428539 | 【フセイン政権懲罰裁判考察】 |
(最新見直し2006.11.7日)
(れんだいこのショートメッセージ) |
「フセイン政権懲罰裁判」の一部始終を書きつけ、後日の証としておく。 2006.11.7日 れんだいこ拝 |
【フセイン裁判前までの動き】 |
フセイン及びバース党については、「フセイン履歴、語録」、「バース党考」に記す。 2003.4月、フセイン政権崩壊。6月、連合国暫定当局(CPA)による占領統治開始。12月、統治評議会がイラク特別法廷設置を発表。フセイン元大統領を発見、拘束。2004.6月、CPAがイラク暫定政府に統治権限移譲。7月、特別法廷が元大統領らを戦争犯罪容疑で告発、予備的な審理が開始された。2005.1月、国民議会選挙実施。7月、予審判事、中部ドゥジャイルのイスラム教シーア派住民虐殺事件で元大統領らを起訴と発表。05年10月にドジャイル事件の初公判を開いた。旧政権を裁く高等法廷は、米軍などの占領下にあった2003年12月、米英占領当局とイラク統治評議会によって「特別法廷」として設置されることが決まった。後に名称が「高等法廷」に変更された。 |
【フセイン裁判始まる】 |
2005.10.19日、イラク・バグダッドの特別法廷で、イラクのサダム・フセイン元大統領(68)ら旧政権の幹部8名を裁く初公判が始まった。公判廷は、元大統領が率いた旧バース党本部で、高さ3メートルの壁に囲まれ、米軍、イラク軍の兵士が警備するなど厳重な警戒の下で開廷した。イラク国内法に基づき5人の判事によって審理が進められ、2審制。 元大統領はラマダン元副大統領ら7人とともに、1982年に中部ドゥジャイル村のシーア派イスラム教徒約150人を殺害した罪に問われた。88年に起きた少数民族クルド人の虐殺や90年のクウェート侵攻、戦争犯罪や「人道に対する罪」などでも起訴される見通しだ。クルド人のリズガル・ムハマッド・アミン裁判長が被告団に対し、被告の権利とともに起訴状を朗読した後、罪状認否に入った。小さな室内の右に弁護人、左に検察官が座った。 テレビ中継によると、虐殺などの罪で起訴されている元大統領は、裁判長の人定尋問で氏名と住所、職業を聞かれると、「神の名において」とコーラン(イスラム教の聖典)を唱え始めた。遮った裁判長に、「私のことを知っているだろう。君こそ何者かね。この法廷は何をしたいのかね」、「私はイラク共和国の大統領として憲法上の権利を持つ」、「これは偽りの裁判である」などと発言し、名乗らずに着席した。 アミン裁判長が「サダムさん。始めなさい。有罪かね、無罪かね」と尋ねると、サダム被告は静かに「何度も同じことを言う。無罪だ」と答えた。3時間の公判は荒れ模様で、サダム被告が裁判官たちとやり合った。裁判の正当性を認めない考えを示した。休廷が宣せられると、同被告は笑顔をみせ、法廷を出ようとした。廷吏二人が腕をつかんで同行しようとすると、同被告は怒って腕を振りほどいた。被告は自分で歩き出し、誰も止めなかった。二人の警護要員が後ろに付いて、法廷から出口に向かい、傷つけられた様子は微塵もなかった。次回公判は11月28日の予定。 |
【フセイン裁判の茶番性】 |
この法廷は、国連決議にもとづいた旧ユーゴの国際戦犯法廷などと異なり、、裁判自体、旧政権に弾圧されたシーア派とクルド人勢力が主導し、米国の法律専門家が多数支援に当たるなど米国占領下でつくられたイラクの国内法廷なので、「勝者の裁判」となった。フセイン元大統領や弁護団は法廷の正当性に異議を唱えている。国連や人権団体からは独立性、正当性などへの懸念も出ている。国際法曹家委員会(ICJ)は19日、声明を発表して、サダム・フセイン裁判の公平性についての懸念を表明した。 アナン国連事務総長は19日の記者会見で、イラクのサダム・フセイン元大統領の初公判が開かれたバグダッドの特別法廷について「司法手続きや審理は国際基準に合致しなければならない」と述べ、間接的に同法廷の審理の在り方を批判した。事務総長はイラクの旧フセイン政権の大量虐殺などを裁く特別法廷について問われ「人道に対する罪を犯した者は法の裁きを受けなければならない」と述べる一方で、国際基準に沿った審理の重要性を強調した。 |
【特別法廷の弁護士射殺される】 |
2005.10.21日、イラクのフセイン元大統領ら旧政権幹部の戦争犯罪を裁く特別法廷で、バンダル元革命裁判所長の弁護士を務めていたサドゥーン・ジャナビ氏が初公判翌日の20日、市内東部の事務所で、乱入した約10人の覆面武装集団に拉致された。数時間後、市内のモスク付近の歩道で、頭部に2発の銃弾を受けて死亡しているのが見つかった。警察当局が21日、明らかにした。 |
【その後の審理の経緯】 |
2005.10月、初公判でフセイン被告が無罪を主張。2006.6月、フセイン被告らに死刑求刑。8月、クルド人大量虐殺事件で初公判。11月、バグダッドに外出禁止令。 イラクのマリキ首相が公然と「早期の死刑が治安安定に寄与する」と語ったり、フセイン被告に同情的な態度を示した裁判長が更迭されるなど、「裁判自体が政治的な配慮で動いている」との釈然としない思いがアラブ世界には広がっている。 |
【フセイン元大統領らに死刑判決下される】 | ||||||||||||||||
2006.10.5日、反体制派の弾圧・迫害で人道に対する罪などに問われたイラクのフセイン元大統領(69)の判決公判がバグダッドのイラク高等法廷が首都バグダッドなど4県に外出禁止令が出され、駐留米軍とイラク治安部隊が厳戒態勢を敷く中で開かれた。アブドルラフマン裁判長が求刑通り死刑(絞首刑)を言い渡した。判決が出たのはイラク中部ドジャイルで82年に起きたイスラム教シーア派住民殺害事件。事件では元大統領暗殺未遂への報復として148人が殺害されたとされる。起訴された8被告中、元大統領、イブラヒム元ジュネーブ国連代表部大使、バンダル元革命裁判所長官の3被告が死刑、ラマダン元副大統領が終身刑の判決を受けた。 イスラム教の聖典コーランを手に公判に臨んだ元大統領は裁判長から絞首刑が宣告されると人さし指を立てた右手を高く掲げ、「神は偉大なり」と繰り返した。さらに裁判長に向かって「人道の敵だ」、「侵略者に死を」、「スパイに死を」、「国家の敵に死を」と叫んだ。 高等法廷は2審制。死刑・終身刑判決の場合は自動的に控訴審で1審判決の妥当性が審理されるため刑は5日の判決では確定しない。控訴審が1審判決を妥当と判断すれば30日以内に刑が執行される。イラク北部クルド人居住区で18万人が虐殺されたとされるアンファル作戦(88年)の審理が継続中の上、10件の追起訴が見込まれている。 国家指導者の戦争犯罪は故ミロシェビッチ元ユーゴスラビア大統領を裁いた旧ユーゴ国際戦犯法廷(オランダ・ハーグ)のように国際法廷が審理にあたるのが一般的だが、フセイン元大統領の場合はイラク人が自らの手で裁く形を取った。国内法廷となった背景には、国際刑事裁判所の規定に署名していない米政府や、旧政権幹部を厳罰に処したいイスラム教シーア派、クルド人勢力の意向などがあったとされる。 フセイン元大統領の弁護団は判決公判が米中間選挙の投票2日前にあたることから「政治利用」と非難、延期を求めていた。イラク政府は妨害テロなどを警戒、バグダッドなどに外出禁止令を発令する厳戒下での判決公判となった。 ◇イラク高等法廷が言い渡した各被告に対する判決は次の通り。
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【ブッシュ米大統領の見解】 | |
10.5日、ブッシュ米大統領は、2日後に迫った中間選挙の遊説に向かう途上、テキサス州ウェーコの空港で、イラク高等法廷がフセイン元大統領に死刑判決を言い渡したことについて次のようにコメントした。
大統領はまた、ネブラスカ州での演説で「サダム・フセイン(元大統領)を打倒するというわたしの決断は、正しい判断だった。世界はより安全になった」と重ねて訴えた。 治安回復のめどが立たないイラクでは、米兵の犠牲者が増え続け、イラク政策が最大の争点となった7日の米中間選挙で与党・共和党の苦戦が伝えられている。こうした中、ブッシュ大統領はフセイン政権打倒の正当性を改めて強調、イラク民主化プロセスの進展を印象付け、中間選挙で劣勢に立つブッシュ政権にとり、死刑判決はイラクの「進展」を訴える好材料になった。 判決公判が投票直前に設定されたことで米国の介入を疑う声に対し、スノー米大統領報道官は「全くばかげている。イラク国民は彼らがなすべきことを行っている」と反論した。 スノー米大統領報道官は判決に対し、「今日はイラクの人々にとって良い日だ」と歓迎した。ハリルザド駐イラク米大使もイラクが「法の支配に基づく自由な社会の建設に向けて重要な段階を迎えた」と評価した。 |
【フセイン死刑判決、出身地で2000人が抗議デモ】 |
サダム・フセイン元大統領に死刑判決が下った5日午後、フセインの出身地の中部ティクリート市で、判決に抗議する大規模なデモが行われた。2000人近い住民らがフセインの肖像を掲げ、「アッラー(神)は偉大なり」などと叫びながら市内を行進した。首都バグダッドのほか、ティクリート市を含むサラハッディン県全域に外出禁止令が出されていたが、判決直後、イラク軍の車列が襲撃される事件が起きたほか、スンニ派武装組織が市街地を占拠し軍部隊が同市から撤退したとの地元報道もある。 |
【イラク首相が、フセイン被告の死刑執行年内にもと発言】 |
11.7日、イラクのマリキ首相は、英BBCテレビとのインタビューで、死刑判決を受けたフセイン元大統領は年内に刑の執行が行われるだろうとの見通しを示した。同首相は、欧州などから死刑に対する反対意見が出ていることに関連して、「外国からの、あるいは国内のいかなる圧力にも屈しない」と強調、すべてはイラクの法律に従って進められると述べた。上訴審が死刑の判断を確認すれば、それを執行するのが政府の責任だと語った。 |
(私論.私見)