ハムラビ法典

 更新日/2021(平成31.5.1栄和改元/栄和3).6.25日

 (れんだいこのショートメッセージ)

 2005.4.10日、2008.5.7日再編集 れんだいこ拝 


 「ウィキペディア(Wikipedia)/ハンムラビ法典」、「ハンムラビ法典」その他参照。
 ハンムラビ法典(ハムラビ法典)は、バビロニアのバビロン第1王朝の第6代目のハンムラビ(ハムラビ)王(在位前1792〜1750年頃、但し異説あり)が王国内の諸民族を統一的に支配するために制定発布した法典。メソポタミア文明の中で先行したウル第3王朝のシュメール法典であるウル・ナンム法典もとにして編纂されており、シュメール法典を受け継ぎ集大成したもとの考えられている。ハンムラビ王がこの法典を作成したのは、周辺諸国を征服し、メソポタミアの統一を再建した治世37年(前1755年)以降のことと考えられ、領域国家を統治する王権の正当性をこの碑文で示したのであろう。 完全な形で残る世界で2番目に古い法典であり「世界最古の法典」とはされない。現存する世界最古の法典は。この碑文を発見して解読したシェイルがハンムラビ「法典」(code des lois)と称したのでその呼称が一般化している。後に石柱に書き写され、バビロンのマルドゥク神殿に置かれた。この法典は、アッカド語で書かれ、楔形文字によって碑文が刻まれている。以後の楔形文字の基本となった。

 「前書き・本文・後書き」の3部構成となっている。本文は婚姻、財産相続、賃貸及び売買などの慣習法を成文化した282条からなり、13条及び66〜99条が失われている。「目には目を、歯には歯を」という同害復讐法の原理のほか、平民と奴隷の厳しい身分の区別、その身分差にる刑罰差などが注目される。また、犯罪が故意に行われたか、過失によるのかによって量刑に差が設けられていた。体系的な法律ではなく、どちらかというと王が実際に下した判決を集めた裁判の手引き書、どちらかというと「判例集」に近い。

 前書きにはハンムラビの業績とこの法典の作成意図が次のように述べられている。
 「そのとき、アヌムとエンリルは、ハンムラビ、……わたしを、国土に正義を顕すために、悪しきもの邪なるもの滅ぼすために、強き者が弱き者を虐げることがないために、太陽のごとく人々の上に輝き出て国土を照らすために、人々の膚(の色つや)を良くするために、召し出された」。

 後書きにはハンムラビの願いが記されている。
 「強者が弱者を損なうことがないために、身寄りのない女児や寡婦に正義を回復するために、……、虐げられた者に正義を回復するために、わたしはわたしの貴重な言葉を私の碑に書き記し」云々。

 1901−02年、J.ド・モルガンらフランスの調査隊によって、閃緑岩(玄武岩)に刻まれた石碑(高さ2.25m)がイランのペルシア帝国時代の古都スサで発見された。本来はバビロンのマルドゥク神殿に置かれていたが、前1150年頃、エラム人の王シュトルク・ナフンテ1世の侵入時に戦利品として持ち去られたと考えられている。現在はパリのルーブル博物館が所蔵し、レプリカを三鷹市の中近東文化センター、岡山市立オリエント美術館でみることができる。

 ヴァンサン・シェイル神父が半年かけて解読し、その結果、それはアッカド語を使用して楔形文字で刻まれたが慣習法を成文化した最古の法典であることが判明した。発見時には大きく三つの塊だったが、現在は一つの完全な石碑に復元されてに収蔵されている。

 モーセの律法書の元になったとみなす学者もいるが、内容的に大きく異なる。アッシリア学研究者ジャン・ボテロの見解では、ハンムラビ法典はバビロニア王ハンムラビの所信表明の意味合いが強いと主張している。根拠は、法典内容と、実際にバビロニアから発掘された粘土板による記録を精査すると、必ずしも法典内容と実際の判決が一致していないことによる。このことからハンムラビ法典の内容そのものは、ハンムラビ王が即位する前後に王としてどのような法改正を行うかを表明したもので、「実際の法改正・司法制度の制定、運用にあたっては法典内容よりも訂正が加えられた」とする意見もある。

 著名な「目には目を、歯には歯を」の記述は、ハンムラビ法典196・197条にあるとされる(旧約聖書、新約聖書の各福音書にも同様の記述がある)。195条に子がその父を打ったときは、その手を切られる、205条に奴隷が自由民の頬をなぐれば耳を切り取られるといった条項もあり、「目には目を」が成立するのはあくまで対等な身分同士の者だけであった。

 ハンムラビ法典の趣旨は犯罪に対して厳罰を加えることを主目的にしてはいない。古代バビロニアは多民族国家であり、当時の世界で最も進んだ文明国家だった。多様な人種が混在する社会を維持するにあたって司法制度は必要不可欠のものであり、基本的に、「何が犯罪行為であるかを明らかにして、その行為に対して刑罰を加える」のは現代の司法制度と同様で、刑罰の軽重を理由として一概に悪法と決めつけることはできない。ハンムラビ法典の内容を精査すると奴隷階級であっても一定の権利を認め、条件によっては奴隷解放を認める条文が存在し、女性の権利(女性の側から離婚する権利や夫と死別した寡婦を擁護する条文)が含まれている。後世のセム系民族の慣習では女性の権利はかなり制限されるのでかなり異例だが、これは「女性の地位が高かったシュメール文明の影響」との意見がある。

 ハンムラビ法典を揶揄する旧約聖書・新約聖書を奉じるヘブライ人は男尊女卑が基本で、レビラト婚などの結婚制度も存在する。「奴隷を行使する権利は神に選ばれた民族だけが有する」といった選民思想に基づいた主張をする宗派も存在する。もちろんこれは古代イスラエルの原始ユダヤ教の教義なので、現代の常識で一概に断じることはできないが、ハンムラビ法典の指向と相反する部分が多々あるのは事実である。ユダヤ人とキリスト教徒がハンムラビ法典と古代バビロニアを批判し続けたのは、宗教的教義に反する政治思想・司法制度が一因と言える。

 現代では、「やられたらやりかえせ」の意味で使われたり、復讐を認める野蛮な規定の典型と解されることが一般的である(イエス・キリストなどがハンムラビ法典を批判している)が、「倍返しのような過剰な報復を禁じ、同等の懲罰にとどめて報復合戦の拡大を防ぐ」すなわち予め犯罪に対応する刑罰の限界を定めること(罪刑法定主義)がこの条文の本来の趣旨であり、刑法学においても近代刑法への歴史的に重要な規定とされている。

 現代人の倫理観や常識をそのまま当てはめることはできないが、結果的にこれらの条文は男女平等や人権擁護と同類の指向を持つ条文である。また犯罪被害者や遺族に対して、加害者側に賠償を命じる条文も存在し、かつ被害の軽重に応じて賠償額(通貨の存在しない物々交換の時代なので、銀を何シェケルという単位だが)まで定めてある。賠償の内容を司法によって定めることの可否については一概に断じることはできないが、現代日本の刑事裁判制度において「犯罪被害者がないがしろにされている」という世論が昂まっている現状と比較しても、古代バビロニアの司法制度は現代人の目から見て見劣りするものではない。また「ハンムラビ法典は太陽神シャマシュからハンムラビ王に授けられた」という形で伝えられるが、特定の宗教的主観に偏った内容ではなく、むしろ宗教色は薄い。身分階級の違いによって刑罰に差がある点は公平と言えないが、当時の社会情勢を鑑みると奴隷制廃止は不可能であり、何らかの形で秩序を定める必要があったことから当然の帰結と言える。但し、身分差別を除いて、人種差別、宗教差別をした条文はみられない。この点に関しては中世ヨーロッパの宗教裁判に比して、遙かに公平と公正さにおいて優れており、先進的と言える。司法の歴史上非常に価値の高いものである。

 あとがきに「強者が弱者を虐げないように、正義が孤児と寡婦とに授けられるように」の文言がある。社会正義を守り弱者救済するのが法の原点であることを世界最初の法典が語っていることは現代においても注目される。


 横溝達志氏所有・提供の資料(原田慶吉氏「楔形文字法の研究」1949,杉勇氏「楔形文字入門1968」。

 中央大学名誉教授の仲田一郎氏が、この法典の完全な日本語訳「ハンムラビ法典」(2002年)を出版。続いて、その本を元にわかりやすくハンムラビ法典を紹介・解説した「メソポタミア文明入門」を著している。同書で仲田さんは、ハンムラビ法典は、弱者保護や不正の排除という社会正義の確立の責務が古代王権にあったとられえ、その実現のために作成されたとしている。そして上述のようなこの法典の特色以外にも、現代法を先取りするような内容を紹介している。例えば、・第22〜24条 人が強盗に遭って、生命を落とした場合、犯人が捕まらない場合でも、事件の発生した市と市長は、被害者の遺族に銀1マナを支払わなければならない。これは現在、日本でようやく議論されるようになった被害者救済法にあたる。・第229条 もし大工が人のために家を建てたが、彼が自分の仕事に万全を期さなかったので、彼の立てた家が倒壊し家の所有者を死なせた場合、その大工は殺されなければならない。この考え方は、日本で1995年に施行された製造物責任法(通称PL法)に通じている。<同書 p.156,158>その他、事細かな結婚に関する規定、平等な遺産相続、寡婦や孤児を救済する意味のあった養子縁組など、細部にわたって社会の弱者の救済を意図する内容を持っていたことが詳しく紹介されている。

 「ハンムラビ法典(推定紀元前1750年バビロニアの法典)全文現代日本語訳」(July 1999 ハムラビ法典現代日本語訳プロジェクト : first release,July 1999 written by t.uraki/all rights reserved)。

 ●前文「要約」

 神々がバビロン市の主権を世界最高のものとして確立した。私ハンムラビ国王は下記の目的で神々から支配権を委任された。  

  • 委任者:
  • アヌム神(最高神)
  • エンリル神(地神)
  • 基本理念:
  • 人々の福祉を増進させる。
  • 目標:
  • バビロン国の中に正義を輝かせる。
  • 悪事や不正を行う人をなくす。
  • 強者が弱者を虐げないようにする。
  • 太陽のように人に恵みを与える。
  • 孤児や寡婦に正義を得させる。
 私ハンムラビ国王は、法律と正義を、以下のようにアッカド語で規定することによって人々の福祉を増進させた。

 条文

 1、もし人が、人に罪を負わせて殺人行為の責任を彼に負わせたのに、彼に確証しなかった時は、彼に罪を負わせた者は殺される。

 2、もし人が、魔術の責任を人に負わせて、彼に確証しなかった時は、彼は河神に行き、潜る。そして河神が彼の罪を捕らえれば、人が彼の家を取る。もし河神が彼を免責して白日の身となった時は、人は殺され、彼は人の家を取る。

 3、もし人が訴訟に於いて犯罪証言の為に出廷し、言った言葉を確証できない時は、もしその訴訟が生命の訴訟の時は、人は殺される。

 4、もし穀物または銀の証言の為に出廷した時は、その訴訟の罰を負わせる。

 5、もし裁判官が判決・裁決を下し、捺印証書を作成し、その後に彼の判決を変更した時は、変更を確証した後に、その訴訟での請求額の12倍とし、かつ彼を会合に於いても裁判官という栄誉ある椅子から追放し、決して元に戻ることも他の裁判官と共に訴訟に加わることもない。

 盗人(このページの先頭へ)

 6、もし人が、神または官廷の物を盗んだ時は殺される。また盗品を彼の手より受け取った者も殺される。

 7、もし人が、銀・金、奴隷・女奴、牛・羊・ロバ、あるいはいかなる物でも、自由人あるいは人の奴隷の手より証人と書面の契約なくして買い、あるいはまた寄託に受け取った時は、その者は盗人であり、殺される。

 8、もし人が、牛・羊・ロバ・豚、あるいは船であっても、これを盗んだ時は、もしそれが神殿や官廷のものである時はその30倍を賠償する。もしそれが臣民ものである時はその10倍を賠償する。もし盗人が賠償出来ない時は殺される。

 9、もし何かを紛失した人がそれを持つ人を取り押さえ、「証人の前で私は買った」と言われ、紛失主も「私の紛失品であることを知る証人を出す」と言い、当事者を各差し出した時は、裁判官は彼らの言葉を検討し、当事者も神の面前で証言する。売主が盗人であり殺される。紛失品の主は彼の紛失品を取り、買主は売り主の家より彼が支払った銀を取る。

 10、もし買主が、売主と売買時の証人を差し出さず、唯一、紛失品の主が、彼の紛失品だと知っている証人を差し出した時は、買主は盗人であり、殺される。紛失品の主は、彼の紛失品を取る。

 11、もし紛失品の主が、彼の紛失品だと知っている証人を差し出せない時は犯罪人であり、中傷行為を働いた者であり、殺される。

 12、もし売主が死亡した時は買主は売主の家からその訴訟の請求額をその5倍取る。

 13、もしその者に彼の証人が近辺にいない時は、裁判官は期間を6カ月まで彼に定め、そして、もし6ケ月内に彼の証人を連れて行かない時は、その者は犯罪人であり、その訴訟の罰を負わせる。

 14、もし人が年少の自由人を盗んだ時は殺される。

 15、もし人が宮廷の奴隷・女奴・臣民の奴隷・女奴について、市の門を立ち去らせた時は殺される。

 16、もし人が逃亡中の奴隷、女奴について、宮廷あるいは臣民の者を、彼の家の中に留め隠して、大告知人の告知にも拘わらず立ち去らせた場合はその家の主は殺される。

 17、もし人が逃亡中の奴隷、女奴について、これを野の中にて取り押さえて、その主にこれを連行した時は銀2シクルを、奴隷の主は彼に払う。

 18、もしその奴隷が彼の主を名指ししない時は、宮廷に彼を連れて行き、その背後に潜む事情が審査され、その後、彼の主に彼を返す。

 19、もしその奴隷を彼の家の中に留め置き、その後奴隷が彼の手の中に取り押さえられた時は、その者は殺される。

 20、もし奴隷が彼の捕らえ人の手から逃げ去った時はその者は奴隷の主に対し、神のもとに誓って放免される。

 21、もし人が家に侵入した時は、彼の進入場所の面前に於いて、彼を殺し、その後、彼を埋める。

 22、もし人が強盗を働いて取り押さえられた時は、その者は殺される。

 23、もし強盗が取り押さえられない時は、強奪された者は、紛失中の彼の何物かを神の前に証明し、その後、自己の地と区域の中で、強盗が働かれた町とその長は紛失中の彼の何物かを彼に賠償する。

 24、もし問題となっているものが生命である時は町とその長は銀1マヌーをその相続人に支払う。

 25、もし人の家に火が焚き付けられて、消火するために赴いた者が家の主の物に目を向けて家の主の物を取った時は、その者はその火の中に投じられる。

 26、もし兵士・捕手が、王の出征に従軍を命じられたものが従軍せず、あるいは賃金労働者を雇って彼の代理人を使わせた場合は、兵士・捕手であっても殺され、彼に賃借されたものは、彼の家を取る。

 27、もし兵士・捕手が、王の武装勤務中に捕虜となった者がいて、彼の原と園を他人に与え、もし彼が帰還した時は、彼の原と園を彼に返して彼が正しく赴く。

 28、もし兵士・捕手が、王の武装勤務中に捕虜となった者がいて、彼の子が赴くことにした時は、原と園が彼に与えられて、彼の父の封を行使する。

 29、もし彼の子が年少で、彼の父の封を行使する能力がない時は、原と園の1/3が彼の母に与えられて、彼の母が彼を養育する。

 30、もし兵士・捕手が、彼の原・園・家を封の負担から投げ出したため、他人が3年占有した時、彼が帰還して返還を請求しても、彼に与えられることはなく、彼の封を行使している者が引き続き封を行使する。

 31、もしただ一年去っていて帰還した時は彼の原・園・家は彼に与えられて彼が正しく彼の封を行使する。

 32、もし兵士・捕手が、王の出征中捕虜となって、商人が彼を彼の町に請け戻した時は、彼の家で出来れば彼が正しく自身を請け戻す。出来ない時は、彼の町の神殿で請け戻す。出来なければ、宮廷が彼を請け戻す。彼の原・園・家は彼の請戻しの為には与えられることはない。

 33、もし上士官・下士官が、賎民を取得し、または、王の出征中に賃金労働者を代理人として受け取って、連れて行った時は、その上士官・下士官は殺される。

 34、もし上士官・下士官が、兵士の物を取り、虐げ、賃金の為に使い、訴訟で強者に寄付し、王が兵士に与える報酬と取った時は、上士官・下士官は殺される。

 35、もし人が、王が兵士に与える牛または、小家畜を兵士の手より買った時は、彼の代償を失う。

 36、もし兵士・捕手・兵役の物である原・園・家は、銀の為に売却されることはない。

 37、もし人が兵士・捕手・兵役の物である原・園・家を買った時は、彼の証書は廃棄され、かつ彼の銀を失い、その原・園・家はその主に帰る。

 38、もし人が兵士・捕手・兵役にある者は、彼の封のものである原・園・家の中から、彼の妻または娘の為に書面の処分を行うことはなく、また彼の債務の為に決して売却されない。

 39、もし彼が買って取得する原・園・家の中から、彼の妻または娘の為に書面の処分を行い、また彼の債務のためにも売却する。

 40、もし尼僧、商人、特別受封者は、彼の原・園・家を銀の為に売却する。買主は買う所の原・園・家の封を行使する。

 41、もし人が兵士・捕手・兵役にある者の物である原・園・家を交換し、かつ補足金を与えた時は、兵士・捕手・兵役にある者は彼の原・園・家に帰り、かつ補足金受領者に与えれれた補助金を取る。

 42、もし人が耕作の為に小作人に原の中に穀物を作せる時は、作業済みの耕作地を彼に確証し、穀物を彼の隣人の割合に従い、原の主に支払う。

 43、もし原を耕作せずに投げ出した時は、穀物を彼の隣人の割合に従って原の主に支払い、かつ彼が投げ出した原に畦を掘り、地をならして原の主に返す。

 44、もし人が未開墾の原を3年間開墾した時は,第4年には原に畦を掘り,耕を使って地をならして,原の主へ返し,かつ1イクーにつき穀物10クールを量る。

 45、もし人が彼の原を地代の為に耕作人に与えて彼の原の地代を受け取り、その後、原に気候の神アダッドが氾濫しあるいは津波が凌いだ時は損害は正しく耕作人のものである。

 46、もし彼の原の地代を受け取らず,収穫の1/2の小作,あるいは1/3の小作の為に彼の原を与えた時は,原で出来た穀物を,耕作人と原の主が割合に従って分配する。

 47、もし耕作人が前年度に於いて彼の採算が取れないとの理由で,他人が原を耕作できるという時は,原の主は拒否できず,新耕作人は彼の原を耕して収穫時に彼の契約に従って穀物を取る。

 48、もし人に利息債務があり,彼の原に気候神アダットが氾濫し、あるいは津波が凌い,あるいは水が無いため穀物が出来なかった時は,その年度分は穀物を彼の利息債務の主に返さず,彼の証書を変更し,加算しない。

 49、もし人が銀を商人より借りて穀物や胡椒の耕作地を与えて、商人に刈り取ってよいと言った時は,収穫時に原の主が正しく取って,商人より借りた彼の銀とその利息分の穀物,並びに耕作の費用を商人に支払う。

 50、もし耕作済の穀物あるいは胡椒の原を与えた時は、出来た穀物あるいは胡椒を原の主が正しく取って,銀とその利息分の穀物,を商人に返す。

 51、もし返済する銀が無い時は、穀物または胡椒を王の価格標準表の文言に従って、商人より借りた彼の銀とその利息に相応する価格関係に従って商人に与える。

 52、もし耕作人が、原で穀物あるいは胡椒が出来なかった時は、商人は彼の契約を変更することがない。

 53、もし人が、原の土手を堅固にすることを投げ出して堅固にせず、その結果彼の土手の中に裂け目が出来て、水が田野を凌わした時は、彼は喪失させた穀物を賠償する。

 54、もし穀物を賠償することが出来ない時は、彼と彼の動産を銀の為に売却して、自分の穀物を水が凌いだマルク団体民は売上代金を分配する。

 55、もし人が彼の溝を灌漑の為に開き、彼の隣人の原に水を凌がせた時は、穀物を彼の隣人の割合に従って量る。

 56、もし人が水を開いて、彼の隣人の原の耕作物を、水を凌がせた時は1イクーに付き、穀物10クールを量る。

 57、もし牧人が、草を小家畜に食べさせるにあたり、原の主と合意しないで行った時は、原の主は彼の原を刈り取り、牧人はその他なお、1イクーに付き穀物20クールを原の主に支払う。

 58、もし小家畜が牧場より脱出して、全畜群が市の門の内部に閉じ込められた後、牧人が小家畜を原に連れて行き小家畜に原を食べさせた時は、牧人は食べさせた原を見守って、収穫時に1イクーに付き、穀物60クールを原の主に量る。

 59、もし人が、園の主の同意なくして、人の園の中にて樹を伐り倒した時は、銀半マヌーを量る。

 60、もし人が、原を園(開墾地)として裁植する為、園丁に与え、園丁が栽植した時は、4年園を成長させ、第5年には園の主と園丁は平等に分配し、園の主は彼の分け前を選択して取る。

 61、もし園丁が、原に栽植するにあたって、全部を成し遂げずに未栽植地を残した時は、未栽植を彼の分け前として彼に置く。

 62、もし彼に与えられた原を園となるように栽植しない時は、もし開墾地である時は、投げ出された年の原の地代を園丁は原の主に彼の隣人の割合に従って量り、かつ原を栽植地に設えて原の主に返す。

 63、もし未開墾地である時は、原を栽植地に設えて原の主に返し、かつ1イクーに付き穀物10クールを1年分として量る。

 64、もし人が、彼の園の園丁に栽植の為に与えた時は、園丁は園を占有している間は園の収穫の中より2/3を園の主に与え、1/3を彼自ら取る。

 65、もし園丁が、園を栽植せずして収穫を減少させた時は、園丁は園の収穫を隣人の土地の割合に従って量る。

 66、もし人が、銀を商人から借りて、商人が督促した時に彼に返す物がなく、栽植済みの彼の園を商人に与えて、生産物を銀の為に運び去りなさい、と言う時は、商人は同意してはならず、生産物は園の主が取り、証書の銀と利息を返済し、残余は園の主が正しく取る。

 67、−70、*欠落により未解読*

  71、もし穀物、銀または動産を、隣人の家の物にして自ら買う所の封の家の為に与える時は、与える物はこれを失い、家はその主に還る。もしその家に封が伴わない時はその家を買い、その家の為に穀物、銀または動産を与える。

 72、−77、*欠落により未解読*

 借家(このページの先頭へ)

 78、もし・・借家人1年分の全家賃を家の主に与えるのにあたり、家の主が借家人に彼の借家日数が満了しない内に移転を申し渡した時は、家の主は、借家人が彼に与えた銀を失う。

 79、−87、*欠落により未解読*

 商人(このページの先頭へ)

 88、もし商人が、穀物を利息債務の為に与えた時は、穀物1クールに付き60クーの利息を取る。もし銀を利息債務の為に与える時は、銀1シクルに付き1/6シクルと6シェの利息を取る。

 89、もし利息債務が有る人が、返済できる銀は無くても、穀物が有る時は、王の価格表に従って商人は彼の利息に・・を取る。

 90、もし商人が違反して1クールに対し60クーの利息あるいは1銀シクルに対し1/6シクルと6シェの利息を超過して取った時は、彼が与えた物を失う。

 91、もし商人が穀物または銀を、利息として取って、銀、穀物・・の全利息を取って・・「その利息である穀物、銀は決して・・」と言った時は、・・。

 92、*欠落により未解読*

 93、もし銀または穀物を受け取った商人が、受け取った金額を控除せずに新契約書を書かず、あるいは利息を元本に付け加えた時は、その商人は彼が取った全穀物を2倍にして返す。

 94、もし商人が、穀物または銀を利息債務の為に与えて、銀を小さな秤石にて、または穀物を小さな桝にて与え、そして受け取った時は、銀を大きな秤石にて、穀物を大きな桝にて受け取った時は、その商人は受け取った物を失う。

 95、*欠落により未解読*

 96、もし人が、穀物または銀を商人より借りて、返済できる穀物または銀が無いが、動産は有る時は、彼の手に有るものを証人の前に運び、商人に与える。商人は決して拒まずに受け取る。

 97、*欠落により未解読*

 98、もし人が人に、銀を組合の為に与えた時は、生じた利益と損失を神の前にて平等に分配する。

 99、*欠落により未解読*

 100、もし赴いた所で利得を発見した時は、取った銀全額の利息を記入し、かつその日数を計算してその商人に返済する。

 101、もし赴いた所で利得を発見出来なかった時は、取った銀を2倍にして営業補助者は商人に与える。

 102、もし商人が営業補助者に銀を好意貸の為に与え、赴いた所で損害を被った時は、銀の元本を無利息にて商人に返す。

 103、もし旅行に赴く途上に、敵がいかなる物でも荷物を投げ出させた時は、営業補助者は神の元に誓って、放免される。

 104、もし商人が営業補助者に、穀物、羊毛、油または何らかの動産を取引の為に与えた時は、営業補助者は銀を記入して、商人に返し、営業補助者は商人に与える銀の捺印受取証書を取る。

 105、もし営業補助者が怠慢にして、商人に与えた銀の捺印受取証書を取らなかった時は、捺印受取証書の無い銀は、計算に決して置かれることがない。

 106、もし営業補助者が銀を商人より取って、商人と争った時は、商人は神と証人の前に於いて、銀の借用について営業補助者に確証し、その後、営業補助者は取った銀総額の3倍を商人に与える。

 107、もし商人が営業補助者に委託し、商人が彼に与えた物を、彼が商人に返した時に争いがある時は、彼は神と証人の前に於いて、商人に確証し、商人は取った物の6倍を彼に与える。

 108、もし居酒屋の女が、酒の代償に穀物を受取らずに大きな秤石で銀を受取り、又は穀物の分量に対する酒の分量を少なくした時は、その女に確証して、その女を水に投げる。

 109、もし居酒屋の女がいて、犯罪人達がその女の家の中に集合したのに、犯罪人達を取り押さえず、宮廷に連れて行かない時は、その居酒屋の女は殺される。

 110、もし尼僧院に滞在中のナディトムまたはエントムの高位の尼僧が、居酒屋を開き、あるいは酒の為に居酒屋に赴いた場合は、その者を焼き殺す。

 111、もし居酒屋の女が60クーのピーフム酒を信用貸に与えた時は、収穫時に於いては穀物50クーを取る。

 112、もし人が旅行中に銀、金、輝石または動産を人に渡して運搬をさせた時、その者が運搬出来るものを運搬しないで、横領した時は、運搬主は、そのことを彼に確証し、その者はその5倍を運搬品の主に支払う。

 113、もし人が人の上に穀物または銀の債権を持っており、穀物の主の同意が無いのに穀倉または貯蔵所より穀物を取った時は、そのことについて彼に確証し、債権者は取りたる全穀物を返し、かつ如何なる物でも得た物は全て失う。

 114、もし人が人の上に、穀物または銀の債権を有していないのに、彼の人質を質に取った場合は、1人の人質につき、銀1/3マヌー支払う。

 115、もし人が人の上に、穀物または銀の債権を有していて、彼の人質を質に取った時に、人質がその質取主の家に於いて、その人質の運命の結果死亡した時は、その場合は請求権は決してない。

 116、もし人質がその質取主の家に於いて、殴打の結果、あるいはまた酷使の結果死亡した時は、質主は彼の商人に確証し、もし人の子の時は、彼の子を殺し、もし人の奴隷の時は銀1/3マヌーを支払い、かつ如何なる物でも得た物は全て失う。

 117、もし人を責任が捕らえて、妻、息子、娘を銀の為に売却し、あるいは質にした時は、3年彼らの買主または彼らの占有主の家にて彼に奉公し、第4年には、彼らの解放が行われる。

 118、もし奴隷あるいは女奴を質にして、商人が期間を経過した時は、銀の為に売却する。彼または彼の女は決して取り戻しを請求されることはない。

 119、もし人を責任が捕らえて、その債務者が、彼に子供を生んだ彼の女奴を、銀の為に売却した時は、商人が支払った銀を女奴の主は支払って、彼の女奴を請け戻す。

 120、もし人が穀物を貯蔵のため、人の家の中に貯め、あるいは家の主が穀倉を開いて穀物を取り、穀物を争って、その為に穀倉に損失が出た時は、穀物の主は、神の前にて彼の穀物を証明し、その後家の主は、取った穀物を2倍にして穀物の主に与える。

 121、もし人が人の家の中に穀物を貯めた時は、年に穀物1クールに付き穀物5クーを穀物の借料として与える。

 122、もし人が人に、銀、金、または如何なる物でもこれを寄託した時は、寄託物はすべて証人に見せ、契約証書を定めて、寄託する。

 123、もし証人と契約証書なしに寄託したのに、寄託した所にて受寄者が彼に否認した時は、その場合は請求権は決してない。

 124、もし人が人に、銀、金、または如何なる物でも証人の前で寄託した時、受寄者が彼に争った時は、寄託者はその者に確証し、その後受寄者は否認した物は2倍にして与える。

 125、もし人が彼の何物かを寄託し、あるいは押え込み、壁穴破りの結果によって、彼の何物かが家の主の何物かと共に紛失した時は、不注意に紛失した家の主は完全に賠償して物の主に返し、紛失中の物を探して彼の盗人より取る。

 126、もし人が何物かが紛失していないのに「紛失している」と言い、彼の門に虚偽の訴えをした場合は、彼の門は神の前に於いて彼に証明し、その後、彼は請求した物の2倍を彼の門に与える。

 (後半に続く)

 ● 後文(要約)

 これらの法文はバビロンの基礎確固である神殿エーサギラに 国の法とし、裁決の為に碑として確固に設置した。 虐げられた者は、記載された碑文を読み、碑文の内容によって 訴訟の見通しや法を彼らに見出させることによって、彼らの心を安心させる。 「ハンムラビこそ、人民の福祉を、人民の為に、永遠に確立することによって、 バビロニア国に正義を得させる」と高らかに声に出して祈るがよい。

 ●前文逐語訳(抄訳)

 崇高なる天上の神々の王であるアヌム神と天地の主であり天命の主催者であるエンリル神が、エア神の長子であるマルドックの神に全人類の運命の決定権を与え、イギギ神等の承認を得てマルドックを偉大な神として、バビロンをその崇高な名で呼び世界の只中にバビロン市の主権を最高のものとして確立した。この時にあたり名声赫々とした大公であり、神々を敬う私ハンムラビに正義を国の中に輝かしめるため、悪者とずるい者を無くす為、人々の福祉を増進させる為にアヌム神とエンリル神は、私ハンムラビに支配権を委ねたもうた。私ハンムランビは牧人であり、エンリル神に天命を受けたもの、あまねく豊富をゆきわたらせるもの、天地の結び目ニップール市の再建者エ・クルルム神殿の名声高い擁護者である。有能な王であり全世界を支配下に置いたもの、バビロンの名声を偉大ならしめた者、主なるマルドックの心にかないし者、偉大なる神に敬虔な祈りを捧げる名声高らかな司、スムラエルの後裔シンムバルリットの強大なる嗣子王朝の永久の礎、強大なる王、バビロンの太陽神にして、光をシュメール国とアッカド国に投げかけるもの、全世界の主権者、イシュタル女神に愛されるものである。・・ 私ハンムラビ国王は、法律と正義を、以下のようにアッカド語で規定することによって人々の福祉を増進させた。

 ● 条文

 127、もし人がエントム(高位の尼僧)または人の妻に対して、貞操に関する悪評をして、確証出来なかった時は、その者を裁判官達の前に連行し、彼の耳を切る。

 128、もし人が妻を娶とって、その女に関する契約書を定めない時は、その女は決して妻では無い。

 129、もし人の妻が他の男と共に横たわっていて取り押さえられた時は、彼らを縛って水に投ずる。もし、妻の主が彼の妻を生かす時は、国王または彼の奴隷(人民は国王に対しては全て奴隷)を生かす。

 130、もし人が人の妻であって男を未だ知らないで、その父の家の中に滞在している者に暴力を加えて、彼の女の膝に横たわった時、彼を取り押さえた時は、その者は殺され、その女は放免される。

 131、もし人の妻がいて、夫が彼の女に疑いをかけたが、他の男と共に横たわるのを取り押さえられなかった場合は、彼の女は神のもとに誓って、彼の女の家に帰る。

 132、もし人の妻がいて、他の男との貞操に関する悪評があるが、他の男と共に横たわるのを取り押さえられ無かった時は、彼の女は彼の夫の為に河神のもとに潜る。

 133(1)、もし人が捕虜となった時、家の中に食べることが出来るものがある時は、彼の妻は・・と彼の女の身を護り、他人の家には決して立ち入ることは無い。

 133(2)、もしその女が女の身を護らずして他人の家に立ち入る時は、その女に確証して、その女を水に投じる。

 134、もし人が捕虜となって、彼の家の中に食べることが出来るものが無い時は、彼の妻は他人の家に立ち入る。その女は決して責は無い。

 135、もし人が捕虜となって、彼の家の中に食べることが出来るものが無い時は、彼の帰還前に、彼の妻が他人の家に立ち入って子供を産み、その後彼の女の夫が帰還して町に到達した時は、彼の女は前配偶者に帰り、子供は彼の父の方に赴く。

 136、もし人が彼の町を投げ捨てて逃亡し、彼の妻が他人の家に立ち入った時は、もしその者が帰還して彼の妻を取り押さえても、逃亡者の妻は、彼の女の夫に決して帰ることは無い。

 137、もし人が子を彼の為に産んだ下級尼僧シユギートム・高位尼僧ナディトムと離別する時は、彼の女の嫁資を返し、原・園・動産の一部を与え、彼の女は子を成長させ、その後、子に与えられる物の中から、一人の相続人に相応する分前を彼の女に与え、その後彼の女は心中の夫を取る。

138、もし人が子と産まない配偶者と離別する時は、彼の女の花嫁代の総額に当る銀を彼の女に与え、彼の女の父の家より持参した嫁資を彼の女に完済して、彼の女と離別する。

 139、もし花嫁代が無かった場合は、銀1マヌーを手切れ金として、彼の女に与える。

 140、もし賎民の場合は銀1/3マヌーを彼の女に与える。

 141、もし人の妻が家を去ろうとして醜態を演じ家を乱雑にし、夫を忽にする時は、彼の女に確証し、もし夫が離別を言い渡すのであれば、離別する。旅費や手切れ金の類は決して彼の女に与えられない。夫が離別を言い渡さない時は、夫は他の女を娶り、前妻は女奴として彼の家に止宿する。

142、もし女が夫を嫌悪して「決して妾を抱いて下さるな」と言う時は、その事情が彼の女の門にて審査され、そしてもし彼の女が身を護れる者で過誤がなく、夫が外出勝であまりに彼の女を忽にした時は彼の女に決して責はない。彼の女の嫁資を取って彼の女の父の家に赴く。

 143、もし彼の女が身を護る者では無く、外出勝で、家を乱雑にし、夫を忽にした時は、その女を水に投じる。

 144、もし人が高位尼僧ナディトムを娶って、そのナディトムが女奴を夫に与え、そしてその女奴が子を産んで、その者を下級尼僧シュギートムを娶ろうとした時は、彼らに決して許すことはなく、彼はシュギートムを決して娶ることは無い。

 145、もし人が高位尼僧ナディトムを娶って、子を儲け無い為、下級尼僧シュギートムを娶ろうとする時は、その者はシュギートムを娶り、彼の家に立ち入る。但しそのシュギートムは正妻と共に決して同格に立つことは無い。

 146、もし人が高位尼僧ナディトムを娶って、そのナディトムが女奴を夫に与え、そしてその女奴が子を産んで、その女奴が彼の女主と共に同格に立つ時は、子を産んだ故に女主は、銀の為に彼の女を売却することなく、ただ奴隷の目印を彼の女に施して、女奴に彼の女を算入する。

147、もしその女奴が子を産まない時は、彼の女の女主は銀の為に彼の女を売却する。

 148、もし人が妻を娶って、ラーブム病が彼の女を捕らえ、他の女を娶ろうとする時は、娶る。しかし、ラームブ病の彼の妻は決して離別することは無い。その女は彼が建てた家に止宿して、生存する間は夫は彼の女を引き取る。

 149、もしその女が彼の夫の家の中に止宿することに同意しない時は、彼は彼の女が父の家から持参した嫁資を彼の女に完済し、その後、彼の女は行く。

 150、もし人が彼の妻に、原・園・家又は動産を賠償し、捺印証書を渡した時は、彼の女の夫の死亡後は、彼の女の子は決して彼の女に取り戻しを請求することが無い。母は彼の女の遺産を愛する彼の女の子に与え、他の兄弟には決して与えることは無い。

 151、もし人の家の女が、夫の利息債権者が彼の女を捕らえる為に夫を契約をもって拘束し、証書を作成させた時は、もし夫がその女を娶る以前に夫に利息債務が有る時は債権者は彼の妻を決して捕らえることが無く、もし女に以前から利息債務がある時は夫は決して捕られることが無い。

 152、もしその女が人の家に立ち入った後に、彼らに利息債務が生じた時は、彼ら両人が証人に返済する。

 153、もし人の妻が他の男の為に、彼の夫を殺させた場合は、彼の女を杭の中に置く。

 154、もし人が彼の娘を知った時は、その者を町から立ち去らせる。

 155、もし人が彼の息の為に花嫁を求婚して彼の息が彼の女を知り、息の父がその後に彼の女の膝の中に横たわって、彼を取り押さえた時は、その者を正しく縛って水に投じる。

 156、もし人が彼の息の為に花嫁を求婚して、彼の息が彼の女を知らないで、息の父が彼の女の膝の中に横たわった時は、銀半マヌーを彼の女に支払い、彼の女が父の家から持参した者を彼の女に完済し、その後彼の女の心中の夫が彼の女を娶る。

 157、もし人が彼の父の死亡後に彼の母の膝の中に横たわった時は、彼ら両人を焼く。

 158、もし人が彼の父の死亡後に彼を成長させた者に対して、子を産んだ者の膝の中で取り押さえられた時は、その者は、父の家から追い出される。

 159、もしその義父の家に結納を持参し、花嫁代を与えた者が他の女に眼を向けて彼の義父に向かって「貴方の娘御は決して娶りません」と言った時は、娘の父は彼に持参されたものを留める。

 160、もしその義父の家に結納を持参し、花嫁代を与えたが、娘の父が「私の娘は決して貴方に差し上げません」と言った時は、娘の父は彼に持参されたものは、総て2倍にして返す。

 161、もしその義父の家に結納を持参し、花嫁代を与えたが、彼の同僚が彼を中傷し、彼の義父が妻の主に「私の娘は決して娶って下さるな」と言った時は、彼の義父は彼に持参された物を総て2倍にして返し、彼の妻を彼の同僚は決して娶ることが無い。

 162、もし人が妻を娶り、子を彼に産み、その後その女が死亡した時は、彼女の嫁資に対して彼の女の父は決して請求することが無い。彼の女の嫁資は、正しく彼の女の子のものである。

 163、もし人が妻を娶り、子を彼に儲けず、その女が死亡した時は、もし彼の義父の家に持参した花嫁代を彼の義父が彼に返した時は、その女の嫁資に対しては彼の女の夫は決して請求することが無い。彼の女の嫁資は、正しく彼の女の父の家の物である。

 164、もし彼の義父が花嫁代を彼に返さない時は、彼の女の嫁資の中から彼の女の花嫁代の全額を控除して、彼の女の嫁資を彼の女の父の家に返す。

 165、もし人が彼の眼に入れた彼の長子に原・園または家屋を贈与し、彼に捺印証書を書いた時は、父の死亡後は、兄弟が遺産を分割するに当っては、父が彼に与えた贈与を取って、その他なお父の家の財産の中より、平等に分割する。

 166、もし人が彼が儲けた子のために妻を娶って、年少の彼の息の為に、未だ妻を娶らない時は、父の死亡後は、兄弟が父の財産の中から分割するに当って、妻を娶っていない年少の弟には、彼の分け前に加えて花嫁代の銀を彼に置いて彼に妻を娶らさせる。

 167、もし人が妻を娶って子を彼に産み、その女が死亡後に他の女を娶って子を産んだ時は、父が死亡した後は子は母別には決して分割することなく、彼らの母達の嫁資は各々取り、父の家の財産は平等に分割する。

 168、もし人が彼の子を追い出そうとして裁判官達に「私の子を追い出します」と言った時は、裁判官達はその事情を審査し、もし子が相続人の地位より追い出すのがよい重大な責が無い時は、父は彼の子を相続人の地位より決して追い出すことがない。

 169、もし子が相続人の地位より追い出すのがよい重大な責を、彼の父に負っている時は、彼らは1度は見送るが、もし重大な責を再度負った時は、父は彼の子を相続人の地位より追い出す。

 170、もし人が、配偶者が子を彼に産み、彼の女奴も子を彼に産んで、父の存命中、女奴が彼に産んだ子に「お前達は私の子である」と言い、配偶者の子に彼らを算入した時は、父の死亡後父の財産から配偶者の子と女奴の子は平等に分割し、相続人である配偶者の子は分前の中からまず選択して取る。

171、もし父が存命中に女奴が産んだ子に「私の子である」と言わなかった時は、父の死亡後、父の財産の中から女奴の子は、配偶者の子と共に決して分割することが無い。その代り、女奴と彼の女の子の解放が行われ、配偶者の子は、女奴の子に対して、奴隷身分へ決して請求することが無く、配偶者は彼の女の嫁資と、彼の女の夫が彼の女に与え、証書の中に彼の女に記した贈物を取って、彼の女の夫の住居の中に、生存する間は用益しても、銀の為に決して売却することが無い。彼の女の遺産は彼の女の子の物である。

 172、もし彼の女の夫が贈物を彼の女に与えない時は、子等は彼の女の嫁資を彼の女に完済し、そして彼の女は彼の女の夫の財産の中より、1人の相続人に相応する分け前を取る。もし彼の女の子が、家より立ち去らせる為に彼の女を罵り勝な時は、裁判官達はその事情を審査して、子に罰を科す。その女は彼の女の夫の家より決して立ち去ることは無い。もしその女が立ち去ろうとする時は、彼の女の夫が彼の女に与えた贈物を彼の女の子に渡し、彼の女の父の家よりの嫁資は、自ら取って彼の女の心中の夫が彼の女を娶る。

 173、もしその女が立ち入った所で彼の女の後の夫に子を産み、その後その女が死亡した時は、彼の女の嫁資は前と後の子が分割する。

 174、もし彼の女の後の夫に子を産まなかった時は、彼の女の嫁資は正しく彼の女の前配偶者の子が取る。

 175、もし宮廷の奴隷、あるいは臣民の奴隷であっても「人の娘」を娶って、その女が子を産んだ時は奴隷の主は「人の娘」の子に対して奴隷身分へ決して請求することは無い。

 176(1)、また、もし宮廷の奴隷、あるいは臣民の奴隷であっても「人の娘」を娶った時、その女が父の家からの嫁資本と共に、宮廷あるいは臣民の奴隷の家に立ち入って彼らが婚姻した後、彼らが家を建て動産を取得し、その後死亡した時は、「人の娘」は彼の女の嫁資を取り、彼の女の夫と彼の女が婚姻した後に取得したものを2個の部分に分割して、半分は奴隷の主が取り、半分は「人の娘」が彼の女の子の為に取る。

 176(2)、もし「人の娘」が嫁資が無い時は彼の女の夫と彼の女が婚姻した後に取得したものを、2個の部分に分割して、半分は奴隷の主が取り、半分は「人の娘」が彼の女の子の為に取る。

 177、もしその子が未だ年少である寡婦が他人の家に立ち入ろうとした時は、裁判官達の同意無しでは決して立ち入ることは無い。他人の家に立ち入るに当っては裁判官達は彼の女の前の夫の家の事情を審査し、その後、彼の女の前の夫の家を彼の女の後の夫と彼の女に託して、彼らに証書を作成させる。彼らは家を護りかつ幼少の子を成長させ、家具類は銀の為に決して売却することは無い。寡婦の子の家具を買う買主は、彼の銀を失い、物はその主に還る。

 178、もし高位の尼僧エントム・ナディトムあるいはジクルムが、父が嫁資を彼の女に贈与し、証書を彼の女に書き、その中で彼の女の遺産を、彼の女の意に沿って与えることは記さず、それを許さなかった時は、父の死亡後は、彼の女の原と園は彼の女の兄弟が取るが、彼の女の分け前額に相応する食料、聖油及び衣服は、彼の女に与え、彼の女の心を満足させる。もし彼の女の兄弟が彼の女の分け前額に相応する食料、聖油及び衣服を彼の女に与えずに、彼の女の心を満足させない時は、彼の女の原及び園を、彼の女にとって意に副った耕作人に与えて、彼の女の耕作人が彼の女を引き取る。原、園及び彼の女の父が彼の女に与えた物は、彼の女が生存する間は用益するが、銀の為に決して売却することなく、決して他人に返済の資に充てることは無い。彼の女の相続分は正しく彼の女の兄弟の物である。

 179、もし高位の尼僧エントム・ナディトムあるいはジクルムが、父が嫁資を彼の女に贈与し、捺印証書を彼の女に書き、その中で彼の女の遺産を、彼の女の意に沿って与えることを記して、それを許した時は、父の死亡後は彼の女の遺産を彼の女にとって意に副った所へ与え、彼の女の兄弟は決して彼の女に取り戻しを請求することが無い。

 180、もし父が、彼の娘である尼僧院のナディトム、あるいはジクルムに嫁資を贈与しなかった時は、父の死亡後は彼の女は父の家の財産より一人の相続人に相応する分け前を分割取得して、生存する間は用益する。彼の女の遺産は正しく彼の女の兄弟の物である。

 181、もし父が、高位の尼僧ナディトム、クワディシュトム、あるいは、ゼルマシュートムを神に奉納し、嫁資を彼の女に贈与しなかった時は、父の死亡後は、父の家の相続財産より、彼の女の相続分の1/3を分割取得して、生存している間は用益する。彼の女の遺産は正しく彼の女の兄弟の物である。

 182、もし父が、バビロンのマルドックのナディトムである彼の娘に嫁資を贈与せず、捺印証書を彼の女に書かない時は、父の死亡後は父の家の財産から、彼の女の相続分の1/3を彼の女の兄弟と共に分割取得するが、彼の女は決して封を行使することは無い。マルドックのナディトムは、彼の女の遺産を彼の女にとって意に副った所へ与える。

 183、もし父が、下級のシュギトムである彼の娘に、嫁資を彼の女に贈与し、夫を彼の女に与え、捺印証書を彼の女に書いた時は、父の死亡後は、父の家の相続財産より、決して分割取得することが無い。

 184、もし父が、下級のシュギトムである彼の娘に、嫁資を彼の女に贈与せず、夫を彼の女に与無かった時は、父の死亡後は、彼の女の兄弟は、父の家の力に相応する嫁資を彼の女に贈与して夫に彼の女を与える。

 185、もし人が、年少者を彼の名の下に子の地位に収養して彼を成長させた時は、その養子は決して取り戻しを請求されることは無い。

 186、もし人が、年少者を子の地位に収養して、彼を収養したその時、彼の父または彼の母を探し求めた時は、その養子は彼の父の家帰る。

 187、もし宮人、宮廷使人の養子及びジクルムの養子は、決して取り戻しを請求されることはない。

 188、もし手芸人の息が、他人の子を養子に収養して彼の手芸を彼に習得させた時は、決して取り戻しを請求されることはない。

 189、もし彼の手芸を、彼に習得させられなかった時は、その養子は彼の父の家に帰る。

 190、もし人が、彼の子の地位に収養して彼を成長させた年少者を彼の子に算入しなかった時は、その養子は彼の父の家に帰る。

 191、もし人が、彼の子の地位に収養して彼を成長させた年少者を、彼の家を建て、その後子を儲けて、養子を追い出そうとした時は、その養子は空手にて出ることは決してない。彼を成長させた養父は、彼の財産の中から彼の相続分の1/3を彼に与え、その後養子は家より出る。原・園または家の中よりは決して彼に与えることは無い。

 192、もし宮人の子あるいはチグルムの子が、彼を成長させた養父または彼を成長させた養母に向かって、「貴方は決して父ではありません」「貴方は決して母ではありません」と言った時は、彼の舌を切り取る。

 193、もし宮人の養子あるいはチグルムの養子が、彼の父の家を見つけて彼を成長させた養父または彼を成長させた養母を嫌悪して彼の父の家に赴いた時は彼の眼を抉る。

 194、もし人が、彼の子を乳母に与え、その子が乳母の手の中で死亡し、乳母は彼の父または彼の母の同意なくして他の子を胸に抱いた時は、彼の女に確証し、彼の女の胸を切り取る。

 195、もし子が彼の父を打った時は、彼の手を切り取る。

 196、もし人が人の息の眼を潰した時は彼の眼を潰す。


法典の内容と特徴

第196条 もし彼(上層自由人)がほかの人(上層自由人)の目を損なったならば、彼は彼の目を損なわなければならない。
第197条 もし彼(上層自由人)がほかの人(上層自由人)の骨を折ったならば、彼は彼の骨を折らなければならない。
第198条 もし彼がほかの人(一般層自由人)の目を損なったか、骨を折ったならば、彼は銀1マナ(約500グラム)を支払わなければならない。
第199条 もし彼がほかの人の奴隷の目を損なったか、骨を折ったならば、彼はその(奴隷の)値段の半額を払わなければならない。
第200条 もし彼(上層自由人)がほかの人(上層自由人)の歯を折ったならば、彼は彼の歯を折らなければならない。
第201条 もし彼がほかの人(一般自由人)の歯を折ったならば、彼は銀三分の一マナ(約

 197、もし人の息の骨を折った時は彼の骨を折る。

 198、もし賎民の眼を潰し、または賎民の骨を折った時は、銀1マヌーを支払う。

 199、もし奴隷の眼を潰し、あるいは人の奴隷の骨を折った時は、その価格の半額を支払う。

 200、もし人が彼と同格の人の歯を落とした時は彼の歯を落とす。

 201、もし賎民の歯を落とした時は、銀1/3マヌーを支払う。

 202、もし人が彼とよりも豪い人の頬を打った時は、民会に於いて牛鞭にて1シュシュム度(60回)打たれる。

 203、もし人の息が彼と同格の人の息の頬を打った場合は銀1マヌーを支払う。

 204、もし賎民が賎民の頬を打った場合は銀10シクルを支払う。

 205、もし人の奴隷が人の息の頬を打った時は彼の耳を切り取る。

 206、もし人が人を喧嘩に於いて打って傷を彼に負わせた時は、その者は「知って彼を打ったのではありません」と誓い、かつ医師にその治療費を弁済する。

 207、もし彼の殴打の結果死亡した場合は、彼は誓ってもし人の息の時は銀半マヌーを支払う。

 208、もし賎民の息の時は銀1/3マヌーを支払う。

 209、もし人が人の娘を打って彼の女の中にある胎児を流産させた時は、銀10シクルを支払う。

 210、もしその女が死亡した時は彼の娘を殺す。

 211、もしムシュケームスの娘を殴打の結果、彼の女の中にある胎児を流産させた時は、銀5シクルを支払う。

 212、もしその女が死亡した時は銀半マヌーを支払う。

 213、もし人の女奴を打って彼の女の中にある胎児を流産させた時は、銀2シクルを支払う。

 214、もしその女奴が死亡した時は銀1/3マヌーを支払う。

 215、もし医師が人に大手術を鉄?の手術メスにより施して人を治療し、あるいは、人の角膜を、鉄?の手術メスで切開して人の眼を治療した時は、銀10シクルを取る。

 216、もし賎民の息の時は銀5シクルを取る。

 217、もし人の奴隷の時は奴隷の主は医師に銀2シクルを与える。

 218、もし医師が人に大手術を鉄?の手術メスにより施して人を死亡させ、あるいは、人の角膜を、鉄?の手術メスで切開して人の眼を潰した時は、彼の手を切り取る。

 219、もし医師が人に大手術を鉄?の手術メスにより施して人を死亡させた時は、その奴隷に相当する奴隷を賠償する。

 220、もし彼の角膜を、鉄?の手術メスで切開して彼の眼を潰した時は、その価格の半分を銀にて支払う。

 221、もし医師が人の折れた骨を治療し、あるいは痛む腫れ物を治療した時は、傷の主は医師に銀5シクルを与える。

 222、もし賎民の息である時は銀3シクルを与える。

 223、もし人の奴隷である時は奴隷の主は医師に銀2シクルを与える。

 224、もし牛あるいは馬の医師が牛あるいは馬に大手術を鉄?の手術メスにより施して治療した時は、牛あるいは馬の主は銀1/6シクルを医師に謝礼として与える。

 225、もし牛あるいは馬に大手術を鉄?の手術メスにより施して死亡した時は、その値の1/5を牛あるいは馬の主に与える。

 226、もし理髪師が、奴隷の主の同意なくして自己に属さない奴隷の目印を剃り落とした時は、その理髪師の手を切り取る。

 227、もし人が、理髪師を欺いて自己に属さない奴隷の目印を剃り落とした時は、その者を殺して彼の門の中に彼を埋め、理髪師は「知って剃り落としたのではありません」と誓って放免される。

 228、もし大工が、家を人の為に建てて完成した時は、家の敷地1サルに付き銀2シクルを彼の報酬として彼に与える。

 229、もし大工が、家を人の為に建てて、彼の仕事を堅固にせず、その為建てた家が倒れて家の主を死亡させた時はその大工は殺される。

 230、もし家の主の子を死亡させた時はその大工の子を殺す。

 231、もし家の主の奴隷を死亡させた時は奴隷に相当する奴隷を家の主に与える。

 232、もし物を滅失させた時は、滅失させたものを賠償し、かつ、建てた家を堅固にせず、その為に倒れた故に、彼自身の物で倒れた家を立て直す。

 233、もし大工が、家を人の為に建てて、彼の仕事を完全に成し遂げず、その為に壁が倒れ落ちた時はその大工は自己自身の銀によってその壁を堅固にする。

 234、もし船大工が、60クールの船を人の為に建造した時は、銀2シクルを彼の報酬として彼に与える。

 235、もし船大工が、60クールの船を人の為に建造し、彼の仕事を信用できる程には行わず、その為その年にその船が破損して、故障が生じた場合は、船大工はその船を解体して彼自身の物によって堅固に直し、そして強固な船を船の主に与える。

 236、もし人が、彼の船を船頭に、賃借料の為に賃借し、船頭の不注意のために船を沈め、あるいは喪失した時は、船頭は船を船の主に賠償する。

 237、もし人が、船頭と船を賃借して、穀物、羊毛、油、ナツメヤシまたは積むことが出来るものを積みいれて、船頭の不注意で船を沈め、その中にある積み荷を喪失させた時は、船頭は彼が沈めた船と喪失した積み荷を賠償する。

 238、もし船頭が、人の船を沈め、その後これを浮揚させた時は、その値の半分を銀にて与える。

 239、もし人が、船頭を賃借した時は、穀物6クールを年に彼に与える。

 240、もし櫂船が、帆船に衝突して沈没した時は、沈んだ船の主は、船の中に喪失したものを神の前に於いて証明し、その後帆船を沈めた櫂船の主は、彼の船と喪失した彼の物を賠償する。

 241、もし人が牛を質に取った時は、銀1/3マヌーを支払う。

 242、もし人が一年間賃借した時は、軌畜の借料として、穀物4クール。

 243、もし・・牛の借料として、穀物3クールをその主に与える。

 244、もし人が牛馬を賃借して、野の中にて獅子がそれを殺した時は、損害は正しくその主に。

 245、もし人が牛を賃借して、不注意の結果、あるいは殴打の結果、死亡させた時は、その牛に相当する牛を牛の主に賠償する。

 246、もし人が牛を賃借して、その足を折り、あるいは首筋の腱を切り取った時は、その牛に相当する牛を牛の主に賠償する。

 247、もし人が牛を賃借して、その眼を潰した時は、その値の半分を銀で牛の主に賠償する。

 248、もし人が牛を賃借して、その角を折り、尾を切り取り、あるいは鼻輪の所の肉を引き千切った時は、その値の1/5を銀で与える。

 249、もし人が牛を賃借して、神がこれを打って死亡した時は、牛を賃借した者は、神の下に誓って放免させられる。

 250、もし牛が道路を通行中人を突いて死亡させた時は、その場合は請求権は決してない。

 251、もし人の牛が突く癖があって突く癖があることを彼の門が彼に知らせたのにその角を短く切らず、その牛を繋がず、その為にその牛が人の息を突いて死亡させた時は、銀半マヌーを与える。

 252、もし人の奴隷である時は銀1/3マヌーを与える。

 253、もし人が人を、彼の原の面前に原の番をする為に賃借して、農具を彼に託し、牛を彼に託し、原の耕作に対して彼を拘束し、もしその者が種子あるいは飼料をぬすんで、彼の手の中に取り押さえられた時は、彼の手を切り取る。

254、もし農具を取って牛を弱らせた時は、取った穀物の・・を賠償する。

 255、もし人の牛を賃借料の為に賃借し、あるいは種子を盗んで、原の中に何物も生じさせなかった時は、その者に確証し、その後収穫時に、彼は1イクーにつき穀物60クールを量る。

 256、もしその義務を返済することが出来ない時は、その原の中で牛にて彼も引き摺る。

 257、もし人が耕作人を賃貸した時は穀物8クールを1年に彼に与える。

 258、もし人が牛番を賃借した時は、穀物6クールを1年に彼に与える。

 259、もし人が鋤を田野の中で盗んだ時は、銀5シクルを鋤の主に与える。

 260、もし・・鋤あるいは杷を盗んだ時は銀3シクルを与える。

 261、もし人が番人を牛または小家畜の飼育の為に賃借した時は、穀物8クールを1年に彼に与える。

 262、もし人が牛あるいは羊の・・の為に・・

 263、もし彼に与えられた牛、あるいは羊を喪失させた時は、その牛に相当する牛、その羊に相当する羊を彼等の主に賠償する。

 264、もし牛あるいは小家畜が飼育の為に自己に与えられた牧人が、彼の給料を全部受領し、彼の心は満足して、牛を少数にし、小家畜を少数にして、産まれる子を減少させた時は、彼の契約の文言に従って産まれた子と家畜の増殖を与える。

 265、もし牛あるいは小家畜が飼育の為に自己に与えられた牧人が、不正直にして、家畜の目印を変更して銀の為に売却した時は、彼に確証し、その後牧人は盗んだものをその10倍、牛または小家畜を彼等の主に賠償する。

 266、もし畜舎の中に神の崇り(伝染病)が発生し、あるいは獅子が殺した時は、牧人は神の前にて免責の誓い?を立て、その後畜舎の中に倒れた家畜を畜舎の主が彼より受取る。

 267、もし牧人が不注意で畜舎の中に麻痺病を発生させた時は、牧人は畜舎の中に発生した麻痺病の損害を完全に賠償して牛または小家畜を彼等の主に与える。

 268、もし人が牛を打穀の為に賃借した時は、穀物20クーがその借料。

 269、もし馬を打穀の為に賃借した時は、穀物10クーがその借料。

 270、もし小家畜を打穀の為に賃借した時は、穀物1クーがその借料。

 271、もし人が牛、荷車及びこれを運ぶ者を賃借した時は、1日に穀物180クーを与える。

 272、もし人が実?に荷車を賃借した時は1日に穀物40クーを与える。

 273、もし人が賃金労働者を賃借した時は、年の初めより第5月迄は銀6シェを1日に与え、第6月より年の終わり迄は銀5シェを1日に与える。

 274、もし人が手芸人の息を賃借する時は、・・の給料として銀5シェ、煉瓦師の給料の時は銀5シェ、麻織人の給料としては銀?シェ、印業者の給料としては銀?シェ、宝石細工人の給料としては銀?シェ、鍛冶工の給料としては銀?シェ、指物師の給料としては銀4シェ、皮職人の給料としては銀?シェ、葦細工人の給料としては銀?シェ、大工の給料としては銀?シェを一日に与える。

 275、もし人が大船を賃借した時は、1日に銀3シェがその借料。

 276、もし櫂船を賃借した時は、1日に銀2シェ半がその借料。

 277、もし人が60クールの船を賃借した時は1日に銀1/6をその借料として与える。

 278、もし人が奴隷女奴を買って、その月が未だ満了しないのにベンヌム病(癇癪病?)が彼の上に襲った時は、彼の売主に返して、買主は支払った銀を取る。

 279、もし人が奴隷女奴を買って、取り戻しの請求を受けた時は、彼の売主は取り戻しの請求を満足させる。

 280、もし人が敵国(外国)において人の奴隷女奴を買って、その奴隷女奴がバビロン国の内部に赴いて、奴隷女奴の以前の主が、彼の奴隷女奴を認めた時は、もしその奴隷女奴がバビロン国人である時は、銀が無くても解放が行われる。

 281、もし他国人の時は、買主は神の前に於いて、支払った銀を告げ、その後、奴隷女奴の以前の主は、支払った銀を商人に与えて彼の奴隷女奴を請け戻す。

 282、もし奴隷が彼の主に向かって「貴方は決して私の主人ではありません」と言った時は、彼に彼の奴隷となることを確証して、彼の主は彼の耳を切り取る。

 ● 後文(要約)

 これらの法文はバビロンの基礎確固である神殿エーサギラに 国の法とし、裁決の為に碑として確固に設置した。 虐げられた者は、記載された碑文を読み、碑文の内容によって 訴訟の見通しや法を彼らに見出させることによって、彼らの心を安心させる。 「ハンムラビこそ、人民の福祉を、人民の為に、永遠に確立することによって、 バビロニア国に正義を得させる」と高らかに声に出して祈るがよい。


【「目には目を歯には歯を」の二重基準考】
 ここで、「目には目を歯には歯を、の二重基準考」をものしておく。ハムラビ法典の「目には目を歯には歯をの復讐刑罰」が不正確に流布されているので、本稿でこれを正しておく。
 「山口先生:「正義」の源流Vol.4:なぜハムラビ法典は復讐法と言われるようになったのか?」、「ハンムラビ法典のありがちな誤用」、「「目には目を、歯には歯を」の本当の意味」、「目には目を歯には歯を、の本当の意味」その他を参照する。

 ハムラビ法典は、バビロニアのバビロン第1王朝の第6代目のハムラビ王(在位前1792−1750年頃、但し異説あり)が王国内の諸民族を統一的に支配するために制定発布した法典である。メソポタミア文明の中で先行したウル第3王朝のシュメール法典のウル・ナンム法典を元にして編纂されており、シュメール法典を受け継ぎ集大成したもとの考えられている。ハムラビ王がこの法典を作成したのは、周辺諸国を征服しメソポタミアの統一を再建した治世37年(前1755年)以降のことと考えられている。当初はバビロンのマルドゥク神殿に置かれた。楔形文字のアッカド語で書かれている。 完全な形で残る法典としては「世界最古の法典」ではなく世界で2番目に古い。これが石柱に書き写されて碑文として遺され、この碑文を発見して解読したシェイルがハムラビ法典(code des lois)と称したのでその呼称が一般化している。

 ハムラビ法典は「前書き・本文・後書き」の3部構成となっている。本文は婚姻、財産相続、賃貸及び売買などの慣習法を成文化した282条からなり、13条及び66〜99条が失われている。そのハムラビ法典第196条が「目には目を」、第197条が「骨には骨を」、第200条が「歯には歯を」の等価罰を規定している。

 他方、ユダヤ教聖書(旧約聖書)の出エジプト記・21章23−25節の「人の争いが、身ごもった女に害を与えた場合についての条項」が次のように記している。「命には命を与えなければならない。目には目。歯には歯。手には手。足には足。(「Eye for eye, tooth for tooth, hand for hand, foot for foot」) やけどにはやけど。傷には傷。打ち傷には打ち傷」(新改訳聖書第3版)。これは、いわゆる「モーゼ律法」の一つである。

 ハムラビ法典とユダヤ教聖書(旧約聖書)は共に「目には目を歯には歯を」を規定している。この規定は、法哲学的には「同害復讐の規定=復讐法」と云われている。一見、両者とも同一文言のように見えるが、事実は逆で、その法哲学には天地の差があるように思われる。ここの違いを曖昧にしておいてはならないと判ずる故に本稿をものしておく。

  ハムラビ法典のそれは犯罪と刑罰の等価性に重きを置いている。これに接続する延々たるその他の規定(198条、199条、201条以下282条まで)は、犯罪と刑罰ではなく、犯罪と弁償の等価性に重きを置いている。これより推理すれば、ハムラビ法典の刑罰は、報復主義を煽るものではなく、むしろ逆に報復主義を抑制していると窺うべきであろう。

 これに比して、ユダヤ教聖書(旧約聖書)のそれは報復主義を煽るものになっているところに著しい違いがある。但し、それが「モーゼ律法」の範疇であれば抑制的にされている。これを確認するのに、レビ記19章(新改訳聖書第3版)は次のように記している。
 「不正な裁判をしてはならない。 弱い者におもねり、また強い者にへつらってはならない。あなたの隣人(となりびと)を正しく裁かなければならない」(15節)。
 「復讐してはならない。 あなたの国の人々を恨んではならない。あなたの隣人(となりびと)をあなた自身のように愛しなさい。私は主である」。(18節)

 上記のレビ記文は「モーゼ律法」の法哲学に、そしてそれはハムラビ法典のそれに通底している。ところが、ユダヤ教内では「モーゼ律法」を廻る角逐が凄まじく、その対立は現代まで続いている。近代以降、現代に至るまで優勢なのは反「モーゼ律法」派であり、歴史的にはパリサイ派の系譜に繋がるタルムード派である。このタルムード派がネオシオニズム派として登場して威勢を振るっている。この連中の「目には目を歯には歯を」は、等価刑罰ではなく、「やられたらやり返す、倍返しこそ正義」とする報復主義を煽るものになっている。同じ法文でも、これを操る者(権力)によって意味するものが異なってくる事例である。これの論証は長々となるので本稿では省く。

 他方、ハムラビ法典の等価罰思想は、それを更に平和主義的に緩める方向で継承されている。そういう意味で、ハムラビ法典は現代にも生きている。その一つがキリスト教精神である。新約聖書のマタイ福音書5章38−39節は次のように記している。
 「あなたがたも聞いているとおり、『目には目で、歯には歯で』とする法がある。しかし、私は言っておきます。悪しき者に手向かってはなりません。悪人に報復に向かってはなりません。あなたの右の頬を打つような者には左の頬も差し出しなさい」。

 マタイ福音書22章34−40節は次のように記している。
 「 パリサイ人たちは、イエスがサドカイ人たちを黙らせたと聞いて集まった。そして、彼らのうちの一人の律法の専門家が、イエスを試そうとして尋ねた。『師よ、律法の中で大切な戒めは何ですか』。イエスは彼に言われた。『心を尽し、思いを尽し、知力を尽して、あなたの神である主を愛することです。これが大切な第一の戒めです。あなたの隣人(となりびと)をあなた自身のように愛しなさい、という第二の戒めもそれと同じように大切です。律法全体と預言者とが、この二つの戒めにかかっているのです』」。

 他にも次のように宣べられている。
 「あなたがたに新しい戒めを与えましょう。互いに愛し合いなさい。私があなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。もし互いの間に愛があるなら、それによってあなたがたが私の弟子であることを全ての人が認めるのです」(新改訳聖書第3版、ヨハネ福音書13章34−35節)。
 「私があなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合うこと。これが私の願いです」(ヨハネ福音書15章12節)。
 「あなたがたが互いに愛し合うこと。これが、私のあなたがたに与える願いです」(ヨハネの福音書15章17節)。

 かく、イエスは、恨みの再生産を断ち切る正義を説いた。それは、ユダヤ教がモーゼ律法の範疇に納まっていた限りに於いては目立たなかったが、パリサイ派による革新運動としての反モーゼ律法化によるタルムード的変質を経ての復讐報復主義が打ち出されるに及び、これと敢然と対立せしめるアンチテーゼとなった。これが、ユダヤ教の「復讐主義」、キリスト教の「愛の宗教」と云われているところの原基である。イエスの磔(はりつけ)刑の真因は、この思想的対立の根深さ即ち不倶戴天性に関係している、と私は理解している。

 もとへ。ハムラビ法典の等価罰思想を更に平和主義的に緩める方向の営為は何もキリスト教だけの教義ではない。これを仏教で見れば、ブッダは法句経の中でこう語っている。
 「私をののしった、私を笑った、私を打ったと思う者には、怨みは鎮まることがない。怨みは怨みによって果たされず、忍を行じてのみ、よく怨みを解くことを得る。これ不変の真理なり」。

 日本神道然り。「大払いの祝詞(のりと)」は次のように宣誓している。
 「かく宣(の)らば、天つ神は天の磐門(いわと)を押しひらきて、天の八重雲を伊頭(いず)の千別(ちわ)きに千別きて聞こしめさむ。国つ神は高山の末、短山の末に上りまして、高山の伊褒理(いほり)、短山の伊褒理をかき別(わ)けて聞こしめさむ。かく聞こしめしてば罪と言ふ罪はあらじと。(中略)かくさすらひ失ひてば罪という罪はあらじと。祓へ給ひ清め給ふことを、天つ神、国つ神、八百万神等共に聞こしめせと白す」。

 他にも無数に挙げることができよう。

 してみれば、同じ法文「目には目を歯には歯を」に立脚しながら、これを報復主義に接続させるのは、世界広しと云えど国際ユダ邪派(国際金融資本ネオシオニズム派)だけであり、そり他の諸民族、諸思想は概ね、何とかして報復主義の悪の連鎖から逃れる救済基準を創り出そうとして営為していることが分かる。これが真っ当なものであろう。

 ところが、人類史は、国際ユダ邪派の方に覇権を握られたので、以降、報復主義の悪の連鎖を強める方向にばかり世界史が動かされることになって今日に至っている。しかし、彼らの悪業も、核爆発科学を生み出し、そこへ行き着くすことにより自滅の道へ乗り出したように見える。問題は、彼らは彼ら自身から立ち退きはしないことにある。要するに往生際が悪い。そこで、その彼らを退かす智の力が必要になる。これが今、彼ら以外の人類に課せられている歴史頭脳ではなかろうか。




(私論.私見)