32434 フィヒテ(1762−1814)

フィヒテの無神論の内容
 「知識学によれば、存在とは、感覚的な概念だ。経験の対象となるものだけが『存在する』と云われ得るのだから、『存在する』という言葉は神には使えない」。
 フィヒテのいわゆる神とは存在ではない。その神は存在しないで、ただ行為そのものとしていろんな事件の秩序としていろんな事件をまとめる秩序としてつまり世界法則としてのみ現れるのである。

 カント哲学の継承者フィヒテは、カントの二元論的な矛盾を克服する為、彼の『物自体』の思想を完全に捨て去り、主観的な観念論と自我論の極端に走った。

 フィヒテ哲学の出発点は自我である。彼は、哲学が必ず『根本的で絶対的に無制約的な基本的原理』から出発しなければならないと考えたが、この原理こそが自我であって、全てはこの自我から推論されねばならない。彼は又自我が独立して他に依存しないものであるが、他の一切は全て自我に依存すると考えた。フィヒテは、客観的存在を非我と呼んだが、この非我はまさに、自我によって創造され築きあげられたものであって、自我の活動の結果に他ならない。あらゆる実践活動はこの『自我』と『非我』の矛盾を克服する為のものである。自我が非我を生み、主体が客体を生み、思想が存在を生み、精神が物質を生む。これこそがフィヒテの基本的哲学思想である。

主要著作
全知識学の基礎(1794)
学者の使命について(1794)
知識学通論(1797)
人間の使命について(1800)