「鹿砦(ろくさい)社裁判」
(「鹿砦社社長・松岡利康不当逮捕裁判闘争」)考

 (最新見直し2006.7.4日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 出版会社「鹿砦社」社長の松岡利康(現在54歳)氏が、発行する定期刊行誌及び書籍の記事責任を問われて逮捕され、長期拘留されるという事件が起こった。その経緯を見てみると、れんだいこ感想として松岡氏のヤリスギの面が無い訳ではない。だがしかし、松岡氏逮捕は、文筆責任を問うよりも、言論弾圧の臭いの方が濃厚ではなかろうか。早速、れんだいこのアンテナが動き始めた。

 松岡氏は当然、権力弾圧許さじの立場から法廷闘争に突入した。2006.4.21日、検察は懲役1年6ヶ月執行猶予無しを求刑した。その法理論は、この種のものとして粗雑で、執筆、編集、経営のそれぞれの責任という質の違いに応じて法理論を説き分けることなく、いわば団子状態のまま松岡氏への文筆責任を問うものとなっている。これにも、れんだいこのアンテナが動き始めた。

 そこで、既設「鹿砦社社長松岡氏被逮捕事件」を取り込む形で本サイトを設け、「鹿砦社裁判」を検証することにした。

 2006.4.22日 れんだいこ拝

【鹿砦社とは】
 「会社概要」を参照する。鹿砦社(ろくさいしゃ)は、1969年、東京都千代田区神田駿河台にて、歴史・哲学・社会科学関係の人文書を扱う出版社として起業された。1972(昭和47).1.31日、株式会社鹿砦社を設立登記。社是として、「私たちは小さくても強い会社を目指します。そのために日々決戦、一日一生、凡事徹底、一所懸命、脚下照顧、自力更正、永続革新に努めます」を掲げる。「マルクス主義軍事論」、「左翼エスエル戦闘史」等を出版している。

 1988(昭和63)年、代表取締役社長に松岡利康氏が就任し、本社を兵庫県西宮市鳴尾町に移転する。松岡氏は、季刊誌「スキャンダル大戦争」を発行するなど「芸能スキャンダルで稼ぎ、ヒューマン路線や人文書、社会問題の貴重書籍を発行する」路線へ向った。1995(平成7).1月、阪神大震災で本社被災し、同年12月、兵庫県西宮市甲子園に本社を移転し現在に至る。

 岡留編集長の月刊「噂の真相」休刊後、その後継誌として、2005.4.7日、社会不正告発を旨とした「紙の爆弾」を創刊し、以降月刊で発行し続ける傍ら、単行本も発刊してきた。

【松岡氏の履歴、言論活動概要】
 鹿砦社の経営責任者・松岡氏の履歴は次の通り。熊本県生まれ。1970年、同志社大学へ入学し、学生運動に身を投じる。但し、ノンセクト・ラジカルの立場で関わり、文学部自治会委員長に就任する。学費値上げ阻止闘争でキャンパス校舎に立てこもり、逮捕される。この時培われた反権力意識が、その後の松岡氏の身の振り方を規定していく。

 2003.4.1日よりインターネット上で「甲子園だより」を発信し続けている。同通信は、70年代の学生運動風景を追憶しており好評を得ている。


 草加耕助氏主宰の「旗旗」の「鹿砦社・松岡さん拘留理由開示裁判の傍聴報告」が冒頭で次のように紹介している。
 「具体的な報告に入る前に、知らない方のために簡単に書いておきますと、鹿砦社は関西の出版社で、左翼系の軍事論を古典を含めて多く出版している硬派の出版社でした。松岡さん自身は同志社大学で全共闘運動に参加しておられた方です。現在では『紙の爆弾』という、企業や有名人の不正やスキャンダルを実名で暴くという趣旨の雑誌を出していて、これが鹿砦社の看板雑誌になっています。まあ、かつて名をはせた『噂の眞相』(現在は休刊)を関西人が作ったらこんなものになるという感じの雑誌です」。

【「鹿砦社裁判」の伏線その1、プロ野球の阪神の元スカウトマンの不審死事件】
 1998.8.31日、プロ野球球団・阪神のスカウトマン・渡辺省三氏がビルから転落死で発見された。球団と関係している読売新聞は、転落死として報道した。兵庫県警生田警察署は、「ビルからの飛び降り自殺」だとして処理した。しかし、同スカウトの長女N女史が、「殺された可能性がある」として警察に再捜査を要請し始めた。松岡氏は、N女史の非力な活動に共鳴し接点を持った。以降共同して告発していくことになる。これを仮に「阪神事件」と仮称する。

 松岡氏は、N女と共同して「阪神事件」を告発し、渡辺氏殺害に加わったと思われる同僚2名を推定し、その実名を挙げ告発する文章を「スキャンダル大戦争」シリーズに数回にわたって掲載した。1999.7月、容疑者不詳の殺人容疑で神戸地検に告発した。2002.4月、「阪神タイガースの闇」を発行した。

 松岡氏は、「阪神事件」で蠢いた元「常任顧問」が兵庫県警暴対課の幹部にして「山一戦争」時の兵庫県警の現場責任者だったことに注目し、「警察の天下り問題」(阪神球団常任顧問のポストは兵庫県警暴対の天下りポストといわれている)にもメスを入れようとした。

【「鹿砦社裁判」の伏線その2、パチスロ機製造の大手メーカであるアルゼの実態】
 パチスロ機製造の大手メーカーのアルゼは、資本金34億4600万円、年間売上高700億円超の業界bP企業で店頭公開企業(ジャスダック)でもある。前田健治・元警視総監が顧問として就任するなど警察官僚の天下りを抱えつつ、業界bPの権益を恣(ほしいまま)にしていた。最高経営幹部役員の会長・岡田和生は、高額納税者の常連にして複数の愛人を持つリッチマンであった。松岡氏は、同社にダーティーさを感じ取り、これを社会不正として捉え告発していくことになる。これを仮に「アルゼ事件」と仮称する。

 松岡氏は、03ー.4年にかけて「アルゼ事件」を告発し始めた。会長・岡田の複数愛人の実態暴露を始めとする私生活や逮捕歴に言及、同社の業務に関する不正告発、脱税容疑などを内容とした文章を掲載、書籍を発行した。著者「松岡利康&特別取材班」名で、2003.4月「アルゼ王国の闇ー巨大ミューズメント業界の裏側」を皮切りに、第2弾として2003.9月「アルゼ王国はスキャンダルの総合商社」、第3弾として2004.3月「アルゼ王国の崩壊」、第4弾として2005.3「アルゼ王国地獄への道」を立て続けに4点刊行した。

 アルゼは、第2弾に対して、アルゼが名誉毀損で東京地裁に訴えた。2005.4.16日の公判廷で、アルゼ会長・岡田は、「筆舌に尽くせない被害が出た」と証言した。6.13日に結審し、判決を待つ。アルゼは、神戸地裁尼崎支部に出版差し止めを申し立てと3億円の損害賠償請求訴訟を次々と提訴したが却下された。第1弾の差し止めが認められ、大阪高裁で公告審が続いている。

【松岡氏の文筆責任とは】
 松岡氏は、「阪神事件」と「アルゼ事件」の両件での執筆及び出版により、阪神球団関係者とアルゼから名誉毀損で告訴された。名指しされた当事者への名誉毀損侵害が問われることになった。

 2005(平成17).7.11日、神戸地検で2回目の聴取。同夕、朝日記者の取材に応じる。翌朝の紙面(大阪本社版)に記事掲載される。

【松岡氏逮捕される】
 2005(平成17).7.12日、松岡氏は、6月下旬頃より検察の出頭要請により2度任意で取調べに応じてきていたがこの日、阪神タイガース元職員やパチスロ製造会社役員らを書籍やインターネット上での記述による名誉棄損罪、プライバシー侵害罪に問われ、本社、支社、松岡社長自宅に大掛かりな家宅捜索が入った。家宅捜索は、大株主の会社にまで及び、更に取次会社、製本所、倉庫、頒布書店にまで及び、任意での事情聴取や資料提出を強いるものとなった。明らかに異常な「やり過ぎ懲らしめ」が発生した。

 松岡氏は、神戸地検特別刑事部により逮捕された。本来なら、問題にするとしても、民事裁判でやるべきところである。ところが、検察が刑事事件として扱った。

 「名誉毀損での逮捕は、月刊ペン事件(1976年)以来」となった。同種事件として他に「噂の真相事件」(1995年)がある。「月刊ペン事件」(1976年)では、3月号、4月号が創価学会の池田会長スキャンダル記事を書いたところ、同年4月、創価学会は編集長を名誉毀損罪で告訴。同誌の編集長が逮捕され25日間勾留、1審、2審とも記事には公益性がないとして罰金25万円の判決となった。最高裁で差し戻し後、審理中に被告の編集長が死亡した為被疑者不在となり裁判が終結した。

 「噂の真相事件」(1995年)では、西川氏と和久氏に関わる記事の両方の名誉毀損を併合して刑事事件にされた。「噂の真相」の岡留編集長とデスクが在宅起訴された。即ち身柄は拘束されなかった。編集長に懲役8月(求刑10月)、デスクに懲役5月(求刑6月)、各執行猶予2年の判決となった(最高裁で確定)。

 鹿砦社は直ちに「不当逮捕。憲法で保障された表現の自由への挑戦で、言論弾圧である」として次のような抗議声明を発表した。

 鹿砦社の松岡社長逮捕の声明文

 拝啓 平素は小社活動にご注目いただき、厚く御礼申し上げます。本日、鹿砦社代表取締役 松岡利康が、大手パチスロ機器メーカー「アルゼ」及び阪神タイガース球団に対する告発書籍、及びそれに関連するインターネット上での記述について、名誉毀損の疑いで神戸地検特別刑事部に逮捕されました。これは不当逮捕です。憲法で保証された「表現の自由」への挑戦です。言論弾圧です。鹿砦社としては、断固戦います。

 小社<アルゼ本>第2弾『アルゼ王国はスキャンダルの総合商社』(2003年9月10日発行)の内容が名誉毀損にあたるかどうかについて、東京地裁における民事控訴で係争中です。特に、第3弾『アルゼ王国の崩壊』(2004年3月1日発行)及び第4弾『アルゼ王国 地獄への道』(2005年3月25日発行)につきましては、神戸地裁尼崎支部より差し止めの仮処分を受けたものの、地裁の判断によりすでに却下されております。

 小社代表松岡は、2度にわたる事情聴取を神戸地検で受けており、証拠の隠滅や逃亡のおそれは全くありませんでした。なぜ逮捕する必要があったのか。全く理解できません。逮捕という2文字は、非常に重く、言論弾圧にほかなりません。松岡の矜持は、市民の視線から声を拾い上げ、伝えることでした。それを実践したのがアルゼであり阪神タイガースへの告発でした。小社としては、今回の不当逮捕について断固として闘います。本件は言論にたいする権力の介入であり、決して一出版社、一企業の問題ではありません。皆様のご賛同、ご支援をお願い申し上げます。 敬具

 2005年7月12日 株式会社鹿砦社


 松岡氏は、「これは不当逮捕であり、憲法で保証された「表現の自由」への挑戦と受け止め、当社といたしましては、断固戦う所存でございます」との決意を表明した。「松岡支援の会」(代表世話人 永岡浩一)が組織された。同会は、「参考になる資料とデータ集」、「公判記録インデックス」に鹿砦社裁判の貴重な資料を保存している。

【「逮捕ー長期拘留ー接見禁止」のまま「鹿砦社裁判」始まる】
 松岡氏は、逮捕直後は、せいぜい10日ほどの勾留で不起訴になると考えていたが、20日間の勾留後起訴され、以降4ヶ月を過ぎても勾留され続け、保釈はおろか、接見禁止された。第1回公判の後、接見禁止は解除されたが、これにより弁護士との短い打ち合わせ以外、手紙も含めて外部との接触が遮断されるとしい不当な扱いを受ける身になった。こうして、この種の事件として前例を見ない「逮捕ー長期拘留ー接見禁止」が続くことになった。

 7.19日、神戸地裁で、拘留理由が開示された。「旗旗」氏が、「2005.7.19日、鹿砦社・松岡さん拘留理由開示裁判の傍聴報」で事件を伝えている。
 8.1日、起訴(罪状は逮捕時と同じ)された。保釈請求は、「罪証隠滅の怖れ」という理由付けで却下された。

 8月、鹿砦社本社が閉鎖された。

 9.6日、鹿砦社は次のような声明を発表している。
 鹿砦社代表・松岡利康"名誉毀損"事件 2005年10月17日(月)午後3時、初公判始まる! 皆様のご注目をお願いいたします!

 株式会社鹿砦社代表・松岡利康、"名誉毀損"事件初公判の日程が、2005年10月17日(月)午後3時より神戸地裁101号室で行われます。この事件の性質上、読者の皆様、そして言論に携わる皆様のご注目そのものが、司法の判断に対して大きな影響を与えます。可能ならば足をお運びいただきますよう、お願い申し上げます。

 去る7月12日の逮捕により始まった鹿砦社"名誉毀損"事件。納得できる逮捕・勾留理由が示されないまま、8月1日には起訴(罪状は逮捕時と同じ)され、当方が提出した保釈請求も「罪証隠滅の怖れ」という言葉のみで却下されてしまいました。事件の詳細と弊社の主張につきましては、月刊『紙の爆弾』9月号、10・11月合併号をご参照ください。

 これまで主張してまいりましたとおり、この事件の第一の問題は「逮捕・長期勾留の必要性が本当にあるのか」という点にあります。すでに発売された書籍における表現が問題であるならば、すでに"証拠"は隠しようがありません。

 起訴についても、もちろん不当起訴であり、言論に対する不当な攻撃であると考えざるをえません。それでも"名誉毀損"について、真面目に議論するのであれば、すでに弊社アルゼ関連本について民事訴訟で争ってきたとおり、当方の考えを主張する準備は整っております。

 弊社は激励、支援を寄せてくださる皆様と連帯し、松岡利康無罪へ向けた闘いに邁進することをここに宣言いたします。


 10.17日、神戸地裁101号大法廷で初公判。松岡氏は手錠・腰縄姿で登場した。松岡氏は、憲法21条の「言論、出版その他の一切の表現の自由は、これを保障する」、刑法230条の2項の「公共の利害に関わる事実に関わり、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、事実であることの証明があったときには、これを罰しない」を論拠として無罪を主張した。更に、企業や巨悪の不正に対しこれを告発し真相究明するのは正当な言論活動であり、これを罰するとなるやジャーナリズム活動に恐怖や萎縮、威嚇効果を与えることとなり容認できないと主張した。併せて、長期勾留と接見禁止の不当性を告発した。保釈請求したが再度却下される。

 12.19日、神戸地裁101号大法廷で第2回公判。検事側証人として阪神側の2名(末永氏・笠間氏)が証言した。

 2006.1.20日、神戸地裁201号法廷で、第3回公判。公判の冒頭は、検事側証人として、W氏が検事の質問に答えるという形で始まった。検事側は前回と同じ3名で、宮本・飯田・大口氏。検察、弁護人により実名表記を廻る遣り取りが質疑された。

【6ヶ月勾留後、松岡氏釈放される】
 第3回公判の夕刻、神戸地裁は4度目となる保釈申請を受けて松岡利康の保釈を決定し、松岡氏は保釈金300万円で釈放された。2005.7.12日の逮捕以来6カ月余りもの長期勾留となった。 

 松岡氏は、2006.5.29日付け「人権と報道連絡会ニュース第216号」で、「松岡氏不当逮捕ー長期拘留の背後にあるもの」について次のように推理している。興味深いので転載する。
 「西宮の一地方出版社に、なぜこれほど大掛かりな弾圧をする必要があったのか。そこには何か目的・背景があったと思う。神戸地検には東京や大阪の特捜に当る特別刑事部がある。昨年4月、その部長に大坪弘道検事が就任してから、2年前に阪神とアルゼが刑事告訴していた事件が急に動き出した。大坪検事は、大塚地検時代、検察の裏金を告発した三井環公安部長を逮捕して名を挙げた人物。三井氏と私が面識あったこと、雪印を内部告発した『西宮冷蔵』という会社を再建する会の会長が三井氏、副会長が私だったことが背景にあったという見方もある」。

【その後の裁判闘争】
 2.24日、神戸地裁101号法廷で、第4回公判。アルゼの岡田社長が証言した。検察側主尋問を受け、岡田氏は、概要「松岡君はアルゼの反目勢力から金をもらって書いたと思われ、当社は甚大な被害を蒙った。記事はペン暴力であり許し難く屈辱的であった。厳罰を要求する」と述べた。

 3.3日、神戸地裁は、松岡氏と同じく名誉棄損罪に問われていたスカウトの長女渡辺直子被告(48)に対し、懲役8月、執行猶予4年(求刑懲役8月)の判決を言い渡した。佐野哲生裁判長は、概要「渡辺被告は02−05年、父親の転落死をめぐり、球団の元職員2人の実名を出して殺害にかかわったかのような記事を鹿砦社の季刊誌や自分のホームページに書き、名誉を傷つけた。球団の元職員2人が父親を殺害した証拠は何ら存在しない。名誉は著しく害され、回復は容易ではない」と判決理由を述べた。

 3.17日、神戸地裁101号大法廷で第5回公判。被告人質問。 

 4.21日、 神戸地裁(佐野哲生裁判長)で第6回公判。「鹿砦社裁判」(「鹿砦社社長・松岡利康不当逮捕裁判闘争」)の論告求刑公判が開かれ、検察側は、14ページにも及ぶ「論告要旨」を読み上げ、「表現の自由を乱用して私利私欲を図る被告に厳しい非難が向けられるべきで ある」として、懲役1年6ヶ月を求刑した。出版社(者)の言論活動に対する刑事裁判としては戦後最長の求刑となった。 

 閉廷後、松岡被告は記者会見し、「不当な求刑である。こんな判決が出れば言論は死滅する。次回公判で反論したい」と抗議した。「トピック」で、概要「検察は、前代未聞の懲役1年6カ月という重刑を求刑した。表現の自由の濫用をうたいながら、憲法21条の精神に触れず!私たちの出版活動が有罪となれば、これが既成事実となって、言論弾圧の常態化へ道を開くことになる。検察の論理を真っ向から批判し、総力で重刑攻撃を粉砕しよう!」と決意表明している。

 4.21日の求刑に対して、これを報じたのは日刊スポーツと地元テレビ局で、大手マスコミは黙殺した。


 5.19日、神戸地裁で第7回公判。弁護側の最終弁論、被告人意見陳述。松岡氏は次の言葉で結んだ。
 「本件は憲法21条に違反した不当な言論弾圧であり、万一裁判所が有罪判決をくだすなら、『憲法の番人』であることを自ら放棄するものである。歴史に禍根を残さない判断を求める」。

(私論.私見) 【「鹿砦社裁判」で何が問われているのか】

 この裁判の経緯がまだ掴めていないのだが、れんだいこの観点を書きつけておく。従来、れんだいこは、ペンの力で冤罪、犯罪を暴くということに言論の自由権の意味を見出している。これを認める度量の質によって社会の健全さがあるとみなしている。この観点に照らす時、「鹿砦社裁判」は厄介なことに二重になっている。二重とは、片方ではペンの正義を実践しており、他方でペンの暴力も見られる、という意味である。

 「阪神事件」の場合はこうなる。鹿砦社が「阪神事件」を取り上げたことは社会正義であろう。これが前半である。但し、「かの当時程度の調査力」で、被疑者2名の実名告発はいかがなものだろうか。それが蓋然性が高い場合は許容されるかも知れない。しかし、売らんかな主義で面白くしたということであれば、実名被告発人にとっては名誉毀損甚だしいだろう。冤罪であれば、逆に正義のペンが要求されることになる。これが後半である。つまり、この二つの要素が重なり合っていることになる。

 「アルゼ事件」も然りで、アルゼのダーティーな面の告発は社会正義であろう。これが前半である。但し、「かの当時程度の調査力」で、アルゼ及びその最高経営責任者を告発し続けるとすると、実名被告発会社及び人にとっては名誉毀損甚だしいだろう。これが後半である。つまり、この二つの要素が重なり合っていることになる。

 以上を受けて、れんだいこは次のように思う。言論の自由及び出版の自由権は如何に行使され、規制されるべきか。極力自由、自主、自律的でありたいのだが、なかなかそうは行かない。そこで、国家権力が乗り出してくるとなるとどういう関与が適正かという問題に収斂する、ということなのではなかろうか。

 思うに、この種の事件で、検察が執った出版社及び経営者の最高責任者に対して名誉毀損罪での「逮捕、長期拘留、接見禁止」は明らかに行き過ぎである。これが慣例となると、言論・出版・表現の権利という近代的人権規定の根幹が崩れるとみなさない訳には行かない。強権力時代への逆戻り、あるいは新到来というべきかも知れない。これには断乎として闘う必要がある。

 特に小泉政権以降の最近は、警察及び司法当局の権力乱用が目に余る。これまでにはなかったコジツケで、不当逮捕に及んでいる例が目立つ。「鹿砦社裁判」は明らかにこの系譜上で発生しているだけに、心ある者は闘わなければならない。れんだいこは、この根拠で「鹿砦社裁判に於ける松岡氏の闘い」を全面的に支援する。

 もう一つの問題として、執筆者及び担当編集者の過剰権利行使の問題も見つめなければならない。これにつき、執筆者及び担当編集者はあらかじめ相応の自由、自主、自律的弁えを持つべきであり、発表した記事に対する相応責任を負うべきだと考える。特に、根拠が曖昧なままの告発は、先の「民主党永田議員の国会質疑メール爆弾不発事件」で失態したように、追って本人に火の粉がかかってくる。そうなると、告発された者も告発した者にも双方が被害者になるという消耗な後味の悪さが残ることになる。この方面は、今後ますます経験が蓄積されるべきではなかろうか。言論人の弁えと自己規律の基準に関する自主的手引きづくりが急がれているように思う。

 以上を受けて、れんだいこは次のように思う。だがしかし、左派運動から見て今日的に問題になるのは、余りにも告発の弱さである。鹿砦社は今や希少の価値ある告発媒体である。その鹿砦社活動に権力的弾圧が見舞われることは、「鹿砦社裁判」を奇禍として言論界に一罰百戒式悪影響を及ぼすことになる。そういう意図が目論まれて「鹿砦社社長逮捕、長期拘留、接見禁止」となっているのであろう。れんだいこは、その傾向がますます強まることを憂う。故に支援する。

 心情的には、松岡氏が自己批判を伴う今後の取材規律姿勢を明らかにすることによって、革命的無罪を勝ち取りたい。裁判所は、権利というものは多少のブレをも包摂しながら擁護されていくものであるとの法理論を打ちすべきである。角を矯めて牛を殺す愚にならないような判決を出すべきである。現下の裁判所にそれを求めるのは、魚に木登りを願うようなものだろうか。

 れんだいこが「鹿砦社裁判」を他人事とは思わない注視する所以は、この種の不当弾圧が行使されればされる程に言論・出版・表現の自由権が空洞化させられ、やがてはれんだいこにもお縄にかけられる日が近いことを憂うからでもある。なぜなら、れんだいこは今、小泉首相の履歴に注目し、我がサイト「左往来人生学院」で若かりし頃のレイプ事件、議員になってからの神楽坂芸者殺し疑惑事件を堂々と告発している。「伝聞情報を丹念に拾い集める程度の調査力」で、確信的に疑惑を追及している。

 松岡氏の行為が重刑的に罰せられるなら、もう少し投網を遠く被せれば、れんだいこも同様容疑で逮捕されることになるだろう。当然、れんだいこのみならずその他の社会告発者も同様の身である。「鹿砦社裁判」にはそういう卑近性がある。それをキャッチするかしないかだけの問題であろう。れんだいこの観るところ、小泉首相のDNA的レイプ絞殺型政治により、我が社会は急速に「上から暴力化」されつつある。それを改革と称してマスコミが提灯し続けている。この情況下では鹿砦社活動を支援することこそが人民的責務のところ、権力による不当弾圧が罷り通ろうとしている。ここに、この裁判の本質があると思われる。革命的無罪を勝ち取りたい所以である。

 法律論争で云えば、武装自衛隊のイラク派兵、2005年の「法案参院否決即衆院解散」、8.15日を念頭に置いた靖国神社公式参拝等々これ皆「上からの憲法違反」であろう。権力側からの法律違反が問われず、下々には毛を吹いてまでの法律違反を問い過ぎる風潮が強まっている。恣意的な硬性的法律適用の感がある。その愚は追ってアノミー社会を生み出すことになるだろう。

 それやこれやを考えると、「見せしめ判決の愚」だけは避けねばならない。特に目下、小泉政権が性懲りも無く共謀罪なる凶暴な現代版治安維持法を法案化しようと画策している局面にある。小泉政権は、現代世界を牛耳る国際金融裏政府の意向通りに日本の債務奴隷国家化を画策している。日本左派運動は今後、その不義を衝かねばならないことが必至である。そういう将来を展望した時、「鹿砦社裁判」は大きな政治的意味を持つことになる。日本左派運動は、鹿砦社の砦を国家権力に明け渡してはならない。そういうことになる。

 裁判所はせめて、1・編集長、経営者の責任までは問わない、2・執筆者としての軽率の可能性を問う、3・言論人としての今後に期待するとして執行猶予付き判決を出すべきである。裁判長は、判決が持つ歴史的影響力を懼れ、責任を持つべきである。下手な前例を作れば歴史に汚名を遺すことを踏まえるべきである。

 その点で、弁護団の雄弁と裁判長の賢明なる判決を期待するものである。

 2006.4.22日 れんだいこ拝
 もう一つ気づいたことを書き記しておく。「鹿砦社裁判」とは、大手出版、新聞系の権利は護られるが、中小零細企業のそれは足蹴にされるという格好事例のように思われる。大手出版、新聞系が「鹿砦社裁判」に無関心を装うのは、民間企業の元請ー下請関係に於ける元請の非情冷酷さと何ら変らない。つまり、大手出版、新聞系は「鹿砦社裁判」を見殺しにすることにより、ペンの正義を失うことになろう。つまり、自己否定することになろう。

 松岡氏の「私だけの問題ではない。いずれ皆様の身に降りかかってきますよ」訴えは正当である。問題は、その正当さを感知する力が我々にあるのかどうかだろう。大手出版、新聞系よ、「鹿砦社裁判」は君達の能力を問うていることになる。この際の黙して語らずは、君たちが余りにも愚昧なことを自己暴露させることになろう。いわば恥部となり、語られ続けられることになろう。

 2006.6.14日 れんだいこ拝

Re:れんだいこのカンテラ時評その70 れんだいこ 2005/07/18
 【社会言論系雑誌社社長松岡氏への強権逮捕に断乎抗議する】

 小泉政権の官邸政治の内実が情実政治の横行であることが知られるようになっているが、この奇病があちこちに転移しつつあるように思われる。

 れんだいこの診るところ、司法の独立はロッキード事件以来危殆に瀕しており、その後遺症は日を追うごとに深くなりつつある。今や公然と、法治主義の諸原則が踏みにじられつつある。「法の番人」が上から法破りを押し進めるというケッタイナ世の中になりつつある。もっとも、「戦後憲法秩序」がたまさか世にも珍しい人権尊重時代であっただけのことかも知れない。

 れんだいこは、小泉政権になって以来のここ5年間で、この腐敗現象が急速に攪拌されつつあることを踏まえ、その危険を指摘したい。上が悪い手本を示せば、下が必ず真似するようになる。今や、襟を正す基準が壊れているのでいかんともし難い。

 小泉のような稀代のレイプ履歴首相をのさばらせ続けることが如何に社会に取り返しのつかない損失を与えるのか、このことにつき真剣に考えてみるべきではなかろうか。

 人は、そういう腐敗のよってくるところを顧慮せずに、徒な取締り強化論に向おうとしているように見える。「ロンドン・テロ」を口実に一層の治安維持規制法を編み出したがっているが逆であろう。

 その前にサモアの自衛隊の一刻も早い撤退を為すべきであろう。自衛隊が、法案の建前はともかくも、米英ユ同盟の下働きに精勤している以上、レジスタンス派がこれをいつまでも見過ごすことはない。戦争局面では、前線も憎ければ後方も憎いというのは当たり前のことではなかろうか。そういう意味で、賢明な原因対処をせねばなるまい。

 残念ながら、我が政界は、郵政民営化法案にかかりっきりでてんやわんやである。焦眉の課題である財政健全化も自衛隊撤退も後回しにされている。そういう意味で、この国の政治は死んだサバの目状態になっている。まさしく相互に利権集団でしかなく、国として民族としてどうあるべきかの観点を喪失しているように見える。

 それはそうと、前置きが長すぎた。ここで述べたかったのは、好漢・鹿砦社(ろくさいしゃ、本社・兵庫県西宮市)社長・松岡利康氏に加えられた不当逮捕問題である。

 とかく物議を醸した岡留安則氏編集長の「噂の真相」が休刊になり、木村氏が「噂の深層」を、鹿砦社の松岡氏が「紙の爆弾」を創刊してその作風を引き継いでいる。木村氏は小泉首相の履歴問題を提訴する等で奮戦していることで知られている。

 他方、松岡氏の「紙の爆弾」はむしろ社会的な方面に関心を示し、パチスロ業界の腐敗、プロ野球の元球団職員の不審死等の記事を掲載してきた模様である。その松岡氏が引っ張られることになった。誰が指揮したのか、背景はまだはっきりしない。

 2005.7.2日、松岡社長は、「紙の爆弾」の記事内容を廻ってそれまで二度にわたって呼び出されていたが、神戸地検特別刑事部の手により名誉毀損容疑で逮捕された。記事を掲載しただけの出版社の責任者が、記事内容を廻って逮捕されるのは異例であろう。しかし、こういうことが現に起こっている。

 一体、編集出版人が、掲載した記事の責任を咎められて逮捕されるとなると身がもつまい。明らかに言論、出版、表現の自由に対する蹂躙であろう。この種のことは爾来、「責任ある言論の自由法理」により包摂されてきたところであろう。仮に言論に行き過ぎがあった場合、告発により法廷で審査され、場合によっては多額の損害賠償金を背負う。そういうことからして言論、編集出版人には自ずと自制が働いている。

 それが市場原理であろう。この原理を無視して司法権力がいきなり介入してくる時代になりつつある。それは、「法の番人側からの法破り」であり明らかな権力乱用ではなかろうか。断じて許し難い。そういう意味で、こたびの事件を指揮した責任者こそ訴追されねばなるまい。こういうところを曖昧にするとかってのオイコラ時代へ逆戻りしよう。

 嫌な時代になった。それというのもこれというのもレイプ履歴を持つ小泉首相のような手合いを国の機関のトップに据えているからこういうことになる、というのがれんだいこ見解である。小泉が首相になって以来、ビラ配りだけで、警官との押し問答だけでいきなり逮捕されるようになっている。いわゆる政治犯に対する縄掛けがアウトロー的に進みつつあるように見える。

 「鹿砦社社長逮捕事件」は、2005.7.19日(火)の午後1時から神戸地裁223号法廷で初公判が開かれ、「拘留理由開示請求」が為される。

 神戸地裁の場所は、神戸市中央区橘通2-2-1、電話番号等Tel:078-341-7521 Fax: 078-351-6691、経路・最寄駅など: JR神戸線神戸駅 北徒歩7分、 神戸高速鉄道 高速神戸駅 北徒歩5分、 市営地下鉄 大倉山駅 南徒歩5分、とある。

 松岡氏は、70年安保を闘った関西ブントであり、当然この種の不当逮捕と闘う決意を示している。次のように決意表明している。

 概要「これは不当逮捕です。憲法で保障された表現の自由への挑戦です。言論弾圧です。鹿砦社としては、断固戦います。今回、神戸地検特別刑事部による逮捕は、大きな力が背後に働いているような気がしてならない。前代未聞の名誉毀損罪を口実とした逮捕は、今後、大きな論議を惹き起こすことは必至だけでなく、これを突破口にして〈表現の自由〉〈言論・出版の自由〉が骨抜きにされないか、心配だ。身を捨ててこそ浮かばれる瀬もあるという言葉がある。身を捨てて浮かぶ瀬を待つしかない。浮かぶ瀬は必ずあると確信している」。
 
 松岡逮捕へのご意見、メッセージは、rokusai_sha@yahoo.co.jp、FAX 0798-43-1373 兵庫県西宮市甲子園七番町6番1号、サイト先は、鹿砦社HPhttp://www.rokusaisha.com/ 。

 最後にれんだいこからエールを送らせていただく。

 松岡さん、司法の特高化と闘うという逆攻勢で対峙してください。松岡さんのような事例での逮捕を許せば、れんだいこもやられる。覚悟は出来ておりますが、この事件はそういう時代の呼び水になる気がします。我々は、法の番人ともあろう者の法破りは断じて許してはならない。やられたらやり返さねば相手が癖になります。この倒錯現象と闘い、逆にお縄に掛けてやる、という覚悟でやって下さい。フレーフレーブント、フレーフレー松岡。

 2005.7.18日 れんだいこ拝

【草加耕助氏のレポート】
 草加耕助氏主宰の「旗旗」の「鹿砦社・松岡さん拘留理由開示裁判の傍聴報告」で、「鹿砦社・松岡さん拘留理由開示裁判の傍聴報告」が為されている。情報提供は、「阿修羅政治版10」の2005.7.21日付け二世乃朋氏の「鹿砦社・松岡さん裁判の傍聴報告:ブログ旗旗/(コノウンコタレ裁判官メー下品で失礼!)」。以下、転載する。
鹿砦社刊「紙の爆弾」

 鹿砦社(ろくさいしゃ)社長の松岡利康さんが「名誉既存」で逮捕されたことは多くの方がご存知だと思います。その拘留理由開示裁判が行われました。ちょうど仕事が休みでしたので、双方の言い分を聞いてみるのもよかろうと思い、神戸地裁まで傍聴に行ってまいりましたので報告いたします。

●鹿砦社と『紙の爆弾』、そして『噂の眞相』について

 さて、具体的な報告に入る前に、知らない方のために簡単に書いておきますと、鹿砦社は関西の出版社で、左翼系の軍事論を古典を含めて多く出版している硬派の出版社でした。松岡さん自身は同志社大学で全共闘運動に参加しておられた方です。現在では『紙の爆弾』という、企業や有名人の不正やスキャンダルを実名で暴くという趣旨の雑誌を出していて、これが鹿砦社の看板雑誌になっています。まあ、かつて名をはせた『噂の眞相』(現在は休刊)を関西人が作ったらこんなものになるという感じの雑誌です。

 だいたいがまったくひねりのない「そのまんま」な誌名からしてセンスが関西人やという(笑)。『紙の爆弾』ではその『噂の眞相』の顛末についても繰り返し触れられていて、「その編集方針にもやっぱり問題があったんじゃないか」ということも指摘されています。一言で言えば、『噂の眞相』の「反権力・反権威・ジャーナリズム精神」は看板であって、実際には編集長の岡留さんの判断でどうとでもなる都合のいいもんだったんではないか?ということかな。その当人である『噂の眞相』の岡留安則元編集長は、インタビューで松岡さんと鹿砦社について次のように語っておられます。

「そうそう。僕はわりと原則的なスキャンダリスト。松岡はアナーキーなスキャンダリスト。なんでも暴いちゃえばいいと思っているフシがある。そういうことをしていると、いずれ権力に足元掬われると思うね。だって逮捕しやすいじゃない、松岡だったら。僕だとジャーナリズムの原則と大義名分で正面切って闘っちゃうから逆に逮捕しにくいだろうけど(笑)」。

(鹿砦社「平成の芸能裁判大全」収録のインタビュー。同書籍の広告に一部抜粋して掲載されていたもの)

 なんだか今回の事態の「予言」みたいですね。まあ「お前だって逮捕されとるやんけー!」という突っ込みはさておき、もし岡留さんが本当に個人の判断や自尊心や利害を離れたところで「原則と大義名分」に殉じていたのなら、実際にやったことの当否は別問題としても、少なくとも「凄い人」だと思う。しかしもしそうでなかったとしたら、ヘタに「大義名分」を掲げたやつほど始末におえない者はいないとは思いますが。

●法廷レポート

 それで(やっと)具体的な法廷のレポートです。
 今回傍聴した人は松岡さん側だということもあるでしょうが、皆一様に驚いたりあきれたりしていました。私はとりあえずはどちらの味方もせずに、白紙の状態で双方の主張を聞こうと思っていましたが、それでも(だからこそ)裁判所のいい加減さにはちょっとばかり愕然としました。おそらくこれは警察を応援して松岡さんを糾弾する側の立場で傍聴しても同じだと思います。

 まず若くて長髪の裁判所事務官が法廷の鍵をあけて明かりをつけます。私たち傍聴人がぞろぞろと中に入りますと、やがておじいさんの裁判所書記官が背中をまるめて膨大な事件の一件記録を荷台に乗せてごろごろと運んできました。それを裁判官席に並べます。今時の若者風の事務官に比べ、書記官はノーネクタイのぼさぼさ頭で、人のいい小学校の用務員のおじいさんという風情でした。

 続いて弁護士の方が2名入廷されます。裁判所の記録ほどではないけれど、たくさんの関係書類を弁護席にざっと広げて最後のチェック中です。検察官はほんとうに「ぶらっ」という感じでノーネクタイのおじいさんが一人でこられました。どう見ても「手が空いてる人間が一応来た」としか見えない風情でして、書類はおろか、紙一枚も持たずに検察官席に座っておられます。緊張感が漂う弁護席に対して、完全にリラックスしきった感じで、目をつぶってかすかに微笑みさえ浮かべているところは「隠居して縁側で日向ぼっこ中の好々爺」にさえ見えます。

 最後に被疑者の松岡さんが両手錠に腰縄の姿で入廷されます。ああ俺も20年くらい前には、あの姿で機動隊に引きずられていったなあと記憶がよみがえります。傍聴席の最前列に座っておられた門真市議で関生労組の戸田さんが松岡さんに向かって小さく(いや、結構大きかったかな?)片手をあげてガッツポーズ。松岡さんがかすかに微笑まれました。

 やがて書記官が黒い法衣をまとって書記官席についたところで裁判官が入廷されます。裁判所の拘留延長の決定を下したのであろうこの裁判官は、一目でその若さが目をひきます。30歳そこそこか、へたするとまだ20代?と思えるくらいの裁判官でした。最初に思ったのは、「神戸の法曹界にはおじいさんと若者しかおらんのかい!」ちゅうことでしたが(どうしても突っ込まずにはいられない関西人の悲しい性)、きっとこの裁判官はエリートで挫折せずにここまできて、何でも論理で割り切って、人間の行動の不合理さや悲しさを知らんのやろな、民事でこういう裁判官にあたりたくないなということでした。まあ、非常におっさんくさい偏見にすぎんのですけど。

 一方で、きっとこの人はエリートらしく、形式論理的には一分の隙もない「拘留理由」をとうとうと述べるに違いないと思いました。弁護士の反論にも舌鋒鋭く冷静に切り返すであろう。その論理に説得されちまったらどうしようかと思いましたよ(笑)。松岡さんの記事が「正義」という立場からは、とにかく逮捕していること自体が不当なんですが、裁判所にしてみたら「一応は犯罪容疑がある人間」なわけで、その立場から「こういう理由で拘留せんとあかんのですよ」とか言われると、それはそれでわかるとか思ってしまう可能性がある。その程度には白紙の状態で臨んでましたから。

 なんせ回りは全員「不当逮捕許すまじ」な人ばかりですからね。「裁判所の言うこともわかる」なんてとても言えないすよ。幸いにして回りの方は誰も私のことを知らない。傍聴前に「旗旗の草加耕助です」とか名乗らなくてよかった。もし裁判官の論理に説得されてしまったら、そのまますっと帰ればいいわけですから。しかしいざ開廷されると、そんな「心配」はまったくの杞憂でした。

●松岡さんの拘留理由

 裁判官の開廷宣言の後、松岡さんへの人定質問、勾留理由の朗読と進みます。今回、裁判所が示した直接の拘留容疑は大きくわけて二つでした。

1)阪神球団の告発記事

 まず、皆さんの中でも、あるプロ野球球団のスカウトが、ビルの上から「転落死」し、遺体や現場の状況から他殺であることを示す痕跡が多く残されていたにもかかわらず、警察が本格的な捜査もせずに早々と「自殺」と断定してしまった事件をご存知の方も多いと思います。遺族の執念ともいえる独自の調査に加え、これは誰が見ても「ちょっとおかしいんじゃないの?」と思えるケースでした。

 松岡さんはこの遺族と「共謀」の上、遺族が書いた手記を鹿砦社の出版物に掲載したことが逮捕の理由とされています。手記の中では、この事件の背景を調べていくうちに、少なくとも球団職員2名の名前が浮かび上がってきたというのです。この2名を実名で書いたことがひっかかったようです。普通の出版社ならこういう事態を恐れて2名の名前を匿名にするか、もしくは記事そのものを没にしますが、松岡さんは遺族の手記を「根拠のあるもの」と判断し、原文のまま掲載しました。

2)株式会社アルゼの告発記事

 次に「アルゼ」というパチスロ機器の最大手メーカーに関する記事です。ここは業務内容の関係から一般消費者にはあまり名が知られていませんが、ジャスダックにも上場し、ラスベガスへもカジノ経営進出を計画している大手企業で、警察官僚の天下り先ともなっているそうです。そのため警察も「アルゼ」側には甘くてまともに厳しい捜査をしていないし、逆に自分のように「アルゼ」を批判する者にはささいなことでも厳しく取り締まる不公平な態度があると松岡さん側は主張しています。

 この「アルゼ」は創業者オーナーが絶対的な権力を持つ「ワンマン経営」なのは間違いないようですが、鹿砦社の記事の見出しをざっと眺めて受ける印象は、もしこれらがすべて本当なら、この創業者オーナーをはじめとする「アルゼ」経営陣は、まるで漫画の「ミナミの帝王」に登場する悪役社長のようだということです。

 「パチスロ業界の常識」が寡聞にしてどんなものか知りませんが、記事は違法行為のオンパレードです。パチスロはやったことがないんで「『北斗の拳』用違法カット基盤の供給」とか「偽造紙幣」とか「他社アイデアや商標のパクリ行為」とか言われてもピンとこないんですが、違法行為の前歴のある会社には決して交付されない「ラスベガス・カジノ経営免許」を取るにあたり、自らの犯歴を詐称して(隠して)違法に取得したという話はわかりやすいです。また、「アルゼ」経営陣の女性蔑視的な金にあかせた「夜のご乱交」を証拠写真つきで掲載したりしたようですが、これもまた漫画の悪役社長を地でいくような話です。これら一連の「暴露記事」が逮捕の理由です。

3)逮捕までする必要があったのだろうか?

 これらの記事の真偽や公共性については、いずれ裁判の場で争われるということなんでしょうが、ひとつ付け加えておきますと、民事の法廷ではすでに出版差し止め訴訟などがいくつも提起されており、最終確定はまだのものや審理中のものありますが、今のところこれら民事訴訟で鹿砦社側は連戦連勝しているということです。逆に「アルゼ」という会社はわりと「訴訟好き」みたいですが、こちらは鹿砦社以外に対しておこした訴訟も含めて連敗状態のようです。今回の逮捕はこの民事法廷の判断を無視し、これに逆行する形で行われたものです。

 さらに言うなら松岡さんは逮捕にいたるまでの期間、任意での事情聴取や呼び出しにはすべて応じており、捜査には全面協力する意向を示しておられましたので、少なくとも、あるいはいくらなんでも、逮捕までするのは行き過ぎだというのが公平な見方だと思います。

 主義者Yさん共有掲示板で書いておられたように、「名誉毀損で逮捕」などということ自体が異例中の異例ですし、桶川ストーカー事件で、まったく何の落ち度もない被害者女性の顔写真入の誹謗ポスターを被害者宅周辺に貼り巡らせるという、鹿砦社の千倍、一億倍も酷い事件に警察は「話し合ってください」で済ませ、被害者女性が刺し殺されるまで事実上放置してきたではありませんか!「さいきん、ちょっとしたことでもすぐ、逮捕!で気になりますね。ひどい話だ」という主義者Yさんの感想は、決して左派の身びいきでも偏見でもなくて、まさしくその通り!なのです。

 拘留の理由は上に書いた容疑を細かく述べた後で、要するに「釈放すると、関係者と口裏あわせをして証拠を隠滅したり捏造したりするから」ということです。「要するに」というよりも、それだけです。つまり「逃亡の恐れ」などはないけども「証拠隠滅のおそれ」一本で拘留しているということでした。

●弁護側質問に立ち往生(沈黙)する裁判官

 さて、続いて弁護側の質問です。いろいろな角度から質問がなされていましたが、記憶のままにまとめてみますと。

・民事訴訟においては出版差し止め請求訴訟などがすべて退けられていることを認識しているか?それでも逮捕拘留までする必要は何か?
・最大の証拠たる出版物は「隠滅」のしようもないではないか。その内容以外に何か隠滅するような証拠があるとするならばそれは何か?
・被疑者は任意出頭にもすべて応じて供述もしている。民事訴訟の資料もある。すべての「証拠」は出尽くしているではないか。あとはこれを判断するだけで、これ以上何のために拘留するのか?
・このような状況で「証拠隠滅」とは具体的にどのような行為を指しているのか?
・被疑者の言論は「公益を目的として犯罪事実を暴くため」という名誉毀損の免責条項に該当しているのではないか?

 他にもいろいろあったと思うのですが、要はですね「証拠隠滅の恐れがある」という理由が、非常に説得力が薄いわけです。「いまさら隠滅のしようがまったくない」「いったいどうすればどんな証拠が隠滅できるというのか言ってみろ!」という弁護側の主張のほうがはるかに説得力があるわけですね。

 これに対する裁判官の答えは
「それは・・・(30秒沈黙)・・・先ほども言いましたようにですね・・・(15秒沈黙)・・・記録を見て総合的に判断しました」

 とかいうものばっかりでした。真面目な話、全部この調子です。客観的に見たまんまを申し上げますと「若い裁判官が弁護士にこてんぱんにやりこめられているの図」でした。私もあまりの痛々しさに、はじめのうちは「弱いほうに味方したくなる癖」が出てしまって裁判官に同情さえしてしまい「もうええやんか、見てらんないよ」くらいに思ってしまったくらいです。

 傍聴席からは失笑がもれていたくらいですが、やがて裁判官が「ここは拘留の理由を開示するだけであって、その当否を議論するつもりはありません」とか「答える必要はないと考えます」なんて、権力をふりかざして逃げる姿勢を見せたあたりから、回りの空気が怒りに変わってきました。私も「ああ、そうか、裁判所は中立じゃなくて権力機構の一部なんだ、警察の味方なんだ、こいつも権力者なんだ」とストンと合点してしまって、「弱いほうに味方したくなる癖」なんぞ吹き飛んでしまいました。「こいつは”弱いほう”ではない!」と。

 当然ですが弁護士は語気を強めて「じゃあ何のためにこんな裁判をしているんだ」と詰め寄りますが、結局は「議論を打ち切ります」の一言で終わってしまいます。ただ一応の答えとしては「理由を開示すること自体に意味があると考えます」とのことでした。つまりこの裁判は裁判と名前はついているけれども、実は裁判ではなくて単なる「情報公開手続き」にすぎないと言いきった(スゲー!)。

 続いて被疑者本人である松岡さんの意見陳述です。松岡さんが留置所でまとめた原稿を取り出すと、裁判官はすかさず「発言は10分間とします」と申し渡しました。おそらくあの原稿の量だと15分くらいだったと思いますが、松岡さんは10分と言われてかなり早口で原稿を読みはじめました。

 松岡さんの陳述はジャーナリストらしく、法律論などは展開せずに、自分が「球団関係者」や「アルゼ」をペンで告発したことの社会的な正当性やその意義、彼らの行った犯罪行為についての評価などを中心に述べられました。やがてまとめにかかろうと言う時に、やおら裁判官が「10分たったので打ち切ります」と宣言しました。「こいつ絶対に陳述内容とか聞かずにずっと時計ばっかり見てたな」と私は確信しました。松岡さんは「すいません、ではまとめだけ言わせてください」と急いで原稿の最後を読み上げられました。

 「”身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある”という言葉がある。”身を捨て”て”浮かぶ瀬”を待つしかない。”浮かぶ瀬”必ずあると確信している」傍聴席から拍手がおこりました。

 それをさえぎるように裁判官が「検察官、何か意見はありますか」と言うと、例のおじいさんの検察官が半分だけ腰を浮かして「特にありません」と一言だけ言いました。「あ、そういえばあんたいたの」って感じでしたが、このおじいさんはこの一言を言うためだけにここにいたわけです。

 「それではこれで閉廷します!」と本当に「急いで」という感じで裁判官が早口で宣言しながら立ち上がって、そそくさと早足で退廷しようとします。すると傍聴席の戸田さんがやおら立ち上がり、その背中に向かって大声で「こんないい加減なことはありません!こんなことで人を拘留してもいいんですかぁ!」と叫ばれました。

 裁判官は無言で振り返りもせずに逃げるように去っていきます。さらに戸田さんは「私も市会議員をしている者です。あなたもよくよく考えて判断をくださないといけません!」と叫ばれました。そこにいたみんなの気持ちを代弁していたと思いますが、ちょっと驚いたなあ。うーん、やっぱり戸田さんは「現役活動家」やのう。

●裁判所なんて「こんなもん」なのか

 裁判なんぞ傍聴したこともない多くの傍聴人は、「こんないい加減なものなの?」という感想を口々に話しあっておられました。裁判の前にはなんとなく静かで空気も冷たく、人と会話してるのは戸田さんくらいで、みんな口も重く、悲壮感さえあったのですが、裁判後はすっかり暖まってしまって、悲壮感よりも怒りのほうが強い感じです。戸田さんにいたっては声のボリュームが倍くらいになってるし(笑)。
「ちくしょう!やるぞ、負けるか!」ってとこでしょうか。これなんだよねー。警察は、弾圧すればするほど反体制派は強くなるんだってことがわかんないのかなあ。

 この若い裁判官を一言「弁護」しておいてあげますと、裁判所って「こんなもん」なんです。この人が特別なんではありません。むしろこんな若い裁判官が今までの前例に反して「勇気ある判断」を下したら、今後は最高裁や高裁などの司法官僚に睨まれて、次の移動ではどっか地方の簡易裁判所とかに飛ばされてしまいます。せっかく若くして神戸地裁なんて花道を歩いているエリートなのに。

 一応は法律などを勉強しますと、警察や検察の出した逮捕や拘留の請求を、裁判所が客観的に必要性を判断して公平に判断を下すことになっています。しかし実際にはよっぽどの無茶苦茶なもんでない限り、裁判所が警察や検察の請求を却下することはありません。「裁判所の許可」は単なる「お墨付き」であって手続き、もっと言えば「儀式」みたいなもんです。以前に書いたエントリーの「靴泥棒事件」を思い出して下さい。こんな個人の「履物一切」をすべて押収するような令状を発行したらどうなるか、ちょっと考えればわかりそうなものです。本来はそれをチェックするのが裁判所のはずなのに。

 実は起訴前の釈放には「逃亡の恐れがない」とか「証拠隠滅の恐れがない」とか、松岡さんのように会社代表をしていて「釈放の必要性がある」などの表向きの要件の他に、裏のもう一つの基準があると言います。それは「容疑事実をすべて認めて争わない被疑者」だということです。こんなことは法律には書いてありませんが、実務ではそういう運用がされているということらしいです(学生時代に読んだ「法学セミナー」という法学部生なら必ず誰でも一度は読んでいる雑誌に書いてありました)。

 つまり警察が逮捕した人間は全部悪いやつだという前提がある。法律では被疑者は「無罪の推定をうける」はずなんだが、そうではなくて、「確かに私が悪うございました」と検察の主張をすべて認めて反省している人は、(その他の要件が満たされていれば)釈放されるということです。悪いことをしておきながらそれを認めないようなやつは釈放してもろくなことはせんので、その他の要件を見るまでもなく拘留するってことですね。

 松岡さんの場合も、無罪の推定を受けた上で釈放の要件を勘案するんではなくて、有罪の推定を下した上で、反省しとらんからろくなことしないに違いないという理由で拘留されてるわけです。でもそんなこと言うわけにはいかないので、「証拠隠滅のおそれ」なんて実際にはありえないことを言わざる得ないわけで、そこでしどろもどろになってしまうのは、まだ「誠実」ちゅうか、本物の狸になりきってないということでしょう。

 すくなくとも反体制の運動団体や市民などに対しては、「裁判所は中立」なんて思わないほうがいい。基本的に「裁判所は警察や権力の味方」と思っておいてちょうど良いくらいだと思います。

 それはどういうことか?たとえば市民や民間人同士の争いなら、裁判所は一応は法律に基づいた公平な判断をしようと努力する。だから民事訴訟では鹿砦社が連戦連勝するなんて事態になってるわけです。あるいは市民が暴力団を訴えたような場合なら、できるだけ市民の人権を救済しようという立場で臨むこともあるかもしれない。しかし市民が国や警察と争う場合はどうか?この場合は「国側勝訴」が原則として既定路線であって、よほど国側に争う余地のないほどの落ち度がない限り、市民が勝訴することはありえない。「争う余地」がある限りは、裁判所は十中八九国側の見方で判断する。そういうことです。ましてやそれが反体制的な市民や運動体だったら?あるいは過激派と国の争いだったら?

「最高裁の行政訴訟で原告の勝訴率は10%未満。これで司法が三権の責任を果たしているとはいえない…国際的にも司法への市民参加は常識。司法も、陪審制などの市民が主体的に司法に参加する仕組みに変えていく必要がある」

(久保井一匡=日弁連会長―00年2月15日付『東京新聞』―「この人」より)

●余談ですが・・・

 当日は管制塔戦士救援カンパのビラを配ろうと思っていたのですが、プリンターが壊れていて(ずっと使ってなかったので気がつかんかった!)せっかく作ったのに配れませんでした。傍聴前の雰囲気では人も少ないし重苦しかったんで、持ってきても配れんかったなと思ったけれど、傍聴後には人も増えていて、みんなすっかり生き生きしてたんで、配ればそれなりの反応があったかも。あーもったいないことをしました(戸田さん救援カンパの紹介もよろしくです)。

 ところで「旗旗」を開設して間もない頃、通りかかった松岡さんから激励のメールをいただいたことがあります。義理堅い私としては(笑)、閉廷して腰縄と手錠をうたれている松岡さんに「旗旗の草加です。その節はメールありがとうございました」と一言挨拶しようかと思いました。でも、ご本人はもう憶えておられないだろうと思って何も言いませんでした。今から考えれば「お体には注意してくださいね」くらい言えばよかったかなあ。

 戸田さんとその秘書の方にだけは「草加です」と挨拶しました。秘書は女性の方でしたが、「えーっ!あなたが草加さん!」って感じでキャピキャピーっと喜んでいただいた上に「やー、今日は来て良かった!」とまで言っていただき、何だか照れくさいやら驚きました。いやそんなにいいもんでもないんですが(笑)。

 「今日の裁判のことも書かれるんですよね?」とおっしゃるから「ええ」と答えると「だったらリンクすればええから楽やわ」と明るくおっしゃる。(-_-;ウーン まあ別にいいんですけどね(笑)。なんかこのごろ「詳しいことは旗旗を参照」というパターンの記事が多いような気がする。いや、全然かまわないんすよ。つーか、むしろ喜ぶべきことですよね。ありがとうございます。
こんなんでよろしければ、いくらでも使ってください!

 戸田さんからは「もっとごっつい人だと思っていた」と言われましたが、秘書の方からは「イメージ通り」とか言われました。私のイメージって、いったいどう思われているのだろうか?

●ネット上の反応・トラックバック先など

アンフェアすぎる鹿砦社の摘発(月見草のかたち)
『紙の爆弾』発行の鹿砦社・松岡利康社長、名誉毀損容疑で逮捕される(情報紙「ストレイ・ドッグ」)
鹿砦社・松岡社長を逮捕(FUKUHIROのブログ)
アルゼ暴露記事の出版社社長を名誉棄損で逮捕(13Hz!)
砦社社長逮捕と言論の自由について(キンパルオヤジのだらだらな日々)
杉田かおるを名誉毀損で訴えてやる!(マジ簡単♪おもしろニュースで法律知識)
松岡利康社長、『噂の真相』と同じパターンで逮捕(芸能事件簿・今日は何の日!? )
鹿砦社、松岡社長逮捕について声明発表(芸能事件簿・今日は何の日!? )
アレゼの名誉毀損が勝つ?(かきなぐりプレス)
「鹿砦(ろくさい)社」社長・松岡利康容疑者(53)を名誉棄損容疑で逮捕(ニュース置き場。)
遅まきながら、鹿砦社にエールを!(情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士)
鹿砦社の松岡社長逮捕(教育の原点を考える)
読み応えある神戸新聞の報道(教育の原点を考える)
鹿砦社続報。(裸馬木枯による北風メニュー)
出版社社長を逮捕 名誉棄損容疑で神戸地検(禁スロ−止めてやるっ!−)
鹿砦社社長逮捕(ケネディ♪ケネディ♪)
鹿砦(ろくさい)社社長の逮捕に思う(Blog 「ブック・ナビ」)
「表現の自由を弾圧」 (病床三尺)
名誉毀損で逮捕されるということは・・(こもぞうのひとりごと)

 この記事に「何か」を感じたらここをクリック!o(*`◇´)=○☆)ブログランキング
 ≪ 「馬鹿左翼」万歳!  メイン


【古川利明氏のレポート】
 古川利明氏主宰「同時代ウォッチング」の「鹿砦社社長の名誉毀損逮捕は、共謀罪導入を突破口とする思想検察復活への布石か」で見解を発表している。同じく「阿修羅政治版10」の2005.7.23日付け外野氏の「鹿砦社社長の名誉毀損逮捕は、共謀罪導入を突破口とする思想検察復活への布石か (古川利明)」。これを転載しておく。

 2005年 07月 19日

 「鹿砦社社長の名誉毀損逮捕」は、共謀罪導入を突破口とする「思想検察」復活への布石か

 さて、さて、関東地方もまだ梅雨あけまでもう少しというカンジで、巷の学生たちはこれから楽しい楽しい長〜い夏休みを満喫できる時期に入りますが、私のやうな「文筆乞食」は、夏休みもクソもありません(苦笑)。それはそうと、どうでもいい「郵政国怪」が、あまりにも小泉が「参院で否決されたら、衆院を解散する!」とワメキちらすので、「おう、これは解散、総選挙夏の陣か」というカンジで色めきたってきています。

 まあ、小泉が衆院を解散する大義名分が「郵政民営化の是非」であろうと、リセットボタンが押されることには「間違いなーい」わけですから、私もこの際、こういう形での「ガラガラポン」もアリかと思ってます(笑)。

 というのは、この5月下旬にフランスでEU憲法の批准を巡る国民投票が行われ、結局、「ノン」という反対票が過半数を占めたことで、フランスの批准は当面、見送りになりましたが、これもそもそもの大義名分は「EU憲法批准の是非」でした。が、結局のところ、シラク政権に対する「信任投票」という色合いが濃くなり、失業問題に何ら打開策を打ち出してこなかった首相・ラファランがやっとこさ更迭される事態になったのです。

 小泉も「郵政民営化の是非」を振りかざして、「解散、総選挙」に突っ込む意気込みだけは誠にごリッパですが、しかし、いま、総選挙をやったら、それこそ「郵政民営化」なんて吹っ飛んでしまって、「自衛隊のイラク派兵」はもちろんのこと、これまで無茶苦茶やってきた「自・公政権の是非」がセンキョの争点になります(笑)。

 じつは、私も最初は「郵政民営化の是非」を大義名分に解散するのには、イケダモン大先生と同様、反対の姿勢だったのですが、ここ最近になって、フランスの国民投票の件を思い出したら、「政権不信任を突きつける又とないチャンス」と思うようになり、ついに、先日の毎日新聞の世論調査で「郵政解散賛成が5割以上」と出たように、この私も日和ってしまい、「解散チョーOK」と思うようになってしまいました。

 まあ、小泉は「自民党をぶっ壊す」ということをソーサイ選の公約にして当選したのですから、ここで解散すれば、その公約を果たすことになります。「やっぱ、小泉はオトコの中のオトコやったで」と褒めてあげましょう(笑)。

 さて、本題に入りますが、ここでぬあんと、この7月12日、神戸地検特別刑事部が、鹿砦社の社長をいきなり、刑法の名誉毀損容疑で逮捕するという「大言論出版妨害事件」をやらかしました(笑)。

 おそらく、捜査当局が刑法の「名誉毀損罪」を適用して、出版社や言論人、ジャーナリストといった「売文業者」の類を逮捕するのは、1976年に、イケダモン大先生がマルハム経由での根回しを経て、通常、こうした知能犯事件を手掛ける警視庁の捜査2課ではなく、暴力団対策の捜査4課に頼み込んで、イケダモン大先生の「愛人問題」を大々的にバクロした『月刊ペン』の編集長・隈部大蔵を逮捕に持っていかせた、例の「月刊ペン事件」以来であると思います。

 その意味では、今回の「鹿砦社社長逮捕」も、確かに「第2の月刊ペン事件」であることは間違いありません。が、ただ、今日(7月19日)発売の週刊朝日で、元「噂の真相」編集長の岡留安則氏がインタビューで、「鹿砦社の社長もワキが甘いところがあって、『やっぱりなー』というところもある」とチラッと言及しているように、私もいろいろと情報収集はしたのですが、業界の内部でもあんまり鹿砦社の社長を庇う声が出てきていないのですよね。

 私は鹿砦社とは仕事をしたことがないので、その社長がどういう人なのかはまったく知らないのですが、今回、名誉毀損の対象となったのは、パチスロメーカーの「アルゼ」に対する批判本と、そうしたことをウェブサイト上にも掲載していることなのです。

 確かに、鹿砦社はスキャンダリズム系の版元としていろんな権力批判の本も出しています。 そして、ウワシンの休刊号である去年(04年)4月号では、「ウワシンが培ってきたスキャンダリズムは鹿砦社が継承しよう」という1頁分の広告も入っていて、そこで、ちゃっかり、岡留氏と松岡利康社長との対談本の宣伝も入っているのですが(笑)、やっぱり、「ジャニーズ追っかけマップ」や「宝ジェンヌ追っかけマップ」のイメージが強いです。

 芸能人をイケダモン大先生やタフやイカンザキと同列に、「みなし公人」として扱い、その男女カンケイとかのスキャンダルを特ダネの形で打つのは、100歩譲って、「国民の知る権利に応える」というジャーナリズムの王道からしてみて、許容範囲だと私も考えます。

 ただ、しかし、それでも、いくら芸能人だからといって、SMAPやV6の自宅や実家の住所やその地図(私も立ち読みで見ましたが、最寄り駅からのルートも入っていた)を公開するのが、果して許されるか、ということを感じました。というより、そういうことを「金儲け」にしているところに、私は正直、「憤り」を覚え、ゲロを吐きそうになりました。結局、権力もちゃんとそういう「足元」をじっくり見ているわけです。

 岡留氏も同様の趣旨のコメントは週刊朝日の記事の中で言っていましたが、「どうせ、鹿砦社の社長をパクッたところで、誰も文句いわんだろう」というところを見透かしているのです。 ただ、だからといって、今度の逮捕劇が容認できるものでは、到底ありませんので、まず、そこの批判から始めます。

 まず、あの「三井環氏の口封じ不当逮捕」を出すまでもなく、「わが国最強かつ最悪の捜査機関・腐れ検察庁」が、例によってその「国策捜査の一環」として(笑)、鹿砦社の社長をパクッたのは、「史上稀に見る大言論出版弾圧事件である」という批判は「言わずもがな」ですので、それを踏まえたうえで、ギロンを展開していきます。

 その告訴案件が、アルゼ批判と阪神タイガースのスカウトの自殺を巡る記事ですか、その具体的内容については私は知る由がないので、もしかしたら、取材、執筆、刊行の時点で、事実誤認や取材不足があったのかもしれません。

 それゆえ、刑法第230条の名誉毀損罪において、報道の対象が「公共の利害に関わる事実について行われたもの」であり、かつ、「目的が公益を図るため」であることは、今回の件については、クリアしていますから、立件のポイントは「報道された事実が真実と認めるに足る相当の理由があるかどうか」です。

 おそらく、そこの「真実性の有無」こそが今後の争点になると思うので、それは当事者同士のバトルに任せればいいことだと思います。三井環氏が不当逮捕されたように、「真実」とは、官憲の不当逮捕によって拘置所や刑務所に入るカクゴがあって、初めて告発しうるものだと、私は思うからです。

 ただ、そこで私がギモンに思ったのは、なぜ、逮捕がいま、この時期だったのか、という点です。鹿砦社のウェブサイトを見る限りにおいては、その松岡社長も任意での事情聴取にはちゃんと応じていたところ、何の前触れもなく、いきなりパクったわけです。通常、身柄を取る事件というのは、被疑者が「住所不定や証拠隠滅、逃亡の恐れ」がある場合か、もしくは殺人や強盗といった凶悪犯罪です。どう考えても、「名誉毀損罪」は身柄を取る事件ではありません。となると、ここはちょうど2年前の今の時期に、秘書給与流用ギワクで、任意の段階でもちゃんと容疑事実を認めていたにも関わらず、逮捕された辻元清美チャンと同様、これも「逮捕した」というセレモニーに意味があったのか、ということになります(笑)。

 で、こういう突発的な逮捕には、必ずウラがあるので、「さて、それは何だったんだろー」と、ヒマに任せていろいろと考えてみると、ピンと来るものがありました。というのは、鹿砦社の社長を逮捕した7月12日というのは、法務省が国怪に提出していた、例の「共謀罪」の本格審議が、衆院の法務委員会で始まった日なのです(笑)。

 この「共謀罪」とは、ようやく大新聞も最近はそのキケン性を取り上げるようになりましたが、一言でいいますと、「犯罪行為をしようと話し合っただけで、実際には犯行を行っていなくても、処罰できる」という無茶苦茶な法律です。

 正確には、組織的犯罪処罰法の改正案として盛り込まれ、9・11以降の小泉内閣の02年秋に法制審に諮問され、翌03年の通常国怪に一度、上程されましたが、同年秋の衆院解散に伴い、いったん廃案になり、再提出されたものです。まあ、法律自体が、「犯罪を実行しなくても、協議を行っただけで処罰できる」という無茶苦茶さに加え、こうした共謀罪が適用できる法律が、先頃の政府答弁で、ぬあんと、「615」にも上ることが判明し、そういった法律違反にはぬあんと、ぬあんと、「消費税法」や「道路交通法」まで含まれているのです(笑)。

 要するに、私と誰かさんが、「うーん、消費税を払うのはバカバカしい。何とかして、ゴマかす方法はないかなあ」「それは、検察が調活費によるウラ金づくりでやってたように、ニセの領収証をかき集めて、ウラ帳簿を作って、収入と所得をごまかせばいい」という会話をして、実際に消費税の支払いをごまかしていなくても、「そうやって、話し合ったという事実があるだけで、処罰できる」というのです。これは、ほんと、なかなかスゴイ法律です。

 つまり、これは「言論・出版・報道・表現の自由」のレベルにとどまらず、「集会、結社の自由」から「信教の自由」、さらには「思想、良心の自由」にまで踏み込んでくる、もの凄く恐ろしい法律なのです。

 人間の根源にある「自由」というものを、もう少し分析してみていきますと、ある人のアタマの中で、徒然なるままに「あれやこれやと考える行為」がありますが、それをブラッシュアップして、広く公に伝えるまでに、他人と話し合ったり、協議するというプロセスが必要です。

 それは、電話やメールを使う場合もありますが、やはり、最終的には「対面」というか、実際に人と会って、目を見て、顔を見て、コトバを交わすという行為が必ず必要です。そういう人たちが、会話を交わすなかで、志気を高めることで、組織をオルグしたり、街頭デモを行ったりして、自らの意見を広く多数に伝えることで、世の中をマトモな方向に変えていこうという動きが出てくるというものです。

 ところが、「共謀罪」とは、そうした人間同士の「自由な意見交換」という行為に、モロに縛りをかけるというのが、その目的です。あっさり言ってしまえば、刑法の名誉毀損罪でパクられて、拘置所や刑務所に入るのは、私のような「売文業者」だけで済みますが(笑)、この「共謀罪」はそうではない。

 つまり、ジャーナリストといった職業的なブンヤ以外の、一般市民をも広く網にかけることで、「言論、出版、報道、表現の自由」の先にある、「集会、結社の自由」へとターゲットを進め、さらに、その最も根源にある「信教の自由」、そして、「良心、思想の自由」への弾圧を狙っている。そこに、この法案の危険性があるのです。

 そのキケン性というレベルでは、あの「イケダモン大擁護法(=人権抑圧法)」などの比ではなく、これをやられたら、ジャーナリズムだけでなく、イケダモン大先生が(表向き)そのレゾン・デートルとしている「信教の自由」にまで踏み込むキケン性があるのです。これは見逃してはならない点だと思います。

 んで、法務省(=腐れ検察)が、この共謀罪を是が非でも成立させる“方便”として、批准を求めている「国境を越えた組織犯罪の防止に関する条約」の中に、そういう犯罪を防止するために「共謀罪」の制定を求めているというようなことを言ってるようですが、たぶん、この背景を知ってる人はあまりいないと思いますので、私がちゃんと説明しておきます。

 この「共謀罪」とは、例のアメリカの「9・11」の直後に、アッシュクロフト司法長官の主導によって、思考停止した「共和、民主両党」の賛成多数という「アメリカ版大政翼賛会」で、一挙に成立した「愛国者法」(=パトリオット法)の中にあるものです。

 つまり、あの「盗聴法」と同様、アメリカの猿マネなのです(笑)(#だから、愛国者法を日本語に翻訳する力があれば、検事上がりの、あんまりアタマのよくない法務省の官僚でも、ナンボでも「共謀罪」の法案をデッチ挙げることができるわけや)。

 この「愛国者法」は、事実上、アメリカ合衆国憲法の機能を停止させたに等しく、あのヒットラーのナチスが政権奪取とともに行った非常大権措置の発動と、根っこではまったく同様のものといえると思います。「愛国者法」は、正式名称を日本語に直訳しますと、「テロ行為を阻止し、防止するために必要なツールを増強することによって、アメリカを団結、強化させる法」といいます。

 全文1016条、分量にしてぬあんと、600頁にも上る、刑法の改正も含む「治安立法の集大成」ともいうべきもので、かいつまんで言うと、司法省や連邦警察局などの捜査機関が、容疑者に対して、「テロリスト」のレッテルを貼ってしまえば、憲法に定められたルールを一切、無視して、超法規的な措置をいくらでも講じることができる、というものです(その詳しい経緯は拙著『デジタル・ヘル』の「第五章 サイバー情報ファシズム化への道」を参照下さい)。

 その中で、盗聴捜査に対する歯止めを取っ払うとともに、日本の「共謀罪」のオリジナルである「共同謀議罪」について、それまでは「体制転覆」などのごく限られていた犯罪だけに認めていたものを、その愛国者法の中で、「犯罪の実行行為がなくても、2人以上の人間が犯行を協議したり、唆しただけで罪に問える」ように変えたものです。 最近、アメリカの権力中枢からの「情報源」、すなわち、「ディープ・スロートの割り出し」を巡り、裁判所での証言を拒否したニューヨー・タイムズの記者が収監されるという、トンデモない事態が起こっていますが(#でも、その一方でヤブヘビになって、その情報源がバラされたことで、逆にブッシュ政権も大騒ぎになっとるけどな)、こうした光景を見てもわかるように、既に、現在のアメリカはデモクラシーの国ではなく、とうの昔に「ファシズム体制」に堕してしまっているのです。

 いまのアメリカは、ほんと、メディアもそうですが、一般市民も萎縮しまくって、「阿呆ブッシュの戦争、反対!」と声を挙げる人間は、「反愛国者」「テロリスト」のレッテルを貼られて、爪弾きにされます。何せ、反戦デモに参加しただけで、軒並み、逮捕されて、留置場送りなのですから。それゆえ、鹿砦社の社長が名誉毀損で逮捕されるというレベルではないのです(笑)。

 その点、まだ、日本ではちゃんと、「イラク戦争反対」と街頭にデモに繰り出しても、逮捕されないのですから、まだ、アメリカより今の日本の方が、さまざまな自由がある点、マシなのです。「アメリカは日本にとって、民主主義のお手本」と言われたのは、「今は昔の物語」で、今となっては、イラク問題の対応を見ればイッパツのように、アメリカの猿マネをすることが、早い話、日本をファッショ化する道なのです。それゆえ、人権抑圧法に反対していた平沼赳夫が最近、小泉を「ヒットラー呼ばわり」したのも、じつはかなり正鵠を射ているのです。

 んで、話は本筋に入っていきましが、この「鹿砦社社長逮捕」と、「共謀罪本格国怪審議入り」が、奇しくも同じ日だったというのは、あの腐れ法務・検察が、今回の逮捕をきっかけに、いよいよ、「共謀罪」の成立をとば口にして、戦前の「思想検察」の復活に本格的に足を突っ込んだな、というのが、私のヨミです。

 確かに、今度の鹿砦社社長逮捕が、もちろん私も含めて、うるさいブンヤへの脅しというのは、岡留氏も指摘されるように、私にもヒジョーによくわかります。つまり、「悪の独裁検事総長・松尾邦弘」以下、腐れ検察の首脳がいま、いちばんビビッてるのは、「外務省のラスプーチン」こと、佐藤優氏が「検察の不当逮捕」、すなわち、「国策捜査の内幕」を暴露した新潮社の『国家の罠』が、10万部を越える勢いをもって、こうしたノンフィクション物では異例のベストセラーとなろうとしている点です(#これで、今年度の新潮ドキュメント大賞は決まりやな)。

 つまり、こうした国策捜査という「検察の胡散臭さ」が広く一般世論にウケてしまうということになってしまえば、ムネムネ(=鈴木宗男・元自民党衆院議員)の事件と同様、佐藤優氏の公判も二審で「逆転無罪」が出てしまいます(笑)。それだけは、ゼッタイに避けなければならない。そのためには、どうせパクッたところであんまり文句も出ないであろう、鹿砦社をターゲットにするしかない、という判断でしょう。その意味では、実は連中も、相当、追い込まれているのです。

 しかし、そんな刑法の名誉毀損逮捕などは、最悪でも、ブンヤが拘置所や刑務所に入れば済む話で、また、そうすることで、三井環氏や佐藤優氏のように、権力の不条理性と直接、対峙する原体験を通して、己の表現者としてのインスピレーションをさらに高め、「歴史に残る珠玉の名作」を世に生み出すきっけかになるので、私にとっては、むしろ、歓迎するところなのです(笑)。

 モンダイは、そんなチンケなレベルではなくて、こうした「引き金」の背後に、チョー怖い「共謀罪」の成立がセットとなっている。ここにこそ、メディアの連中も、国怪議員の連中も目を向けなければなりません。

 戦前、日本には「思想検察」というものがありました。それは、昭和に入って、時代がキナ臭さを増していく中で、司法省に「思想部」というものを設置して、国民のありとあらゆる「自由」の剥奪にかかるわけです。

 一般に、戦前の「思想弾圧」というと、内務省警保局直轄の「特高警察」が有名なので、この「思想検察」の存在は、ほとんど忘れ去られていますが、実は、特高警察とクルマの両輪というか、むしろ、特高以上に大きな存在だったのが、この「思想検察」です。というのは、警察ができるのは身柄をパクるだけで、その後、送検された被疑者を起訴し、公判で有罪に持っていき、拘置所や刑務所で思想犯を「転向」させるのは、「検察&司法省」の仕事の領域だからです。

 そして、さらに注目すべきことは、特高警察は、戦後、GHQのさまざまな改革によって、まがりなりにも解体されましたが、ところが、思想検察は手をつけられることなく、戦後の「公安検察」に継承されています。もっというと、検察のキミツ費、すなわち、「チョーカツ」(=調活費)は、この思想検察の時代にルーツがあるのです(こうした詳しい事情は、小樽商科大の荻野富士夫教授の岩波新書「思想検事」に書いてありますので、興味ある方は、今こそぜひ、読んで下さい)。その一方で、検察庁の中でも政権中枢の「巨悪」を果敢に摘発しようとする、「特捜検事」の一派があって、その最後の生き残りが「三井環」であったといえます。

 しかし、私の歴史認識では、既に述べていますように、三井氏が不当逮捕された時点で、「特捜検察の志」は壊滅させられ、あとは、国策に沿った捜査をするロボットのような「思想検事」が、要所要所に配置されているのです。ですから、検察庁の「特捜部」というのは今や名ばかりで、実態は「東京地検特別思想部」が、ムネムネや佐藤優氏や逮捕し、「神戸地検特別思想部」が、鹿砦社の社長をパクッたわけです(笑)。

 要するに、「共謀罪」の成立によって、ただでさえ暴走しまくっている「腐れ検察」が、完璧な「治安維持法」を手にすることになるのですから、こんなコワイことはありません。「ガイキチに刃物」とはこのことです。んで、衆院解散になれば、こうした化け物のような法案も廃案になって、すべて「リセット」になるので、私も「大サンセイ」というわけです。

 確かに、「靖国公式参拝」を巡る“歴史認識”の問題も重要でないと言い切るつもりはありませんが、「共謀罪」のキケン性の前に比べたら、ほんと、どうでもいいことのように思えてきます。私自身は「靖国公式参拝」には反対なのですが、しかし、そこはヴォルテールのように「私と反対の意見を言う権利は、私は命をかけても守る」という立場です。その1点において、私は自民党右派の平沼赳夫や安倍晋三とも組めるわけです。

 そうした「人間の根源的な自由」に対する理解や関心は、民主党なんかより、ずっと、自民党の右寄りの連中の方がむしろ、感度がいい。大事なところは、そこなのです。

 で、鹿砦社社長の逮捕に話を戻すと、この程度で鹿砦社が潰れるようだったら、最初から言論出版活動をすべきではないですし、ある種、これも「想定の範囲内」でしょう。「ウワシンスピリッツ」を本当に継承するのであれば、これからは「腐れ検察」という「日本最低の巨悪」に徹底的に挑まなければウソでしょう。

 ウワシンの岡留氏が、例の「西川りゅうじん&和久峻三」の名誉毀損で不当起訴されたことをきっかけに、検察批判に本腰を入れ、ノリサダの首を取ったように、「しまった、寝た子を起こしてしまった。逮捕するんじゃなかった」というふうに連中に思わせなかったら、ウソでしょう(笑)。「目には目を、歯に歯を」。それが、「独立自尊の言論人」の掟というものです。


【山岡俊介氏のレポート)】
 山岡俊介氏主宰の情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ))の「2005.7.12日、『紙の爆弾』発行の鹿砦社・松岡利康社長、名誉毀損容疑で逮捕される」、「2006.4.22日、検察、名誉毀損容疑の「鹿砦社」松岡利康社長に懲役1年6カ月求刑」が次のように伝えている。
 察庁内記者会見への出席妨害禁止を求め、フリーライター仲間の寺澤有氏等、仮処分申請 | トップページ | 鹿砦社の松岡社長逮捕の声明文 ≫

 「2005.7.12日、『紙の爆弾』発行の鹿砦社・松岡利康社長、名誉毀損容疑で逮捕される

 ●名誉毀損で逮捕!? アルゼの政治力の賜物か?

 詳細は不明だが、本紙・山岡も寄稿している月刊誌『紙の爆弾』等を発行している「鹿砦社」(本社・兵庫県西宮市)の松岡利康社長が本日早朝、逮捕された。逮捕したのは地元の神戸地検。関係者によれば、容疑は名誉毀損だという。

 ヤクザ関係者が恫喝のため、まったくの虚偽を言いふらしたならともかく、出版社社長の逮捕とは「表現の自由」、「報道の自由」の問題も関わるだけに前代未聞の出来事。おそらく、逮捕に至ったということでいえば、「月刊ペン」事件以来、約30数年ぶりのことではないか。しかも、その容疑対象になっているなかには、阪神球団のスカウトマンの死を巡っての件と共に、パチスロ大手「アルゼ」(現社長は元警察庁キャリア、元参議院議員)の単行本も含まれている。

 松岡社長はアルゼの問題を追及し続けており、これまでに同社からは4冊のアルゼ告発本が出ている。その内、2冊目については、アルゼ側の出版差し止めの仮処分が認められ、出版停止になっており、最近も神戸地検で事情聴取を受けていた模様。 また、この7月7日に出た『紙の爆弾』4号でも追及を続けていた。それにしても、出版社社長が名誉毀損で逮捕とは、あり得ない話では。

 地検は証拠隠滅の恐れもあるということで逮捕に踏み切ったようだが、名誉毀損の対象になっている単行本、ムック本は印刷ないし販売されているわけで、それで証拠隠滅はないだろう。どうしてもアルゼ、そして同メーカーと癒着している警察人脈の政治力あってのことと思わざるを得ない。 いずれにしろ、この件は新しい情報が入り次第、レポートするつもりだ。

 「2006.4.22日、検察、名誉毀損容疑の「鹿砦社」松岡利康社長に懲役1年6カ月求刑

 4月21日、神戸地裁(佐野哲生裁判長)で、本紙既報のように名誉毀損で前代未聞の起訴前逮捕、異例の長期拘留された出版社「鹿砦社」(兵庫県西宮市)の松岡利康社長に対する名誉毀損論告求刑公判があり、検察側は、「表現の自由を乱用して私利私欲を図る被告に厳しい批判が向けられるべきである」として、懲役1年6カ月を求刑した。

 こん検察側のコメントだけみれば、いったい、どれだけ事実とかけ離れたデッチ上げを行い、社会的立場の弱い者をイジメたのかと想起されるが、この裁判で問われている名誉毀損を受けたとされる相手方の一方は、問題多いパチスロ大手の「アルゼ」。もう一方はプロ野球「阪神タイガース」の2人の元職員だが、こちらについては、不可解な死を遂げた元スカウトマンの長女(懲役8カ月、執行猶予4年確定)が取材の結果、これは殺人の可能性が高いと書いた手記を出版することにゴーサインを出したものだった。

 この求刑に対し、松岡社長は記者会見し、「表現の自由にのっとって活動して来たものであり、不当な求刑。無罪を勝ち取るために断固として戦い続ける」と話した。

 そして、自社HPでは以下のように述べてもいる。

 「アルゼは自らのダークな体質を隠蔽するために警察癒着を強めてきたことは、もはや私たちごときが今更述べるまでもないが、阪神球団も、今回の事件で蠢いた元『常任顧問』が兵庫県警暴対課の幹部(『「山一戦争』時の兵庫県警の現場責任者だったことが溝口敦氏の著書にも記述されている)だったことに明らかなように、かつての『球界の黒い霧』事件以降、警察の天下りは事実のようだ(この「常任顧問」のポストは兵庫県警暴対の天下りポストといわれている)。こうした警察権力、検察権力の<暴力>の前に、私たちのペンの力は無力でさえあったと、私たちは身をもって思い知った。私たちに対して、なぜあれほどの大弾圧がなされる必要があったのか、いまだに判らない」。

Re:れんだいこのカンテラ時評185 れんだいこ 2006/07/05
 【「鹿砦(ろくさい)社裁判第一審判決考」】

 2006.7.4日、出版物やホームページで阪神タイガース元職員やパチスロ聖像会社役員らを中傷したとして、名誉毀損罪に問われた出版社「鹿砦社」社長・松岡利康被告に対し、神戸地裁刑事2部で第一審判決(佐野哲生裁判長、101号大法廷)が下され、検察求刑「1年6ヶ月」に対し、「懲役1年2ヶ月、執行猶予4年」が言い渡された。

 裁判長は、「無責任で身勝手な動機から、過激な表現で長期間にわたり被害者の名誉を傷つけた。表現の自由に名を借りた言葉の暴力と云わざるを得ない」と判決理由を述べた。

 松岡被告及び支援団体は、「不当判決」だとして控訴を検討中であるが、どう対応すべきだろうか。判決文は読み上げられただけで、関係者の下に届くのは数日後となる。従って、現時点では、記憶に頼らざるを得ない。傍聴した一人としてのれんだいこの私見を述べておく。

 思うに、「執行猶予付き判決」は、最悪予想されていた執行猶予無しの実刑判決より軽かったのではなかろうか。それだけ狡猾と云えなくもないが、このことの意味を踏まえる必要があるのではなかろうか。

 判決文は、「鹿砦(ろくさい)社裁判」の事件経緯について詳細に論じ、その限りでの松岡被告の責任を問うものになった。特に、名誉毀損罪に当る過程を解析し、松岡被告の悪意無き流れ、あるいは許容されるべき事情を縷縷検証しており、この点は評価されるべきではなかろうか。よって、この量刑は相当ではなかろうか、ということになる。

 但し、問題は次のことにある。松岡被告及び弁護団及び支援者が問うたのはむしろ、表現・出版・批判の自由権を廻る憲法論争であった。且つ、逃亡ないしは証拠隠滅の恐れの無い松岡被告を不当逮捕し、接見禁止にした上6ヶ月にも及ぶ長期拘留に対して、これを弾圧として、権力犯罪として告発していた。

 こたびの判決は、この問題に何ら判断を示さなかった。佐野裁判長は、専ら技術論に終始し逃げた形跡がある。量刑から長期拘留6か月分を差引くというのが、僅かに見せた温情であった。

 裁判長のこの態度は、司法が法律判断を避けようとしている点で、現代法廷及び司法の病理を物語っていよう。今後とも、裁判所が、検察及び警察の行き過ぎた行為に付き何ら咎められないことになると、それは三権分立法秩序の根底を崩すことになりかねない、現代版治安維持法化を誘う司法の危険な液状化とでも云うべきではなかろうか。れんだいこは、かく見立てる。

 以上より、次のような方策が立てられるべきだということになる。こたびの判決を不当判決として控訴し、高裁で争い、最高裁まで持っていくことが、賢明であろうか。れんだいこはやや疑義を覚える。むしろ、「執行猶予付き」を評価し、本件を落着させるべきではなかろうか。その代わりに、出版社の社長が、出版物の責任を問われ、逮捕されたこと、更に、接見禁止で長期拘留されたことに対して国家賠償責任を問う訴訟を起すべきではなかろうか。

 「鹿砦(ろくさい)社裁判」をちまちました名誉毀損罪で争うのではなく、権力の不当弾圧としてその責任を問う形での逆攻勢法廷闘争に立ち向かうべきではなかろうか。そのことにより、同種の係争事件を糾合せしめ、更には権力の不当弾圧被害事件をも糾合せしめ、大々的に運動を組織していくことができるのではなかろうか。

 このところ、政府自民党が売国奴系タカ派政権に純化するに応じてこの種の事件が数多く生み出されつつある。小泉政権は、手前は「人生いろいろ、あれこれいろいろ」、「本人が決めること」で逃げ切り、政敵に対しては「自己責任、説明責任がある」などと恣意的な対応を恣にしている。小泉政権下での法秩序爬行現象は目に余る。

 我々は、小泉政権下で進行しつつあるこの種の権力犯罪に真っ向から立ち向かうべきで、松岡裁判をその砦として押し立てて行くべきではなかろうか。インターネット言論界で、思うところを述べているれんだいこにとって他人事でないのは無論である。そういうこともあって注目しているが、松岡氏はかく闘うべきだと考える。以上、感想を記しておく。

 【「鹿砦(ろくさい)社裁判」(「鹿砦社社長・松岡利康不当逮捕裁判闘争」)考】
 (mascomiron_rokusaisyasaibanco.htm)

 2006.7.4日 れんだいこ拝

【「鹿砦(ろくさい)社裁判第二審判決考」】
 2007.2.27日、大阪高裁102号法廷で、第二審判決(古川博裁判長)が下された。判決は、一審同様の論旨により「主文 本件控訴を棄却する」を言い渡した。3.8日、最高裁に上告した。

 関連サイト「「角栄の孫娘のプライバシー漏洩にまつわる週刊文春販売差し止め事件」考





(私論.私見)