449―132 千里馬運動考

 黒坂真氏の「北朝鮮を美化した日本共産党」を参照、引用する。

 1968(昭和43).1.31日付けの「赤旗」記事「米の軍事挑発で朝鮮をめぐる情勢緊迫」は、次のような北朝鮮経済美化論を述べており、日共党中央の言い逃れの聞かない観点を晒している。

 「朝鮮民主主義人民共和国の『経済停滞』だとか『国民の不満を外にそらす』などの宣伝がなんら根拠のないつくりばなしであることは、朝鮮民主主義人民共和国の社会主義建設が、いわゆる『千里馬』の勢いで進み、社会主義諸国中もっともめざましいものとなっていることを指摘するだけで十分です。

 アメリカと朴政権のもとで失業と貧困に苦しめられている南朝鮮人民にくらべ、北朝鮮には失業もなく、輝かしい社会主義建設が進んでいることは朴政権が『勝共統一』の基礎づくりとして、北朝鮮にまけない経済建設の必要をとなえていることでもあきらかです。民衆の不満で支配がゆらいでいるのは南朝鮮におけるアメリカと朴政権の支配です」。(中略)

 「朝鮮民主主義人民共和国の経済建設はアメリカ帝国主義や日本反動勢力の期待に反して、国防建設と経済建設を並進させるという基本路線をつらぬきながら大きな成果をあげており、工業生産も、農業生産もすみやかに成長し、人民の物質的、文化的生活水準ははるかに高まり、人民の団結がますます高度になっていることは、朝鮮を訪れた諸外国の人びとが、すべて認めている事実です」。

 日共党中央幹部による北朝鮮美化例はいくらでも例がある。昭和30年代後半から昭和40年代中頃までの「赤旗」・「前衛」は北朝鮮を美化する記事や論文で満ち溢れている。松本善明氏(現衆議院議員)は以下のように北朝鮮の農業を全面的に美化している。1968.10.6日付け赤旗日曜版記事「社会主義朝鮮を訪問して 松本善明代議士のみやげ話」より抜粋する。

 「このように水利に全力をあげています。天気はいい。水には不足しない。これでは豊作になるわけです。鉄管の設備はどこがもつのか、ときくと、全部国がもつということです。国がおしみなく農村を援助しています。新しい住宅もどしどし建っていますが、これも国が建て、農民は無料で住む。農村では税金もなくなりました。数年前までは現物税がありましたが、一昨年これも廃止されました。医療も学校教育も無料ですから、農民が金を出して買うものといえば衣服や家具ぐらいのものです。こんな生活は解放前には想像もできなかった、と農村の人たちはいっていました。こうした農業の成功は工業の発展なしにはできないことです」(中略)

「やがて朝鮮が統一された日に、わたしたちの隣国には平和な偉大な国が建設されるでしょう。日本のすぐそばの朝鮮で社会主義が建設されているのを見ると、日本でこれができないはずはないという強い確信がわいてきます。

 黒坂真氏は次のように批判している。
 まさに全面的賛美としか表現のしようがない「みやげ話」ではないか。松本氏の「みやげ話」は、前述の宮本顕治氏の演説と基本的な趣旨は同じだ。松本善明氏は、かつて自らがこのように北朝鮮の農業を全面的に美化したことを、どのように考えているのだろうか。松本善明氏は見解を表明するべきだ。松本氏は北朝鮮により朝鮮半島が統一されることを確信していたようだが、これが当時の日本共産党員の「常識」だった。大韓民国はいずれ「南朝鮮革命」により存在しなくなるという「確信」を多くの日本共産党員は抱いていた。

(私論.私見) 「黒坂真氏の北朝鮮美化論を鼓吹した日本共産党批判論」について

 「黒坂真氏の北朝鮮美化論を鼓吹した日本共産党批判論」の意義は、その後に対北朝鮮政策を転換させた日共党中央が、原水禁運動の「如何なる国の核実験反対に反対論」からの転換例と同じく、当時の見解に対する何らの自己批判も為さぬまま、のうのうと新見解を述べており、相も変わらず「いつも正しい日共理論」を説いていることに対する鉄槌的作用を持っていることにある。

 日共党中央のこビョーキは、奈辺から由来しているだろう。これでは、日共党中央に這い上がるには恐ろしいほどの詭弁能力が必要ということになる。多くの者は仮に能力があっても、この詭弁階段を登る間に病気になってしまうであろう。そうならずに党中央にん十年間棲息しえている御仁たちをどう思うべきだろうか。いずれにせよ、れんだいこには無縁の世界である。

 2005.3.28日 れんだいこ拝


【「千里馬運動」考】
 ところで、このサイトは「千里馬運動考」であるので、「千里馬運動」について概括しておかねばならない。それが何時ごろ提唱され、どういう内容の運動であったのか。その功罪や如何に、を明らかにしたいと思う。(以下、略)
(私論.私見) 「千里馬運動」について

 「千里馬運動」は結果から見て失敗だったように思われる。れんだいこにはそれがとても残念なことのように思われる。2005年現在であるが、どこまで正しい情報かは別にして北朝鮮経済の危機、ひいては体制危機が次第に声高に囁かれている。本来なら、先行社会主義国の実験が成果を収め、資本主義諸国下の労働大衆運動に夢と希望を与え、世界をリードし続けていなければならない筈である。現実は逆になっている。これをどう整合的に理解すべきか、この辺りの理論考察も必要なように思われる。

 2005.3.28日 れんだいこ拝




(私論.私見)