佐藤栄佐久福島県知事国策逮捕考

 (最新見直し2010.01.27日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK73」のクマのプーさん氏の2009.10.17日付け投稿「「物言う知事」はなぜ抹殺されたのか【佐藤 栄佐久前福島県知事】(マル激トーク・オン・ディマンド)」、「ウィキペディア佐藤栄佐久」その他を参照する。

 これによれば、次のように記している。
 佐藤栄佐久氏はクリーンさを売りものに福島県知事を5期も務めた名物知事だった。しかし、それと同時に佐藤氏は、国が推進する原子力発電のプルサーマル計画に反対し事実上これを止めてみたり、地方主権を主張してことごとく中央政府に反旗を翻すなど、中央政界や電力、ゼネコンなどの有力企業にとっては、まったくもって邪魔な存在だった。

 その佐藤知事に収賄疑惑が浮上し、5期目の任期半ばで辞職に追い込まれた後、逮捕・起訴された。ダム工事発注をめぐる収賄罪だった。知事は無罪を主張したが、一審は執行猶予付きの有罪判決だった。そして、その控訴審判決が14日、東京高裁で下された。今回は一審からやや減刑されたが、依然として懲役2年、執行猶予4年の有罪判決だった。

 興味を覚えたので、本サイトで採り上げておく。 

 「佐藤栄佐久福島県知事贈収賄事件捏造逮捕」の裏に、佐藤知事の反小泉政治、反原子力発電行政が絡んでいた可能性が判明しつつある。例によって国策捜査であり、事件の性質上「ミニロッキード事件」の様相を示している。これが真相の深層とすれば、マスコミの福島叩きも例の国際金融資本の要請を受けた御用提灯報道だったことになる。心せよというべきだろう。司法の腐敗ぶりも同様の謗りを受けるべきであろう。三文文士が、ひょこたん評論しているので、れんだいこが切り返しておく。

 2009.10.18日、れんだいこ拝


Re::れんだいこのカンテラ時評612 れんだいこ 2009/10/18
 【佐藤栄佐久・元福島県知事国策逮捕−裁判考】

 2009.10.14日、東京高裁は、佐藤栄佐久・元福島県知事の贈収賄事件控訴審で、懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。一審の東京地裁は懲役3年、執行猶予5年だったことを思えば罪が軽くなったとみなせようが、事実はさにあらず。事件がミニロッキード事件の様相をますます示しつつある。かの時の判決もデタラメなものであったが、本事件では更に定向進化しており、かような容疑で罰せられるものかという呆(あき)れた法理論と論法を晒している。到底容認できないので、れんだいこが反発しておく。

 既に「『物言う知事』はなぜ抹殺されたのか【佐藤 栄佐久前福島県知事】(マル激トーク・オン・ディマンド)」が発信しており、次のように述べている。概要「佐藤前知事を有罪とする前提が全て崩れているにも拘わらず、『無形の賄賂』や『換金の利益』など従来の法概念にない不可思議な論理と論法で有罪にしている。不可解極まる判決であり、一体何の罪で有罪になったのかが、全くわからないような内容になっている」。
 (ttp://www.asyura2.com/09/senkyo73/msg/478.html)

 れんだいこは、この一文でピンときた。これは、ロッキード事件と同じ臭いがする。ならば確認してみなければなるまい。そういう訳で、ネット検索から情報を仕入れ整理してみた。多くの評者が例の如くピンボケ評論しているが、れんだいこプリズムを通せば、かようなことになる。

 佐藤栄佐久氏は、1939年、福島県生まれ。1963年、東京大学法学部卒業。1983年、参議院議員選挙で初当選。1987年、大蔵政務次官。1988.9月、松平勇雄が勇退した福島県知事選挙に、伊東正義や斎藤邦吉らの支援を得て出馬し初当選。以来、連続5期、18年務めていた。このことは、手堅い県政で県民の支持を得ていたことをもの語っていよう。

 ところが、2001年の小泉政権の登場とともに暗転し始める。小泉政権の「三位一体改革」と称しながらの地方切り捨て、東京一極集中政策が、「地方主権」を唱える佐藤知事を悩まし始める。やがて、佐藤知事は、「地方の痛み」を強調し続け、一貫して小泉政治に異議を唱える知事の一人となっていった。小泉政権の道州制推進策に対しても、「道州制によって、大都市一極集中を招いてはならない」と消極的な姿勢を採った。佐藤知事以外に道州制を拒否する県知事には、井戸敏三・兵庫県知事や西川一誠・福井県知事がいた。佐藤県知事は、自治体合併(市町村合併と県合併の両方)ブームにも棹差した。国策に反して「合併しない市町村も支援する」立場を明言し、田中康夫(2000年秋〜2006年秋の長野県知事。その後、新党日本党首)と共に孤高の反中央知事の立場を維持していた。やがて田中康夫の落選と佐藤栄佐久の辞職により、「合併しない市町村も支援する」立場を掲げる知事は1人もいなくなる。この間、片山義博元鳥取県知事や 浅野史郎元宮城県知事は、出身母体である中央省庁に尻尾を振って寝返っていた。

 こういうユニークな姿勢を見せる佐藤県政の圧巻は、国策の原子力行政に対するアンチの姿勢にあった。1989年正月、福島県浜通り内の東京電力の福島第二原発で再循環ポンプ破損の大事故が起きた。チェルノブイリ事故から間もない頃で、原子力発電の危険性が指摘されている時機でもあった。当然、地元で原発の安全性への不信が高まり、原発の運転再開を巡って2年越しの真剣な反対運動が繰り広げられることになった。しかし、県は中央の要請を無視しえず、運転再開の地元了解を発し、1990年末、再稼動に至る。

 1999年秋、隣県の茨城でJCO臨界事故が起こる。折から福島第一原発3号で開始されるプルサーマル用燃料が専用港に入港した翌日であった。3年越しの反対運動にもかかわらず、県は前年の夏、他県に先んじてプルサーマル実施の地元事前了解を与えていた。しかし同時に輸送されてきた関西電力のプルサーマル燃料を巡る不正が確認され、原子力行政への不信は頂点に達した。東電は自主的にMOX燃料の装荷を見送った。

 この間、東電や経産省は事故隠しに躍起となった。佐藤知事は、この過程で、プルサーマル計画の政策変更のいい加減さ、官僚の絶対無責任体制を危惧し始め、次第に原子力発電行政そのものに反対の立場を明らかにして行った。2003年、経済産業省原子力安全・保安院が 福島第一原発6号機の「安全宣言」を出したことで同機の運転を福島県が認めるか否かが焦点となったが、佐藤県知事は、「県民 の意見を聴く会」を予定するなど慎重を期す姿勢をとった。同年6.19日、グリーンピースが、福島第一原発6号機の運転をするべきではないという趣旨の書簡(添付資料参照)を送り、慎重姿勢を見せている知事にエールしている。

 佐藤知事は、郵政民営化、飲酒運転厳罰化などへの姿勢も含めて、一貫して反小泉政治の姿勢を際立たせていた。小泉政権にとって煙たい存在bP知事となっていた。この情況を見据えながら、次の動きを見てとらねばならない。

 佐藤知事の身辺捜査が執拗に開始された。時に尾行までつき、一挙手一投足が監視されるようになった。 佐藤氏自身が、自分が検察に狙われなければならない理由はわからないとしながらも、1年以上もの長期にわたり、佐藤氏の周辺を検察が捜査しているとの情報はあったと述べている。

 2006.7.8日、佐藤県知事の実弟・祐二が営む縫製会社「郡山三東スーツ」本社が、不正な土地取引の疑いで検察の家宅捜索が入り、一挙に耳目を集めることとなった。この頃から例によって検察とマスコミの二人三脚が始まる。ロッキード事件と瓜二つの構図となる。2002年に「郡山三東スーツ」が水谷建設に土地を売った際の価格が時価より高額との嫌疑が寄せられ、水谷建設の所得隠しとその使途への捜査から収賄の疑いで知事周辺へと特捜の手が伸びていった。やがて「県発注の公共工事を巡る談合汚職事件」として仕立て上げられていった。

 9.25日、佐藤県知事の実弟・祐二が競売入札妨害の疑いで逮捕された。続いて、福島県発注工事を巡る談合事件の絡みで元県土木部長が逮捕された。佐藤の辞職を求める動きが強まり、マスコミが後押しする。9.27日、佐藤県知事は、実弟や元県土木部長が逮捕されたことに対する道義的責任を取る形で任期途中での辞職を表明するに至った。概要「県民に迷惑をかけ、心からおわびする。道義的責任を取り、18年間の職務に自らの手で終止符を打つ決意をした」と辞職表明した。9.28日、県議会で辞職が許可された。

 10.23日、佐藤県知事は、東京地検によりダム工事発注をめぐる収賄の容疑で逮捕された。例によって東京地検であることに注目されたい。当時の大鶴部長が、「福島県汚職を絶対に上げろ。そうでないと俺の出世にかかわる」と部下に語ったと、最近の週刊誌で報じられている。

 当時の民主党幹事長・鳩山由紀夫は、「佐藤栄佐久・前福島県知事の逮捕にあたって」と題する次のようなコメントを発している。「本日、佐藤栄佐久・前福島県知事が収賄容疑で逮捕された。容疑通り、佐藤前知事が公共工事の発注をめぐり不正な利益を得ていたとすれば、県政のトップとしてあるまじき行為であり、その責任は極めて重大である。発端となった談合事件では、すでに佐藤前知事の実弟らが逮捕・起訴され、謝礼を受け取り県知事選挙に利用した疑いももたれている。捜査を通じて一連の事件の全容が解明され、その責任が明らかになることを期待する。3日後には、佐藤前知事の辞職に伴う県知事選が告示される。県政を刷新し、公正公明で県民の立場に立った県政を実現するよう全力を挙げたい。 以上」。

 このコメントから、佐藤氏の県知事としての有能性を認め、これを支援するのではなく、検察、マスコミと一体となった包囲網を敷く同じ穴のムジナ的本性が透けて見えてこよう。これが鳩山式正義の裏舞台であろう。但し、鳩山ばかりが責められるには及ばない。当時の他の政党がどう対応したのだろうか。共産党は、ロッキード事件の時と同じく、「佐藤金権」を仕立て上げ攻めまくったのだろうか。社民党も御用提灯もって参列したのだろうか。

 逮捕された佐藤知事は当初は全面的に関与を否認したが、その後の連日の聴取を経て全面的に自身の関与を認め、自白調書に署名をしている。これを受け、起訴される。佐藤氏はこの点について次のように述べている。概要「苛酷な取り調べによって自白に追い込まれたのではなく、自分を応援してきてくれた人達が検察の厳しい取り調べに苦しめられていることを知り、それをやめさせるために自白調書にサインをした。また、早い段階で自白をしたおかげで、真実を求めて戦う気力を残したまま、拘置所から出てくることができた。自白調書に署名をしたこと自体は悔やんでいない」。

 なお、同年11.15日、和歌山県の当時の知事・木村良樹が、12.8日、宮崎県の当時の知事・安藤忠恕が、同じく官製談合事件で逮捕された。3ヶ月間に3人の知事が、同じような事件で刑事責任を追及される事態となり、大きな波紋を広げる事態になった。

 2006.11.13日、東京地裁で初公判。佐藤元県知事は、「火で焼かれるような取り調べを受け、支援者への迷惑を食い止めるため、体験していない事実である収賄を認める供述をした。日本は法治国家と信じている」と述べ、裁判所に真相解明を訴えた。実弟も「検事から怒鳴られたりした恐怖心で、1日も早く出たかった」と法廷で証言している。弁護側は「初めから栄佐久被告を狙った極めて不当な見込み捜査。脅迫や暴力など常軌を逸した取り調べによる供述で立証された冤罪(えんざい)事件だ」と主張した。主任弁護人の宗像紀夫弁護士は元東京地検特捜部長で、“古巣”の捜査手法を知る。「主任検事に何度か(抗議を)申し入れた」と語る。

 2008.8.8日、東京地裁刑事第5部(山口雅高裁判長)は、佐藤元県知事を収賄罪で懲役3年(執行猶予5年)、実弟祐二被告を収賄罪の共犯と公共工事の競争入札妨害で懲役2年6カ月(執行猶予5年)、追徴金7372万円余りの支払いを命じる有罪判決を言い渡した。東京地裁判決は、検察側の主張に沿って被告・弁護側の無罪主張をほぼ全面的に退けた。

 同日、佐藤被告(69)と弁護人が東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した。佐藤被告は、概要「一切、事実がないことは、わたしが一番よく知っている。存在しない事実が認定された。弁護団がつぶしてくれたと思った検察側の主張が、判決では生き返っていたのが残念だ」と話した。弁護人は、判決を不服として「控訴を検討している」とした。宗像主任弁護人は、「今回の判決は誤判である。裁判所は真実にたどり着いていない。承服できない」と言い切った。

 弟の祐二被告(65)は、弁護団を通じて概要「法治国家日本は偽りだったのかと憤懣(ふんまん)やるかたない思いです。人格を否定し、事実をねじ曲げる検察を許容する裁判所による刑事司法が許されれたのでは、だれもが犯罪者に仕立て上げられてしまいます」とのコメントを発表した。

 一方、東京地検の渡辺恵一次席検事は「有罪は証拠上、当然だ。主張の一部が認められず、執行猶予が付いた点については判決を検討し、今後の対応を決めたい」と話した。8.20日、佐藤元福島県知事は、1審東京地裁判決を不服として抗訴した。実弟の祐二被告(65)側も控訴した。かくて、公判闘争が続行する。

 2009.10.14日、控訴審の東京高裁は、佐藤元福島県知事に対し懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。一審の量刑より軽くなったが、判決の法理と論法が更に滑稽なものになった。ロッキード事件同様、「始めに判決ありき」の感を深めるものになっている。

 元々の賄賂の根拠というのは、佐藤氏の弟が経営する会社が水谷建設に土地を売却した際、その売却額が市価よりも1割ほど高かったので、その差額が佐藤氏に対する賄賂に当たるというものだった。東京地検特捜部は、著者の実弟が経営する会社の土地をゼネコンが買った価格と、市価との差額1億7千万が賄賂だとしていた。ところが、弟の土地取引から得た利益を佐藤氏自身が受け取ったわけではないことが明らかにされた。しかも、買った側の建設会社はその後更に高い値段で土地を売却していることが判明させられ、「市価より高い値段による賄賂」の大前提が崩れてしまった。

 二審判決は、これを踏まえ、賄賂の金額が「ゼロ」だと認定した。つまり、一審で佐藤前知事が弟の土地取引を通じて得ていたと認定されていた賄賂の存在を否定せざるを得なかった。にも拘わらず、罪を被せる為にどのように言い渡したか。「無形の賄賂論」なるものを編み出し有罪判決に踏み切っている。検察が、仮に正当な値段であったとしても土地を買い取ってあげたことが「無形の賄賂」の供与にあたると主張し、裁判所もそれを認めたことになる。他にも、佐藤前知事時代のダム事業が槍玉に挙げられている。一般競争入札案件であるにもかかわらず、佐藤氏の「天の声」が認定されている。佐藤元県知事は、「セミの抜け殻のような判決」と評している。

 ところで、検察−裁判所司法の、こういう法理と論法を許して良いものだろうか。この法理と論法によれば、人は誰でも容易に罪を被せられることになろう。これは、法の正義を守る立場の司法当局による「上からの法破り」であり、この判決に加担した者は訴追されるべきではなかろうか。鳩山政権が、司法のかような暴走を許すようではお先真っ暗と云わざるをえまい。れんだいこに云わせれば、東京地検と裁判所司法の結託による「上からの法破り」に対して、人民大衆的糾弾闘争で責任者を処罰することこそ法治国家の責務であろう。こういうところを見落とすと、後々暗い時代に道を開くことになろう。

 さて、最後に云い添えておく。佐藤元知事逮捕の舞台裏事情を詮索しておこう。佐藤元県知事は、原発銀座とまで呼ばれ10基もの原発を有する福島県で原発を止めた。このことが、日本の原発政策責任者の怒りを呼び、報復逮捕となった可能性が強い。日本の原子力行政は、ナベツネの親玉にして戦前は治安警察のドンとして、戦後は国際金融資本のエージェントとして今日的に知られている正力松太郎と小玉、中曽根のスリータッグにより始まった。戦後の再軍備も、この連中により後押しされた。逆に云えば、日本の防衛政策と原子力政策こそが国際金融資本の意を挺したキモであり、ここにこそ真の金鉱利権が介在していることになる。これにメスを入れようとした者は次から次へと葬られる。佐藤元知事もその犠牲者の一人として遇するべきではなかろうか。かく見立てれば、この事件は小さくない意味をもっていることになる。誰か、かく共認せんか。

 2009.10.18日 れんだいこ拝

【佐藤栄佐久プロフィール】

 1939年、福島県生まれ。少年時代を福島県本宮市で過ごす。中学生の時に郡山市に移住。福島県立安積高等学校を経て、63年、東京大学法学部卒業。日本青年会議所地区会長、同副会頭を経て、83年に参議院議員選挙で初当選。87年大蔵政務次官。1988.9月、松平勇雄が勇退した福島県知事選挙に、伊東正義や斎藤邦吉らの支援を得て出馬した。選挙は保守陣営が分裂し、参議院補欠選挙と同時投票となり、折りからの消費税問題も絡んで全国から注目を集めた。その結果、保守系無所属の前建設技監広瀬利雄氏と、革新系無所属の草野太氏を大差で破り、初当選を果たした。


【佐藤県政考】

 佐藤県知事は在職中、「地方主権」を掲げ続けた。小泉政権が「三位一体改革」と称しながら押し進める東京一極集中政策に対して「地方の痛み」を強調し続け、一貫して異議を唱える知事の1人となっていた。「道州制によって、大都市一極集中を招いてはならない」と道州制を拒否していた。佐藤知事以外に道州制を拒否する県知事には、井戸敏三・兵庫県知事や西川一誠・福井県知事がいた。佐藤県知事は、自治体合併(市町村合併と県合併の両方)ブームに棹差してもいた。国策に反して、「合併しない市町村も支援する」立場を明言し、田中康夫(2000年秋〜2006年秋の長野県知事。新党日本党首)と共に孤高の知事の立場を維持していた。田中康夫の落選と佐藤栄佐久の辞職により、「合併しない市町村も支援する」立場を掲げる知事は、1人もいなくなった。片山義博元鳥取県知事や 浅野史郎元宮城県知事は、自分たちの出身母体である中央省庁に尻尾を振って 寝返っていた。

 佐藤県政の圧巻は、国策の原子力行政に対するアンチの姿勢にあった。1989年正月、福島県浜通り内の東京電力の福島第二原発で再循環ポンプ破損の大事故が起きた。地元では原発の安全性への不信が高まり、原発の運転再開を巡って2年越しの真剣な反対運動が繰り広げられることになった。チェルノブイリ事故から間もない、地元のみならず全国的にチェルノブイリの再現を怖れる声が高まった時期であった。しかし、県は運転再開の地元了解を発し、1990年末、再稼動に至る。

 1999年秋、隣県の茨城でJCO臨界事故が起こる。折から福島第一原発3号で開始されるプルサーマル用燃料が専用港に入港した翌日であった。3年越しの反対運動にもかかわらず、県は前年の夏、他県に先んじてプルサーマル実施の地元事前了解を与えていた。しかし同時に輸送されてきた関西電力のプルサーマル燃料を巡る不正が確認され、原子力行政への不信は頂点に達した。東電は自主的にMOX燃料の装荷を見送った。

 東電や経産省は事故隠しに躍起となった。佐藤県政は、これに抵抗した。その過程で、プルサーマル計画の政策変更のいい加減さ、官僚の絶対無責任体制が露呈した。佐藤知事は次第に、原子力発電行政そのものに反対の立場を明らかにして行った(→プルサーマル)。2003年、経済産業省原子力安全・保安院が、 福島第一原発6号機の「安全宣言」を出したことで同機の運転を福島県が認めるか否かが焦点となったが、佐藤県知事は、福島第一原発6号機の運転再開の判断を前に、7.3日に「県民 の意見を聴く会」を予定するなど、慎重を期す姿勢をとっていた。こういう状況に際して、同年6.19日、グリーンピースが、福島第一原発6号機の運転をするべきではないという趣旨の書簡(添付資料参照)を送り、慎重姿勢を見せている知事にエールした。

 これらの政策が、時の小泉政権の押し進める政策と悉く衝突し、煙たい存在となった。知事在任末期における郵政民営化、飲酒運転厳罰化などへの姿勢も含めて、一貫して反小泉政治の姿勢を際立たせていた。


【佐藤県知事逮捕考】

 2006.7.8日、佐藤県知事の実弟・祐二が営む紳士服縫製会社「郡山三東スーツ」本社(福島県本宮町)が、不正な土地取引の疑いで検察の家宅捜索が入り、一挙に耳目を集めることとなった。発端は中堅ゼネコン水谷建設(三重県桑名市)の脱税疑惑で、2002.8月に三東スーツ」が旧本社工場跡地を同社に8億円で売った際に、時価より高額との疑いがあり、水谷建設の所得隠しとその使途への捜査から、収賄の疑いで知事周辺へと特捜の手が伸びていった。郡山三東スーツは、佐藤知事の父親が創業、現在、弟・祐二が経営しているが、知事自身も筆頭株主で〇二年五月まで会長などを務めていた。 水谷建設は三重県内ではトップの建設会社。前田建設工業(大手ゼネコン)とJV(共同事業体)を組んでダムや公共道路建設を全国的に展開している。この土地取引が、「県発注の公共工事を巡る談合汚職事件」として仕立て上げられていった。

 9.25日、競売入札妨害の疑いで逮捕された。続いて、福島県発注工事を巡る談合事件の絡みで元県土木部長が逮捕された。佐藤の辞職を求める動きが、県議会を初めとして内外から高まり、9.27日、佐藤県知事は、実弟や元県土木部長が逮捕されたことに対する道義的責任を取る形で任期途中での辞職を表明するに至った。概要「県民に迷惑をかけ、心からおわびする。道義的責任を取り、18年間の職務に自らの手で終止符を打つ決意をした」と辞職表明した。9.28日、県議会で辞職が許可された。この間、初当選以来連続5期18年務めたことになる。

 10.23日、佐藤県知事は、東京地検によりダム工事発注をめぐる収賄の容疑で逮捕された。当時の大鶴部長が、「福島県汚職を絶対に上げろ。そうでないと俺の出世にかかわる」 と部下に語ったと最近の週刊誌で報じられている。

 当時の民主党幹事長・鳩山由紀夫は、「佐藤栄佐久・前福島県知事の逮捕にあたって」と題する次のようなコメントを発している。

 本日、佐藤栄佐久・前福島県知事が収賄容疑で逮捕された。容疑通り、佐藤前知事が公共工事の発注をめぐり不正な利益を得ていたとすれば、県政のトップとしてあるまじき行為であり、その責任は極めて重大である。

 発端となった談合事件では、すでに佐藤前知事の実弟らが逮捕・起訴され、謝礼を受け取り県知事選挙に利用した疑いももたれている。捜査を通じて一連の事件の全容が解明され、その責任が明らかになることを期待する。

 3日後には、佐藤前知事の辞職に伴う県知事選が告示される。県政を刷新し、公正公明で県民の立場に立った県政を実現するよう全力を挙げたい。 以上

 佐藤知事は当初は全面的に関与を否認したが、その後の連日の聴取を経て全面的に自身の関与を認め、自白調書に署名をしている。佐藤氏はこの点について次のように述べている。

 概要「苛酷な取り調べによって自白に追い込まれたのではなく、自分を応援してきてくれた人達が検察の厳しい取り調べに苦しめられていることを知り、それをやめさせるために自白調書にサインをした。また、早い段階で自白をしたおかげで、真実を求めて戦う気力を残したまま、拘置所から出てくることができた。自白調書に署名をしたこと自体は悔やんでいない」。

 なお、同年11.15日、和歌山県の当時の知事・木村良樹が、12.8日、宮崎県の当時の知事・安藤忠恕が、同じく官製談合事件で逮捕された。3ヶ月間に3人の知事が、同じような事件で刑事責任を追及される事態となり、大きな波紋を広げる事態になった。

 佐藤栄佐久前福島県知事の弟の会社の総務部長と支援者、東急建設の2人の合計4人が自殺を図る。総務部長は一命を取り留めたが意識不明の重体。佐藤氏の妹さんは、東京地検に、連日の事情聴取を受け、倒れた。郡山の家族が上京し、地検まで駆け付けると、医者も呼ばず、病院にも連れていかれず、意識不明のまま。家族が、救急病院に連れていったときには、脱水症状で危険な状態だったと云われる。膨大な数の、佐藤元知事の関係者が、絨毯爆撃のように取り調べを受け、「嘘でもいいから、佐藤の悪口を言え」と強要されたと云う。苦しくなって、虚偽の証言をした人は、良心の呵責に耐えられず、死にたくなったと、何人の方々が告白したと云われている。検事は、佐藤氏に、「金も、人も、時間も、いくらでもあるんだ」と言って脅したそうです。


【著書「知事抹殺 つくられた福島県汚職事件」考】

 2009.9月、佐藤元知事は、「知事抹殺 つくられた福島県汚職事件」(平凡社)を出版し、「原発」、「道州制」、「裁判」の3部構成で、当事者として事件の内実を冷静に分析、執筆している。福島県知事佐藤栄佐久が、「原発」、「道州制」に関して国に造反した結果、「裁判」の俎上に乗せられた経緯が明らかにされている。自民党政権末期の原発・地方自治政策を総括し、これからの「国のあり 方」を指し示す本としても読める内容になっている。

 参照:知事抹殺 つくられた福島県汚職事件 http://etc8.blog83.fc2.com/blog-entry-240.html


【地裁判決考】
 2006.11.13日、起訴。東京地裁で初公判。被告佐藤兄弟は捜査段階では認めていたが、初公判では、「火で焼かれるような取り調べを受け、支援者への迷惑を食い止めるため、体験していない事実である収賄を認める供述をした。日本は法治国家と信じている」(前知事)と述べ、裁判所に真相解明を訴えた。実弟も「検事から怒鳴られたりした恐怖心で、1日も早く出たかった」と法廷で証言している。弁護側は「初めから栄佐久被告を狙った極めて不当な見込み捜査。脅迫や暴力など常軌を逸した取り調べによる供述で立証された冤罪(えんざい)事件だ」と主張した。主任弁護人の宗像紀夫弁護士は元東京地検特捜部長で、“古巣”の捜査手法を知る。「主任検事に何度か(抗議を)申し入れた」と語る。

 2008.8.8日、東京地裁刑事第5部(山口雅高裁判長)は、佐藤栄佐久・前福島県知事を収賄罪で懲役3年(執行猶予5年)、実弟祐二被告を収賄罪の共犯と公共工事の競争入札妨害で懲役2年6カ月(執行猶予5年)、追徴金7372万円余りの支払いを命じる有罪判決を言い渡した。東京地裁判決は、検察側の主張に沿って被告・弁護側の無罪主張をほぼ全面的に退けた。

 佐藤栄佐久被告(69)と弁護人が8日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した。栄佐久被告は概要「一切、事実がないことは、わたしが一番よく知っている。存在しない事実が認定され、非常に残念」と話した。弁護人は判決を不服として「控訴を検討している」とした。終始、淡々とした表情で会見に応じたが、「弁護団がつぶしてくれたと思った検察側の主張が、判決では生き返っていたのが残念だ」と判決への不満をあらわにした。弁護人の宗像紀夫弁護士(元東京地検特捜部長)は、「今回の判決は誤判である。裁判所は真実にたどり着いていない。承服できない」と言い切った。

 弟の祐二被告(65)は、弁護団を通じて概要「法治国家日本は偽りだったのかと憤懣(ふんまん)やるかたない思いです。人格を否定し、事実をねじ曲げる検察を許容する裁判所による刑事司法が許されれたのでは、だれもが犯罪者に仕立て上げられてしまいます。」とのコメントを発表した。

 一方、東京地検の渡辺恵一次席検事は「有罪は証拠上、当然だ。主張の一部が認められず、執行猶予が付いた点については判決を検討し、今後の対応を決めたい」と話した。

 8.20日、佐藤栄佐久元福島県知事は、懲役3年、執行猶予5年とした1審東京地裁判決を不服として抗訴した。収賄や競売入札妨害の罪に問われ、懲役2年6月、執行猶予5年、追徴金約7400万円とされた実弟の祐二被告(65)側も控訴した。


【地裁判決文】

 【主文】

 佐藤栄佐久被告を懲役3年に、佐藤祐二被告を懲役2年6月に処する。被告人両名に対し5年間、その刑の執行を猶予する。

 【罪となるべき事実】

 1 被告人は共謀して、前田建設が福島県知事である栄佐久被告から木戸ダム工事を受注するのに有利な取り計らいを受けた謝礼として、前田建設元副会長から指示を受けた水谷建設に祐二被告の経営する郡山三東スーツが所有する時価8億円相当の工場敷地を8億7372万317円で買い取らせ、祐二被告が土地売却による換金の利益および売価価額と時価相当額の差額7372万0317円の供与を受けて、賄賂を受けとった。

 2 祐二被告は、福島県が平成16年8月20日に施行した県北流域下水道整備工事を東急建設と佐藤工業に落札させようと、栄佐久被告の支持者の設備会社社長らと共謀して談合した。

 【争点に対する判断】

 第1 競売入札妨害

 祐二被告と設備会社社長は、栄佐久被告の選挙資金を捻出するために、福島県発注の公共工事を受注するために働きかけてきた建設業者に当該公共工事を受注させて、その見返りに金員の供与を受けており、その一環として東急建設及び佐藤工業の共同企業体が本件下水道工事を受注したものと認められる。祐二被告は東急建設を受注業者として選び、謝礼を受け取って栄佐久被告の選挙資金に充てているから、祐二被告がこの入札妨害の共同正犯になることは明らかである。

 第2 土地売買の趣旨

 祐二被告は前田建設元副会長らから木戸ダムの受注の依頼を受け続けていた上、福島県元土木部長に前田建設が木戸ダム工事を受注できるように働きかけを行い、前田建設元副会長に木戸ダム工事を行う共同企業体に裏の施工者を入れるように要請し、元副会長の尽力で前田建設及びその関連会社から郡山三東スーツに合計4億円の融資を受けていることなどが認められる。これらの事実から、祐二被告は前田建設が木戸ダム工事を受注できた謝礼の趣旨として水谷建設に土地を買い取ってもらったものと認定できる。

 第3 本件収賄の共謀等について

 栄佐久被告は福島県元土木部長に前田建設による木戸ダム工事の受注を働きかけており、また前田建設から郡山三東スーツが援助を受けるため郡山三東スーツの取締役を辞任している。これらの事実から祐二被告は平成14年5月か6月ごろ、栄佐久被告に本件土地を前田建設の紹介で水谷建設に売却することを報告したことが認められる。

 栄佐久被告にとって、郡山三東スーツの経営状態改善は政治生命に関わることであり、たとえ土地売買に関する詳細を知らなかったとしても郡山三東スーツにとって土地を金銭に換えること自体が利益供与に当たることは認識していたといえ、栄佐久被告は祐二被告と通じて土地売却をしたと考えられる。

 第4 祐二被告の検察官調書の任意性

 祐二被告は検察官調書の中で栄佐久被告の選挙活動について検察官が誘導するはずのない信条を吐露している。よって祐二被告の検察官調書の信用性は高いと言える。

 第5 本件土地を売却したことによる利益

 1 証拠から、本件土地の平成14年8月時点の相当価格は、高くとも8億円を超えるものではないと認められる。

 祐二被告は、郡山三東スーツを経営し、同社からの報酬で生活し、同社の債務を通常個人で連帯保証しており、郡山三東スーツの経済的な負担を最終的に引き受ける立場にあって、郡山三東スーツの経済的な負担を解消するために供与された利益を享受する立場にあったから、郡山三東スーツに供与されたこのような利益は、とりもなおさず祐二被告に供与されたものと認めることができる。

 2 水谷建設から追加して1億円が支払われたのは、本件土地の売買契約がすべて履行された後になって、本件土地の売買代金では郡山三東スーツの資金不足を補い切れなかったため、祐二被告が申し出たことによるのであり、売買契約の内容になる事実関係を理由にするものではないから、郡山三東スーツに利益を供与する趣旨で支払われたものであっても、追加された1億円が本件土地の売買代金に含まれると認定することはできない。

 本件土地の売買と追加して1億円の支払いを受けたことは、別個の独立した行為であり、祐二被告は追加して1億円が支払われることを栄佐久被告に報告していなかったと認められることから、追加した1億円の支払いを受けることについて被告人両名の共謀があったとは認められない。

 【量刑の事情】

 本件収賄は、収受した利益が多額にのぼっている上、祐二被告が自ら経営する会社の再建資金を得るため主導して行ったものであり、祐二被告は、本件以外にも、木戸ダム工事を受注した見返りに、前田建設などから郡山三東スーツに経済的な援助を受けており、栄佐久被告は祐二被告から報告を受けた後、元福島県土木部長に前田建設による木戸ダム工事の受注を働きかけている。

 本件入札妨害は、祐二被告が、栄佐久被告の選挙資金に充てるため、福島県発注の公共工事の受注業者を選定して、その見返りに金員の供与を受けることを繰り返していた一環として行われたものであり、東急建設は設備会社社長らに1300万円を供与し、そのうち1000万円は祐二被告のもとに届けられ、そのうちの800万円は栄佐久被告の選挙資金にあてられている。

 本件各犯行の背景には、福島県発注の公共工事に関する不正が介在していたというほかなく、談合により公共工事が実際よりも高額で発注され、受注した建設会社に帰属したその利益の一部が還流して、栄佐久被告の選挙資金、郡山三東スーツの再建資金に充てられていた。

 しかし、本件土地の売買代金は、不動産取引を仲介する正規の業者が介在して決定されており、その業者が許容できないほど高額なものであったとは認められない上、本件収賄は、郡山三東スーツの従業員に退職金を支給してその生活を保障しようとして行われた側面も否定できない。

 また、栄佐久被告は、祐二被告が、公共工事の受注業者を選定してその見返りに金員を得ていたことに、積極的に関与してはおらず、本件収賄においても、祐二被告の報告を了承し、元県土木部長に対して発言をしたほかは、積極的な役割を果たしておらず、祐二被告が収受する利益も明確には把握していなかった。

 祐二被告は、郡山三東スーツの経営が悪化し、さらには、政治資金規正法が改正されて、無所属で立候補する栄佐久被告が企業から政治資金を受けられなくなるなど、追いつめられるなかで、やむなく本件各犯行に及んでいる。

 これらの事情に加えて、祐二被告から本件収賄により得た利益7372万円余りを追徴することを考慮すれば、被告人両名をそれぞれ主文の刑に処した上、その刑の執行を猶予するのが相当である。


【高裁判決考】
 2009.10.14日、控訴審の東京高裁は、佐藤元福島県知事に対し懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。一審の東京地裁は懲役3年、執行猶予5年だったから、さらに罪が軽くなったことになる。然しながら、判決内容が次のようにデタラメなものとなっている。佐藤前知事を有罪とする前提が全て崩れているにも拘わらず、「無形の賄賂」や「換金の利益」など従来の法概念にない不可思議な論理と論法で有罪にしている。不可解極まる判決であり、「一体何の罪で有罪になったのかが、全くわからないような内容になっている」と云う。これを確認する。

 二審では、一審で佐藤前知事が弟の土地取引を通じて得ていたと認定されていた賄賂の存在が否定されたにもかかわらず、「無形の賄賂」があったとして有罪判決に踏み切っている。その賄賂の根拠というのは、佐藤氏の弟が経営する会社が水谷建設に土地を売却した際、その売却額が市価よりも1割ほど高かったので、その差額が佐藤氏に対する賄賂に当たるというものだった。東京地検特捜部は、著者の実弟が経営する会社の土地をゼネコンが買った価格と、市価との差額1億7千万が賄賂だとしていた。

 判決は、弟の土地取引から得た利益を佐藤氏自身が受け取ったわけではないことを踏まえ、賄賂の金額が「ゼロ」だと、贈収賄裁判史上大変珍しい判断をした。しかしながら、佐藤氏を収賄で有罪としている。ところが、その建設会社はその後更に高い値段で土地を売却していることがわかり、「市価より高い値段による賄賂」の大前提が崩れてしまっている。そこで、検察は、「換金の利益」つまり、仮に正当な値段であったとしても土地を買い取ってあげたことが「無形の賄賂」の供与にあたると主張し、裁判所もそれを認めた。つまり、取引が正当な価格でなされていたとしても、土地取引そのものが賄賂にあたると認定されたことになる。佐藤氏は、「セミの抜け殻のような判決」と評している。他にも、佐藤前知事時代のダム事業が槍玉に挙げられている。一般競争入札案件であるにもかかわらず、佐藤氏の「天の声」が認定されている。

 佐藤氏が原発に反対し、原発銀座とまで呼ばれ10基もの原発を有する福島県で原発が止まってしまったことが、日本の原発政策全体に多大な影響を与えていたことも、今回の事件と関係があるのではないかと疑う声がある。佐藤氏自身は、自分が検察に狙われなければならない理由はわからないとしながらも、1年以上もの長期にわたり、佐藤氏の周辺を検察が捜査しているとの情報はあったと述べており、最初から佐藤氏を狙った捜査であった可能性を示唆している。

 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK73」のクマのプーさん氏の2009.10.14日付け投稿「どうした!東京地検特捜部―郷原信郎(Japan Business)」 を転載しておく。
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1919

 [ 世界の中の日本 ]どうした!東京地検特捜部“手柄を焦る”組織の疲弊〜福島県知事汚職事件

      2009年10月14日(Wed) 郷原 信郎

 小沢一郎民主党代表(当時)を辞任に追い込んだ西松建設の違法献金事件捜査が最終局面を迎える一方で、鳩山由紀夫首相の資金管理団体が政治資金収支報告書に物故者や実際には献金していない人物からの献金を記載していた問題で、東京地検特捜部が関係者からの参考人聴取を開始したと伝えられている。

 「知事は日本にとってよろしくない。いずれ抹殺する」

 こうしたさ中、1つの判決が今日、東京高裁で言い渡される。前福島県知事・佐藤栄佐久氏が収賄財に問われた「福島県汚職事件」の控訴審である。

 昨年8月、東京地裁で行われた一審では、佐藤氏と弟の祐二氏に対し、収賄罪で執行猶予付きの有罪判決が言い渡されている。

 その際、地元新聞社から私もコメントを求められたが、事件および捜査の詳細を把握していたわけではない。ところが、先月半ば、当事者である佐藤栄佐久氏が『知事抹殺 つくられた福島県汚職事件』(平凡社)を出版し、特捜部の捜査や取調べの実態を明らかにした。そこには現在の特捜検察の迷走を如実に示す生々しい体験が冷静な筆致で綴られている。

 ちょうど同じ時期に、拙著『検察の正義』(ちくま新書)も出版された。刑事司法の「正義」を独占してきた検察が社会・経済の構造変革から大きく立ち後れ、危機的な事態に至っている姿を、東京地検特捜部や地方の地検などでの経験に基づき、内部の視点から描いたものだ。その観点から、佐藤氏が著書で訴えていることについて解説することとしたい。

 “「知事は日本にとってよろしくない。いずれ抹殺する」(東京地検特捜部検事)”

 この著書の帯に使われている言葉だ。同氏に先立って逮捕された弟の祐二氏の取調べを担当した検事が述べたとされるこの言葉が、福島県知事の職にあった栄佐久氏を「抹殺」しようとした特捜検察側の政治的意図を象徴するものとして扱われている。

 不可解な点が多過ぎる収賄事件

 確かに、栄佐久氏が起訴された収賄事件にはあまりに不可解な点が多い。実弟が経営する会社の土地の売却価格が実勢より高いということが賄賂とされたが、その土地売買への同氏自身の関わりはきわめて薄い。しかも、その後、その土地が高く売却された事実もあり、はたして実勢より高値の取引だったか否かも微妙だ。

 また、同氏が「天の声」を出して前田建設の受注に便宜を図ったとされるダム工事は一般競争入札である。指名競争のように、発注者側が職務上便宜を図ることは困難である。それがあり得るとすれば入札参加資格を認めることぐらいだが、ダム工事で豊富な実績のある前田建設の入札参加資格に問題があったとは考えられない。仮に「天の声」があったとしても、民民間の談合への影響力の問題で、知事の職務権限に関連して工事発注に便宜を図る余地は考えにくい。

 「東京一極集中に異議を唱え、原発問題、道州制などに関して政府の方針と真っ向から対立、『闘う知事』として名を馳せ、県内で圧倒的支持を得た」(同書カバー)という氏から見れば、こうした「空中楼閣」のような収賄事実で逮捕・起訴されるということは何らかの政治的意図によるものであり、その背後に、政府の方針に真っ向から立ち向かう「闘う知事」を排除しようとする国家の意思が働いていたと思えるのも、無理はない。

 しかし、現在の特捜検察は、当初から明確な政治的意図を持って知事を「抹殺」するということを行う余裕もなければ、その力もないように思える。

 マスコミ等から提供されたネタで捜査に着手し、何とかそれなりの成果を挙げて捜査を終結させようとして迷走を続け、無理な強制捜査・起訴に至る、というケースが相次いでいる。佐藤栄佐久氏の事件が、その主張通りだとすれば、それは、政治的意図による捜査で「抹殺」されたというより、むしろ、そういう特捜検察の苦し紛れの捜査の犠牲になったと見るべきであろう。

 2000年以降相次いでいる東京地検の強引な捜査

 2000年以降、「鈴木宗男事件」、「日歯連事件」、「ライブドア事件」、「防衛省汚職事件」、「西松建設事件」など特捜検察が手がけた多くの事件の捜査が、検察にとっては不本意な結果に終わっている。そして、佐藤優氏の『国家の罠』、細野祐二氏の『公認会計士VS特捜検察』、堀江貴文氏の『徹底抗戦』など、起訴された被告人の立場で、検察の捜査や公判を批判する著書の出版が相次いでいる。そこで描かれているのは、事実とは異なる不合理な犯罪ストーリーを設定し、威迫、利益誘導などを用いた取調べでストーリーに沿った供述調書を作成し、強引に事件を組み立てようとする特捜捜査の姿だ。

 今回の佐藤栄佐久氏の著書もその延長上にある。前半部分で「闘う知事」としての実績が熱く語られているのとは対照的に、後半の自己の収賄事件に関する部分では、実弟の祐二氏が経営する会社の土地取引をめぐる疑惑が週刊誌で報じられ、同氏の逮捕、自身の逮捕、そして、事実と異なる自白調書に署名するまでの経緯が、淡々と描かれている。それだけに、かえって検察捜査の異常さが強く印象づけられる。

 日本の検察は刑事司法の「正義」を独占してきた。つまり、刑事司法は、すべての刑事事件が検察官によって「適正に処理されている」ことを前提にしてきた。検察は、原則として、刑事処分などの判断について公式に説明を求められることはない。不起訴処分について判断の理由の説明が公式に行われることはないし、不起訴記録も開示されない。

 検察の判断の適正さは、その理由を外部に説明することではなく、基本的には、「個々の検察官の判断ではなく検察庁の組織としての判断が行なわれる」ということによって維持されてきた。

 このように「刑事司法の正義」を検察が独占する構図は、殺人、強盗などの伝統的な犯罪、伝統的な刑事司法の領域には妥当する。行為の反社会性は明らかで、犯罪者の多くは社会的逸脱者である。事実が認められる限り処罰されるべきことに基本的に異論はない。問題になるのは、証拠によって事実が認定できるかどうかであり、その点について、刑事司法の専門家の法曹からなる検察の組織による適切な判断が行われることを信頼すればよかった。

 閉ざされた検察組織だけで政治・社会・経済を判断するのは難しい

 例外的に社会の中心部で活躍する政治家、経済人などを摘発の対象にし、社会的に大きな影響を与える捜査の遂行を使命とされてきたのが特捜検察である。そこで対象とされるのは、政治・社会・経済の中心部分で起きている複雑・多様な事象そのものであり、刑事罰の適用に関しては社会的な価値判断が求められる。

 そのような社会内の事象を、どのような観点からとらえ、どのように評価していくのかの判断を、検察の組織という閉ざされた世界の中だけで適切に行うことは、もともと容易ではない。しかも、その困難さは、社会・経済の複雑化・多様化に伴って一層顕著となっている。

 1990年代以降、日本の経済社会において、企業、官庁などあらゆる組織が構造変革を迫られる中、組織内で自己完結した「正義」に依存し、旧来の捜査手法にこだわり続けた特捜検察は、社会・経済の変化に大きく取り残された。そして、面目と看板を何とか維持しようとして「迷走」を続けてきた。

 そうした「迷走」が限界に近づきつつある状況で行われたのが福島県知事をターゲットとする東京地検特捜部の捜査だったが、それは、結局、土地取引を巡る疑惑を報じて捜査の発端となった週刊誌の記事とほとんど同レベルの事実しか明らかにできず、その事実を無理やり贈収賄の構成に当てはめただけという結果に終わった。

 前記の拙著でも述べたように、かつては特捜検察が起訴した事件について裁判所が消極判断を示すことはほとんどなかったが、昨年7月の長銀事件についての最高裁の逆転無罪判決、つい最近のPCIの元社長の背任事件の一審無罪判決などに見られるように、裁判所の特捜検察に対する見方は次第に変わってきているようにも思える。今回の事件に対して東京高裁がどのような判断を示すか、控訴審判決が注目される。


 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK78」のクマのプーさん氏の2010.1.28日付け投稿「特捜部長の出世と引き換えに私は政治生命を絶たれ4人が自殺を図った:福島県前知事・佐藤栄佐久氏が語る検察の暴走と恐怖(下)」を転載しておく。
 「ゲンダイ的考察日記」からの転載。

 http://octhan.blog62.fc2.com/blog-entry-1199.html

 2010/01/27(水) 22:37:39
 [小沢一郎ネタ] 福島県前知事・佐藤栄佐久氏が語る〜検察の暴走と恐怖(下)

 「知事は日本にとってよろしくない。抹殺する」取り調べ中の検事の言葉です

 「私の事件では、特捜部の過酷な取り調べによって、弟の会社の総務部長と私の支援者、そして東急建設の支店長2人が自殺を図りました。総務部長は一命を取り留めましたが、今も意識は戻らないまま。ベッドの上で男性の声を聞くと、検事の声を思い出すのか、険しい表情を浮かべ、顔を背けるのです。よほど取り調べがツラかったのでしょう……」

 <東京地検に出頭した佐藤氏の後援会の幹部たちは「栄佐久氏の悪口を何でもいいから言ってくれ」「15分以内に言え」「想像でいいから言え」「もう図は完成していて、変えられないんだ」と執拗に迫られたという。>

 「いま『取り調べ可視化』が取り沙汰されていますが、検察の恫喝には抜け道がある。弟は拘置所に向かう車中で『中学生の娘が卒業するまで出さない』と脅されました。相手は今から取り調べを受ける検事ですよ。あまりに卑劣です」

 <佐藤氏も約50日間に及んだ拘置中に精神的に追い込まれ、ほぼ全面的に供述してしまった。>

 「逮捕後2日間は検事と怒鳴り合っていましたが、次第に『私が自供すれば支持者は解放される』『早く“火の粉”を消さなければ…』『検事に身を任せよう…』と思うようになったのです。私は“ストレイシープ(迷える羊)”になっていました」

 <一方で検察は有利な証言をした人物を手厚くもてなすようだ。>

 「検察に『私から“天の声”を聞いた』と証言した元県幹部は、私の事件に絡み、競争入札妨害罪で特捜部に逮捕されましたが、起訴を免れました。公判の過程では、この人物の口座に約3000万円の出所不明な入金記録があることが発覚。特捜部はこのカネの流れを取引材料に県幹部を締め上げ、“天の声”をデッチ上げたのではないかと思っています」

 特捜部長の出世と引き換えに私は政治生命を絶たれ、4人が自殺を図った<東大法卒、参院議員を経て知事5期。「改革派知事」として霞ヶ関と戦ってきた佐藤氏には、今の検察の動きこそ、「霞ヶ関官僚の行動原理の縮図」と映る>

 「ダム建設や原子力行政と同じで、一度決めた方針を覆そうとしない。いかにムチャな方針だろうと、保身に走って突っ走ってしまう。完全に『経路依存症』に陥り、捜査そのものが自己目的化しています。検察の正義は国民にとっての正義であるべきなのに、国民不在の捜査が今も続いています。政権交代を選んだ国民の意思を踏みにじってまで、強引に小沢捜査を進める必要はあるのか。はなはだ疑問です」

 <佐藤氏の事件については、「当時の大鶴基成特捜部長が『これができるかどうかで自分の出世が決まる』と息巻き、乗り気でない現場を怒鳴りつけていた」と報じられたものだ。>

 「特捜部長の出世と引き換えに、私の政治生命は絶たれ、弟の会社は廃業し、100人以上の社員が路頭に迷うハメになった。今後、私の無実が証明できても自殺した人々は戻りません。検察と一体化したマスコミも共犯です。『知事は日本にとってよろしくない、抹殺する』。弟の取り調べ中に検事が吐き捨てた言葉です。事件の犠牲となった人を思う、その発言のあまりの軽さに驚かされます。強大な捜査権力は実に気まぐれで、特捜検事にとっての“おもちゃ”に過ぎないのです」

 <佐藤氏の裁判は現在上告中だが、検察の強引な筋立てと捜査が、いかに多くの悲劇を招くか。小沢事件を指揮する大鶴最高検検事と佐久間特捜部長は、肝に銘じておいた方がいい。>

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 小沢捜査〜何が目的で誰のためにやっているのか

 検察の捜査を見ていると、つくづく、こう感じてしまう。とにかく、その執念のすさまじいこと。政権交代前から、執拗に小沢を追いかけ、まさしく、政治生命を抹殺しようとしているのが歴然だ。

 ターゲットは小沢ひとり、それも狙い撃ちではないか。小沢が角栄のごとく、誰が見ても黒幕、巨悪であるのならば、それも分かる。しかし、政治団体が不動産を買うのはおかしいだとか、岩手ではゼネコンは小沢に逆らえないとか、“この程度”で巨悪か?

 小沢がクリーンな政治家だとは言わないが、少なくとももっと露骨で、金に汚い政治家はゴマンといる。検察の捜査には大きな疑問符がつくのである。(中略)

 本来であれば、特捜部が暴走すれば、検事総長がストップをかける。しかし、樋渡利秋検事総長は赤レンガ組の法務官僚で捜査の現場経験がない。それが佐久間の暴走を許している。

 「それと、誰が指示したわけではないが、霞ヶ関全体が検察を応援しているという側面もあるでしょうね。小沢幹事長の政治生命を潰せば、永田町は混乱する。政治が混乱すれば、役人の出番になる。そんなアウンの呼吸が検察を後押ししているのです」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)

 よこしまな野心や怨念、権力闘争。さまざまな側面が見え隠れするのだが、少なくともそこに正義はない。これが小沢捜査なのである。

 (日刊ゲンダイ 2010/01/27掲載)

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 デフレ大不況下で国民は苦しんでいるというのに、国会は予算そっちのけで政治とカネの問題に明け暮れているが、事態はそんな状況ではない。検察の狂奔、暴走捜査のおかげで国民は殺されかけようとしている。

 また、コメントによる情報提供を紹介します。

 ★週刊朝日、検察リーク認める!! (⇒2010/01/26 「日々坦々」)

 ★石川知裕議員逮捕は違法逮捕だった! (⇒2010/01/26 「トニー四角の穴を掘って叫ブログ」)

 ということで「週間朝日 2/5号」を買ってみました。ジャーナリスト魚住昭氏と郷原信郎元検事の対談記事の最後で、魚住氏はこう言っています。<(小沢氏の)弁護士はおそらく公判対策上、小沢氏に説明するなって言っているんじゃないかな。説明したら、検察にその矛盾点を突かれますからね。その事情はわかるんですけど、もうそんなことを言っている場合じゃない。検察と相討ちになるくらいの覚悟でやらないと、日本の政党政治がダメになってしまいますよ。小沢氏が日本に真の議会制民主主義を根付かせるために働いてきたというのなら、多少向こう傷を負ってでも、その気持ちに殉じてほしい。>“これはヒドイ!”というのが分かります。買う価値はあると思います。






(私論.私見)