「松根大将日誌問題」について



 (最新見直し2012.3.10日)

 (れんだいこのショートメッセージ)
 「検証!南京大虐殺の『南京大虐殺否定論9つのウソ』」で、「松根大将日誌」の改竄問題が取り上げられている。「やらせ写真」が肯定派の勇み足だとすれば、「松根大将日誌」は否定派のそれになるようである。南京事件論争にはこの種のいい加減さがつきまとっている。以下、これを見ておくことにする。


 「松根大将日誌」には次のように記されている。

 「一時我が将兵により少数の掠奪行為(主として家具などなり)強姦などもありしごとく、多少は止むなき実情なり」。

 これによると、松根大将は、日誌に於いて当時の日本軍の蛮行を認めていることになる。然るに、田中正明(イオンド大学教授)の「南京事件の総括 虐殺否定15の論拠」では、松根大将の次のような発言が引用されている。

 「終戦後暫くして、南京に於て一般人、俘虜、婦女子等に対し、組織的な大規模の虐殺、暴行事件がありたるやに米国内で放送しあるとの情報を聞き、予は驚き、旧部下をして調査せしめたるも、左様な噂は全く虚妄にして、予の在任中は固より、帰還終戦に至る迄、斯くの如き報告及び情報に接せず、上海に於る列国新聞通信員との屡次(るいじ)に亘る会見に於ても之を耳にせず、全くの誣妄(ぶもう)なることを附言す」。

 これを踏まえて、次のように批判されている。

 同書には、第一次資料の改竄とは、何か具体的には書いていないが、田中正明(イオンド大学教授)や板倉由明は史料改竄の常習犯として有名である。『南京大虐殺否定論13のウソ』によると、田中正明の『松井岩根大将の陣中日誌』では原文を300か所以上も、改竄していたと暴露されたとある。具体的にどのような改竄をしたのであろうか。以下は法律家・ゴマのホームページ内のゴマの独り言・歴史を偽造する馬鹿たちからの引用である。

(1)田中正明は、最初、松井石根(南京事件当時の中支那方面軍司令官)の手記である「支那事変日誌抜萃」の以下の記載をもとにして、軍の司令官でさえ南京大虐殺を知らなかった(=そのような事実はなかった)と論じていた。「終戦後暫くして、南京に於て一般人、俘虜、婦女子等に対し、組織的な大規模の虐殺、暴行事件がありたるやに米国内で放送しあるとの情報を聞き、予は驚き、旧部下をして調査せしめたるも、左様な噂は全く虚妄にして、予の在任中は固より、帰還終戦に至る迄、斯くの如き報告及び情報に接せず、上海に於る列国新聞通信員との屡次(るいじ)に亘る会見に於ても之を耳にせず、全くの誣妄(ぶもう)なることを附言す」。

 しかし、上記の引用部分は、松井の「支那事変日誌抜萃」には存在しないもので、全くの田中のでっち上げである。しかも、後に田中自身が翻刻した「支那事変日誌抜萃」(「松井石根大将の陣中日誌」収録)にも、上記引用部分は存在しないのである。田中は、「支那事変日誌抜萃」を翻刻した際、以前でっち上げた文章のことを忘れていたのであろう。偽作者なら偽作者らしく、首尾一貫した偽作をしてこそ本物というべきところ、何ともお粗末な話である。

 これは史料改竄の一例に過ぎない。さらに史料改竄以外にも、現存している大量の史料を無視したり、文脈を歪曲して引用したりする。このように、すぐにウソだとばれるようなことを平気でする否定論には、そこには何らかの政治的意図が隠されているのかもしれない。『産経新聞』『正論』『諸君!』『SAPIO』などでこれらの否定論が繰り広げられています。このような新聞・雑誌社を許してはいけない。ぜひとも、これらの企業の息の根を止めるべく買わないようにお願いしたい限りである。

 なお、小林よしのり『戦争論』というひどい漫画がある。「原作:新しい歴史教科書を作る会/漫画:小林よしのり」という感じでアジア・太平洋戦争を美化・肯定、さらに植民地支配を正当化、南京大虐殺はなかったなどといった根拠のないウソを並び立てています。関西大学講師の上杉聰氏によれば『戦争論』のなかには100か所以上の間違いがあるとのこと。このような漫画がベストセラーになるんですから、世も末です。漫画の影響力ははかりしれないものがあり、そして小林は今でも活字ばなれした読書習慣のない若者を騙しつづけています。結論・・・南京大虐殺は洗脳された右翼による戯言である。

 (田中正明氏について)

歴史修正主義者で南京大虐殺まぼろし派
・イオンド大学の教授(http://www.iond-univ.org/professor/index.html)
・松井日記改ざん事件を起こした(最後に引用)
・「南京事件の総括 虐殺否定15の論拠」という本を書いている
等のことが分かりました。
(私論.私見)
 れんだいこは、「松根大将日誌」を確認していないので発言資格はないが、上記批判者を仮にX氏と命名すれば、X氏の批判が妥当なものかどうかにつき、田中正明(イオンド大学教授)氏の「南京事件の総括 虐殺否定15の論拠」での松根大将発言の真偽を確認すれば済む話であろう。田中氏の松井発言引用文が「松根大将日誌」文中のものなのか別の場所での発言なのか捏造文なのか、これを確認することが先決だろう。どうも臭いとして松根大将発言は別の場所での発言のような気がする。それを「松根大将日誌」文中にあるなしにすり替えて批判している気がする。これは後日確かめたい。

 2012.3.10日 れんだいこ拝

 秦郁彦『昭和史の謎を追う[上]』 【田中正明の松井日記改ざん事件 】

 1985年11月24日付の朝日新聞は、翌日付で発表される雑誌『歴史と人物』(1985年冬号)に板倉由明が執筆した「松井石根大将『陣中日誌』改竄の怪」(上の写真)の要点を報道した。陣中日誌の原本は、南京攻略戦の最高指揮官松井大将が記したもので、自衛隊板妻駐屯地資料館に保管されていたのを田中正明が借り出し、走り書きの日記を判読して出版したばかりのところだった。雑誌の編集部は、専門の読解者に手助けしてもらい、同じ原本と対照したうえ、解説を板倉に依頼したものだが、南京虐殺を否定する方向で九百か所以上の削除、加筆、誤記、文章の移動などが行われていることが明らかにされた。

 板倉は同じ紙面で「誤読、脱落はありえても、もとの日記に書いていないことを付け加え、それに注釈までしているのではどうしようもない」と評し、田中は「言い逃れになるかも知れないが、体調などの悪条件が重なりミスしたもので、決して虐殺は虚構だという自分の主張に合わせて加筆や削除したのではない。申し訳ない」と釈明した。

 本多は、さっそく翌日の紙面で「松井大将が生きていれば、さぞ改ざんを怒り嘆くだろう」と追い討ちをかけ、(あなたの投稿は消されていましたね)洞富雄も『赤旗』紙上で「このエセ研究家にあえて一撃を加えた見識に……敬意を表したい」と述べた。さすがの田中も再起不能におちこんだか、と噂されたが、支援者たちに励まされてか再起の日は意外に早かった。一年半後に、(過去ログの場所を紹介しましょうか)田中は『南京事件の総括』(謙光社)を刊行、虐殺派、中間派のライターたちを威勢よくなで切りにしたあと「あとがき」で改ざん事件に言及した。すなわち「そのほとんどは、私の筆耕の誤記や誤植、脱落、あるいは注記すべきところをしなかった等の不注意によるものであります」と弁解しつつ「字句に多少のズレはあっても、松井大将の真意を曲げることなく、その目的は完全に果し得た」と自賛した。その心臓ぶりには脱帽のほかないが、シロウトばかりでなく学者のなかにも彼を全面支援する人がいるから不思議だ。













(私論.私見)