大麻取締法考

 更新日/2017.1.25日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 ここで、「大麻取締法考」をものしておく。「なぜ大麻取締法はできたのか 」その他を参照する。

 2017.1.25日 れんだいこ拝


大麻取締法考


【大麻草考】
 「大麻取締法改正に向けての請願法活用の勧め」。「『請願法活用掲示板』はこちらに有ります。
 なぜ大麻取締法はできたのか

※丸井英弘、中山康直共著「地球維新 Vol.2」(明窓出版)より抜粋
 本書はこちらで紹介してあります

 中山康直: 1948年に制定されたこの法律は、その当時のアメリカを主体としたGHQの押し付けによる法律ですが、当時、法律の制定理由のひとつに、実は日本人のアイデンティティーを封印しようという考え方もあったと思います。こんなに小国の日本が大国のアメリカを悩ませました。そこでアメリカは、日本人のアイデンティティーや日本の文化を徹底的に調べ上げたわけなんですね。その中で日本人の文化に興味と恐怖を抱いた。日本には、神道とか弓道とか武道などといった、自然と繋がるための「道」があると分かった。そして、その道を封印するということも、占領軍の政策の重要なポイントだった。(中略) 日本の文化で麻が多岐にわたって使用されていましたから、大和のスピリットを弱体化させようということで、この大麻取締法が制定されたという側面もあると思います。

 丸井英弘: 大麻取締法は憲法の原則からすると極めて問題のある法律です。目的既定のない法律であり、被害者もはっきりしない。あと、職業選択の自由で保障されるべき、麻の栽培が自由にできない。これは憲法に反するんじゃないかと思います。(中略) そもそも大麻取締法自体が、国民に対して虚偽の情報を流しながら維持している法律ですよね。本当のところを知らせていない。大麻の栽培を規制する命令が、1945年にGHQが日本を占領してその年の11月にもう制定されているんですよ。わずか3ヵ月で。当時は全面禁止でした。そうすると、日本の麻産業が壊滅的打撃を受けるわけですよね。従来は日本全国で麻を栽培していたわけで、いろいろな用途に使っていたんですよね。神事にももちろん使っていたんですけれども、それも含めて対日占領政策で規制しているわけですよ。武道とかも全面禁止しましたよね。

 中山: 麻というのは環境や健康をサポートし、産業として活用できるだけじゃなくて、目に見えない世界での恩恵というのも素晴らしいと思うんですよ。だから、これは人間が進化するための最後の鍵あるという理解をしていて、だからこそ、今まで禁止になっていたのも、ある意味で当たり前なのかなと思っています。だから、大麻賛成・大麻反対というような運動ではなくて、たくさんの人の意識が平和とか調和のフィードにリンクしたときに、パンドラの箱は開きます。


法律家としての原点 麻産業の現代的回復と環境保全型・環境循環型社会の構築に向けてー和服
着用の勧め
」。週刊法律新聞 平成16年5月28日号の新刊案内で丸井英弘・中山康直共著「地球維
新2」の書評が載りましたので紹介します。
 大麻を刑事罪で規制することの不合理性を訴え、多くの大麻取締法違反事件を手掛けてきた第二東京弁護士会会員と、ナチュラルテクノロジーの研究などを行っている縄文エネルギー研究所所長が、歴史的、文化的、法律的見地などから現在のわが国の大麻規制に根本的な疑間を投げかけ、逆に有効利用の道を説く異色の書。日本文化と「麻」の密接な関係と、それを切り離した第二次大戦後のアメリカの占領政策に始まる規制など、大麻取締法をめぐる、ざん新な視点を提示、健康や環境間題とも結びつけた大麻の有用性を紹介するなど、現代日本社会の大麻に対する観念に根本的転換を迫る内容となっている。

 弁護士自身が昭和六十一年に長野地裁伊那支部で行った当時の厚生省麻薬課長への証人尋間の公判資料では、戦後の大麻取締法の制定過程で、内閣法制局側にその必要性について疑義があった事実をはじめ、当時、国民の保健衛生上の間題やそれを調査した事実もなかったことなどを引き出すなど、保護法益・目的なき同法の異色性の原点を追求。同法による非犯罪化の観点では、具体的被害が発生しない前段階の規制が、一種の予備罪となる点を指摘し、薬物に対する正確な調査の上での適切・有効な規制も求める。
 ついに新発売! 水・麻・光をテーマにした「地球維新」シリーズが明窓出版から発売中。

書 名 地球維新 Vol.1 エンライトメント・ストーリー
著 者 窪 塚 洋 介 & 中 山 康 直
判 型 4・6判   
定 価 1.300円

 地球維新は、この奇跡の惑星「地球」に存在するすべての生きとし生けるものがすでに参加している平和のお祭りです。「地球維新」のなかまたち「水、麻、光」をテーマに。これからの「ピースな社会の実現」について。水の惑星、奇跡の星「地球」に今、生きることについて
書 名 地球維新 Vol.2 カンナビ・バイブル
著 者 丸 井 英 弘 & 中 山 康 直
判 型 4・6判
定 価 1.500円

 「麻は地球を救う」という一貫した主張で、30年以上、大麻取締法への疑問を投げかけ、矛盾を追及してきた弁護士丸井と、大麻栽培の免許を持 ち、自らその有用性、有益性を研究してきた中山氏との対談や、「麻とは日本 の国体そのものである」という論述、厚生省麻薬課長の証言録など、これから 期待の高まる『麻』への興味に十二分に答える。
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 第二東京弁護士会司法制度調査会「大麻に有害性ない」。(週刊法律新聞 1983年(昭和53年)1
月5日号より)

 第二東京弁護士会(戸田謙会長)の司法制度調査会(石川泰三委員長)では、十一月四日開かれた全体会で、「大麻取締法の見直しについて」と題する意見書を採択した。現行の大麻取締法では、知事の免許なしに大麻の栽培、所持、譲渡等はできず、また、厚生大臣の許可を受けなければ輸出入、医薬品としての施用等はできないことになっており、違反した場合、栽培・輸出入は七年以下の懲役、所持・譲り受け・譲渡・使用は五年以下の懲役に処される。意見書は、大麻には従来考えられていたような強い有害性はないと認識されるようになってきたとの観点から、刑事政策的に罰金刑の選択の余地を認めるべきだとしている。さらに、大麻の害についての未解明部分を科学的に調査する必要性を強調、大麻取締法改正の当否については、日弁連レベルの専門機関で検討すべきだとしている。意見書は次の通り。
 1、大麻取締法(昭和二十三年制定)は、大麻草(いわゆる麻)とその製品について、知事の免許を受けなければ、栽培し、あるいは所持、譲り受け、譲渡、研究のための使用をしてはならず(三条)、厚生大臣の許可を受けなければ、輸出入、医薬品としての施用等をしてはならない(四条)と規制している。そして、これに違反した場合、栽培、輸出入は七年以下の懲役(二四条)、所持、譲り受け、譲渡、使用は五年以下の懲役(二四条の二)に処するものとしている。同法が大麻につきこのように規制しているのは、抽象的には国民の保健衛生のためということであり、具体的には麻の葉を乾燥させたものあるいは麻の樹脂から作ったもの(マリファナ、ハシシといわれる)を吸引すると、日常と違った感覚、陶酔状態になり、このような精神作用(この作用は麻に含まれるTHCという物質によるものといわれる)が、身体的あるいは社会的に有害であるからとされている。
 2、これに対し、近時、右のような規制の合理性について疑問が呈されている。その第一は、大麻の有害性についてである。すなわち、大麻には向精神作用はあるがその強さはアルコールやタバコほどではなく、身体的に有害というほどのものではない。その使用は、個人の趣味、し好の問題どあり、これを処罰するのは不当であるとする。第二は、法定刑の過重な点についてである。すなわち、仮に大麻が無害でないとしても、その害は従来考えられていたほど強くないことは明らかどあるから、個人使用の所持に五年以下の懲役刑のみで処罰するのは重きに過ぎる。この点については、昭和二十三年の立法時には三年以下の懲役または三万円以下の罰金という比較的ゆるやかな罰則であったものが、昭和三十八年に現在のように五年以下の懲役のみに改正されたものであるが、その重罰化には何ら科学的根拠があったわけではなく、不当な改正であった。また事案によっては罰金刑をもって処断するだけで十分なことも多いにもかかわらず、懲役刑しか選択できないため仮に執行猶予がついても自動的に職を失うこともあり、刑事政策上も、選択刑として罰金刑を科することができるようにすべきであるとする。
 3、別紙に挙げた資料を参照すると、右の疑問には相当の理由があると思われる。すなわち、大麻には従来考えられていたような強い有害性はないと認識されるようになってきており、少なくとも刑事政策的に罰金刑の選択の余地を認めるべきと思われる。かかる点から、大麻取締法を見直す必要があると考えられるが、大麻の害についてはなお未解明な点も多く、さらに科学的な調査が必要と思われる。同法の改正の当否については、日弁連レベルの専門機関で検討するのが相当であると思料する。

 2001年2月4日    弁護士 丸井 英弘「大麻取締法の根本的問題点と日本人のアイデンティティー大麻取締法の改正と麻の有効利用を求めるー」。
1、大麻とは、縄文時代の古来から衣料用・食料用・紙用・医療用・儀式用に使われ、日本人に親しまれてきた麻のことであり、第二次大戦前はその栽培が国家によって奨励されてきたものである。
 私の法律事務所は東京都国分寺市にあるが、国分寺は昔武蔵野国の時代に多麻と呼ばれた地域であって、麻の栽培が多く行なわれていたとのことであり、近くには多摩川が流れているが、多摩川とは麻が多く栽培されている川という意味で、多摩川べりには川崎市麻生区という地名も残っている程である。大麻つまり麻は武蔵野国の特産品であった歴史があり、調布という地名も麻布に関係しているものである。また私は名古屋で生れたが、私および三人の弟は麻模様の産着で育てられたのであり、大麻との強い縁を感じている。京都にある麻製品を扱う「麻にこだわる麻の館、麻小路」という店のパンフレットでは次のように 云っており、麻がいかに素晴らしいものであるのかがわかる。
 『魔除けの麻幸せを呼ぶ麻』

 古来から「麻」は神聖なるものとして取り扱われてきました。今は、昔、天上より麻の草木を伝って神々がこの地上に降り立たれたとされ、今日でも神社、社寺、仏閣で、特に魔よけ、厄除け、おはらい等に種々用いられております。特に魔よけとして縁起物にはよく使われております。「麻」の育成が素晴らしく速く、その成長が発展、拡大にもつながり大きく根を張ることも含めて、商売繁盛、事業発展、子孫繁栄にも根を張るとして、縁起物で重宝されております。事ある毎に「麻」にふれる機会の多い人ほど幸せであるといわれております。粋をつくした「麻製品」色々取揃えております。四季を通じてお楽しみ下さい。
 そもそも大麻とは神道において天照大神の御印とされ、日本人の魂であり、罪・けがれを払う神聖なものとされてきたのである。天照大神とは、生命の源である太陽すなわち大自然のエネルギーのことであり大麻はその大自然の太陽エネルギーを具体化したものであって、日本人の魂とは、麻に象徴される大自然のエネルギーのお陰で生かされているという心のあり方を云うのではないかと思う。大麻は天の岩戸開きの際にも使われているし、最近では新天皇の即位に際して行なわれた大嘗祭において新天皇が使用した着物も麻で織られているのである。この麻の着物は「あらたえ」と呼ばれているが、徳島県に住む古来から麻の栽培・管理をしてきた忌部氏の子孫によって献上されたものである。

 2600年前にかかれた旧聖書エゼキェル書でも主たる神創造主ヤーベの言葉として次のように述べており、麻の着物「あらたえ」を大嘗祭で天皇が使用したのと同様に、旧約聖書の世界でも麻の着物が神聖なものとされてきたことが明らかである。
 『旧訳聖書』(日本聖書協会発行/p1213,p1214)

 しかし、サドクの子孫であるレビの祭司たち、すなわちイスラエルの人々が、私を捨てて迷った時 に、わが聖所の務を守った者どもは、私に仕えるために近付き、脂肪と血とを捧げるために、私の前に立てと、主たる神に云われる。すなわち彼らはわが聖所にいり、わが台に近づいて私に仕え、私の務を守る。彼らが内庭の門に入る時は、麻の衣服を着なければならない。内庭の門および宮の内で、務めをなす時は毛織物を身につけてはならない。また、頭には亜麻布の冠をつけ腰には、亜麻布のはかまをつけなければならない。ただし、汗の出るような衣を身につけてはならない。彼らは外庭に出る時、すなわち外庭に出て民に接する時は、務めをなす時の衣服は脱いで聖なる室に置き、ほかの衣服を着なければならない。これはその衣服を持って、その聖なることを民に移さないためである。
 このような罪・穢れを祓うとされた神聖なる大麻が、第二次大戦後の占領政策のもとで犯罪の対象物とされてしまったのである。占領政策の目的は、日本の古来の文化を否定し、アメリカ型の産業社会を作ることにあったと思われるが、日本人にとって罪・穢れを祓うものとされたきた大麻を犯罪として規制することは大麻に対する従来の価値観の完全なる否定であり、極めて重大なことであると思う。私は1944年(昭和19年)生まれであり、アメリカの影響を受けた戦後教育を受けたが、日本の良き伝統に対する教育を受けなかったために日本人としてのアイデンティティを充分に確立することができなかったように思う。

 日本は、明治維新によっていわゆる近代化の道を歩んだのであるが、特に第二次世界大戦は、戦後生活の建て直しということもあり、物中心の競争原理に立った経済活動を優先してきたと思う。また、生活習慣も、例えば、食生活が米からパンに変わり、畳の生活も椅子の生活に、薬の分野でもいわゆる化学的合成薬が取り入れられ、従来の東洋医学は軽視されてきたのである。大麻は薬用として何千年も使 用され、日本薬局方にも当初から有用な薬として登載されていたのかかわず、大麻取締法の施行に伴って薬局方から除外されてしまったのである。

 人間は、植物を初めとする自然の恵みの中で生かされているのであって、日本人の伝統の中には自然を聖なるものとして大切にしてきたものがあった。しかし経済復興の名のもとに、例えばダムの建設等自然生態系とそこに住む人々の生活を破壊する経済開発が国策として進められてきたために、川や海そして大気は汚染されてしまったのである。また、精神面でも、生活の中心が他者との競争関係に立った上での物質生活の確保にあったために、心の根底に不安感と孤独間を抱えたままの精神生活をしてきたと思う。

 「人はどこから来てどこへ行くのか」というのが人生の大問題であるが、どこからきたのかもわからずどこへ行くのかもわからないのでは人生の生きがいがわからないということになる。まさに「人はパンのみにては生きるにあらず」とは聖書の言葉であるが、この意味での人生に対する良き信念が、大自然との融合的生活という過去の良き日本の伝統が切断されたことによって、無くなってしまっ たのではないかと思う。大麻取締法は、日本人にとって、大自然のシンボルであり罪・穢れを祓うものとされてきた大麻を、聖なるものから犯罪にしたものであって、まさに日本人の精神を根底から否定するものである。それは例えば日本人に英語のみを話すことを強要するのと同様な日本文化の否定であり、さらに大麻の持つ産業用や医療用の有効利用を妨げるものである。
2、大麻とは、犯罪とは何か。大麻の取扱いは果たして刑事罰で取締るべきものなのか
 大麻取締法は、大麻の取扱について免許制度を採用し、懲役刑という刑事罰でもって無免許の取扱を禁止している。大麻の取扱をなぜ禁止しているのか、つまり大麻取締法の目的について同法は何らの規定を置いていない。このように目的規定のない法律はそもそもその存在理由が不明確であるから、民主主義社会においては無効とされるべきであろう。厚生省や警察等取締り当局や裁判所は、大麻取締法の目的として、大麻の使用による国民の保健衛生上の危害の防止である」と説明している。しかしながら、「国民の保健衛生上の危害の防止」という抽象的な疑念を刑事罰の目的つまり法律で保護される利益(法律学上は保護法益といわれる)とすること自体、人権尊重を基本理念とする近代的法体系にはなじまないものである。刑事罰特に懲役刑は、人の意に反して身体の自由を束縛し、労働を強制するのであるから、それを課される者にとっては、人権侵害そのものであるので、刑事罰の適用は必要かつ最小限にするべきである。大麻の使用が、どのような保健衛生上の危害を生じるのかについて、過去の裁判所の判例は、大麻には向精神作用があり、精神異常や幻覚が生じるとしているが、そこでいう精神異常や幻覚の内容については、例えば時間感覚がゆったりする、味覚・聴覚・視覚などの感覚が敏感になる(つまりよくなる)ということであって、刑事罰でもって取締らなければならない反社会的な犯罪行為とはまったく云えないものである。
向精神作用自体が危険であり、犯罪であるとすれば、アルコールの有する向精神作用(いわゆる酔いの作用)は大麻と比べ格段に強いものでありアルコールを大麻以上に厳しく取締らなければならなくなる。
 また、そもそも人間は自らの体内で向精神作用を有する神経伝達物質を生産するのであり、例えば何かに集中したり、恋愛中であったり、また、大麻取締法違反等刑事事件で逮捕されたりしてショックを受けるとアドレナリンやドーパミン等いわゆる脳内麻薬と呼ばれる神経伝達物質を生産するのである。逮捕されること自体が神経伝達物質を生じさせるのであるから、大麻取締法そのものが、保健衛生上有害といえるのであって取締りの対象にしなければならなくなってしまうのである。
そして判例で、大麻使用の危険性として具体的に指摘しているのは、自動車の運転のみである。しかし、道路交通法では、アルコールも含めた大麻など薬物の影響下で車を運転することを刑事罰で規制しており、また大麻の中毒者は運転免許の欠格事由とされているのであるから、この規制に加え、大麻の取扱を一率に刑事罰でもって禁止することは、ただ単に犯罪者の数を増やすだけである。
 私は、過去25年間に約180件、関係者にして数百人の大麻使用経験者に出会ったが、大麻の向精神作用は心身がリラックスすること、味覚・聴覚・など感覚が良くなること程度であり、具体的な弊害は発見できなかった。大麻使用の経験者には実質的にみて悪いことをしているという意識はな く、大麻取締法という法律に対し実質的権威を感じるものは皆無である。むしろ問題なのは、実質的な権威のない法律の存在によって司法に対する信頼感が喪失し、法治主義の基盤が崩壊することである。

 なお、最近の研究報告でも大麻が安全であることが明らかになっている。1998年6月17日付けパリ発の 共同通信ニュース速報 では、次のように報じている。
 『 酒、たばこは大麻より危険 仏研究所が調査報告』(共同通信ニュース速報)
 十七日付のフランス紙ルモンドは、国立保健医療研究所のベルナールピエール・ロック教授のグループがこのほど、アルコールやたばこは大麻より危険だとの研究報告をまとめた、と一面トップで報じた。同紙によると、これは「麻薬の危険度調査」で、調査対象の各薬物について「身体的依存性」「精神的依存性」「神経への毒性」「社会的危険性」など各項目ごとに調査した。その結果、アルコールはいずれの項目でも危険度が高く、ヘロインやコカインと並ぶ最も危険な薬物と位置付けられた。たばこは鎮静剤や幻覚剤などと並んで、二番目に危険度の高いグループ。大麻は依存性や毒性が低く、最も危険度の小さい三番目のグループに入った。
 調査は、フランスのクシュネル保健担当相の指示で実施された。同紙は「この研究結果は、ソフト・ドラッグ(中毒性の少ない麻薬)消費の合法化の是非をめぐる論争に火を付けるだろう」と報じている。
3、大麻の有益性について
大麻は、有害どころか、次に述べるように、人類に対し精神的にも肉体的にも有益である。つまり
  1.  人類がこの地球で生きていくために必要な燃料を生産できる。茎や葉を発酵させるとエタノールやメタンガスなどの燃料が生成されるが、それは石油や原子力に替わるエネルギー源になりうる。
  2.  環境上安全な紙が生産でき、森林を守ることができる。麻の茎に含まれるセルロースを原料として有機塩素による漂白を必要しない紙が作れる。なお、今から一二〇〇年程前の西暦七七〇年頃に中国で作られた仏典は麻から出来ているし、アメリカなどでは国旗や紙幣が麻の茎から作られた。

     麻の生育期間は木に比べて非常に早く半年程度であるので、麻から紙を生産すれば永続可能な状態で原料の供給ができ、森林伐採をする必要がなくなり、地球の緑を守ることが可能である。
  3.  環境上安全な生分解性のプラスチックが生産できる。麻の茎に含まれているセルロースを原料として自然に土に分解するプラスチックが生産できる。石油からできるプラスチックの場合には、土に分解せずまた燃焼するとダイオキシンなどが含まれている有毒ガスを発生する可能性があるので、現在深刻な環境問題になっているが、この問題を解決できる。
  4.  麻の種は、栄養食品として極めて価値が高い。麻の種には消化吸収に優れた良質なタンパク源と8種類の必須脂肪酸をすべて含まれている。また、必須脂肪酸のリノール酸とアルファーリノレイ酸が3対1という理想的な割合で含まれている。なお、中国では、五穀豊穣の五穀の中に麻の実をいれている。
  5.  医薬品として利用できる。大麻取締法では禁止しているが、麻の葉や花穂は副作用が大変少ない喘息や痛み止め・不眠症などの医薬品として過去何千年も中国、インド、アラブ、アフリカ地方さらには日本で使われてきた。明治二八年の毎日新聞には次のような記事が載った程である。
『印度大麻草』(明治28年 毎日新聞)
ぜんそくたばこ印度大麻煙草」として「本剤はぜんそくを発したる時軽症は1本、重症は2本を常の巻煙草の如く吸う時は即時に全治し毫も身体に害なく抑も喘息を医するの療法に就いて此煙剤の特効且つ適切は既に欧亜医学士諸大家の確論なり。

 なお、「印度大麻草」および「印度大麻草エキス」は、1886年に公布された日本薬局方に「鎮痛、鎮静もしくは催眠剤」として収載され、さらに、1906年の第3改正で「印度大麻草チンキ」が追加収載された。これらは、1951年の第5改正日本薬局方まで収載されていたが、第6改正日本薬局方において削除された。また、種に含まれているオイルには健康に有用なものが含まれておりさらに皮膚に対する浸透力もいいので、マッサージオイルとしても大変有用である。

種子(麻の実)の100グラムあたりの食品成分表
出所「四訂 食品成分表」女子栄養大学出版部
エネルギー 469kcal マグネシウム 640mg
水分 5.9g 13.1mg
タンパク質 29.5g 390マイクロg
脂質 27.9g 亜鉛 6000マイクロg
糖質 9.2g ビタミンA効力 11 IU
繊維 22.1g ビタミンAカロチン 20マイクロg
灰分 5.4g ビタミンB1 0.35mg
カルシウム 130mg ビタミンB2 0.19mg
リン 1100mg ナイアシン 2.3mg
ナトリウム 2mg ** **
4、現行大麻取締法の運用の改善と法改正の提案
 このような有益な大麻は、規制するどころか第二次大戦前の日本の様に、その栽培を奨励することが必要ではないかと思われる。それが農業の活性化と熱帯林の伐採の禁止や空気の浄化さらには温暖化対策(大麻には、木と同等以上の炭酸同化作用がありうる。)にもつながる可能性があるのではないかと思われる。当面の政策としては、次のような現行大麻取締法の運用の改善と法改正の提案をしたい。

1)大麻取締法の上位法である1961年の麻薬に関する単一条約では園芸用と産業用の大麻の栽培などについては同条約の規制対象にしないとされているので、大麻の茎と種の活用を目的とする大麻の栽培免許については、免許の欠格事由のない場合には、向精神作用がないとされるTHC含有量が1%未満のCBD種と言われている産業用の大麻の種を使うことを条件にして、原則的に認めるようにする。産業用の大麻の種の育成およびその種の有効利用とその普及に向けての研究開発を行政の政策として推進する。

2)個人的な使用目的での大麻の所持と栽培については、刑事罰の対象から除外する。
 
3)大麻の花穂と葉の医療用の使用を認めること。


 丸井英弘弁護士「マリファナ解禁と大麻取締法」(法学セミナー(日本評論社)1990年7月号より
 一 はじめに
 一九七七年九月に起きた井上陽水事件や最近(一九八〇年一月)のポール・マッカートニー事件によって、マスコミがマリファナ問題を取り上げるまでは、マリファナが「麻・・あさ・」であり「大麻」が麻の一種であることを知らなかった人も多かったのではないだろうか。またマリファナ=「大麻」=麻薬=暴力団の資金源という偏見もまだまだ世間には存在していると思われる。このような偏見はアメリカにおける一九三〇年代に行われた反マリファナキャンペーンと同じである。アメリカでは近年マリファナに関する科学的な研究がなされ、マリファナ有害論が神話として批判されており、政府もそれをとりあげて解禁の方向に向っているが、一九三〇年代には連邦麻薬局が強力な反マリファナキャンペーンを展開し、マリファナについて大いなる誤解と偏見を広めたのである。現在の日本の状況(特に捜査当局や裁判所の姿勢)は、マリファナをヘロイン等と同様に危険視し、またマリファナが有害でなくても法律がある以上、それに違反するのは「悪」であるという悪しき法律万能主義に陥って、魔女狩り的にマリファナ愛好者を取締っている別表にみられる様に大麻取締法違反で逮捕される人の数は年々増加し、年間一〇〇〇名を超えているのである。
 しかし、法律があるというのならば、日本には大麻取締法の上位法として憲法があるのだから、憲法上大麻取締法が有効かどうかの議論をすべきである。憲法は、個人の幸福追及権や思想・表現の自由等の人権保障を第一義的な基本理念としており、特に裁判所には、少数者や国家権力に対立する者の人権を守るべき、いわゆる憲法の番人たる役割が課せられているのである。
 さらに、民主主義社会においては、人民が主人公であり、法律は人民の幸福のためにのみ奉仕すべきものであって、法律が主人公では決してない。現在の国家秩序を絶対のものとして、それに盲目的に従う態度は、民主主義社会における自立した市民のあり方ではない。いかなる権威にもとらわれず、自主的判断に従って行動する人間こそが目標とされるべきである。
 マリファナ問題とそれを規制している大麻取締法をいかにとらえるかということは、我国における民主主義の成熟度を計るバロメーターであろう。
 二 マリファナとは何か
 マリファナとは、日本名でいえば、麻・・あさ・のことであり、植物学上はくわ科カンナビス属の植物である。そしてカンナビスには種・・しゅ・として、少なくともカンナビス・サティバ・エル、カンナビス・インディカ・ラム、カンナビス・ルーディラリス・ジャニの三種類があることが植物学的に明らかになっている(各名称の最後にあるエルとかラムとかジャニというのはその種を発見、命名した学者の名前の略称であり、サティバは一七五三年に、インディカは一七八三年に、ルーディラリスは一九二四年に発見、命名された)。
 マリファナは、日本では通常「大麻」と呼ばれるが、大麻取締法ではその一条で、「大麻」の定義として、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品」と規定しており、現行大麻取締法で規制されているマリファナはカンナビス・サティバ・エルと呼ばれる種・・しゅ・のみである。
 マリファナは、紀元前数世紀より、アジア、アフリカを中心として、繊維用、医薬用、宗教用、娯楽用などに用いられてきた。国連統計によれば、一九五〇年段階で、約二億人が日常的にマリファナを使用していたとのことである。マリファナ(麻)は、日本社会には非常になじみの深い植物である。万葉集にも麻にちなんだ歌がみられるし、地名でも、東京の麻布や、徳島県の麻殖郡(おえぐん)とか、人名でも麻生、麻田というように麻に関係のある名前が多いし、さらに大麻神社、大麻比古神社なども存在している。
 日本でも繊維用ばかりでなく、医薬品として用いられてきた。
 日本薬局方でも一八八六年に公布されて以来、一九五一年の第五改正薬局方までマリファナが「印度大麻草」、「印度大麻草エキス」、「印度大麻チンキ」という製品名で収載され、鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤などとして用いられてきた。
 三 マリファナは有害か
 1 マリファナの作用
 マリファナは通常は麻の葉を乾燥させて、タバコのようにして吸ったり、麻の樹脂から作った製品(ハッシシと呼ばれる)をタバコに混ぜて吸ったりする。
 マリファナを現在多くの人が愛好しているのは、その向精神作用にある(その主成分は麻に含まれるT・H・Cという物質であるといわれている)。
 マリファナを摂取した場合にあらわれる精神作用は、摂取する時の環境と摂取する人の期待感などに影響されるのであるが、通常は次のような作用があらわれるとされている。
 通常の使用量では、時間がゆったりと感じられ、空間の拡大感が生じる。聴覚、触覚、味覚、視覚などが敏感になる。気苦労のない解放感を感じる。空腹感が生じたり、甘いものが食べたくなったりする。
 マリファナの身体的効果については、マリファナ研究について最も権威のある報告書とされるマリファナ及び薬物乱用に関する全米委員会(以下全米委員会という)の一九七二年報告では次のように述べている。
 身体機能の障害についての決定的証拠はなく、極めて多量のマリファナであってもそれだけで人体に対する致死量があるとは立証されていない(ちなみにアルコールの場合には泥酔状態が致死量に近いといわれている・・筆者注)。また、マリファナが人体に遺伝的欠陥を生み出すことを示す信頼できる証拠は存在しない。マリファナが暴力的ないし攻撃的行動の原因になることを示す証拠もない。
 マリファナ摂取による身体機能の変化は、次のような一時的なわずかの変化である。脈膊が増加し、最低血圧がわずかに上昇し、最高血圧が低下する。眼が充血し、涙の分泌が少なくなり、瞳孔がわずかに狭くなり、眼の液圧が低下する。
 そして、結論として通常の摂取量ではマリファナの毒性はほとんど無視してよいといっている。
 また、全米委員会の一九七三年報告でも、マリファナ使用と犯罪との関係について、「マリファナの使用は、暴力的であれ、非暴力的であれ、犯罪の源ともならないし、犯罪と関係することもない。」と結論している。
 2 マリファナ有害論批判
 取締当局等は、マリファナ吸飲によって、離人感、人格喪失、有前の意識のくもりなどが生じたり、視覚、触覚、味覚、聴覚などの感覚が鋭敏になることをもって有害としているので、この点に関し反論したい。
 離人感とか人格喪失、直前の意識のくもりと表現されるものは、果たして本当に有害なものであろうか。同様の現象が例えばヨガや禅では悟りといわれるものである。つまり、無の境地といわれるものは何ものにもとらわれない状態のことであり、その状態が離脱感、人格喪失とも表現されているのである。また、現在の状態に意識が集中している場合には直前の意識がくもるのであって、直前の意識のくもりと現在への意識の集中は同じ状態をさすものである。離人缶、人格喪失、直前の意識のくもりなどという表現はマリファナを吸飲した状態を正確に表わしたものではない。
 人格喪失という点については、人格という概念に誤解がある。通常心理学において、人間の意識、行動を規定しているのは潜在意識といわれており、人格といわれるものもこの潜在意識に規定されているものである。そして、本当の人格というものは潜在意識にあるものであって、表面に現れた意識や行動にみられる人格というものは真の人格ではないのである。したがって、真の人格を見つけるには表面的な人格を喪失させることが必要になるのであってそれが仏教やヨガでいう無の境地である。
 また視覚、触覚、味覚、聴覚などの感覚が鋭敏になることは何ら害のあることではなくむしろ有益である。そもそも現代人は科学技術の発達、管理社会化によるストレスの増大によって人間の本来もっていた感受性が歪められもしくは鈍感になっているといわれているのである。感覚が鋭敏になるということは本来の自然な豊かな人間性をとり戻すことであり、心身の反応が自然=正常という意味つまり健康ということなのである。
 四 各国におけるマリファナ使用と規制の状況
 1 アメリカの状況
 ①刑事制裁の状況 一九七〇年から一九七七年までにマリファナに関連して二八八万七七八九人が逮捕された。一九七七年には、四五万一六〇〇人が逮捕された。一九七六年には、四四万一一〇〇人が逮捕された。薬物使用に関連する逮捕者の七割がマリファナ使用によるものである。(FBIの一九七七年度の刑事に関するレポート)。
 ②マリファナの使用状況(アメリカ国立薬物乱用委員会の一九七七年における全国調査) 四三〇〇万人のアメリカ人(成人の二五パーセント)が少なくとも一度はマリファナを使用したことがある。一六〇〇万人のアメリカ人(成人の一〇パーセント)が日常的にマリファナを使用している。一八歳~二五歳では六〇パーセントの人がマリファナを経験したことがあり、二七パーセントの人は日常的な使用者である。大学生のうち五四パーセントがマリファナの経験者で、二二パーセントが日常的な使用者である。
 ③現在少量のマリファナ所持を刑事罰にしていない州(交通反則金的な少額の過料にしている)は、オレゴン、アラスカ、メイン、コロラド、カリフォルニア、オハイオ、ミネソタ、ミシシッピー、ニューヨーク、ノースカロライナ、ネバラスカの一一州で、総人口の三分の一である(一九七八年六月段階)。しかし、このような非犯罪化の結果、マリファナの使用人口はほとんど増えていない。
 例えば、オレゴン州では一九三三年に非犯罪化がなされたが、一九七四年の統計によれば、マリファナ使用人口は一パーセントしか増えていない。(薬物乱用会議の報告)。
 また、カリフォルニア州では、一九七六年一月から非犯罪化され、一九七一年前半における逮捕者の数が前年の同時期に比べ、四七パーセント減少したのにかかわらず、成人におけるマリファナ使用人口は三パーセント以下の増大しかしていない(カリフォルニア厚生省の調査)。
 ④裁判所の動向 マリファナ使用に対する刑事処罰を憲法違反とした裁判所が何件かすでに存在している。
 特に重要なのはアラスカ州最高裁判所の判例である。アラスカ州最高裁判所は、一九七五年に全員一致でもって、成人は自宅でもってマリファナを所持したり使用したりする憲法上保障された権利を持っていると判断した。したがって、現在アラスカ州では個人で自由にマリファナの栽培、使用ができるのである。
 また、ワシントン、イリノイ、ミシガンの各州の最高裁判所は、マリファナを他の麻酔作用のある危険な薬物と同視してマリファナ使用に刑事罰を加えるのは憲法上の人権保障に反すると判断している。
 ⑤カーター大統領の方針 カーター大統領は一九七七年の連邦議会に対する大統領教書の中で、マリファナ規制についての非犯罪化を提案し、次のように言っている。
「薬物の所持・使用に対する処罰はその薬物使用が個人に与えるよりも大きな害を与えてはならない。」
 2 イギリスの状況
 毎年約一万人が有罪とされており、そのうちの九〇パーセントは単純な所持罪であり、その九〇パーセントは三〇グラム未満の所持である。
 そして有罪宣告によって、就職や教育、旅行の機会が奪われている。
 また、一九七五年の統計によれば、年に八三三人が拘束刑に処せられている。イギリスでは五〇〇万人以上が過去五〇年間に刑事制裁を受けている。逮捕者の多くは若者、黒人そしてたまたまマリファナをすった者である。
 3 西独の状況
 人口の約二~三パーセント、二〇〇万人近い人が、マリファナを使用するかもしくは経験があるといわれている。
 4 イタリアの状況
 イタリアでは少量(通常数グラム)のマリファナの所持は合法的で逮捕もされないのであるが、大量のマリファナを持っていたり売ったりすると処罰(懲役と罰金)される。IRP(The Italian Radical Party この政党は、イタリアの前回の総選挙で三・五パーセントの支持率を獲得して国会で一八の議席を持っている。)の事務所では、市民としての不服従を表わすために政党の本部事務所でマリファナの栽培をしている。最近ではIRPが一万人の集会を組織して、マリファナの全面的合法化を要求するなどの運動をしており、また、IRPの働きかけによって社会党や共産党もマリファナの解禁を支持するようになってきている。
 5 全体的に言えば、一九六一年の国際条約がマリファナをアヘン、ヘロインと同列に規制しているため、それを受けて、世界各国の法制度はマリファナ使用を刑事罰でもって規制している。
 しかし、アメリカやジャマイカ以外で少量のマリファナ所持が合法化、もしくは事実上取締りの対象になっていない国は、ヨーロッパではオランダ、デンマーク、イタリアである。イギリスや西独も何百万人の人がマリファナを使用しており、いちいち取締ることは不可能な状況である。
 なお、インドを初めアジア、アフリカの諸国はジャマイカと同様に何百年、何千年も前から日常的にマリファナを使用している。
 五 日本におけるマリファナ規制と問題点
 1 制定過程における問題点
 わが国におけるマリファナ規制は、一九三〇(昭和五)年、第二アヘン条約の批准に伴い、国内法令としての「麻薬取締規制」が制定された時に始まる。しかし、その規制内容は「印度大麻草、その樹脂、及びそれらを含有するもの」の輸出入が内務大臣の許可事項とされていたにすぎない。国産の麻・・あさ・については古くから繊維や採油用等のため広く栽培されており、特に戦争中はパラシュート等に使うため、麻・・あさ・の栽培が大いに奨励されていたほどであった。
 ところが、第二次大戦後日本に進駐した占領米軍は、当時のアメリカにおけるマリファナについての偏見をもとにして全面的なマリファナ規制を日本政府当局に迫り、その結果として現行の大麻取締法が一九四八(昭和二三)年に制定されたのである。占領米軍の立法意図は、黒人兵などのマリファナ吸飲を防ぐということにあったようだが、最も肝心なマリファナ吸飲の有害性に関する科学的な検討はまったくなされなかった。法案を審議した国会議事録を調べてみても、保健、衛生上の観点からするマリファナの作用についての議論はまったくなされていない。国会での審議は、麻・・あさ・の規制によって、当時各地で麻・・あさ・を栽培していた農家に打撃を与えるか否かという点のみだったのである。
 このような大麻取締法の制定過程を概観するだけでも、この法律が、市民社会において妥当性を有する方法で制定されたものでは決してなく、極めてずさんな法律であるといえる。
 2「大麻」の定義から生ずる問題点
 すでに述べたように、現行の大麻取締法で規制しているマリファナとは、麻・・あさ・のうちカンナビス・サティバと呼ばれる種・・しゅ・のみであり、さらに向精神作用を有するT・H・Cという物質そのものは規制していない。したがって、捜査当局は、ある植物が「大麻」であるというためには、それが麻・・あさ・のうち、カンナビス・サティバと呼ばれる種・・しゅ・であり、またT・H・Cを含有する物質もカンナビス・サティバから抽出されたものであることを立証しなければならないのである。
「同じマリファナな名前が少し違ってもいいのではないか」という議論は通用しない。なぜな




(私論.私見)