非核三原則、武器輸出三原則考

 (最新見直し2012.08.18日)

 (れんだいこのショートメッセージ)


 菅政権下で、戦後日本が国是としてきた武器輸出三原則の見直しが進んでいる。2010年内に予定している新たな「防衛計画の大綱」策定の過程で、政府として武器輸出三原則の見直し議論を進めることを明確にした。首相諮問機関である「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(民主党の外交・安全保障調査会)は武器の国際共同開発・共同生産が必要だとして、11月中に提言をまとめ政府に提出するという。政府も近く関係閣僚による協議を開始する意向だ。

 防衛省の見直し案は海外での国際協力活動への自衛隊の装備品供与についても、一律に三原則の例外扱いとするよう求めている。10月、北沢俊美防衛相は、ゲーツ米国防長官に対し、「年末に策定予定の防衛計画大綱の見直しの中で方向性をつくる」と提示した。10.31日、防衛省が検討している武器輸出三原則見直し案の全容が判明した。戦闘機や偵察機など兵器の国際共同開発、生産に参加する必要性を指摘。国連平和維持活動(PKO)はじめ海外での国際協力活動に対する自衛隊の装備品供与を一律例外で三原則から除外するよう求めている。防衛省は見直し案の概要を民主党の国防関係議員に説明した。それによると、国際紛争の助長回避を前提として(1)国際協力活動の推進、(2)日米同盟の強化、(3)日本の防衛力整備―の3本柱で見直しを検討している。

 この背景には米国の要請、これに呼応する防衛省、産業界の要請がある。既にミサイル防衛(MD)など共同防衛態勢を深めつつあるが、これを更に拡大しようとしていることになる。

 武器輸出三原則は非核三原則とともに、佐藤内閣以来40年以上にわたって日本の平和外交を支えてきた理念であり、外交・安全保障の根幹をなしてきた政策である。憲法の平和主義に基づく「国是」と言っていい。平和国家たる日本の国際貢献の在り方を指針させている戦後憲法に対する更なる空洞化の動きが強まりつつあるとみなしたい。民主党政権が、自民党政権時代より「前のめり」になっていることが判明する。

【武器輸出三原則史考】

 「ウィキペディア武器輸出三原則」を参照する。

 武器輸出三原則とは、日本政府による武器輸出規制の原則のことである。これについて
、このことを直接規定した法律は存在しない。外国為替及び外国貿易法と輸出貿易管理令によって輸出の許可を司り、輸出貿易管理令別表第1が輸出許可品目名を規定する方法で監視している。輸出許可品目名は輸出に際して経済産業大臣の許可を必要とする品物を定めたもので、武器のみならず軍需転用可能な原子力、電子工学、通信、素材、加工技術等多岐にわたる。規制対象品目はココムやワッセナーアレンジメントにおける規制対象とリンクしており、対象となる品目は適時追加されている。

 武器の不正輸出における罰則は外為法によって規程されていたが、その内容は5年以下、あるいは3年以下の懲役と科料である。1987年に発覚した東芝機械ココム違反事件では取引額が40億円を超えていたが、裁判では法人への200万円の罰金と逮捕された社員への執行猶予付きの判決となった。この事件では罰則が軽いという指摘がなされ、その後の武器、大量破壊兵器、核関連設備の不正輸出に対しての罰則が強化された。

 武器輸出三原則は、次のような経緯で確立した。これを確認する。

 1967年(昭和42年)4月21日、佐藤首相は、衆議院決算委員会における答弁で、以下のような国・地域の場合は「武器」の輸出を認めないこととした。1・共産圏諸国向けの場合。2・国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合。3・国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合。

 1976年(昭和51年)2月27日、三木首相は、衆議院予算委員会における答弁で、佐藤首相の三原則にいくつかの項目を加え更に明確にした。1・三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。2・三原則対象地域以外の地域については憲法及び外国為替法及び外国貿易管理法の精神にのっとり「武器」の輸出を慎むものとする。3・武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。この時、武器輸出三原則における「武器」の定義を以下のようにした。1・軍隊が使用するものであって直接戦闘の用に供されるもの。2・本来的に、火器等を搭載し、そのもの自体が直接人の殺傷又は武力闘争の手段として物の破壊を目的として行動する護衛艦、戦闘機、戦車のようなもの。但し、この規定が逆に「軍事目的によらない武器、小型武器、部品の分解輸出」を促すことになった。

 この時点までが確立期であり、中曽根政権以降骨抜き期に転じている。これを確認する。

 1983年(昭和58年)1月14日、中曽根内閣の後藤田正晴官房長官は、談話で以下の解釈を付け加えた。「日米安全保障条約の観点から米軍向けの武器技術供与を緩和することを武器輸出三原則の例外とする」。これにより米国向けを例外とすることになり対米武器技術供与の道が開かれた。

 1983年11月8日。対米武器技術供与を日米相互防衛援助協定の関連規定の下で行うという基本的枠組みを定めた「日本国とアメリカ合衆国との間の相互援助協定に基づくアメリカ合衆国に対する武器技術の供与に関する交換公文」が締結された。

 1984年11月。日米両国政府の協議機関として武器技術共同委員会(JMTC)が発足。

 1985年12月27日。対米武器技術供与を実施するための細目取り決めが締結。日米間では武器技術供与は、技術ならびに技術の供与を実行あらしめるため必要な物品であって武器に該当するもの(試作品)に限定されており、その技術を用いてアメリカが生産した兵器を輸出することは許されていない。

 2004年、スイスのジュネーブ高等国際問題研究所が発表した2004年版の「小型武器概観」が、日本が猟銃、弾薬など非軍事目的の小型武器をアメリカ、ベルギー、フランスに輸出している事を判明させた。その規模は世界第9位となっている。

 2006.6月、マラッカ海峡の海賊対策に手をやいているインドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領の依頼を受けた日本政府は閣議決定をおこない、2007年にインドネシア国家警察本部に小型巡視艇がODAを用いて無償供与した。引き渡されたのは27メートル型巡視艇3隻で最大速度は30ノット、建造総額は19億円、防弾ガラスなどの装備により武器に分類される。機関銃などは装備していない。海上保安庁の同クラスの艦船を製造している隅田川造船で建造されそれぞれ「KP.HAYABUSA」、「KP.ANIS MADU」、「KP.TAKA」と命名されインドネシアまで輸送された。インドネシア政府とは転売および軍事利用の禁止を確認している。これは、日本政府の判断によりアメリカとの技術協力以外に例外的に輸出を認めた例になっている。

 2007年10月18日に発足した「総合取得改革推進プロジェクトチーム」は、「効果的・効率的な研究開発に資する国際協力を推進するため、各国との技術交流をより活性化するとともに、国際共同研究・開発に係る背景や利点・問題点などについて一層の検討を深める必要がある」としており、これには日本経済団体連合会も賛成の意を表した提言を発表した。

 2010年(平成22年)1月12日、鳩山内閣の北沢俊美防衛相が東京都内で行われた軍需企業の大多数が参加する日本防衛装備工業会主催の会合で「そろそろ基本的な考え方を見直すこともあってしかるべきだと思う。2010年末に取りまとめられる防衛計画の大綱(新防衛大綱)において武器輸出三原則の改定を検討する」と発言し、 見直しの内容としては「日本でライセンス生産した米国製装備品の部品の米国への輸出」や「途上国向けに武器を売却」をあげた。

 2010年2月18日、鳩山首相が主催する「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の初会合が首相官邸で行われ、鳩山首相が冒頭の挨拶で「防衛体制の見直しには、継続と変化の両方が必要だ。タブーのない議論をしてほしい」と述べた。北沢防衛相は懇談会で「装備産業の基盤整備をどう図るか議論してほしいとお願いした」と述べ、武器輸出三原則の見直しを議題とするよう公式に求めたことを明らかにした。武器輸出三原則の見直しは新防衛大綱に反映される。

 2010年にはソマリア沖の海賊対策の一環としてイエメンの要請に基づき同様に巡視艇を供与することを検討している。

脚注 [編集]





(私論.私見)