「ロ事件五周年特別番組自主規制事件」

 「ロ事件五周年特別番組政治圧力事件」というのがある。木村愛二氏の「NHK腐蝕研究」で取り上げられており、これを参考にする。但し、珍しくも観点が逆になっているので、資料面のみいただく。以下、れんだいこ流に纏めていきたい。

 1981年前後の頃、「ニュースセンター9時」が、「「ロ事件五周年特別番組・ロ事件報道特集」を企画した。

 1.19日、 「取材部長会」が開かれている。出席者は、報道局次長、政治部長、経済部長、社会部長。そして、ロッキード企画の提案者・社会部長。島局長は不在。

 1.20日、「検討会」。呼びかけは社会部。政治、経済、社会、整理、外信、報道番組、カメラ取材の各部デスクが出席。三木元首相などの政治家インタビュー取材が決められ、政治部が担当することになった。三木元首相に「いったんは断わられたのに、ぜひお願いしたいと再度申し入れ」、「事件当時の首相としての話」を取材し、10分程度のビデオテープ録画をした。概要「ロッキード事件を簡単に風化させてはならない。事件がおきたとき、私は徹底解明して疑惑を解消しなければならないと思った。政治の腐敗は世の中の乱れのもとだ。政治倫理を確立させることが重要だ」。

 2.4日、「ニュースセンター9時」が、「「ロ事件五周年特別番組・ロ事件報道特集」を報道した。この時、三木元首相のコメントがカットされるという自主規制事件が発生した。当時、報道局長であった島桂次は、カットの理由として「バランスが取れない為」と説明した。放映直前の午後六時にはNHKの「部長」、翌日には「担当局長」が三木側に頭を下げにいっている。これを仮に「ロ事件五周年特別番組自主規制事件」と称することにする。

 当時の多くの識者が、「NHKに闇の力働く」としてこれを疑惑し、概要「NHKは政治圧力に屈するな」の論調が飛び交った。

 3(2?).6日付朝日新聞は、三面記事欄に、「ロ事件五周年、三木元首相インビュー、NHK、直前カット」の四段の大見出で報じた。これを仮に「朝日スクープ」とする。サンデー毎日3.8日号が6ページの特集を組み、題して「NC9ロッキード五周年カット事件の二週間、NHK報道局長VS現場記者」。担当の記者は、鳥越俊太郎と茂木和行。週刊文春3.5日号が4ページの特集、週刊新潮2.19日号が半ページのゴシップ扱い、文化評論3三月号が「マスコミ時評」欄で見出しなしのガヤ扱いで3分の1ページ。

 概して「政治圧力事件」と報ぜられたが、NHKは次のように防戦した。「圧力うんぬんについてはあり得るはずはない」、「外部からの圧力とかいうことは一切ありません」、「(三木談話カットは)担当者の判断だ。ビデオテープの編集では、カットするのはしょっちゅうやってることだ。それをいちいち外部からいわれては仕事にならない」。

 これを擁護する側のコメントとして、週刊新潮2.19日号が、「NHK報道局の事情に精通している某氏の話」として、次のような談話を載せている。 「三木さんの話がつまらなかったんだよ。それだけさ。あの、いつもの三木さんの調子で“政治の腐敗は世の中の乱れのもと”とかなんとか、グダグダやったんだね。で、報道局長が“こんなものやめちまえ”といったんだ。田中派の圧力でも何でもない。ただ、それを日放労(NHK労組)がまた編集権の侵害だとか、圧力があったんだとか騒ぎだし、新聞にも聞えてあの騒動になった。しかし、NHKとしては、三木さんの話がつまらなかったから、なんていえないからねえ」。

(私論.私見) 「ロ事件五周年特別番組自主規制事件」考

 「ロ事件五周年特別番組自主規制事件」をどう評すべきだろうか。この事件からまもなく25年になろうとしている。多くの自称ジャーナリスト、自称知識人、自称左派が、「自主規制」を「政治圧力」と捉え、公共電波であるNHKの権力容喙性を指弾した。これらの「正義のペン」は一見正しいように見える。しかし、果たして本当に「正義のペン」だったのだろうか。

 れんだいこは、田中角栄論ロッキード事件で「田中角栄政界追放運動の虚構」を解析した。この観点からすれば、「ロ事件五周年特別番組自主規制事件」は別の面貌を現してくる。「自主規制」したNHKの方に良識があり、「正義のペン」を振るった側の方が事大主義者であった、という実像が浮かび上がってくる。

 れんだいこ史観に拠ると、角栄は戦後保守本流を形成した政権ハト派の正真正銘のリーダーであった。その彼が米日反動派による政界追放運動により羽交い絞めされたことで、真性ハト派の威勢が失速し始める。代わって台頭してきたのが、戦前並み+国際シオニズムが合体した変態タカ派であった。2005年初頭現在の小泉政権は、国富という国富を国際金融資本に売り渡し続けているという意味で、タカ派の正体とタカ派系政治の愚昧さを満天下に晒している。

 いわゆる「正義のペン」派は、このタカ派台頭過程に随伴するパラサイトである。してみれば、「ロ事件五周年特別番組自主規制事件」の際の「正義のペン」派の理論理屈をそのような眼で捉え返す必要がありはしないか。この時活躍した面々を見よ。その後順調に出世階段を上り詰めており、今もしたり顔で説教しているが、ろくなのがいやしないではないか。

 2005.2.9日 れんだいこ拝





(私論.私見)