モンゴル、モンゴル相撲考

 (最新見直し2008.4.12日)


 モンゴルは、ロシアと中国に挟まれたモンゴル高原北部に位置する内陸国。北東アジアの安定にとって、地政学的な面だけでなく石炭、ウラン、レアアース、レアメタルなどの豊富な地下資源に恵まれ、日本の資源エネルギー確保の観点からも重要なパートナーだ。日本の約4倍の国土面積(約157万平方キロ、モンゴル国家統計庁、NSO)に、人口の4割強の約140万人が首都ウランバートルに住んでいる。

 建国の父、チンギス・ハーンとその後継者は,アジアやヨーロッパにまたがる大帝国を築き、チンギスの孫、フビライ・ハーンは、日本に2度襲来(元寇)し、その猛威を奮ったのは歴史に知られるところだ。

 そのモンゴルにも国技の相撲がある。「ブフ」と呼ばれる競技だ。モンゴルでは毎年7月に国民的なスポーツの祭典「ナーダム」が開催され、ブフの王者は、まさしく国民的な英雄と称される。横綱・白鵬の父はそのナーダムで6回の優勝経験のある大英雄だ。

 同じ相撲を国技に持つ両国はこれまで良好な関係を築いてきた。日本は、1990年以降の社会主義から民主化後の最大の援助供与国である実績とともに、近年の日本の角界でのモンゴル人の活躍で、モンゴル国民の間に日本への親近感が急速に広がってきた。一方、モンゴルは日本人にとっても、筆者の大先輩である作家の司馬遼太郎や開高健ら、壮大な自然、歴史、文化を備えた国として愛されてきた。モンゴルは、アジアの中でも極めて、親日的国家なのだ。近年、在モンゴル日本大使館が行った世論調査でも、「日本に親しみを持つ」とした回答が全体の7割を占めるほか、ロシア、米国、中国を抜いて、「最も親しくすべき国」に日本がトップとなった。日本は、「経済・技術力が高く」、「豊かな伝統と文化、美しい自然」、「民主的国家」と評価されている。日本を黄金の国と憧れるモンゴルの人たちに、「最も親しくすべき国」と尊敬される日本。


【モンゴル出身力士の“内紛”】
 「朝青龍vs旭鷲山の続く遺恨 日馬富士暴行騒動のウラにモンゴル人力士の派閥抗争」(夕刊フジ編集委員・久保武司)。
 いまや一大勢力となったモンゴル出身力士の“内紛”がある。パイオニアである元小結・旭鷲山(44)=本名ダワーギーン・バトバヤル=と、元横綱朝青龍(37)=本名ドルゴルスレンギーン・ダグワドルジ=の対立に端を発する複雑な派閥争い。(夕刊フジ編集委員・久保武司)「ここにきて貴乃花親方に批判が集まっているけれど、基本的にこの騒ぎの真相はモンゴル人力士間の“内輪もめ”だからね」。

 そもそも、モンゴル出身力士同士の交流は、同国出身力士第1号のひとりである元旭鷲山が1995年に関取になったのを機に始まった。

 2003年7月の名古屋場所で、現在にまで影を落とす“抗争”が勃発する。5日目に当時横綱の朝青龍が旭鷲山との対戦で相手の髷をつかみ反則負け。さらに8日目の取組後、両者は風呂場で体がぶつかったことをきっかけに口論となり、あわや大乱闘のムードに。このときは当時角界No.1の怪力を誇った魁皇が仲裁に入り、なんとかコトなきをえた。

 2011年には、八百長問題で角界が大揺れ。春場所が中止になると、八百長への関与を認めていない力士が引退勧告を受けたことに不満を募らせたモンゴル出身力士らが中心となり、「(次の)夏場所をわれわれの方からボイコットすべきだ」との声が挙がった。これも、力士代表として当時大関の魁皇が反対を唱え事態を収めている。

 元旭鷲山と元朝青龍の遺恨は、両者の現役引退後もモンゴル国内で継続中だ。元朝青龍はモンゴルレスリング協会長などを歴任し、50万ヘクタール(関東全域と同じ面積)の農業事業など多角的な経営で稼いでいる。最近はロシアとのビジネス開拓に熱心だとか。

 元旭鷲山は08年から12年まで、モンゴルの国会議員を1期務めた。国内では“英雄”。平均年収が日本円で40万円程度のモンゴルでは、相撲で名を上げれば、文字通りの“億万長者”になれる。

 元朝青龍が弟分としてかわいがってきたのが日馬富士だ。ここ数年は引退後の身の振り方として兄貴分を手本に、モンゴル国内で学校の建設など、さまざまな事業に手を染めている。

 ちなみに、元朝青龍は現役時代から、貴乃花親方を毛嫌いしている。

 “最強横綱”白鵬はというと、モンゴル出身力士の中にあっても孤高を保ち、かつて土俵上でライバル関係にあった元朝青龍とは微妙な関係。一方、横綱・鶴竜は普段おとなしく、自分を主張するようなところはないという。

 最近になって台頭してきたのが、貴ノ岩、大関まで昇進した関脇・照ノ富士、逸ノ城の3人。いずれも鳥取城北高相撲部OBで、在学中に十両・石浦の父親でもある石浦外喜義(ときよし)校長の薫陶を受けた共通点もあり仲がいい。

 この中で貴ノ岩は、貴乃花親方の方針もあって、普段モンゴル出身力士の集まりからは距離を置いていたが、今回は1次会が恩師の石浦氏が経営するちゃんこ店で行われたために顔を出し、クラブラウンジに場所を移して行われた2次会で暴行にあった。

 一連の騒動で、元旭鷲山は日本のテレビ番組などで、暴行の現場にいた力士から聞いた話として「だいぶ飲んだらしい。貴ノ岩関に電話がきて、電話かかってきたから見たら怒られて。『お前、なんで横綱がしゃべっているのに、バカヤロー』となって、突然ビール瓶持ってたたいたりして、みんな『やめろー』となった」などと証言。結果的に貴ノ岩を擁護する格好になっている。

 一方、元朝青龍は自身のツイッターで「本当の事聞きたくないか? お前ら」「ビールびんありえない話し!」と弟分の日馬富士を擁護。20日には、渡航先からモンゴルのウランバートル空港に帰国。待ち構えていた日本の報道陣を見つけ、日本語で「寒いから、あとで話そう。電話するよ」と声をかけて迎えの車に乗り込んだ。今後は、日馬富士側に立って積極的に発言していく可能性が高そうだ。


 【旭鷲山氏の年表】

 73年3月8日 モンゴル・ウランバートルに生まれる

 91年 先代大島親方(元大関・旭国)が行った新弟子公募に合格して来日

 92年3月 春場所で初土俵

 95年3月 春場所で新十両昇進。モンゴル人初の関取となる

 96年9月 秋場所で新入幕

 97年3月 春場所で新小結昇進。モンゴルの労働功労賞受賞

 00年 慈善活動団体「旭鷲山発展基金」を設立

 03年7月 名古屋場所で横綱・朝青龍に反則勝ち。以降、確執が表面化したが、その後、和解したとされている。

 04年4月 早大人間科学部(通信教育課程)入学

 06年11月 九州場所で引退

 07年6月 断髪式

 08年6月 モンゴルの民主党から出馬して初当選。同国国会議員になる。

 09年5月 大統領補佐官に就任





(私論.私見)