昭和四十年八月九日(月曜日) 午前十時二十八分開会 ――――――――――――― 委員の異動 八月九日 辞任 補欠選任 浅井 亨君 原田 立君 ――――――――――――― 出席者は左のとおり。 委員長 平島 敏夫君 理 事 大谷藤之助君 二木 謙吾君 吉江 勝保君 米田 正文君 亀田 得治君 藤田 進君 鈴木 一弘君 委 員 青柳 秀夫君 赤間 文三君 井川 伊平君 植竹 春彦君 梶原 茂嘉君 草葉 隆圓君 小山邦太郎君 木暮武太夫君 古池 信三君 西郷吉之助君 笹森 順造君 白井 勇君 杉原 荒太君 林田 正治君 日高 広為君 増原 恵吉君 横山 フク君 吉武 恵市君 秋山 長造君 稲葉 誠一君 木村禧八郎君 小林 武君 佐多 忠隆君 田中 寿美君 羽生 三七君 林 虎雄君 藤田藤太郎君 村田 秀三君 小平 芳平君 原田 立君 向井 長年君 春日 正一君 市川 房枝君 国務大臣 内閣総理大臣 佐藤 榮作君 法 務 大 臣 石井光次郎君 外 務 大 臣 椎名悦三郎君 大 蔵 大 臣 福田 赳夫君 文 部 大 臣 中村 梅吉君 厚 生 大 臣 鈴木 善幸君 農 林 大 臣 坂田 英一君 通商産業大臣 三木 武夫君 運 輸 大 臣 中村 寅太君 郵 政 大 臣 郡 祐一君 労 働 大 臣 小平 久雄君 建 設 大 臣 瀬戸山三男君 自 治 大 臣 永山 忠則君 国 務 大 臣 上原 正吉君 国 務 大 臣 福田 篤泰君 国 務 大 臣 藤山愛一郎君 国 務 大 臣 松野 頼三君 国 務 大 臣 安井 謙君 政府委員 内閣官房長官 橋本登美三郎君 内閣官房副長官 竹下 登君 内閣法制局長官 高辻 正巳君 防衛庁長官官房 長 海原 治君 防衛庁防衛局長 島田 豊君 経済企画庁調整 局長 宮沢 鉄蔵君 経済企画庁国民 生活局長 中西 一郎君 経済企画庁総合 計画局長 向坂 正男君 外務省アジア局 長 後宮 虎郎君 外務省北米局長 安川 壯君 外務省経済協力 局長 西山 昭君 外務省条約局長 藤崎 萬里君 大蔵省主計局長 谷村 裕君 大蔵省主税局長 泉 美之松君 大蔵省理財局長 中尾 博之君 大蔵省銀行局長 佐竹 浩君 厚生省保険局長 熊崎 正夫君 社会保険庁医療 保険部長 加藤 威二君 農林大臣官房長 大口 駿一君 農林省園芸局長 林田悠紀夫君 通商産業省企業 局長 島田 喜仁君 通商産業省鉱山 保安局長 森 五郎君 中小企業庁長官 山本 重信君 運輸省航空局長 佐藤 光夫君 建設省計画局長 志村 清一君 建設省住宅局長 尚 明君 自治省財政局長 柴田 護君 事務局側 常任委員会専門 員 正木 千冬君 |
――――――――――――― 本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)(内 閣提出、衆議院送付) ―――――――――――――
○委員長(平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。 昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)を議題といたします。 先般来、委員長及び理事打合会におきまして、本補正予算の取り扱いについて協議を行なってまいりましたので、その要旨について御報告いたします。 審査日数は三日間とし、本日及び明日二日間は、総括質疑を行ない、明後十一日は、一般質疑を行なった後、討論採決を行なうこととなりました。 質疑時間の会派への割り当ては、総括質疑については、自由民主党及び社会党は、それぞれ百三十分、公明党四十分、民主社会党、共産党及び第二院クラブは、それぞれ十分とし、一般質疑については、自由民主党及び社会党は、それぞれ六十五分、公明党二十分、民主社会党、共産党及び第二院クラブは、それぞれ五分といたしました。 質疑順位は、総括質疑については、社会党、自由民主党、社会党、自由民主党、社会党、自由民主党、公明党、社会党、自由民主党、社会党、自由民主党、公明党、民主社会党、共産党、第二院クラブとし、一般質疑については、社会党、自由民主党、社会党、自由民主党、公明党、民主社会党、共産党、第二院クラブの順といたしました。 以上、御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(平島敏夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。 |
○委員長(平島敏夫君) それでは、これより総括質疑に入ります。羽生三七君。 |
○羽生三七君 今町町国会における補正予算審議に際して、特に重要と思われる外交、経済問題を中心に質疑をいたします。 最初に外交問題からやります。 佐藤総理は、今臨時国会における所信表明演説、これを通じて、平和については、過去における総理発言よりもかなり前進した姿勢を見せられたことは、これは事実であります。率直にこれは認めます。しかし、その意思表明がどれだけ現実の行動に生かされておるか、これについては、はなはだ疑問を感ぜざるを得ませんので、したがって、外交上のことでありますから、機微に関する点はとにかくとして、ある程度具体的な事実に触れて質問をすることをまず御了承をいただきたいと思います。 まず、ベトナム問題でありますが、これについては、本年の二月と三月に私、緊急質問で本会議でお尋ねいたしました。その際、ベトコンを交渉の対象に加えるかどうか、これを佐藤総理に要請した次第であります。その後、橋本官房長官は、当事者の中には共産側はもとよりベトコンも含まれると、こう語っておりますが、この官房長官の談話と総理との見解は同一であるかどうか、まず、この点から伺います。 |
○国務大臣(佐藤榮作君) まあとにかく、この問題は当事者が話し合うことが一番いいと、かように私は思いますが、その意味から申して、当事者とは一体何だと、これはただいま戦っておる連中だと、これにはもちろんベトコンも入っておる、かように私は考えております。 |
○羽生三七君 総理の見解はそれでわかりましたが、日本が今日世界平和に何らかの寄与をする、あるいは戦争阻止に貢献しようとするならば、その道はどういうものか。たとえば非同盟諸国あるいはソ連、フランス、イギリス等、それぞれの対策を持って外交活動を展開しておることは御承知のとおりであります。特にガーナの動きは意欲的であります。各国それぞれがその立場において、真剣にこのベトナム戦争終結のために、必要な国国との接触を保って、その実現の手段と方法をさがし求めて模索をしておる、これが今日の現状だろうと存じます。こういう情勢のもとにおいて、日本としては何をすることができるか、また何が可能であるか。政府の言をまつまでもなく、日本はアメリカとは特別の関係にあります。この立場にある日本が、ベトナム問題に対しては平和的な寄与を試みようとするならば、まず、米国に対して、ベトナム戦争終結に必要な発言をすることが、日本の平和への国際的寄与の最大の条件だろうと思う。その意味でベトコンも交渉の対象とすることについて、何らかの発育なり交渉をアメリカに試みたことがあるかどうか、これを伺います。 |
○国務大臣(佐藤榮作君) 外交でございますから、外交チャンネルを通すということ、これは当然のことであります。しかし、いわゆる表門ばかりでもいかない。こういう意味から、あらゆる機会をつかまえて、わがほうの主張を徹底さすという努力をいたしたいものだ、かように思っております。以前はともかくとして、私は一月に訪米をいたしました。ジョンソン大統領と話し合った。やはり、何としてもアジアの平和、このことがわが国の安全のために最も大事なことでありますから、そういう観点に立って、いわゆる自由を守り平和に徹するわが国の国是である国づくりの基本的な方針、その観点に立って話し合いをしておるわけであります。これはもちろん、日米間に特別な関係のありますことは、安保条約で御承知のとおりであります。それかと申しましても、私どもは従属的な関係のみで――従属的な関係にあるわけでもありません。これは対等な、あくまで十分にわがほうの考え方を率直に話し合っていくということが必要であります。また、そのことを国民も期待しておられる、かように思いますので、私はただいままで、そういう観点に立ちまして努力してまいりました。直接折衝いたしましたのは、私の一月の訪米であり、また、最近は経済閣僚の会合がアメリカでありまして、そういう際におきましても、十分意向を伝えておるわけであります。また、内閣の諸公が外地に参ります際、あるいはソビエト、あるいはフランスに、そういう機会をつかまえまして、十分当方の考え方を説明もし、また協力方も求める、また、相手の国は別でございますが、イギリスその他の国等から日本に来た場合等、そういう方々をつかまえても、また当方の率直な主張をいたしておる、かような状況であります。
○羽生三七君 佐藤総理がジョンソン大統領と会見した際、あるいは日米経済合同委員会、そういう席で、それぞれ平和に徹するとか、ベトナムは平和的解決を望むとか、そういう話し合いをされたことは事実だろうと思います。しかし、それを聞いているのじゃないのです。それについて、たとえば北爆停止というような問題について、あるいはベトコンを交渉の対象とするかどうか、こういう問題について具体的に話をされたかどうか。だから、先ほど私が申し上げたとおり、外交の機微でありますから、何月何日だれがどこへ行ってどういう所をしたか、そんなことまで聞いておりません。いま総理は表門だけではないと言われた。裏門だけでもけっこうです。裏門でやっておいでになるかどうか、そういうことを聞いているのです。 |
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまお答えいたしましたように、また、羽生さんも御理解いただいておるようでありますが、いわゆる外交の機微と、かように申しましても、今日は国民的支持なしにはわれわれの外交を伸ばしていくわけにまいりませんので、私どもは、政府のやっておることはいついつどういうことをしたということは別といたしましても、ただいまの両国間において、両国が現状についてどういう考え方を持っているか、それは詳細に意見の交換もするし、また、よきパートナーとしての忠告をする、こういうことで、あらゆる努力をしております。こういう点は国民から支持も受けたいし、また、国民の理解をまず第一に得たい、かように思いますので、私が話すことは、ただいまのようなことでいついつどうこうした、この問題を取り上げていく、かようには申しません。全般について、ただいま御指摘になりましたような点について、忌憚のない意見を述べて、あるいは交換もしておる、こういうことを御了承いただきたい。 |
○羽生三七君 国民の支持を得てと言われますが、これはライシャワー大使が先日アメリカで演説をして、日本の国民の支持がだんだんアメリカから失われて、ベトナム戦争反対の空気が非常に強くなったということを、これは率直に言っておられます。ですから、いまくどく申し上げることになりますが、ジョンソン大統領に会ったときに、どういう程度のことを言ったとか、あるいは日米経済合同委員会でどの閣僚が何を言ったとか、そんなことではないのです。たとえば外務省を通じて必要な接触をしておると、総理はこの前の本会議の私の緊急質問に答えられております。外務省を通じてそういう接触をされておるのかどうか。外務省の係官がただ電話で情勢はどうですかと、そんなことを私は言っているのじゃないのです。そんな問題じゃないのです。総理が、また内閣として、ベトナム問題の終結にどういう接触をしておるのか、これが明確にならないと、そんな日米経済合同委員会の席でちょっとだれかが言ったと、そんなことで了承できるものじゃないし、それから、佐藤総理の本会議における今度の施政演説で、もう非常に多くの部分をさいて、ベトナムの問題のためには全力を傾注して――私の全努力を集中する、そう答えられている。あるいは、秋山長造君の本会議における質問に対する答弁では、非常な時間を費やして、その熱意を傾けられている。それなら、具体的に一体何をするかということを、ただ漫然と言われておるだけでは私は絶対に了承できない。もっと具体的に、北爆停止、これを具体的にアメリカに要求したことがあるかどうか。あるいはベトコンを交渉の対象に加えることが――そういう問題も具体的に言ったかどうか。だれがどういうチャンネルを通じてやったか、そんなことを私は言っておるのじゃない。そういう問題でアメリカに要求したことがあるかどうか。 |
○国務大臣(佐藤榮作君) どうもちょっと話が、私聞きかねたというか、ただいま、だれがいつどうしたということを聞いているわけじゃない、しかし、ただいまのように、北爆についてどういう考え方をしておるかと、こういう話のお尋ねですが、私はちょっとお尋ねをあるいはつかみかねているのかしれませんけれども、私自身は、御承知のように、当事者が話し合うことがまず第一に大事なことだと、このことをいま提案しておるわけです。そこで、いやその北爆はこれはもう悪いとか、あるいはそれについて、非常な、国民が納得してないとか、あるいはそのためにアメリカを誤解しているとか、こういうことの説明が要るのか要らないのか、それはその前提問題でございますから、この点は十分に伝えてある。ライシャワー自身が申しておる、あるいはたいへん評判が悪いというようなこと、これは大使自身も感ずるでありましょうけれども、もちろん日本の状態については、われわれがいろいろな機会に申し出ている、そういうところからの結論じゃないかと、かように思いますが、ただいま言われますこと、あるいは北爆についての批判がましいことをしているかどうか、こういうことだと、そこまでは私どもしていない。しかし、この問題について、ただいまのような北爆自身が続いておる、こういうことはたいへん残念なことだ。ただ、戦火を拡大しないように、できるだけ早くやめるようにと、こういうことは申しておりますけれども、これは、一方的にアメリカだけがこの行為をやめればそれで済むのだと、こういうような批判はしていない、かように御了承いただきたいと思います。 |
○羽生三七君 そうすると、前段の、ベトコンを交渉の対象に加えるということは、交渉をしておるといま言われましたよ。これは速記録見てください。――いや、話し合いをしておる。それはやっておるのですか、それじゃ。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、交渉州相手であるべきだということを申しております。ただいまそのために、ベトコンの交渉を、交渉しろと、こういうことは、まだアメリカには言っておりません。私は何よりも大事なことは、無条件で話し合う、そういう気持ちになってこないと、それより以上に進みようがないのです。そのことを私は皆さんに申しておるのです。
○羽生三七君 それはね、いまのベトコンを交渉の対象にするとか、あるいは北爆を停止をするとかいうことが明らかになったときに、初めて交渉ということも生まれてくる。いまのような政府の態度で、どうして交渉が生まれてきますか。そんなものはもう絶対に、外交の最近の経路をずっとお調べになれば、そんなものはできるはずのものでないことはおわかりになるはずです。全然不可能です、それは。 しかし、さらに問題を前進させますが、この前の北爆停止は、最初は、第一回は正味二日間、あとは五日間ですね。両方合わせて正味五日か六日。これは北爆停止です。ところが、このような形ばかりの北爆停止、ある場合によっては北爆停止をしたけれども相手が応じなかったという口実をつくるためのような北爆停止です。どうしてこれで応じますか。したがって、もしアメリカがほんとうに平和に対する真意があるならば、この北爆停止を、長期にわたって、ある一定期間長期にわたってやめない限り、反応をつかむことはできないと思う。そういう問題をアメリカに提案をしないで、ただこの議会の会議を通じて、平和に徹するとか、ベトナムの話し合いを希望するとか、そんなことで解決するようなもう状況じゃないのですよ。それですから、一体ほんとうに総理がまじめにお考えになっておるなら、具体的に一体どういうことをやっておるか、それを聞いておるわけで、ことにいまの北爆停止の問題は、それすらアメリカに言えない。それからあとのことは、だんだん私これから触れていきます。ですから、まず北爆停止を、しかも二日や三日でなしに、ある一定期間やめることをアメリカに提案をしてです、日本がです、そうしてある一定期間の長期の北爆停止があったにもかかわらず、なおかつ佐藤総理の言われたようなことがあるならば、それはまた話はそのときから新しい時点で始める、そういう外交活動をおやりになっておるかどうか、それを伺っているわけです。
○国務大臣(佐藤榮作君) たいへん明確になってまいったようであります。私が申しておりますのは、ただいまの状況について、片一方にこれこれをやめろと、そういうことを言えた時期――言っても、それを了承するような時期でないのですよ。だから、私はどうあろうと、ただいまのように、とにかく話し合いをすることだ、話し合いをすることによって、そうして停止するという事態が起これば、それからどういう結論を出してくるか、そういうものを見つけようということであります。いままでのように、北爆が戦争だと、かような意味から北爆をやめろと、こういうように主張しておられる社会党、これはもう簡単だと思いますが、私どもそういうふうに見ていないのです。だから、アメリカ自身があるいは北爆をやっている。そうして、これがそれじゃ非常に領土的野心を持っているかというと、アメリカは持っていない。またしかし、彼らの言っているのは、北からの浸透をやめれば自分たちもやめる、こういうことを言っておる。あるいは北爆を停止すれば、その間に北からの浸透が弱まるとか、あるいは一部でも停止されるなら、そこで話し合いができるのだと、かようにアメリカ自身も言っておる。だからして、私どもはこの行為の一つ一つをつかまえて、その第三者的な立場から、この行為がいいとか悪いとかということは、私どもとしては言わないほうがいいんじゃないか。当の当事者としてはですね、その行為が、だれが何と言おうとこれ以外ないという、その結論でやっておるのだと、かように私は思いますので、その行為についての、やめろとか、あるいはこれは行き過ぎだとかという話は、この話し合いをして、その議論で初めて明らかになることだと、かように私は思うので、ただいまの羽生さんのお話と、私の話は、大部分そのスタートが違っておるようでありますので、これは私は、ただいまのような意味合い、羽生さんの質問されるような意味合いにおいての交渉はいたしておりません。
○羽生三七君 それはね、話し合いのテーブルに双方つかせる、その条件をつくるためのものでしょう。その条件が、いまのような間断なき北爆の進攻ではできないんですよ。だから、私の言うのはですね、そんな一方的な、かってな要求だけをしておって、少しも現実認識がないと、そう言われますが、そんなことはありません。一番現状認識しております。野党ではありますが、この問題については、ただ攻撃するだけじゃない。具体的な問題を私は提案している。でありますから、そういう単なる話し合いをやったらいいではないかと、それが進まなければこれは問題にならぬ――北からの侵透問題等を議論しておれば、私の質問時間なくなってしまう。ですから、私はこれはあんまり論議いたしません。これはむしろ、あの南ベトナム民族解放戦線――ベトコンが、世界一の強大な地上部隊を誇る、陸軍を誇っているアメリカと、対等に戦っておるのですよ、対等以上に。そんなものは、単なるゲリラなんという性質のもんじゃございませんよ、これは。そういう力を現に持っておるんです。ですから、そういうものを中心に、この問題を現実的に考えておる場合に、いまのよりな御答弁では、私は満足することはできない。だから、北ベトナムの爆撃についても全然――あるいはこの停止についてもですね、アメリカと話し合いしたこともない。それじゃ、総理が一体この本会議や委員会を通じてやっている平和に徹するということは、ただことばの上の念仏だけで、現実には何にもないということじゃありませんか。
○国務大臣(佐藤榮作君) いまの話し合いをするということと、それから話し合いをするためにはその条件をつくれというお話だと、これが分かれておりますが、この話し合いをしておるうちにほんとうの平和の条件ができ上がるんじゃないかと、そういうものを見つけるのじゃないかと、前もって一つの条件をですよ、きめて、これで話をしようと、こういうことになりますと、その条件の中へ追いやる、これはもう独立国家としてはたいへんな問題だと、だからこれは私の、言うほうが、むしろそれぞれの当事国の立場に理解を持っているゆえんで、これ前もってその条件が、北爆をやめろ、あるいは北からの浸透をやめろ、こういうことは、そのいずれも話し合いの結果によって出てくることじゃないのか、ここに一つの相違があるわけであります。私どもの言っていることは、ただいま、ともかく話せばわかるはずなんです。みんな戦争はいやだと言っている。戦争はいやだと言っておりながら、話し合いの機会を持たない。これはどうもおかしいのではないか。私はどうもことばが積極的になって、アメリカも中共も平和を愛好する国じゃないかと、こう申しましたが、両方とも平和を愛好する国というのは、少し積極的か知らないが、戦争はいやだ、戦争は好まない、こういうことだけはっきり言っているということなんです。それならば、その観点においては、両方の意見は一致している。それで、その実現をするためにどういう方法をとるか、その道を見つけるべきじゃないか。その話をする前に、お前のところが北爆をやるからいけないのだ、こういうことでは、これは話にならないのだ。あるいはお前のほうが南のベトコンに対してこれを援助するからいけないのだ、これをやめろ、こういう話では、これは第三者が、あるいは当事国でないものがこれを是非をきめるということで、これはどうもよくないのじゃないか。当事国とすれば、これが一番の方法だとして、そうしていまの道をやっている。だから、その点だけは当事国としてのその立場は了承してやらなければならないのじゃないか。しかしながら、とにかくお互いに戦争は好まないと言っている。それならば話し合いの余地があるはずだ。どうして話し合いがつかないのか。そうして話し合いについたら、そのときに、いま羽生さんの言われるように、アメリカはこういうことをやめてくれ、あるいは北越はこういうことをやめてくれ、こういうことまで話が進むのではないかと思うのです。最初からそれをきめてかかる、そのためにすべての提案等がいま納付されないでいるのが現状じゃないですか、私はかように思っております。
○羽生三七君 それは逆でありまして、その条件より何よりも前に北爆をやめて、とにかく話し合いのテーブルにつけるということが大事なんです。そこで条件が出て、いま四条件が出ておりますよ。出ておりますが、これが微妙な変化を示しつつある。それはとにかくとして、条件があるから絶対話し合いはしない、その間は北爆は続けるのだ、そうじゃないのです。北爆をまずやめることによって条件の変化が生じてくる。あるいは話し合いのテーブルにもつくことができる。これをやらなければならぬ。これ以上言っておってもしようがありませんから、そういうことを積極的に佐藤内閣としてやるべきである。 それからもう一つは、これと関連して、北ベトナムを承認されたらどうです。これは現在二十七カ国ですか、いま承認しております。西欧陣営ではあまりたくさんはありませんけれども、そうでないと、アメリカ陣営の一員と見られている日本が何を言おうとも、これはたいした力にならない。だから、北ベトナムを承認して、その上に立って日本が発言をすれば、これは説得力が出てくると思う。北ベトナムを承認なさるかどうか。それから、先ほどの問題にさかのぼって、もっと具体的にそれをアメリカに言うべきじゃないかと思うが、どうですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) こういう民族が分裂した二国間になっている、ひとりベトナムばかりではないのですね。こういう事態が戦後二十年を経過した今日なお続いております。こういう事態について、もう現状を承認するような方向にいけ、こういう議論もありますし、また、今日までとってきたその形において、そうして一応理論的に実情と相違があるが、その現状を維持して持続していくべきだ、こういう議論もある。そういうことでございますので、ただいますぐに北越を承継するという考え方にはまだなっておりません。当然、こういうような場所があちらこちらにある。民族的に非常に気の毒な状況に置かれている。いずれはこういうものも、民族を代表する単一政権というものが考えられる時期が来るということも想定いたしまして、いろいろ調査もし準備もしておく必要があるだろう、かようには思いますが、ただいまこれを承認するというような考え方はございません。
○羽生三七君 ジョンソン大統領は、去る三日、ホワイト・ハウスで演説して、もし南ベトナムの国民が外国のイデオロギーから自由を保障されるならば、米国は直ちに南ベトナムから手を引くであろう、こう述べております。共産主義と戦うと言いながらも、自由が保障されるならばいつでも、かつどのような政府とでも話し合う、こう演説をした。この場合、アメリカの言うところの自由、これはジョンソン大統領の考えている自由と、私どもの考えている自由とは、かなり違います。しかし、これを抽象的にではなく、具体的に考えてみると、第一番に北爆停止、それから第二番目に停戦、第三段階で関係国会議、この第三段階で外国軍隊が撤退することになると思います。 そこで、問題はこれから先だと思います。実はこれから先ですが、それから先が問題なんで、その保障なりあるいは自由ということについての認識、これがある意味においては、最後でなしに第一段階になるかもしれません。しかし、南北ベトナムの政府が、国際監視委員会の監視及び管理のもとで公正かつ自由な選挙を行なって、それに基づいてかりに統一政府ができた。これを相互に尊重し合うかどうか、こういうことになるのです。ところが前回は、南ベトナム並びにアメリカがこれに調印しない、こういうことで問題が再燃したわけであります。この場合、ゲリラ工作があるとかないとかいう問題、あるいはそれが自由に反するとかいう、そういう定義の問題でベトナム問題が混乱しているのでありますから、これはやはり徹底的に公正かつ自由な選挙が行なわれて、しかもそれは国際監視委員会の監視のもとに徹底的な公正な選挙が行なわれて、それもべトナム人民自身の解決、こういうことになったならば、その限りにおいてはこれを尊重していく。この立場に立たない限り、私は絶対に問題の解決はないと思います。したがって、真の自由とはどんなものであるかということをまず理解しなければならない。要するに、一九五四年のジュネーブ協定を尊重することだと思う。この事態に徹することを徹底的にアメリカに言うことが、私はベトナム問題解決の基本的な問題ではないかと思う。それは南べトナムのどういう選挙を通じて統一政権ができようとも、それが自由が浸されるというようなことを、この前と同じようなことを言っておったら、ベトナム問題は永久に解決しません。その選択は南北ベトナム人民自身の自由にゆだねられる、この基本原則を守らなければ、ベトナム問題は断じて解決しない。これが真の自由ではないでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 自由、あるいは民主主義、それぞれの立場でみんな説明しているようでありますから、なかなか観念的にこれはきまりかねるのじゃないでしょうか。私どもが考えまして、あれは全体主義で民主主義じゃない、かように思いましても、やはり民主主義ということを言っているようですし、あるいはその自由自身にいたしましても、自分たちの権力のもとに自由が確保されることが望ましい、こういう言い方もあるようでありますから、いわゆる自由というものは、なかなかはたで見て、それぞれの考え方できめかねるのじゃないか。ただいま羽生さんも言われますように、アメリカの自由とわれわれの自由とは違うと言われるようですが、どうも単一な観念的なものでは割り切れないのじゃなかろうか、かように私思いますが、とにかく、いずれにいたしましても、同一民族、それが二つの政権になっている。そうしてしかも憎しみ合っている。これは国民として、また民族として、こんな不幸はないのじゃないか、かように私は思います。同庁に、アジアにいる日本といたしましても、そういう点で非常に同情はする。しかしながら、その同情するからといって、それを民族自身にまかせればいいじゃないか、これは少し言い過ぎじゃないでしょうか。もう今日の国際社会というものは、国際協力の面を忘れては存在はなかなかできにくい、かように思いますから、民族だけ、民族の自由にまかせばというこれだけでも言い過ぎじゃないか、かように私は思うのでありますが、いずれにいたしましても、ただベトナム問題はたいへん頭の痛い問題であります。東西対立が同時にベトナムの国民、民族内の二つの力に東西二勢力がそれぞれついておるというところにも非常な危険もあるし、またそういうことも不幸を招いておるゆえんではないか、私はかように思います。
○羽生三七君 アメリカはしばしば名誉ある解決ということを盛んに言っております。ところが真の名誉とは何か。これはベトナム問題の解決で戦争をほんとうにやめさせるために、アメリカがいまの立場に大きく譲歩する場合には、その当座はいろいろ言われると思う、しかし、この戦争について重大な決意をしてアメリカがベトナム戦争を終結さした、それが真のアメリカの名誉で、それがまたアメリカが今後とも世界において自由問題の旗手たれるゆえんのものではないでしょうか。ところが、いわゆる表面上のメンツにこだわって、この戦争をいつまでたってもやめないというところに、アジアの危機がある。実はきょうはB52の沖繩からの発進とか、あるいはアメリカの輸送機の板付の着陸とか、そういう問題について一ぱい申し上げたいことがあるがそれには触れません。触れませんが、日本がいよいよベトナム戦争についていろいろ問題を深めておることは事実であります。これはおそらく佐藤総理だって演説であのとおり言われておるのでありますから、この解決を念願しておることに違いないと思う。しかし少なくとも、衆参両院の本会議及び衆議院の予算委員会、いままで私が参議院の予算委員会を通じて承った範囲では、非常な長時間を傾けて答弁には時間をさかれておるけれども、しかし、いよいよそれじゃどうされるかと言ったら、全然何もやっておられない。ジョンソンと会ったときどう言ったとか、経済合同委員会でだれかがどう言ったとか、そんなことではない。具体的にこのものを指向してアメリカとどういう形でどういう接触をしたか、それを私は言っておる。これも全然ないなら、一体佐藤総理の言われた本会議あるいは衆議院予算委員会の答弁についてどういうものがあるか、全く疑問を感ずるわけであります。いかがでありますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) いまアメリカの名誉ある解決、これはアメリカ自身がそういうふうに考えたからって、ただいまの国際世論といいますか、国際世論、そういうものがこれを支持しない限り、一方的なルールは許されない。それほどただいまの問題は国際的になっておる。だからわれわれがこれは正しいと考えましても、国際的に批判を必ず受けるのだということは、想定しなければならないと思います。だからアメリカの言っておること全部が、全面的に私正しいということを実は言っておるのではないのでありますから、その点は誤解のないように願いたいと思います。 しかして、ただいま話し合いをしろということは、これは国際的に支持されておる議論だと私は思っております。これは私が言い出したからという、こういう意味で申すのではありません。たとえば一方的ないわゆる非同盟諸国からの提案、これ自身もなかなか受け入れられない。ただいま世論の動向等をつぶさに見ますると、ただいまのとにかく話し合いの道を見つけよう、こういうところにだんだん狭まってきておるのじゃないだろうか。そうしてその機会に今後の保障の問題としてのいろいろな条件が出てくる、かように私は思います。 しかして、何もやっていないじゃないか、こういうお話でございますが、ただいま当事者自身がとにかく耳をかさない状況である。当事者自身が自分たちのやっておることはこれで正しいのだ、われわれが優位の状況に立ち得る、かようにただいまみんな考えておる。そういうことが、はたからどんな忠告をいたしましても、耳をかさないゆえんだ、かように思いますが、しかし、こういうことも時間的にはそのうちに私は落ちついてくるのじゃないか、かように思います。ただ、いま日本政府自身が何にもしないといって盛んにお責めになりますが、私はこれはひとり佐藤内閣だけでもありません。おそらく各国におきまして、フランスにおきましても、あるいはソ連におきましてもこれ何とかしたい、こういう気持ちがあるわけですが、ただいまのような状態では、これどうしようもないじゃないかというのが最終的なものではないか、かように思います。だからその時期がこないうちに、ただいまいろいろ手を打ってみても、それは実を結ばない。成果をあげないのだ、そこが政治家としてのあるいはディプロマトとしての一つの時期をつかむ、そういうチャンスをつかまないと、言われるようになかなか成果をあげることができない。私はこの点では日本国内におきましてもいろいろ話し合われて、ラジオやあるいはテレビ等を聞きましても、政府は何にもしないじゃないか、こう言われる社会党の方に対しても、社会党のほうでも何かすることがあれば、ひとつ人類の平和のために力をかしてやったらどうか、こういうようなお話までラジオ等では盛んに議論しておりますが、私はほんとうに非常に心配だ、かように思いますから、各界各層の方々がそれぞれの立場においてそれぞれまた話し合いのしいいその立場において、平和への解決の努力をひとつしていただきたい。私は、今日責められることをちっともいやだというわけじゃありません。政府を鞭達し、あるいは政府を責めるもけっこうだ。しかし、責めてもいただくが、ほんとうに平和を得るためにはこういう道がある、自分たちならこれができる、こういうようなことがあれば、それもひとつ積極的にやっていただきたい、かように私は思います。それが今日の当面しておる問題でありますし、アジアの平和のためにほんとうに全体が力をかし合って、そうして平和への努力をすべきときだ、かように私は思いますので、政府が責められることは私別に意には介しませんが、いい方法があれば、積極的にひとつ御協力願いたいと、かように思います。
○羽生三七君 実はそのいい方法というのが、日本が特にアメリカと特別の関係にある国であるというから、そのアメリカに対していま私が申し上げたようなことを提案したらどうかという具体的な提案を私はしておるわけです。抽象論をやっておるわけではないのです。 それからもう一つは、いいチャンスがあったらといわれますが、チャンスをつくるためにこそ外交があるのでしょう。たとえばフランスも、平和を念じておるなんていっているのじゃないのです。ドゴール大統領の意を体して前にはフォール、最近ではマルローですか、あるいはその他の国々もそれぞれの立場でみなやっておるのです。ところが、情勢が熟したならば、チャンスがきたならというのでしょう。だれでもやります、そんなことなら。またやる必要はない、そんなときには。情勢が熟して問題が解決をしたらやる必要がないのです。その情勢をつくるためにこそ外交がある。それについて何をやっておるかというようなことを私は承っておる。いまのようなやり方では、これはもう全然問題にならぬ。 それからもう一つは、三木さん、ずっといままで三木さんに関連することですが、三木さん、先般このベトナム問題に関連して、通産相という立場ではおありでしょうが、ドゴール大統領あるいはコスイギンソ連首相と会われております。どういう話をされたのか。さらに三木さんは、ここにありますね、これはもう新聞が間違ったら別ですよ、間違いがなければ、七月二十日の記者会見において、「ベトナム問題の平和解決につき日本が積極的に乗り出すため特定国と共同で調停を行なう準備を進めている。」――ただし、これ以上は言うわけにはいかぬ、云々とこういうふうに出ておりますね。そういうお話になっておるのでありますから、この機会にドゴール大統領なりコスイギンソ連首相との会談及び七月二十月記者会見で語られた特定国と共同でおやりになるというこの構想について、差しつかえない限りひとつお答えをいただきたい。
○国務大臣(三木武夫君) ドゴール大統領、コスイギン首相と会談をしたことは事実でありますが、この会談の内容を一々申し上げるのは適当ではない。ただしかし、世界のそういう指導者連中は、このベトナム戦争の拡大を非常に心配している。何とか早期に平和的な解決はできないかということを、それぞれの国の立場で考えておることは事実でございます。また、日本としても、佐藤総理もいろいろお答えになっておったようでありますが、私が欧米に出発する前にも、非常に、ベトナム問題の平和的解決ということを総理は心配になって、そういう機会にいろいろ他国の意向等も打診してもらいたい、こういうお話もあったわけでございます。したがって、これは一々こういうことをやっている、ああいうことをやっている、こういうことを申し上げることは、外交としては適当ではございませんが、こういうときにこそ外交は全機能をあげて努力をすべきものだ、そういう点で日本の外交の正式ルートを通じて、これは第三国もありましょうし、いろいろな関係を通じて努力をしていることは、事実であろうと信じます。
○羽生三七君 それはことばが足りない。七月二十日、記者会見では、特定国と協議して平和解決のために努力する、これは……。
○国務大臣(三木武夫君) それは、その点は私の真意を正確に伝えておりません。それはなぜかといえば、特定国という、いろいろこの問題は、いま総理もお答えになっているように、平和的解決をするためには、アメリカばかりではなしに、ハノイ等としてもそういう気持ちにならなければならないわけでありますが、日本はハノイ等と正式の外交ルートを持っていないわけであります。しかし、そういうハノイと正式のルートを持っている国々も、日本と友好関係を持っている国々にはあるわけです。そういう意味において、できる限り外交の機能をあげて平和的解決のために努力をされることが適当ではないか、こういう話を総理に申し上げようということを言ったわけであります。これは私がある特定国を頭に描いて、その国と外交をやるということをそれで申し上げたのではない、特定国もあろうし、いろいろな国を通じて日本がそういう国際的空気をつくる一役にもなりましょうし、また、平和的解決を促進する、これは日本としても努力をすることが必ずしもむだとは思いませんので、そういうことを総理に申し上げようということを申した次第でございます。
○羽生三七君 そうすると、大体わかりました。政府の考え方はわかったが、結局平和に徹するとか、戦争拡大に反対するとか、こう言われても、先ほど申し上げたように、大体どこでもわかるようないろいろな正式会議で、たとえば日米経済合同委員会等の会議でだれかが言われたというようなことがあっても、正式の佐藤内閣としてベトナム問題に具体的に、――先ほど表口だけではなしに裏口もあると言われましたが、表口も裏口も何にもない、こう理解してよろしいですか。裏口はあるが、それはどういうことをやったかということまでは聞いておりません。何にもないということ、これでいいですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど来お答えいたしておりますが、これは何にもないとおっしゃる、何にもないということを私が引き受けるかといえば、私はそうは引き受けない、私はやっておる、かように思いますので、あなた自身が何もやっていないと、かようにお考えになるということを、私がそれをそのとおりですというわけではございません。私はやっておるということであります。
○藤田進君 関連。それではどうにもならないじゃないですか。佐藤総理、これは最近私はこの予算委員会に長年ここですわって聞いておりますが、あなたの言われていることは、これはもうほんとうに支離滅裂で、これはときを追って明らかにしますけれども、こうやります、ああやりますということが二、三カ月もたたないうちにひっくり返ってしまっておる。それは公債、国債発行論にしてもそうですし、その他これは山ほどあります。私全部議事録をそろえて持っております。したがってもう少し――これは閣僚の皆さん今度相当かわられたので、うそを言う人、言わない人がまだはっきりしませんが、中にはやっぱり約束どおりぴしっとものごとを、国会の答弁を法律なりとしておやりになっておる人もあるし、その場限りで、――そんなことはないとおっしゃればお許しを得て並べますがね。そこで私は、それはそれで時期を追って明らかにするとして、羽生委員の質疑に関連して、何をやったか、やろうとするのかということについては、どう聞いても、質疑応答の両当事者以外の私が聞いても、さっぱりどうもつかめないのです。三木さんは、何とかここで全外交機能をフルに発揮してやるべきだという意欲がうかがわれるわけですが、肝心かなめの総理のところでさっぱり。私どもは去る三十日、開会式に引き続いての総理の所信表明の中で、次のように言われている点を重大に評価いたしたのであります。それは現在世界の世論もそうであるが、ことにわが国は国民あげてアジアがエスカレーション方式による、いわゆる熱核戦争になるんじゃないかという素朴な、そうして現実をはだにつけての心配というものがあるんで、これにこたえて総理としてはこの際手を打つべきだという、この信念のあらわれ、具体的方式のあらわれがここに所信表明で出てきた、こう言った評価しておる向きも多かったと思うんです。この末端に「どのような困難があろうとも必ず平和的に解決すべきであり、政府は、このため全面的な努力と協力を惜しまない決意であります。」、単にここでことばの端にすぎないというふうに受け取れないんです。そうあってはならぬのであります。ジョンソン大統領が先般記者会見において無条件話し合いということを打ち出して、安心してこれを出されたようにしか思えない。三月の当院予算委員会においての総理の答弁は、具体的に何とかひとつ手をかしたらどうか、努力したらどうかということについては、まだその時期でない、そういう時期でないということが答弁されておる。それが三、四カ月後の七月の三十日に、このような固い決意で努力するということが出てきた以上、三月の答弁とは質的にも変わっているし、事態も発展をしている。そこで過去何もやってこなかったと思わざるを得ないのですが、今後、今日のもうたいへんな緊急な問題だと言われておるわけですから、少なくともこれから先、全外交機能をどのように発揮して、どのような手を打つのか、たとえばアルジェリアのクーデター等でAA会議は一時延期になりましたが、それを与党の副総裁である川島さんを二度さらに派遣するということじゃなくて、みずから乗り込んでいこうと、現在のアジアにおける政権身担当している責任者総理は、これにほとんど乗り込んでいくんじゃありませんか。そういういわば具体的なものがなきゃならぬ。AA会議に対する態度も含めてですね、私はここでもっとはっきりと言ってもらいたい。なければ、実はないんだと。そうでなきゃどうにもなりません。このまま進めるわけにはいきません。
○国務大臣(佐藤榮作君) なかなかむずかしいことを言われるんですが、ただいまの私が本会議で言ったこと、これは変わりはございません。私はそのとおり考えます。また政府もその決意でございます。その決意だから一体何があるのか、こう言われるが、それはいま外交チャンネルでそれぞれの道をつけておるので、いま何をする、かにをするということは、それは言わなくてもいいというお話、また私もさように思います。しかし、かような意味で先ほどから御説明申し上げておりますが、とにかく政府は何にもやっていない、信用できないんだ、かように言われることは、これはどうも、私はそれは間違っていると思いますけれども、もう少しわれわれの言うこと、またわれわれのやること、それをしばらくごらんになれば、さような判断はつかないだろうと思いますが、それはどうも意見が違っているようです。ただいま総理自身がどこかへ出て行け、行って交渉したらどうだ、こういうお話ですが、私はただいま動くつもりはございません。いま出て行くつもりはございません。それだけははっきり申し上げられるのであります。近く沖繩には出かける予定をしておりますけれども、それ以外にはございません。いまのベトナム問題は、これはわが国の置かれておる立場をごらんになればよくわかるのであります。わが国づくりの方針というものの基本は、これはもう私が申し上げるまでもなく、平和に徹しておるのだ、かように私は思います。また総理大臣自身は、その平和に徹しておる、その国是、これを守り抜くということが私の責務だと思います。ただいまベトナム紛争があり、そういうことに巻き込まれる心配があるのだ、かような意味から積極的に何をしろ、かにをしろと言われますが、私は、いわゆる日本がそういうところにまで巻き込まれるような心配は持っておりません。そうして、ただいま申し上げますように、日本の国是、これはもう平和に徹しておる、そうして国民自身もそういうことには何らの疑問は持たない、これは了承してくれておると私は思います。ただいまベトナム紛争を早く片づけろという、これはいかにも何か、私ども自身がベトナム紛争を巻き起こしているかのような錯覚まで持つようなお話ですが、私どもそれは持っていないのです。その点は誤解のないように願いたいと思います。
○藤田進君 それでは、ことばを変えて聞きますが、全面的に努力と協力を措しまない決意だと、三木さんの全機能をあげてということは、すでに、内容は言えないが、そういう手段を講じて関係国にも働きかけをしている、内容は言うなというから言わないが、とおっしゃるが、言ってください。それはうそですよ、あなたが言っているのは。うそでなければ言ってごらんなさい。何もやってないですよ。外務大臣何をやっているのです。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、日本の国会において政府の態度を声明することが、何よりもはっきりすることと、かように思います。国際的にも、日本がこの態度をとっているのだ、かように私は思います。これでいいんじゃないですか。そうして、それぞれの方法、その手段によりまして、あらゆる機会を使って、そうしてわが国の主張を十分理解さし、そうしてまた、相手国の状況についても十分これを理解していく、いわゆる当事者以外の第三者の関係におきましては、そういうものの意見がだんだんまとまりつつあるのが今日の実情じゃないでしょうか。ただ、言われるごとく、あるいは一週間先にどうなるとか、一カ月先にどうなるとか、これはなかなか苦いにくいことだ、かように私は思いますが、ただいま言われておる、三木君がドゴールに会った、そのときにしても、ドゴール自身も、これはマルローを中共に出した、こういうことはその後ございますけれども、事実この状況で当事者自身がなかなか納得しない実情においては自分たちも動きようがないと言っているのが、一つの考え方じゃないかと私は思いますが、私は、日本国民もそういう意味で、ただいま日本が戦争しているわけじゃないんだと、大国としてこの戦争が拡大しない、また、これが停止するように、そういう意味で静かにこの事態を見、同時にまた焦操を感じない、そういうことが望ましいんじゃないか、かように私は思いますが、もちろん現状自身は、なかなか楽ではございませんから、ただいま言われるような心配もございましょう。そういう点をあらゆる面でわれわれが平静に帰すように、国内にも努力しなきゃならぬ、これはもちろんでございます。しかし、ただいま言われるごとく、この席において何にもしないじゃないかと、かように言われることは、私自身とすれば、そのことばはお受けするわけにはまいりません。
○羽生三七君 それでは、表面とか裏門とか、そんなことは言わないけれども、ベトナム問題解決のために意欲を持っておるという、単なる精神的な問題だけじゃなくて、具体的に何らかの動きをやっている、こう理解してよろしいですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) そのとおりでございます。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 外交の問題でありますから、どこで何をやったというようなことは、それは申すわけにまいりませんが、とにかく、この一ベトナムの問題は、世界的な緊張をいま引き起こしておるような状況とも見られないことはない。あらゆる国が非常な関心を持って焦慮をしておる、平和的な解決を待ち望んでおるわけでありますから、いわんや日本としては、これに対してあらゆる機能を働かして、そうしてそのチャンスをつかみ、その方法等について考えていくことは当然のことであります。それを具体的に申し上げるわけにはまいりません。ただしかし、総理が言われるように、こういう状況であるからあらゆる努力を傾けてこの問題の解決に対処する方針である、こういうことをわれわれ体して、そうしていろいろな機能を働かしておる、こういうことを御了承願いたいと思います。ただ、そう言ったからといって、何でも飛びつく、こういうことはただから振りに終わるだけであります。それは控えたうほがいい。有効適切な外交の手を打つべきチャンスを、あらゆる触覚を働かしてそれをねらっておるということだけは申し上げることができると思います。
○羽生三七君 ベトナム問題はこの程度にして、日韓に移るわけでありますが、その前に、二、三別の問題についてお尋ねいたしたいと思いますが、やはりこれも先日の参議院の本会議で、これは秋山君の質問の答弁だと思いますが、日本の憲法下においては、日本が戦争に巻き込まれることは絶対にないと、しかも、新憲法にこれを命じている、この信念のもとで、これと取り組んで云々、また、橋本官房長官も、憲法第九条についてもほぼ同様の見解を披瀝をされておりますが、これから見て、いまの佐藤内閣としても、憲法第九条、特にこれを中心として現行憲法を改正する意思はないものという意思を表明されたと解してよろしいですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) いわゆる平和主義というものは私どもの血となり肉となっておる、かように思いますので、この点では誤解のないようにいたしたい、かように思います。
○羽生三七君 全然答えになっておりませんが、それでは時間の関係でまた他日に譲ります。 これは外務大臣に二、三、ベトナムとちょっと違いますけれどお伺いしておきます。 外務省は、これは外務大臣でなしに外務省として報道されておるのが非常にふしぎでありますが、東南アジア閣僚会議ですね、ジョンソン大統領の十億ドル東南アジア援助に基づく閣僚会議の準備を進めておるといいますが、これは予定どおり開くのかどうか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) ただいまのところは構想の程度にとどまっておるのであります。すなわち、いろいろな情勢からいいまして、東南アジア開発問題については、世界各国の関心の的である。ここでやはり日本がこれに隣しておる国でもあり、東南アジアの繁栄が日本の繁栄、あるいは政治的安定というものに直接つながっておるという関係もございまして、東南アジアの問題については、だれよりも非常な関心を持っておる立場にあります。そこで、この開発問題を考える場合に、東南アジア一国一国が局部的に開発問題を考えるよりも、やはり連帯感を持って、そうして自発的に現状ではこれはいかぬと、こういう意欲をまず持つということが、この問題の解決のための大きな前提でなければいかぬ、こういう考え方をかねて持っておるのでございますが、そういう考え方に東南アジアの各国が同調、同意するであろうと、まずその同調、同意を得て、そうしてそれらの責任閣僚が一堂に集まって、とにかく話し合ってみる、こういうことから始めるのがしかるべきではないかという構想を持っておりまして、それをだんだんと具体的に今後進めてまいりたいと、かような考え方を持っておる次第でございます。
○羽生三七君 会議に参加する国は、現在まで、具体的ではないでしょうが、参加する国、しない国、態度を留保している国、それ、それ報道されておりますが、現在どういう回答が来ておるか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 打診――打診から一歩出た程度のところもございますが、大部分はこの必要性を認めておりまして、一、二の国がまだはっきりした態度を示しておりません。
○羽生三七君 その一、二の国が問題なんで――一、二じゃない、二、三だと思いますが、それはとにかく、これは結局東南アジアにおけるアメリカの外交上の失敗をカバーするためのいわゆるSEATOの経済版ではないか。軍事面をカバーするための経済版ではないか。進歩のための同盟ですね。中南米における進歩のための同盟、これの東南アジア版、これではないかと思う。私はこれはむしろ招請するすべての国が参加しない限り、特定の自由主義国だけを対象にして、それでこの会議を進めるということは、かえって日本外交、特にアジア外交のためにマイナスになると思う。それでもおやりになりますか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) これは別に他意があるわけじゃありません。とにかく、ものそのものをよく考えるならば、やはり自発的は意欲というものを、それから東南アジアの大体連帯感というものに基づいてスタートを切らなきゃ、ものはいびつになる、ものにならぬというふうに考えるのは、これは当然であろうかと存じます。どこのまねをするとか、あるいは何らかの意図を迎えてやっているとか、そういうことをお考えになることは一切無用だと私は考えます。 それから東南アジア入国を大体目標にしておりますが、そのうちの一つでも欠けると非常に悪い効果をかえって生み出すのではないかというような、いまお説のようでございましたが、とにかく、その欠ける一国がどういうところであるかということにもよります。なおかつ、やはりやったほうがしかるべしという場合もあり、それがどうも抜けるのじゃ、これはどうしても前歯が欠けたようなものだから、これはものにならぬという効果の上からいろいろ批判すべき余地もあるいは出てくるかもしれぬ。ただいまのところはまだはっきりとそういう判断を下せる段階ではない、かように御了承願います。
○羽生三七君 この問題はもっと十分論議したい点でありますが、次の問題がありますので、割愛をいたしておきます。 次の日韓条約でありますが、日韓両国で現状までの情勢を見ると、全く相異なった見解を相互に国内放送しておるわけです。日本は日本の、韓国は韓国の、それぞれ独自の立場に立つ放送をしております。このようなことは、今日までどのような条約の批准の過程でも全く見られなかったこれは異例の事態であります。特に韓国国会は、去る五日夕方から与党――民主共和党だけの単独審議を強行して、しかもその席上、責任ある政府の責任者が、たとえば竹島は韓国の領土であることを日本は了解しているとも答弁をしておる。あるいはまた、事実上李ラインは存続をする旨を開陳をしておる。条約に明記し、日本と北朝鮮との間に外交関係を維持されるかもしれないという不安をなくした、こうまで答えておるわけであります。特に管轄権につきましては、政府は、今日まで事実問題として北朝鮮に一つのオーソリティーが存在しておる。したがって、韓国の管轄権が三十八度線以南に限定される旨を、大体このような趣旨のものを国会で答弁されてきた。ところが韓国では、その管轄権が朝鮮半島全部に及ぶと解して、そういう答弁をしておる。これでいくと、北朝鮮との国交の正常化もできないことになるし、これほど全く相異なった答弁をしながら、それでしかも、ある一国が与党だけで強行採決をして、それもだんだん先に送っていく、批准国会がさっぱり開けないでだんだん先に送っていく。また今度も延びるのじゃないですか、こんな例が国際的にいままでありますか。異例の事態です。それでもなおかつ、それを推進されるお考えなのかどうか。これをまず佐藤総理からお伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま韓国国会において批准国会が開かれておる、かように承知しておりますが、もちろん、ただいま御指摘になりましたように、これについては反対する向きもございます。しかし、私は白鯨両国とも、大多数の国民はこれを支持しておる、かように思いますので、十分説明に尽くし、審議に万全を期してまいりたい、かように思います。 ただ当方の国会、なかなか、いろいろの都合もございまして、最初は九月の初めにでも開こうか、それをお願いしようか、かように考えましたが、どうも九月の初めはお願いができないような状況でございますので、私はただいまのところ、両国国民大多数の者はこれに賛成しておる、かように考えております。
○羽生三七君 大多数の国民が賛成であるかどうかということは別として、このような全く、普通の条約とは違いますよ、小さい技術的な問題の解決の条約とは違う。国交を回復するというこれほどの基本条約が、全く両国間で相異なる答弁をして、そしてあのような騒ぎを起こして、それで善隣友好とか国交回復とか、こんな異例な事態が、いままでの条約の審議過程に、歴史上ありますか、一回もありません、こんなことは。私は長く外務委員を、兼任しております予算委員のほかしていますが、しかし、こういう例は全然ない。それでもなおかつ、いまのような簡単な御説明で進行できるとお考えになるのは、これはいかがかと思う。逐次またお尋ねいたしますが、基本的な問題を、ひとつ決意をもう一度伺っておきます。
○国務大臣(佐藤榮作君) 韓国の説明を私はここでとやかくは申しません。しかし両国が、大臣が条文において意見が一致して、そして調印をしたことは、御承知のとおりであります。この点をはっきり事実を御了承いただきたい。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 条約の成文につきましては、韓国の責任当局とあらゆる角度から検討、審議を加え、そして一致した結論を出したのが条文でございます。ただ、承るところによると、それの解釈なり説明なりが、やや、われわれに了解し得ないようなものがあるようでありますが、それは一致しておりません。一致しておるのは、あくまで条約の成立でございます。それで、条約の成立後、われわれが来たる国会に提出をいたしまして、批准の御承認をいただきたいと思っておりますが、われわれが説明すべき成文につきましては、誠意を持ってあらゆる説明をして、そして御承認を得る確信を持っておるわけでございます。韓国の国会においてどういう解釈、説明が行なわれておるかということは、韓国の国内問題でありまして、これをわれわれはとやかく言うべき立場にない。ただ、来たるべき批准国会におきましては、条約の成文について正確なる説明を申し上げ、そして御承認を得たい、こう考えております。
○羽生三七君 それは条約は話はできたけれども、韓国の国内問題で韓国の当事者が何と答えようとかってだ、そんなことはいまだ歴史的にないです。それは若干、技術的な解釈の違いはあります、いままでだって。しかし、これほど根本的な問題が全く違っているというようなことは前例にない。たとえば、ここに全部いただいております――これは衆議院段階でも議論されましたが、この資料。竹島問題一つとってみても、紛争解決に関する交換公文、この膨大な日韓条約並びに協定あるいは議定書、交換公文どこを見ましても、結局、この交換公文に関して、「これにより解決することのできなかった場合は、両国政府が同意する手続きに従い調停によって解決をはかるものとする。」、これ以外にないわけでしょう、これでしょう、竹島問題。そうすると、いままでずっと御承知のように、最初は竹島は返還、その次には国際司法裁判町への提訴、ところが、その提訴も相手が応訴しない、ここで長後には第三国による調停、今度はそれも出てこない。とうとう竹島の「た」の字も出てこなくて、それも何のための調停かわからないが、しいて解決を求めようとすれば、これ以外にない。これでしょう。そこで、この場合に、第三国とは一体どこをさすのか。それからこの場合でも、両政府が合意する手続に従い、合意しなかったら、これは永久にたな上げでしょう。どうしますか、具体的に。この問題を韓国がこれに応じなければ、実際、こんなものしたったって、永久にこんなものはできるわけがない。これは一例です。管轄権の問題についても、季ラインの問題についても一ぱいありますが、まずこの事例だけ一つお答え願いたい。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 竹島というのは、日本の呼び名でありまして、韓国では独島とか呼んでおります。そこで、その固有名詞を避けまして、日韓間の懸案問題、紛争問題、こういうことばを使っておるのでありますが、竹島問題は、御承知のとおり、日本からももうすでに三十数回にわたって抗議を申し入れております。向こうは何らの反応も示してくれません。こういったようなことで、だれしも日韓間の重要な問題は竹島であるということをみな知っております。そこで、たいていのほかの懸案問題は全部解決したのでありますが、残っておるのは、この竹島問題以外に紛争問題はない。そこで、この竹島を除く日韓間の紛争問題ということを言わない以上は、竹島問題はこれであるなあということは、これはもう論理的にそこに帰着するわけです。竹島問題であるということは、もう明瞭なんです。そこでこの問題については、両国の間で外交ルートを通じて折衝する、その折衝が奏効しない場合には、両国の合意する方法に従って調停にかける、こういうことで、合意しなかったらばと、こうおっしゃいますが、お互いに条約国の当事者の間で、これが片一方で合意しなかったらどうするか、片一方で承認しなかったらどうするか、そういったことを言ったならば、この問題以外にあらゆる問題が疑わしくなる。やっぱり当事国としては、お互いの信頼というものに基礎を置いて条約をつくるのでありますから、ことばの端に一々とらわれて、そうしてこれを向こうが実行しなかったらどうするか、合意をしなかったらどうするかというようなことまでは、これはちょっと少し思い過ぎではあるまいかと、こう思うのであります。そこで、この問題について、韓国の国会においてどういう当局者が説明があるのか、詳しくは私も存じませんけれども、とにかく両国の間で交換された公文の合理的な解釈というものをする場合には、私が以上申し上げたようなことになるのであります。条約がいよいよ両国の間に批准され、有効に成立した段階において、この問題について向こうと折衝をし、必ずわれわれも主張を通す、こういう確信を持っておる次第であります。
○羽生三七君 それほど重要な問題なら、どうして、竹島の「た」の字も出てこないのですか。そんなの自分の理解でしょう、条約や、協定や、あるいは議事録にも、交換公文にも何一つ出てこないでしょう。自分の理解でしょう、そんなばかなことありますか、それはもうだめですよ。
○亀田得治君 関連。外務大臣並びに総理の答弁は全く承服しかねる。外務大臣は、ただいまの羽生さんの質問に答えて、日韓間の条約について、両国の解釈が違いが出ておる、そういうことをいま認めましたね、認めた。で、そこで私はお聞きしたいわけですが、一体条約と、解釈というものは一体のものなんです。枝葉末節のことについての解釈の違いじゃありません。いま出ておりまするのは、非常に重要なポイントについての解釈が出ておるわけであります。その解釈の違いの出ておることは、外務大臣がいま総括的にお認めになった。そこで外務大臣の認識としては、どの点とどの点が一体両国の解釈の食い違いとしてこの時点で出ておるのか、あなたの認識をこの際明らかにしてほしいと思うのであります。念を押しておきますが、重要な点というのは、これはもうすでに公知の事実、世間公知の事実、竹島の問題、管轄権の問題、李ラインの問題、この大きな問題について、少なくとも違いが出ておるわけであります。それはどういうふうに違いが出ておるか、外務大臣がよく外国のほうでどんなことを言っておろうが、あまり意に介する必要がないといったような意味のことも言われますが、それはまた別な問題にしましょう。ともかく外務大臣として、どのような食い違いの認識というものを持っておられるか、これをまず明らかにしてほしいわけです。私がいま指摘した三点については、少なくとも両国でいまどんなことを食い違ったことを言っているか、まずその点をお尋ねします。
○国務大臣(椎名悦三郎君) ただ、報道機関を信じないわけじゃありませんけれども、そういうもので、ほんとうに韓国の有権的な解釈というものがそういうふうになっておるかどうかということについては、もう一つ確かめてみなければならぬ余地がまだ多分にあると思うのであります。でありますから、その点は保留しておきますが、いま竹島の問題については、交換された公文の解釈は、私の申し上げたことは、これは正しい解釈である、こう考えます。これに対して向こうが、いやそこが違う、あそこが違うというように意見を交換したわけじゃありませんから、この問題一応説明を、重複いたしますから除きますが、管轄権の問題については、国連総会の百九十五号(II)その中に引用されておる、その引用されておる内容をそのまま条約に引用をいたしました。でありますから、その国連総会の決議の内容は、停戦ライン以南の政権、それの管轄権、こういうことに正確になるのであります。これは世間の定説であります。 それから李ラインの問題については、なおいろいろ国会の質疑応答においてまだ不明瞭な点があります。その点に関して統一見解というものが韓国から出されておるのかどうか、まだこれをよくつまびらかにしておりませんので、それを見た上で、どの点が食い違うかということをはっきりと確かめたい、こう考えております。
○亀田得治君 非常に重要な御発言がありましたが、一体いま御指摘のような点につきまして、両者の食い違いが感ぜられる場合には、当然外務大臣として、日本政府として、相手国に対して照会の手続をとる、正式に。これは私は当然であろうと思います。ただいま、管轄権の問題については、韓国の主張が間違いだという意味のことを明確にいま外務大臣言われましたが、その他の点ついても、当然新聞であれだけ堂々と報道されておるわけですから、事きわめて重大だ。あなたが責任者として判を押されておるわけですから、当然これはまずこの事態を明らかにすべきだ。新聞で見ておるけれども、どうもそれだけで信用するわけにいかぬというようなのんきな態度でなしに、積極的に明らかにすることが、私は国民に対する義務じゃないかと思うのですが、その点はどうなんですか。それが一つ。 それから関連ですから、もう二つつけ加えてお答えを願いたいのですが、管轄権の問題に関連するわけですが、昨日韓国から、外務省のほうに対して、法務大臣が北朝鮮の通商関係の入国者に対して発言をした、その発育に関連して抗議をしておる。その根拠は、日韓基本条約第三条の精神に反する、こういう立場で抗議をされたようであります。こういうふうに基本条約というものの解釈によって具体的にいろいろなところに影響が出てくるわけですね。そこで私具体的に聞くわけですが、一体いかなる抗議だったのか、正確に明らかにしてほしい、この際。こういう具体的な行動の中にこそ、私は両者の食い違いというものがあれば、これはもう理論じゃなしに、事実上はっきりするわけですから、一体それはだれが受けたのか、その抗議を。どういう形式で受けたものか。もし文書であればその文書も明確にしてほしい。管轄権に対する食い違いがこの抗議行動になってすでにあらわれておる。とんでもない話だ。先ほどの第一問とあわせてこれを明らかにしてほしい。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 韓国の国内の問題だと私は思います。これがいよいよ条約が成立して、そうして条約に関する日本の具体的な利益が向こうの間違った解釈によって侵害されるという段階に達すれば、これはもう私は当然何を置いても抗議をいたします。まだ審議の段階にございますから、私は韓国に飛んで行って云々ということは内政干渉になる、だから私はやめたいと思います。 それから管轄権の問題は、これはいいですな。(「いいことはない」と呼ぶ者あり)これはさっき申し上げたように、国連決議の第百九十五号に明記されておる問題でありまして、朝鮮半島の一部に朝鮮人民の大部分が住まって、そうして国連監視のもとに自由選挙を行なって、そうして政権が樹立したという点をあげておりますから、そうしますと、結局ただいまの停戦ライン以南の韓国の領土、韓国の管轄権区域ということになるのでありまして、以北の問題については何ら触れておらない、この日韓の条約のいかなる部分もそれには触れておらぬ、こういうことがすでに明瞭になっておるのです。 それから北鮮の入国の問題につきましては、何ら抗議した覚えはございません。(「抗議を受けた話だ」と呼ぶ者あり)その他の点につきましては政府委員から説明させます。
○羽生三七君 外務大臣、抗議したのじゃない、向こうの抗議はどういうものだということを聞いている。
○政府委員(後宮虎郎君) 最後の北鮮貿易問題に関する入国について韓国側から抗議があったかどうかという問題でございますが、これは実は新聞にソウル電報としてああいうふうに伝えられておりましたので、私さっそく役所でチェックいたしたのでありますが、きょうまでのところ韓国代表部からまだ何にも言ってきていないのであります。
○亀田得治君 もう一ぺん。私が外務大臣にお尋ねをしたのは、これほど大きな食い違いがすでに出ておるわけですから、外務大臣自身は管轄権の問題については、もう韓国側の解釈と違う、これはもうはっきりと断定されておる、ここで。私のようなことばづかいではありませんが、しかし国連憲章の正しい理解の上に立って解釈すれば、韓国には北のほうの管轄権などはもちろん認めておらぬのであるということをはっきりここでおっしゃっておるわけです。その一事だけでもこれはもう韓国の国会における説明とは全然違うわけです。そういう状態にありながら、条約を正式に国会にかけるときになれば、その際までにもう少しはっきりするというふうなことで、一体のんきにかまえていいのかということをお尋ねしておる。当然こちらから積極的に、あなたがいま飛んで行くということをおっしゃったが、私は飛んで行ってくれというようなそんなむちゃなことを言っておるのではない。そこまでしなくても、交渉の文書で、きちっと照会をすべきではないか、ということを申し上げておるのであります。そんな必要はないとおっしゃるのか。必要がないというなら、なぜか。これだけ関心を持っておるような具体的な問題に関連するのだ。そこの理由をもう少し明らかにしてほしいわけであります。おそらく、照会をなさると、あなたとも解釈の違っておるということが非常にはっきりしてくるということを心配して、そういうことをされるのと違いますか、はっきり言って。 もう一つは李ラインの問題。李ラインの問題では、李ラインはちゃんと存続しておると向こうが堂々と説明をしておる。そういうたてまえに立てば、この漁業協定は一年間ですね。日韓間で今回締結されたものは五年間。五年間だけ、李ラインが少し縮まっておるというかっこうが出てくるだけであって、五年後にこの協定が、両者の意見が不一致で妥結しない、延長がされない、ということになれば一体どうなるか。日本政府は、その場合には、李ラインは撤廃されたものとして行動をとれるのですか。韓国のほうは、李ラインは存続しておる、漁業協定によって李ラインを暫定的に修正している、こういう立場を出しておるわけです。こういう大きな問題が残るわけですね。そのときになって、これはお互いの認識の違いであったというふうなことを言ったって、たいへんなことです、問題は。その点も、あわせてひとつ説明をしてほしい。こういうことをどうして照会する必要がないのか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) ただいまの段階では、こちらからとやかくこの問題に介入する段階ではないと思います。 それから、なお、李ラインの問題につきましては、いろいろ当局の説明にも食い違いを生じておるようであります。多少の混乱がなくもないというふうに思われます。いずれにいたしましても、統一見解あるいはそれに類するものが出てくるのをしばらく待って、一体向こうの李ラインに対する認識はどういうものであるかということを――少なくとも、こっちがそこまでは、いまのところは、向こうの考え方がどういうものであるかということは、はっきりまだつかみ得ない状況であります。しかし、それをつかんだからどういう折衝を開始するというのではございませんけれども、韓国自身の考え方もまだきまっておらないようだと、こういうふうに私どもは考えております。 (「そんなことで条約が結べるのか」と、呼ぶ者あり)
○藤田進君 委員長、関連。
○委員長(平島敏夫君) なるべく簡単お願いいたします。
○藤田進君 どうも知らぬ存ぜぬ。韓国のことは、こちらじゃ新聞だけじゃどうにもならぬ、わからない、そうおっしゃること自体がおかしいのです。いまソウルに外交官としては参事官、書記官三名を派遣常駐さしているじゃありませんか。刻々の情報が来ているじゃありませんか。現在二週間くらいで交代していたのだそうですが、一月からずっと常駐させている。そうして丁国務総理、李東元外務部長官、これがもう何ら食い違いのない答弁をやっている。統一見解はまだ聞いていない――そういうことで、向こうの答弁そのものが信用できないようなことを言いながら、日本の国会も乗り切り、韓国は韓国が適当に乗り切るだろうという、このことは三月に私がすでに指摘をして、両国の国会の批准時期をずらせて、おそらく韓国のほうで先に批准する国会を持ち、そして日本のほうはそのあとにするという、そういう下心があるのだろう。それはなぜか。李ラインは撤廃しておりませんと韓国は答弁をする、日本のほうでは、いや、そのようなことはない、撤廃している、朝鮮のほうがかってなことを言っているのだ、いや日本がかってなことを言っているのだ、そういうことにあなた方は戦術を考えているじゃないかということに対して、そのようなことはないと言っているのですよね。そういう解釈の不統一ということはないと言っている。指摘した、予言したとおりじゃありませんか。韓国が批准を済ませるまでは、おそらく日本は、八月下旬だ、いや九月上旬だと言っているのを、ずらすでしょう、やっぱり。これは、両国民をごまかすものです。ソウルにそういう駐在官を置いて、刻々その的確な情報をとりつつあるにかかわらず、日本の国会において、そのような答弁は、まことに心外です。 総理どうですか。現実に総理自身も、国政担当させらるる最大の責任者です。もう一般の新聞も克明に伝えているように、外交ルートを通じるまでもない。韓国の国会における総理ならびにかの地の外務部長官の統一した見解は、竹島はもう論外だ、交渉の余地はないのだ、わがほうのものだ、韓国領土だと言い切っているじゃありませんか。管轄権についてしかりです。李ラインは国内法ではむろん残っている、同時に国防ラインとしても残る――赤木農林大臣は、私の追求に対して、李ライン撤廃は合意議事録に載せるといっていますが、どこに載っているのですか。そういう、いわば基本的な問題の対立というものが、条約に違反する基本的のものが、あるにかかわらず、これに対して早急な措置をとらないという根拠を示してもらいたい。とってしかるべきだと思う。総理いかがですか。総理から責任ある答弁を聞きたい。だめですよ、国民をごまかすようなことをしては。
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。 ただいまいろいろお話ございますように、韓国の国内、国会等におきまして議論されておる、それが一々新聞等に報道されておるところでは、なかなか納得のいかないことがある。それはお話のとおりであります。しかし、ただいままだこれが批准の手続きを終了したとかという段階ではございません。ただいま幸いにこの段階におきまして御注意ございますから、政府におきましても十分こういう点について精査いたしまして、私どもが、皆さま方の御審議をいただくその段階におきましては、すらすらと説明のできるように材料を整えたいと思います。
○羽生三七君 それで、その相違もですが、先ほど来外務大臣からお話があったような、それほど重要な竹島問題、これがただ一つ残った未解決の最重要問題。まだほかにもありますけれども、それの一つとして、それがどうして竹島の「タ」の字も出てこないのですか。手がかりないでしょう、何も。話し合いをするような。ただ腹のうちでそういうことを合意しているというだけでは向こうがそんなことはないと言えば、それでもう済まされてしまう。何も、竹島の「タ」の字も文書の上にあらわれておらないで、どうして話し合いできますか。たとえていえば、これが一例です。これはどういうことですか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 先ほども申し上げたように、日本では「竹島」と言うが、向こうでは「独島」と言う。それでこの問題は、両国の固有名詞を避けて、そして「日韓間の紛争」、こういうことにして、それでまあ、実際問題としては竹島にしぼる、そしてその解決方法を考えると、うきめた次第であります。
○羽生三七君 それなら、固有名詞――韓国は「独島」、日本は「竹島」と、こう入れるべきですよ。何も入れないという、そんな外交文書がありますか。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 外交文書についてはよく調べるようにいたしますが、とにかく、それでもう明瞭に、この竹島の問題ということになるのでございます。
○藤田進君 議事進行。私が先ほど外務大臣に指摘した、外交機能の一環としてソウルに外交官を三名派遣して駐在さしている、これは事実じゃないのですか。そういうものが漫然として、本国との連絡をとっていないのです。新聞を見たのでは信用ならぬと、そうしてまだそういう点ははっきりつかんでいないといようなことでこの国会を、この時点を乗り切ろうと、総理は総理で、次の国会まで何とかよく調べておこうなんて、そう甘く見ちゃ困ります。韓国同様に、韓国の国会における総理や韓国の外務部長官の答弁ともまるきり違うことを日本でも言って、最後には数で押し切ればいいのだと、ありありと見えているじゃありませんか。批准してしまって、とやかく言うことは建設ではない――現地に派遣しているこれらの情報はあるのです。刻々あるのです。政府部内で、総理並びに外務大臣がそれを持っていない、見ていないとすれば、委員長、ここで休憩してもらいたい。十分それらの点と突き合わせての答弁をいただきたい。だめですよ、このまま進めたって。知らないものに聞いたってしょうがない。(「休憩、休憩」と呼ぶ者あり)
○国務大臣(椎名悦三郎君) 問題は、韓国の国会において、いま批准承認の審議中でございますので、その内容等についても、あるいはいろいろな解釈上のまた変化も起こり得る、可能性があるのであります。それで、こちらから在韓事務所に約三名ほど行っております。行っておりますが、簡単な電報の情報が来ておりいますけれども、詳しくその内容が時期にまで及んで通報されておらないような状況でございます。(「そんなことはない」「それはうそだよ」と、呼ぶ者あり)どうぞ、さよう御了承願います。
○亀田得治君 委員長、ちょっと。
○委員長(平島敏夫君) 亀田君。
○亀田得治君 とにかく、これほど重要な問題になっているですから、政府から派遣されたものが相当詳しくいろいろな情報を入れているんじゃないですか。これはあたりまえだと思う。ところが、簡単なものしか来ておらぬようなことを言われるわけですが、一体どんなレポートが来ているのか。それを資料として出してください。一体詳しいものが来ているのに、適当なことをおっしゃるのか。あるいはそれしか来ぬのか。ほんとうは、これだけ重要な問題ですから、韓国の国会の議事録、そういうものを日本政府がちゃんとつかんでおらなければうそなんです。真相はどうなんです。とにかく、若干のものは来ているようですから、いかなるものが来ているのか、日本の外交のやり方も、そういうものを通じてまたわかるわけでありますから、資料として出してください、来ているものだけ、とりあえず。
○委員長(平島敏夫君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(平島敏夫君) 速記をつけて。
○国務大臣(椎名悦三郎君) ただいま貸料の提出を求められましたが、電報だけではもちろん足りませんので、できるだけととのえまして、出せるものはすみやかに出すようにいたしたいと考えております。
○亀田得治君 大臣、「すみやか」と言われましたがね。これ、三日間しか委員会がないわけであります。質問自体が、これに関連してなされておるわけなんでありまして、これはいつまでなんですか。(「休憩、休憩」、「休憩中に相談しなさいよ、そんなことは。」と呼ぶ者あり)
○委員長(平島敏夫君) 資料は、あしたの午前中までに提出させることにいたします。(「それまで休憩。それが来なければ質問できないじゃないか。」、「進行、進行」と呼ぶ者あり) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(平島敏夫君) 速記をつけて。 午後一時再開することにし、これにて休憩いたします。 午後零時二十四分休憩 ―――――・――――― 午後二時一分開会
○委員長(平島敏夫君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。羽生三七君。
○羽生三七君 午前中の質問に引き続いて、日韓問題についてはまだたくさん承ることがございますが、あと残余の問題一、二ありますけれども、大局的には、これを要約して次の三点について総理の御見解をお示しいただきたいと思います。 まず第一番に、竹島問題について、これは日本の国会答弁と、それから韓国における丁首相あるいは李外務部長官の答弁の間には、相当の食い違いがあります。いや相当というより、重大な食い違いがあります。 第二番目に、李ライン問題につきましても同様であります。三番目の領土管轄権につきましても同様だと思います。これをこのままにしておいて、私どもがこの予算委員会で見過ごすわけにはまいりませんので、これについての政府の基本的な解釈、統一見解、これをまずお示しいただきたいと思います。 続いて、韓国国会における資料、これは先ほどからも関連質問で御要求がありましたが、この資料をすみやかに本委員会に出していただきたい。 それから第三番目には、これと関連をしてソウル駐在前田現地事務官を当委員会に出席させるよう要求いたしたいと思います。 この三つについて総理からお答えをいただきたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) では私からお答えいたします。 竹島につきましては、わがほうとしては、一貫してわが国の領土であることを主張してまいりました。しかし韓国側はこれに応じないで、日韓間の紛争として残されております。したがって、交換公文にいう両国の紛争であることに間違いありません。これをさらに補足いたしますれば、とにかく両者の間に意見が食い違っておる、それが紛争である、かように私は考えております。 第二の李ラインの問題でありますが、韓国の国内法上の問題は別といたしまして、漁業協定発効の暁は、日韓両国の漁業は、この漁業協定のみによって律せられることになりますから、李ラインは、少なくとも日本にとっては存在しなくなるわけであります。ただいまこの問題は、いわゆる安全操業できることになるいわゆる漁業に関しては、日韓両国の漁業協定、これで律せられますから、安全操業もできますということをはっきり申し上げます。 次に管轄権の問題でありますが、韓国政府の管轄権については、日韓協定は、韓国政府が一九四八年の国連総会決議百九十五号(I)の意味において、朝鮮にある唯一の合法的政府であることを確認しております。したがって、韓国政府の管轄権は、休戦ライン以南のみに及ぶものであることは明らかであります。 以上お答えといたします。
○羽生三七君 関連した問題、外務大臣、資料と前田事務次官。
○国務大臣(椎名悦三郎君) 御要求の資料につきましては、先ほど申し上げましたとおり、できるだけすみやかに提出することにいたします。ソウルにある前田事務官の召喚に関しましては、本来の任務がございまして、いまここで確約はいたしかねますが、できるだけご希望に沿いたいと思います。
○羽生三七君 これに関連をして一つだけお尋ねをいたします。 そういう解釈でいきますというと、この条約によって北鮮との国交回復を妨げるものではない、そう理解してよろしゅうございますね。
○国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、この条約、協定は、北鮮には全然触れておりません。その点をご了承いただければ、ただいまお尋ねになりましたこともおのずからわかるだろうと思います。
○羽生三七君 他にまだ日韓関係には残された重要な問題がたくさんありますが、これは他日に譲りまして、また他の委員が一般質問の際御質問があると思いますので、次に経済問題についてお伺いいたします。 経済問題について私が最初ににお伺いいたしたいことは――個々の質問に入る前にお尋ねしたいことは、今日の経済問題に対する政府の責任ということです。たとえば今日の不況あるいは経済危機あるいは財政難といわれるもののこの根は、かなり深いと思います。したがって、これは予測し得ざる事態ではなかったかと思います。これについて私は昨年三月四日当委員会及び本年三月九日当委員会で、この問題について政府の注意を喚起いたしました。それは三十九度予算に関連してでありますが、私の質問の要旨は、当然増及び自然増経費が拡大をしてくる、各種の年次予算の平年度化支出の増が当然拡大をしてくる、さらに強まりつりある予算の、硬直性、さらに、この硬直性から弾力性が失われてくる、こういう要因のもとにおいて、他方、税の自然増収は経済の成長率の鈍化に伴って多くを期待し得なくなる、しかも減税はやらなければならぬ、公債は発行しない。したがって、このような条件のもとで、どうして予算編成ができるか。しかも新規事業は、このままでいけばほとんど不可能になるのではないか。こういうことで私は注意を喚起いたしました。したがって、もしこの予算あるいは財投等の予算を拡大するとすれば、それは大企業中心ではなく、大衆中心であるべきではないか、その方面に重点を置きかえるベきではないか、こういう意味で注意を喚起いたしました。これに対して、当時の田中蔵相はこう答えております、「そうではあるが、経済基盤が大きくなっているので、安定成長の過程においても税収は確保できる、こういう立場に立って、御心配はない。」こういうことであります。昨年三月四日も本年三月九日も同じであります。田中蔵相は今日ここにはおられませんけれども、しかし、本年のときには佐藤総理も同席をされておりました。結果はどうであるかといえば、税収の大幅減少、借金政策、公債発行、新規事業は大体停止、こういう事態になったわけであります。しかも全くしろうとの私が予測し得たことを、専門的な大蔵大臣がここで答弁されたことと全く違った事態が起こっておる。私は予算の技術上の――これは外交でもそうですが――問題をかれこれ言うわけではありません。これほど基本的な問題を、それを単に経済が予想以上に伸び過ぎたとか、景気の谷が、底が深過ぎるとか、そんなことでごまかせる性質のものではないと思います。今後もこういうことは起こり得る問題でありますので、こういう問題について、政府としては何らの責任を感じないのかどうか。この問題をまず最初に経済問題の質問に入る前に、基本的な問題としてひとつ総理に伺っておきます。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの経済状想は御指摘のありましたように、これは流動的でございます。なかなか結論が、われわれがかくあるべしまたあるいはかくありたい、かように考えましても、そうまいらないものがあるわけであります。ただいま羽生さんが御指摘になりましたこれらの点、そういう事柄も、もちろん現状あるいは経済の推移に対しまして正しい判断であったと私はかように思います。しかし、私ども今日この不況を克服することが何より第一の私どもの責任だと、かような考えによりまして、そういう意味でただいま真剣に不況克服と取り組んでおる、かような状況でございます。過去の経済等におきましては、まだ皆さま方が御指摘にならないようなそういう原因もあるようでありますけれども、その点は過去にさかのぼることでありますので、前向きの問題として今日の不況を克服すること、これが私の課せられた責任と、かように考えております。
○羽生三七君 不況克服問題についてはだんだんお尋ねいたしますが、それとともに、この健全均衡財政というのが、これは佐藤内閣というより自民党内閣の戦後一貫した基本政策であります。健全均衡財政、こういうことで、やってまいりました。それが今回どうでしょうか、不況克服ということで、単に出血する不況対策のみならず、長期にわたる財政政策にも関連をして、公債発行あるいは財政政策の基本を根本的に改めようとする、これは自由党政府の一大政策転換であります。いままで過去二十年にわたる考え方が、それは単に議論としてはそうだが、現実はそうはいかぬからと育ってしまえばそうでありますが、それにしても非常に大きなこれは政策転換であります。これは、国会と国民に対して、ただ不況が谷が深いから公債発行もやむを得ないというような、そんな簡単なことで推移していいでしょうか。十分国民や国会に対してやむを得ざるかどうか、これは今後の論議の点でありますから、国会を通じてそれを国民に十分納付のいく説明をすべきではないかと思うのであります。これはいかがでございましょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私が申し上げるまでもなく、政府が事業をする、あるいは国が事業をする、これはすべて国民の負担であることに変わりはございません。この国民の負担である以上、国民の負担を適正に使われること、これが国民のひとしくいかなる時期におきましても政府に対して強く要望するところのものだと思うのです。私は、かような意味で健全財政であることが望ましい、また健全財政を守り抜かなければならない、かように私は思っております。国民に迷惑をかけるようなことではいけない、かように思います。ただ、そういう場合ではございますが、いわゆる国民の負担、直接の税収入によって国費をまかなっていくか、あるいはもっと別の考え方でやるか、こういうことは、そのときどきの経済情勢あるいは国民の負担力等を勘案して、政府自身が考え方のゆとりを持つことも、これは差しつかえないことじゃないか、かように私は思います。 ただいま言われる基本的な態度としては、国民の負担を、そのような意味においてこの健全性を貫く、こういうことは、いかなる場合でも必要なことであると、かように私は思います。
○羽生三七君 私どもは、ちょっと何でもないようなことですが、いま総理は健全財政と言われたけれども、そうじゃないのです。健全均衡財政といわれたものが健全財政に変わってしまって、均衡が抜けてしまったわけですよ。これは実は何でもないようですが、重大な変化でしょう。それについてほとんど何らの説明がない。これはまたあとからだんだんお尋ねしますけれども、その点、もう少し詳しく言ってください。
○国務大臣(佐藤榮作君) これは少し大蔵大臣に説明さしたほうがいいかと思います。私は均衡健全財政、こういう意味は、いわゆる超健全だと、かような意味じゃなかったかと思います。いわゆる歳出は税収入、これでまかなうのだ、こういうことに限った、かような意味に考えておりますが、かようなこと自身が、その経済情勢なり国民の負担等を考えて、そうしてときには借金をすることもいいのではないか、やむを得ないのじゃないか――やむを得ないというよりも、いいのではないかと、かように私は思うのでございまして、その辺が、いわゆる政府の責任において経済のあり方を見て、そうして国民自身が豊かで富み、そういう貯蓄を使うということもまた一つの方法ではないか、かように考えますので、この点は大蔵大臣からさらに詳しく説明さしたいと思います。
○羽生三七君 ちょっと、あとで大蔵大臣……。 そういう、あるときにはやむを得ず借金することもいいのじゃないかという、その移り変わりが、そうでもないでしょうが、実にさりげなく簡単におっしゃっておるが、戦後二十年、自民党内閣がとってきた健全財政政策の根本を変えるものですから、それにしてはあまりにも安易な説明ではないかということを申し上げているのですよ。 そこで、大蔵大臣に続けてお尋ねしますけれども、たとえば先日の福田蔵相の財政演説、この特色は、公債政策の導入を大胆に認めた、こういうことだと思います。この場合、蔵相の言う健全なる公債政策というのは一体どういうものか。すなわち蔵相は、「財政の健全性を保持しながら通貨価値の安定を確保することが財政運営のかなめであり、この根本原則はいささかもゆるがせにしないかたい決意である」と、こう言っております。それから從来政府は、財政運営の基本方針として健全均衡財政を言ってきたのでありますけれども、今度は均衡財政を、今後、健全財政それから健全公債の二つに分かれたわけですね、大蔵大臣の説明によれば。この場合の財政の健全性それから健全公債とは具体的にはどういうものか、まずその定義を伺いたい。さらに、これと関連して赤字公債の定義を聞かしていただきたい。実を言うと、たとえば景気循環についても、循環説には昔私どもが四十年前に勉強した周期的循環を、それを恐慌といってきた。ところがいまは、景気の谷が深いか浅いか、短期の起伏をいっておるようですね。それから藤山長官は、構造的ということばをしばしば言われる、これは一体どういうことか。そういうことばの定義から実は始めないと、赤字公債とはそもそも何か、しかし、その論議は私はいたしません、そんなことをしていると時間がなくなってしまうから。しかし、いまの健全財政と健全公債、それから赤字公債の定義、こういうことをひとつ承りたいのですが、念のためこれは申し上げておきますが、蔵相には、はなはだ恐縮でありますけれども、六月七日の衆議院の大蔵委員会で蔵相はこう述べておりますね。これは速記録どおり読みます。「はっきり申し上げておきますが、赤字公債は絶対に出しません。それから減税をするというような、税を引っからめての公債の発行も考えておりません。やるならば積極的な意味においての公債である、」こう述べられております。これは念のためにこういうことを申し上げて、そうしてその後の変化からだんだんひとつ御説明をいただきたい。
○国務大臣(福田赳夫君) 均衡健全財政は、お話のとおり戦後ドッジまでの間は格別といたしまして、一貫してとってきた政策です。そのうち健全均衡財政というのは、普通一般の財源によって歳出をまかなう、これによって健全性を保持する、こういう考え方でございますが、私が申し上げましたとおり、これからは公債によって歳出の一部をまかなっていくのがいいじゃないか、こういうふうに考えた次第であります。それで、それでも健全かと、こういうお話でございまするが、私は、国家財政の財源を国民の蓄積にこれを求める、こういう公債によりまして財源を充当いたしましても、国家資金の配分におきまして、また物の需給という問題、また労働の需給とか、いろいろの問題がありまするが、国民経済全体においてバランスのとれた経済が維持されるという以上、これは健全なる財政の運営のしかたである、こういうふうに考えております。なぜそう申し上げますかと申しますと、国の経済の動きの中において政府は最大の消費者でございます。その消費者である政府のあり方というものは経済の全体の仕組みに大きな影響を持つわけでありまするが、その消費者であるところの政府の動きを考えて、資金や物やそういうあらゆる問題について均衡を失わせない、こういう限りにおきましては財政は健全なものである、こういうふうに考えております。 それから第二には、赤字財政の定義はどうか、こ、ういうお話でありましたが……
○羽生三七君 赤字公債。
○国務大臣(福田赳夫君) 赤字公債、これは言われる方でいろいろ違うのです。私は人の言うことは受けてそれに対してお答えはいたしておりますが、私進んで赤字公債というようなお話は申し上げておりません。というのは、公債を出す場合におきまして、一般財源に充てるのだ、こういう歳入不足補てん的な意味において出す公債、それを指して赤字公債だと、こういうふうに観念をされる人もあるようであります。また、もう少しこれを技術的に掘り下げまして、建設公債でない、つまり経常的支出をまかなうという意味を含めて出される公債、そういうものは赤字公債だというふうに観念する人もあります。また、人によりましては、公債発行した場合にそれが日銀引き受けで行なわれるというような場合をさしてこれは赤字公債だというふうに、いろいろあるのであります。これはいろいろ通俗的に使われておることばであって、いまここで私が赤字公債をどういうふうに定義づけるかということについてはまことに当惑せざるを得ないのであります。
○羽生三七君 当惑しておるということは、まだ政府の公債発行がどういう形で進むかわからぬからそういうふうに言われたと思うのですが、これは税収だけでまかなえない場合にそれをカバーするための公債発行が普通言われておる赤字公債であることは当然であります。ただ、蔵相が、さきの衆議院の大蔵委員会で、赤字公債は出しません、減税にからめての公債発行はいたしませと、こう言われておることといまとは変化があるのですか、ないのですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 変化ありません。
○羽生三七君 そうすると、これはたいへんなことでして、その衆議院段階でやってきた、たとえば藤山長官が、減税を――減税ではありません、消費者物価の値上がりを相殺するためにやる一種の減税公債、そういうふうに考えられると発表しておられる。それから総理も、減税のためということを盛んに言われておりますね。それからいまの赤字公債でもないと。どういう公債ですか。これはあとからお尋ねしようと思ったのですが、この機会にお尋ねしますが、赤字公債でもない、減税にからめるための公債でもない、私の言うのは積極的な意味での公債である、こうお答えになっていますね。ですから、私たちのいままで解釈しておったのとたいへん違いますが、その点をひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 私が考えておりまする公債を二つに分けて考えていただきたいのですが、一つは、衆議院の本会議で申し上げたわけであります。参議院本会議でも申し上げたのでありまするが、これは、当面の危機を脱した後におきまして国の財政金融政策をどういうふうに運営するかという意味合いにおきまして、私は公債政策を導入する、こう申し上げたのでありまするが、その意味合いが一つ、もう一つは、いまことしの状態があるのです。これはいままでの経済状態の引き続きの状態でございまして、まあ私ども一が考えもしなかった程度に大きな税の欠陥を生ずる傾向であります。また、歳出におきましても追加補正を予定しなきゃならぬ、こういうものもあるわけであります。そういうようなことを考えますと、これはどうしても大規模の財源対策を当面とらなきゃならぬというふうに相なるわけであります。その財源対策といたしましては、まあいろいろと方法もあるわけでありまするが、あんまりひねくり回した形よりは、率直にこの緊急事態に応ずる態勢として私は借り入れ金か公債というものを考えたほうがいいのじゃあるまいか、そういうふうに考えまして、目下準備を進めております。そういう二つのことがあるわけでありまするが、衆議院大蔵委員会におきまして話が出たのは、その前の長期的な観点からの質問でありまして、その際に、私は、公債は出しましても健全財政方針はこれを貫くのだ、こういうことをはっきり申し上げております。ということは、その資金の需給その他公債発行によって財政の運営から経済のバランスが乱れるというようなことは絶対にいたしません、こういう趣旨であります。 それから減税との関連は、私はこう考えるのです。いま経済が非常な落ち込みな状態にあります。その落ち込みの原因を考えてみますと、これはやはり過去におきまする設備投資の過剰の結果、ここに設備過剰状態というものが出てきておる。しかも、その設備投資が借り入れ金によってまかなわれる。今日、企業の資産状態を調べてみますと、非常に悪化してまいりまして、ほとんど全部、大半を借入金によってまかなっておる。設備投資もそれによってまかなわれた、こういうような状態であります。そういうように企業の基礎が弱くなっているものですから、一たび景気の変動というふうになりますと、いわゆるミクロ的に見ましてその受ける波動というものが非常に深刻になってくるわけであります。そこが私はこの経済難局に立ち至った一つの大きな要点である、そういうふうに考えるわけであります。そう考えますと、今後経済を安定的に成長させなきゃならぬ。いろいろ安定成長政策の要因というものはあるのでありますが、これを財政金融の角度からいいますると、何としても、企業でも個人でもそうでありまするが、蓄積を持つという方向への施策を考えなきゃならぬ、こういうふうに考えるわけであります。そういうことを考えながら財政を見てみますると、今後財政需要というものは、ふえればといって減る要因はありません。私はそれでいいと思う。国費はつつましやかに使わなければならぬけれども、それにいたしましても、社会開発投資あるいは社会保障というような要請はだんだんと大きくなるだろうと思います。さあその財源をどこに求めるかということになりますると、また増税をしてこれを国民の所得なり資産から求めるということがはたして適当であるか。私はそういうことを考えますると、むしろ逆にこの際は大いに減税をして、そうして国民に余裕を持っていただき、だんだんと企業もまた家庭も蓄積のある状態というものをこそねらって施策すべきものである、こういうふうに考えるわけであります。そういうことを考えますると、大減税をする、そういう計画を進めたいと思うのでありまするが、一方におきましてそういう歳出の要求もあり、減税もしなきゃならぬというと、その財源を私は将来の国民の負担にするということを考えていいのじゃあるまいか。しかも減税の結果国民には余裕が生じるのじゃないか、その余裕を政府が借用するということを考えたらいいのじゃあるまいか、そういうふうに考えまして、一方においては減税、一方においては公債ということでございまするが、公債はあくまでも建設的な目的にこれを使用するわけであります。その反射的自然の影響というものが減税財源というものにも生まれてくるわけでありまするが、減税と公債というものを直接的には結びつけてはおらぬ、こういうわけであります。それが大蔵委員会におきまして私が申し上げたゆえんであります。
○羽生三七君 それはちょっと承服しかねると思うんですね。それは、減税をするから財源がなくなるんでしょう。だからしようがなしに公債発行するんでしょう。これは減税にからむ公債発行じゃないですか。どこが違いますか。それから、いま赤字公債の定義についても言われましたが、赤字公債は発行しない、六月七日の衆議院大蔵委員会の答弁と変わりないとおっしゃった。ところが、二千五百億円の税の減収、それから千五百億の補正要因、あわせて約四千億、これがないから公債発行するんでしょう。これは赤字公債にきまっておるじゃないですか。それをそんなに、ああでもない、こうでもない、積極公債だ、いままでのものと違う、減税にからめる公債ではない、私の言うのは積極公債だと。どっちだって同じことでしょう、これは。不健全な公債発行しないと言いますが、だれも不健全な公債発行しろとは申し上げてない。みんな健全。だが、それをやることが健全であるかどうかということなんです。これが問題の論議の焦点ですね。これは少しおかしいと思う。それだから、いままではああ言ってきたが、その後――まあそこで言っていいかどうかしらんが、財界の突き上げ、あっちこっちの要請で、あしたに一城を抜かれ、夕べに一城を抜かれていまや総くずれということですね。大蔵省のお役人から経済企画庁までもう全部、用語から頭から全部切りかえにやならぬという、そういう大転換をいまやっておるわけです。それにしてはあまりにも説明が不十分だ。もっと明白に答えてください。
○国務大臣(福田赳夫君) 私は、いま、私どもが考えております安定成長下における財政運営ということだけを申し上げましたが、当面、お話しのように、ことしの問題があるわけであります。ことしのどうしても財源というものを考えなきゃならぬ。その財源は、まあ無理をすれば何がしかのことはできますけれども、そんなことよりは、私は、ここでほんとうに財源に欠陥を生じておるのであるから、借り入れ金かまたは公債という手段を考えるべきじゃあるまいか、こういうふうに考えておるわけでございます。それで借り入れ金をするにいたしましても、あるいは公債を出すにいたしましても、私は、それが日本銀行の信用増加ということにならないように最善の努力を尽くしていきたいと思っております。しかし、見通しとすると、ある程度またそれは日本銀行に回り回っていくかもしれない。しかし、そういう多少のことがありましても、私は、今日の経済の落ち込みの状態、つまり、設備投資というようなことにつきましては、去年よりも水準が下がっておるというような状態であります。したがって、そちらのほうにも金がいかない、そういう状態を考えてみますると、政府のほうにおきましてそういう政策をとりました結果、日本銀行に多少のしりが回っていきましても、私は、これは不健全な状態ではない、こういうふうに考えております。
○羽生三七君 公債が日銀へ行くようになるかどうか、市中消化か、そんなことはいいんです。あとからこまかいことについては伺います。そうじゃない。さっき、公債の定義について、蔵相は、なかなかそれは言いにくいことだとおっしゃっておりましたが、赤字公債の定義を明確にしないと、これはもう、一般会計の足りないところをしょうがないから公債出すということでしょう、一口に言えば。簡単なことじゃないですか。それは赤字公債であるのかないのか。それは赤字公債でないとおっしゃるんですね、さっきのお答えでは。そんなばかなことはない。それが赤字公債でなかったら何が赤字公債ですか。それじゃ、赤字公債というものは一体どういうものですか。いままでのいろいろ説明が不十分だったからこうだとはっきり言ってください。それはそれで済むことだ。
○国務大臣(福田赳夫君) 先ほど申し上げましたように、赤字公債というのは非常に通俗的に使われていることばでありまして、多種多様なんですよ。それで、私はいま大蔵大臣としましてこれを使えば、一つのまあ有権的な定義を下すようなことになるわけでありまするが、その多種多様にあります赤字公債というものは、そう言われておるままに使われてもらっておいたらいいじゃないか。その意味合い意味合いについて違うところがありまするが、その違う意味合いに対しまして、私は私の見解をはっきり申しております。
○羽生三七君 その多種多様の中は、ほかのことはいいんです。一つきりでしょう。一番問題点は、税収入が十分ない、したがって不足分を公債で補うと、これが問題点なんです。だから、そんな多種多様なことは要らないんです。一種だけ言ってくださいよ。
○国務大臣(福田赳夫君) いま羽生さんのお話は、歳入不足補てん公債を発行するかと、こういうお話のようであります。それを赤字公債と呼びますか呼びませんか、これはいろいろ評論家だとかなんとかいろいろの人がいろいろのことを言っていますが、そういう意味合いにおきまして、それが赤字公債と言うと、何かこう不健全なような響きを持つ。そういう意味合いにおいて、赤字公債というふうに必ずしも断定はいたしませんけれども、しかし、ことし四十年度の現在の段階におきまして財源欠陥がある、その不足を補てんする意味の借り入れ金または公債は出さなければならぬ形勢であるということを申し上げます。
○羽生三七君 それは、税収だけではまかなえぬ、それから不足分は公債なり借り入れ金でやりますね。そうでない部分、たとえばそこから先の議論はまた別になって、それは積極的な意味の建設公債とか、あるいは何か建設的な事業をやる、だからそれは赤字公債ではないと。それは同じことなんです。財源がないからそんなことをやる。あればそんなことをやりっこないのです。ですから、非常に明白ですね。だから、この点は、その定義すらはっきりしなくて質問しておったって、これはおかしな話で、てんでんばらばらの解釈をしてやっておる。長年私たち十河年間予算委員会をやってきて、その定義すら全くすれ違いの定義でそのまま質疑を続行するというのは、これもおかしな話で、総理はどうお考えになりますか。何でもないことですよ、これは。
○国務大臣(佐藤榮作君) どうも、専門家に答えるのですから、あるいは御不満かもわかりませんが、私はただいまのことしの予算、これはしばらく預からしていただきます。先ほど来大蔵大臣が言っておりますように、来年度以降の問題についてむしろこの公債論を当てはめて議論するのが一番わかりいいのじゃないかと思います。ただ、ことしの問題もございますから、ことしの問題は、御承知のように歳入減、これはもう明らかに歳入不足しておる。そして、しかも災害その他によって支出増がある。こういうことがことしの予算を非常に困難ならしめておる。もしもいわゆる均衡、健全超均衡、そういうことを育って、いわゆる歳入の範囲に歳出を切り捨てろ、こういうことになると、これはたいへんな事態である。今日の状況ではそういうことはできない状況だと私は考えます。むしろこういう際は景気を刺激するのが望ましい状況だ、こういうことだと思いますので、ことしの問題はしばらく預からしておいて議論さしてもらいたいと思います。 一般論として、いわゆる仕事は、歳出は、歳入――いわゆる入るをはかっていずるを制すと、その範囲で仕事をしろとおっしゃるなら……
○羽生三七君 いや、それは違うんですよ。そんなことは言っていない。これはそれと違う別な話です。
○国務大臣(佐藤榮作君) 何だかそういうように聞けたものだから私は心配しているわけなんですが、私は冒頭に申しましたように、そのときどきの国民の経済状態あるいは国民負担等を考えて、税収入だけで国の歳出をまかなっていくということが必ずしも望ましくないのだ、そういう意味では、そのときどきの事情を勘案して、そうして借り入れ金もその財源にすると、こういうことが望ましいのではないだろうか、こういうことを実は申しました。で、ただいま申すように、本来から言えば、この歳入ならば歳入で、税収入で歳出をまかなっていく、これは非常にわかりいいことで、一切の借金をしなくて済む。だが、私はどうもそういう時期のものではないだろう、かように思いますので、ただいまのようなあるいは建設公債だというような議論が出たり、しかもまた一方では歳入がほしい際に減税もやらなきゃならぬ。増税はまかりならないというような状況ですから、減税もしたい。そうすれば、この歳入欠陥は、これはやっぱり減税と結びついたものではないか、こういうような御議論も立つと思います。けれども、基本的には歳入歳出均衡をとる、しかもそれが税収でまかなわれるのが普通の原則です。いままではそれで通ってきた。しかし、これはやっぱりそのときの経済状態、また国民の実情等を勘案して、税収ばかりでまかなうのが能でもない。ときには借り入れ金、将来の負担において仕事をしていく、これも歳出のあり方ではないか、かように思うものであります。ただいま言われておりますことは、羽生さんのお話も私わからないことはありませんが、仕事はこれだけしたいのだ、そういう場合に、行き詰まった状況で、ただいまのようなことを考えている、かように御了承いただきたいと思います。
○羽生三七君 総理、それは違うのです、私の質問しているのは。それは税収がないときに仕事をやろうと思えば、補正要因で財源がないときには借り入れ金でやるか公債でやるか、そういうことが起こることは社会党も承知です、賛成するか反対するかは別として。そんな議論をしているのじゃない。そうなったことは赤字公債なのか。たとえば公債でまかなう場合、それが赤字公債と言うのかどうかという、そういう議論をしているのです。 |
○国務大臣(福田赳夫君) 先ほど申し上げたとおり、いろいろ赤字公債というのには言い方の意味があるのです。あるのですが、どうも伺ってみますと、羽生さんは歳入補てんの意味を持った公債は赤字公債だと、こういうふうにお考えのようでありますが……
○羽生三七君 一番大きな要因です。普通の常識です。 |
○国務大臣(福田赳夫君) ですから、あなたがそういう歳入の補てん公債は赤字公債だと言うならば、あなたがそれを赤字公債だとおっしゃられても、私は何ということはありませんです。
○羽生三七君 これは経済辞典から全部書きかえないとだめになる、こんな議論だったら。全然いままでの定義が全くくずれてしまって、どんな解釈をしても御自由だということになってしまう。それはちょっとおかしいじゃないかと思う。これでは建設的な質問ができなくなってしまう。それはだんだんに質問していきます。こんなことで時間を食っていたら私の本論はだめになってしまう。 そこで、公債発行と物価との関係はどうなるか、通貨価値の関係はどうなるか、いろいろありますが、それはあとにして、当面している、ごくそれに関連した問題で二、三お尋ねして次の問題に移りますが、先ほど、この当面の財政不足を補う公債発行と長期的は、積極的な意味のあれと分けておられましたが――これは衆議院ではね、先ほどお答えがありましたが、どうもそこのところが、これは衆議院の速記録を読んでみて感じたのですが、そこのところがさっきの説明ではまだちょっと不十分です。長期的、積極的な意味の公債、これはどういう意味でありますか。もう一度この機会に承っておいて次の質問に移りたいと思います。どう違うのですか。 |
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま当面の問題として考えておりますのは、ことしの財源不足、また補正要因というものを考慮いたしまして、その財源の不定を補う意味の臨時緊急の措置と御了承願いたいのです。 それから、私は、参議院本会議等で申しましたのは、この不況を克服した後における安定経済成長、この一環としての財政金融のあり方でございます。これは私は、国費はだんだんとふえる傾向にあるが、また同時に、税の圧迫というものがずいぶんこれは重く企業にも個人にものしかかっております。そういう両面のことを考えますと、戦後ずっとやってきた普通財源による均衡方式、これは再検討したらいいんじゃないかと、そう思うのです。それを思うゆえんのもう一つの理由は、この二十年間は非常な日本経済の歴史からいいますと成長期であったと思います。それでありまするから、資金にいたしましても、物資にいたしましても、需要要因というものがずいぶん強く出てきた時代であると思う。今度は安定経済成長、そういう基調の経済政策をとる段階に入るわけです。そうすると、需要要因がやや衰えて、そうして共給要因のほうが強く出る状態というものがしばらく続くであろうと、そういう際における資金というものは相当これはゆるんでくるんである。つまり、民間で資金需要が多少ゆるむ。そういう事態に対しましては、政府のほうでそのゆるんだ状態を受けて、民間資金も活用するという方途を考えてもいいのじゃないか。そういうことも頭にあるわけであります。これはとにかくふえてくる国家需要、また税の負担というものを考えますと、もう積極的に公債政策というものを導入して、そうして企業は蓄積のある状態、個人もゆとりのある状態を作り上げるというのが歴史的に見まして妥当な考え方ではないか、そういう見解であります。
○藤田進君 関連。ちょっと御答弁に注意いたしたいのですが、総理も大蔵も全く意識してすれ違い答弁。これは戦術としては確かにあるでしょう。政府のすれ違い答弁、何べん聞いてもすれ違いを言うておくと、あいつとうとうくたばって次に移ったわいと、どうもそういうふうにとれる。大蔵大臣が衆議院の大蔵委員会において赤字公債ないし減税公債というものを発行する意思はない。――事情が今日変わっていませんか、どうでしょうかという羽生委員に対しては、当時と変わっていない、こう言われたわけですね。さて、だとすれば、昭和四十年においても、当初歳入予算に対する自然増は従来あったけれども、今度はどうも歳入減、かなりこれが大幅にあるようにも思われるし、したがって、昭和四十年度――今年度においても公債発行をしなければならぬだろうということはしばしば大蔵大臣言ってこられたわけです。これは明らかに羽生委員が指摘するように、これは常識論としても赤字公債じゃないか。だとすれば、これは赤字公債と言わないのかどうか。どうしてもその点あなたは答えないのですね。いろいろな説がありますと言って、すっと遠のきになる。総理は総理で、これまたもう一つ大蔵大臣の外を回っている。これじゃいけませんよ。言うこととやることが違って、衆議院の大蔵委員会で言ったのをどうもいま変えるというわけにいかないから、そこにこじつけが始まっているように思う。そういうことにこだわってはいけない。こだわるべきではない。だれが聞いてもさっぱり何を言っているかわかりません。いまの四十年度ないし今後において、従来健全均衡予算だとまあ謳歌せられた事情が変ってきて、いわば当然増もありましょうし、また新施策もありましょうし、いろいろあろうが、当面赤字補てん、つまり税収減に対する見合い、あるいは積極減税に対する見合いといったようなものを考えておられるのですか、どうですか。それが赤字公債とあなたは言うのですか、あるいは言わないのですか。言わないとすれば、どういう理由で赤字公債でないのか。これをはっきり一国の蔵相としては答えられるべきです。 |
○国務大臣(福田赳夫君) いま藤田さんの前段、歳入不足の意味の公債、借り入れ金をするのかしないのかというお尋ねに対しましては、四十年度は臨時緊急な措置としてこれはいたしますと、こうお答えいたしました。じゃ、それを赤字公債というのか言わないのか、こういうことにつきましては、先ほど申し上げましたように、赤字公債ということは使う人によっていろいろ言い方の意味がある。でありますから、私はこれはそういうふうなお尋ねのしかたでなくて、歳入不足補てん公債を出すのか出さないのか、こういうふうにお聞きを願いたい。そうすれば私ははっきり何度もお答えいたします。
○藤田進君 だから言っているのです。それでは赤字公債であるのかないのかとあなたに聞けば、赤字公債でないと、回りくどい名前にしてくれと、聞くほうに御注文がある。赤字公債ではないのですね。なぜないのか。
○国務大臣(福田赳夫君) 赤字公債がいろいろ言う人によっていろいろ言い方がある。あるがまぎらわしい。またこれから引き続いてお話があるでしょう。まぎらわしいから、羽生さんがおっしゃられる赤字公債というものは歳入不足補てん公債の意味なのだということがはっきりすれば、それで私はそれに対して何どきでもお答えすることができます。
○羽生三七君 このためにすっかり私の予定した時間がみんな済んでしまって、質問できなくなっちゃう。だからこれはほんと、時間の割り増しをもらわぬと仕事にならぬです。(笑声)そこで、いまの問題が中途はんぱになっちまうけれども、ほかに重要な問題があるから、次に移りますが、当面の不況対策、刺激政策、これと物価との関連はどうなるか。これは、いわゆる不況対策が前面に出てしまって、物価問題がどこかへ影を隠してしまった。極端に言えば、そう言っても私は言い過ぎではないと思う。しかし、これでは、この問題を明白にしないと国会も国民も私は納得できないと思う。特にこの物価は、通貨との関連で貨幣価値が安定するかどうか、これが実は公債発行の前提条件でしょう。これが通貨価値を安定しない限り、また同時に、政府が期待する、さっきお話しになった貯蓄心ですね、そんなものができるわけないじゃないですか。非常な重大な問題ですね。ところが、この問題はほとんど不問に付されておる。だから、物価との関連で一体どうなるのか。通貨価値を安定するのかどうか。貯蓄心を、はたして政府が期待してこれを十分活用したいと言うが、向上するのかどうか。これは重大な問題だと思う。たとえば消費者物価は、これは東京ですが、本年一月から六月までに対前年比七・一%上昇しておる。それから後半期、これは全然上がらないと見て――全然上がらないということはありません、必ず上がりますが――全然上がらないと見ても、年間を通じて見て前年比で六・七%上昇する。したがいまして、こんなことでこういう状態なんですから、この重要な物価問題をそのままにしておいて公債論議なんて、どれだけの意味があるのか。これは物価問題、どう対処されますか。総理とそれからあと企画庁長官からひとつ願います。 |
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。ただいまのお尋ねにはよほど時期的な要素、これは一つ重大な問題があると思います。で、一般のいわゆる公債論、これはしばらく預からしていただきたいと思います。いま当面する景気刺激策、これを実はとっております。こういうものをとった際に、物価自身に影響がある。これは御指摘のとおりであります。一見矛盾するかのような政策を二つただいまやっている。物価は安定さしたいし、また景気自身ももっと過度の萎縮からこれが立ち上がるようにしたい、かように実は考えている。ただ物価の問題で、ただいま年間を通じての率などお示しになりましたが、私どものいままで見ているところ、また、これはおそらく羽生さんも賛成してくださるだろうと思うのは、卸売り物価は年初以来弱含みあるいは横ばいの状況なんです。そうして小売り物価がしかしながらそういう状況でない。これは上がっている。ここに一つの問題がある。これはただいまの景気そのものというよりも、最近の労働状況等が一つの問題だし、あるいは生産性の向上等におきましても、特に留意しなければならない問題があるのだろう、かように実は思います。しかして、私はこの際申し上げたいのは、この景気に浮揚力を与える、こういうただいま刺激策をとっている。そうして過度の萎縮から経済の立ち直るような、かようなことを考えている。そういう際に、物価そのものを上げるというようなことは、できるだけこれは避けていかなければならない、こういうことで十分注意をしているつもりであります。しかしながら、事柄の性格がお互いにぶつかり合うような実は問題であることを政府も十分承知しておりますので、そこはぬかりのない対策を講じているような次第であります。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 物価の問題はまことに困難な問題であることは御指摘のとおりでございまして、われわれこれに真剣に取り組んでまいらなければならぬ問題だと思います。御承知のように、今日物価がなぜこういう状況下においてやはり引き続いて高いのか、低物価になってこないのかというところは、過去の私はやはり高度成長に伴います構造上のいろいろな問題――ゆがみ、ひずみ、そうした問題が、基本的には物価問題の根底にあると思います。したがいまして、これを直してまいるということが、長期にわたって物価の対策をはかるゆえんだと思います。したがって、今回の不況に対して刺激をする場合にも、そうした過去の構造上のいろいろなゆがみ、ひずみを直すところにできるだけ重点を置いて、緊急投資、政府の財政需要を集中していく。そうして道路をよくして輸送関係もよくしていく。あるいは労働力の移動を十分にするために住宅をつくる。こういうような点に私は今回の対策も集中していくことが、不況対策であると同時に、物価に対する基本的な考え方だと思います。で、普通ならば不景気のときに物価が安くなるというのは常識でございますけれども、お話のありましたように、卸売り物価というものはかなり弱含みではございますけれども、硬直いたしております。こうした問題については、やはり過去の設備投資が非常に大きくて、それに対する他人資本と申しますか、大きな金融方面からの援助によって金利の払いも相当かさんでいる。それが設備投資が十分に活動をしていないというよりなところにやはり硬直性があると思います。また、大企業と中小企業との管に成長に対するテンポがおのずから違ってまいりまして、そうして中小企業が、特に消費物資をつくっておりますよりな中小企業あるいは農業が立ちおくれている。そういうところにも問題があると思います。したがって、これらの問題に取り組んでまいりますのでございますが、お話のように、今日財政需要を喚気いたしますためにはある程度の資金を使わなければならぬ。そこで公債を発行するかあるいは借り入れ金でやるかというような問題になってくるわけです。これも先ほど大蔵大臣が述べられましたように、本年の緊急の場合と、長期に安定成長後の問題と、二つに分けて考えなければならぬと思いますが、緊急の場合におきましても、いま言ったような問題を是正する点に十分力を入れていきながらまいりますことによって、御承知のとおり景気を浮揚して、そうして生産力を拡大して稼働率を上げていくというようなことによって、反面、卸売り物価等に対して好影響を与えるのではないかと思うのでありまして、必ずしも今日借り入れ金等によりましてすぐに物価が上がるというようなことには考えなくてもいいのじゃないかと、こういうふうに思っております。しかし、これが過度に行き過ぎますると、当然公債、特にいわゆる日銀引き受け等になりますれば、これはインフレの要素になりますから、そういうことは私は極力短期間に避けてまいらなければならぬことは、これは申すまでもございません。なお、その他当面いたします問題といたしましては、今後消費者米価の問題になりあるいは国鉄運賃の問題なり、それぞれ公共料金等で扱わなければならぬ問題がございますので、過去の下半期におけるトレンドだけで今日水準を予測をすることは若干危険があると思います。そういう意味において、非常に重大な問題として私どもはこれに取り組んでまいらなければならぬというのが、ただいま私どもの考え方でございます。
○羽生三七君 どうもね、よくわからないのです。ところが、時間がないので、ほんとうの要点だけになってしまって非常にそれを論証する時間がないので、残念でありますが、たとえばいまの物価の問題にしても、たとえば景気の谷が深いから若干の刺激政策をとっても値上げにそうたいして影響はない。それは事実です。ところが、それと関係なしに、たとえば消費者米価、国鉄運賃その他公共科金、そんなこと関係ないですよ。ただ問題はそれが値上げの幅がどれだけになるか、その時期をいつにするか、それだけの問題でしょう。したがって、これは物価が上がるのはもう明らかですね、どれだけ上がるかは別として。したがって、二つの問題が起きておる、さっきお話しのように。したがって、物価問題はしばらくほおかぶりだというならこれはやむを得ませんがね。やはり真剣に取り組んでいくなら、いまの公債問題、年度内発行等はどうかは別としても、これはあとからお尋ねしますが、別としても、通貨価値の安定ということがはっきりしないで、漫然たる公債発行論なんて全然意味ないと思う。そういう意味で、一体物価問題はいまの当面の不況政策を別にしても重大な要因が山積みしているわけですね、時期あるいは値上がりなどを別にしても。だからそれ関連なしに物価問題を論ずるわけにはいかないし、また、公債発行を論ずるわけにはいかない。この点はどうお考えになりますか。 |
○国務大臣(藤山愛一郎君) この公共料金その他、先ほども私が申し上げましたよりに、これから物価に影響する問題がたくさんございます。したがって、これらのものをどう抑制しあるいはどの程度にかりに値上げをするとしても、していくかというような問題については十分検討をしてまいらなければならぬのでございまして、物価の中にはね返ってまいります程度も勘案しながら、他の財政的な措置によって値上がりをある程度抑制するという方法もできれば考えなければならぬと、物価を扱っておる私としてはそういうふうに考えておるのでございます。
○羽生三七君 まあこの問題の時間がないのでね。 そこでいまの物価問題、それからさっきの公債問題にまたもう一度戻りますけれども、物価問題あるいは通貨価値の安定、そういう問題を勘案して、そうしてその公債発行が当面借り入れ金になるのかあるいは公債という形をとるのか、その公債の場合は日銀かあるいは市中消化か、どういう性質のものか、償還条件、発行条件、いろいろありますが、そんなこまかいことはいいですが、ところが衆議院の予算委員会あるいは大蔵委員会、どれを見てもみんなまちまちで全然私たちははっきり真意を捕捉しがたい。最終確定版を、そのこまかい条件までここで言えと言いませんが、少なくともこれだけ論議されてきてまだいまに至るも暗中模索、何にも知らないんでは私は了承できない。大体どの程度のものを考えておるのか。それは年度内に公債を発行するのか。あるいは借り入れ金でいくのか、あるいは日銀かあるいは市中消化か。あるいは量も。こまかい条件は要りません。少なくとも最終確定版と思われるものをここで出していただかぬと、こんなこといつまで論議しておったって、もう全然意味ないことになる。したがってまず、これをひとつ聞かしていただきたい。
○国務大臣(福田赳夫君) ただいまの見通しといたしましては、本年度の税収の不足、それから補正要因等に対しまして、借り入れ金または公債を出さざるを行ない状況である、さように申し上げます。その借り入れ金にするか公債にするかはまだきめておりません。これは私は先ほど申し上げましたこれからの、ことし出すこの借り入れ金なり公債、これをですね、長期の意味の公債とを区分をしたいという気持ちがあるのであります。と同時に、そういう意味から申しますと、借り入れ金としておけばこれはもうはっきり区分ができるものであります。臨時緊急のものである、こういう区分ができるのでありまするが、しかし、一面において私はことし出すこの公債あるいは借り入れ金といえども、なるべくこれを日銀にしりを持っていかないということに全力を尽くしてみたいという考えを持っているわけです。そういうことから見て、技術的にいいますると、どうも証券の形、つまり公債という形をとったほうがいいような点もあるのであります。そういうものを総合的に考えまして、今度まあ補正予算のお願いをするという時期までに公債にするか借り入れ金にするかということはきめていきたいというふうに存じています。いずれにいたしましても全力を尽くしてこれをしりが日銀にいくことを最小限にとどめたい、こういうふうに存じております。
○羽生三七君 それでも不明確で、実はそれに今度は建設省が、いままでもやってきたことですが、大幅な建設公債の計画を発表しておるでしょう。それらも関連して、一連のこの政策をどうするかということをもっとはっきりしてもらいたかったんですが、これも時間がもうあとちょっとしかなくなっちゃったので、非常に残念でありますが、そこでですね、池田内閣の高度成長政策に対して、佐藤総理は批判者だったわけです。いわば安定成長論者だった。そこでそういうさなかに、こういういろいろな問題が起こってきて、この中期経済計画も書き改めにゃならぬことになる。たとえば公債政策についてはまっこうから反対した意見を述べておりますね。そうでありますし、それから計画も、藤山長官に言わせれば、物価問題等で安定成長路線に乗ってから、初めて中期計画に参与したはりが適当だとこういうでしょう。これは一体どういう意味がありますか。所得倍増計画は、残されますか。中期経済計画は事実上たな上げでしょう。そんなことよりもこの中期経済計画も所得倍増計画も一応だめならだめだと見て、佐藤内閣としての新しい……継ぎはぎだらけのこんなことを幾らやったって、これは追っつきませんよ。だから新しい経済の構想というものを出さなければ、この継ぎはぎではもう追っつかない状況だと思う。これに対して佐藤総理はなおかつ所得倍増計画、中期経済計画、そのままいかれるのか、若干の修正をして。どういうことでありますか。 |
○国務大臣(佐藤榮作君) 過去の経済成長はともかくとして、私ども当面しておる経済状態、これはたいへんに深刻な現象を示しております。したがって、今日これに浮揚力を与えるとか、あるいは過去の萎縮からこれが脱出するように、こういうことをあらゆる努力をただいましておるわけであります。このことが経済の長期計画、いわゆるビジョンを与えるにいたしましても、ただいまの状況、これを克服することに全力を注ぐ。そうしてこの大体克服の状況が、見通しがついたら、こういう際に経済のあり方等についてとくと考えていきたい。これをあり方は私が申し上げるまでもなく、安定成長でございますから、安定成長へ乗せる基調、そうしてそのいろいろのデータその他もそろえていきたい、かように考えます。ただいまいずれにいたしましても、当面する事態に、これと真剣に取り組む、これが一番の問題だと、かように私は考えております。
○羽生三七君 そこで、そういう問題と関連して、とにかく財政法まで改正していく。特例法でいくかそれはわかりませんが、改正して、この非常手段をとるわけですね、それならそれに見合って、生産基準はどの程度になるのか、あるいは先ほど申し上げた物価はどうなるのか、成長率はどうなるのか、それを具体的に、示して目標を達成すべきだと思う。それは経済が流動しておるから捕捉しがたい、当面の政策を追うのに精一ぱいだとおっしゃられますが、国会で予算を審議するわれわれにとっては、その点をなぜ明確にしないのか、そういうことの中で初めて先ほど申し上げましたこのいわゆる長期経済の一つのビジョンといいますか、青写真を出す。佐藤内閣にふさわしいものを、それならそれで、それがわれわれの賛成するところかどうかは別としてそれを出す。それからもっと重大なことは、そうしていまの税収だけでまかなうことができないので、公使を発行するということになるんでしょうが、それならどういう経済政策をとっていけば、何年後にどの時点において初めて均衡財政に戻ることができるのか、公債発行にピリオドを打ってですね、健全均衡財政に戻ることができるのか、そういうものを示さないで、ただいま当面はこうだ、長期はこうだという、それで長期のビジョンも何もないでしょう。こんなことで実際そのつどそのつどまことに、といっては失礼ですが、適当な答弁をされておる。これでは私たちは納得できない。やはり生産水準を幾ばく、物価はどうなるのか、あるいは成長率は何%か、たとえば本年度のように、このままでいけば実質二・六%ですが、刺激政策で四・何%になる。それをまあ安定成長でほぼ七、八%という、そういうものをもっと具体的に示して、そうしていま申し上げた出走水準あるいは物価との通貨価値はどうなるのか、貯蓄心ははたして向上するような状態にあるのかどうか、そういう問題を十分に示して、その結果、あるいは五年とかあるいは十年、そのときに初めて経済は税収だけでまかなえる均衡財政に戻ることができるのかどうか、そういう問題を明確にしないで、全く野方図もない突如として公債論なんか出てきて、それで適当な答弁で当面を糊塗される。これはもう非常に残念です。この点をもっと明確にして――明確って、いまここで成長率何%――まだそれだけの準備がないというのも実をいうと変な話でありますが、それを求めるわけじゃありませんけれども、少なくともそういう問題についての政府の責任あるひとつ御見解を――いつ均衡財政に復元できるか、そういう問題も含めてひとつお示しをいただきたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知のように、いま非常な景気が悪いところでこれを刺激して立て直りをさせなければならぬ。そこで非常に今日の経済界というものは流動をいたしております。私ども先般の対策をきめましたのが七月二十八日でございます。これらの影響等も考えてまいらなければなりませんし、したがって、来年度予算の編成にあたっては公債をどの程度に出すか、今年度の補正予算の場合もございます、そういう時期にはこれはおのおの数字が明確になってまいりますので、そういう時期に正確な将来の資料をそろえましてそうして御審議の御参考にも願うというのが適当だと思うのです。現状においてははなはだ把握しにくい数字、また変化、流動しておる数字ですから、その上に立ちまして、ただ数字だけを並べてみましても必ずしも、それが確実な数字というわけにならぬとなるとかえって後に影響が多いものですから、そういう慎重さをもって私どもとしては計画を考えてまいりたい、こう思っております。
○羽生三七君 数字はいいから総理からひとつ基本的な……。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま藤山企画庁長官から説明いたしましたが、私が先ほどお話しいたしましたように、この経済のあり方は、やはり長期的な一つのビジョンを与えるといいますか、あり方をひとつ考えなければならぬ、これは御指摘のとおりであります。しかしながら、現状自身がただいまこの過度の萎縮からこれを脱出させなければ、ただいまのような計画の数字を話しましてもなかなか乗ってこない状況であります。そういうことで何かと準備をしておるわけでございます。いましばらく時間をかしていただきたい。これはもちろん補正予算を出すとか、あるいは次の予算編成の際にそれをもっとはっきりしたものをお示しするつもりでございます。ただいまちょうどそういうものを検討中、かような状況でございますから、いましばらくお持ちを願いたいと思います。
○羽生三七君 いまの問題は強く要望いたしておきます。 それから続いて、それに関連して、時間がないから簡単にいたしますが、この当面の景気刺激政策という場合に、有効需要の拡大を主としてどこに求めるのか。設備投資はこれは需要が昔から見ろとうんと鎮静してきておりますが、それにしても住宅建設その他いろいろ考えているようですが、主としてどこに有効需要を求めようとするのか。これは民間需要、特に一人消費支出なんかとどういう関連性があるのか。これもこまかい数字は要りませんが、大体として目標はどこにねらっているのか。景気の浮揚力は何に重点を求めるのか。
○国務大臣(福田赳夫君) 住宅、交通、通信あるいは上下水道など、いまのこの経済の落ち込みの状態を考えまして、その落ち込みに対しまして刺激的効果が最も高そうであるという部面を選定いたしましたわけです。したがいまして、まあ住宅費と言いましても、土地をこれから新たに買収するというような費用はこれになるべく含まないというふうにいたしてある次第であります。これが県外にどういうふうに響いているかということにつきましては、これは学説がいろいろあるのでありまして、乗数効果とか、いろいろと言いますが、私は、そういうような考え方で放出します財政投融資の景気浮揚に対する影響は相当これは高度のものである、必ず影響が顕著にあらわれてくる、こういうふうに確信をいたしております。 |
○羽生三七君 そうじゃないのです。私の言うのは、その浮揚力が設備投資中心になるのか、あるいは民間消費、個人消費支出、つまりわれわれが言っておる一般大衆のものに中心が置かれるようなことになるのかどうか。それを言っているのです。 |
○国務大臣(福田赳夫君) これは設備投資に対する影響は非常に少ない、ほとんど皆無だと、こういうふうにいま考えております。まあ住宅言えば、住宅を建てるそのための資材、あるいは鉄道といえば車両でありますとかレールでありますとか、そういうようなものとか、あるいは電信電話につきましては加入個数を相当ふやすことでありますとか、それから郵便局舎をふやしますとか、そういうようなことから大体においてこれは物、商品に直結をしてくるわけでございます。そういう意味から、景気に対する影響は相当のものである、こういうふうに考えております。
○羽生三七君 実はこれでもう私の質問時間は終わるわけで、はなはだ残念なんです。実を言うと、いまの住宅建設についても、一体、土地買収をする、その前に地価対策をどうするか、これに対しては、私は一つの案を持っているのです。有閑住宅を国家管理にして時限立法をつくる。あるいは野菜についても計画生産をする等、具体的な提案をしようと思ってきょう用意してきましたが、あるいは減税の問題、あるいは税収の問題、いろいろ用意してきましたけれども、時間がなくてはなはだ残念でありますが、全体を通じてもう非常に私たちは不満だったと、もっと十分のお答えをいただきたかったということをここで申し上げて、私の質問を終わらしていただきます。(拍手)
○委員長(平島敏夫君) 羽生君の質疑は終了いたしました。 |