【パリ=山口昌子、カイロ=大内清】米英仏など5カ国からなる多国籍軍は19日午後(日本時間20日未明)、内戦状態が続くリビアへの軍事介入を容認した国連安全保障理事会決議に基づき、同国の最高指導者カダフィ大佐側の軍部隊や防空施設などに対する攻撃を開始した。中東・北アフリカで民衆による反政府行動が広がる中、国際社会が軍事介入によって反体制派を支援するのは初めて。カダフィ氏排除を視野に入れたものとみられ、リビア情勢は重大局面を迎えた。
関連記事
記事本文の続き 「オデッセイ(冒険)の夜明け」と名付けられた軍事作戦には米英仏のほか、カナダとイタリアが参加した。フランス軍機が反体制派の拠点であるリビア北東部ベンガジ上空に展開し、カダフィ氏側の軍車両数台を破壊したのに続き、米英両軍の艦艇などが、地中海からリビアの首都トリポリ周辺などの軍事施設に巡航ミサイル「トマホーク」112発を撃ち込んだ。
オバマ米大統領は訪問先のブラジルで19日、米軍の「限定的な軍事行動」を承認したと表明。米国防総省はカダフィ氏側による市民への攻撃を阻止しリビア上空に実効性のある飛行禁止区域を設定することが目的だと説明した。
これに対し、カダフィ氏側は国営テレビで19日、米欧の介入によって「地中海は戦場となった」などとして、地中海を航行・飛行する飛行機や船舶への攻撃を警告。20日には、同テレビを通じ、米欧の攻撃でトリポリやベンガジなどの住宅地で民間人ら計48人が死亡したなどと主張、軍事介入を強く非難している。空爆を防ぐため軍事施設周辺に市民を動員、「人間の盾」を築いているとの報道もある。
今回の軍事作戦には、中東のカタールのほか、ベルギーやオランダなど欧州各国も参加を表明している。