婚姻や出生を届け出る際、記入用紙に「鉛筆や消えやすいインキで書かないで」とある。なのに、選挙で投票所に置かれる筆記用具はなぜ、鉛筆なのだろう。14日の衆院選で彦根市の女性(45)と夫はそれぞれ筆ペンとボールペンを持参し、投票用紙に記した。昨夏の参院選で高松市選管による票不正操作事件があってから開票事務の公正さを信頼できず、「鉛筆だと誰かに消され、書き換えられるかもしれない」と考えた。衆院選の次の日、女性は彦根市選管に電話し、筆ペンで記した自分の1票が有効かどうかを確かめた。翌日、職員から「無効ではありません」との回答を得た。記者が総務省に問い合わせると「公職選挙法に筆記用具に関する規定はなく、有効か無効かは各選管の判断による」という。彦根市選管は、投票者に「備え付けの鉛筆で」と要請する方針を変えない。インクだと他の用紙が汚れ、読めなくなる恐れなどがあるからとする。女性は職員とのやりとりで、開票作業や立会人制度についての疑問が解けたという。反面、「次の選挙ではもっと特徴的なペンを使う。開票作業を見届け、自分の票が有効なのを確かめたい」とも。高松の事件が有権者にもたらした不信感は、それほど根深い。疑念は簡単に消えそうにない。(布施勇如)
これが証拠
鉛筆書きは消えるから、カラーの油性ペンで書いている(同じ筆跡)