岸ドクトリン考

 2004.8月号の月刊誌「現代」所収の歳川隆雄の「岸信介と小泉家」に次のような記述がある。元自民党総務会長(90年に政界引退)松野頼三氏の言として、概要「戦前の岸信介と戦後の岸信介はまったく違う。岸さんという人は、戦前と戦後とでガラッと変わったんだ。戦前は確かに官僚主義的政治の推進者。それが戦後は巣鴨で大いに反省して、自分が犯した罪をせめてささぎたいと。余生を新日本のために捧げたいと。これが戦後の岸さんの原点です」。

 「岸さんと同じように、戦前と戦後の断層・転換を体験し、同じように新たな決意をもって岸さんの歩みに同調してきた政治家、その一人が小泉総理の父親の小泉純也です。純也という人は、岸さんの日本再建連盟の推薦で初めて国会に出て、後には岸さんの盟友格の藤山派に入った。岸−藤山、そしてその後の流れの真ん中に小泉純也も私もいたんだ」。

 元朝日新聞政治部長・畠山武の言として、「岸というのは戦後政治家の中でも優れて広い人脈を持っていた人ですが、その人脈は大きく三つに分けられる。@・商工省人脈、A・満州人脈、B・長州人脈がそれです。その多くは、戦前・戦中から岸につながっていた人たちで、そういう意味では、戦後の岸政治には戦前が絡んでいなくはないでしょうね」。

 岸政治の政治思想と行動様式についての畠山氏の分析。概要「一言で言えば、ナショナリスト。日本国家に対する献身、ということを意識していた。天皇よりは国家。そこには国家社会主義者の北一輝や大川周明から影響を受けた面もあるわけですが。しかし、神がかり的なところはなくて、政治行動的にも非常にしたたかなリアリストですよ」。






(私論.私見)