スウェーデンの性事情考

 (最新見直し2013.12.01日)

 2015.12.11日、「性の先進国スウェーデンに学ぶ『幸福な”夜”の過ごし方』」。
革命再び!その文化と哲学の最新事情
 週刊現代 講談社 毎週月曜日発売

 '70年代、ポルノ文化で世界に衝撃を与えたスウェーデン。いまや世界有数の幸福度を誇るようになったこの国の、最新セックス事情をお届けする。

 セックス革命、再び

 スウェーデンの「セックスフリー」は、全世界に衝撃を与えた。'60年代後半から'70年代前半にかけて世界中で吹き荒れた「性革命」の嵐のなかで、とりわけ最先端を走っていたのがスウェーデンの若者だった。「それまではスウェーデンでもセックスは隠すべきもので、結婚するまでしてはいけないことだと抑圧されていたんです。それに反発するように女性解放運動が起こり、ピルが導入され、女性が妊娠を気にせずにセックスを楽しめるようになった。これで性規範がガラリと変わりました」(東京学芸大学研究員で、スウェーデン在住の中澤智惠氏)。

 女性は慎ましくあるべきだと言われてきたのが一転、女性は自らの性欲に忠実であることが社会的に容認された。女性のほうから自発的に男性をセックスに誘い、快楽を求める。スウェーデンは「愛と悦楽の国」として世界に認められた。その熱気は極東の島国まで届いた。「スウェーデンポルノ」に胸を躍らせ、北欧への憧れを募らせる少年が続出したのだ。あれから半世紀近くが過ぎ、かの地の「性革命」の旗手たちも年を取った。だが、その情熱は失われてはいない。今もなお、彼らの性の世界には革新が続いている。 

 「ED治療薬が、スウェーデンの中高年カップルに再び革命を引き起こしました。勃起力の減退で、お互いの愛撫だけに留まっていたセックスが挿入を伴うようになったのです」(スウェーデン人ジャーナリスト)。イエテボリ大学に所属するニルス・ベックマン氏が'08年に発表した論文によれば、70代の男女は「現役」で性生活を楽しんでいるという。ベックマン氏が言う。「スウェーデンの70代男性は実に66%が積極的な性生活を経験しています。'70年代には47%でしたから、割合は当時より増えているのです。同世代の女性も'70年代には12%だった割合が36%と、3倍近く増加しています。性生活を楽しんでいるのは、70代だけではありません。90代男性の26・7%、女性の4・7%が性的な興奮や情熱といった感情を維持していることもわかりました」。

 いくつになってもセックスをするために必要なものは何か。スウェーデン人は「相手への敬意」だと口をそろえる。セルマ・ビョルケルさん(仮名・36歳)が教えてくれた。「私の両親も66歳だけど、週に何回もセックスしているわよ。白髪になってもセックスする。これがスウェーデンのスタンダードなのよ。日本の女性は結婚すると家政婦のようになり、子供ができたらセックスレスになってしまうのが理解できない。夫婦であってもお互いのプライベートな時間は尊重し、その上で二人の時間はきちんと取る。そうすれば良好な夫婦関係は長く続くし、相手への敬意と愛情があれば、セックスをする気持ちにもなるのよ」。

 もちろん、加齢とともに体力も勃起能力も減退していく。それでもセックスが可能なのは、彼らのセックスが時間をかけて絶頂へと上り詰める「ロングロングSEX」だからだ。来日経験のあるスウェーデン人医師は、日本でラブホテルの存在に驚いたと言う。「中年男性が若い女性を連れて入る光景も見ましたが、日本人は2時間でセックスをするんですって? そんなこと、スウェーデンでは考えられません。お互いを褒め称える会話から始まって、食事を楽しみ、十分にスキンシップを取ってから、ようやく挿入です。これらすべてのプロセスがセックスなのです」。

 夫婦生活が長くなると、相手と離婚や死別してしまうこともある。再び単身者となったとき、改めてセックス・パートナーを探すことにも、スウェーデン社会は寛容だ。前出・中澤氏はこう語る。「日本では40代を過ぎると、新しく性的なパートナーを見つけるのが難しくなります。ところがスウェーデンでは、いくつになっても相手は見つかります。社交の文化が根ざしていて、パーティーにカップルで参加する習慣も影響しているのかもしれません。中高年の女性がパブで『ナンパ待ち』をしたり、ネットでパートナーを探したりすることは当たり前。一晩限りの関係であっても、二人が合意していれば差し支えはありません。日本では閉経すれば『性生活は終わり』と考える女性もいますが、スウェーデンの女性はそうではない。男女ともに年齢は関係なく、セックスを含めたパートナーを求めているのです」。

 では、性に開放的なスウェディッシュは、いざベッドインしたら、どんなテクニックを駆使するのか、見ていこう。

 「ロングロングSEX」の極意

 昨年までスウェーデンに暮らしていた商社勤務の40代男性が言う。「当時交際していた30代のスウェーデン人女性と『スタート&ストップ』で交わったことがありました。彼女は『ヴァーラン博士というスウェーデンの有名な女性医学者が提唱する方法よ』と言っていましたが、これが本当によかった。時間をかけて愛撫し合った後、挿入の段になると彼女から『射精しそうになったら言ってね』と告げられます。彼女は騎乗位で私の腰のあたりをグッと押さえ、私は体を動かせてもらえない。『目をつぶって』と言われ、そのまま彼女が女性器でペニスをしごきます。目をつぶると神経が集中して、すごく気持ちがいい。ところが私が『いきそうだ』と言うと、彼女はペニスを抜いてしまいます。少し休憩してから彼女は再び動き始めますが、射精しそうになるとまたやめる。これを3回繰り返しました。2回目の休憩ではコーヒーを飲み、興奮しているのにゆったりした不思議な感覚でした。挿入を始めてから1時間、我慢できなくなった4回目でようやく射精させてもらえました。焦らされていた分、絶頂の快感は凄まじかった。彼女は『長い時間楽しめるでしょ』と言っていました」。 

 スウェーデンの冬は暗く、寒く、長い。朝10時に明るくなり始め、午後4時には暗くなる。雪も積もり、外に出るのは一苦労だ。そんな「インドア」の土地柄だから、セックスについても長い時間をかけ、ゆっくりじっくりと味わう傾向があるという。

 40代の在日スウェーデン人女性が言う。「私は愛撫から絶頂までに1時間はかけます。しかも、『前々戯』をきちんと楽しみます。これが日本のセックスと大きく違う。ムーディーな音楽をかけ、ワインを飲んで、アロマを焚く。手をつないだりキスをしたりしながら気持ちを盛り上げ、ようやくセックスに至る。こうして初めて充実した行為ができるんです」。まさにこの国ならではの「性の哲学」。セックスは演出し、洗練させるべき「文化」なのだ。

 こうした哲学を反映した、もうひとつの代表的なテクニックが「スウェディッシュ・マッサージ」だ。19世紀初頭に同国で発明されたこのマッサージは、いまやセックスにおいて重要な位置づけを持つ。同国在住の日本人の女性翻訳家が言う。「みんな、セックス前のマッサージを大切にしています。ネット掲示板では『オーガズムに達するためには絶対に必要だ』とか『マッサージオイルの香りはチョコレートが一番いい』といった議論がかわされています」。マッサージは男性が女性にしても、その逆でもOK。電灯は消し、落ち着ける環境を作る。「私がしてもらったときは冬で、暖炉の前に敷いた毛皮の上に裸で横になり、体を温めてもらった。『インターラム』という現地のメーカーのオイルを塗られ、それだけでいい気持ちになりました」(前出の翻訳家)。うつぶせになったパートナーの背中、脚、足首、足の裏と、掌を使って優しく揉んでいく。この時、お尻の割れ目の上にある「仙骨」を意識するのがポイントだ。相手の体がほてってきたら体を仰向けにして、胸、腕、手と移動する。「マッサージの序盤は体がリラックスしていきましたが、お尻をわきのほうから頂上に向けて揉み上げられたり、太ももを両手で挟まれ小刻みにこねるようにされると、体の奥がうずいて、さわってほしくてたまらなくなります」(前出の翻訳家)。スウェーデンが生んだ極意で、深く、長い悦びを味わえるのだ。

 フィンランド、ノルウェー、デンマークもすごかった

 フィンランド人の女性、トーベ・ヤンフネンさん(仮名・37歳)が言う。「フィンランドにはサウナ文化がありますが、男女が裸で一緒に入ることもあるくらい性に開放的な国です。それがきっかけで関係が始まることもあって、浮気は結構多い。女性もみんな『気持ちよくなりたい』って思っていますからね」。コンドームメーカーの英デュレックス社の「浮気率ランキング」でフィンランドは世界10位で、約3割が浮気をするという。自由にセックスを謳歌する国なのである。この国は、首都ヘルシンキで定期的に「セキシビジョン」というポルノイベントが開かれることでも知られる。メインはアダルトグッズの展示だが、公開のAV撮影会あり、女性のマスターベーションショーありで大人気。女性の見学者がペニス形の飴を舐めている姿も見られるという。

 セックスライフを楽しんでいる「性の先進国」はスウェーデンに限らない。他の北欧諸国の人々もとても積極的だ。デンマークでは、様々な機関がセックスを盛り上げる。同国の旅行会社Spiesは、「旅先でエッチしよう!」というキャンペーンを組んだ。フランスなど「興奮できる」場所を目的地に設定し、カップルのセックスを演出するというツアーだ。在デンマークのジャーナリストが言う。「それだけセックスが社会にきちんと位置づけられているということです。エイズ財団が設立したコンドーム専門店では、スタッフが性の相談を受け、『セックスは楽しい』と啓発しています」。 

 ノルウェーは、落ち着いた「性の成熟国」。オスロ大学付属病院などの研究によると、勃起力、性欲などから割り出す同国の男性のセックス満足度は30代、40代よりも50代のほうが高いという。この国には年齢とともに高まる喜びがあるようだ。形は異なるものの、どの国も「セックス先進国」には違いない。

 7歳から性教育を始める

 日本に住むスウェーデン人女性、エルサさん(仮名・32歳)は、スウェーデンの人々がいかに性に対して開放的かを証言する。「女友達のあいだでも、普通に『オナニーの時、どんなバイブを使うのが気持ちいい?』といった会話をします。パートナーにもハッキリ『舐めてほしい』『クリトリスをさわってほしい』と言えるし、嫌なことをされたら断れます。みんなセックスを恥ずかしい行為とは思っていませんから」。こうした、日本とはまったく異なる「開放性」こそが、充実したスウェーデンセックスの根本にあるようだ。どうして彼らはここまで開放的になったのか。大きな要因のひとつが性教育である。東京学芸大学の研究員でスウェーデン在住の中澤智惠氏が言う。「キリスト教の国ですから、かつては結婚までセックスをしてはいけないといった保守的な感覚が強かった。ですが1960年代から女性の社会進出、男女同権を実現する政策が一気に進み、それと同時に性教育が充実していったのです」。

 子供を持つ40代のスウェーデン人女性が性教育の実情を話す。「7歳から性教育が始まり、その段階でセックスの話も聞いているようで、子供たちは赤ん坊がどこから出てくるかも知っています。その後も、セックスは『愛する人と行う大切な行為』『楽しいもの』と教えられます」。こうした教育の結果、スウェーデンではセックスを「汚い」「いやらしい」とする感覚が少なく、「ポジティブなもの」と考える人が多いという。スウェーデンでは、親子の間でセックスについて話すことも多い。高校生の子供が自分の家に恋人を連れてきて部屋で二人きりになろうとも、両親は平気な顔だ。しかも、もともとこの国では他人に裸を見せることに大きな抵抗がない。「冬の日照時間が短いので、春から夏には半裸で日光浴をすることも多い。夏のビーチでもトップレスの人や全裸の集団にでくわすことがあります」(現地のジャーナリスト、みゆき・ポアチャ氏)。セックスが盛んになって当然だろう。

 だが、その一方で彼らのセックスは決して軽々しく、浮ついたものではない。きちんと「愛のあるセックス」をしている。その証拠に、前出の英デュレックス社の「浮気率ランキング」によれば、フィンランド、ノルウェー、デンマークは10位以内に入っているが、スウェーデンは圏外に位置しているのだ。「そもそもスウェーデンでは、男女が親密になると、交際をしていなくてもセックスをすることがしばしばある。そこで体の相性や愛情を見きわめ、ステディな関係になるかどうかを決めるのです。そうやって選んだ相手だから愛情をもって接することができ、浮気も少なくなるのかもしれません」(前出・40代女性)。スウェーデンはこうした意味で「愛と悦楽の国」なのだ。前出のエルサさんはこう言う。「スウェーデン人の多くは、夜6時までに帰ってきて、食事をし、セックスをして眠る。健全な生活のサイクルのなかにセックスがきちんと位置付けられ、充実した人生の一部を形作っています」。スウェーデンという国の成熟を「セックスの質」が表している。

 スウェーデン「性の伝道師」に手ほどきしてもらう

 スウェーデンでセラピストとして活躍するヘレナさん(仮名・34歳)。彼女は周囲から「性の伝道師」と呼ばれ、多くの男たちに性の手ほどきをしてきたという。そんな彼女が来日したという情報を聞きつけた本誌記者はすぐさま接触を試みた。ヘレナさんは「グッターク!」(こんにちは!)と陽気に現れた。170㎝はある長身のブロンド美女だ。タイトなジーンズにぴっちりとおさまった脚。ジャケット越しからもわかる豊満な胸。まさに絵に描いたような「北欧美人」だ。「さっそく、カウンセリングをはじめましょうか」。おもむろに記者の股間をまさぐりながらそう言うと、まずはお得意のディープ・スロートを披露。大量の唾液でヌルヌルとなった喉奥はまるで蜂蜜にペニスを突っ込んだよう。さらに彼女が自慢だという長い舌が裏スジを執拗に攻める。青い瞳の扇情的な上目遣いに、興奮は最高潮へ。「自然を愛するスウェーデン人はその知恵をセックスに活かすのよ。私のフェラは木に巻きつく蛇をイメージしているわ」。さらに、この発想は体位にも取り入れられているとヘレナさんは言う。彼女曰く、最高に気持ちのいいセックス、「トレ・トゥレード」だ。「基本形は男女が向き合っての立位。『トレ・トゥレード』は『三本の木』という意味通り、そこからさらに女性側が片足を大きく上げて完成するの」。挿入した時の膣の締まり具合は、脚を上げるだけでここまで変わるものなのか。ゆっくりと抜き差しを繰り返すだけで、全身に快感が走る。「これは私たちみたいな身体が柔らかい女性でないとできないセックス。初めてスウェーデン人女性とセックスする男性は虜になるはずよ」。伝道師のセックス指南は長時間に及んだ。繰り返される絶頂の連続で記者は完全に精根尽きて呆けた状態に。ヘレナさんは、森の妖精を思わせるキュートな笑顔を浮かべると、記者にキスをして去っていった……。

 驚きの技術力「大人のオモチャ」

 ボルボを例に出すまでもなく、スウェーデンは欧州屈指の技術大国だ。デザイン性と機能面の両立を追求する姿勢は、お国柄と言っていい。その技術力が「大人のオモチャ」にも惜しみなくつぎ込まれている。これまで見てきたようにスウェーデンの女性は自分たちの性欲に忠実で、パートナーが見つからなかった場合、マスターベーションを頻繁に行うからだ。「日本の女性は同性の友人にも自分の性欲はあまり語らないそうですが、スウェーデンではどんな『セックス・トイ』を使えばより深いオーガズムが得られるか、日常的に情報交換しますよ。女性も性欲を満たしたいという欲求が当たり前のように、社会に受け入れられていますからね」(スウェーデン人女性・31歳)。そんな彼女たちが絶賛するのがスウェーデンのメーカー『LELO』が開発・製造するバイブレーターだ。実際に使用した官能小説家の渡辺ひろ乃氏が感想を話す。「家庭の居間に置いてあっても違和感がないようなデザインで、一見、バイブには見えません。ポーチに入れても、何に使うものなのかわからないほどファッショナブル。私は通常のバイブと指輪型のもの2種類を試しましたが、後者はとくに素晴らしかったですね。中央部分に穴があいていて、指にはめてクリトリスにあてがうんです。内部でパチンコ玉のようなものが振動し、それがクンニリングスの上手い男性の舌の動きとそっくり。本当に舌先でクリトリスが転がされ、弄ばれている感覚があります。要求レベルが高いスウェーデン人女性を満足させるだけのことはあります。素材はシリコンで肌触りも抜群です。もう男は要らないと思ってしまう(笑)くらいの使用感でした」。同社からはパートナーと楽しめる製品も多数発売されている。1台2万円前後と値は張るが、試してみる価値はある。セックスの本場、スウェーデンから学ぶことはまだまだありそうだ。「週刊現代」2015年12月12日より






(私論.私見)