ジャスラックの音楽教室課金騒動考

 更新日/2022(平成31.5.1栄和改元/栄和4).10.25日

【JASRACが音楽教室へ著作権料課金騒動】
 2017(平成29).2月、JASRACが、著作権を管理する楽曲の使用料を徴収すると表明。使用料を年間受講料収入の2・5%などと定め、原告以外の一部事業者から既に徴収を開始した。

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が、ヤマハや河合楽器製作所などの運営する音楽教室での演奏について著作権料を徴収しようとしていることが明らかとなり、波紋を呼んでいる。

 JASRACは、カルチャーセンターやダンス教室での演奏については使用料を徴収してきた。これらの施設における演奏は教育目的であると同時に営利目的でもあるからを課金理由にしている。音楽教室にも同じロジックが当てはまりそうだが、次のような理由付けで反対している。

 「音楽教室の生徒は将来、音楽文化を担う子どもたち。使用料徴収で教室がつぶれたり、授業料の値上げにつながれば、音楽文化の担い手がなくなる」。
 2017.5.16日、作曲家らから楽曲の著作権の管理を委託され、楽曲の使用料を集めて分配する一般社団法人の日本音楽著作権協会(JASRAC)が2003年以降、使用料についてヤマハなどの音楽教室側に協議を申し入れていたが合意が得られず、今後は音楽教室から著作権使用料を徴収する方針を打ち出し、音楽教室業界が揺れている。

【「音楽教育を守る会」が結成されJASRAC提訴】
 大手のヤマハ音楽振興会(東京・目黒)が代表となり、「音楽教育を守る会」が結成された。
 2017.6月、JASRACへの支払い義務がないことの確認を求める訴訟を東京地裁に起こした。同7月、徴収に反対する約55万人分の署名を文化庁に提出した。

 JASRACによると、徴収の対象としているのは全国773事業者。訴訟の原告となっている事業者からは判決が確定するまで徴収しない方針。訴訟に加わっていない10事業者からは既に使用料の徴収を開始している。

【JASRACと係争中"音楽教室"が旗色悪いワケ】


 主な論点が、教室での演奏が「公衆に聞かせるための演奏」かどうか。著作権法第22条は「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し、又は演奏する権利を専有する」と定めている。つまり著作権が及ぶのは、「公衆」に「聞かせること」を目的とした演奏だ。音楽教室の授業はマンツーマンや少人数制。また演奏は教育目的であり、人に聞かせて感動させるためではない。こうした実態から、音楽教室などで構成される「音楽教育を守る会」は、教室での演奏に著作権は及ばないと主張している。

 ただ、同じようなケースで、裁判所はJASRAC側の主張を認めてきた経緯がある。著作権に詳しい米国弁護士の城所岩生氏は、こう解説する。

 「社交ダンス教室でかける音楽の使用料をめぐって争われた裁判で、裁判所は『誰でも受講者になれるので、公衆に対するもの』と判断しました。また、カラオケボックスの1人カラオケが『聞かせる目的の演奏』と認定された判決もあります」。

 過去の判例に照らすと、音楽教室側の主張は旗色が悪い。

【JASRACと係争中"音楽教室"が旗色悪いワケ】

 現在、「音楽教育を守る会」は教室での演奏に使用料を請求しないことの確認を求めてJASRACと係争中。

 19年1月から施行される改正著作権法に一縷の望みを託す次のような論がある。(ジャーナリスト 村上 敬、答えていただいた人=国際IT弁護士 城所岩生)

「今回の法改正で『当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合』の著作物使用の許諾が必要なくなった(著作権法第30条の4)。国会での審議によれば、『専ら別目的での利用を目的として行われるのであれば、享受を目的とした行為には当たらない』とのこと。この条文によって、専らスキル習得を目的とした音楽教室での演奏も享受を目的とした演奏にあたらない可能性がある」。

 裁判所がどのような判断を下すのか、要注目だ。

【JASRAC訴訟第一審判決】
 2020.2.28日、ヤマハ音楽振興会など約250の音楽教室事業者/個人・企業・団体が、日本音楽著作権協会(JASRAC)に、教室から著作権使用料を徴収する権限がないことの確認(音楽教室で演奏される曲の著作権使用料を徴収できないことの確認)を求めた訴訟の判決が東京地裁であった。

 佐藤達文裁判長は、JASRACに徴収権限があると認め、教室側の請求を退けた。

 著作権法は、公衆に聞かせる目的で演奏する権利は著作者が持つと規定している。訴訟では、音楽教室での教師や生徒の演奏が「公衆」に「聞かせる目的」といえるかが争われた。教室側は、音楽教室での演奏が規定には該当せず、「徴収は音楽文化の発展に影響を及ぼす」と主張。JASRAC側は、使用料が発生するとした上で、徴収が「新しい作品の創作につながる」としていた。

【音楽教室「大変残念」、「不正義許さないように」JASRACの徴収容認答申を受け声明】
 文化審議会は3月5日、JASRAC(日本音楽著作権協会)が音楽教室から著作権使用料の徴収を認める答申をとりまとめた。

 この答申を受けて、ヤマハ音楽振興会など音楽教室でつくる「音楽教育を守る会」は「使用料徴収の是非について踏み込んだ判断をしてもらえなかった点で、大変残念だ」とする声明を発表した。音楽教育を守る会は声明の中で、現在も具体的な徴収内容についての協議がないことから、JASRACが徴収を開始することは「不正義」と断じている。司法判断が確定したあとで、あらためて話し合って使用料規定を決めて、さかのぼって徴収すべきだとしている。また、文化庁長官に対しては、「不正義」を許さないよう、行政指導を求めている。  ●両者に配慮した「答申」だった

 音楽教室の著作権使用料をめぐっては、JASRACが昨年6月、音楽教室を運営する事業者から、受講料収入の2.5%を徴収する「使用料規定」を届け出て、今年1月から徴収する方針を示した。一方、ヤマハ音楽振興会などでつくる「音楽教育を守る会」は昨年12月、JASRACの徴収開始を保留するよう、文化庁に裁定を申し立てていた。

 文化庁長官の諮問をうけた文化審議会は3月5日、「徴収開始を保留しないのが適当」とする答申をとりまとめた。事実上、JASRACによる徴収を容認しており、裁定日付でJASRACが届出た「使用料規定」を有効とするというものだ。

 一方で、文化審議会は、音楽教育を守る会がJASRACを相手取って裁判を起こしていることを踏まえて、社会的混乱を引き起こしかねないとして、JASRACに対して、司法判断が確定するまでは使用料を請求したり、督促をしないように「期待する」としている。答申の内容は、両者に一定の配慮を示したかたちだ。

 音楽教育を守る会は、弁護士ドットコムニュースの取材に「われわれの主張が通らず大変残念だ」としながらも「結局は裁判に勝てばいいことだ」として、引き続き法廷で全面的に争う姿勢をみせた。(弁護士ドットコムニュース)


【JASRAC が音楽教室からの著作権料徴収を開始】
 JASRAC 4月1日より音楽教室からの著作権料徴収を開始。JASRACが音楽教室での演奏等に関する使用料の徴収を4月1日から開始する 。対象となるのは、楽器メーカーや楽器店が運営する楽器教室。個人が運営する楽器教室については当分の間、管理の対象としないという。
 音楽教室の著作権使用料 JASRACの徴収に応じたのは十数事業者
 JASRACは23日、音楽教室からの著作権使用料の徴収について言及した 。4月からの1カ月で、徴収に応じたのは十数の運営事業者だったと報告。徴収対象の1~2%程度だったことを明らかにした。

【レッスンでの著作権使用料めぐるJASRACとの訴訟で音楽教室が控訴】
 JASRACが音楽教室からレッスンでの著作権使用料を徴収できるか争われた訴訟 。「音楽教育を守る会」が東京地裁判決を不服とし知財高裁に4日付で控訴した。会長は、1小節でも使用料が生じるのは「一般感覚でもおかしい」と強調した。

【JASRAC VS 音楽教室、知財高裁は「一部変更」判決…生徒の演奏には「徴収権」認めず】 
 2021.3.18日、日本音楽著作権協会(JASRAC)が全国の音楽教室からレッスンでの楽曲演奏に関し著作権使用料を徴収するのは不当だとして、ヤマハ音楽振興会など約250の教室事業者が同協会に請求権がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決が知財高裁(菅野雅之裁判長)であった。

 菅野雅之裁判長は、知財高裁は、音楽教室での演奏について、主体は教師・生徒で、公衆に聞かせることを目的としたものであると認めて、使用料を徴収できると判断し事業者側の全面敗訴とした1審・東京地裁判決を一部変更。教師による演奏には徴収権を認めて、生徒による演奏には徴収権を認めないと判断した。

 菅野裁判長は、音楽教室での生徒の演奏について、指導を受けることに本質があり、受講料を支払っていることなどから、著作権法が保護する「公衆に聞かせるために演奏する権利」の対象とは解釈できないと指摘。JASRACの使用料請求は認められないと結論付けた。その上で、請求対象外となる範囲を、教師と10人以下の生徒で行うレッスンに限定。録音された曲の再生は行わないなどの条件も付けた。一方、生徒向けの教師の演奏行為については著作権使用料の請求対象になるとし、一審同様にJASRAC側の主張を採用した。

 東京地裁は2020年2月、生徒の演奏も含め、JASRACが音楽教室へ著作権使用料を請求するのは正当とする判決を出し、事業者側が控訴した。

 判決を受け、原告側は「今後の方針は意見を集約し、改めて結果を伝える」とコメント。JASRACは「承服できない。上告を含めしかるべき対応を検討する」としている。

 2022.10.24日、最高裁が、教師の演奏に対する著作権の使用料徴収を容認し、他方で生徒分は徴収不可とした。発端は2017.2月、ジャスラックが、従来は対象外としてきた音楽教室から使用料を徴収するとの方針を表明した。年間包括契約の場合、使用料は教室の受講料収入の2.5%とした。教室側は一斉に猛反発した。2018.4月、徴収開始。徴収対象の音楽教室は2021.2月末時点で6700施設、徴収額は年間3億5千万円-10億円の試算。徴収の根拠は1988年の最高裁判決。店が歌わせることで店内の雰囲気情勢を含めて集客に利用し、利益を得ているとの「カラオケ法理」。

 ジャスラックの徴収拡大路線史。
 1971年、社交ダンス教室の音楽利用から徴収を開始した。2011年以降はフィットネスクラブや楽器演奏を学べるカルチャーセンター、歌謡教室にも広げた。
 10.24日、音楽教室の使用料徴収を廻る最高裁判決が出た。手元の新聞は「痛み分け」と評している。拙者に言わせれば違う。判決は教室に対する使用料徴収を容認した。生徒分は徴収不可としたことで「痛み分け」とみなしているようだが、いずれ生徒の授業料に乗せられることになるので「生徒分徴収不可」は意味がない。要するに、最高裁が音楽教室にジャスラックの使用料徴収に応じよと判決したわけである。それを「痛み分け」と評するのは勉強不足か見識不足かヒラメの目かのいずれかであって、こうやってジャスラックの独り勝ちが続く。メディアも同様の著作権棒を振り回している同じ穴のムジナなので甘口評論しかできないのもむべなるかな。




(私論.私見)