その7-1 謀略・調略考

 左派のお人好し傾向というのか低脳というのか、組織内への「謀略・調略」の潜り込みについて赤ん坊の如く無知である。民主集中制的組織論の検証無き忠誠論理がこれを補完しているのかも知れない。れんだいこはたまたま歴史好きだったので、あまりにものっぺら棒な左派組織論に違和感を覚え割合早く決別した。しかし、特段本稿テーマで考察することも無く過ごしてきた。しかし、野坂論、宮顕論、不破論を書き上げていくうちに「謀略・調略論」のサイト化の必要性を感じ始めた。

 そのきっかけは、「たすきがけ買収 」であった。読んでみるのに、戦後日本の非武装論については全く考え方が異なるが、それはそれとして非常に為になる指摘が為されており有り難かった。読み捨てておくのは惜しいので一部取り込みさせていただく。いずれ、れんだいこ風に纏めるつもりですのでご容赦賜わります。

 2002.11.2日れんだいこ拝


●裏切り・調略は世のならい

 NHKの大河ドラマ『毛利元就』で、なかなかいい例をやっていたので、ご覧にならなかった読者のために紹介する(6月22日、29日、7月6日放映)。戦国時代中期(16世紀半ば)、山陰の戦国大名尼子氏の尼子経久・晴久は、山陽の戦国大名毛利元就・大内義隆らの連合軍の攻撃を予期して、毛利方に尼子の懐刀、吉川経興を送り込み、「二重スパイ」のようなことをやらせるのである。尼子軍は数において、毛利・大内連合軍にかなわない。そこで、吉川を毛利に送り込んで、撹乱する策を取るのである。

 吉川は毛利方に参陣するや「忠誠心」を示すため、尼子との戦いの緒戦においては積極果敢に尖兵を務め、なんと(本来味方であるはずの)尼子の兵(雑兵)を何人も斬り殺して戦果をあげる。それを見て毛利・大内陣営は吉川をすっかり信頼するようになり、吉川を含む大軍をもって尼子の本国に攻め込み、決戦を挑む。ところが、いざ決戦という土壇場になって吉川軍は敵陣であるはずの尼子陣に駆け込み、攻撃ではなく、「合流」をしてしまうのである。

 突然、毛利・大内連合軍の戦力は激減する。ショックを受けた連合軍はパニックを起こし、そこを満を持していた尼子軍に攻められ、ぶざまに敗走する、というストーリーである。

 もちろん、ドラマだから、すべて正確な史実ではないかもしれない。が、これは、「買収」「調略」という政治的行為の本質をよく表している。敵と味方の関係は、けっして単純なものではないのだ。

 毛利元就や豊臣秀吉の時代から、「買収」「調略」とは、敵の陣営の中にひそかに味方をこしらえておくためにするものだ。秀吉は織田信長の家臣としてこの調略を得意とし、信長の敵を次々に買収して味方に変え、その工作能力によって出世したのだ(べつに「ごますり」だけで出世したわけではない)「ブルータス、おまえもか!」の古代ローマの時代から、いかなる時代であろうといかなる国であろうと、裏切り・調略はあらゆる権力ゲームの常套手段であった。



●左翼・共産主義者のマネーロンダリング

 たとえば、日本の代表的な左翼政党である日本KS党は、反資本主義的で、清廉潔白で、日本の企業からはビタ一文も献金を受けず、党の財政は党員の納める党費と機関紙「ア※ハタ」の売り上げだけでまかなっている、と豪語している。そして、資本主義の権化である日本の大企業と、アメリカ軍(安保条約)をたたくのをモットーとしている。

 ところが、この党は、同じく資本主義の権化であるアメリカ企業をたたいたことが一度もない。ロッキード事件では原子力を利用したエネルギー自給策を推進した自民党の政治家と財界人を徹底的にたたいた(これは、確実に、アメリカのロックフェラー財閥を核とする国際石油資本の利益につながる)。リクルート事件では(どう見ても法に触れる問題でないのに)「スーパーコンピュータ購入問題」を追求して、(意図したかどうかはともかく)NECや日立と対立関係にあるアメリカのコンピュータ会社の利益の増大に努めた。もちろん、安保反対論においても、まったく非現実的な(自衛隊の軍備を違憲し、廃絶せよという)非武装論に基づく主張を展開した。これは(自主武装論と違って)アメリカにとって痛くもかゆくもない。

 つまり、この政党は、日頃の表面上の言動や党の綱領・公約とは裏腹に、一度も「反米」であったことがないのだ。

 この政党は資金的には、企業や労組から利権がらみの献金ばかりを受けてきた自民党などと違って健全だと言われている。しかも、法律上受け取ってよいことになっている政党助成金(財源は国民の税金)すら受け取らない姿勢を取っている。しかし、他方、この党の幹部が「共産貴族」と呼ばれ、ぜいたく三昧の生活を送っていることはよく知られている。はたして、ほんとうにこの党の財源は、党費と機関紙の売り上げだけなのか?

 私がアメリカの石油会社やCIAの幹部なら、この党の機関紙「ア※ハタ」の「カラ伝票」による購入という献金手段を、当然考える。これなら、いくらカネをたれ流して献金しても、そう簡単にばれるものではない。もし、事実なら、日本国民の税金(政党助成金)を拒んで、外国の企業やスパイ機関のカネを受け取っていることになるわけで、ことは重大である(つまり政党助成金を拒むのは、アメリカへの忠誠心の証しということになる)

 もちろん、日本KS党の党員たちは、こんなのは言いがかりだと言うだろう。たしかに、そう信じたい気持ちはよくわかる。が、それなら、一度、あの数十万部売れていると言われる「ア※ハタ」の印刷部数と売り上げ部数の関係をチェックしてみたほうがいい。これは誹謗でも非難でもなく、忠告である。

 私は出版業界に7年いたが、出版・印刷業界では、カラ伝票のために印刷部数と流通上の発行部数が一致しないことが珍しくない(これは50万部しか売れていないのに「100万部突破」という宣伝をする「誇大広告」のことではないこれは、単純に読者、つまり素人をだますためのものだ。私が言っているのは、くろうと、つまり書店や流通業界をだますために、出版社が大手取次会社および大手書店だけと組んで、カラ伝票で「今週のベストセラー」をでっちあげ、中小業者だますテクニックのことである)

 そして、何より、あなたが、日本KS党員で、そして人の子の親や教師であった場合に備えて忠告するが、すべてがばれたとき、あなたの子供や後輩や教え子が受けるショックが大きすぎることを考えるべきだ。少なくとも、自分より若い者に左翼思想やその党の綱領を説く前に、「カラ伝票」のチェックぐらいは絶対にすべきた。

●敵ながらあっぱれ!?

 実は、私は、日本KS党の幹部のたちは尊敬している。戦後一度も実質的にアメリカの国益に反する行動を取ったことがないくせに、反米の党のように見せかける迫真の演技力には脱帽だ。

 武士道には「敵ながらあっぱれ」という言葉がある。アメリカの野球ファンは敵チームのプレーでもファインプレーには拍手を贈るし、そのプレーについて審判がひいきチームに不利な判定をしたからといって、やじったり非難したりはしない。

 私は、アメリカ占領軍と日本KS党の幹部の「ファインプレー」に拍手を贈り、(かつて抱いていた自主武装論の理想を捨て)当面安保条約を容認することとしたい。両者の「連携プレー」(偽装対立)はあまりにもみごとに日本国民をマインドコントロールしてしまったし、その間にアメリカは、日本に自主武装が不可能なほどに、「日本属国化政策」をがっちりかためてしまった。これは完璧なファインプレーで、もはや自主武装は「アウト」なのだ。

 私はけっして、日本のどこかのプロ野球チームの監督のように、アウトの判定に「ダダをこねる」とか、ましてや判定をくつがえすために審判に暴行しようなどとは思わない。悪人であれ善人であれ、左翼であれ右翼であれ、敵であれ味方であれ、高度な能力を持つ者が世の中を支配するのは、当然のことを思うからだ(すくなくとも、無能なブタに支配されるよりはマシだ)

 しかし、私は日本KS党の(幹部でない)ヒラ党員は尊敬しない。むしろ同情する。まるで、吉川興経の軍に斬り殺される尼子の雑兵と同じで、虫けら同然の、ゴミのようにみじめな存在ではないか。ご本人たちが言うところの平和主義や民主主義には、なんの役にも立っていない。それどころか、実質的には、いわゆる「アメリカ帝国主義」の利益に奉仕してばかりいるではないか。

 あなたがたヒラ党員は、自分の子供や教え子を雑兵や虫けらにしたいか? それ以前に、あなたがた自身が、たとえばいま死んだとして、自分の人生が民主主義や平和主義に貢献したすばらしい人生だったと思えるのか? 口惜しかったら、一度でも党の政策に、真にアメリカの軍事戦略を妨害するような意見を反映させてみろ。ただぺこぺこ党幹部の言い分を聞いて党費を払っているだけなら、雑兵どころかただの奴隷ではないか。恥ずかしくないのか! <P> もし、日本KS党のヒラ党員の方が読んでおられたら、ぜひ教えてほしい。なぜ、あなたがたは「他人の尻馬に乗っていばる」ことをしたがるのか? 私には、これがどうしても理解できない。

 幹部の気持ちはわかる。アメリカのスパイ機関の指導を受けたとはいえ、自分自身の演技力によって、ばかなヒラ党員をだましながら高いギャラをもらってぜいたくな暮らしができるのだから、できれば私もあやかりたいと思うぐらいだ。

 ところが、あんたがヒラ党員には、「自分自身のもの」が何一つない。党の基本理念の根底にある共産主義思想はマルクスの作ったものだし、非武装中立型安保反対論はアメリカ軍(アメリカの一般市民ではない)が作った平和憲法を借りてきて、おうむがえしに言っているだけだ。もちろん、党の綱領や公約や政策は、党の幹部が作ったものであってヒラ党員のあんたがたの作ったものではない。その反面、経済的見返りは皆無で、むしろ党費納入や機関紙購読の分だけ「持ち出し」になる。

 あなたがたは、まるで「酒鬼薔薇聖斗」のように「他人の言葉」をひたすら借用することでしか政治的発言ができないのだ。そうまでして、「他人の思想の尻馬に乗って」優越感に浸りたいのか? あなたがたは劣等感のかたまりなのか? だとしたら、その劣等感の原因は何なのか? 自分の言葉がないなら、おとなしく黙ってひっこんでいればいいじゃないか。私ならそうする。

●ネパールのたすきがけ買収〜毛沢東主義者は「反中国」

 2001年6月に、ヒマラヤ山脈のネパール王国の王宮内で殺人事件があり、皇太子が機関銃で実の親である国王と王妃を殺し、自身も自殺をはかって重体となった。この時点で、死んだ国王に代わって「殺した」皇太子が、意識不明のまま国王になり、そのおじ(前国王の弟)が摂政(国王代行)に就任、やがて新国王も亡くなって、摂政が国王に即位したという。

 ネパール政府は、事件直後には「原因は機関銃の暴発」と発表するなど情報が錯綜していて、真相はなかなかわからない。

 この暗殺事件の報を聞いて、世界中の軍事専門家がいっせいに考えたことは「どっちの仕業だ?」ということである。

 この「どっち」とは、中国かインドか、という意味である。あたりまえの話だが、ネパールのような小国には、自国の運命を自国民だけで決めることなどできない。地図を見ればわかるように、この国はインドと中国(が侵略したチベット)という2つの大国にはさまれているから、表面上中立政策を取っている……ことになっている。

 が、チベットを侵略した中国はインドと国境を接するようになり、その結果何度もインドと国境紛争を起こしている。インド、中国はともにネパールを自国に引き込もうとすさまじいスパイ工作を仕掛けているに決まっている。

 だから、王宮内で、王族間で殺し合いがあった、と聞けば、軍事専門家はだれしも、王宮内の親インド派(インドの手先)が親中国派を殺したのか、その逆なのか、と思うのである。

 ところで、ネパールでは最近、国土西部の山岳地帯で、毛沢東主義を掲げる共産ゲリラ毛沢東主義(マオイスト)派が反政府武装闘争を強めつつあるという。この「事実」だけを聞けば、このゲリラは中国の手先に違いない、とだれもが思うだろう。

 が、このゲリラがインドから武器を供与されていることは、公然の秘密であり、ネパールの識者はみな「マオイストはインドの手先」と信じ、今回の王宮殺人事件もインドの陰謀と疑っているという。 毎日新聞は「たすきがけ買収」という「専門用語」を使っていないので非常にわかりにくいが、明らかに「たすきがけ」を指摘している(毎日新聞2001年6月7日付「王族射殺事件で、くすぶるインド関与説」)。

 いまや「たすきがけ買収」は世界の潮流である。「日本の左翼はアメリカの手先だった」と言っても、なんら非常識ではないのである。

 日本の(自称)左翼よ、観念しろ。





(私論.私見)