北朝鮮の延坪島攻撃事件考

 (最新見直し2010.11.24日)

 (れんだいこのショートメッセージ)

 ここで、北朝鮮の延坪島攻撃事件を確認しておくことにする。

 2010.11.24日 れんだいこ拝



【北朝鮮軍による黄海上の延坪(ヨンピョン)島攻撃事件その1、勃発経緯】
 2010.11.23日、北朝鮮軍による黄海上の延坪(ヨンピョン)島攻撃事件が発生した。延坪島(ヨンピョンド)は、南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)の南側に位置している。北朝鮮軍は、延坪島から北におよそ10キロ離れた北朝鮮のム島と内陸部のケモ里にある海岸砲陣地などから延坪島に数十発砲撃した。1回目の砲撃は午後2時34分から55分まで21分間続いた。韓国軍は北朝鮮の砲撃を受けてF16戦闘機をスクランブル発進させ「平時では最高レベルの警戒態勢」(韓国軍)を敷いた。北朝鮮軍の攻撃が始まってから13分後の午後2時47分、韓国軍は応戦し、延坪部隊砲兵の反撃が始まった。北朝鮮軍は、午後3時10分に再び一斉攻撃を加え攻撃は3時41分まで31分間続いた。これに対し、韓国軍は延坪部隊のK9自走砲で反撃した。韓国軍砲兵は、ム島とケモ里の陣地に交互に砲撃を加えた。午後3時50分頃、韓国軍当局は、南北将官級軍事会談の北朝鮮側代表にあてて、砲撃中止を求める通知文を送った。韓国軍の関係者は、「きょう北朝鮮軍が何発撃ったのか、正確な状況は分析中だが、少なくとも数十発多ければ数百発に達するとみられる」と語った。

 北朝鮮側の被害は不明。韓国側の被害は、軍に死者2名、重傷者6名、軽傷者10名、民間人負傷3名、住宅20棟、倉庫2棟が破壊された。燃料タンクの爆発による山火事の一部が今も続いている。砲撃の後、島の全世帯820戸のうち420戸が停電となった。砲撃から一夜明けた24日、建設設作業員2人の遺体で見つかった。海洋警察によると、23日の砲撃後から24日までに島民の仁川避難が始まっている。

 この事件をどう評するべきだろうか。れんだいこが得心できる評論がないので、いつものようにれんだいこ私論を発表する。

 11.21日、北朝鮮軍による延坪島(ヨンピョンド)攻撃の2日前のこの日、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記・国防委員長が、後継者の三男・金正恩(キム・ジョンウン、労働党軍事委副委員長・大将)とともに、今回の砲撃を実施した西海(黄海)地域を担当する第4軍団管轄の黄海南道海岸地域の康リョン郡(ホァンヘナムド・カンリョングン)ケモリ海岸砲基地と茂島(ムド)基地の上級部隊である康リョン砲兵大隊を訪問し、金格植(キム・ギョクシク)第4軍団長と面会していた。今年3月の哨戒艦天安沈没事件の直前にも、金総書記が現地指導の過程で、韓国に対する軍事工作を主導してきた金英徹(キム・ヨンチョル)北朝鮮偵察総局長と会ったとの情報がある。金正日父子が黄海道訪問で金格植氏に会い、延坪島への砲撃計画を点検・推進した可能性も出ている。

 これによると、「北朝鮮軍による黄海上の延坪(ヨンピョン)島攻撃」が、北朝鮮政権の政権交代を祝賀する政治的デモであったことになる。こういう面もあるかもしれない。しかし、こういう見方だけで論評するのはいかがなものだろうか。

 まず、領土領海論から入る。1950-53年にかけて発生した朝鮮戦争の結末としての休戦協定では領土を38度線で分けたものの領海の仕切りを定めなかった。これは外交的手落ちであろう。それはともかく、これにより直後に国連軍が北方限界線(NLL)を設定した。これによると韓国領は北朝鮮領土沿岸にかなり深く入っている。海域200カイリ原則はどうなっているのだろう。北朝鮮に限り適用されないと云う根拠があるのだろうか。

 これに対し北朝鮮は、1999.9月、北方限界線よりはるか南方になる北朝鮮と韓国側の陸地境界である南北境界線の38°線を直線で南西に引いた海上軍事線を宣言している。この間、どういう主張をしていたのかは分からない。但し、一部の報道では、延坪島が北朝鮮も認める韓国領土とされている図面が流布されている。その根拠は分からない。それにしても、国際法的には、38度線で仕切る海上軍事線の方が理に叶っているように思われるがどうなっているのだろう。当然の如く韓国側は北方限界線を主張している為、同海域は火薬庫となり現在に至っている。韓国と北朝鮮は、朝鮮半島西側の黄海上に、それぞれ異なる境界線を設定しており、双方がともに「領海」と主張する海域が存在する。

 現在、韓国側が北方限界線区域を実効支配している。その後ろ立てとして米軍が韓国に駐留している。軍人約2万5千名、民間人5万人、大部分がソウルに居る。今回事件地となった延坪島も韓国領とされている。そういう意味では、日本側からする北方領土問題と構図が似ている。眼の前の島がロシア領となっているが、延坪島でも同じ理屈だろう。同島には現在、民家600戸、住民1600人、韓国兵4000人が駐屯している。但し、北方領土問題と違って、延坪島海域では両国の紛争と戦闘が繰り返されている。これを確認しておく。

 1999.6月、黄海上で南北艦艇が銃撃戦。2002.6月、黄海上で南北艦艇が銃撃戦。2007.10月、太陽政策で対北朝鮮融和政策を押し進めた韓国のノムヒョン政権は南北首脳会談を開催し、南北共同宣言を取りまとめた。ノムヒョン大統領は、北方限界線について「国連軍に一方的に引かれた線」との認識を示したうえで、同境界水域での緊張緩和に向けて共同漁業水域の設定をした。ところがイミョンバク政権の登場によって太陽政策は北風政策に転換される。イミョンバク政権は強硬な北朝鮮政策を掲げ、南北共同宣言を反故にし逆に米韓軍事演習を頻繁に繰り返すことになる。これが最新の政策である。2009.11月、黄海の北朝鮮側水域で、南北艦艇が銃撃戦。2010.1月、韓国側が、黄海の北朝鮮側水域で約350発の砲撃訓練。同3月、韓国海軍の哨戒艇「天安」が黄海で沈没し、韓国兵46名が死亡する。

 この事件との因果関係は定かではないが、11.12日、アメリカのロスアラモス原子力研究所のヘッカー元所長が、北朝鮮の寧辺(ニョンビョン)にある核施設を訪問している。完成したばかりだというウランの濃縮施設に案内され、2000基の遠心分離機が稼働していると説明されたと明らかにしている。11.21日、米科学国際安全保障研究所(ISIS)が北朝鮮の寧辺のウラン濃縮施設とみられる建物の衛星写真を公表する。11.23日、複数の北朝鮮高官が、訪朝した米国の安全保障問題の専門家、リオン・シーガル氏に対して、北朝鮮は単なる核爆発装置ではなく「核弾頭」を保有していると伝えている。

 11.22日、北朝鮮担当特別代表ボズワース氏は、ソウルで韓国の金星煥外交通商相らと会談した後、日本に入った。前原誠司外相は、米国のボズワース北朝鮮担当特別代表と外務省で会談し、北朝鮮が2千基の遠心分離機を設置、低濃縮ウランを製造するため稼働させていると米専門家らに明らかにした問題について説明を受けた。両氏は低濃縮ウラン製造の動きは容認できないとの認識の下、日米韓の3カ国で連携して対応することで一致した。前原氏は会談の冒頭、「北朝鮮の(米専門家らに対する)説明が事実ならば、極めて由々しき事態だ。累次の国連決議の中身、精神に抵触する恐れがある」と指摘。その上で「冷静に対応し、日米韓の3カ国の連携を強化し、情報交換を密にすることが大事だ」と述べた。会談では北朝鮮が実験用軽水炉建設に着手したとされる問題や、3回目の核実験準備に向けた動きについても情報交換した。

 11.23日、ボズワース氏は北京を訪問し、北朝鮮の核開発問題をめぐる6カ国協議の議長国・中国とも意見交換する。ただ、6カ国協議の早期再開に積極的な中国に対し、非核化に向けた北朝鮮の具体的な行動を再開条件とする日韓とは温度差があり、日本政府は米側の調整の行方を注視する構えだ。これに関し菅直人首相は22日夜、首相官邸で記者団に対し「北朝鮮の核兵器開発は絶対に認められない。米国などと連携して対応したい」と強調した。

 この動きと因果関係は定かではないが、11.22日、こたび事件となった延坪島海域で韓国軍が軍事演習を開始した。北朝鮮沿岸で軍事演習を続け、北朝鮮によれば「北朝鮮沿岸の領海内に実弾を撃ち込む演習をやめようとしなかった」という。北朝鮮軍が、「訓練は北朝鮮への威嚇攻撃であり、南側が領海に射撃すれば座視しない」と通告していた。これに対して、韓国軍は、北朝鮮からの砲撃が始まる前に、定例の軍事訓練を実施し、訓練の一環で砲弾の発射もしたが、北朝鮮を狙ったものではない、と説明した。韓国軍幹部は「われわれは、通常の訓練をしていた。訓練上の砲弾は西に向けて発射しており、北には向けていない」と述べている。

 11.23日、北朝鮮軍が砲撃した。これについては冒頭で確認した。北朝鮮政府は次のように声明している。「(今回の交戦について)我々が繰り返し警告したにもかかわらず、韓国が午後1時から数十発の砲弾を発射した。我々は直ちに強力な反撃を行った」、「我が国の領海を0.001ミリでも侵犯するなら、躊躇なく無慈悲な軍事的な打撃を加える」、「挑発者の火遊びを無慈悲な稲妻で制圧するのが我々の対応方式である」、「南朝鮮傀儡政権は、我々の度重なる警告にも拘わらず延坪島一帯の我が領海に砲射撃を加える無謀な軍事的挑発を敢行した。我々は断固たる措置をとった」。北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)は、韓国軍との交戦について、韓国側が最初に砲撃したたため、応戦したと表明している。

【北朝鮮軍による黄海上の延坪(ヨンピョン)島攻撃事件その2、事後対応】

 韓国の李明博(イミョンバク)大統領は、大統領府(青瓦台)の地下バンカーにある国家危機管理センターに首席秘書官らを緊急召集し、韓民求(ハン・ミング)合同参謀本部議長とのテレビ会議を通じ、状況の指揮に当たった。午後3時50分頃、大統領府関係者から李大統領による最初の指示が記者団に伝えられた。危機管理センターは関係者以外立ち入り禁止となっているため、報道官や実務担当者を通じ、「戦闘が拡大しないようしっかり管理せよ」という内容が間接的に伝えられた。しかし、大統領府の関係者はしばらくして、「戦闘が拡大しないよう万全を期せ」という文言に訂正した。大統領府はその30分後、再び「断固とした対応を取れ。状況が悪化しないよう万全を期せ」と再訂正した。限られた高官だけが出席した緊急会議の内容を高官が報道官室に伝達し、それを記者団に伝える過程で誤りが生じたという説明だった。

 その頃、およそ1時間にわたり緊急の首席秘書官会議が開かれたのに続き、李大統領は外交・安全保障閣僚会議を招集した。午後4時35分に金星煥(キム・ソンファン)外交通商部長官、玄仁沢(ヒョン・インテク)統一部長官、金泰栄(キム・テヨン)国防部長官、孟亨奎(モン・ヒョンギュ)行政安全部長官、元世勲(ウォン・セフン)国家情報院長らが地下バンカーに集まり、午後9時半まで状況報告を受けながら対策を協議した。

 交戦状況が落ち着いた午後6時に大統領府は外交・安全保障閣僚会議の途中、洪相杓(ホン・サンピョ)大統領室広報首席秘書官が公式会見を行い、数時間にわたる状況を整理して明らかにした。洪秘書官は、「戦闘拡大の自制といった指示は最初からなかった。実務担当者が誤って伝えたものだ。むしろ李大統領は、『状況によっては北朝鮮のミサイル基地を攻撃せよ』との指示も下した。北朝鮮が撃った砲弾の数について報告を受けると、『数倍の制裁を加えよ』とも指示した」と説明した。

 8時37分、李大統領は合同参謀本部を急きょ訪れ次のように述べた。「北朝鮮が再び挑発に及ぶことができないほどの大きな制裁を加えるべきだ。まだ北朝鮮が攻撃態勢を取っていることから、追加的な挑発が予想されるため、数倍の火力で制裁を加えるという認識を持たなければならない」、「軍は別のことを考える必要はない。行動で示さなければならない。100回の言葉よりも行動で対応するのが軍の義務だ」。

 李大統領は合同参謀本部でシャープ在韓米軍司令官の報告を受け、「北朝鮮の挑発に制裁を加えたが、再び挑発があれば韓米が力を合わせて制裁すべきだ。われわれの行動には平和を守り、民間(人)の声明を守る正当性がある。韓米がしっかり協力することを望む」と述べた。

 李大統領が合同参謀本部を訪れている間、金外交通商部長官は、周辺国と電話で協調体制について協議した。外交通商部は外交ルートを通じ、米国、日本、英国などの友好国に対し、「今回の事態は北朝鮮の韓国に対する明確な武力挑発で、民間人に対する無差別砲撃を加えたことは容認できない」と説明した。特に中国とロシアには、「責任ある役割を果たしてほしい」と要請した。金長官は同日夜、日本、中国、ロシアの大使を順に外交通商部に呼び、協力を要請した。

 統一部は25日に予定されていた南北赤十字会談を無期限延期することを発表した。また、24日には韓国企業関係者による開城工業団地への訪問を終日禁止するとした。このため、24日に開城工業団地を訪れる予定だった495人の北朝鮮訪問は中止となった。金滉植(キム・ファンシク)首相は同日、砲撃直後にすべての公務員に対しても非常勤務令を発令した。

 11.24日、李明博(イミョンバク)大統領は、首席秘書官会議の席上、「(北朝鮮の)局地的な挑発が広がった場合、積極的な対応を可能にするよう交戦規定を修正する必要がある」と述べた。延坪島を含む黄海の5島の兵力を増強し、北朝鮮の再攻撃に備えた措置を早急に取るよう関係部署に指示した。大統領府は「韓国に対する明白な武力挑発であり、決して容認できない。新たな挑発があれば、断固対応する」、「挑発行為を即時停止するよう北側に要求」との声明を発表した。韓国国防省は、北朝鮮による延坪島砲撃は明らかに休戦協定違反であり、意図的に計画された攻撃との見解を示した。金泰栄国防相は、緊急招集された国会の国防委員会で、自走砲などを延坪島に追加配備する考えを表明。韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮の砲撃は約170発で、うち約90発が海上に落ち、約80発が延坪島に着弾したと発表した。

 李大統領とオバマ米大統領は24日午前、電話で対応を協議し、オバマ大統領は「北朝鮮は孤立化するだけの挑発的な行動をやめ、朝鮮半島休戦協定を順守すべきだ。米国は言語道断の北朝鮮の行動を強く非難する」とし、韓国を防衛するとの決意を伝えた。両大統領は、安全保障上の緊密な協力を継続するため軍事同盟を強化し地域の平和と安定を図ることを確認し、今後も米韓両軍の軍事演習を実施するとした。北朝鮮の挑発行為に、軍事的圧力で対抗する姿勢を鮮明にした。これに先立つゲーツ米国防長官と韓国の金泰栄国防相との電話会談でも、緊密に連携していくことを確認した。

  ホワイトハウスの発表によると、オバマ大統領は北朝鮮について、更なる孤立化につながる挑発行為をやめ、南北の休戦協定や国際法に基づく義務を順守する必要があることを主張した。また「米国は言語道断の行為を強く非難するために国際社会と協力する」と述べた。北朝鮮に対する新たな国連安保理制裁決議を念頭に置いている可能性がある。バートン大統領副報道官によると、大統領は23日午前3時55分、ドニロン大統領補佐官(国家安全保障担当)から砲撃事件の報告を受けた。副報道官は、大統領が砲撃について「激怒している」と語った。またオバマ大統領は同日、米ABCテレビのインタビューで、北朝鮮の攻撃は「新たな挑発行為」であると強く非難する一方、事件を受けた米軍の軍事的行動については「推測はしない」と言うにとどめた。北朝鮮に毅然(きぜん)とした態度を示しつつも、過度に刺激することを避けたいとの判断があるとみられる。

 李大統領はまた、国連安全保障理事会の議長国であるキャメロン英首相とも電話で協議した。

 米国務省のクローリー次官補は24日、「数日中に中国政府高官と協議する。中国がその影響力を行使することを期待する」と表明。中国外務省報道官は、北朝鮮、韓国双方に冷静な対応と早期の対話、再発防止を呼びかけた。また、バートン米大統領副報道官は23日、「オバマ大統領は激怒している」と語った。

 アメリカは、北朝鮮の砲撃を「強く非難する」との声明を発表。北朝鮮に攻撃行動の停止を求めると共に 同盟国である韓国の防衛と地域の平和・安定の維持に強くコミットしている云々と表明した。ロシアのラブロフ外相は、朝鮮半島の緊張の高まりは「甚大な危険」だとの認識を示して、すべての攻撃を即時停止する必要があると述べている。中国は、南北双方が「平和に貢献するためにさらに行動すべきだ」として、中立的な声明。そして6カ国協議の再開が不可欠との認識を示した。

 11.24日、北朝鮮の外務省報道官は、韓国・延坪島(ヨンピョンド)への砲撃事件について「我々の領海に無謀な砲撃を加えた敵の挑発に対応するため自衛措置を取った」との談話を発表した。朝鮮中央通信が報じた。北朝鮮は談話で、事件発生前の23日午前8時に韓国側に対し、「敏感な場所である延坪島一帯での砲撃訓練計画を中止するよう」促す通知文を送ったと強調した上で「にもかかわらず訓練を強行した」と韓国側を非難。また、韓国側の狙いは、北朝鮮が物理的対応措置をしない場合、島の周辺水域を(韓国側の)「領海」と認めたとミスリードすることにあったと主張した。さらに「正義の守護者であるわが軍隊の砲門はまだ開いている状態だ」と、さらなる攻撃の可能性を示唆した。

 11.25日、北朝鮮国営ラジオの平壌放送は、朝鮮人民軍板門店代表部が同日、韓国・延坪島(ヨンピョンド)への砲撃に関連し、「南朝鮮(韓国)が無分別な軍事的挑発を行えば、我が軍隊は2次、3次の強力な物理的報復打撃を加える」と警告する通知文を米軍側に送ったと報じた。朝鮮通信(東京)が伝えた。「今回の事件発生には米軍にも責任がある」としている。再度の武力挑発を示唆し、28日から始まる米韓合同軍事演習をけん制する狙いがあるとみられる。韓国の聯合ニュースによると、北朝鮮は、延坪島への砲撃を受けて在韓国連軍司令部が24日提案した将官級会談に応じない考えを明らかにした。同司令部は砲撃が朝鮮戦争の休戦協定に違反しているかどうかの調査を実施する方針で、北朝鮮はこれに強く反発している。

 11.25日、韓国の金泰栄国防相は、李明博大統領に辞意を表明し、大統領はこれを受け入れた。北朝鮮軍による韓国・延坪島への砲撃事件で、責任を取ったものとみられる。韓国大統領府が同日発表した。「軍の雰囲気を刷新する」などとしている。韓国内に砲撃戦への対応をめぐる批判があることや、南北関係の緊張が更に高まる可能性を考えての措置で、李大統領は軍予備役のなかから後任を任命し、26日中に発表する。金国防相は軍合同参謀本部議長を務めた後、昨年9月から現職。3月に起きた韓国哨戒艦沈没事件で韓国軍兵士46人が死亡した責任などをとって、5月に李大統領に辞表を提出したが、保留状態が続いていた。だが、23日に起きた北朝鮮軍の砲撃をめぐり、韓国軍の兵器の一部が故障して使えなかった事実などがわかり、国会議員や市民団体の一部から、金国防相の責任を問う声が改めて噴出。大統領府高官によれば、金国防相も、韓国軍の雰囲気を安定させるために、改めて李大統領に辞意を伝えたという。


 11.25日、北朝鮮は、23日に韓国の延坪島に向け行った砲撃を、金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継者、三男の金正恩(キム・ジョンウン)氏(朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長)の「領導」だと宣伝しているという。北朝鮮専門インターネット媒体のデイリーNKが内部情報筋の話として報じた。それによると、工場の初級党秘書が24日夕、「南朝鮮(韓国)がわが共和国(北朝鮮)を狙い挑発を行ったが、将軍様(金総書記)の軍隊はこれを許さず、数倍にして報復した」と話した。「敵の対決策動にも青年大将(金正恩氏)が領導する革命的武装力で対抗するわれわれにあるのは勝利だけだ」と述べ、「情勢が複雑になるほど金総書記と正恩氏に仕えてこそ、勝利が保障される」と、宣伝に熱を入れていたという。こうした指導のほかにも、23日午前に民間の防衛組織の労農赤衛隊と教導隊に非常招集がかけられ、各基地に投入されたと伝えた。
 11.25日、北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件について、オバマ米大統領が胡錦濤・中国国家主席と電話協議するため準備に入ったと伝えた。実施時期は不明。オバマ大統領は中国に対し、北朝鮮に圧力をかけるよう説得するとみられる。一方、中国外務省の洪磊(こう・らい)副報道局長は定例会見で、28日から黄海で行われる米韓合同軍事演習に米原子力空母ジョージ・ワシントンが派遣されることについて「関連の報道を注視しており、関心を表明する」と述べた。中国はこれまで米空母の黄海派遣の動きに強く反発してきたが、今回は反対を明言せず、砲撃事件を巡って北朝鮮への非難を強める国際世論を意識しているものとみられる。演習について「関係各国は地域の平和と安定に資する行動を取るように希望する」とけん制したものの、直接的批判は避けた。

 11.25日、北朝鮮軍板門店代表部は、在韓米軍に通知文を送り、「今回の事件発生には米軍にも責任がある」と強調した。通知文で北朝鮮側は「(韓国が)北方限界線固守のために、海上侵犯と砲撃のような軍事的挑発行為にこれ以上頼らないよう、(米国は)徹底した統制をすべきだ」と要求。さらに、韓国が軍事演習を継続するなら「わが軍隊はちゅうちょなく2次、3次の強力な物理的報復打撃を加えるだろう」と警告した。28日から予定される米韓合同軍事演習に対する警告とみられる。また、ロイター通信によると、在韓国連軍司令部が砲撃事件について協議するために北朝鮮軍に呼び掛けていた将官級会談について、北朝鮮側は拒否する考えを伝えてきた。

 11.25日、韓国の金星煥(キムソンファン)外交通商相は25日、クリントン米国務長官と電話会談し、北朝鮮の延坪島砲撃について砲撃は計画的に行われた「明白な武力挑発」であり、断固として対応する立場を強調。クリントン氏は、米韓の緊密な協調と共同対応を約束した。両氏は、北朝鮮のウラン濃縮による核開発への対応でも協力を確認した。


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【日本政府&菅政権の対応】
 日本政府の動きは次の通りである。午後3時20分、官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置して、現地の情報収集と分析に着手する。官邸は「不測の事態」に備えて政府全体として準備するよう指示を出した。菅首相は次のように述べている。「報道で、北朝鮮が韓国の島に砲撃を加え、それに対して、韓国軍も応戦したという報道があり、えー、私にも、(午後)3時半ごろに秘書官を通して連絡があ­りました。公邸におりましたので公邸でいろいろ情報を聞いておりましたが、さきほど官邸に移って、関係者を集めて、官房長官とも連絡を取り、官房長官にも来てもらいました」、「で、私の方から2点、官房長官、電話では防衛相にも、あわせて2点の指示をいたしました」、「まずは、情報収集、収集に全力をあげてほしいと。第2点は、不測の事態に備えて、え­ー、しっかり対応ができるように、えー、準備をしてほしい。この2点を指示をいたしま­した。まあ、多少このあと、宮廷の行事がありますが、それが終わればまた戻って、しっ­かりと事態を把握したいと。もちろん、途中でも連絡が取れるようにしたいと思ってます­」、「そういうことで、事態の推移をしっかりと情報把握をして、どういうことが起きても対­応できるような態勢をしっかり、それに備えると。それによって、国民の皆さんに対して、そうした備えは万全だということを言える体制を作りたいと思っております。また、あ­の、情報については順次、入ってくると思いますが、官房長官を中心にして、さらに関係­したところの情報は収集すると。そういうことで、指示をいたしたところです」。仙石官房長官は次のようにコメントした。「許し難いものであり、北朝鮮を強く非難する。韓国政府を支援する。対北朝鮮制裁措置を強化する」。

 11.24日、菅首相は、「これは許し難い蛮行だと言わざるを得ません」と述べた。「韓国政府の立場を強く支持してまいります」との思いを李明博(イ・­ミョンバク)大統領に電話で伝えた。仙谷官房長官は、検討が進んでいた朝鮮学校の高校授業料無償化についても、見直­しの可能性に言及した。11.25日、前原外相は25日、韓国・延坪(Yeonpyeong)島を北朝鮮が砲撃したことについて、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官と電話で協議し、日米韓3か国の連携強化を確認した。会談では、事件をきっかけに急速に高まった朝鮮半島周辺の緊張を緩和するためには、北朝鮮に影響力をもつ中国が重要な役割を担っているという認識で一致した。外務省によると会談は、約15分間にわたって行われた。前原外相とクリントン国務長官は、来月米ワシントンD.C.(Washington D.C.)で日米韓3か国の外相会談を行う方向で調整することも確認した。(c)AFPFPBB News トップへ

Re::れんだいこのカンテラ時評859 れんだいこ 2010/11/25
 【日共の延坪島事件論は腐りきっている】 

 北朝鮮軍による黄海上の延坪(ヨンピョン)島攻撃事件に対して、案の定、日共が噴飯ものの声明を発表している。これを論評する。

 11.24日付け赤旗は、「北朝鮮が韓国の島砲撃 兵士2人死亡、民間人負傷 一時交戦状態」の見出しで事件報道している。その際妙な地図が添付されている。それによると、北朝鮮が主張する軍事境界線の一部がえぐれ、延坪島が韓国領であるとする形に図示されている。日共は「延坪島韓国領」を説明する義務がある。北朝鮮が、「延坪島=韓国領」を認めている形跡、経緯を示さぬまま「延坪島=韓国領」を図示するのは公正さに欠けよう。理解できぬのはれんだいこだけだろうか。

 志位委員長は同日の記者会見で、韓国・延坪島を砲撃した北朝鮮を非難する声明を発表した。声明は砲撃について「朝鮮戦争の休戦協定はもとより、国連憲章にも反する無法な行為だ」と指摘。領海について南北双方の主張が異なることを指摘した上で「それを武力攻撃の理由にすることは、断じて許されることではない」と主張。「砲撃を受けた延坪島は、北朝鮮が主張する領海に囲まれた位置にあるが、『同島と同島への航路が韓国側に属することは、北朝鮮自身も認めており、北朝鮮の言い分はまったく成り立たない』」と非難している。

 この論法のキモは、「同島と同島への航路が韓国側に属することは、北朝鮮自身も認めている」である。その根拠はどこにあるのだろうか。どういう経緯で「北朝鮮自身も認めている」のだろうか釈然としない。北朝鮮側は同島の北朝鮮領土論を主張しているように思われるので、日共は説明せねばならない。

 次に、「北朝鮮の軍事挑発行為を厳しく非難」し、北朝鮮に対して「攻撃とそれによる被害の責任をとり、挑発的な行動を繰り返さないことを厳重に求める」とした。付け足しで、韓国をはじめとする関係各国に対しては、軍事的緊張や軍事紛争につなげることなく、外交的・政治的な努力により解決することを要請した。しかしながら、日共の論調が北朝鮮批判に偏していることは明らかであろう。こんな共産党がいつからできたのだろうか。れんだいこの知る共産党では断じてない。

 想起すべきは、共産党の朝鮮動乱の時の対応ではなかろうか。かの時は、北朝鮮側が先行して侵攻したにも拘わらず韓国側の侵攻が先と主張して、「歴史の真実」に堪えない対応を見せ顰蹙を買っている。既に多くの識者が指摘しているところである。当時の対応が左派的な偏向論調であったとすれば、こたびのそれは極めつけの右派的な偏向論調であり、又もや「歴史の真実」に堪えない対応をしているのではなかろうか。そのうち失笑を買うことになるだろう。

 れんだいこには、どちらも間違いと云うより、こたびの右派的な偏向論調の方が重度過失性が高いとみる。なんとならば、朝鮮動乱当時の左派的な偏向には「朝鮮民族の南北分断固定化反対、祖国統一支援」の意図があり是認できる面があったからである。それに比して、こたびの右派的な偏向論調には求めるべき何があるのだろうか。米韓日の策動を裏から支援する腹黒い魂胆しか見えてこない。正確には、骨の髄まで国際金融資本帝国主義のシナリオに乗っており、それをプロパガンダしているに過ぎない。共産党的対応は微塵もない。一体、我々は、こういう共産党をいつまで許すべきだろうか。日共党員よ怒れ。怒らないとすれば共同正犯である。この党は腐ってしまっている。

 こたびの事件は一見、北朝鮮側の蛮行が際立つように思われる。だがしかし、れんだいこはそうは思わない。韓国にも北朝鮮にも怨みもツラミない。東亜の平和と安定、協調を求めるばかりである。そういう観点から疑問と見解を述べて見たい。それには延坪島問題を日本の北方領土問題に引き据えて考えてみれば良い。日本の置かれている立場がオカシな二枚舌マルチ舌に陥っていることに気づかされよう。

 北方領土問題では、日本領土の目と鼻の先の歯舞、色丹島がロシアが実効支配されている。その不自然さにより、幾ら戦争に負けたにせよ不当として北方領土返還運動が始まっているのではなかろうか。或る時、ロシアが日本領土目前の歯舞、色丹島で軍事演習し、し続けたと仮定しよう。それに対して日本政府は拱手傍観すべきだろうか。挑発行為であるとして警告するのが正義であろう。然るに、ロシアの軍事演習が次第にエスカレートするばかりであったと仮定しよう。日本政府は当然、更に激しく抗議すべきではなかろうか。

 「北朝鮮軍による黄海上の延坪(ヨンピョン)島攻撃事件」は、この事態に遂に忍耐の緒が切れて日本の自衛隊が軍事演習するロシア軍に対して発砲したと云う構図ではなかろうか。それが許されるかどうかは別にして、この場合、日本ばかりが国際世論から轟々と批判されるべきだろうか。ロシア軍の挑発行為こそ元凶論で立ち向かう世論も生まれるべきではなかろうか。

 それを思えば、日本政治が本来為すべきは、我が北方領土問題に引き据えて、韓国の挑発行為に対しても非を咎める論調に立つべきではなかろうか。今、日本政界はこぞって激しく北朝鮮批判を奏でている。日共も然りである。せめて共産党ぐらいは、北朝鮮の非、韓国の非を同等に論うべきではないのか。こたびの志位委員長声明には、この複眼視点が一切ない。あからさまの一方的北朝鮮批判に加担している。その日共の北方領土問題は勇ましい。千島列島全域まで返せ論でラッパを吹き続けている。可能かどうかは別にして千島列島全域の返還を求める唯一の党として宣伝している。

 日共は、北朝鮮の眼前の延坪島問題と日本の眼前の北方領土問題とをどうロジック的に識別しようとしているのだろうか。日共は、態度の差を整合的に説明せねばならない義務がある。ロシアが歯舞、色丹島で執拗に軍事演習を策動する時、どう対応すべきなのか説明せねばならない。これは日本政府の対応も然りである。日本政府は、日本の北方領土問題と北朝鮮の延坪島問題をどう説明しようとしているのだろうか。れんだいこには理解できない。

 仮定の話ではあるが、「北朝鮮軍による黄海上の延坪島攻撃事件」に対する批判対応は、北方領土域に於けるロシア軍の度重なる挑発行為に対して日本の自衛隊が反撃したとして、日本政府自らが「許し難いものであり、日本を強く非難する。ロシア政府を支援する。対日本制裁措置を強化する」と云っている構図となるのではなかろうか。オカシな具合になる。

 これは何も北朝鮮側のこたびの発砲を正論化しようとしているのではない。日本の領土問題に引き据えて考えれば、こういうロジックになると云うことを確認しようとしているに過ぎない。北朝鮮側からすれば、韓国側に実効支配されているものの、領土の目前の延坪島で度々の軍事演習は挑発行為と受け取るのは自然ではなかろうか。そもそも沿岸200カイリ論からすれば、北朝鮮側の主張する海上軍事境界線の方が整合的なのではなかろうか。日本政府の北方領土論は北朝鮮側の主張に即しているのであって、ロジック的には仲間であろう。

 にも拘わらず、北朝鮮側の主張する海上軍事境界線を認めず、韓国側の主張する北方限界線を良しとするロジックが分からない。韓国側の主張する北方限界線良し論は、ロシア式領土論即ち先の大戦で勝利したことによる戦勝国側の実効支配であり何ら問題はない、敗戦国側の返せ論は虫の良い駄々っ子とする論の方が正当化されるのではなかろうか。今、日本政府は北方領土論で返還を求めている。ならば、こたびの事件に対する日本政府の北朝鮮側の主張する海上軍事境界線否定、一方的な北朝鮮軍批判は追って日本の北方領土論の首を絞めることになりはすまいか。かく外交は繋がっていると考えるべきではなかろうか。

 あれこれ考えると、日本政府の領土論、外交論は、米国の後ろ盾を頼みに米国の指針する領土論、外交論を主張しているだけに過ぎないと云うことになる。国際金融資本帝国主義のシナリオに添って走狗しているに過ぎないと云うことになる。これによれば、こういう有事緊張事態に即応して更なる軍備強化が求められることになる。核武装も云われ始めているが米軍傭兵論の促進でしかない。憲法改正は無論のことである。こうして平和国家から好戦国家への転換が策動され続けている。

 我々は、この傾向に悪乗りして正義ぶるべきだろうか。日本の外交は、こういう紛争に対して非軍事的、経済協調的、文化交流的促進を押し進める処方箋で処すべきではなかろうか。あるいは火中のクリを拾って平和を求めるべきではなかろうか。そういう外交こそが日本に望まれているのではなかろうか。我々が民主党政権に期待したのは、こういう外交ではなかろうか。今は全くダメで反対のことばかりしている。自公とまるで同じ対応している。何だったのだろう政権交代は。政治に芸がない能力がない。そろそろ菅―仙石の顔を見るのも嫌になって来た。

 2011.11.25日 れんだいこ拝

 2010年11月25日(木)「しんぶん赤旗」 北朝鮮の砲撃を厳しく非難 北朝鮮による韓国・延坪島への砲撃について 志位委員長が談話

 日本共産党の志位和夫委員長は24日、国会内で会見し、「北朝鮮による韓国・延坪(ヨンピョン)島への砲撃について」の談話を発表し、「断じて許されるものではない無法な行為であり、北朝鮮の軍事挑発行動を厳しく非難する」と抗議しました。また、北朝鮮が主張する軍事境界線を示す地図を示し、北朝鮮側の主張が成り立たないことを詳しく説明しました。談話は次の通り。

 一、北朝鮮は23日、韓国の延坪島に対して砲撃をおこない、韓国軍との間で交戦状態となった。これにより、韓国軍兵士だけでなく、同島の民間人にまで死傷者が出て、住民1600人が緊急避難する事態となった。

 民間人が居住する島への無差別の砲撃は、朝鮮戦争の休戦協定はもとより、国連憲章にも、北朝鮮自身が当事者である南北間の諸合意にも反する、無法な行為である。日本共産党は、北朝鮮の軍事挑発行動を厳しく非難する。

 一、北朝鮮は今回の行為を、韓国軍が「北朝鮮の領海」で軍事演習をおこない砲撃したことへの反撃だとしている。この海域における境界線については、韓国と北朝鮮の主張が異なっているが、それを武力攻撃の理由にすることは、断じて許されるものではない。しかも、砲撃を受けた延坪島と同島への航路が韓国側に属することは、北朝鮮自身も認めていることであり、北朝鮮の言い分はまったく成り立つものではない。

 一、日本共産党は、北朝鮮が、攻撃とそれによる被害の責任をとり、挑発的な行動を繰り返さないことを厳重に求める。

 韓国をはじめ関係各国が、事件をさらなる軍事的緊張や軍事紛争につなげることなく、外交的・政治的な努力によって解決することを要請するものである。

図

 「毎日新聞 2010年11月26日 東京朝刊 質問なるほドリ:黄海の「NLL」って何?=回答・工藤哲

 ◇国連軍が主張する境界線 北朝鮮は反発、独自に設定

 なるほドリ 北朝鮮砲撃事件が起きた周辺海域について「NLL」っていう言葉を耳にするけど、どういう意味?

 記者 英語の「北方限界線」(ノーザン・リミット・ライン Northern Limit Line)の頭文字で、米国や韓国側が根拠とする、黄海上に引かれた北朝鮮との事実上の境界線と言っていいでしょう。

 Q 何かややこしそうな感じだね。

 A NLLをより正確に言うと、朝鮮戦争(1950~53年)の休戦に伴い、韓国に駐留する国連軍が「見張りのため自由に航行できる北限の線」として、独自に設定したものです。

 Q 北朝鮮はそれを認めているの?

 A 「一方的なもので無効だ」と主張し、NLLの南方に、北朝鮮独自に別の境界線を設定(99年9月)しました。この海域は二つの境界線が存在する不安定な状態に置かれているのです。

 Q 二つの境界線を挟んだ海域では、何度も軍事衝突が繰り返されてきたようだね。

 A 韓国と北朝鮮は99年6月、02年6月、09年11月に二つの境界線の内側で交戦しました。今年3月にも韓国の哨戒艦が北朝鮮によるとみられる攻撃で沈没し、兵士46人が犠牲になりました。今回北朝鮮から砲撃された延坪島はNLLのすぐ南部にあります。北朝鮮が独自の境界線を主張するのは、その海域がワタリガニの豊かな漁場で、ワタリガニ漁が貴重な外貨収入源になっているためとの見方もあります。

 Q この海域で軍事的緊張が高まると、周辺国にも影響があるの?

 A 中国は黄海をいわば「庭」と位置付けています。今回の砲撃事件を受け、米国と韓国はこの海域で28日から米原子力空母ジョージ・ワシントンなどを参加させて軍事演習を実施します。そうなれば中国も無関心ではいられません。9月にも黄海で米国と韓国が軍事演習をしましたが、中国が反発したため、空母の参加は見送られました。つまり黄海を挟んで北朝鮮・中国、米国・韓国が兵器を向け合っている構図になっているのです。NLL周辺海域は「海の火薬庫」とも呼ばれています。(外信部)

 ロシア大統領の千島訪問について 志位委員長が談話(10.11.01)




(私論.私見)