「マスコミの過剰加熱取材について」

 更新日/2021(平成31→5.1栄和改元/栄和3)年.6.10日

 (れんだいこのショートメッセージ)
 我が国のマスコミ記者達の取材が尋常でないのは確かなように見える。諸外国先進国の在り方との比較をしてみたいが知識が無い。少なくとも、次のことは銘記されるべきだろう。

 1985(昭和60).6.18日の豊田商事会長刺殺事件時のマスコミの役割、同じく1995(平成7).4.23日のオウム真理教村井刺殺事件時のそれ。これらはいずれもマスコミ衆人環視の最中で、あたかも儀式のようにして「魔女狩り風死刑殺人」が執り行われた。その現場のスクープ競争が演ぜられたが、これに異常を感じない者がいたとしたら、漬ける薬が無い。これは、特殊な殺人手法として今後も繰り返される恐れがある。これにつきマスコミは真摯な反省の上にたって教訓化しているのだろうか。

 同じくオウム真理教の松本サリン事件での容疑者河本氏の犯人扱い騒動、真相は定かでないが三浦氏ロス事件騒動、神戸少年A事件、和歌山カレー事件騒動等々がすぐにでも思いつく。

 その源流に、ロッキード事件での角栄糾弾報道があるように見える。あの時の取材合戦及び容疑段階での罪人扱いは空前のものが有った。付言すれば、マスコミだけのことではなかった。第一審判決が下された日と記憶するが、法廷周辺では右翼が罵声を浴びせ続けていたことはまだしも、何しろ社共及びその系譜労組までもがよりによって「御用ちょうちん」もって目白邸を包囲し、それをさも正義のジハードとしてマスコミが大々的に煽るという醜態が演ぜられた。当時の関係者よ、今でも良い左派運動と「御用ちょうちん」とがどう整合するのか弁明してみよ。


 もとい本題に戻る。マスコミは著作権研究には敏いが、こういう自身の否定的自己切開にはからきし向かわないようである。れんだいこ観点に拠れば、今後このような取材過程で又もや「魔女狩り風死刑殺人」が発生したとすれば、取り巻いていたマスコミ各社要員には相応の責任が問われるべきではなかろうか。遺族は問うべきであろう。そういう意味でマスコミ各社は保険担保を十二分にしておく必要があると思われる。

 2004.2.29日再編集 れんだいこ拝


「浅田農産会長夫妻自殺事件」考 れんだいこ 2004/03/09
 2004.3.8日、「浅田農産会長夫妻自殺事件」が発生した。これも明らかにマスコミの過剰加熱取材の犠牲と云えよう。平生はお気に入りのものしかみないテレビであるが、目下丁度風邪で寝込んでおり、マスコミの「過剰加熱取材」の様子を目の当たりにすることができた。

 マスコミの諸君は何をとち狂っているのか分からないが、検察官の猿真似しつつ釈明インタビューを強要していた。何の権限に拠っているのか分からないが、横柄にしてぞんざいな集団的言語暴行でもって、あたかも捕捉した獲物を執拗にいたぶる悪趣味を見せていた。それとも、今回はかなり自粛的にした結果があの程度だったのだろうか。

 マスコミの諸君の正義感が如何に安上がりにして便宜憑依的にして自己都合的なものかは、彼らの生態を知る者なら誰でも分かっている。むしろ、これほど卑怯な人種はいないと云っても過言ではないのに、正義感ぶって何の権限ありてか不明だが先行裁判して楽しむ作法はやめてくれ。情報取りはあくまで冷静に要所のツボを得て的確に、タイムリーに為してくれ。

 君達はそれを極力「公正」客観的に報じてくれれば良い。言い添えておくが、「公正」とは、当局の受け売りをすることではないぞ。利権とかブームに操られて筆を曲げないようにという意味だ。肝心のここが出来ないのに、正義感ぶるところだけは一人前とはあぁ。

 君達の腕は、君達が有能であれば、それから始まる。取材事件の背景と原因と今後の手立て、その実効の追跡等々にコメントする事において才を示せばよいのだ。これができない輩が、入り口で武者震いしてとんだ検察官になっている姿がおぞましくもあさましい。

 マスコミは、「浅田農産会長夫妻自殺事件」に接してみてもカエルの面にションベンで、「船井農場での被害の届出の遅れや感染拡大への責任を感じ、自殺した」、「逮捕を恐れ、その不名誉を悩んでいた」などとあらぬ方向へ推測しているが許し難いものがある。浅田会長は7日午後、本社で長男の浅田秀明社長(41)らと記者会見し、これまでの経緯などを聞かれ、「司法の場で明らかにしたい」と話していたことを思えば、記者会見時までは事後処理への対応で頭が一杯だったことが分かる。

 記者会見前後のマスコミ攻勢により一気に厭世気分が高められ、これに事業の先行きが覚束なくなった絶望感その他諸々が重なり自殺に追い込まれたと見るのが普通ではないのか。

 してみれば、マスコミ・新聞社協会は、取材方法に行き過ぎがなかったか、これまでの教訓がどの程度生かされていたのかいなかったのか、緊急に討議せねばならないのではなかろうか。「あらぬ方向へ推測して」責任転嫁し、昨日も今日も明日も元気に正義であり続けられる手前勝手さを自己切開せねばならぬのではなかろうか。

 (「浅田農産会長夫妻自殺事件」参考資料)

 2004.3.8日、鳥インフルエンザ騒動の最中、国内3例目の感染が確認された「浅田農産船井農場」(京都府丹波町)の経営者・浅田農産会長(浅田肇、67歳)夫妻が、同農産本社の鶏舎近くで首吊り自殺しているのが発見された。2人は背中合わせの状態で首をつっていた。自宅のダイニングルームのテーブルに「たいへんご迷惑をかけました」などと書かれた遺書があった。

 浅田会長は、1973年に父親の代からの養鶏業を引き継ぎ会社を兵庫県佐用町に設立。74年に本社を姫路市内に移転。75年に浅田農産と改称。年間売上高30億円を超える企業に育て上げた。民間の信用調査機関によると、浅田農産は5農場で、175万羽(昨年10月現在)を飼育している。2001年5月に日本養鶏協会の理事、2003.5月から副会長を務めていた。2004.2.28日、鳥インフルエンザ問題での対応を批判され辞任を申し出、3.1日、協会側は解任通知を出していた。

 2004.3.9日 れんだいこ拝

 4.12日の朝日コムに、「田中前外相、国会内の取材に『善処』求める」の見出しで、次のような記事が載っていた。

 田中真紀子前外相は12日、国会内での報道各社の取材が過熱しているとして、善処を求める申入書を鳩山邦夫・衆院議院運営委員長あてに出した。議運委は16日に国会内の秩序の維持などを協議する警察小委員会(小坂憲次小委員長)を開き話し合う。

 申入書によると、田中氏は「一部週刊誌による私についての報道以来、メディア各社が国会内においても連日私の身辺に殺到し極めて危険な状態が続いております。本会議や委員会の出席もままなりません」と指摘。「議院運営委員長におかれまして善処していただきますようここにお願い申し上げます」と結んでいる。同日午後、田中氏本人が議運委員長室を訪ねて提出した。鳩山委員長は不在だったという。


 集団的過熱取材 「犯罪事故関係者への配慮を徹底」−−雑誌協会が見解
 
 
日本雑誌協会(浅野純次理事長、93社加盟)は9日、大事件・事故の際に多数の取材陣が関係者に殺到し、プライバシー侵害などを引き起こす「集団的過熱取材(メディア・スクラム)」についての見解を発表した。

 見解は雑誌が新聞やテレビと違い集団的過熱状態での取材になじまない取材方法を持つメディアであると指摘した上で、これまでも「雑誌編集倫理綱領」に基づいて「犯罪・事故報道における被疑者や被害者の扱いには十分注意」を払ってきたと主張、今後も同綱領の趣旨を取材現場でさらに徹底させるとしている。 (毎日新聞2002年5月10日東京朝刊から)

 2001.12.20、 集団的過熱取材(メディア・スクラム)問題に関する民放連の対応について 」。
 社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=氏家 齊一郎・日本テレビ放送網会長〕の報道委員会〔委員長=氏家 齊一郎・同〕は、本日(12月20日)、集団的過熱取材(メディア・スクラム)問題について、被害の防止や問題解決のため、取材上の留意点および対応策をとりまとめました。 なお、対応策の中で、集団的過熱取材問題に関する民放連における窓口となっている報道問題研究部会は、報道委員会の下部組織で在京テレビ5局の報道局次長クラスで構成されている組織です。

集団的過熱取材問題への対応について

 大事件や大事故が発生した時などに、多数の取材陣が当事者や関係者に集中し、取材対象者のプライバシーや一般市民の平穏な生活が侵されているという批判の声が高まっている。民放連会員各社は、取材のあり方を改善し、視聴者の理解を得るための自主努力を続けているが、このような「集団的過熱取材」による被害の防止や問題解決のために、各社共通の留意点を現場取材者に徹底するなどの対応を取るべきであるとの認識に達した。
もちろん、こうした対応を行うことが、「知る権利」に応えるために本来必要な取材を控えることを意味するものではない。取材対象者が政治家や官僚といった公的人物の場合などは、取材の公共性や報道の公益性を優先させることがある。
なお、この問題は、全てのメディアが一致して取り組まなければ、実効性がないことから、新聞界、雑誌界などとの連携を図っていきたいと考えている。

1.集団的過熱取材に関する取材上の留意点
「民放連・報道指針」は「取材対象となった人の痛み、苦悩に心を配る。事件・事故・災害の被害者、家族、関係者に対し、節度をもった姿勢で接する」と明記している。取材者が集団化して取材相手に圧力を加えかねない状況においては、上記の指針がより厳格に守られる必要がある。
特にテレビは、記者・カメラマンなど一定の人員、中継関連の車両・機材などを展開しなければならず、その媒体特性から来る物理的な要因を踏まえた十分な配慮が求められる。
具体的には各社の社内規範に従うが、現場の取材者は以下の点に留意すべきである。
@いやがる取材対象者を集団で執ように追いまわしたり、強引に取り囲む取材は避ける。未成年者、特に幼児・児童の場合は特段の配慮を行う。
A死傷者を出した現場、通夜・葬儀などでは、遺族や関係者の感情に十分配慮する。
B直接の取材対象者だけではなく、近隣の住民の日常生活や感情に配慮する。取材車両の駐車方法、取材者の服装、飲食や喫煙時のふるまいなどに注意する。

 2.集団的過熱取材への対応策
 突発的な事件・事故の初期段階においては、できる限り早く状況を把握し視聴者に伝えるために、各社が複数の取材クルーを派遣することがあり、取材者が集中する事態を規制することは難しい。また、予定されたイベントであっても、一般の関心が高い場合、異なるメディアから多数の取材者が集中することもある。
こうした事態が集団的過熱取材に至り被害を発生させないように、まず、各社内および系列内において、社会情報系を含め、記者、ディレクター、カメラマンの数を調整するなどの措置を具体化する。さらに、現場に集まった取材者がメディアの枠を超えて新聞やNHKなどとともに問題解決のための方法を模索し、被害の回避に努める。記者クラブがある場合には記者クラブを中心に協議する。現場レベルでの解決が困難な場合は、民放連・報道問題研究部会が窓口となり、関係の報道部長会などと協力しながら調整する。また、マスメディア界全体での取り組みが必要な場合は、日本新聞協会と連携しながら、雑誌など他のメディアに対しても協力を呼びかける。
われわれは、この取り組みを積極的に推進していくことで、視聴者からの信頼をより確実なものにしていきたいと考えている。
以 上

 被害者や家族らの苦痛に配慮
 事件や事故の際に見られる集中豪雨型の集団的過熱取材(メディア・スクラム)に昨今、批判が高まっている。この問題にメディアが自ら取り組み自主的に解決していくことが、報道の自由を守り、国民の「知る権利」にこたえることにつながると考える。こうした認識に立って、日本新聞協会編集委員会は、集団的過熱取材にどう対処すべきかを検討し、見解をまとめた。

 集団的過熱取材とは、「大きな事件、事故の当事者やその関係者のもとへ多数のメディアが殺到することで、当事者や関係者のプライバシーを不当に侵害し、社会生活を妨げ、あるいは多大な苦痛を与える状況を作り出してしまう取材」を言う。

 このような状況から保護されるべき対象は、被害者、容疑者、被告人と、その家族や、周辺住民を含む関係者である。中でも被害者に対しては、集団的取材により一層の苦痛をもたらすことがないよう、特段の配慮がなされなければならない。

 集団的過熱取材は、少数のメディアによる取材である限り逸脱した取材でないにもかかわらず、多数のメディアが集合することにより不適切な取材方法となってしまうものだ。また、事件・事故の発生直後にとくに起きやすく、そのような初期段階での規制は必ずしも容易ではない。このため、取材現場を必要以上に萎縮(いしゆく)させないということにも留意しつつ、次のような対応策をまとめた。

 すべての取材者は、最低限、以下の諸点を順守しなければならない。

 (1)いやがる当事者や関係者を集団で強引に包囲した状態での取材は行うべきではない。相手が小学生や幼児の場合は、取材方法に特段の配慮を要する。

 (2)通夜や葬儀、遺体搬送などを取材する場合、遺族や関係者の心情を踏みにじらないよう十分配慮するとともに、服装や態度などにも留意する。

 (3)住宅街や学校、病院など、静穏が求められる場所における取材では、取材車の駐車方法も含め、近隣の交通や静穏を阻害しないよう留意する。

 不幸にも集団的過熱取材の状態が発生してしまった場合、報道機関は知恵を出し合って解決の道を探るべきであり、そのためには、解決策を合同で協議する調整機能を備えた組織をメディア内部に持っておく必要がある。

 調整は一義的には現場レベルで行い、各現場の記者らで組織している記者クラブや、各社のその地域における取材責任者で構成する支局長会などが、その役割を担うものとする。解決策としては、社ごとの取材者数の抑制、取材場所・時間の限定、質問者を限った共同取材、さらには代表取材など、状況に応じさまざまな方法が考えられる。

 また、現場レベルで解決策が見いだせない場合に備え、中央レベルでも、調整機能や一定の裁定権限を持った各社の横断的組織を、新聞協会編集委員会の下部機関として設けることとする。

 集団的過熱取材の被害防止は、各種メディアの一致した行動なしには十分な効果は期待できない。このため新聞協会としては、放送・雑誌など新聞以外のメディアの団体に対しても、問題解決のための働き掛けを行うことを考えたい。なお、集団的取材であっても対象が公人もしくは公共性の高い人物で、取材テーマに公共性がある場合は、一般私人の場合と区別して考えることとする。

 われわれは今後も、必要に応じ見解を見直し、集団的過熱取材問題に適切に対応していきたいと考えている。各取材現場においても、記者一人ひとりが見解の趣旨を正しく理解し、この問題の解決に取り組んでほしい。



集団的過熱取材で防止策

(2001年12月25日付)

 大事件や大事故の際、被害者らのもとに多数のメディアが殺到し、プライバシーを侵害する集団的過熱取材(メディア・スクラム)の防止策を検討してきた日本新聞協会の編集委員会が6日、見解を打ち出した。
 見解では、メディア・スクラムから保護されるべき対象を「被害者、容疑者、被告人、その家族や周辺住民を含む関係者」と規定。取材者が最低限守るべきルールとして、(1)当事者らを集団で強引に包囲した状態で取材しない(2)通夜葬儀、遺体搬送などの取材では、遺族らの心情を踏みにじらない(3)住宅街や学校、病院などの取材では、近隣の交通や静穏を阻害しない――を挙げている。
 これらは人間として守るべき、文字通り“最低限”のマナーであり、十分な防止策とは言えまい。また、上司の命令で強引な取材を余儀なくされ、悩む記者も多い。取材人だけの問題ではない。
 しかし一方、見解の中で、記者クラブなどを調整役とした取材場所・時間の限定や共同取材など、現場レベルでの解決策を例示したほか、一定の裁定権限を持つ調整機関を協会内に設けるとした点は注目に値しよう。
 以前から批判のあったこの問題に今、マスコミ界が取り組む背景には、今年5月、法務省の人権擁護推進審議会が過剰な取材を救済対象とする答申を出すなど、メディア規制の動きに対する危機感もある。自主的な解決への取り組みこそ「報道の自由を守り、国民の『知る権利』にこたえることにつながる」(新聞協会見解)のだ。
 問題解決に向け、新聞協会は他のメディア団体へも働き掛ける考えを表明。20日には日本民間放送連盟も対応策を発表した。この潮流をマスコミ全体に広げるとともに、より実効性のある解決策へと深化させる努力を続けたい。
(落合克志記者)





(私論.私見)