2010尖閣諸島中国漁船衝突、船長逮捕事件考 |
(最新見直し2010.09.27日)
(れんだいこのショートメッセージ) |
ここで領土紛争の処方箋を呈示する。 2009.5.26日 れんだいこ拝 |
2010.9.7日、海上保安庁は、中国漁船が領海紛争中の沖縄県尖閣諸島付近で操業し、その後日本の海上保安庁の巡視船に衝突したとして、中国漁船の船長を公務執行妨害と違法操業の疑いがある逮捕すると云う事件が発生した。これを仮に「2010尖閣諸島中国漁船衝突、船長逮捕事件」と命名する。巡視船、不審船とも乗組員にけがはなかった。船長は、外国人漁業規制法違反等の容疑で石垣島へ連行され、船長を除く船員も同漁船にて石垣港へ回航、事情聴取が行われた。9.10日、
那覇地検石垣支部が船長の拘留の延長を請求した。
中国政府は、「釣魚島(尖閣諸島)は中国固有の領土」である声明し、事件発生直後より5回にわたって北京駐在の丹羽宇一郎大使を呼び出し、日本側の措置に強硬に抗議、船長・船員の即時釈放を要求した。特に4回目となる中国国務委員による呼び出しはきわめて異例12日の未明(午前0時から1時間)であった。9.13日、日本政府は参考人として事情聴取をしていた船員14名を中国政府のチャーター機で帰国させ、差し押さえていた中国漁船も中国側に返還した。しかし、船長に関しては司法手続きが行われることになった。 9.24日、国際連合総会に出席していた菅首相及び前原外相不在の中、那覇地方検察庁鈴木亨・次席検事が、船長の行為に計画性が認められないとし、また日中関係を考慮したとして、中国人船長を処分保留で釈放すると突如発表した。仙谷官房長官が容認し、9.25日未明、中国人船長は中国側が用意したチャーター機で石垣空港から中国へと送還された。船長は帰国後、現地マスメディアに対し「自分は法を犯していない」と主張した。中国政府は、釈放後、日本に謝罪と賠償を求める声明を発表した。これに対し日本政府は「中国側の要求は何ら根拠がなく、全く受け入れられない」とする外務報道官談話を出したものの中国側は「日本の行為は中国の主権と中国国民の権利を著しく侵犯したもので、中国としては当然謝罪と賠償を求める権利がある」と反論している。その後、首相自ら「尖閣諸島は、わが国固有の領土であり、謝罪・賠償は考えられない。全く応じない」としている。釈放について、国連総会でアメリカ滞在中の菅首相は、「検察当局が国内法に基づいて粛々と判断した結果と承知している」と述べた。また同前原外相は釈放の一報について、深夜に秘書官から電話があって起こされ知ったことを明らかにした。 これに対して野党や国民の間からは弱腰外交との批判が出ている。民主党の岸本周平は、「中国と領土争いをしている多くの東南アジア諸国は日本に失望したことでしょう。アメリカを含め、彼らと共同戦線を保つことでしか、中国の領土的野心には対抗できない日本にとって最悪の結果です」と批判した。民主党幹部も「菅も仙谷も、外交なんて全くの門外漢だ。恫喝(どうかつ)され、慌てふためいて釈放しただけ。中国は、日本は脅せば譲る、とまた自信を持って無理難題を言う。他のアジアの国々もがっかりする」とうなだれた。また、衝突事件の舞台から程近い石垣島の住民は、罵声を飛ばし、漁業関係者は「怒りを通り越して気絶しそうだ」「こんな対応では漁に行けない」と憤り、切実な思いを口にした。「尖閣諸島周辺はカツオの好漁場だが、漁師は怖くて行かない」とも話している。 地方自治体の動き [編集]
民間での動き [編集]華人学校への嫌がらせ [編集]シンガポールの華字紙・聯合早報は「16日と17日の両日、兵庫県の神戸中華同文学校は日本の右翼分子から『学校を爆破する』との脅迫電話を受けた」と報じた[39]。脅迫を受けた神戸中華同文学校は警察に通報し、18日午後を休校とした。また、神奈川県横浜市の山手中華学校にも脅迫の手紙が寄せられ、さらに同記事は「東京や大阪などの華人向けの学校でも類似の脅迫電話が相次いでいる」と報じた。 中国の反応 [編集]船長逮捕に対して中国政府は即時抗議、日本時間午前1時に在中日本大使を呼びつけて抗議した。また政府広報も、「日本は司法にのっとって即時に船長を安全に解放すべきだ」と発表している。また、これに加え、中国政府は尖閣諸島周辺を自国の領海・領土と強調した上で、「その海域で操業していた自国の漁船に日本の国内法が適用されるなど荒唐無稽だ。非合法で効力はない」と主張・報道し、「関係海域周辺の漁業生産秩序を維持し、漁民の生命・財産を保護する」目的として、同海域に向けて「漁業監視船」を派遣したとを発表した[40]。 国務院台湾事務弁公室の范麗青報道官は「釣魚島の主権を守ることは中台同胞の共通の利益で、中華民族の長期的、根本的な利益になる」と述べた[41]。 2010年9月21日、ニューヨークを訪れていた温家宝首相は「われわれは(日本に対し)必要な強制的措置を取らざるを得ない」と在米華僑らとの会合で述べた[42]。中国の指導者が外国に対して「強制的措置」を警告するのは異例という[42]。 なお、中国においては、当初久場島(中国名:黃尾嶼)で中国船が日本の巡視船により発見され、逃走した事実はあまり報道しておらず、魚釣島(中国名:釣魚島)での衝突事件として報道している[43]。 中国政府は、在中国トヨタの販売促進費用を賄賂と断定し、罰金を科すと決定した[44]。 中国のニュースサイト環球網が実施したオンライン・アンケートでは、「あなたは、中国が軍艦を派遣して釣魚島を巡視することに賛成ですか?(您是否赞成中国派军舰赴钓鱼岛巡逻?)」という質問に対して、「賛成」が98.2%、「不賛成」が1.8%という結果が出ている(2010年9月23日現在)[45]。 政府系シンクタンクの社会科学院日本研究所の専門家が尖閣問題にからみ日本に対する圧力のかけ方として、円資産を買い増しして円高誘導すればいいと主張している[46]。 9月23日以降、複数の中国の税関でレアアースの日本への輸出が、事実上止められた。中国政府関係者は「日本経済の弱いところを突くような制裁を検討するように指示された」としている[47]。 9月23日、軍事保護施設へ侵入したとして、民間日本人4人が9月20日に拘束されたことが明らかになった[48]。 抗議活動 [編集]
日本人学校への嫌がらせ [編集]北京日本大使館や日本人学校への抗議や嫌がらせが、2010年9月15日までに約30件に達したことが大使館の調べで分かった[51]。中国の日本大使館によると、
などが報告されている[51]。 日中の報道の相違 [編集]事件発生後中国の報道をみると、時間が経過するにつれ細かい点で日本の報道と微妙なズレを見せている。 例として9月7日事件発生当日の中国の報道の1つ「環球網 huanqiu.com」を見ると、日本の巡視船「よなくに」が中国に漁船に対して、(海域からの)退去を警告した後で衝突が発生したとし、「よなくに」の手すりの支柱が折れたとしている。また同巡視船「みずき」の衝突による破損は、右舷高さ1メートル幅3メートルとしている[52] [53]。「よなくに」が中国船に対して退去を警告した点や、「みずき」の右舷の破損に関しては、比較的日本の初期の報道に近い。 しかし事件発生から船長釈放の25日まで継続している、sohu.comの事件を特集したサイト「中国渔船与日本巡逻船发生相撞」では、中国船と日本の巡査船の衝突の様子や衝突箇所が、日本の報道と異なっている[54] [55]。 ここではあくまで中国漁船は、自国の海域での操業であったという前提で報道されている。中国漁船が操業していたところ、進路に日本の巡視船が突然現れ、「よなくに」が接触したとしている。また「みずき」との接触後、中国漁船は魚釣島海域を離れたが、その後日本の巡視船が追いかけてきて逮捕したとしている[54]。 日本の報道では、久場島の北北西約27キロの日本の領海から約3キロの排他的経済水域(EEZ)で、巡視船「みずき」の保安官が乗り移って停船させたとしている[56]。 台湾の反応 [編集]
交流協会前でデモを行う台湾人
中華民国行政院海岸巡防署は巡防船12隻を派遣して台湾の抗議船を保護して、しかし日本の海上保安庁の艦船11隻に出会って、双方は対峙して、海岸巡防署の官吏が日本側に対して領土声明を発表した。 台湾の抗議船が、EEZ内まで侵入した。これに対して台湾政府は「民間の自発的行動」と称賛した[57]。 17日、来日していた中国国民党の金溥聡秘書長(幹事長)は、尖閣諸島について「(同諸島を巡る対応で)台湾が中国と連携することはない」と語った。ただ「同諸島の主権が台湾にあるとの従来の主張に変わりはない」とも述べた[58]。また、台湾の抗議船が当局の巡視船とともに同諸島に近づいた問題については、「彼らは漁民のライセンスを持っており、出船を禁じることはできない」と正当性を強調した。 他国の反応 [編集]アメリカ合衆国 [編集]9月20日、ジェイムズ・スタインバーグ米国務副長官は、日中間における緊張が高まっていることについて、「最も重要なことは、継続的な対話であり、複雑な状況の中で、対話に参加することが前進する最善の方法だ」と述べ、対話による妥協点を見い出すよう促した[59]。 尖閣諸島付近での緊張が高まる中、2010年9月23日、ヒラリー・クリントン国務長官は、日本の前原誠司外務大臣との日米外相会談で、「尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用対象範囲内である」との認識を示し[60][61]、同日行われた会見でロバート・ゲーツ国防長官は「日米同盟における責任を果たす」「同盟国としての責任を十分果たす[62]」とし、マイケル・マレン統合参謀本部議長は「同盟国である日本を強力に支援する」と表明した[63]。また、菅直人内閣総理大臣とバラク・オバマ大統領の日米首脳会談で、両国は「緊密に連携する」ということで一致した[64]。 分析 [編集]2010年9月13日、ウォールストリート・ジャーナルは「軍事的優位を保つことによって周辺国を傘下に収めようとする中国の意図を、冷戦時代にソ連がフィンランドを事実上の属国とした例になぞらえて『フィンランド化』戦略だ」と喝破。尖閣での事件には直接触れてはいないものの、「米中の軍事バランスがこのまま悪化していけば、(日本など)長年の同盟国や友好国はフィンランドの例にならわざるを得なくなるかもしれない」と警鐘を鳴らしている[65]。 読売新聞は、社説で、『中国は海底資源の存在が明らかになった1970年代から尖閣諸島の領有権を主張し、それを1990年代からの「反日・愛国」教育で国民に浸透させてきた。尖閣問題で「政府は弱腰」との印象を与えれば、国内経済格差などへの不平や不満に“引火”し、中国国民の矛先が共産党指導部に向けられかねない――。そんな懸念もあって、中国政府は今回、日本に高圧的な態度をとっているのだろう。だが、それは明らかに筋が違う話だ。』と指摘した[66]。 2010年9月15日、リチャード・アーミテージ元国務副長官は仙谷由人官房長官と首相官邸で会談し、「中国は尖閣諸島で日本を試している」と指摘した[67]。また、アーミテージは、中国の東シナ海での活動活発化について、「西沙、南沙両諸島の領有権問題でベトナム、マレーシア、フィリピン、台湾に警告する意味合いも強いのではないか」と分析した[67]。 ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、9月10日と20日付の2回、ニコラス・クリストフ(英語)記者のコラム記事を掲載した。記事内でクリストフは「太平洋で不毛な岩礁をめぐり、緊張が高まっている」とした上で、「米国は核戦争の危険を冒すわけがなく、現実的に安保発動はゼロだ」とし、加えて同氏は、私見として「中国の方に分がある」と発表した[68]。この記事について在米日本総領事館は即座に抗議、反論する文書を送ったが、それを同氏は20日のコラムで一部公開し、反日運動への参加を呼び掛けた。実際に、読者からは、「日本人は歴史を変えるのが得意だ」などと日本を一方的に中傷する書き込みが多く見られている[69]。 ダイヤモンド社は「レアアースの輸出規制」、「膨張する軍事予算」、「サイバー戦力」、「日米同盟」、「日本国債買い増し・円高」などに触れ、「海底に国旗を立てて領有権を主張する 中国に日本はこんなに無防備でいいのか」という論調で分析した[70]。 アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルは「ネット上の意見を見る限り、日本は完全な敗者」と指摘した[71]。 他、アメリカのワシントン・ポストやロサンゼルス・タイムズ、インドのタイムズ・オブ・インディアは、中国は日本に強烈な圧力を行使できることを示したとし、日本は圧力に屈したと報道した[72]。 出典 [編集]
関連項目 [編集] |
(私論.私見)