【被告】
被告(ひこく、Defendant)とは、一般的には訴訟における訴えを起こされた側の当事者を言い、【原告】に対する言葉である。日本法上は、民事訴訟においてその名において訴えを提起された者をいい、第一審でのみ用いられる。
マスコミにおける誤用 [編集]
刑事訴訟において罪を犯したとして訴追されている当事者は「被告人」であり、これを「被告」と呼ぶのは法律用語として正しくない(刑事訴訟における広い意味での原告は原則として検察官であり、これを「原告」と呼ぶのは正しくないのと同様である)。実際、刑事訴訟では「被告」という言葉は使われない。ただし、日本における報道などにおける用法として、公訴を提起(起訴)された被告人をして「被告」と呼ぶ例が広く見られる。被告という用語そのものについては、本来、訴えを起こされた側の当事者という意味しかないものの、上記用法における印象との混同ゆえか、民事訴訟において本人訴訟の被告が「俺は何も悪いことはしていない」「不名誉だ」などと怒ることがしばしばある。
脚注 [編集]
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控訴審(第2審)では【控訴人】・【被控訴人】、上告審(第3審)では【上告人】・【被上告人】を用いる。原審で敗訴した者が控訴・上告するので、第1審の原告・被告いずれが控訴審などでどちらにあたるか決まっているわけではない。
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【被告人】(ひこくにん)とは、犯罪の嫌疑を受けて公訴を提起(起訴)された者をいう。被告人は、日本を含む英米法系刑事訴訟においては、原告である検察官と並び、その相手方たる当事者として位置付けられている。なお、被告とは民事裁判において訴えを提起された者のことを指し、「被告人」と「被告」は異なる用語である。
目次 [非表示]
1 概要
2 推定無罪
3 被告人の権利自由
4 歴史
5 マスコミによる用法
6 関連項目
概要
[編集]
被告人は、捜査機関によって犯罪の嫌疑を受け、検察官によって公訴提起をされた者であり、刑事裁判の審判対象となっている者である。犯罪の嫌疑を受け捜査の対象になっていながら未だ公訴の提起を受けていない者を「被疑者」という。現在の日本の刑事訴訟法においては、検察官と被告人は対等の当事者である。もっとも、当事者ではあるものの、原則として挙証責任を負うことはない。これに関連し、捜査段階における黙秘権、公判廷における自己負罪拒否特権が重要な憲法(同第38条)上の権利として与えられている。また、対等とはいえ、現実の法的な攻撃防御能力には大きな差があるため、弁護人を選任することが認められ、必要的弁護事件においては弁護人が必ず選任される。なお、被告人は勾留されている場合があるが、必ずしも身体的拘束を受けているとは限らず、勾留されていない場合もある。勾留された被告人をはじめ、被逮捕者、被勾留者等を総称して未決拘禁者(みけつこうきんしゃ)と呼ぶ。また、勾留されずに起訴された場合、「在宅起訴」と呼ばれる。
推定無罪 [編集]
被告人は、犯罪の嫌疑を受けている者であるが、法的には未だ無罪の推定が働いている存在である。詳しくは推定無罪の項目を参照。
被告人の権利自由 [編集]
被告人は、無罪の推定が働いているため、原則としては自由な存在である。しかし、刑事裁判の当事者であることから、一定の範囲で権利・自由に制限が課せられることがある。罪証隠滅や逃亡のおそれのある者については、裁判官の命令又は裁判所の決定により、勾留がなされる。未決拘禁者の場合、逃亡及び罪証隠滅の防止の目的から拘束され身体・行動の自由に大幅な制限が加えられている。外部の者との信書の発受や面会に制限が加えられることもある。また、他罪で逮捕・勾留されている場合の接見指定など捜査のために制限される場合もある。逮捕・勾留されず在宅起訴を受けた被告人や、逮捕・勾留されたが保釈された被告人は、身体を拘束されていないことから自宅においては自由に活動できるなど、未決拘禁者に比べ権利・自由への制限は小さい。しかし、裁判に出頭しなければならず、逃亡及び罪証隠滅が許されないのは当然である。また、旅行の自由等も制限される。
歴史 [編集]
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マスコミによる用法 [編集]
マスコミ用語では「被告」と呼ばれるが、これは元来、民事裁判においてのみ用いられる用語である。マスコミが敢えて法令上の用語に反する用語を用いる理由は不明である。昭和40年代(1960年代後半〜70年代前半)では起訴された刑事被告人に対してNHKを含めたほぼ全部のマスコミが苗字の呼び捨て(氏など当然付けず)であったが、人権意識の高まりで昭和50年代(1970年代後半〜80年代前半)には苗字呼び捨てを避ける苦肉の策としてこの被告が用いられ始めて現代に至る。当然、法曹関係者からは法律用語の誤用であるとたびたび批判されている。字数の節約ともテレビ・ラジオ等の音声メディアにおいて「非国民」と聴こえてしまうため、とも言われる。マスコミが刑事裁判の被告人と民事裁判の被告を同じ「被告」で表記する結果、民事裁判で訴えられた者が「被告」と呼ばれ、「犯罪者と一緒にするな」と激怒するという悪しき副作用が生じている。
関連項目 [編集]
プロジェクト 刑法 (犯罪)
ウィキブックスに刑事訴訟法関連の解説書・教科書があります。
被疑者
推定無罪
起訴独占主義
国家訴追主義
挙証責任
起訴状一本主義
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【控訴】(こうそ)とは、第一審の判決に対して不服がある場合に、上級の裁判所に対してその判決の確定を遮断して新たな判決を求める不服申立てをいう。上訴[1]の一つ。
目次 [非表示]
1 概説
2 日本の場合
2.1 実態
3 正式な裁判以外の控訴
4 脚注
5 関連項目
概説 [編集]
日本法など大陸法系訴訟法においてみられる概念であり、控訴審判決に不服がある場合にさらになされる不服申立てである上告とは厳密に区別される。
日本の場合 [編集]
日本法においては、裁判所法16条1号、24条3号、民事訴訟法281条以下、刑事訴訟法372条以下に規定がある。
民事訴訟の場合
一般に、第一審が簡易裁判所であれば地方裁判所に、第一審が地方裁判所又は家庭裁判所であれば高等裁判所に控訴することができる(民事訴訟法281条、裁判所法16条1号・24条3号)。控訴の提起は民事訴訟法281条により1審の終局判決に対してすることができる。控訴期間は、判決書の送達を受けてから2週間の不変期間である(民事訴訟法285条)。この期間内に、控訴審を担当する裁判所(控訴裁判所)宛ての控訴状を、第一審の裁判所に提出して、控訴の提起をする。控訴状に、控訴の理由が記載されていない場合は、控訴状提出から50日以内に、控訴理由書を提出する(民事訴訟規則182条。もっとも、理由書の提出が期間に遅れても、316条1項2号で却下理由となる上告理由書と異なり、287条が却下理由とはしていないため、受理してくれる場合もある[2])。
刑事訴訟の場合
被告人または検察官が控訴することができる(刑事訴訟法351条)。また、第一審における弁護人、被告人の法定代理人・保佐人も、被告人のために控訴することができる(刑事訴訟法355条・353条)。通常の控訴審は、高等裁判所が担当する(裁判所法16条1号)。控訴期間は、判決の言渡しを受けてから14日間である(刑事訴訟法373条)。この期間内に、控訴審を担当する裁判所(控訴裁判所)宛ての控訴申立書を、第一審の裁判所に提出して、控訴の提起をする(刑事訴訟法374条)。さらに、控訴申立人は、提出期限(通知の翌日から21日以後の日で、控訴裁判所が定めた日)までに、控訴趣意書を提出する(刑事訴訟法376条、刑事訴訟規則236条)。期間経過後の提出である場合は、控訴棄却の決定がなされる(刑事訴訟法386条1項1号)[3]。ただし、期限後の提出がやむを得ない事情に基づくと認められる場合は、期間内に提出したものと取り扱うことができる(刑事訴訟規則238条)。
実態 [編集]
一般に、高等裁判所は多数の事件を抱えて多忙であることが多い。民事訴訟の場合、控訴しても1回で結審してしまい、原審通りの判決が出される割合が7割程度といわれている。特に、刑事訴訟では、「やむを得ない事由によって第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかった」場合でない限り、新しい証拠を取調べないという刑事訴訟法382条の2、393条第1項を厳格に適用し、被告人の証拠申請を全て却下する一方で、検察官の証拠申請は認めるという不公平な取り扱いがあるともいわれている[4]。