第1条
締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。
締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
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 (私論.私見)
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これによると、新条約は、国際連合憲章、国際連合の目的、国際連合の任務に合致することが要件とされており、制約されていることになる。 |
第2条
締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによって、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。
締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、同盟国の経済的協力を促進する。 |
(私論.私見) |
これによると、新条約は、自由主義経済体制の維持強化、同盟国の経済的協力促進を義務としていることになる。 |
第3条
締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持発展させる。 |
(私論.私見) |
これによると、新条約は、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、それぞれの国の憲法の規定に従いつつ維持発展することが義務づけられていることになる。 |
第4条
締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。 |
(私論.私見) |
これによると、新条約は、極東地域に於ける有事発生に対して締約国間の随時協議が義務付けられていることになる。在日米軍が出動前に日本側と協議する(事前協議)ことを取り決めている。次の三種の協議が想定されている。
1・日米安全保障協議委員会による日常的な随時協議。2・日本が軍事攻撃された場合の有事協議。3・日本周辺の極東で軍事衝突があった場合の有事協議。
極東の範囲について、日本政府は概ねフィリピン以北の日本周辺としていた。しかしベトナム戦争時、在日米軍が沖縄から直接出撃して以来、ベトナムまでが極東に組み込まれた。小泉政権になって、極東条項が意味を失い、極東の「範囲」は在日米軍の出動できる範囲という既成事実ができあがってしまった。イラクも極東になってしまい、自衛隊が派遣された。米軍の出動は無制限ではなく、次のいずれかの場合に制約される。1・国連軍としての軍事活動。2・韓国やフィリピンなど、軍事同盟国との防衛義務としての活動。3・極東の安全が米国の自衛の目的になる場合。
しかし、極東の範囲が無制限になったことにより「米軍出動制限」も無意味になっている。 |
第5条
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
前記の武力攻撃及びその結果として執ったすべての措置は、国際連合憲章第51条の規定に従って直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執ったときは、終止しなければならない。 |
(私論.私見) |
これによると、新条約は、日本国施政下の領域に於ける武力攻撃事態が発生した場合に於いて、共同行動が義務づけられていることになる。但し、「直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない」とされている。
日本の領内に軍事攻撃があった場合、アメリカには日本を共同防衛する責任がある。しかし、アメリカ領内が軍事攻撃を受けた場合、日本にはアメリカを防衛する責任はない。日本は日本領内を守るだけである(個別的自衛権)。もちろん、在日米軍基地は日本領内であるから、それを防衛する責任は日本側にもある。ここでも憲法9条の故に海外派兵ができないことが一つの歯止めになっている。 |
第6条
日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍、及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、1952年2月28日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基づく行政協定(改正を含む)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
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(私論.私見) |
これによると、新条約は、米国軍の日本国内に於ける軍事基地使用を相互に認めていることになる。但し、米国軍の地位は、1952年締結の日米安保条約第3条の規定に拘束されている。
この「米軍の地位と利用できる施設・設備を規定する協定」(「地位協定」)に基づく米軍維持費用は、「地位協定24条の1」により1960年時点ではすべて米国側の負担とすることが決められている。しかし、1978年、日本側が在日米軍の維持経費の大半を負担するようになった。法的根拠がないので「思いやり予算」といわれる。日本人従業員の給料、空港・港の補修費用、兵員宿舎の建設など、年間数千億円の財政負担になっている。
地位協定では、米軍と兵員とに治外法権的特権が認められている。これにより、米兵による犯罪があっても、日本側は手を出せないことになっている。その後、米国側は反基地運動への発展を恐れ、米兵の日本人に対する事件事故は日本の司法にゆだねることにした。しかしこれも、穴だらけの不十分なものになっている。 |
第7条
この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響を及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。 |
(私論.私見) |
これによると、新条約は、国際連合の役割に対して影響を及ぼすものではないとされている。 |
第8条
この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続きに従って批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生じる。
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(私論.私見) |
新安保条約は、1960年1月19日にワシントンで署名、1960年5月20日には衆議院本会議で承認された。参議院の議決がないまま6月19日には自然承認された。そして、1960年6月23日に東京で批准書が交換され、効力が生じた。 |
第9条
1951年9月8日にサン・ワシントン市で署名された日本国とアメリカ合衆国の間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。 |
(私論.私見) |
これによると、新条約は、1951年の日米安保条約を改訂したことになる。 |
第10条
この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。もっとも、この条約が10年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後1年で終了する。 |
(私論.私見) |
これによると、新条約は、10年間拘束しており、その後は逐年ごとの更新になっていることになる。 |
以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。1960年1月19日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書2通を作成した。
日本国のために
岸信介
藤山愛一郎
石井光次郎
足立 正
朝海浩一郎
アメリカ合衆国のために
クリスチャン・A・ハーター
ダグラス・マッカーサー2世
J・グレイアム・パースンズ |