428918 | 「財政民主主義」について |
新憲法は、戦前の苦い経験から学んで「財政民主主義」を打ち出した。例えば、憲法83条は財政に対する国会中心主義を明記し、同85条と財政法15条1項は国費の支出や債務負担行為について国会の承認を必要としており、戦前しばしば見られた政府の恣意的な支出や債務負担を禁じた。財政法4条で赤字国債を、同5条で国債の日銀引受(日銀引き受けの赤字国債発行)を原則的に禁止した。この二つの条項は、憲法9条の戦争の放棄と戦力の不保持を財政面で裏付け、財政インフレの未然防止をはかるものであった。戦前の満州事変以降の無制限な軍事費膨張が日銀引受による赤字国債の乱発で促された、との認識に拠った。GHQの国債発行禁止指令もあり、この条項が生み出された。 「公債不発行主義」による「健全均衡財政」が財政当局の金科玉条となった。 戦後の財政法は単年度主義をとり、継続費に関する条項を設けなかった。継続費は、明治以来、中長期の国防計画に利用され、軍部の既得権となっていた。戦前に師団増設や艦隊拡充などの軍事費が増え続けたのは、これによった。この経験からの措置であった。例外として、国庫債務負担行為の支出年限を3年稲井に区切るとしていた(15条の3)。 |