32422 サン・シモン

【サン=シモン(Claude Henri de Rouvroy,Comte de Saint-Simon 1760-1825)】
 フランスの社会科学者・哲学者。一七六〇年パリ生まれ。一九歳にして海外派遣軍に参加、アメリカ独立戦争を支援した経験から社会問題に目覚める。その関心は一八世紀末にかけてのフランス革命の勃発とともにとどまることを知らなかった。社会の病んだ部分から目をそむけず、社会の救世主となるべく決意を固めたが、恐怖政治の時代には投獄され、かろうじて断頭台での処刑を免れた。その時期を除き、使命の達成のためには物質的な手段が必要であるという信念にもとづき、土地投機にも手を染め、財産をなしたが、旅行と研究のために惜しみなく遣い、後半生に文筆活動に入った時期にはすでにほとんど残っていなかったという。サン=シモンの著作を貫く原理とは、「世界の指導権はエリート科学者集団に信託されるべきで、かれらによってのみ、国家間の争いが国際協調によって代替され、人類の福祉と幸福のため自然を制御することが可能になる」という考えであった。フーリエ、オーウェンとともに、空想的社会主義者ないしユートピア社会主義者と呼称される。
 「偉大な事業を完成するためには人は常に緊張していなければならない」、「諸君は、団結の努力が、測ることができない結果をもたらすであろう一時期に向かって進みつつある。実は熟している。諸君はそれを摘み取るであろう」、「自分の全生涯は、一切の人にその能力の最も自由な発展を可能にしようとしたという一思想につくすことができる」(サン・シモン・1760−1825「遺言」)。