油田とは堆積盆地内の背斜構造にある。

ところでこのテチス海は、地球史上の石油生成に極めて特異だった。中生代は二酸化炭素の濃度が今より10倍も高かく、気温は10度Cも高かった。つまり地球温暖化で、植物の光合成は極めて活発であった。しかもこのテチス海は2億年もの間赤道付近に停滞し、内海であったため海水は攪拌されず長く酸欠状態が続いた。このため有機物は分解されず、石油熟成に好条件であった。この偶然が中東油田を作った。石油は探せばまだまだある、という単純な発想は地球史から見て正しくない。

更にもう一つ重要なこと、それは中東大油田の発見が古いことである。皆老齢である。次に述べる世界最大、サウジアラビアのガワール油田は1948年の発見である。その他皆老齢であること、十分認識しなければならない。

1−4 年をとった、世界最大のガワール油田
ガワール、地球上最大のガワール油田は今もサウジアラビア生産量の60%、450万バーレル/日を生産するが、既に60歳の老齢、圧力が低下し自噴しなくなった。今はもう大量の海水圧入で生産が維持されている。

 

図1-6 上)地球最大のガワール油田と、下)油田東部の生産及び水圧入井、水のフロント

毎日700万バーレルの海水を油層に圧入するのだが、生産原油には100万バーレルもの水が付いてくる。それでも、この日産450万バーレルは世界でも突出して巨大である。世界第二のブルガン油田は隣国クエートにあり、湾岸戦争時に放火されたが、その発見は1930年代と更に古い。それでも100万バール/日の生産量である。そしてイラク北方のキルクークは、1920年代の発見である。この中東に世界が頼っており、日本の依存度などは90%に達する。


1−5 20世紀型文明の終焉:石油ピークと石油減耗
地球は有限、当然石油も有限であり、人類はその可採埋蔵量の半分を既に使ったという。これをあと半分と思って安心してはならない、何故なら人間は、質のよい、取り易く儲かるものから取るからである。残りの、後述するEPRは今までの半分に較べて低下している。ネット・エネルギーが少ないのである。この意味でも20世紀型の石油文明は、終焉しつつあると思わねばならない。

振り返って石油時代だが、これは1859年のE.L.ドレークによる、ペンシルバニア北方の商業油井で幕を明けた。石油、この常温で流体の燃料が内燃機関、T型フォード1908年を可能とした。これが、大量生産型社会の幕開けである。20世紀は石油の世紀といわれるが、この石油に限界が見えてきたのである。
だが一方において、そうではないという意見がまだ大勢を占める。石油はまだまだ有るというのだが、これは見方の相違である。「資源とは何か」の理解の問題といってもよい。そこで改めて「資源とは」だが、それは、

 1)濃縮されている、
 2)大量にある、
 3)経済的に利用できる位置にある

ものである。特に1)の濃縮が大切である。
石油、石炭、天然ガス、ウラン資源など、現在の主流のエネルギー資源は、この3条件をみたしている。特に石油は、エネルギー源として優れているだけでなく、流体であるため車、航空機、船舶の内燃機関に欠かせない。そして「常温で流体」であることが、石油が他のエネルギー資源に無い優れた性質である。
自然エネルギーの代表の太陽エネルギーは2)、3)の条件を満たしているが、1)の濃縮条件を満たさない。従って大面積が必要で、濃縮をどうするかが大問題である。これが太陽エネルギーが、期待されほど進展しない理由である。
一方、森林は3条件のすべてを満たすものであり、文明は古代から森林に依って発展した。今では人類は地球の森を半分消費したようだが、その森の収奪は今も続いている。文明はその本質において、「留まる所を知らない」ようである。

前にも述べたが、人類は既に2兆バーレルといわれる石油の半分を使ったようである。しかしこれについて、3兆バーレルあるという意見など様々であるが、それらの多くは「資源とは」の条件について、同じ基準に立たないための相違と考えられる。つまり、質の良くない価値の低いものまで入れれば、埋蔵量はいくらでも増やせるからである。今までの20世紀文明を支えた、「安く豊かな石油が乏しくなった」ということ、悲観論も楽観論もその原点ではそれほど違いは無いようである。資源として「何処まで入れるか」である。
楽観論は「質の悪いものまで資源」に含める、石油ピークを主張する人は「今までの意味で、石油資源を見る」、この差である。本質的に両者共、「地球は有限」と思っている。これからも分かるが、「資源の意味」を理解することが、とても大切なのである。
近年、世界の石油資源の質が低下している。一方、回収率は通常40%くらいだが、原理的にはそれ以上に回収率を上げられるが、それに要するエネルギーは急増し、経済性は急速に低下する。そして、いわゆる「石油の寿命」とは、「可採埋蔵量を年間生産量で割ったもの」でしかない。
そこで後述する、EPR(Energy Profit Ratio)、「エネルギー利益率」が必要となる。ネット・エネルギーで評価しようというのである。

1956年、アメリカ、ヒューストンのシェル石油研究所の地球物理学者K.ハバートは、1970年代にはアメリカの石油生産がピークを迎えると主張した。当時は大変な反論に会ったが、事実1970年、アメリカ48州の石油生産は頂点に達し、その後再び生産は上向くことはなかった。これをハバート・ピークという。
石油生産量のピークは、埋蔵量を半分消費したときに訪れるという。これが石油ピーク、石油減耗論である。ハバートは、石油の生産量は横軸を年代、縦を年生産量とする、「左右対称のベル型」を辿ると考えたのである。曲線の大きさ、面積は埋蔵量に合わせ、カーブの形は過去の生産量から決めた。ハバートはこのアイデアを、アメリカ屈指のアパラティア炭鉱地帯の生産量の推移から学んだという。原理は単純だが、この発想は「資源とは何か」の本質を突くものであった。
このハバートの理論を最近、フランスのTOTALなどで石油探鉱に長年従事した地質学者C.J. Campbellが世界に応用した。図1−7は1998年、Scientific Amarican誌に発表と同じもので、これでは「石油ピーク」は2004年となっている。この2004年が賛否両論の議論となった。

 

図1-7 C.キャンベルによる全世界ハバート曲線:石油ピークは2004年(1998)


しかし、これにも見るとおりハバート・カーブは滑らかである。従って2004年という具体的な年度は、元々それほど重要ではない。21世紀の初頭、例えば2010年以前に石油の生産限界が来る理解すればよく、いわゆる石油の寿命はあと40年、という石油枯渇の話と違うのである。既述のように、元来量のみに着目する寿命に意味はないのである。それでも「狼と少年」の譬えで反論する人が多く、また悲観に過ぎるなど無視したがる。エコノミストは市場至上主義に立ち、技術者は技術万能と考える。
しかしブッシュ大統領のエネルギーアドバイザー、M.シモンズなどは悲観論ですら楽観的に過ぎる、と言っている。日本ではようやく議論が始まったばかりだが、社会のエネルギー基盤は簡単には変われないもの、この文明が変わるほど変革期に、日本はどう備えるのか。

図1−8には、石油生産、石油ピークのグラブに加えて、「天然ガスピーク」も示されている。天然ガスも無限でない。そして石油、天然ガスの生産が推定されれば、二酸化炭素排出量は計算される。図の山形の赤線である。このように石油ピーク論に立つと、地球温暖化はまったく違って見えてくる。

 



図1−8 石油天然ガスの発見の歴史、ピーク、減耗、二酸化炭素排出(ASPO,GCI 2003)

 
これからは、地球温暖化の対策、理念を根本から見直す必要があるかも知れない。石油が無限と思い対策を考えるのと、石油が既にピークにあると思うのでは、その理念に雲泥の差がある。図1−9は、IPCCと対比して石油減耗論を表現したものである。今後真剣に考える必要があろう。

図1−9 温暖化IPCCと石油減耗:人類は温暖化させ得ないか(ASPO 2004)

 

2 石油に浮かぶ現代農業

2-1石油も農業を支える。
レーチェル・カーソンの「沈黙の春」が現実となっている。いま日本の水田地帯に、生き物が殆どいないこと、ご存知だろうか。「トンビが飛ばない」のである。原因は肥料、除草剤、殺虫剤などの大量使用である。これはまた広域環境汚染、日本の海の富栄養化の原因である。

 



図2−1 石油に依存する現代農業、そして広域環境汚染

 

地質学者、大矢暁によると韓国で窒素肥料は、必要量の3倍も使用されているそうである。日本の使用量は、それを上回るかもしれないというのである。肥料も農薬も石油から作るもの、石油ピークは食の安全保障上の大問題なのである。農耕機械なども石油で動く。
石油が途絶えたときの影響は、北朝鮮、キューバの例から学ぶことが出来る。北朝鮮では、旧ソ連の石油支援が途絶えて飢餓状態となった。一方キューバは、徹底した有機農業、自然と共存する農業によって国民は飢ることはなったのである。

2ー2自然と共存する農業、多様な生態系の保持
合成化学肥料や農薬は、食料生産に絶対不可欠と思う人は多いが、この常識は本当に正しいのだろうか。長年にわたり有機農法を実践してきた愛農会などは、自然の生態系を保持すれば最低限の農薬使用でも農業は可能だという。
日本は75%が山岳である。大陸に適する大規模農業が、日本に最適とは限らない。これからは、この国土を最大限利用する知恵、営みが必要なのであろう。石油に全面的に依存し、自給率は40%の日本農業、農民の半数以上が65歳を越す国、石油減耗の時代をどう生きるのだろうか。

図2−2 先進国中で極端に低い日本の食料自給率40%(農水省1999)

 
第三世界でも問題は大きい。インドの科学者、V.シヴァは画一的な外貨獲得型農業が、インド伝来の農業を駆逐し、伝統的な多様な社会を破壊したという。「種に自然を合わせる」先端的な「奇跡の種」が、インドの土壌、自然を破壊したのである。そして緑の革命、第三世界の開発は、結局のところ農民を幸せにしなかった。遺伝子組み替え種は更に問題は深刻である。それは自分が作った穀物が種にならないのであり、自然は更に遠のく。貧富の差は一層拡大し、農民はむしろ飢える。農民が自分が食べるものを作らない、大きな矛盾である。この「自然無視の仕組み」は、グローバリゼーションによって更に促進される。今求められるのは、自然と共存する科学技術である。

 

3.理解されない資源:エネルギー資源は質が全て

3−1 質が全てのエネルギー源:エントロピーの法則から考える
石油は単にエネルギー問題に留まらない。食の安全保障を脅かし、石油を原料とする合成化学工業に大きな影響を与える。石油は現代文明の「生き血」なのであるが、この「石油ピーク」は遠い話ではない。
そこで問題の本質を、原点からで考えよう。熱力学第2法則、エントロピー法則から論じる。自然現象では、エントロピーは常に増大する。集中した質は常に拡散、分散、平準化、均一化に向かい、質は常に劣化するのである。

例を挙げよう、高温の物質を放置すれば環境温度になる。水は高地から低地に落ちる。一方、低温は環境温度になる。このように、自然状態では常に「コントラスト」が消滅するのである。人間社会も同様である。放置すると常に均一化、低俗化する。ゴミも同様、散らばるのみである。

これらの例から理解できるが、その一方向性は絶対である。その逆方向は自然には起こらない。もうお分かりであろう、エントロピー則とは経験則であり、数学で証明することではない。
これがエントロピーの法則というもの、永遠の真実なのである。この原点は「確率」である、自然は「起こりやすい方向」のみに進むのである。
このような流れを逆にする、つまりエントロピーの減少は自然には進まない。例えば、コップに落ちた赤インキ一滴は自然に分散するが、もとの一滴に戻すのは容易ではない。環境温度にまで下がった水を、再びもとの高温にするには必ずエネルギーが要る。低地に落ちた水を集めて、高地に戻すにも労力を費やさざるを得ない。既に図1−2で述べたが、拡散したゴミを資源としてリサイクルするにも、エネルギーが必要ということである。
一方、エネルギー、物質が保存される、というのが「熱力学の第一法則」である。これは量の保存であり、「熱力学の第二法則」が「質の劣化」についてであるのと対照的である。

3−2 エネルギーの出力/入力比:EPR
エネルギー資源を理解するには、その評価基準としてエネルギーの出力/入力比が本質的である。EPR(Energy Profit Ratio)、EROI(Energy Return on Investment)などそれだが、残念ながら、日本では殆どしられていない。これから説明するが、この指標はエネルギー資源を評価するに、欠かすことの出来ない重要性を持っている。EPRは次式で定義される。 

      EPR=出力エネルギー/入力エネルギー

図3−1には、EPRが20と2が例示されており、同じネット・エネルギーを得るのに、後者は10倍のエネルギーが要る。

図3−1 EPRの意味:1.0以上でないと意味ない(BJ Fleay、Murdoch University, Western Australia1998)

 
図3−2は運輸関係のエネルギー源を、EPRで比較したものである。これから分かるが、殆どの巨大油田はEPR60と高い。オイルピーク時1970年頃のアメリカの油田は20と低い。それも1985年は10を下回る。今では3程度に落ちているそうである。同じ石油資源もこのように、EPRの値は大きく異なる。同じ油田でも生産とともに、EPRは変化する。勿論低下する。
原子力発電のEPRは、この図で見る限り極めて低い。別の例では4.0という数字もあるが、これに対して、原子力関係者の言うEPRは、50と高いのである。この一桁の違いを説明することは、今後大きな意味を持つと思われる。

図3−2 各種のエネルギー源のEPRと運輸(BJ Fleay、Murdoch University, Western Australia1998)

 
この図は石油減耗の影響を、最も受けやすい運輸についての研究結果で、オーストラリアで1998年発表されている。


3−3 日本のエネルギー、今後の課題
地球は有限、いつまでも安く豊かな石油があるのではない。石油価格の乱高下は、これを反映するのであろう。ところがエコノミスト、そしてエネルギー専門家すら、中東が不安定だから石油が高騰する、というのである。そして非在来型の炭化水素資源、オイルサンドなどの重質油が膨大であると楽観する。だが、これらのエネルギーの質は在来型の油田とは比較にならないほど低く、例えばカナダのタールサンドのEPRには1.5、という数字がある。非在来型はその名のとおり石油とは全く異質の、低品位の資源なのである。

日本で話題のメタンハイドレートなどは、資源と言えるどうかすら疑問である。海水ウランも未だに研究が続けられるが、海水に溶存するウランの濃縮には膨大なエネルギー必要、エントロピーを下げる話だからである。このように低品位の希薄な物質を量の大きさのみに着目し、未来の資源という話が日本には多すぎる。この意味でもEPRの導入は大事である。

水素も例外ではない。化石燃料から水素を作る話などは、本末転倒の議論である。今後「水素」は慎重に進める必要がある。燃料電池車の論議も気になる。世界には6億台の車社会があるが、これを変える捨てる話である。

更に続ける。流行のバイオ、エネルギー農業だが、既に述べたように、現代農業は大量の石油に支えられている。このためサトウキビからのエタノールはEPR0.8〜1.7と低く、トウモロコシも1.3である。またトウモロコシの残渣からのEPRも0.7〜1.8と低いようである。
これらの例は、教訓的である。トウモロコシは人がそのまま食べるのが最も効率的であり、家畜、特に牛に食べさせ肉を人間が食べるの無駄、もったいない。植物残渣もそのまま燃料とする、発酵メタンもそのまま燃料とするのが合理的である。昔から発酵メタンは、そのまま燃料として使われている。

ハイテクがすべてよい、と思ってはならない。自然エネルギーもその性質、意味をよく理解して利用するのよい。自然エネルギーとは広く分散しているもの、広域分散型は、広域のまま利用するのが最も合理的なのである。無理に集める技術では、EPRは高くならない、それはエントロピーを下げる話だからである。 


3‐4 「高く乏しい石油時代」を生きる
石油はあまりにも優れている。代替はありそうになく、これからは「高く乏しい石油時代」が来るが、それでも石油は大事な主要エネルギー源であり続けよう。しかし、その量はしだいに減耗する。
石炭、原子力も大切、というのはそのような意味においてである。単純に脱石油というのではなく、最も大切なことは現代の浪費型社会を可能な限り改めるのである。「高く乏しいエネルギー時代」を生き抜くには、先ず無駄をしないこと浪費しないことだが、これはライフスタイルを変えるというレベルの話ではない。
人類は数億年の地球の営みを、たった半世紀、しかもその後半の四半世紀で殆どを使い切ろうとしている。このような人類に、簡単な解決策などある筈はない。人類は地球の本質的な限界、壁に遭遇しているのであって、よくある悲観論か楽観論といったことではない。
これからは冷静な科学で、「原点から考える」しかないが、日本の立場から思いつくことを次に並べる。

石炭、原子力をどう考えるか。日本の石炭、海外炭そして石炭液化など。原子力での電力供給は何処まで可能か。原子力も、上流から下流まで石油に依存する。そして燃料サイクルだが、これらをEPRで整理できるのか。

水力、地熱など在来型の自然エネルギー、そしてこれからの小型分散水力、低温地熱利用など。分散、地域エネルギーと地方自治体。

再生可能なエネルギーの積極活用は大切だが、集中エネルギーとしては限界がある。今後冷静に考えたいが、大切なことは地域分散。大型、集中は自然エネルギー向きでない。

早急に解決すべきこと、内燃機関用の燃料だが、流行に捉われないことである。水素を万能と思わないこと。燃料電池も選択肢の一つと思うべきである。

バイオ、有機廃棄物の効果的な利用が大切、先端技術に過度の期待をしないこと、エネルギー源は変換する度に損失するからである。

社会のインフラは、急には変われない。早急な対策は必要だが、思いつきの拙速をしないこと、正確な問題認識が先ず必要。

総合的な論理思考が望まれる、評価にはEPRなどネット・エネルギーを重視する。税が投入されたエネルギー技術の多くは成功していない。

天然ガスからの合成液体燃料では、天然ガスの65%がその過程で費やされる。これはLNGでの35%を遥かに上回る。そして、天然ガスも無尽蔵ではない。天然ガスから水素などは、やってはいけない。

などなど。ここで判断の基本は、「地球、自然は有限である」ことである。「限界に生きる知恵」の時代がくる、と思うべきである。

 
3−5 「物より心」:変わりつつある国民の意識
幸い国民の意識は、変わりつつある。原点としての理念も、「物より心」である。内閣府の調査によれば、「物の豊かさより心の豊かさ」を優先、重視する国民が6割に達している。この「物と心の逆転」は、20年前から始まっていた。

図3−3 物より心の豊かさを:内閣府「国民生活に関する世論調査」(平成11年12月)

 
ところが、不況の90年代、日本政府は膨大な税を費やし、公共事業として橋、道路、箱物を作り続け、膨大な借金の山を築いた。そして今科学技術振興と称して大学、国研などは建築ラッシュ、箱もの作りに忙しいが、魂はまだまだ入らない。このように税の浪費は今も続く、環境ですら技術、ビジネス優先である。そして「日本人の心」は貧しくなった、マネーは人心を荒廃させるようである。
最後に図3−4は、人類の万年単位の過去、未来である。何も説明を要しない。人類の未来が、こうならないことを願っている。
 


図3−4 万年単位の人類史:化石燃料時代は人類繁栄のインパルスか(オレゴン州知事、1975)

著名な生態学者A.ロトカは、「エネルギーが豊富なとき、エネルギーを最も多く使う生物種が栄えるが、エネルギーが乏しいときエネルギー使用最小の種のみ生き残る」といっている。教訓的である。
尚本稿にて説明不足は、私のホームページを参照されたい。http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/である。

以上


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  3. 物理科学からのアプローチ 第2講 「エネルギーとは何か」

  4. 私的エントロピー遍歴

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パーマカルチャーの原則
つながりのある配置
あるシステムのなかに配置されたそれぞれの構成要素は、孤立することなく互いに関連を持つように考慮される。異なった要素の配置を構造的に考えることによって、植物や動物あるいは建造物の間の機能的な関係を構成することができる。このような機能的な関係が作り出せれば、それぞれの構成要素のニーズを近くにある要素の生産物によってまかなうことにより、余分な労働や汚染をなくしたり少なくすることができる。
多機能性
システムのなかの一つ一つの構成要素は、それぞれができるだけ多くの機能を演じられるように選択され配置される。一般的な原則としてそれぞれの要素を少なくとも3つの機能を果たすように選択し配置しする。例えば防風林であれば、風を弱めること、蜂のための花粉を供給すること、薪や飼料などに用いられる。
多くの要素による重要機能の維持
良いデザインでは全ての重要な機能は複数の方法により果たされる。例えば食物の生産は非常に重要な機能だが、その地域にあった主要作物を育てる一方で、異常気象に耐える作物も育てておく。
効率的なエネルギープランニング
このプランニングはある地域内の各々の要素の一番良い位置を決定するのに役立つ。

区域
ある地域はその地域内で利用されるエネルギーの量によって様々な区域に分けられる。菜園や家畜のようにたびたび通わなければならない要素は家の近くか、他の活動の中心となる場所に配置され、ナッツの木など手の掛からない要素ほど遠くになる。
区分
区分プランニングでは土地を活動の中心から放射状に広がる楔形の領域に分ける。区分は太陽や風のエネルギーのように外部から入って来るエネルギーによって決定さる。それぞれの領域は利用価値のあるエネルギーを導いていくかマイナスのエネルギーを阻止あるいは散乱させてしまうようにデザインされる。例えば涼風のための領域では家を涼しくするために、風がよく通るように余り大きくならない樹木が植えられる。一方、寒風のための領域では風を止め向きを変えさせるために高い木が防風林を形成するように植えられる。
高度
高度プランニングでは斜面を下るエネルギーの利用を考える。例えば、家畜は堆肥が重力によって斜面の下の方に降りていくように斜面の上部に配置される。水源は潅漑に重力が使えるように斜面の上方に設置される。
生物資源
エネルギーの流れに目を向けることは持続可能な環境をデザインするために非常に重要である。生命のないものはエントロピーの法則にしたがって時とともに壊れていく。生命あるものは再生し、共生関係にある他の要素と交流することによって、時とともに適応性を増し、相乗作用によってより多くのエネルギーを産み出す。
可能であればどこでも、あるシステムへのインプットは生物資源に依存するようにする。こういった自然の本来的な特性を利用して食物や燃料、飼料、肥料、開墾、防虫、除草、防火、栄養の循環そしてエネルギーの節約を行うことができる。
エネルギーの循環
ある地域において消費される生物資源を含むエネルギーは、基本的に地域内において生産さる。化学肥料にせよ有機肥料にせよ地域外から持ち込まれるのであれば循環されない。生産物は地域のニーズをまかなうようにデザインされ、エネルギーのインプットとアウトプットの流れは地域において循環する。即ち、システムから漏れ出るエネルギーが極めて少なく、システム内にほとんどのエネルギーが戻される。循環の効率が良くまた地域的であればあるほどそのシステムは安定する。
小規模集約システム
小規模集約システムとは土地の大部分が効率よく利用され、また監理されていることを指す。
植物の重層
森の中では高木、中木、低木、そして草が、それぞれの生育条件に合わせて層を成している。これに倣って果樹や潅木、一年草類を重層的に植えることにより、生産性の高い集約システムを作り出すことが出来る。
時間の重層
先駆植物から極相でカノピーを形成する樹木までを一時に植える。これにより遷移の間、また極相に達してからも多くの収穫物を得ることが出来る。
自然遷移
自然のエコシステムは時間とともに成長し変化するが、それに連れて植物や動物の種も遷移を行う。現代農業では、自然の遷移を止めて一年草の段階を保っていくために耕作や除草に労働力と物理的エネルギーをつぎ込んでいる。このように自然の流れに逆らうのではなく、人間にとって役に立つ植物をそれぞれの段階の植物に置き換えていくことによって流れを利用することもできる。また、一年草種のなかに成長に時間のかかる低木類や樹木を植えることにより継続的に食物の生産を行っていくことが出来るようになる。
接縁効果
成熟したシステムの際には一年草類と先駆種と極相種が混在している。際はシステムのなかで最も多様な地域になっている。際には光と栄養分が集まるためよい生息地となる。自然の際は地形上様々なパターンを創り出す。人の定住もまた自然の際において始まった(海と海岸、平地と丘の際など)。必要なものを生産するために人は新しい際を作り出してきた(垣や道)が、そのような際はまた自然の地形に新しいパターンを付け加えてきた。持続可能なシステムをデザインする上で人間のパターンを自然のパターンに合わせることが大切。際は最も生産性の高いところなので、システム内の際を出来るだけ多くするようにデザインする事が必要。
多様性
一般的な法則として、持続可能なシステムは成熟するにつれて時間的空間的に多様になる。重要なのは異なった種の数ではなく、要素の間に存在する機能的関係の複雑さである。エコロジストの間では、システムは多様であり複雑であればあるほど安定すると結論されている。害虫や雑草、病気、気候の変化、火事などの外部からの侵入に対する抵抗力も強くなる。伝統的な農業システムには多様性を持った農業や生活様式のよい例がたくさんある、しかし、近代的な単一作物栽培に急速に移り変わってきている。先進国の人間は発展途上国に残る伝統的な農業システムを再評価し、先進国で行われている破壊的な農業技術をこれに置き換えていくという重要な役割を負っている。

エントロピーの法則と現代経済学

内藤 勝

<要約>
 環境問題の悪化、自然の破壊の大きさから伝統的経済がうの分析法、思考法が再検討されなければならない時期にはいった。そもそも経済学は、産業革命を契機として自由市場と商品経済を柱に発展してきた。したがってこの二つに関係しないものは、外部経済として扱われてきた。つまり拾象してきたのである。
 産業革命とは、農業から工業へ商業資本から産業資本へと行こうし資本主義がこれを期に確立したことを意味する。農業が支配的な社会は、自給自足に近いから使用と商品経済の発展が小さい。しかし、工業は販売を始めから目的として誕生しているから、資本主義イコール工業と言って良いほどの関係がある。経済学は、暗黙のうちに、この工業製品やサービスを対象としてきた。
 逆に言えば、自然や農業を忘れやすい学問としてしまった。リカードやミルは「自然は無限である」ととらえてきた。現代経済学も古典派経済学の伝統を引き継いで今日にいたっている。この時、経済学は自然や第一次産業の価値を見失う運命にあったように思える。
 玉野井芳郎氏は環境破壊の深刻さを見て、経済学にエントロピー(エネルギーの汚れ)視点がかけている事に気づいていた。このような思考法からは、自然や農業が持つリサイクル機能の大切さが分からない。そこで今までのものを「狭義の経済学」と呼び、全体をみることができる「広義の経済学」の創造の必要性を提言して逝かれた。本稿ではエネルギー、エントロピー視点を背景に自然と経済理論との関連を考察した。

エントロピーの法則

目次


著者の言葉 5
訳者まえがき 8
序章 地球温暖化を防ぐ英知
     
−人類が初めて直面した進歩≠ノ対するブレーキ
17
(1) 温室世界への道は必至か
 =炭酸ガス・フロンガス・酸性雨、あまりに多い未知数
19
(2) 東西両陣営が共通して直面する危機
 =科学万能の二十世紀は、まさに終焉を迎えつつある
28
1章 「エントロピーの法則」とは何か
     
−現代世界の混迷は、この法則の無視から開始された
39
(1) ニュートン的世界観の問題点
 =人類の新たなる飛躍を阻害するものは何か
41
(2) エントロピーの法則
 =その物理学的意味と社会への影響力
50
2章 人間は、何を信じて生きてきたか
     
−ギリシャから現代まで、西洋思想の歴史的考察と問題点
63
(1) 世界観は、どのように変遷したか
 =ギリシャ時代、中世、近代は何をもって区別されるか
65
(2) 機械的世界観の構築者たち
 =デカルト、ニュートンらの現代的意義を再検討する
76
(3) エントロピーと宇宙の関係
 =この法則の支配を免れるものは存在しない
92
3章 テクノロジーの実体を明かす
     
−技術革新により、人類は何を得、何を失ったか
107
(1) 歴史はエネルギー≠ナ創られる
 =エネルギーの交代劇は、巨大な社会変化をもたらす
109
(2) テクノロジーの外部費用
 =技術は進歩しても、エネルギー事情が好転しない理由
127
(3) 社会制度の発展とエネルギー
 =文明・文化の興亡と密接に関わるエントロピー
134
(4) 慢性化したエネルギー危機の恐怖
 =エネルギー超多消費国・アメリカの悲劇は救えるか
143
4章 エントロピーの経済学
     
−先進工業国社会の矛盾を排除するための指標
159
(1) 経済学の根本に流れる法則
 =近代経済学、マルクス経済学がともに犯した重大な過ち
161
(2) 崩壊へと前進≠キるアメリカ経済の現実
 =高まるエントロピーの増大に何一つ手は打たれていない
181
5章 新たなる世界観の確立
     
−いま地球は、人類にどんな未来を要請しているのか
219
(1) 新たなる世界を支える経済理論
 =新エネルギー事情のもとで富の再配分≠ヘどうあるべきか
221
(2) 太陽エネルギー時代の基本観察
 =エネルギーの大転換にあたって、人類はどんな覚悟をすべきか
233
(3) 新時代の社会制度とその価値観
 =ソフトウェア時代の到来で、人間の喜びはどう変わるか
256
(4) 科学・教育・宗教は、どう変わるか
 =これまでの常識≠ヘ、どんな変換を迫られているのか
273
(5) 新たなる文明の到来
 =転機を乗り越えた人類に、何が保証されるか
293
新版のための「あとがき」=エントロピーの七大原理 302
訳者あとがき 308

第2章 平衡系・孤立系のエントロピー論


 序論で述べたように「循環型社会形成推進基本法」が定める資源循環型社会は,その理論的な視座が極めて不鮮明である。この点を明確にするため,自然法則であり,それゆえ経済及び法律の範疇と大きく整合性を持つ熱力学の第二法則(エントロピー増大の法則)による考察を試みる。
 熱力学の第二法則とは孤立系のエントロピーが,時間の経過とともに増大していくという自然法則である。エントロピーとは物や熱の属性で,物や熱の拡散の程度を示す指標である。物質系の具体的なエントロピー(S)の値は,これを絶対0度まで平衡を維持しながら環境をゆっくり冷却する時,物質系から環境に放出されてくる熱量(q)とその時の環境の温度(T)を順次測定し,q/Tを合計すれば得ることができる(6)。
 自然界では,高温の熱は時間の経過とともに常温になる。この常温となった熱は元の高温の熱源に自然に戻ることは決してない。これが自然の不可逆性の一例であり,これを説明するために物理学者のクラウジウスが,熱と仕事の新たな状態量としてエントロピーを発見し,自然界では時間の経過とともにエントロピーが増大していくというエントロピー増大則を明確化したのである。
 このエントロピー増大の法則を経済学に援用した経済学者たちがいた。ひとりは「来たるべき宇宙船地球号の経済学」で知られるケネス・E・ボールデイングである。
 ボールディングは,1960年にシュレーディンガー著『生命とは何か』のなかで定義された「生命は絶えずつくりだす余分なエントロピーを捨てることで生命を維持している」ことを経済学に応用した。そして「生産は,高いエントロピーをもつ『屑』を他の場所に生み出すという代償をまぎれもなく払ってエントロピーを分離し,高度な秩序をもつ低いエントロピーの『生産物』(商品)を作り上げる(7)」と考えた。
 また,重要な論点として「物質の場合には,エネルギーの場合のようなエントロピーの増大法則は存在していない。エネルギーの投入が許されるとすれば,拡散している物質を集中させることは全く可能だからである(8)」と認識していた。
 ボールディングの論理に従えば,エネルギーのシステムがエントロピー増大の法則から逃れることが不可能だとしても,地球は宇宙とエネルギーのみが出入りしている閉鎖系であるため,たとえば食塩水を蒸発させれば再び食塩と水に分けることができるように,廃棄物はエネルギー投入によるリサイクルをすることで資源に戻すことができる。したがって廃棄物問題はリサイクルで解決することができることになる。
 それに対してボールディングの議論に反駁するかたちでN・ジョージェスク=レーゲンは,熱力学を援用し「生物経済学」を論じた。ジョージェスク=レーゲンも「経済過程は,低エントロピーの高エントロピーへの変換,言い換えれば,再帰不可能な廃物への変換,あるいははやりの言葉でいえば,環境汚染への変換から成っている(9)」と考えた。この点ではボールデイングの議論と同じである。
 しかしジョージェスク=レーゲンは「ボールディングのように『ありがたいことは,物質のエントロピー増大の法則はない』,と言ってしまうこともまったく正確ではない(10)」と,物質にエントロピー増大則が存在しないことには反対した。そのうえで「閉鎖系において物質のエントロピーは究極的に最大値に達しなければならない(11)」と熱力学の第四法則として論じ,「われわれはガラクタだけをリサイクルできるのであって,散逸した物質はリサイクルできない(12)」,「重要な点はリサイクリングが完全ではありえないということである(13)」とリサイクルを否定した。つまり,リサイクルは,廃棄物となった物質を人間の利用可能な形態に戻すことは可能であっても,時間の経過とともに摩耗・劣化・散逸した物質を元に戻すには,厖大なエネルギーと無限に近い時間を要するととらえ,それを否定したのである。
 これをエントロピー論で言い換えれば,エントロピーの発生量の大小の問題になるのである。つまり,資源を取り出すエントロピーと比較して,リサイクルする際に発生するエントロピーが大きければ意味をなさないし,小さければリサイクルは成功したことになる。
 そこでリサイクルではエントロピー増大法則から逃れることは不可能であり,「われわれが最大限なしうることは,資源の不必要な消耗と環境の不必要な悪化を防止するということにすぎない(14)」との結論に至った。
 ボールディングも「エントロピーの法則を物質に応用すれば,物質にはたえず拡散していく傾向がある,ということになろう(15)」と前言を撤回し,「まき散らされたものを収集するにはエネルギーが必要だし,そのエネルギーは膨大なものとなるかもしれない。それゆえ,再利用が究極的な解決策だという,あまりにも安易な想定には賛同できない(16)」と後に,ジョージェスク=レーゲンの指摘に賛成することとなる。
 2人の経済学者が到達した結論として,第1に重要なことは経済過程は非循環的であり,エントロピー増大則により廃棄物が発生することは回避できない。それどころかそれがむしろエントロピーの増大を促進しているのだということである。第2にリサイクルを用いたところで資源枯渇を遅らせることはできるが,将来的に回避は不可能である。そして第3に最も重要なのは,人間にできることは資源をできるだけ節約し,環境の悪化の促進を抑制することだけなのだということである。そして,いつしか訪れるエントロピーが最大値に至る日を待つしかないことになる。
 以上の帰結から,平衡系・孤立系のエントロピー論で経済過程を考察するとき,資源から廃棄物の流れはエントロピーの増大過程であって,廃棄物の発生を防ぐことは不可能となる。そして,将来的には廃棄物の捨て場が枯渇することになる。もちろんそこではリサイクルも決定的な意味をなさない。
 したがって「循環型社会形成推進基本法」の規定する資源循環型社会とこれまでの平衡系・孤立系のエントロピー論を応用した経済過程の論理から,本法は将来的な人間の生命活動の停止が回避不能だとの前提で,廃棄物問題を先延ばしにしているだけの法律ということになる。同時にこの点で第1章第2節で論じた「循環型社会形成推進基本法」の内包する欠陥とこの章で扱った同法の平衡系・孤立系のエントロピー論の理論的視点からの考察は,明らかに整合性を持っているといえる。だが一方ではその立法目的とは整合性を持たないともいえる。近代熱力学で廃棄物の発生メカニズムを分析したうえで抽出された結論は,以上のように同法が人類の持続可能性を促すどころか完全に断つものであるということである。

エントロピ−の法則

 リサイクル運動が盛んに行われたり、地球温暖化に関して地球サミット が開かれたり、世界的な規模で資源問題や環境問題が盛んに話題になって来ています。なぜこんなに急に騒がれ出したのでしょうか?
 今回はこの問題を考えてみたいと思います。
みなさんは エントロピー と云う言葉を聞いた事がありますか?
耳慣れない言葉だと思いますがエントロピー とは、一般にはわからなさの程度或は、でたらめさの度合と云われています。具体的に云いますと、エントロピーが小さい と云うのは、物が別々に区分されていて使い易い状態(即ち、規則性があって、でたらめさが少ない状態)にあることを云います。
例えば、家庭でよく使う「塩」と「砂糖」は別々な容器に入っているから使い易いのですが、これら一旦混ぜてしまえば、殆ど役に立たなくなってしまいます。また、100℃のお湯1gと0℃の水1gが別々に有れば役に立ちますが、これらを混ぜて50℃のお湯2gになってしまえば余り役には立ちません。このような混ざり合った状態(でたらめな状態)になることを エントロピーが増大した と云います。
このように エントロピー を増大させるのは簡単ですが、減少させるのはとても骨の折れる事なのです。例えば、混じり合ってしまった塩と砂糖を分離することを考えてみてください。また、一旦混ぜてしまった50℃のお湯を、元の100℃のお湯と0℃の水に戻す事が出来ますか?  覆水盆に返らず と云う諺に象徴されると云ってよいでしょう。
もっとはっきり云えば、 エントロピー は増大する方向にしか進まず、そこだけ減少させてもどこかで別の所で エントロピー が増え、全体では エントロピー は必ず増大します。
 これは物理学(熱力学)の基本的な大法則なので、どんなにがんばってみても、人間の力でこれを変えることは絶対に出来ません。
 因みに、熱力学には2つの法則(正確には3つ)があります。その一つは(これは皆さんもご存じと思いますが)、 宇宙における全エネルギーの総和は一定である と云う エネルギー保存の法則 であり、いま一つは、ここで問題にしている エントロピーの法則 です。前者がエネルギーの量を規制しているのに対し、後者はエネルギーの 質・方向を規制しているとも云えるものです。

本来、自然界はこの エントロピー の増大を抑制する力は持っているのです。 
例えば、排せつ物や廃棄物の一部は微生物の働きで無機物に還元したり、地表で生じたエントロピーの増加(実際は熱)を水が吸収し、水蒸気となって上空へ昇って熱輻射によって宇宙空間に捨てて、再び水となって地上に戻って来る、いわゆる水循環の機構であります。
しかし、それ以上のスピードでの人間の手による エントロピー の増大(使用不可能なエネルギーの増大)が、現在地球的規模で進んでいるのです。特に産業革命以後急激に進み、それが大気汚染・水質汚濁・ゴミ公害として現実化して来ているのです。しかも年々加速度的に進行しています。人類は、食料問題やエネルギー問題で消滅する遥か以前に、まず、 エントロピー 問題で消滅するだろうとも云われています。
それでは、どうすれば良いのでしょうか?

先ほども述べたように、 エントロピーの増大 そのものを防ぐことは出来ませんが、増大の程度を少なく抑えることは出来ます。
 その一つが、3Rと言われるものです。3Rとは、Reduce(発生抑制)、Reuse(再使用)、Recycle(再生利用)の3つのRです。更にRefuse(ごみになる物は買わない)を加えて、4Rと呼ぶこともあります。
「混ぜればごみ、分ければ資源」 これがエントロピ−の法則と考えて良いでしょう。

 環境はこれからの新しいビジネスとして注目されていますが、環境をビジネスとするには、それなりの大きな課題がありますが、それは次の機会に譲ります。

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(私論.私見)