「NHK社是の原理原則考」 |
公共放送としての使命。
○海老沢参考人 公共放送という定義でございますけれども、放送を含め、法律上の明確な定義は今ありません。ただ、かつて郵政大臣のもとに設けられました放送政策懇談会で、放送事業者の経営形態を三つに分類したものがあります。その一つは、国によって直接管理運営される国営放送。それから、法律等に直接その存立の基盤を置いて設立された公共的事業体により、営利を目的とすることなく、主として受信料等を財源として運営される公共放送。三つ目として、営利を目的とする私企業により、広告収入等を財源として運営される民間放送。こういう三つの分類がされたことがあります。
私ども、放送法に基づいて事業を運営しているわけでありますけれども、この放送法に沿って言いますと、営利を目的とすることなく、財源を含め広く国民に存立基盤を置いて、放送サービスの面では、言論報道の多元性の確保、放送番組の質的水準の確保、過去のすぐれた日本の文化の保存や新しい文化を創造する、障害者向けの番組などによる公共の福祉の実現、災害時のライフライン機能としての役割を全うしていくのが公共放送だろう、そういうふうに意義づけているわけであります。
言いかえれば、いつでもどこでもだれでもが、安い料金で必要な情報、質の高い番組が、全国くまなく、全国津々浦々にあまねく行きわたるということです。つまり、情報に格差なく、そして情報弱者をつくらないようにするというのが公共放送の使命であろう、私どもはそう考えております。
ただ、電波、放送というものは、非常に有限、希少価値でありますし、国民共有の財産と言われております。その国民の財産を使うわけでありますから、そういう面では、すべての放送事業者は、放送の公共性が求められているだろうと思っております。そういう面では、我々は、有効な電波という資源を国民視聴者のために使っていく、そういう姿勢で臨むべきだろうと思っております。
○海老沢参考人 NHKの使命、役割はいつの時代でも変わらないものだろう。今、IT革命の時代になり、いわゆる多メディア・多チャンネルの時代と言われております。私どもは、そういう新しい技術開発の成果というものを取り入れながら、それを活用しながら、視聴者に質の高い、心を豊かにするような番組を提供するのが使命だろうと思っております。
そういう面で、この三カ年の事業運営指針というものをまとめたわけでありますけれども、基本は、やはり一つは受信料を値上げしない。つまり、視聴者国民に新たな負担をかけない、いわゆる効率のいい事業運営をして新たな負担をかけないように努力することが一点であります。
そういう面で、私は、向こう三年間は受信料の値上げをしないように努力するということを公約しているわけであります。その上に立って、それならば、受信料を値上げしない中でどのように番組の質を向上させるかということであります。できるだけ経費の節減を図りながら、そして職員の士気を高め、そういう中で、我々はあくまでも視聴者国民にサービスするんだ、そういう高い志を持っていい番組をつくろうということで今呼びかけております。
○海老沢参考人 NHKに対して、NHKが巨大化、肥大化するのではなかろうかという意見については、私も聞いておりますけれども、NHKが、今の組織といいますか運営の中では、そういう巨大化、肥大化になりようがないというのが私どもの率直な感想でございます。
といいますのは、NHKの予算、決算、受信料を値上げするかどうかにつきましては、すべて国民の代表でありますこの国会で承認されるということになっております。そういう面で、この十一年間、受信料は値上げしないで我々は努力してきているわけであります。そういう受信料の枠の中でいろいろ創意工夫をしながら、視聴者国民にとってのサービスを展開しているわけであります。それは、放送というものは技術の歴史と言われてもおります。つまり、常に新しい技術開発の成果を取り入れて、そしてそれを視聴者に提供する、我々は、放送は技術を活用した文化だというふうに言っております。そういう中での事業運営でございます。
そういう面で、NHKの放送界に占めるシェアというのも年々低下しております。平成五年では、NHKのシェアは一九・六%ありました。現在、平成十一年度では、これがマイナス二・一%、つまり一七・五%まで減ってきております。というのは、ほかの民間放送なり、あるいはCSなりCATV等がだんだん大きくなってきているということであります。
そういう中で、私どもは、あくまでも視聴者国民に対して質のいい番組を提供する。つまり、視聴率の競争とか市場原理だけにとらわれることなく、やはり障害者への福祉番組とか、いわゆる学校放送なり、あるいは教育とか教養番組に力を入れるとか、そういう面で、マイノリティーへのサービスも十分やっているわけであります。報道、教育、娯楽という四つの分野をバランスよく提供しながら、国民の文化水準の向上に役立てる、そういう姿勢でやっておりますので、今後とも肥大化、巨大化するわけではありませんし、我々は、あくまでも節度を持って取り組んでいくということを改めて表明しておきたいと思います。
○海老沢参考人 今、渡海先生御指摘のように、IT時代に入りまして、インターネットが世界的に普及されてきております。今後とも、新しい伝送路といいますか、道具がどんどん開発、普及してくるだろうと思っております。
そういう面で、我々は、情報格差あるいは情報格差を出さないようにするためには、いろいろな伝送路、道具、そういう手段を使わなければ、すべての国民に情報が行き渡らないという時代になってきたのだろうと思います。新しい手段、道具というものも活用しなければ公共放送の使命が全うできない、今そういう時代だろうと思います。そういう面で、我々はできるだけ視聴者国民の理解を得ながら、そういう情報を端末に向けて発信していく姿勢をこれから考えなきゃならぬだろう、そういう第一歩を踏み出したということであります。
ただ、我々、いたずらに民業圧迫とか巨大化ということではなくて、視聴者のニーズに十分こたえる中で、いろいろまた皆さんの意見を聞きながら対応していきたい、そう思っているところであります。
○海老沢参考人 技術の革新によりましてインターネットが世界的に普及をしてきておるということは、もう御存じのとおりでございます。そういう中で、こういう新しい、放送と通信の融合といいますか、垣根が低くなってくる。新しい道具といいますか伝送路を使わないと、大災害が起こった場合、例えば阪神・淡路大震災が起こった場合に、携帯端末を持って避難した人たちに的確に情報を伝えなければならないということなど、私ども、ラジオなりいろいろ使ってきましたけれども、インターネット時代になりますと、今度は新しいいろいろな使い方がまた出てくると思います。
そういうところに正確な情報を伝えたい、そのために放送を補完するといいますか、そういう道具も使わなければ視聴者のニーズにこたえることができないだろう。そういう意味で、去年の十二月の末からインターネットにニュースを提供する、これもあくまでも放送したものを単純に二次利用したもの、つまり放送を補完する意味合いで、今やっているところであります。
そういう面で、これから将来どこまでそれが発展するか、放送と同じような画面なり音声デジタル時代になれば、またその時点でいろいろ法の整備等を考えなければならないだろう、そう思っているところであります。
○海老沢参考人 二十世紀は戦争と対決の世紀と言われました。二十一世紀は真の平和と対話の世紀へ持っていこうというのが世界的な共通した方向だろうと思っております。
そういう中で、やはり世界に共通した課題というのは、今浅野委員御指摘のように、人口あるいは食料、エネルギー問題、いろいろあります。私どもは、そういう世界的な共通の課題について、日本だけでなくて世界的な視点、地球的視点に立って番組をつくって、国民とともに考えていこう。そういう視点で、NHKスペシャルなり「クローズアップ現代」なり、あるいはまた特別番組等で、これからもさらにこれを充実させていこう、そう思っております。
特に、ことしは食料と教育問題に力点を置こうと思っております。
特に食料は、御承知のように、日本の食料自給率がいわゆるカロリーベースで四〇%台、先進国では最も低い自給率が続いております。そういう中で、やはりこの食料というのは、農業問題あるいは環境問題、いろいろな問題に関連した国民の基本的な課題だろう。そういう視点で、これから数年かけてこれを取り上げていく。
それと同時に、また教育問題、これも国家百年の大計と言われるほど国民の関心の高い課題でありますので、去年のNHK教育フェア二〇〇〇を通じて、これも、継続は力なりという言葉がありますように、継続していろいろな課題を取り上げていきたい、そう思っております。
○海老沢参考人 インターネットは、世界どこでもだれでもが自由に使える新しい道具、手段になってまいりました。そういう中で、このインターネットを我々は無視できない世の中だろう。そういう新しい伝送路、道具というのも、放送を補完する、サービスを高度化するための一つの手段として我々は使っていかなければならない時代だ、そういうふうに認識しております。
ただ、私は、これからインターネットがブロードバンド化してこようとも、やはり基本は放送は変わらないだろう。私どもが推進してまいりましたHDTV、いわゆるハイビジョンが中心となって、それにいろいろなものが付随してくるというふうに考えております。
そういう面で、あくまでも放送が中心になり、それをインターネットなり情報端末が補完していく、そういうふうに今思っております。
○海老沢参考人 ラジオのデジタル化の問題でありますけれども、その前に、ラジオは今から七十六年前から放送を始めて、ラジオの役割といいますかラジオの効用というものは、私、いつの時代でも今でも変わらない、国民にとっては、これを利用、活用、そして非常に親しみを持って使われているだろうと思っております。そういう面で、ラジオの意義というものを我々十分認識しております。そういう中で、これを、今、中波、短波ありますけれども、今度はデジタル化しようという問題であります。
これにつきましては、郵政省、今の総務省でありますけれども、去年の十一月に、東京、大阪の二つの地区で実用化試験局を開設するための免許方針案をつくりました。そして電監審にこれを諮問し、答申を得たということになっております。それによりますと、地上デジタル音声放送の参入希望者が幅広く参加が可能なコンソーシアム形式の団体をつくって、その団体に優先して免許を与えるということになりました。私どもNHKも、東京と大阪の二つの地区の実用化試験放送に参画しようと思って、今いろいろ準備をしているところであります。
そういう面で、東京、大阪の実験、視聴者の反応あるいは技術的なものをつかみながら、これから具体的に考えをまとめていきたい、そう思っているところであります。
それからもう一つ、BSデジタル放送、去年の十二月一日から始めました。今、私どもNHK、民放、八社体制で十チャンネルでやっております。一応順調にスタートが切れて、今は、はっきり言ってこれから弾みをつけていこうという段階であります。私どもは一千日で一千万世帯に普及させようということで、番組の内容の充実等も図ってきております。
御承知のように、こういうものを普及するためには、ソフトとハードが車の両輪としてうまく回っていきませんと普及しませんので、つまり、我々放送事業者としてはやはり質のいい番組をつくっていく、それと同時に受信機が安くなり、使いやすくなりませんと視聴者は購入してくれないというふうに思っております。そういう面で、我々はいいものをつくる、そしてメーカーはこれを安く提供する、そういうふうにやっていきたいということを今希望しております。
いずれにしても、私ども、今二十四時間の放送をしております。ハイビジョンの映像の鮮明さ、臨場感を持った質の高いものをいろいろな面で提供しておりますし、これからは野球シーズンになりますので、イチロー選手が参加したマリナーズを中心に、アメリカの大リーグの迫力ある野球の試合を生中継する、あるいは日本のプロ野球につきましてもできるだけハイビジョンで視聴者に提供しよう、いろいろなことを今考えておるところでございます。
○海老沢参考人 日本にはそれぞれの地方にそれぞれすぐれた文化が根づいております。私どもは、そういう地方の伝統文化を守り、それを保存し、その地方の文化の上にまた新しい文化を創造していくというのが我々放送業界の一つの使命だろうとも思っております。
そういう面で、最近でも「ふるさとの伝承」、いわゆるふるさとに伝わる、各地域に伝わるお祭りとかあるいは日常行事とかそういうものを映像で残しておこうということで、かなりのものを放送し、これを保存しております。いつでもこれを見られるようにしております。
それと同時に、二十世紀は映像の世紀と言われました。いろいろな映像が散逸しないように、二十世紀の映像各県版というものをつくって、今でも総合テレビで放送しております。そういう事業も展開をしてまいりました。
最近は、地方の方言といいますか、地方の方言も文化であります。そういう面で、ふるさとの日本の言葉というものも保存していこうということで、今その保存作業をし、それをまた番組化しつつあるところであります。
そのように、我々は、先人が築いてきた文化というものを大事にする、そういう面での放送の役割はますます高まるだろう、そう思っております。今、各県に放送局を置かせていただき、そして、五十四局の体制で地方の生活あるいは文化、伝統というものを全国に発信させる、それが世界にも伝わっていく、そういう中でまた新しい文化を育てていこう、そういう姿勢で取り組んでいるところであります。
○海老沢参考人 私どもは、公開派遣番組ということで、各地方に「のど自慢」を初めいろいろな番組を派遣して、視聴者参加番組といいますか、地域の人たちと一緒に番組をつくろう、そういうことで、年々これをふやしてきております。平成十三年度は、今、地方分だけで四百二十七本を考えております。去年より十本程度ふやしました。それと同時に、NHKホールなり、また、仮設でありますけれども、新しくテント二〇〇一というところでも公開番組をやります。合わせますと千百四十六本、対前年より二十数本ふやしました。
そういうことで、できるだけ皆さんと一緒につくろう、そういう姿勢でこれからも充実強化していきたいと思っております。ただ、やはり資金の面とかいろいろな面で制約もありますけれども、できるだけ工夫を凝らしながらやっていきたいと思っております。
それと同時に、BSで毎月、「おーい、ニッポン とことん○○県」ということで十数時間にわたって放送しておりますけれども、これも今、各地から非常に好評をいただいております。そういう面で、視聴者のニーズにこたえるようにさらに努力していきたいと思っております。
〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕
○海老沢参考人 インターネットに提供するニュースでありますけれども、これは世界すべてと言っていいほど、ほとんどの報道機関がインターネットにニュースを提供しております。
そういう中で、私どもも、一九九五年にホームページで、放送番組のPRとか経営の実態とかの周知徹底あるいは番組をつくるための情報提供とか、今ホームページを百七十ページほど持っておりますけれども、なぜNHKはほかの国のように、ほかの報道機関のようにニュースを提供しないのか、そういう要望がかなり出てまいりました。そういう中で、NHKのニュース配信についていろいろな意見がありましたものですから、慎重に検討してまいりました。NHKの放送法上のいわゆる業務範囲の中で、二次利用、つまり、今の放送を補完するという意味合いでやってみようということで、去年の十二月二十六日から踏み切ったというのが実情でございます。
これに対して視聴者の方からは、見たいときにいつでもニュースが見られる、そして、見落としたものは改めて見ることができるということで、非常に好評を寄せられております。今、一日二百万ヒット前後のアクセスがあります。
私どもは、あくまでも今の放送法の枠の中で、業務範囲の中で二次利用し、放送を補完する、そういう立場で始まったわけであります。今後、新しくブロードバンド時代になれば、また法の整備なりいろいろなことを要望しなきゃならぬと思いますけれども、今はそういう状態でやっているところでございます。
○海老沢参考人 今、佐藤先生から励ましのお言葉を受けて、光栄に、と同時にまた、我々、身の引き締まる思いであります。
御承知のように、放送の分野では私どもNHKは、技術的にも、放送時間、内容についても、やはり世界の最先端をいっているものと自負しております。特にハイビジョンの普及につきましては、やはり世界からも国際基準として認められましたし、そういう面では、去年の国連のミレニアムサミットで、私ども国連テレビと一緒になってハイビジョンで放送し、それをVTRで保存する、そういう事業も展開し、アナン事務総長から感謝の意を表されたというようなことで、このハイビジョンを中心としたNHKの技術力等については世界から高く評価されているところであります。
それと同時に、問題は、やはり、放送番組が質が高く、そして心豊かになるようなものでなければならないことは言うまでもありません。そういう面で、私どももできるだけ私どもの番組を世界に配信する、あるいは世界に提供していく、そういうことでいろいろやっております。
御承知のように、アジアを中心とした開発途上国に対しましては、これまでも二万七千本のものを外務省あるいは国際交流基金等の資金で改編して提供してもおりますし、それからまた、一般の放送事業者にもいろいろな面で売却しているということで、日本の実情、文化を普及させる意味からも努力しているところであります。
そういう中で、インターネットの分野でどうも我々がBBC等よりおくれをとってしまったということは、私は全くそのとおりだと思っております。それは、いろいろ日本国内の事情もあり、そういう結果になったとは思いますけれども、いずれにしても、放送分野ではNHKが先頭を切り、先導的役割を果たしてきたということは紛れもない事実でありますので、今後ともいろいろな面で努力していきたいと思っております。
○佐藤(勉)委員 いずれにいたしましても、BBCがあり、形態は違いますけれども、アメリカにはCNNという世界に発信をする情報発信源があるわけであります。私はやはり、位置関係からいっても、そのちょうど真ん中に日本は位置づけをするんではないかというふうな思いがあって、本当に私はカルチャーショックを受けたような感じで帰ってきて、この質問をずっとしようと思ってここまで温めてきたわけでありますけれども、会長にはその辺の思いをぜひともなし遂げていただきたいということでお願いを申し上げたいと思います。
会長に大変心強い決意を聞かせていただきました。国際放送の番組の内容の充実に関しましては、NHK予算に対する総務大臣意見のみならず、過去にも多くの同僚議員から指摘をされているわけであります。国際放送にはNHK自己の業務として行う国際放送と、総務大臣がNHKに命令し、国が全額を負担して行う国際放送の二種類があることは御存じのとおりだと思います。これらを一体として放送がなされております。
先ほど述べられましたとおり、国際放送は重要でありますし、我が国の文化や産業などの実情を海外に情報発信していくということも、私は必要ではないかと思います。我が国の国際放送の役割が一層重要になってくると思いますが、そこで、総務省にお伺いをしたいと思います。NHK国際放送について、今後とも積極的に展開をすべきものと思いますが、総務省の見解をお伺いしたいと思います。
○海老沢参考人 放送の普及、今先生御承知のように、ラジオは三十年、テレビも、昭和二十八年から五十八年まで、三十年の月日を要しました。今度、デジタル放送、地上はどうなるのだということで、我々もいろいろな角度から検討しております。
そういう中で、今法案が審議されております中で、二〇一一年までにアナログ放送を停波させたいという方針を国の方が打ち出しました。私どもも、できるだけその方針に沿って努力したいと思っております。ただ、現実的にそれが達成できるかどうかは、これからの経済情勢、社会情勢によって変わってくると思いますけれども、いずれにしても、そういう方針が示された以上は、それに向かって努力しなければならぬだろうというふうに思っております。
ただ、日本の場合は、山が多い、離島が散在しているという、地形上非常に複雑、ですから、電波が込んでいるという事情がありますので、我々の計画どおりいくかどうかは、これからの努力次第だろうと思っております。
それと、問題は、そういう中でこれからアナ・アナ変換をやるわけでありますけれども、アナ・アナ変換は二百四十六万世帯しか対象になりません。御承知のように、地上デジタル放送をするためには、今四千七百万世帯日本にはあると言われます全世帯を、アナログからデジタルに変えるという大きな国家的事業だろうと思っております。
そのためには視聴者国民の理解と協力がなければできない事業だということで、この地上デジタル放送の成果といいますか、メリットがどこにあるのだということをやはり十分説明し、納得をいただきたい。これからその努力をしなければならぬだろうということで、本当にこれから大変な事業に取りかかる、今そういう心境でございます。
そういう中で、このアナ・アナ変換は国の、政府の責任と権限でやる事業でありまして、私どもはそれを後で使わせてもらうという態度であります。今度の予算で二十三億ほど送出設備についての金が入ってきますけれども、それはそのまま使うということで、NHKとしては、それをアナ・アナ変換のための送出のときに使わせてもらうという予算になっているところであります。
○海老沢参考人 この「ETV2001」の番組につきまして、いろいろな意見が寄せられております。しかし私どもは、放送に出たものがすべてであるという立場をとっております。つまり、その制作の過程、プロセスにはいろいろな編集権の問題があります。そういう面で、私どもは一日百数十本の番組をつくり、何百本の番組を放送しております。そういう中で、視聴者に提供したものが我々の責任を持って対応する問題だろうと思っております。
出た番組について、いろいろな意見が出てくるのは当然であります。その意見については我々は真摯に受けとめて、その中でいろいろ対応していかなければならぬと思っております。今度の問題につきましても、そういう立場をとっております。
これは新聞でも雑誌でも、いわゆるジャーナリズムの世界ではすべて、出たものが責任を問うものであって、我々が原稿を書き、また番組をつくった場合にはいろいろな、デスクから、責任者からそれを直される、あるいはどうしてもこれは、情報が不足しているものは補足すべきだ、そして、だめなものは没になる、いろいろな編集のプロセスはどこの世界でも私はあると思います。そういう中で、この番組についても制作意図なり、公平性が保たれない、あるいはまたこういう意見も入れなければいけないのではないかと、いろいろな意見が出たと私は聞いております。編集に当たった責任者が、そういう中で公平を期して番組を放送したということであります。
そういう面ではそれが我々はすべてであって、そういうプロセスについてああだこうだと言っては言葉が過ぎますが、いろいろな過程について、いろいろな問いがありますけれども、それについては我々はコメントする立場ではないということで、今進んでいるということであります。
いずれにしても、私ども公共放送でありますので、できるだけ公平を期し、我々の自主性、自律性を守りながら質のいいものを出していく、その精神にはいささかも変わりありませんし、今後とも、公平公正、不偏不党の立場に立った番組づくりに努力するというのは当然であります。その方向でやっていきたいと思っております。
○海老沢参考人 私どもNHKには小休止はありません。二十四時間、放送でぶっ通し業務を展開しております。そういう中で、いろいろな問題が出てくるのはもう当然であります。私がすべてそれに応ずるわけにいきませんし、いろいろな電話もかかってきております。やはり大事なものについてはいろいろやりますけれども、この「ETV2001」の問題については、私のところにそういう情報は上がってきておりませんでした。
○大出委員 会長は御指示をしていないということだと思います。
それでは、放送が終わりまして、いわゆる取材関係者その他の方々から、出演者も含めて、抗議があったわけなんですが、それは、その人たちの考えをそのまま伝えていないことから生じたのではないかと思うんですが、その辺は会長、どのようにお考えでしょうか。
○海老沢参考人 先ほども申しましたように、私どもは出た番組がすべてであって、それについてのいろいろな意見については、これを我々は真摯に受けとめにゃならぬと思います。
そういういろいろなプロセスは当然あると思いますが、それについて、編集権にかかわる問題でもありますし、また、それぞれの業務はそれぞれの現場で責任を持ってやっているわけであります、最終責任は私にありますけれども。いずれにしても、いろいろな問題があれば、我々としては、そういう問題をきちっとクリアしながら、とにかく視聴者国民のためにいいものを出していくというのが基本でありますから、そういう方向で我々はまた指導していかにゃならぬだろうとは思います。
○海老沢参考人 IT革命によってデジタル技術等も進歩してまいりました。技術革新の成果というものを視聴者国民に知らせる、こういう成果、メリットがあると言うことは、我々の使命の一つだろうと思っております。
そういう面で、このBSデジタル放送に当たっても、私どもNHKが先導的役割ということで、いろいろなPR活動といいますか、周知を図ってきております。NHK、やり過ぎるんじゃないかと言われるほど、いろいろな面でやっております。それでもやはり、こういう多メディア・多チャンネル、情報過剰時代とも言えるほどいろいろなツールが出てきますと、それをすべての人たちに知らせることが非常に手間暇かかる時代だろうと思っています。つまり、このIT革命の光と影の部分があるとよく言われます。ですから、光の部分はありますけれども、なかなか伝わりにくくなる。いわば、選択の幅ができたために、いろいろなメディアを使って情報を提供しないと、末端まで行き届かないという時代でもあろうかと思います。
そういう中で、我々はできるだけいろいろな伝送路、ツールを使って、そういう周知徹底といいますか、PR活動なり、デジタルの意味合いというものを伝えなければならぬだろうという認識は十分持っておりますけれども、またそういう面で努力はしておりますけれども、なかなかそういう周知徹底も大変な時代になってきたという感想を持っているところであります。
○松原委員 やり過ぎるぐらいやっておられるということですから、さらにもっとやり過ぎるぐらいやっていただきたいと思うわけであります。
実際、私が地域のいろいろな人たちと接すると、デジタル化されるということを知らない人も多いのです。するのだよということを知っている人も、では、それによってどう変わるのかというのは、まあいろいろな冊子も、我々は資料を今回いただきましたが、そういったことも含めて、十分に認識をしていないのが現状であります。
まさに取り残された層というのは、今回BSが三分の一ぐらいだあっといく、しかしながら、残りはいつまでたってもなかなかそこに踏み込まないという、この部分が、やはり公共放送という使命からいけば、国民の三分の一だけそこに持っていけばいいという議論は、公共放送であるがゆえに、これはあってはいかぬと思うわけです。
私は、そのためには、非常にわかりやすいキャッチフレーズなり、わかりやすい極めて単純なシンボルなり、そういったものを使って、デジタル放送がどうなるのか、そして、その中ではどういうものがあるのかということをNHKとしては啓蒙していただきたいと思うのですが、これに関して何か感想があったら、会長、お願いします。
○海老沢参考人 この地上デジタル放送の設備投資につきましては、今、先生御指摘のように、NHK、民放合わせて一兆円前後の莫大な経費がかかるというふうに我々は試算しております。そういうことではお互いに経営を圧迫してしまうという危機感を持っております。
そういう中で、去年、札幌で開かれました民放連大会の席上で、私の方から民放各社に対して、できるだけ共同建設なり、共同研究開発によって経費の削減を図っていこうということを呼びかけました。今、民放連ともそういう方向でいろいろ協力関係を強化しているところであります。一層そういう努力をしていきたいと思っております。
○海老沢参考人 ハイビジョンは、昭和三十九年、一九六四年の東京オリンピックのときから開発を進めてまいりました。その間、私どももいろいろな番組制作のノウハウなり技術の開発を進めて、ようやくここまで来たわけでありますけれども、まだまだ開発途上だろうと思っております。
そういう面で、さらに技術の開発を進めると同時に、これまでの番組のいろいろなノウハウを蓄積しておりますので、その蓄積を生かしながら、そしてまたノウハウを生かしながら、質の高い番組づくりに努力しなければならぬと思っております。
そういう面で、今、ハイビジョンのプラス面、メリットの面をさらに我々は追求しながら、それぞれの現場で、これがハイビジョンだ、これが新しい技術を生かした文化だ、そういうふうに胸を張れるような番組をさらに一本でも多くつくるよう努力していきたいと決意を新たにしておるところであります。
○海老沢参考人 今委員から指摘がありましたけれども、ラジオ、テレビとも三十年の月日を要して全国に普及したという歴史を持っております。そういう中で、地上デジタル放送をやる場合には、これから十年でやらなきゃならぬということになりますと、非常にこれは常識で考えても大変な作業であることは言うまでもありません。
今、この国会に電波法の改正案が提出され、審議されております。これが成立しますと、二〇一一年にはアナログからデジタルに完全に転換するということになります。私どもは、そういう法律ができ上がりますれば、これに向けてNHK、民放とも最大の努力をしなきゃならぬということは言うまでもありません。
ただ、やはり、世の中計画どおりいくかどうかは、歴史が示すように難しい面もあります。しかし、そういう法律ができた以上は、それに向かって努力をするよう、さらにいろいろな面での準備を進めたいというふうに思っております。
御承知のように、この四千七百万世帯を全部やるということは非常に大変、つまり、日本は、先ほど申しましたように、山間辺地が非常に多い、そして、離島もたくさんあるということになりますと、これも都市と違って非常に経費がかかることは言うまでもありません。私どもの資金力だけで十分これが達成できるかどうかは非常に難しい面もあろうかと思います。
そういう面で、それがうまくいけばいいんですけれども、経済の変動等によってできなければ、やはり何らかの措置、いわゆる地方を振興させるというような意味合いを含めて何らかの措置が必要になるのではなかろうかという、今、漠然とした一つの考えといいますか、それを持っているということを述べたわけであります。
いずれにしても、我々はあくまでもやはり目標がなければ前に進みませんので、目標に向かって着実に進めていきたいというのが今の私の気持ちでございます。
○海老沢参考人 NHKの受信料は、私どもが提案し、今の総務省を通じて国会に提出される、そして受信料の料額改定、受信料の設定というものは、国民の代表であるこの国会で決めていただいております。ですから、そういう面で、この国会の場というのを我々は非常に、最重要視しているわけであります。国会のそういう決定のもとにNHKが成り立っているということでありますので、受信料制度のあり方あるいは受信料額の設定については、この国会の意思を尊重するのが我々の使命である、そう思っております。
○海老沢参考人 今の受信料が本当に適正かどうか、これはいろいろな意見があろうと思いますし、どれを基準にしてそういう判断をするのか、私も今非常に、どうしたらいいか、これから慎重に考えなければならない課題だろうというふうには受けとめます。
ただ、アメリカは、御承知のように、テレビの放送会社はほとんどが民間であります。広告収入によって成り立っている民間でありまして、商業放送、いわゆる民間放送の中で、今公共放送というのはPBSという形で、これは受信料でなくて、有識者からの寄附とか、州政府なり国の交付金から成り立つわけであって、いわゆるNHK的な受信料制度というのは、世界でNHKしかありません。そういう面では、いろいろ検討する課題だと思いますけれども、今ここで私が、どうしたらいいのか、明確な答弁はできません。いろいろ検討させてもらいます。
○海老沢参考人 今の受信料制度は、世帯ごとから受信料をいただいているということになっております。個人別でなくて世帯ごとの受信料、要するに、一つの家庭からいただいている、そういうシステムになっております。家族の中で、インターネットで見る人、いろいろあろうかと思います。その意味で、私どもは、できるだけ公平負担ということで、NHKの事業運営を支える負担金として、受信料をひとつお払い願いたいという活動はさらに進めなければならぬと思います。そういう中で、あなたは払っていないからだめですよというのは、なかなか難しい問題があろうかと思います。
それはさておき、次のブロードバンド時代になったらどうするんだというのは大きな課題であります。これにつきましては、そういう時代が五年先か十年先か来ると思います。そういう中で、視聴者の要望なりあるいは社会経済情勢を見ながら、我々、検討しなければならない大きな課題だというふうに受けとめております。
当面は、今の附帯業務の範囲の中でインターネットによるニュース提供をさせていただきたいというのが現状であります。その時期になりますれば、またいろいろな、国会等の審議の場で議論をお願いすることが出てくるかと思います。
我々としては、いずれにしても、的確なニュースなり質のいい番組が、情報に格差なく、いつでもどこでもだれでもが、それを見られるようにするのが使命でありますので、そういう段階でさらに検討していきたいと思っています。
○海老沢参考人 私どもは、やはり視聴者国民あっての公共放送、NHKでございますので、そういう面では、できるだけ経営についてはガラス張り、透明度を増すのが当然であります。
去年、情報公開の基準を我々は自主的につくりまして、それに基づいて、ことしの七月一日から情報公開に踏み出すことを決めたわけであります。守秘義務とかニュース関係とかいろいろ、個人情報とか、そういうものは難しいわけでありますけれども、できるだけ情報を公開して視聴者の信頼を得るというのが我々の使命だろうと思っております。
そういう中で、関連会社につきましても、十分やはり国民に説明し、納得を得て、国民のコンセンサスの上に立って業務を進めるのが我々の基本的な考えであります。公開と参加という言葉を私、使っておりますけれども、できるだけ情報を視聴者の皆さんに共有してもらうというのが基本的な考えであります。そういう面では、この関連会社のあり方などにつきましても、これからさらにいろいろ勉強しながら、十分納得を得られるような対応をしていきたいと思っております。
○海老沢参考人 私ども報道機関として、表現の自由、言論の自由を守るのは当然のことであります。そういう面で、私どもは、放送法と番組基準にのっとって、自主、自律の立場でやっていっているわけであります。そういう面で、いろいろな法律ができ、それによって規制されていくことはいかがなものかというのが我々の基本的な立場であります。
いずれにしても、私ども公共放送としては、個人の人権あるいはプライバシーというものを守るのは当然でありますし、そういうことを侵してはなりません。放送法なり番組基準にのっとって、あくまでも我々の自主的な判断、自律性をきちんとしながらやっていく方針にいささかも変わりありません。
我々としては、常に視聴者国民の立場を十分に配慮しながら、今後ともいい番組づくりに前向きに邁進したいと思います。
○海老沢参考人 三、四年前に、青少年の凶悪犯罪が相次ぎました。そういう中で、テレビの子供たちに与える影響が非常に大きいのではなかろうか、テレビは青少年の健全育成にどう取り組むのかというのが大きな問題になりました。私どもも、テレビの社会的影響力が大きいという認識のもとに、青少年に悪い影響を及ぼさないような番組をつくるのが我々の使命であろう、そういう方針で取り組んできております。
しかし、やはり我々もそういう指摘をきっかけに一層前向きに取り組んでいこうということで、平成十年の初めに部内に横断的な組織として、少年少女プロジェクトというものをつくって、子供たち向けの質の高い番組を一本でも多くつくろうということで、これまでいろいろな取り組みをしてまいりました。二十一世紀、これからを担う子供たちの健全な育成というものはやはり非常に大事なことでありますので、そういう面で、一家で見て恥ずかしくないような番組を我々は提供していこうということで、いろいろな取り組みをし、それなりに成果を上げてきていると自負しているところであります。
いずれにしても、これはただNHKだけでなくて、民間放送、放送界全体の課題として、私どもNHKと民放が一緒になってつくっております放送番組向上委員会というものがあります、この中に、自主的機関として青少年委員会というものを設けて、これは第三者機関でありますが、いろいろな識者の先生方にメンバーに加わってもらって、この青少年委員会で番組への取り組み等について意見を賜っているわけであります。
そういう取り組みもしておりますし、青少年向けの番組制作についてはいろいろな形で工夫をしているところでありますし、今後とも、NHK、民放ともどもいい番組をつくるようにさらに努力を重ねなければならぬだろうというふうに思っているところであります。
○海老沢参考人 地上デジタル放送は、本当に全世帯ができるだけ早くアナログからデジタル化へ進んでもらいたいというのが私の気持ちであります。それにはやはり、視聴者国民に、デジタルの成果といいますかメリットを十分理解してもらわなければ、なかなか納得してくれないと思います。そういう面で、我々は、今後とも民放、総務省とも連絡を緊密にしながら、地上デジタル放送のメリットというものをできるだけわかりやすく説明し、御理解を得る努力を重ねなければならぬだろうと思っております。
そういう中で、やはり地上波というものは本当に国民の生活にとって不可欠のメディアでありますから、一〇〇%まで持っていかなければ意味はないだろう、そう私は認識しております。
○海老沢参考人 十年先はなかなか予測が難しいわけでありますが、私の気持ちとしてはやはり地上波一〇〇%を達成するように努力する、それ以上、本当に予測がつかないものを、無責任なことを申し上げても失礼でありますので、そういう努力をしていきたいという決意表明にかえさせてもらいます。
○海老沢参考人 地上デジタルはこれからの課題であります。私ども、当面は、地上デジタル放送への移行をやる前に、まず、BSデジタル放送の普及に、今、力を注いでおります。これをきちっとした形で軌道に乗せ、成功させませんと、次の地上デジタルの方へもスムーズに、円滑にいきませんので、今その努力をしております。
そういう面で、これから電波法の改正案が成立し、そしてアナ・アナ変更が具体的に始まる、そういう段階で、視聴者国民に詳しく説明し、意向を聞かなければならぬだろう、そう思っております。
○海老沢参考人 BSデジタル放送を十二月一日に立ち上げて、非常に順調にスタートを切れたと思っております。そういう中で、一つの大きな目標といいますか、これを推進すれば、私は、BSデジタル放送はかなりの普及が達成できるだろうと見ております。やはり地上デジタル放送というのは世界の大きな流れでありますし、新しい技術を活用するのも我々の使命だろうと思っております。
そういう面で、BSデジタル放送をさらに普及させ、やはり地上デジタルの方も取りかかっていきませんと、視聴者のニーズにこたえることができない、そういう考えで、これからも、総務省、民放ともどもいろいろ協議をしながら円滑に着実に進めていきたい、そう思っております。
(私論.私見)