2009.3.4小沢第一秘書逮捕事件経緯1

 (最新見直し2008.8.30日)

 2009.3.3日、東京地検特捜部は、国内で多額の裏金を作っていたとされる準大手ゼネコン「西松建設」(東京)の政治献金に絡み、違法献金を受けていた疑いが強まったとして、小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」の会計責任者で、小沢代表の公設第1秘書を務める大久保隆規容疑者(47)、西松建設前社長の国沢幹雄容疑者(70)=外国為替及び外国貿易法違反の罪で起訴=ら計3人を、政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕し、東京都港区の陸山会など関係先の捜索に乗り出した。

 特捜部の調べでは、大久保秘書は03~06年、実際は西松建設の政治献金であることを知りながら、陸山会の政治資金収支報告書に、西松建設のOBが代表を務めていた政治団体「新政治問題研究会」(95年設立、06年解散)と、「未来産業研究会」(98年設立、06年解散)から計2100万円の寄付を受けたとする虚偽の記載をした疑いなどが持たれている。

 小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」が、準大手ゼネコン「西松建設」(東京)から事実上の企業献金を受けていた政治資金規正法違反事件で、逮捕された小沢氏の公設第1秘書で、陸山会の会計責任者、大久保隆規容疑者(47)が、西松側に対し、献金額や献金先を具体的に指示していたことが4日、捜査関係者の話で分かった。

 西松建設元幹部などによると、西松建設は社名を出さずに国会議員の政治団体に献金する仕組みを作り、ダミーのOBが代表の政治団体を通じて国会議員側に資金提供をしていたという。 政治資金規正法は、他人名義での献金や政党側以外への企業献金を禁止している。会計責任者は献金が同社からの献金だと認識していた疑いがあるという。

 東京地検特捜部は、民主党岩手県第4区総支部が入る同県奥州市の小沢一郎民主党代表の事務所の家宅捜索を開始、2億円近くにのぼる違法なトンネル献金が、小沢氏側の政治団体の主導で行われてきたとみて、実態解明を進めるもようだ。

 捜査関係者によると、陸山会など小沢氏側の政治団体は、西松のダミーの政治団体「新政治問題研究会」(新政研)と「未来産業研究会」(未来研)から、両団体が平成18年末に解散するまでの12年間に総額2億円近い献金を受領していたという。

 これらの献金方法については、大久保容疑者が、西松前社長の国沢幹雄(70)と元総務部長兼経営企画部長の岡崎彰文(67)の両容疑者に対し、具体的な金額や献金先などを指示。2人はこれに応じ、毎年1500万円-2000万円程度を大久保容疑者が指定した銀行口座に振り込んでいたとされる。

 特捜部の調べに対し、西松関係者は「長年の献金は、小沢氏側の政治団体からの要求に応じて支払ってきた」などと供述しているもようだ。

 西松関係者によると、両者の献金授受には、新政研や未来研の関係者は一切かかわっていなかったといい、特捜部はダミー団体を使ったトンネル献金について、小沢氏側の政治団体も違法性を認識していた疑いが強いとみている。

 大久保容疑者は、陸山会の会計責任者に就任した12年以降、小沢氏側の政治団体の資金管理を任されていたという。

 特捜部の調べによると、大久保容疑者ら3人は、18年10月ごろ、新政研の名義をダミーに使って、陸山会に対して行われた西松の企業献金を授受するなどした疑いが持たれている。

 地検が逮捕した公設秘書の勾留を延長した場合には、起訴するかどうかなどの刑事処分の決定は3月下旬ごろになると見られる。

 西松建設側の政治団体による献金先には、複数の自民党議員が挙げられている。河村健夫官房長官は、4日、山口俊一首相補佐官と二階俊博経済産業相の秘書官と個別に接触、献金やパーティー券代金について説明を求めた。

 民主党の小沢一郎代表は3日午後の幹部会で、西松建設のOBが代表を務めていた政治団体からの献金について「何の問題もない。適切に処理している」と説明した。東京地検特捜部が政治資金規正法違反の疑いで小沢代表側の政治団体を捜査する方針を固めたもようだとの朝日新聞の報道を念頭に発言した。

 3.4樋、民主党の小沢代表は、公設第一秘書が政治資金法違反事件で逮捕されたことに関して記者会見を開き、約40分間にわたって弁明した。「私は、政治献金を全て法にのっとって報告し、オープンにしている。何らやましいことはない。起訴に値するような法律違反はやっていない」と明言した。


 政治献金について次のように述べた。
 献金は何処から受けても構わないが、全て公開し、妥当かどうか国民が審判を下すと云うのが民主主義のあり方だ。(自民党と同じ体質ではないかとの批判に)そういう類いの意見は、全く侵害だ。

 2100万円の献金を受けた背景は調べないのかと問われ、次のように答えた。
 一般的な献金について、どういうところから出ているかは詮索しない。

 結果的にゼネコンから非常に多くの資金が出たと問われ、次のように答えた。
 献金はどこから受けても構わない。

 違法献金の疑いについては次のように述べた。
 政治団体からの寄付という認識で受領したと思っている。政治資金規正法に沿って適法に処理している。献金の原資が違法とはっきりすれば返却する。

 西松建設への便宜供与について次のように述べた。
 私や私の秘書が、相手方に何らかの利益を与える行為を伴っていれば、甘んじて捜査を受ける。しかし、そういう事実は無い。

 代表辞任について次のように述べた。
 考えていない。(秘書が起訴された場合にはとの問いに)起訴に値するような法律違反はやっていない。
 
 東京地検特捜部に対して、次のように批判した。
 この種の問題で今まで、逮捕、強制捜査をした例は全くなかったと思う。今回の検察の強制捜査は、従来のやり方を超えた異常な手法。衆院選が取りざたされるこの時期に異例の捜査が行われた事に関し、不公正な国家権力、検察権力の行使だと考える。政治資金規正法に忠実に報告をして、オープンになっている問題で、このような逮捕を含めた強制捜査を受けるいわれはない。強制力を持つ公権力が、思うままに権力を行使するというようなことになれば、社会は暗澹たるものに陥ってしまうだろう。このような権力行使が今後も行われれば、国民の人権を守ることができない。大変民主主義を危うくする。

 一方的なこじつけた理由での検察権力発動は非常に公正を欠くものであると考える。献金を廻り、私や、私の秘書が相手方に対して便宜供与とかの行為があるとするならば、甘んじて捜査を受けるが、全くそういう事実は無い。従って、今回の強制捜査については納得が行かない。疑いを抱かざるを得ない。

 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK59 」の南青山 氏の2009.3.4日付け投稿「小沢民主党代表の公設秘書が逮捕(「在野のアナリスト」2009.3.3)【小沢代表に都合がいいとの見方も】」は、次のように指摘している。前半のくだりが参考になるので、この部分を転載しておく。

http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/2009-03.html#20090303

 小沢民主党代表の公設第一秘書が、西松建設裏金献金問題で、政治資金規正法違反で逮捕されました。東京地検が動いている、とかねて囁かれていましたが、選挙も近く、また米国務相との会談後、という国策捜査を疑われるこのタイミングで地検が動いたのは、幾つか理由も考えられます。

 2つの政治団体から2100万円の献金、これも仮に陸山会が相手をダミー組織と知らなければ、法的な責任は通常問われません。道義的に返すかどうかは政治家の判断であり、これは名簿に上がる与野党の政治家、それぞれの問題になります。つまりこれは迂回献金、ダミーとの認識をもっていたかが問われるものであり、本来地検としては極めて難しい犯罪と呼べるものです。

 通常、こうした捜査ではまず任意同行です。年度内に立件したい、40日拘留期間のギリギリのタイミングとはいえ、いきなり逮捕はよほど確信がないと出来ません。例えば秘書名の記載された領収書、献金を無心する音声テープ、などが発見された場合であれば問題ありません。

 しかし西松建設側のみの証言であれば、その他の献金を受けた政治家、与野党問わず一斉捜査のはずですし、一方側のみの証言では相手側を即逮捕で拘留とするのは難しい。仮に無実で損害賠償請求などが起きた場合の影響を考えれば、公設秘書という重要性を考えても、踏み込み難いのです。

 逮捕に至った経緯が、任意同行を拒否したこと以外なら、実は収支報告書以上の献金が渡っている、即ち虚偽報告が捜査の本筋では?そういう見方もできます。ただいずれの場合も、任意同行で事情を訊くのではなく、いきなり逮捕というのは地検特捜部の自信と覚悟を窺わせるものです。


 2009.3.5日、政府高官が、西松建設の巨額献金事件の捜査について「自民党議員に波及する可能性はない」などとの認識を示し波紋を呼んだ。西松建設側の献金やパーティー券購入など資金提供先には、自民党の森喜朗元首相や二階俊博経産相、、尾身幸次元財務相らが含まれているが、この高官は、民主党の小沢一郎代表に比べて金額が少ないことを指し「あの金額で違法性の認識を出すのは難しい」と述べた。政府高官が政治家の絡む事件で捜査の見通しについて言及するのは異例のことで、国策捜査説や陰謀説も流れているだけに、これに拍車をかけた格好となった。

 政府高官は、内閣官房副長官 漆間 巌 (うるま いわお)氏であることが判明させられた。

 元記者の宮崎信行さん(http://blog.goo.ne.jp/kokkai-blog/e/a4b49c927aed5a22c0e19db289b86b53)によれば、下記のような取材のきまりがあるそうだ。首相官邸と内閣記者会は、記者会見ではなく「懇談」形式の取材の際に、政府首脳=官房長官、 政府高官=官房副長官(事務)、首相周辺=総理秘書官との主語で報じることになっています。「懇談」の席上、本人がOKした場合は、実名で報道できることになっています。

 これによれば、政府高官というのは、漆間巌官房副長官(事務、元警察庁長官)のことになる。この報道について、本人が実名で報道することはOKしなかったのであろう。しかし、記者や知識のある人ならすぐに誰が発言したかわかってしまうので、オフレコでもなかったようだ。

 小沢代表の秘書、大久保隆規氏が逮捕された理由が「西松建設への請求書があった」からということだが、『きっこのブログ』(http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2009/03/post-3bc0.html)によれば、実際はそんな事実はなかったことを特捜部は認めたらしい。ここまで見ても、植草さんが述べられたように、いかにマスコミが未確認情報を垂れ流しているかがよくわかると思うけど、宮崎信行さん(http://blog.goo.ne.jp/kokkai-blog/e/a4b49c927aed5a22c0e19db289b86b53)によれば、さらに、驚いたことに、「他のゼネコンではこのくらいは献金している」などと具体的な金額を示しながら、西松側に献金額の積み上げを要求していたのは、自民党岩手4区支部長で次期衆院選自民党公認候補予定者、高橋嘉信元衆院議員(http://www.jimin.jp/jimin/giindata/shibu/takahashi-yo.html)だったそうだ。

 経歴を見てもおわかりの通り、高橋氏は、小沢代表の政策秘書を経て、2000年に比例東北ブロックから衆院議員になった。その後、市長選に出馬したが、落選。小沢代表の小選挙区での対抗馬として自民党岩手4区支部長に就任している。

 理解に苦しむこの時期の小沢氏秘書の逮捕
 元検事・郷原信郎氏インタビュー
http://www.videonews.com/interviews/001999/000869.php

 西松建設からの政治献金の虚偽記載容疑で民主党の小沢一郎代表の秘書が逮捕された事件について、検察OBで桐蔭横浜大学法科大学院教授の郷原信郎氏は、政治団体を経由した献金に対して政治資金規正法の虚偽記載を適用することは非常に難しいとの見通しを示した。

 長崎地検の検事時代に自ら政治資金規正法がらみの捜査に携わった経験を持つ郷原氏は、そもそも政治資金規正法は必ずしも実質的な資金の提供者を寄付者として記載することを要求していないことを指摘する。「実際は西松建設がお金を出していることが分かっていても、政治団体から寄付を受けたのであれば、政治資金収支報告書には政治団体の名前を記載しても違反にはならない。政治団体がなんら実態の無いダミー団体で、しかも寄付を受け取った側がその事実を明確に把握していたことが立証されない限り、政治資金規正法違反とは言えないが、実態の無い政治団体はたくさんある。」郷原氏はそう語り、選挙を控えて政治的な影響の大きなこの時期に、あえて野党党首の公設秘書の逮捕にまで踏み切った検察の意図に疑問を呈した。


 「『ユダヤ発言』したのかしないのか テレ朝に米人権団体が抗議」を転載しておく。
 「サイモン・ウィーゼンタール・センター」のウェブサイトには、田原氏を批判する声明が掲載されている

   「反ユダヤ」的な報道に対して抗議活動を繰り広げることで有名な米人権団体が、今度は、テレビ朝日の討論番組「サンデープロジェクト」にかみついた。人権団体は、司会の田原総一朗氏が、「田中角栄元首相はユダヤにやられた」などと発言したと主張。「言語道断で受け入れられない」として謝罪を要求している。一方、テレビ朝日側は「『ユダヤ』とは言っていない」としており、言い分が食い違っている。

 「ナチ『ガス室は』なかった」記事に対して猛抗議

   同センターが問題にしているのは、2009年3月8日放送のテレビ朝日系「サンデープロジェクト」での、司会の田原総一朗氏の発言だ。この日のゲストは田中真紀子氏で、西松建設への献金をめぐって民主党の小沢一郎代表の秘書が逮捕されたことについて「国策捜査」と批判する声があがっていることについてのやりとりが繰り広げられた。

   話題は、田中真紀子氏の父親、田中角栄元首相がロッキード事件で逮捕・起訴されたことに及び、真紀子氏は「(今回の秘書逮捕劇は、昭和)51年度の(ロッキード)事件と同じようなものを感じる」と述べた上で、ロッキード事件については「発端が不自然だった」「どこかで操られている。大きな国家権力がある」などと振り返った。

   これらのやりとりについて、米ロサンゼルスに本拠地を置くユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」は、09年3月9日、「ウィーゼンタール・センターは、日本のテレビキャスターが、日本の政治スキャンダルを米国とユダヤ人のせいにしていることを糾弾する」とする声明を発表したのだ。

   同センターは、国内では、95年に文芸春秋の月刊誌「マルコポーロ」が掲載した「ナチ『ガス室は』なかった」と題する「ホロコーストは作り話」などとする記事に対して猛抗議したことで知られる。文芸春秋側は雑誌の回収と廃刊、花田紀凱編集長の解任を決め、当時の社長は辞任に追い込まれた。

 「番組では、キャスターは『有罪』と発言している」

   今回、同センターが出した声明では、「ニュース番組の司会者が日本国民に政局を伝えようとした発言が、国内のスキャンダルの責任がユダヤ人や米国にあるという、ありもしない陰謀を想起させた。言語道断で受け入れられない」などとして田原氏を非難。真紀子氏についても、「生放送中、すぐに田原氏の嘘に対して疑問を投げかけなかったことは残念」と論評。テレビ朝日と田原氏に対して、公の場での謝罪を求めている。

   番組中では、真紀子氏がロッキード事件の捜査について「ですから、嘱託尋問調書の違法性と言うふうな問題ですとか、総理の職務権限はどうかとか、色々な問題が投げかけられた訳ですけれども、結果的に何も片付かないで来ている。政権交代をすることによって、もっと透明に、われわれ国民に政治が近づくんですよ」と不満をぶつけた直後に、発音は不明瞭ながらも、田原氏が「ただ、繰り返し言いたい。田中さんも、結局はやられた、と。ユダヤに。小沢さんもやられるんじゃないか、と」と応じたように聞こえるくだりがある。同センターが問題視しているのは、この発言だとみられる。

   もっとも、テレビ朝日側は、そもそも非難されるような「ユダヤ発言」はしていない、との立場だ。同局の広報部では、「番組では、キャスターは『有罪』と発言しており、『ユダヤ』とは言っておりません。サイモン・ウィーゼンタール・センターに対しましては、何らかの対応を検討します」とコメント。

   問題とされた田原氏の発言の直後には、真紀子氏は「間違えないでください。最後まで、最高裁判決いってませんから。(角栄氏が)亡くなったことによって。ですから『公訴はなかった、裁判はなかった』という結論になった訳でありまして…。1審とかなんかの判決がすべてで終わったわけではありません」と応じている。確かに、テレビ朝日側が言うように、田原氏の発言の「ユダヤ」という箇所を「有罪」と置き換えると、「田原氏の発言に対して、真紀子氏が『角栄氏の有罪は確定した訳ではない』と反論している」と理解することができそうだ。少なくとも真紀子氏は「有罪」と受け取ったようだ。

   テレビ朝日側は、同センターから何らかの直接のコンタクトがあった際には、事情説明をするなどの対応を検討しているという。


【ロッキード事件の東京地検エースの堀田氏が検察の正義を後押しする】
 「プレスクラブ (2009年04月21日)」その他を参照する。

 4.21日、ロッキード事件時の東京地検特捜部検事としてロッキード事件を捜査、米国での嘱託尋問を担当し、起訴後公判検事として田中角栄元首相に論告求刑をしたことで知られ、法務省最高検察庁検事を最後に退官し、弁護士、財団法人さわやか福祉財団理事長として活動し、ホームヘルパー基礎研修制度の提唱などを行っている堀田力元検事が、小沢代表の秘書逮捕問題で民主党が設置した第三者委員会に出席し、一連の西松事件に於ける検察の捜査に対し、「検察は説明責任を果たしている」と述べた。堀田元検事の危うい正義性を浮き彫りにした。

【小沢氏4億円借り入れ金不記載は検察の捏造】

 検察がリークし、マスコミ各社がこぞって取り上げた「小沢氏4億円借り入れ金不記載」は捏造と判明した。事実は、04年の収支報告書に小沢氏から4億円借入したことが記載されていた!!返済は05年に2億円、06年に2億円となっている。

 これにつき、植草一秀の「知られざる真実」の2010.1.9日付けブログ「陸山会収支報告書に4億円借入記載の重大事実」が次のように述べている。関係の下りのみ抽出する。

 2010年1月 9日 (土) 陸山会収支報告書に4億円借入記載の重大事実

 検察とマスメディアがタイアップして小沢一郎民主党幹事長の政治資金に関する疑惑情報を垂れ流している。(中略)第五は、日本の警察・司法・裁判所制度の近代化である。 小泉政権時代以降、警察、検察、裁判所権力の政治利用が目に余る状況に陥っている。松本清張が『日本の黒い霧』で第2次大戦後の警察、検察、裁判所権力の政治利用を詳細に論じたが、類似した行動が過去10年に際立つようになった。

 警察、検察権力には、驚くべき「裁量権」が付与されている。犯罪が存在しても不問に付す裁量権、犯罪が存在しないのに、無実の人間に罪を着せる裁量権、が付与されているのだ。これらの驚くべき裁量権が政治利用される国を「暗黒国家」と言う。日本はこの意味で、世界有数の暗黒国家である。警察、検察、裁判所の近代化を実現しない限り、日本の近代化が実現したとは言えない。日本は依然として前近代の状況に取り残されているのである。

 小沢一郎民主党幹事長や鳩山由紀夫内閣総理大臣に対する検察の姿勢は常軌を逸しているとしか言いようがない。多くの国民が多数の自民党議員の金銭疑惑をよく知っている。政治資金収支報告書への不実記載などは枚挙に暇がない。収賄やあっせん利得などの疑惑のある政治資金収支など、無数に広がっている。

 検察には自民党の金銭疑惑を捜査する意思が存在しない。警察、検察行政において、金科玉条と呼ぶべき鉄則は、①「法の下の平等」確保、と②「冤罪の防止」、③「基本的人権の尊重」、である。しかし、日本の警察、検察にこの法則はまったく通用しない。

 小沢一郎民主党幹事長の政治資金団体の不動産取引にかかる資金収支が収支報告書に記載されていなかったとの報道がなされているが、「低気温のエクスタシーbyはなゆー」様、ならびに「ふじふじのフィルター」様によると、2004年の収支報告書に小沢一郎氏からの4億円の借入れが記載されているとのことである。

 2004年度の官報号外第223号247ページに「陸山会」の収支報告が記載されており、そこに「借入金 小澤一郎 400,000,000」と書かれているとのことである。「小沢一郎」ではなく「小澤一郎」と記載されていたことが何かしらの影響を与えたのかどうかは定かでないが、収支報告書に記載されていたことになると、現在の騒動は局面が急転回する可能性もあるのかも知れない。いずれにせよ、資金の出入りの日取りが不自然などと、意味不明な報道が過剰に繰り返されている現実は不自然極まりない。 (中略)

 日本政治刷新の五つの課題はいずれも重要なものだが、警察、検察、裁判所の歪みは、五つの課題のなかでも第一位に位置付けられるものかも知れない。偏向した検察による捜査を偏向したメディアが報じるのだから、事実がねじ曲げられ、歪んで伝えられることは避けようがない。したがって、主権者である国民は、メディアの歪んだ情報を、「歪んでいる」との認識の上で見つめなければならない。「歪んだ情報」に接する心構えを全国民が備えなければならない。


【郷原信郎氏の検察暴走批判】

  2010.1.10日、佐久間特捜部長と同期にして元長崎地検次席検事、検察で23年間仕事をしてきた郷原信郎氏は、テレビ朝日「サンデープロジェクト」に出演し、「小沢一郎氏からの借入金4億円」は陸山会の2004年の収支報告書に記載されている」と発言した途端、司会の田原総一朗氏は、「ええっ」と驚愕の声を上げ、スタジオ中が静まりかえった。ここで、郷原氏の所論を確認しておく。れんだこが纏めれば、こういうことになる。

 私は、04年の収支報告書に小沢氏からの借入金の記載があるからというだけで、今回の事件の政治資金規正法違反が否定されるということを言いたかったわけではない。まず言ったのは、「検察はまだ強制捜査も何もやっていないし、公式なアクションやコメントは何もないのに一方的にマスコミの側が報じている。その中には、検察の捜査情報がわからないと知り得ないのではないかと思えるようなことが多く含まれている。当時の陸山会の担当者の石川衆議院議員が立件・起訴されると報じられているが、一体何の犯罪事実で起訴されるのか、さっぱりわからない」ということだ。つまり、容疑不確定な時点での大騒ぎを危ぶんでいるということになる。

 その上で、「05年に土地を買ったということになっていたが実際には04年に買っている、04年に土地を買った原資のことが収支報告書に出ていない、だからその点が不記載の違反に問われる、というのが私の理解だったが、実際には04年の陸山会の収支報告書には小沢氏からの4億円の借入金の記載はある。その借入金の記載が小沢氏名義で銀行から借りたお金のことか、個人から直接現金で出てきたものなのか、ということが問題にされているのかもしれないが、その辺の話は公開された情報ではわからない。捜査機関側から直接説明でもしてもらわないとわからないはずだ」。 

 要するに、私としては、04年の収支報告書に小沢氏からの借入金の記載があるのに、それでも違反だというのは、マスコミの側が検察の側からよほど詳しい説明を受けているからではないか、と今回の一連の報道の在り方の問題を指摘したかったのだ。 

 私のサンプロ発言を意識したのか、翌日の1月11日の各紙の朝刊では、さっそく、この点についての「検察側の見方、捜査方針」を詳しく報じる記事が掲載された。朝日、読売、いずれも、「04年分の同会の政治資金収支報告書では、小沢氏から現金で受け取って同会に入金した4億円(【1】)は記載されず、銀行から小沢氏名義で融資を受けた4億円(【2】)を記載した」という内容を含む記事だった。検察が既に任意聴取をしたという石川議員の供述を詳しく紹介している。


 04年の収支報告書に小沢氏からの借入金4億円の記載があっても、それは、銀行からの融資の分であって小沢氏から受け取った金については収支報告書には不記載だということ、つまり私がサンプロで指摘したように04年の収支報告書に小沢氏からの借入金4億円の記載があったとしても、陸山会側の政治資金規正法違反の成立には影響しないということが言いたいのであろう。  

 こうした11日の朝刊の記事、とりわけ、関連する金の流れをわかりやすく整理した朝日新聞の記事によって、それまで問題にされてきた「4億円不記載」とはどういう意味で、実際に収支報告書に記載されている小沢氏からの借入金4億円の記載とどういう関係になっているのかが、おぼろげながら見えてきた。しかし、皮肉なことに、これらの記事に基づいて事実関係を整理してみると、石川議員についての政治資金規正法違反の容疑は、ほとんど雲散霧消してしまいかねないように思える。

 両記事に共通するのは、本件に関連する陸山会の小沢氏からの4億円の借り入れには【1】と【2】の2つがあり、そのうちの小沢氏からの現金借り入れの【1】が不記載で【2】のみが記載されている、ということだ。

 では、正しくは収支報告書にどのように記載すべきであったのか。【1】、【2】の2つの借入金があったのだから両方を記載すべきであったとすると、小沢氏からの4億円の借入金が2口、合計8億円あったと記載すべきだったということになる。

 しかし、一方で、両記事は、【2】は【1】の原資を隠すための「偽装」だとの見方をしている(読売の記事は、「以前から陸山会で土地を買う時は定期預金を担保にして融資を受けていたため、思わず借りてしまった」との石川議員の供述を紹介した上、「特捜部は、…石川議員の説明は不自然で、4億円の定期預金と融資は土地取引に関する資金の流れを隠蔽(いんぺい)する目的だった疑いが強いとみて調べている」としている)。

 小沢氏の公設秘書の大久保氏の政治資金規正法違反事件で検察が持ち出したのは「西松建設関連の政治団体名義の寄附は偽装であって実際の寄附者は西松建設」という理屈だった。その理屈によれば、偽装の【2】は除外して、実質に基づいて【1】の4億円の借入金だけを収支報告書記載するのが正しい記載だということになる。それなら、偽装の銀行からの借入金4億円を含め合計8億円の借入金を記載することの方が実態に反していることになるのであり、「小沢氏からの4億円の借入金」一口を記載するのは実態どおりの正しい記載だということになる。

 では、同じ4億円の借入金でも【1】と【2】の違いで虚偽の記載になると言えるか。つまり、実際に陸山会の収支報告書に記載されている4億円の借入金の記載は【2】であって、本来記載すべきであった【1】ではないと言えるのか。 

 新聞等で、収支報告書に記載されている「4億円の借入金」が【2】の銀行からの借入金であったとされているのは、陸山会側が当初、不動産の取得は銀行からの借入金によるものだったと説明していたからであろう。しかし、それは、今回の一連の捜査の過程で【1】の小沢氏個人からの現金の貸付金の存在が明らかになる前の説明であり、【1】の小沢氏個人からの借入金が存在していたことが明らかになった以上、収支報告書への貸付金の記載が【1】なのか【2】なのか、客観的な記載からは、いずれとも判断し難い。

 しかも、政治資金収支報告書に借入金の記載をするについては、その原資を記載する必要はない。04年10月29日までに小沢氏から現金で受け取って同日の土地代金に充てられたとされる【1】も、同日、銀行から小沢氏名義で融資を受けて陸山会に貸し付けられたとされる【2】も、政治資金収支報告書に記載するとすれば、「10月29日 小沢一郎 借入金 4億円」というまったく同じ内容の記載か、それに極めて近い内容の記載である。「Aと記載すべきであったのにBと記載した」という虚偽記入の犯罪事実の構成自体が困難だ。少なくとも、4億円の借入金については、不記載などの政治資金規正法違反に問うことは困難だと言わざるを得ない。 

 結局のところ、政治資金規正法違反に問いうるとすれば、不動産の代金支払の記載が実際には04年であったのに、05年の収支報告書に記載されており、少なくとも代金の支払の事実が客観的に04年であった以上、その年の収支報告書に記載しなかったことの不記載が考えられる程度だ。しかし、報道によると、石川議員側は、この点の記載の誤りを「単純なミス」と説明しているようであり、要するにそれは「不動産の取得時期は登記の時点と考えていたので、代金の支払の時期もそれに合わせた」ということであろう。

 そうだとすれば、その「記載のズレ」が、それによって政治資金の透明性が害された、と言えるほどの重大な違反と言えるだろうか。少なくとも、昨年8月の総選挙で故中川昭一元財務・金融相を破って小選挙区で当選した石川議員に対する有権者の支持を、政治資金規正法違反で起訴して公民権停止で失職させることを正当化するほどの違反だとは到底考えられない。
マスコミ報道では、あたかも政治資金規正法違反による在宅起訴は必至のように報じられているが、一体どのような犯罪事実で起訴されるということなのか、まったく不明だ。 

 しかし、捜査機関側と結託しているかのような今回のマスコミ報道の在り方に問題があると言っても、マスコミ側が、そうまでして小沢氏の政治資金をめぐる疑惑を追及しようとする背景に、かねてから小沢氏の政治資金をめぐるダーティーなイメージがあり、国民の側もそこに疑念を抱く者が多いという事実があることも無視できない。

 今回の問題に関しても、そもそも当初の陸山会側の説明で【1】の小沢氏個人からの借入金の存在が明らかにされていなかったこと自体に不透明さが残る。だからこそ、それが、どこかやましい原資によるものではないか、との憶測を呼ぶことになる。石川議員が小沢氏から現金4億円を受け取ったと供述したことが報じられ、その原資がどこから来たものなのかが問題にされ、「小沢氏任意聴取要請」などという真偽不明の報道まで行われているのであるから、小沢氏はその点についての説明を早急に行うべきだ。 

 小沢氏は、昨年3月に公設秘書の大久保氏が政治資金規正法違反事件で起訴された後、政治資金についての説明責任を問われ、5月に民主党代表辞任に追い込まれた。この時、マスコミ等から説明すべしとされたのは、「なぜ長年にわたってゼネコンから多額の献金を受け続けたのか」という抽象的な事柄であり、この点について説明せよと言われても簡単にはできないのは自民党の多くの政治家も同様であろう。しかも、当時は、総選挙を控えた時期である。「説明の泥沼」に引きずり込まれたら、選挙の帰趨にも重大な影響を与えていたであろう。

 しかし、今回、説明を求められているのは、特定の不動産の取得の原資となった4億円の出所という具体的な事項だ。「やましいことはまったくない」と言うのであれば、この点についての説明をしないというのは誰しも納得できない。小沢氏がこの点について説明を行おうとせず、4億円の原資が明らかにされるまでは小沢氏への追及の手を緩めない、とするマスコミ側の姿勢も、その情報源や報道の手法の問題を別にすれば、それなりに理解する余地もある。石川議員は、小沢氏にとって手塩にかけて育てた大切な若手政治家のはずだ。小沢氏が、その石川議員の首を差し出すことで曖昧なまま問題を決着させよう、というようなことを考える度量の狭い政治家だとは思いたくない。

 大量の応援検事を投入するなど膨大なコストをかけて行われている検察捜査は決め手を欠き、いまだに捜査の出口どころか入り口すら見えない。一方、その過程で出てきた当然の疑問にすら答えようとしない小沢氏の側からも攻め手は出て来ない。両軍とも凡打を繰り返しノーヒットノーランのまま延長戦、一塁側スタンドだけが異様に盛り上がる。そのような不毛な争いに国民は辟易しているはずだ。通常国会召集を目前に控え、2番底が懸念される景気は今後どうなるのか。日本航空(JAL)は、日本郵政はどうなるのか。今、政治が直面している緊急の問題は余りに多い。「検察VS小沢」、泥沼の超貧打戦に決着をつけるのは、小沢氏の一打しかない。

(私論.私見)

 要するに、佐久間特捜部長を責任者とする暴走説を唱え、検察史の汚点を危ぶんでいることになる。これが検察OB発言であることを知る必要があろう。「特に強硬なのが、佐久間達哉・東京地検特捜部長、谷川恒太・東京地検次席検事、大鶴基成・最高検検事の縦ラインです」(情報誌「インサイドライン」歳川隆雄編集長)と伝えられている。れんだいこに云わせれば、この連中にあるのはネオシオニズムのエージェント性と出世欲であり、相応のお咎めを受けるべきであろう。

 「★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK77」の「郷原信郎氏:民主主義国家で政治家が言いがかりのような事件で潰されることは絶対にあってはならない。そのために訴え続けている」を確認する。http://www.asyura2.com/10/senkyo77/msg/627.html
 西松問題;郷原信郎×保坂展人(社民党)-裁判員制度に異議あり!No.1-
 http://www.youtube.com/watch?v=GfNVjHittRw

 その時も最初に強調したんですが、私は小沢擁護派ではない、ということをまず言わせてもらいました。私は元々、公共工事の受注企業からの献金を受けている政治家の不正・腐敗の問題と闘ってきた人間であって、元々そういう小沢さん的な政治手法を決して支持していなかったし、正直言うと、あの3月3日に小沢さんの秘書が逮捕されたと、第一報を聞いた時には内心「やった」と思ったんです。これは、とうとう民主党も小沢支配から免れるかと思ったぐらいなんですね。しかし、その事件の中身を見て愕然としたというのが本当のところでして。

 私は、小沢さんであれ麻生さんであれ、誰であれ二階さんであれ、こんなとんでもない言いがかりのような事件で、政治的に潰されるということは、絶対に民主主義国家においてはあってはならない。そのためにずっと訴え続けているわけです。

 別に、検察に対して反感があるとか、恨みがあるとかということは全くありません。私は検察で23年間仕事をして、本当に素晴らしい仕事をさせてもらったと思っていますし、検察という組織には感謝しています。感謝しているが故に、私がとりわけ長崎地検などでやってきた政治資金規正法違反の事件の時に、そこでいかに高いハードルを課されたか。そのハードルを課された時にはやはり現場では、なんでこんな無理難題を言われるのかと、事件を潰したいのかとも思ったわけですけれども、しかしやはり政治資金規正法の事件というのは、決してそんな単純なものではない。

 例えて言えば、脳外科手術みたいなものなんですね。そこにメスの入れ方を誤ると、脳から色んな神経が全身に伝わっていますから、全身の機能を損ないかねない。まさに国家の機能を損ないかねない危険性をはらんでいるわけです。そういう意味で、私は高いハードルを課されながら長崎地検捜査班の若い検事たちが乗り越えて行って、私が思ったところ、本当に史上最強の捜査軍団に育ってくれた。それを当時の最高検・法務省には感謝していると、本当に心底そう思っています。

ですから逆に言えば、私のような人間が外からガンガン言っていかなければ、検察は良くならないし、本当にこれから先の検察を、民主主義国家において、本当にいい仕事ができる検察になってもらいたい。そういう気持ちで言っているだけです。
 郷原信郎×保坂展人(社民党)-裁判員制度に異議あり!No.2-
 http://www.youtube.com/watch?v=FYcUopszJT8

 こういうような(検察の)やり方というのは、政治全体に対して大変な脅威なんです。私は決して小沢さんを擁護するつもりではないけど、これで小沢氏が辞任をして、民主党は新たな代表を選んで、なんとなく小沢氏の事件は元代表の事件ということで忘れ去られてしまったら、民主党は誰が代表になろうと、自民党が勝とうと民主党が勝とうと、これから先は検察が「こいつはちょっと気に食わんな」と思ったら、政治資金規正法違反を立件すればいいわけですから。何でもできるんですよ。結局そこの問題だと思うんです。

 2010年1月16日 愛川欽也パックインジャーナル
 http://asahi-newstar.com/web/01_packin_journal/?cat=18
 検察対小沢 元地検郷原さんに聞く

 それはですね、まだ単なる疑惑なんです。犯罪事実でも何でもない。ただ、その疑惑には小沢さんは答えないといけない。それは非常に重要な点です。

 もし、この疑惑が、水谷建設から5000万円とか1億円入ったということが、本当に刑事事件として嫌疑があるとか、立件の可能性があるということであれば、闇献金があったのにそれを記載しなかったという事実で、捜査差押許可状とればいいし、逮捕状もそれでやればいいわけです。ところが、いまの段階ではそういった嫌疑は、まったく固まっていないという認識です。


 最終的に政治資金規正法違反という、石川さんの逮捕事実は、およそ現職の国会議員を逮捕するような事実ではないと思う。しかし、その一方でこの(借入先小沢一郎)小沢さんから現金が出ているということが、陸山会の説明では出ていなかったし、今回の捜査の課程で石川さんが話して初めてわかったことです。そういう意味で、この4億円というのは、どこから来たお金なのか、国民は疑問を持った。小沢さんに説明してもらいたいと思ったことは事実だ。小沢さんがそれに対してきちんと説明することが、こういったおかしな捜査が続くことを防止する。早く捜査に決着をつけるためには、ベストの手段だと思う。それが、行われなかったために、捜査や報道がどんどんエスカレートしていって、とうとうこんなところまで至ってしまった。

 もし、その点(資金がどこからきたか)の疑惑がなくなってしまうと、政治資金規正法違反の犯罪事実は吹き飛んでしまう。ほとんど実体がないもので、ほかに味付けがないと、犯罪事実としてとても世の中にアピールできるようなものではない。だから早く収束してもらうしかないと思う。しかし、それは、ある意味では、検察の歴史に残る大変な汚点ということになる。これだけ、世の中に影響を与え、その実体になっている原因となった犯罪事実がほとんど根拠のないものだったということになれば、これは検察の権限行使としては、絶対になってはいけないことをやったということになってしまうわけです。だから、今注目しなきゃいけないことは、小沢さんが4億円に対してどういう説明をするのか、それが納得できるものなのかどうか、まず小沢さんの打順だ。もし、これを小沢さんが説明したら、今度は検察の打順になる。

 私には思えませんね。私は、政治資金規正法違反、公共工事がらみの捜査を現場でしてきました。その経験からいいますと、水谷建設からの5000万円の裏金が、石川さんとか小沢さんに渡されて、それがこの4億円の原資だという話しは、ちょっと考えられない。

 その一部です。少なくとも4億円のうち5000万が、水谷建設から来た裏金だということが、問題にされていて、それ以外にもゼネコンからの闇献金がたくさん入っているんじゃないか、という想定のもとに、あえてこういった形式的な事実でやっているわけです。

 ただ、水谷建設側の供述なんですが、今服役中の社長が、刑務所の中で供述したことなんですよ。一般的にいって、そういう供述はあやしい。普通は刑務所の中で作業をやっていないといけない人なんだけど、検事さんが来て、一日取調室で話しを聞いてくれるというハッピーな時間ですからね。こういう時の供述は、大変気をつけないといけない。

 しかも、この水谷建設の社長というのは、例の福島県知事の佐藤栄佐久さんの供述者です。1年半も検察は水谷建設をとことん追いかけた。なんとか事件にしようと思ってもなかなかうまく行かなかった。それで、最後佐藤栄佐久さんの逮捕までいったんだけども、なかなか一筋縄ではいかない会社で、その社長の供述はなかなか信用できない、と一般的には言われている。

 愛川)あの本見せてよ。

 下村)「知事抹殺」私はなぜ殺されたのか、という本です。当時は新聞に大きく報道されましたが、本人が詳細にドキュメントとして昨年出した。「知事は日本にとってよろしくない、いずれ抹殺する。」東京地検特捜部検事が発言したと裏表紙に書いてある。作られた福島県汚職事件。

 この知事はなかなかの人で、原発の反対とか、道州制など、政権与党の方針と真っ向から対立し、戦う知事として名を成した、県民に圧倒的支持のあった人です。最高裁までいって、去年ほとんど無罪近い判決がでた。無罪というのは、土地の取引でもって賄賂をもらったが、市場価格より遙かに高い価格で買ってもらったのが賄賂だと言われていたのが、最終判決では、一切それがなかった、ゼロだった、ということになった。では、一体何が賄賂だったのかというと、その土地を買ってもらったのが賄賂だったという、わけのわからないことになって、とにかく有罪。

 山田)私は、経済記者としてかかわったけれども、電力会社が佐藤さんのこと本当に困ってたんですよ。廃棄物のこと全部反対するし、日本の国策が原発に振り変わったわけだけど、それを仁王立ちで止めてた人です。電力会社が佐藤さんをなんとかしてくれないと、原子力行政が進まない、といっていた人だ。そこを何とかするよ、と思っていたら、水谷建設でふっとんじゃったわけです。

 愛川)その社長が牢獄にはいっていて、その問題のある会社の社長がいったという、予備知識があって、この方が言ったんだという記事ならば、ちょっとこれはだめだぞ、というところからスタートすればいい。しかし、我々そういうこといちいち覚えていないし、読んでない。

 郷原)問題は、なぜ裏金が何の目的で収支報告書に出されずに献金されるのか、ということを考えてみなければいけない。去年、大久保事件の時に問題にされたのは、表のお金です。それが、ダミーの団体を使っておかしかった、と言われたけども、あえて裏にするとすれば、それは裏で使いたいからだ。それ以外には考えられない。派閥の領袖として、モチ代を配るとか、いろいろ表にだせない使い道があるのではないか。政治家というのは、そういうものが必要だとみな思ってますよね。そういうお金が必要だから、領収書のいらないお金としてもらうのはわかる。しかし、そうだとすると、なんで5000万を表に出して、土地代金に充てないといけないのか、私だったら、裏は裏としてプールしておく。土地代金については、銀行からの借入の話しができているわけですから。

 それは、一旦口座にはいるわけですから、裏金の使い方としては、考えられないですね。

 検察はそれを、西松建設事件の冒頭陳述で、天の声、天の声って、ものすごいそういう言葉を使って、いかにも天の声に関連して献金が行われたような、イメージを植え付けたけれども、結局裁判所の判決は、そういう献金が公共工事の受注と対価制を持ったものではない、と認定してしまった。

 選挙前に判決が出たんですけど、ほとんど報じられなかった。

 しかも、検察は裁判所に否定されたにも関わらず、その後、大久保さんの公判の冒頭陳述でまた同じようなストーリーを展開する。それがまた、メディアで報じられる。だから、そういうような印象だけを狙って捜査をしているとしか思えないところに、非常に危険さがある。今回も、水谷建設から来た金なんでは、という印象を植え付けるためだけに、ほとんど微罪にしかならないようなものでやってる。




(私論.私見)

検察審査会の2度の「起訴すべきだ」とする議決を受け、2011年1月、指定弁護士が小沢元代表を強制起訴した。[関連情報]

石川議員らに有罪=「裏献金」受領を認定―元秘書3人の共謀成立・陸山会事件判決 

・ [映像ニュース]陸山会事件で建設会社からの裏金授受認める - 日本テレビ系(NNN)(9月26日)
◇石川議員ら3人に有罪判決
陸山会事件、石川議員ら元秘書3人に有罪判決 - 読売新聞(9月26日)
全員有罪、その時3被告は…陸山会事件判決 - 読売新聞(9月26日)
◇小沢氏の政治的責任を問う声
陸山会判決、小沢氏の責任「免れ得ぬ」の声 - 読売新聞(9月26日)
自民が小沢氏の証人喚問要求 陸山会判決 - 産経新聞(9月26日)
「陸山会」の土地購入をめぐる事件の概要 - 関連情報エリア
◇裁判の争点は
・ [4億円記載]<陸山会>元秘書3人に26日判決 元代表の4億円記載焦点 - 毎日新聞(9月25日)
・ [大久保隆規被告との共謀]共謀、動機の判断焦点=石川議員ら26日に判決―陸山会事件・東京地裁 - 時事通信(9月24日)
・ [ダミー団体の認識]「陸山会」元3秘書公判 西松事件 ダミー団体、認識争点 - 産経新聞(9月24日)
◇石川被告は無罪を主張
石川被告、緊張からトイレ休憩たびたび 半年に及ぶ緊迫の審理 - 産経新聞(9月26日)
<陸山会事件>石川議員 有罪でも「政治活動続ける」 - 毎日新聞(9月25日)
石川 知裕 - Yahoo!みんなの政治
◇地裁は捜査段階の供述調書を却下
「調書」大量却下で小沢元秘書3人の量刑はどうなるのか - ゲンダイネット(7月12日)
起訴拠り所の調書否定で小沢氏の無罪確実 - 全文見るには手続きが必要。Astand(7月13日)
郷原信郎 (@nobuogohara) - TwitLonger
政治資金規正法について - 関連情報エリア

石川被告の主張

「陸山会」の土地購入をめぐる事件の概要

2004年10月、小沢一郎氏の資金管理団体「陸山会」は約3億4000万円で東京都世田谷区の土地を購入。購入直前、小沢氏の政治団体の口座からの移し替えなどにより、原資のわからない4億円以上の資金が入金されていた。資金の移動はその年の政治資金収支報告書に収入として記載されておらず、翌年に記載。
2010年1月15日、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(虚偽記入)容疑で、「陸山会」の会計事務担当だった元私設秘書の衆院議員石川容疑者36歳と、後任の会計事務担当だった元私設秘書池田容疑者32歳を逮捕。翌16日、元会計責任者で公設第1秘書大久保容疑者48歳を逮捕。同年2月4日、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(虚偽記入)罪で3人を東京地裁に起訴した。

特集

土地購入をめぐる事件の経過

小沢氏元秘書起訴以降の経過

日 付 摘 要
2010年 2月4日 東京地検特捜部は、政治資金規正法違反(虚偽記入)罪で3人を東京地裁に起訴
政治資金規正法違反(虚偽記入)で告発されていた小沢氏を、嫌疑不十分で不起訴。
2月5日 東京地裁は、政治資金規正法違反罪で起訴された3被告について、保釈を認める決定。
保釈保証金は石川被告が1200万円、大久保被告が700万円、池田被告が300万円。
3被告は、保釈保証金を現金で即日納付。夕、拘置先の東京拘置所から保釈された
2月7日 地元の北海道第11区総支部から「離党や議員辞職の必要はない」との見解を伝えられ、
衆院議員石川被告が、応じる意向を示した
2月8日 小沢氏が説明責任について「これ以上の説明はないのではないかと思っている」
2月9日 LEFT「離党や議員辞職はせず、職責を果たしたい」
「水谷建設から現金を受領したことはなく、意図的に虚偽の収支報告をしたこともない」
2月10日 石川議員は「収支報告書に不適切な記載をしたことについては深く反省する」とのコメントを発表
2月11日 石川議員が離党届を提出。議員辞職は否定。石川議員が記者会見。会見詳報:(1)(2)
2月15日 民主党は常任幹事会で石川議員の離党を正式に承認。
同党は石川議員の会派離脱届を衆院事務局に提出。石川議員は無所属に。
2月21日 石川議員は進退に関して「司法の判断が出るまでは議員として職責を全うしたい」
2月23日 東京地検特捜部は、告発されていた2007年分の政治資金収支報告書の虚偽記入について、
「会計責任者らとの共謀の事実を認めるに足る証拠がない」として小沢氏を不起訴
4月2日 元会計責任者の大久保被告が、公設第1秘書を辞任
4月5日 小沢氏、勝どきの土地・ビル不記載 3年分の報告書訂正
4月14日
までに
「1億円以上提供」と水谷建設元最高幹部が資金提供を証言
石川被告は「もらった事実はない」、小沢事務所は「ご指摘のような事実はありません」と回答
6月2日 鳩山首相は臨時両院議員総会で退陣表明。小沢氏も党幹事長辞任
読売新聞|時事通信|産経新聞

小沢氏元秘書起訴までの経過

検察審査会で「起訴相当」と議決

2010年2月12日、市民団体(一般国民)は、検察が小沢氏を不起訴処分としたことを不服として検察審査会に審査を申し立てた。同年4月27日、不起訴処分となった小沢氏について、東京第5検察審査会は「起訴相当」と議決したが、5月21日、東京地検特捜部は、再度、嫌疑不十分で不起訴処分とした。再度検察審査会で審査され、東京第5検察審査会は、10月4日に2回目の「起訴議決」をしたと公表。よって、小沢氏は「強制起訴」されることに。
  • 東京第5検察審査会の議決要旨(上)(下) - 産経新聞(2010年10月4日)

検察審査会が指摘する犯罪事実

真実 陸山会において平成16年10月に代金合計3億4264万円を支払い、東京都世田谷区の土地2筆(以下「本件土地」という)を取得
犯罪事実 平成16年分の陸山会の収支報告書 本件土地代金の支払いを支出として、本件土地を資産としてそれぞれ記載しないまま、総務大臣に提出
平成17年分の陸山会の収支報告書 本件土地代金分過大の4億1525万4243円を事務所費として支出した旨、資産として本件土地を平成17年1月7日に取得した旨それぞれ虚偽の記入

時系列

日 付 摘 要
2010年 2月4日 東京地検特捜部は、小沢氏を嫌疑不十分で不起訴
2月12日 小沢氏を政治資金規正法違反(虚偽記入)罪で告発していた東京都内の市民団体が、
東京地検特捜部が不起訴処分としたのは不当として、東京第5検察審査会に申し立て
4月6日 捜査を担当した東京地検特捜部の検事が東京第5検察審査会に出向いて説明
4月27日 不起訴処分となった小沢氏について、東京第5検察審査会は、「起訴相当」と議決
「適切に対処したい」東京地検次席東京第5検察審査会の議決要旨小沢氏の発言要旨
5月12日 東京地検特捜部は、小沢氏と石川衆院議員ら元秘書3人に再聴取を要請
5月15日 東京地検特捜部は、東京都千代田区のホテルで、小沢氏の3回目の事情聴取(約4時間半)。
5月18日 東京地検特捜部は元公設第1秘書の大久保被告と元私設秘書の池田被告の事情聴取
池田被告が東京地検特捜部の再聴取に対し、「小沢氏に報告し、了承を得た」と改めて供述
5月21日 東京地検特捜部は、小沢氏を再度嫌疑不十分で不起訴。検察審査会で再審査へ
7月5日 小沢氏の代理人弁護士は、東京第5検察審査会に上申書を提出
7月15日 不起訴処分となった小沢氏の2007年分の政治資金規正法違反について、
東京第1検察審査会は、8日付で小沢氏への再捜査を求める「不起訴不当」を議決
9月18日 小沢氏の4回目の事情聴取
9月30日 2007年分の収支報告書への虚偽記入について、地検特捜部は、小沢氏を再び不起訴処分
10月4日 東京第5検察審査会は、小沢氏を起訴すべきだとする「起訴議決」をしたと公表
朝日新聞|産経新聞|読売新聞|時事通信

強制起訴について

起訴状況

罪 名 該当法 法定刑
政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪 政治資金規正法第25条 5年以下の禁錮、100万円以下の罰金

虚偽記入の罪について

公判関係

公判前整理手続き

日 付 摘 要
2010年 9月24日 公判前整理手続き 第1回協議
11月30日 公判前整理手続き 第8回協議

石川被告、池田被告の公判

「陸山会」の土地購入をめぐる事件での政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪について
第一審 東京地裁

大久保被告の公判

西松建設からの違法献金事件と「陸山会」の土地購入をめぐる事件での政治資金規正法違反(虚偽記入など)の罪について(※「陸山会」の土地購入をめぐる事件での罪については訴因変更が必要)
第一審 東京地裁(登石郁朗裁判長)
裁判での争点
(公判前整理手続き)
ダミー団体を介した寄付が西松建設から行われたか
被告はそれを認識していたか
他の議員分のほとんどが捜査対象から外れたのに被告を立件したのは公訴権の乱用か
日 付 摘 要
2009年 12月18日 初公判 (冒頭陳述)検察側:冒頭陳述要旨、弁護側:冒頭陳述要旨
公判詳報:(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)
2010年 1月13日 第2回公判 (証人尋問)寄付ルート「毎年、被告と打ち合わせた」 西松元総務部長が証言
公判詳報:(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)
産経新聞

土地購入をめぐる事件関係

解説等

政界での反応

指揮権発動に関して

西松建設からの違法献金事件関係

東京地検特捜部は2009年3月3日、小沢氏の政治資金管理団体「陸山会」が、西松建設OBが代表を務める政治団体「新政治問題研究会」「未来産業研究会」から受けた献金が「西松建設」からの企業献金だとして、小沢氏の公設秘書で「陸山会」の会計責任者ら3人を政治資金規正法違反の疑いで逮捕した。

事件の構図、経過

陸山会に関する動き

「もう一度間違っていなかったかどうか、単純ミスの話だから、精査するように事務方に言う」(陸山会の土地購入に関して)

iza(2009年10月19日)

コラム

関連トピックス