2017年末の元日馬富士(34)の暴力事件で被害者だった貴ノ岩(28)が1年後、付け人の貴大将(23)への暴力で、今度は自分が加害者となった。12月7日の会見で、「深く反省し、責任を取り、本日をもって引退させていただきます」という言葉を残し、角界を去った。貴ノ岩をよく知る関係者たちは、「彼には以前から暴力的なタチがあり、そもそも貴乃花部屋自体が『暴力部屋』だった」と声を揃える。

 元貴乃花親方(46)の指導は、先代の厳しさを受け継ぎ"土俵の鬼の系譜"と呼ばれていた。稽古は早朝4時から始まり、時には弟子を殴ることもあった。貴ノ岩(28)は若手に厳しいことで有名で、挨拶をしなかった力士を何度も叩いていた。同部屋力士への暴力の噂も絶えない。後輩をエアガンで撃つ、ミスすると激しく叱りつけ殴打――。背景には貴乃花部屋の体質がある。

 12月5日、貴ノ岩が忘れ物をした付け人の貴大将(23)を素手で殴った。翌々日の7日に記者会見を開き、引退を表明した。公になっていないが、貴ノ岩は他にも暴行事件を起こしている。

 14年12月、十両目前の幕下3枚目だった2014年九州場所限りで引退した貴乃花部屋の元幕下の貴斗志(たかとし、27)が、貴乃花親方に強制的に引退させられたことを不服とした民事訴訟を提訴した。15年3月、相撲協会を相手取り「地位確認等請求」、「報酬の支払い」などを求めて東京地裁に提訴。(2018年2月に和解)。

 この裁判で多くの爆弾証言が出た。原告の貴斗志はこう証言している。「貴ノ岩から『挨拶がない』との理由で、一方的に3発殴られた耐え切れなくなった自分が一発殴り返すと、貴ノ岩は『お前、ぶっ殺してやるよ。鉄アレイ持ってこい』とさらに激昂した」。

 元三段目の貴翔馬も、こう証言している。「九州場所の宿舎で貴ノ岩にエアガンで撃たれた。後輩たちは皆、貴ノ岩のパンチの餌食になっていた」。さらに貴翔馬は、元世話人の嵐望の蛮行にも言及した。「貴神龍(元三段目)の頭をビールケースで殴り、彼の頭が血染めになった。古関(元序二段)の頭をまな板で何度も殴り、衝撃でまな板が6分割になった」。

 元幕下の貴麻衣は、貴ノ岩に暴力を指示されたと証言。「貴ノ岩の付け人がミスしたとき、『あいつをぶん殴っとけ』と指示された。だが、自分は殴らずに『仕事はちゃんとしとけ。あと、俺に殴られたことにしていい』と伝えたところ、翌日『なんで殴らなかった』と激怒され、自分が貴ノ岩から殴られた」。

 さらに貴麻衣は同裁判で、別の力士が雑務を怠っていたことが原因で、2013年11月に貴乃花親方から平手で10発、拳でも10発ほど殴られ、「師匠の部屋に血しぶきが飛んだ」と明かした。

 元三段目の貴翔馬は『世話人(用具管理や若手の指導をする元力士)の嵐望(らんぼー)がビールケースで若い衆の頭を叩き血みどろにした』と告白。殴る時に使ったまな板が、衝撃で割れてしまったこともある云々。

 17年5月、同じモンゴル出身で他部屋の力士を自宅に呼びつけ、『態度が気に食わない』と殴り倒している。

 8月、佐渡巡業で、『風呂場のシャワーが出ないじゃないか!』と、近くにいた別の他部屋のモンゴル人力士に因縁をつけボコボコにしている。そのことを知った白鵬や日馬富士が、『他の部屋の力士に手を出すとは何事だ』と注意。貴ノ岩が反抗的な目つきをしたため、両横綱がキレた。これが昨年11月に大騒動となった、日馬富士事件に発展した。